(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】鋳造方案設計支援装置および鋳造方案設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B22C 9/08 20060101AFI20221223BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
B22C9/08 C
B22C9/08 F
B22C9/08 Z
B22D46/00
(21)【出願番号】P 2019019578
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2022-02-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人日本鋳造工学会が平成30年10月1日に発行した公益社団法人日本鋳造工学会第172回全国講演大会講演概要集にて発表 中小企業庁のウェブサイト(http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/index.htm)にて平成30年10月2日に公開 公益社団法人日本鋳造工学会第172回全国講演大会にて平成30年10月13日に発表 一般財団法人素形材センターが平成30年10月20日に発行した素形材,第59巻,第10号にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(73)【特許権者】
【識別番号】519043970
【氏名又は名称】丹羽鋳造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519043981
【氏名又は名称】武山鋳造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515289211
【氏名又は名称】旭メタルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593003961
【氏名又は名称】株式会社瓢屋
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 安郭
(72)【発明者】
【氏名】坂井 雄治
(72)【発明者】
【氏名】平野 春好
(72)【発明者】
【氏名】坂▲崎▼ 功英
(72)【発明者】
【氏名】石川 義信
(72)【発明者】
【氏名】曽根 孝明
(72)【発明者】
【氏名】五家 政人
(72)【発明者】
【氏名】森田 茂隆
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223630(JP,A)
【文献】特開平04-361849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-25/00
B22D 1/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置であって、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記製品データに基づいて前記対象製品における前記特定比率を算出する製品特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の該特定比率との比率であ
り該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記製品特定比率算出部で算出された
、該対象製品の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えたことを特徴とする鋳造方案設計支援装置。
【請求項2】
前記押湯特定比率算出部で算出された前記特定比率から、球形状の押湯の直径に関する押湯情報を出力する押湯情報出力部を備えたことを特徴とする請求項1記載の鋳造方案設計支援装置。
【請求項3】
前記或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案において該或る鋳物製品に接続するネック部の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であ
り該或る鋳物製品の形状の影響を受けないネック比および前記製品特定比率算出部で算出された
、前記対象製品の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、
該対象製品を鋳造するための鋳造方案において
該対象製品に接続するネック部の前記特定比率を算出するネック部特定比率算出部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の鋳造方案設計支援装置。
【請求項4】
前記対象製品に接続する前記ネック部の縦横比に関するデータを取得するネック部縦横比データ取得部と、
前記ネック部特定比率算出部で算出された前記特定比率から、前記対象製品に接続する前記ネック部の形状に関するネック部情報を出力するネック部情報出力部を備えたことを特徴とする請求項3記載の鋳造方案設計支援装置。
【請求項5】
