IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 早川ゴム株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧 ▶ 株式会社東北イノアックの特許一覧

<>
  • 特許-防水構造 図1
  • 特許-防水構造 図2
  • 特許-防水構造 図3
  • 特許-防水構造 図4
  • 特許-防水構造 図5
  • 特許-防水構造 図6
  • 特許-防水構造 図7
  • 特許-防水構造 図8
  • 特許-防水構造 図9
  • 特許-防水構造 図10
  • 特許-防水構造 図11
  • 特許-防水構造 図12
  • 特許-防水構造 図13
  • 特許-防水構造 図14
  • 特許-防水構造 図15
  • 特許-防水構造 図16
  • 特許-防水構造 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 11/00 20060101AFI20221223BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
E04D11/00 A
E04D5/14 E
E04D5/14 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018217903
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2019105154
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2017236436
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】596105644
【氏名又は名称】株式会社東北イノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸子 貴則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘三
(72)【発明者】
【氏名】一反田 康啓
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦夫
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123587(JP,A)
【文献】特開平01-250555(JP,A)
【文献】特開2009-167728(JP,A)
【文献】特開2007-120248(JP,A)
【文献】特開2014-066119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 11/00
E04D 5/14
E04D 3/00、3/35
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平部が一方向に傾斜した勾配屋根の防水構造において、
上記勾配屋根の防水下地の上に互いに隣接するように複数枚並設され、該防水下地に対して複数箇所が締結固定もしくは接着固定される断熱パネルと、
上記断熱パネルの上面に敷設される合成樹脂製の防水シートとを備え、
上記断熱パネルは、矩形状に成形された断熱材と、該断熱材の上面に接着された基材金属板及び該基材金属板の上面を被覆する樹脂製の被覆材を有する金属外皮とを備えるとともに、上記断熱パネルの下面は上記断熱材が露出するように構成され、
上記防水シートの下面は上記金属外皮に接合され
上記断熱材の少なくとも1辺は、上記金属外皮の縁部から張り出すように形成され、
上記断熱パネルの上記断熱材における上記金属外皮の縁部から張り出した部分の上面と、上記金属外皮の上面とは同一面上に位置するように形成されていることを特徴とする防水構造。
【請求項2】
請求項に記載の防水構造において、
上記断熱材の連続する2辺は、上記金属外皮の縁部から張り出すように形成されていることを特徴とする防水構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防水構造において、
上記断熱パネルの端部には、隣接する他の上記断熱パネルに嵌合する凹部または凸部が形成されていることを特徴とする防水構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の防水構造において、
上記断熱パネルの上記断熱材は、イソシアヌレートフォームもしくは発泡ポリエチレンで構成されていることを特徴とする防水構造。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1つに記載の防水構造において、
上記防水シート及び上記被覆材は、軟質塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂で構成されていることを特徴とする防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配屋根に適用可能な防水構造に関するものであり、特に、平部が一方向に傾斜した構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、勾配屋根としては、波板形状の金属板を敷き並べて構成した折板屋根やスレート屋根が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、折板屋根等の金属製屋根を構成している防水下地の上に板状の断熱部材を敷設し、その断熱部材の上に固定用ディスクを配置して、固定用ビスによって固定用ディスクを防水下地に固定している。固定用ディスクの上面には、ホットメルト接着層を設けている。断熱部材及び固定用ディスクの上に合成樹脂製の防水シートを敷設し、この防水シートを固定用ディスクのホットメルト接着層に接着固定している。