充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置であって、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記対象製品のうち、前記押湯の効果が影響するであろう押湯影響部分を指定する押湯影響部分指定部と、
前記製品データに基づいて、前記押湯影響部分における前記特定比率を算出する押湯影響部分特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であ
り該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記押湯影響部分特定比率算出部で算出された
、前記押湯影響部分の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えたことを特徴とする鋳造方案設計支援装置。
【請求項6】
前記或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案において該或る鋳物製品に接続するネック部の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であ
り該或る鋳物製品の形状の影響を受けないネック比および前記押湯影響部分特定比率算出部で算出された
、前記押湯影響部分の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、前記対象製品を鋳造するための鋳造方案において該対象製品に接続するネック部の前記特定比率を算出するネック部特定比率算出部を備えたことを特徴とする請求項5記載の鋳造方案設計支援装置。
【請求項7】
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置として動作させる鋳造方案設計支援プログラムであって、
前記情報処理装置を、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記製品データに基づいて前記対象製品における前記特定比率を算出する製品特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であ
り該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記製品特定比率算出部で算出された
、該対象製品の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えた鋳造方案設計支援装置として動作させることを特徴とする鋳造方案設計支援プログラム。
【請求項8】
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置として動作させる鋳造方案設計支援プログラムであって、
前記情報処理装置を、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記対象製品のうち、前記押湯の効果が影響するであろう押湯影響部分を指定する押湯影響部分指定部と、
前記製品データに基づいて、前記押湯影響部分における前記特定比率を算出する押湯影響部分特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であ
り該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記押湯影響部分特定比率算出部で算出された
、前記押湯影響部分の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えた鋳造方案設計支援装置として動作させることを特徴とする鋳造方案設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を支援する鋳造方案設計支援装置、およびプログラムを実行する情報処理装置内で実行され、その情報処理装置を、その鋳造方案設計支援装置として動作させる鋳造方案設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造を行うにあたって、溶湯の流動性不良、ガス、空気の巻込み、溶湯の凝固収縮などにより鋳造欠陥が生じる場合がある。また、溶湯の凝固時に肉厚の差などにより鋳造ひずみが生じる場合もある。そのため、これらの欠陥がない、健全な鋳物を得ることを目的として、予め湯口、押湯などの鋳込方法を検討することを含めた鋳造方案の設計が行われる。
【0003】
ところで、鋳造業界ではCADやCAM、鋳造シミュレーションの活用はある程度は進んでいるものの、全体としてはITの利用が遅れている。鋳造方案の設計においても、ITの活用は限定的であって(例えば、特許文献1~3等参照)、依然として経験と勘に大きく依存しているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-323446号公報
【文献】特開2000-326051号公報
【文献】特開2006-61935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、現在の鋳造方案では、鋳造・凝固現象を正確に理解しようとせず、やみくもに製品の健全性を重視するあまり、効率の低い押湯が使用されることが多く、押湯の鋳込重量に占める割合が、20~40%にもなり、その結果、製品部重量/鋳込重量で示される鋳造歩留りが低くなりすぎてしまう。
【0006】
このため、鋳造・凝固現象を正確に理解して開発された鋳造方案設計支援ツールが必要とされている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、鋳造・凝固現象を正確に理解して開発した、鋳造方案設計支援装置および鋳造方案設計支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する第1の鋳造方案設計支援装置は、
充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置であって、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記製品データに基づいて前記対象製品における前記特定比率を算出する製品特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であり該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記製品特定比率算出部で算出された、該対象製品の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
従来より、鋳型に溶湯を流し込んだときに、鋳物の凝固時間が体積と表面積の比率の2乗に比例するといったクボリノフの法則が知られている。上記鋳造方案設計支援装置によれば、クボリノフの法則における体積と表面積との比率を特定比率として利用する。すなわち、鋳型の製品部形成空間で鋳造される対象製品の形状を表す製品データから、対象製品の前記特定比率を求める。次いで、同じく、鋳型の製品部形成空間で鋳造される或る鋳物製品に溶湯補給を行う押湯の特定比率と該或る鋳物製品の特定比率との比率である押湯比および前記対象製品の特定比率を用いて、該対象製品に溶湯補給を行う押湯の特定比率を算出する。前記対象製品に溶湯補給を行う押湯の特定比率が算出されれば、押湯の基本形状に応じて、押湯の大きさ(体積)を求めることができる。
【0010】
なお、実際には、押湯は、基本形状に対して、鋳型や鋳造模型として使いやすいように適宜の形状の修整変形が施されて用いられている。例えば、造型の型抜き性のために適宜の抜け勾配、角R、隅Rなどを付したり、押湯頂部の引け誘発のために押湯頂部に円錐穴やV溝などを設けたり、ウィリアムスコアを設けたり、あるいは製品部との関係から押湯形状の一部を削ったり、余肉を付けたり等する。また、場合によっては、押湯の基本形状の上に溶湯ヘッド(溶湯圧)を付与するために押湯の直径や幅よりも小さい直径や幅の棒状の部分を追加して設けることもある。しかし、押湯の基本形状はその形から明らかである。したがって、押湯は、基本形状に、このような適宜の修整変形を施して用いられるものである。
【0011】
上記第1の鋳造方案設計支援装置によれば、クボリノフの法則における体積と表面積との比率を特定比率として利用することで、鋳造・凝固現象を正確に理解して開発された鋳造方案設計支援ツールを提供することことができる。
【0012】
上記第1の鋳造方案設計支援装置において、
前記押湯特定比率算出部で算出された前記特定比率から、球形状の押湯の直径に関する押湯情報を出力する押湯情報出力部を備えたことを特徴としてもよい。
【0013】
前記押湯情報は、直径を表す情報であってもよいし、半径を表す情報であってもよい。
【0014】
上記第1の鋳造方案設計支援装置において、
前記或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案において該或る鋳物製品に接続するネック部の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であり該或る鋳物製品の形状の影響を受けないネック比および前記製品特定比率算出部で算出された、前記対象製品の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案において該対象製品に接続するネック部の前記特定比率を算出するネック部特定比率算出部を備えたことを特徴としてもよい。
【0015】
ネック部は、堰と称される場合もある。すなわち、前記対象製品に接続するネック部は、前記押湯と該対象製品をつなぐ堰であってもよいし、湯道と該対象製品をつなぐ堰であってもよい。また、前記或る鋳物製品に接続するネック部は、前記押湯と該或る鋳物製品をつなぐ堰であってもよいし、湯道と該或る鋳物製品をつなぐ堰であってもよい。
【0016】
前記押湯は、湯口あるいは湯道とネック部との間に設けられたものであってもよい。また、前記押湯は、いわゆる揚がり押湯であってもよい。
【0017】
上記第1の鋳造方案設計支援装置において、
前記対象製品に接続する前記ネック部の縦横比に関するデータを取得するネック部縦横比データ取得部と、
前記ネック部特定比率算出部で算出された前記特定比率から、前記対象製品に接続する前記ネック部の形状に関するネック部情報を出力するネック部情報出力部を備えたことを特徴としてもよい。
【0018】
前記ネック部情報は、前記ネック部の高さと幅を表す情報であってもよい。