【0004】
特許文献2では、金属外皮の間に断熱材を介在させた複数の断熱パネルを互いに隣接するように並設し、これら断熱パネルの上に防水シートを敷設している。金属外皮には樹脂層を形成している。防水シートを金属外皮の樹脂層に熱融着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-75109号公報
【文献】特許第4685592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の固定用ビスを用いた固定工法は機械的な固定工法であることから機械的固定工法と呼ばれている。この機械的固定工法の場合、複数の固定用ディスクが所定の間隔をあけて配置されていることから、防水シートにおける固定用ディスク間の部分は非固定状態になることは避けられない。
【0007】
このような機械的固定工法を前提としたとき、例えば台風のような強い風が吹いた場合を想定すると、一般的に防水シートとして塩化ビニル製のような柔軟性のあるシートが用いられているので、防水シート上を風が吹くことによって当該防水シートにおける固定用ディスク間の部分が補強材から浮き上がるように変形する。防水シートが補強材から浮き上がるように変形すると、固定用ディスクに対して斜め上方向への力が加わることになる。固定用ディスクに加わった力は固定用ビスに作用することになり、固定用ビスにも同様に斜め上方の力が加わることになる。
【0008】
機械的固定工法による施工が完了した後、初期のうちは風による力よりも固定用ビス及び固定用ディスクによる拘束力の方が勝っているが、施工完了後、何年もの期間が経過して強い風による力が繰り返し作用すると、屋根材が例えばデッキプレートや折板のような比較的薄い板材からなる場合には、繰り返し作用する斜め方向の力のうち、鉛直方向の分力によって屋根材が上方向に変形してしまい、固定用ビスの締め付け力が低下してしまう恐れがある。
【0009】
固定用ビスの締め付け力が低下してしまうと、繰り返し作用する斜め方向の力のうち、水平方向の分力によって断熱材、補強材が水平方向に動き、同様に固定用ビスの頭部も水平方向に動いてしまうことが考えられる。固定用ビスの頭部の水平方向の動きは、屋根材への螺合部位に作用することになるので、その螺合部位の屋根材を変形させてしまい、これにより固定用ビスが螺合している孔の径が大きくなる。固定用ビスが螺合している孔の径が大きくなると、固定用ビスの拘束力が大きく低下し、その結果、固定用ビスが抜け、防水シートを屋根材に拘束することができず、防水性能が維持できなくなってしまう。
【0010】
また、特許文献2では、防水シートを断熱パネルの金属外皮に対して熱融着で固定し、断熱パネルを複数のビスで防水下地に固定しているので、特許文献1の固定用ディスクを使用した場合のように局所的な荷重の集中が起こり難くなるという利点がある。
【0011】
しかしながら、断熱材の上下両面をそれぞれ金属外皮で覆い、上側の金属外皮と下側の金属外皮とを周縁部において断熱材に結合するようにしているので、断熱パネルを構成する部材の数が増えるとともに、製造工程が煩雑化し、ひいてはコスト高を招く。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストでかつ長期間に亘って防水性能を維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、断熱材の上面に金属外皮を設ける一方、下面には金属外皮を設けないように断熱パネルを構成し、この断熱パネルを防水下地に対して複数箇所締結固定もしくは接着固定し、金属外皮に防水シートを接合するようにした。
【0014】
第1の発明は、平部が一方向に傾斜した勾配屋根の防水構造において、上記勾配屋根の防水下地の上に互いに隣接するように複数枚並設され、該防水下地に対して複数箇所が締結固定もしくは接着固定される断熱パネルと、上記断熱パネルの上面に敷設される合成樹脂製の防水シートとを備え、上記断熱パネルは、矩形状に成形された断熱材と、該断熱材の上面に接着された基材金属板及び該基材金属板の上面を被覆する樹脂製の被覆材を有する金属外皮とを備えるとともに、上記断熱パネルの下面は上記断熱材が露出するように構成され、上記防水シートの下面は上記金属外皮に接合され、上記断熱材の少なくとも1辺は、上記金属外皮の縁部から張り出すように形成され、上記断熱パネルの上記断熱材における上記金属外皮の縁部から張り出した部分の上面と、上記金属外皮の上面とは同一面上に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、防水下地に複数枚の断熱パネルを互いに隣接するように並設し、各断熱パネルの複数箇所を防水下地に締結固定もしくは接着固定した後、防水シートを敷設して断熱パネルの金属外皮に接合することで勾配屋根の防水構造が得られる。屋内に天井を有する屋根では容易に締結固定が可能であるが、屋内に天井の無い屋根では、締結固定する際に、ビス(締結部材)をねじ込むときにできる金属屑が屋内に飛散するおそれがあるため、接着固定が望ましい。
【0016】
例えば強い風が吹いた場合を想定すると、防水シートに対して浮くような力が作用するが、この力は断熱パネルの金属外皮との接合部分を介して断熱パネルの複数の締結部分もしくは接着固定部分に伝わることになるので、荷重が複数の締結部分に分散されて作用し、各締結部分に加わる荷重、特に水平方向の荷重が低減する。よって、長期間に亘って防水性能が維持される。
【0017】
また、断熱パネルはその下面から断熱材が露出していて下面には金属外皮が無いので、特許文献2のように上下に金属外皮を設ける場合に比べて部材の数が減少するとともに、構造がシンプルになる。
【0018】
また、断熱材の少なくとも1辺が金属外皮の縁部から張り出しているので、並設した状態で隣合う断熱パネルの金属外皮同士が、例えば熱膨脹等によって干渉しないようにすることができる。
【0019】
また、断熱材の金属外皮から張り出した部分と、金属外皮との間に段差が無くなるので、防水シートを敷設したときに防水シート上に窪みができにくくなる。
【0020】
の発明は、第の発明において、上記断熱材の連続する2辺は、上記金属外皮の縁部から張り出すように形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、断熱材の連続する2辺が金属外皮の縁部から張り出しているので、並設した状態で2方向に隣合う断熱パネルの金属外皮同士が、例えば熱膨脹等によって干渉しないようにすることができる
【0022】
の発明は、第1または2の発明において、上記断熱パネルの端部には、隣接する他の上記断熱パネルに嵌合する凹部または凸部が形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、互いに隣接する断熱パネルを嵌合させて一体化することができる。
【0024】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、上記断熱パネルの上記断熱材は、イソシアヌレートフォームもしくは発泡ポリエチレンで構成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、断熱性能の高い断熱材を軽量にすることができる。
【0026】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、上記防水シート及び上記被覆材は、軟質塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、防水シートと被覆材とを強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、断熱材の上面に金属外皮を設ける一方、下面には金属外皮を設けないように断熱パネルを構成し、この断熱パネルを防水下地に対して複数箇所締結固定もしくは接着固定し、金属外皮に防水シートを接合したので、低コストでかつ長期間に亘って防水性能を維持することが可能な防水構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態1に係る防水構造が適用された屋根の断面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図1におけるIII-III線断面図である。
図4】断熱パネルを上方から見た斜視図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】変形例に係る断熱パネルの嵌合構造を示す断面図である。
図7】実施形態2に係る図1相当図である。
図8図7におけるVIII-VIII線断面図である。
図9図7におけるIX-IX線断面図である。
図10】実施形態3に係る図1相当図である。
図11図10におけるXI-XI線断面図である。
図12】実施形態4に係る図1相当図である。
図13】実施形態5に係る図1相当図である。
図14図13におけるXIV-XIV線断面図である。
図15】実施形態6に係る図1相当図である。
図16】実施形態7に係る図1相当図である。
図17】実施形態8に係る図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る防水構造が適用された屋根1の断面図である。実施形態1は、建物が新築である場合に適用される防水構造である。屋根1は、合成スラブ用デッキプレート10と、断熱材11と、断熱パネル12と、固定用ディスク13と、固定用ビス14と、防水シート15とを備えている。この屋根1は、平部が一方向に傾斜した勾配屋根である。勾配の方向は任意に設定することができる。尚、図1において各部材の断面を示しているが、互いに異なる部位の断面となっている。
【0032】
合成スラブ用デッキプレート10は、例えば板厚が1.2mm程度の金属板を折り曲げることによって構成されている。合成スラブ用デッキプレート10によって防水下地が構成されている。
【0033】
断熱材11は、従来から周知の板状の部材からなるものであり、デッキプレート10の上面に複数枚が互いに隣接するように並設されている。この断熱材11は省略することもできるが、断熱材11を設ける場合には、断熱材11も防水下地の一部とすることができる。