【0019】
上記目的を解決する第2の鋳造方案設計支援装置は、
充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置であって、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記対象製品のうち、前記押湯の効果が影響するであろう押湯影響部分を指定する押湯影響部分指定部と、
前記製品データに基づいて、前記押湯影響部分における前記特定比率を算出する押湯影響部分特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であり該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記押湯影響部分特定比率算出部で算出された、前記押湯影響部分の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えたことを特徴とする。
【0020】
この第2の鋳造方案設計支援装置によっても、クボリノフの法則における体積と表面積との比率を特定比率として利用することで、鋳造・凝固現象を正確に理解して開発された鋳造方案設計支援ツールを提供することことができる。しかも、第2の鋳造方案設計支援装置では、対象製品全体ではなく部分的な前記押湯影響部分を対象にしている。対象製品に複数箇所の厚肉部があった場合、これら複数箇所の厚肉部それぞれが、前記押湯影響部分になり、複数箇所の厚肉部それぞれに押湯を設ける必要があるときに、第2の鋳造方案設計支援装置では、厚肉部ごとに押湯設計を行うことができる。
【0021】
なお、ここにいう押湯影響部分とは、厚肉部といった見方の他に、前記押湯から溶湯が補給される部分と見ることもできるし、さらにはその部分の外側(ネック部とは反対側)まで含んだ部分と見ることもできる。
【0022】
上記第2の鋳造方案設計支援装置において、
前記或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案において該或る鋳物製品に接続するネック部の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であり該或る鋳物製品の形状の影響を受けないネック比および前記押湯影響部分特定比率算出部で算出された、前記押湯影響部分の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、前記対象製品を鋳造するための鋳造方案において該対象製品に接続するネック部の前記特定比率を算出するネック部特定比率算出部を備えたことを特徴としてもよい。
【0023】
上記目的を解決する第1の鋳造方案設計支援プログラムは、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置として動作させる鋳造方案設計支援プログラムであって、
前記情報処理装置を、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記製品データに基づいて前記対象製品における前記特定比率を算出する製品特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であり該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記製品特定比率算出部で算出された、該対象製品の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えた鋳造方案設計支援装置として動作させることを特徴とする。
【0024】
上記目的を解決する第2の鋳造方案設計支援プログラムは、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、充填された溶湯が凝固する際に押湯の効果によって溶湯を補給し対象製品を鋳造するための鋳造方案の設計を体積と表面積との比率である特定比率を用いて支援する鋳造方案設計支援装置として動作させる鋳造方案設計支援プログラムであって、
前記情報処理装置を、
前記対象製品の形状を表す製品データを取得する製品データ取得部と、
前記対象製品のうち、前記押湯の効果が影響するであろう押湯影響部分を指定する押湯影響部分指定部と、
前記製品データに基づいて、前記押湯影響部分における前記特定比率を算出する押湯影響部分特定比率算出部と、
前記対象製品とは異なる或る鋳物製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率と該或る鋳物製品の前記特定比率との比率であり該或る鋳物製品の形状の影響を受けない押湯比および前記押湯影響部分特定比率算出部で算出された、前記押湯影響部分の形状の影響を受けない前記特定比率を用いて、該対象製品を鋳造するための鋳造方案における押湯の前記特定比率を算出する押湯特定比率算出部とを備えた鋳造方案設計支援装置として動作させることを特徴とする。
【0025】
なお、上記第1の鋳造方案設計支援装置によって支援されて設計される鋳造方案、上記第1の鋳造方案設計支援プログラムによって支援されて設計される鋳造方案、上記第2の鋳造方案設計支援装置によって支援されて設計される鋳造方案、および上記第2の鋳造方案設計支援プログラムによって支援されて設計される鋳造方案はいずれも、砂型における鋳造方案であってもよいし金型における鋳造方案であってもよい。また、鋳鉄の鋳造方案であってもよいしアルミニウム合金等の非鉄金属の鋳造方案であってもよい。さらに、注湯方向と鋳型における見切り面の方向との関係が直角な関係にある横込め鋳造の鋳造方案であってもよいし、その関係が平行な関係にある縦込め鋳造の鋳造方案であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のうちの鋳造方案設計支援装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に外観を示すノートパソコンのハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に相当する鋳造方案設計支援プログラムの概要を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す鋳造方案設計支援装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図3に示す鋳造方案設計支援プログラムがインストールされ、そのプログラムが実行されているノートパソコンにおける表示画面の一例を示す図である。
【
図6】一つの湯口に対して8つの製品部を設けた8個込めの鋳物を示す図である。
【
図7】押湯の影響範囲について説明するための図である。
【
図8】
図5に示す設定入力画面に入力等された各種の値を用いた演算結果が出力された結果出力画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明のうちの鋳造方案設計支援装置の一実施形態を示す図である。
【0029】
図1に示す鋳造方案設計支援装置1は、本発明のうちの鋳造方案設計支援プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(以下、ノートパソコンと称する)10によって構成されている。
図1に示すノートパソコン10は、情報処理装置の一例に相当し、外観構成上、本体部11と、画像表示部12とからなるものである。画像表示部12は、本体部11の上面11aを覆うように折り畳たまれる。
図1には、画像表示部12を開いた状態が示されている。この画像表示部12には、本体部11からの指示に応じて表示画面121上に画像を表示する液晶表示装置が内蔵されている。本体部11の上面11aには、キー操作に応じた各種の情報を入力するキーボード13、および、表示画面121上の任意の位置を指定することにより、その位置に表示されたポインタやアイコン等に応じた指示を入力するポインティングデバイス14が設けられている。
【0030】
ノートパソコン10の本体部11の前面11bには、CD-ROMやDVD-ROMを装填するためのCD/DVD-ROMディスク装填口151が設けられている。
【0031】
また、本体部11の左側面11cには、この
図1では見えないが、ユニバーサル・シリアル・バス(以下、USBと称する)規格に準拠したUSBポート1101(
図2参照)や、映像信号用コネクタ1111(
図2参照)が設けられている。
【0032】
一方、本体部11の右側面11dには、SDカード(登録商標)(以下、記録カードと称する)が取出し自在に挿入される記録メディア挿入口1081が設けられている。この記録メディア挿入口1081に記録カード910を挿入すれば、記録カード910に記録されたデータを、ノートパソコン10に取り込むことができるようになる。
【0033】
さらに、本体部11の右側面11dには、商用電源から電力を供給するACアダプタ(図示せず)のコネクタが差し込まれるDC電源接続端子156が設けられている。なお、
図1に示すノートパソコン10にはバッテリ(図示せず)が内蔵されており、このノートパソコン10は、そのバッテリによっても動作するが、ACアダプタのコネクタをDC電源接続端子に差し込むことにより商用電源から供給された電力によって動作する。
【0034】
また、本体部11の後面11eには、いずれも図示されていないが、IEEE1394ポート、RJ45イーサネット(登録商標)ポート、および左側面11cに設けられたUSBポート1101とは別に2つのUSBポート1102,1103(
図2参照)が設けられている。
【0035】
図2は、
図1に外観を示すノートパソコンのハードウェア構成図である。
【0036】
図1に示すノートパソコン10の内部には、
図2に示すように、CPU101、RAM102、ハードディスクコントローラ103、ディスプレイコントローラ104、キーボードコントローラ106、ポインティングデバイスコントローラ107、CD/DVD-ROMドライバ108、記録メディアドライバ109、USBホストコントローラ110、および各種通信ボード111がバス100で相互に接続されている。
【0037】
CPU101は、各種プログラムを実行するものである。ハードディスクコントローラ103は、ハードディスク1031をアクセスするものである。ハードディスク1031には、各種プログラムやデータが記憶されており、RAM102には、そのハードディスク1031に格納されたプログラムやデータが読み出されCPU101での実行のために展開される。ハードディスク1031には、OS(Operating System)としてマイクロソフト社のWindows(登録商標)がインストールされている。