【0034】
断熱パネル12は、断熱材11の上に互いに隣接するように複数枚並設されている。各断熱パネル12の構造は同じにすることができるが、外形状は変更してもよい。図4に示すように、断熱パネル12は略矩形状とされており、その外形状は長方形であってもよいし、正方形であってもよい。断熱パネル12の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5mm以上50mm以下に設定することができる。また、断熱パネル12の幅や長さは、数十cm以上の任意の寸法に設定することができる。
【0035】
断熱パネル12は、断熱材12aと、金属外皮12bとを備えている。断熱材12aは、樹脂発泡体で構成されている。樹脂発泡体としては、例えば、押し出し法ポリスチレンフォーム(XPS)、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)、フェノールフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、発泡ポリエチレン等をあげることができる。断熱パネル12を防水下地に締結固定する場合は、耐候性、耐熱性の高い硬質ポリウレタンフォームが好ましく、さらに、難燃性の高いイソシアヌレート環を含むいわゆるポリイソシアヌレートフォームが好ましい。断熱パネルを接着固定する場合は、下地の不陸を吸収するために、断熱材の中では比較的硬度の低い発泡ポリエチレンが好ましい。
【0036】
断熱材12aの外形状は、断熱パネル12の外形状と同じであり、従って略矩形状である。すなわち、図4に示すように、断熱材12aの縁部を構成する4辺(第1辺A1、第2辺A2、第3辺A3、第4辺A4)は、それぞれ直線状に延びており、連続する2辺(第1辺A1と第2辺A2、第2辺A2と第3辺A3、第3辺A3と第4辺A4、第4辺A4と第1辺A1)は互いに略直角をなすように交わっている。
【0037】
図5に示すように、金属外皮12bは、断熱材12aの上面に接着された基材金属板12c及び該基材金属板12cの上面を被覆する樹脂製の被覆材12dを有している。基材金属板12cは、例えば鋼鈑等で構成されており、厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.5mm以上1.5mm以下の範囲で設定することができる。
【0038】
金属外皮12bの外形状は略矩形状とされており、図4に示すように、金属外皮12bの縁部を構成する4辺(第1辺B1、第2辺B2、第3辺B3、第4辺B4)は、それぞれ直線状に延びており、連続する2辺(第1辺B1と第2辺B2、第2辺B2と第3辺B3、第3辺B3と第4辺B4、第4辺B4と第1辺B1)は互いに略直角をなすように交わっている。
【0039】
断熱材12aの縁部を構成している連続する2辺は、金属外皮12bの縁部から水平方向に張り出すように形成されている。すなわち、断熱材12aの第1辺A1及び第2辺A2は、それぞれ、金属外皮12bの縁部を構成している第1辺B1及び第2辺B2よりも長くなっているとともに、金属外皮12bの外方に位置付けられている。また、断熱材12aの第1辺A1と、金属外皮12bの第1辺B1とは互いに平行に延びている。また、断熱材12aの第2辺A2と、金属外皮12bの第2辺B2も互いに平行に延びている。
【0040】
図5に示すように、断熱材12aの第1辺A1と金属外皮12bの第1辺B1との離間距離Lは、特に限定されるものではないが、例えば10mm以上30mm以下に設定することができる。尚、この実施形態では、断熱材12aの連続する2辺が金属外皮12bの縁部から張り出すように形成されているが、これに限らず、断熱材12aの任意の1辺のみが金属外皮12bの縁部から張り出すように形成してもよい。
【0041】
被覆材12dは、軟質塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂で構成することができ、基材金属板12cに接着された状態で一体化されている。
【0042】
図5に示すように、断熱パネル12の断熱材12aにおける金属外皮12bの縁部から張り出した部分の上面12fと、金属外皮12bの上面(被覆材12dの上面)とは同一面上に位置するように形成されている。
【0043】
一方、断熱パネル12の下面には金属外皮12bが設けられていない。従って、断熱パネル12の下面は断熱材12aが露出するように構成されているので、この実施形態では、断熱材12aの下面が断熱材11の上面に直接接触することになる。断熱パネル12の下面には金属外皮12bが無いので、断熱パネル12の構造がシンプルになるとともに、部品点数が少なくて済む。また、断熱パネル12の下面に発泡材からなる断熱材12aが臨むことになるので、例えば断熱材11の上面に多少の凹凸や段差があったとしても、断熱材12aが断熱材11の上面に沿うように変形して断熱材11の上面の形状に追従するようになる。
【0044】