【0038】
ディスプレイコントローラ104は、
図1に示す画像表示部12に内蔵された液晶表示装置120を制御するものである。キーボードコントローラ106は、
図1に示すキーボード13からの入力を受け付けるものであり、ポインティングデバイスコントローラ107は、同じく
図1に示すポインティングデバイス14からの入力を受け付けるものである。
【0039】
CD/DVD-ROMドライバ108は、CD/DVD-ROMディスク装填口151に装填されたCD-ROM911やDVD-ROM912をアクセスするものである。記録メディアドライバ109は、
図1に示す記録メディア挿入口1081に挿入された記録カード910をアクセスするものである。
【0040】
図1に示す本体部11の左側面11cに設けられたUSBポート1101や、本体部11の後面11eに設けられたUSBポート1102,1103は、USBホストコントローラ110につながっている。これらのUSBポート1101,1102,1103に接続されたUSBデバイスには、デバイスを識別するための識別情報が用意されている。USBデバイスとノートパソコン10の接続の際には、ノートパソコン10内のOSが、この識別情報を読み取り、その識別情報に対応した情報ファイルを検索し、その情報ファイルで指定されたデバイスドライバ(周辺機器を管理制御するドライバ・ソフトウェア)をインストールし、ロードすることによってそのUSBデバイスがノートパソコン10の周辺装置として動作するようになる。
【0041】
各種通信ボード111には、映像信号用コネクタ1111、IEEE1394ポート1112、およびRJ45イーサネット(登録商標)ポート1113が接続している。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に相当する鋳造方案設計支援プログラムの概要を示す模式図である。
【0043】
鋳造方案設計支援プログラムは、DVD-ROMやCD-ROM、あるいはUSBメモリに代表される固体記憶素子に記憶されてユーザに提供される。また、インターネットやLANに代表される電気通信網を介してユーザに提供されることもある。
【0044】
本実施形態の鋳造方案設計支援プログラム20は、表計算用ソフトウエア(例えば、Microsoft社製Excel(登録商標))上に作成されたものであって、製品データ取得部21と、押湯影響部分指定部22と、製品特定比率算出部23と、押湯影響部分特定比率算出部24と、押湯特定比率算出部25と、ネック部特定比率算出部26と、押湯情報出力部27と、ネック部情報出力部28とから構成されている。
【0045】
図4は、
図1に示す鋳造方案設計支援装置の機能ブロック図である。
【0046】
鋳造方案設計支援装置1は、インストールされた鋳造方案設計支援プログラム20を
図2に示すCPU101が読み出して実行することにより、鋳造方案の設計をモジュラスを用いて支援する装置である。ここにいうモジュラスとは、体積と表面積との比率である特定比率の値である(以下、同じ)。この鋳造方案設計支援装置1は、製品データ取得部1011、押湯影響部分指定部1012、製品特定比率算出部1013、押湯影響部分特定比率算出部1014、押湯特定比率算出部1015、ネック部特定比率算出部1016、押湯情報出力部1017、ネック部情報出力部1018、および表示部1200の機能構成を備えている。これらの機能構成のうち、表示部1200は、
図2に示す液晶表示装置120により実現される機能構成であり、残りの機能構成1011~1018は、
図2に示すCPU101により実現される機能構成である。これらのCPU101により実現される機能構成1011~1018と、
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20における各構成要素21~28では、同じ名称のものは互いに対応している。すなわち、
図4に示す鋳造方案設計支援装置1のCPU101により実現される機能構成1011~1018は、ハードウェアであるCPU101と、
図3の鋳造方案設計支援プログラム20であるソフトウェアの組合せであるのに対し、
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20の各構成要素21~28はハードウェアとソフトウェアのうちのソフトウェア(アプリケーションプログラム)のみで構成されている。したがって、以下では、
図4に示す鋳造方案設計支援装置1の機能構成1011~1018を説明することで、
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20の各構成要素21~28の説明も兼ねるものとする。
【0047】
図5は、
図3に示す鋳造方案設計支援プログラムがインストールされ、そのプログラムが実行されているノートパソコンにおける表示画面の一例を示す図である。
【0048】
図5に示す表示画面は、
図4に示す表示部1200に表示された設定入力画面である。この設定入力画面では、各種の値等が、
図2に示すキーボード13やポインティングデバイス14といった操作手段を用いて、入力されたり設定されたり指定されたり選択され、あるいは、