断熱パネル12を成形する際には、図示しないが、上型と下型とを有する成形装置を用意し、上型を開いた状態にし、下型に、被覆材12dが下となるように金属外皮12bを配置する。その後、下型内の金属外皮12b上に、幅方向の中心線に沿ってウレタン原液を充填していく。このとき、ウレタン原液の充填箇所が、金属外皮12bの第1辺B1及び第2辺B2から離れるようにしておくのが好ましい。こうすることで、その後に上型を閉じると、ウレタン原液が発泡して充填箇所から金属外皮12bの縁部に到達するまでにウレタン原液の硬化が進行するので、ウレタン原液が被覆材12d側に回り込みにくくなる。尚、断熱パネル12の成形方法は上記した方法に限られるものではなく、例えば、断熱材12aを成形した後、断熱材12aに金属外皮12bを接着する方法であってもよい。
【0045】
固定用ディスク13は、略円形の鋼板と該鋼板の上面に設けられた樹脂層とを備えている。樹脂層は、被覆材12dと同じ材料で構成することができる。複数枚の固定用ディスク13を使用しており、これら固定用ディスク13は、互いに間隔をあけて断熱パネル12の上面に配置されている。固定用ディスク13の直下方に合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分が位置するように、固定用ディスク13の配設位置が設定されている。
【0046】
固定用ビス14は、例えば、セルフドリリングスクリュー等で構成することができ、固定用ディスク13、断熱パネル12及び断熱材11を上方から貫通して合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分にねじ込まれる。固定用ビス14を合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分にねじ込むことで、固定用ディスク13を断熱パネル12に押し付け、固定用ディスク13が押し付けられた断熱パネル12は断熱材11を合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分に押し付けるようになる。
【0047】
防水シート15は、断熱パネル12の上面に敷設される合成樹脂製のシートで構成されている。防水シート15は、被覆材12dと同じ材料、即ち軟質塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂で構成することができる。防水シート15と、被覆材12dと、固定用ディスク13の樹脂層とは、同じ材料とするのが好ましい。防水シート15は複数枚使用することができ、図1図2に示すように、隣合う防水シート15は厚み方向に重なるように敷設し、隣合う防水シート15を接合して防水シート15の下に水が浸入しないようにする。また、防水シート15によって固定用ディスク13及び固定用ビス14の頭部が覆われることになる。防水シート15と、固定用ディスク13の樹脂層とは接合されている。
【0048】
また、防水シート15の下面は、金属外皮12bの被覆材12dに接合されており、防水シート15の下面と金属外皮12bの被覆材12dとは部分的に接合してもよいし、全体を接合してもよい。
【0049】
防水シート15同士の接合方法、防水シート15と被覆材12dとの接合方法、防水シート15と固定用ディスク13の樹脂層との接合方法は、それぞれ、熱融着、溶剤を使用した溶着等の各種溶着法や、従来から用いられている接着剤を使用した接着法を使用することができる。
【0050】
(施工方法)
次に、上記のように構成された防水構造の施工方法について説明する。この実施形態は新築用の防水構造であり、まず、合成スラブ用デッキプレート10の上に複数枚の断熱材11を互いに隣接するように並設する。
【0051】
その後、断熱材11の上に複数枚の断熱パネル12を互いに隣接するように並設する(図4参照)。このとき、断熱パネル12の断熱材12aの第1辺A1が、隣合う断熱パネル12の断熱材12aの第3辺A3と接するように配設する。また、断熱パネル12の断熱材12aの第2辺A2が、隣合う断熱パネル12の断熱材12aの第4辺A4と接触するように配設する。つまり、断熱材12aにおける金属外皮12bの縁部から張り出し部分が、金属外皮12bの第3辺部B3または第4辺部B4と接触するように、複数枚の断熱パネル12を並設する。断熱パネル12を並設した状態では、断熱材12aにおける金属外皮12bの縁部から張り出した部分の上面12fと、金属外皮12bの上面とが同一面上に位置しているので、略平面状になる(図5参照)。
【0052】
尚、図6に示す変形例のように、断熱パネル12の端部には、隣接する他の断熱パネル12に嵌合する凸部12gまたは凹部12eが形成されていてもよい。一方の断熱パネル12の凸部12gが、他方の断熱パネル12の凹部12eに嵌合することで、断熱パネル12同士を一体化することができる。
【0053】
断熱パネル12を並設した後、複数枚の固定用ディスク13を合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分の直上方に配置する(図2参照)。固定用ディスク13を配置した後、固定用ビス14を、固定用ディスク13の上方から該固定用ディスク13に貫通させるとともに、断熱パネル12及び断熱材11に貫通させ、合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分にねじ込む。これにより、断熱パネル12及び断熱材11の複数箇所が合成スラブ用デッキプレート10に対して締結固定される。また、断熱パネル12の複数箇所を合成スラブ用デッキプレート10に対して接着剤により接着固定するようにしてもよい。
【0054】