図2に示すハードディスク1031等に記録されているデータから読み出されて設定される。また、
図2に示すハードディスク1031には、入力された各種の入力値とそれら入力値を用いた演算結果が、管理番号が付された履歴データとして記録されている。この表示画面の上部左側にある「履歴読込No」の欄は、管理番号を入力する欄であり、ここでは未入力であるが、管理番号を入力した上で、その横の「履歴読込」のボタン120aにカーソルを合わせてクリックすると、この設定入力画面に、入力した管理番号の履歴データが表示される。また、上部右側にある「CSV読込」のボタン120bにカーソルを合わせてクリックすると、CSV形式のファイルが読み込まれ、この設定入力画面に入力値として表示される。
【0049】
ここで、鋳物の一例について説明しておく。
【0050】
図6は、一つの湯口に対して8つの製品部を設けた8個込めの鋳物を示す図である。
図6(a)は平面図であり、同図(b)は、製品部を省略した側面図である。
【0051】
図6(a)に示す鋳物Cには、8つの製品部C4の他、1本の湯道C2、4つの押湯C3、および押湯C3と製品部C4をつなぐネック部C5が設けられている。ネック部C5は、堰と称される場合もある。また、図の左右方向に延びた1本の湯道C2の延在方向中央部分には、ここでは不図示の湯口における湯口底との接続部C21が示されている。
図6(a)に示す4つの押湯C3はいずれも、真球の形状であり、一つの押湯C3に対して2つの製品部C4が設けられている。この製品部C4が、以下の説明における対象製品に相当する。また、
図6(b)には、押湯C3の高さ方向中央を通るように1点鎖線が示されている。この一点鎖線は、
図6(a)に示す鋳物Cの見切り面に相当する。
図6(a)に示す鋳物Cは、いわゆる横込め鋳造によって鋳造されたものである。
【0052】
なお、押湯C3は、不図示の湯口とネック部C5との間に設けられたものであってもよい。また、押湯C3は、いわゆる揚がり押湯であってもよい。
【0053】
図5に示す設定入力画面では、「履歴読込」のボタン120a等の下には、「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201が用意されており、左端には、押湯の解説図が示されている。この「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201では、一つの製品部に対して複数の押湯を設けられるように、あるいは、製品部ごとに異なる押湯が設けられるように、10個までの押湯(押湯グループ1~10)に関するデータを入力することができるようになっている。ここでは、「押湯設定数」に“1”が入力されており、押湯グループ1のみが入力可能になっており、押湯グループ2以降はグレーアウトして入力不能である。なお、「押湯設定数」に“2”が入力された場合は、押湯グループ1と2のみが入力可能になる。以下に説明する、「押湯種類」、「製品数」、「ネック比」、および「押湯比」といった各入力事項については、押湯グループごとに入力することができる。
【0054】
「押湯種類」の入力欄をクリックすると、プルダウンメニューが表示され、“球体”と“湯口”のいずれか一方を選択することができる。“球体”とは、押湯の基本形状が球体であることを表す。なお、押湯は、基本形状に対して、鋳型や鋳造模型として使いやすいように適宜の形状の修整変形が施されて用いられている。例えば、造型の型抜き性のために適宜の抜け勾配、角R、隅Rなどを付したり、押湯頂部の引け誘発のために押湯頂部に円錐穴やV溝などを設けたり、ウィリアムスコアを設けたり、あるいは製品部との関係から押湯形状の一部を削ったり、余肉を付けたり等する。また、場合によっては、押湯の基本形状の上に溶湯ヘッド(溶湯圧)を付与するために押湯の直径や幅よりも小さい直径や幅の棒状の部分を追加して設けることもある。しかし、押湯の基本形状はその形から明らかである。したがって、基本形状が球体の押湯であっても、これらの適宜の修整変形を施して用いられる。一方、“湯口”とは、専用の押湯を設けずに、湯口を押湯としても用いることを表す。なお、一般的な湯口は、逆円錐台形状の湯口カップ、及びその湯口カップと湯口底の間に位置する湯口棒からなる。ここでは、“球体”が選択されている。
【0055】
「製品数」は、一つの押湯に対する製品部の数である。ここでは、“2”が設定されている。
【0056】
「ネック比」には、対象製品とは異なる或る鋳物製品(以下、基準製品という。)に設けられるネック部のモジュラスと該基準製品のモジュラスとの比率(基準製品に設けられるネック部のモジュラス/基準製品のモジュラス)であって、経験則上の値を設定する。基準製品は、押湯やネック部や湯道を含まない製品部だけのものである。この基準製品は、試験製品であったり、生産実績のある実製品であったりする。また、ここにいうモジュラスとは、特定比率の一例であり、体積/表面積で表される比率である(以下においても同じ。)。この「ネック比」では、0.5以上0.6以下の数値範囲内で0.01間隔で設定可能である。ここでは、“0.55”が設定されている。
【0057】