固定用ビス14のねじ込み作業が終わった後に、複数枚の防水シート15を断熱パネル12の上面に敷設する。そして、重なり合った防水シート15同士を接合し、また、防水シート15と被覆材12dとを接合し、さらに防水シート15と固定用ディスク13の樹脂層とを接合する。
【0055】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、合成スラブ用デッキプレート10の上に複数枚の断熱パネル12を互いに隣接するように並設し、各断熱パネル12の複数箇所を合成スラブ用デッキプレート10に締結固定した後、防水シート15を敷設して断熱パネル12の金属外皮12bに接合することで勾配屋根の防水構造を得ることができる。
【0056】
例えば強い風が吹いた場合を想定すると、防水シート15に対して浮くような力が作用するが、この力は断熱パネル12の金属外皮12bとの接合部分を介して断熱パネル12の複数の締結部分(固定用ビス14による締結部分)に伝わることになるので、荷重が複数の締結部分に分散されて作用する。従って、各締結部分に加わる荷重、特に水平方向の荷重が低減するので、長期間に亘って防水性能を維持することができる。
【0057】
また、断熱パネル12はその下面から断熱材12aが露出していて下面には金属外皮12bが無いので、上下に金属外皮を設ける場合に比べて部材の数が減少するとともに、構造がシンプルになり、低コスト化を図ることができる。
【0058】
また、断熱材12aの下面が断熱材11の上面に直接接触することで、断熱材12aが断熱材11の上面に沿うように変形して断熱材11の上面の形状に追従する。よって、断熱材11の上面に多少の凹凸や段差があったとしても、断熱パネル12の上面に現れにくくなる。
【0059】
さらに、断熱材12aの連続する2辺が金属外皮12bの縁部から張り出しているので、並設した状態で2方向に隣合う断熱パネル12の金属外皮12b同士が、例えば熱膨脹等によって干渉しないようにすることができる。
【0060】
(実施形態2)
図7図9は、本発明の実施形態2に係る屋根1を示すものである。実施形態2は、屋根1の改修を行う場合に適用される形態であり、既存の断熱材11を合成スラブ用デッキプレート10に固定する構造を備えている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0061】
断熱材11は、改修を行う前に合成スラブ用デッキプレート10に固定されている既存の断熱材である。実施形態2の屋根1は、断熱材11を固定するための固定用ディスク17と固定用ビス18とを備えている。固定用ディスク17及び固定用ビス18は、断熱パネル12を固定するための固定用ディスク13及び固定用ビス14と同様に構成されている。すなわち、固定用ビス18は固定用ディスク17を貫通した後、断熱材11を貫通して合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分にねじ込まれる。
【0062】
また、実施形態2では既存の防水シート19が断熱材11の上に敷設されている。既存の防水シート19と固定用ディスク17とは接合されている。従って、実施形態2の場合、既存の防水シート19及び断熱材11はそのままにしておき、その上に実施形態1と同様な防水構造を設ける。実施形態2の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0063】
(実施形態3)
図10及び図11は、本発明の実施形態3に係る屋根1を示すものである。実施形態3は、既設の折板(防水下地)20で構成された屋根1の改修を行う場合に適用される形態である点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0064】
断熱パネル12は、折板20の上に並設されている。固定用ビス14は、固定用ディスク13を貫通した後、断熱パネル12を貫通して折板20の凸形状部分にねじ込まれている。実施形態3の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0065】
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4に係る屋根1を示すものである。実施形態4は、既設の断熱材11を母屋(防水下地)22に固定する構造を備えている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0066】
断熱材11は、改修を行う前に母屋22に固定されている既存の断熱材11である。実施形態4の屋根1は、断熱材11を固定するためのビス23と、隣接する断熱材11の隙間を塞ぐためのテープ24とを備えている。ビス23は、断熱材11を貫通した後、母屋22に締結されている。
【0067】
また、実施形態4では、既存の防水シート25が断熱材11の上に敷設されている。既存の防水シート25と断熱材11とは接合されている。従って、実施形態4の場合、既存の防水シート25及び断熱材11はそのままにしておき、その上に実施形態1と同様な防水構造を設ける。実施形態4の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0068】
(実施形態5)
図13及び図14は、本発明の実施形態5に係る屋根1を示すものである。実施形態5は、断熱材11及び断熱パネル12を接着固定するようにしている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。尚、図13等に示す符号Tは、隣接する断熱パネル12、12の隙間を覆うように貼り付けられる絶縁用のアルミテープである。
【0069】
実施形態5では、固定用ディスク及び固定用ビスを使用することなく、断熱材11の複数箇所を合成スラブ用デッキプレート10に対して接着剤により接着固定するようにしている。また、防水シート15と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層30が設けられており、防水シート15と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。さらに、断熱材11と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層31が設けられており、断熱材11と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。実施形態5の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0070】
(実施形態6)
図15は、本発明の実施形態6に係る屋根1を示すものである。実施形態6は、屋根1の改修を行う場合に適用される形態であり、防水シート15を接着固定するようにしている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0071】
実施形態6では、固定用ディスク17及び固定用ビス18を使用して、断熱材11の複数箇所を合成スラブ用デッキプレート10に対して固定するようにしている。また、防水シート15と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層30が設けられており、防水シート15と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。さらに、既存の防水シート19と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層33が設けられており、既存の防水シート19と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。実施形態6の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0072】
(実施形態7)
図16は、本発明の実施形態7に係る屋根1を示すものである。実施形態7は、実施形態3と同様に、既設の折板(防水下地)20で構成された屋根1の改修を行う場合に適用される形態である。また、実施形態7は、断熱パネル12が接着固定されている点で実施形態3とは異なっている。以下、実施形態3と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態3と異なる部分について詳細に説明する。
【0073】
実施形態7では、固定用ディスク及び固定用ビスを使用することなく、断熱パネル12の複数箇所を折板(防水下地)20に対して接着剤により接着固定するようにしている。また、防水シート15と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層30が設けられており、防水シート15と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。実施形態7の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0074】
(実施形態8)
図17は、本発明の実施形態8に係る屋根1を示すものである。実施形態8は、実施形態4と同様に、既設の断熱材11を母屋(防水下地)22に固定する構造を備えている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0075】
実施形態8では、固定用ディスク及び固定用ビスを使用していない。また、防水シート15と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層30が設けられており、防水シート15と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。さらに、既存の防水シート25と断熱パネル12との間には、接着剤からなる接着剤層34が設けられており、既存の防水シート25と断熱パネル12とは接着剤によって接着されている。実施形態8の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0076】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明に係る防水構造は、平部が一方向に傾斜した構造の屋根に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 屋根
10 デッキプレート(防水下地)
11 下層断熱材
12 断熱パネル
12a 断熱材
12b 金属外皮
12c 基材金属板
12d 被覆材
15 防水シート
20 折板(防水下地)
22 母屋(防水下地)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17