「押湯比」には、基準製品に設けられる押湯のモジュラスと該基準製品のモジュラスとの比率(基準製品に設けられる押湯のモジュラス/基準製品のモジュラス)であって、経験則上の値を設定する。ここでは、「押湯比」に“1.2”が設定されている。なお、この「押湯比」では、初期値を予め定めておき、自動的にその初期値が設定されるようにしてもよく、さらには、その初期値を変更可能にしてもよい。
【0058】
「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201の下には、「(2)製品モデル計算」領域1202が用意されている。この「(2)製品モデル計算」領域1202の一番上には、「製品STLパス」を指定する欄が用意されている。この欄の横には「参照」ボタン120cが配置されており、この「参照」ボタン120cにカーソルを合わせてクリックすると、所望の製品データ、すなわち対象製品となる製品部の製品データが記録されているハードウェア(例えば、ハードディスク1031や記録メディア挿入口1081に挿入された記録カード910等)上のパスを指定することができる。この例では、製品データは3次元CADデータであり、対象製品の形状を表すデータになる。なお、製品データは2次元CADデータであってもよい。「参照」ボタン120cの右横には、「STL表示」ボタン120dが配置されている。この「STL表示」ボタン120dにカーソルを合わせてクリックすると、別ウィンドゥが開き、その別ウィンドゥに、指定されたパスに記録されている製品データの製品形状が3次元あるいは2次元で表示され、製品形状を目視で確認することができる。また、対象製品の材料を選択する欄として「材料」の欄が設けられており、この欄をクリックすると、プルダウンメニューが表示され、複数の材料記号が表示される。ここでは“FCD450”が選択されている。さらに、「(2)製品モデル計算」領域1202の一番下には、「押湯影響範囲」を入力する欄が、押湯グループごとに設けられている。
【0059】
図7は、押湯の影響範囲について説明するための図である。この
図7では、図の左右方向をX軸方向とし、上下方向をY軸方向とし、紙面に対して垂直方向をZ軸方向とする。
【0060】
ここでは、対象製品に相当する1つの製品部C4に、2つの押湯を設ける設計である。押湯グループ1の球体の押湯(以下、第1押湯C31という。)は、図の左横に設けられており、ネック部(以下、第1ネック部C51という。)を介して製品部C4に接続している。この第1ネック部C51の製品部C4への接続箇所が、第1押湯C31による押湯効果の開始位置(以下、開始位置1という。)になる。この開始位置1から、第1押湯C31による押湯効果をどこまで及ばせればよいかを検討し、押湯効果の終了位置(以下、終了位置1という。)を設定する。開始位置1にしても終了位置1にしても、X座標、Y座標、Z座標の各値を入力することで位置設定が行われる。
図7に示す押湯グループ1では、終了位置1としての1点が入力されると、その終了位置1から開始位置1までを結ぶ最短距離の線分が決定され(図中の矢印a1参照)、その線分と直交する直線L1が、押湯影響範囲の外郭線になる。一方、押湯グループ2の球体の押湯(以下、第2押湯C32という。)は、図の右斜め下に設けられており、ネック部(以下、第2ネック部C52という。)を介して製品部C4に接続している。この第2ネック部C52の製品部C4への接続箇所が、第2押湯C32による押湯効果の開始位置、すなわち開始位置2になる。この開始位置2から、第2押湯C32による押湯効果をどこまで及ばせればよいかを検討し、押湯効果の終了位置(以下、終了位置2という。)を設定する。ここでも、X座標、Y座標、Z座標の各値をそれぞれ入力することで、開始位置2および終了位置2の設定が行われる。
図7に示す押湯グループ2でも、終了位置2としての1点が入力されると、その終了位置2から開始位置2までを結ぶ最短距離の線分が決定され(図中の矢印a2参照)、その線分と直交する直線L2が、押湯影響範囲の外郭線になる。
【0061】
例えば、対象製品に複数箇所に大きさの異なる厚肉部があり、これら複数箇所の厚肉部それぞれに一つずつ押湯を設ける必要があった場合に、複数箇所の厚肉部それぞれを押湯影響範囲として別個に指定することができ、厚肉部ごとに押湯設計を行うことができる。
【0062】
また、「押湯影響範囲」の開始位置および終了位置では、X座標、Y座標、Z座標のいずれの値の入力も行わず空白にすることもできる。そうした場合には、押湯効果は製品部C4の全範囲に及んでいる設定になる。
図5に示す「(2)製品モデル計算」領域1202における押湯グループ1の「押湯影響範囲」の開始位置および終了位置は空白のままである。
【0063】
図5に示す「(2)製品モデル計算」領域1202における各欄での設定や指定等を終え、「(2)製品モデル計算」領域1202に設けられた「(2)計算」ボタン120eにカーソルを合わせてクリックすると、
図2に示すCPU101が、指定されたパスに記録されている製品データを読み出す。この製品データを読み出すCPU101が、
図4に示す製品データ取得部1011の一例に相当する。
【0064】
図8は、
図5に示す設定入力画面に入力等された各種の値を用いた演算結果が出力された結果出力画面を示す図である。
図5に示す設定入力画面や、この
図8に示す結果出力画面は、表示画面の最下部に表示されたシートタブSTi、SToにカーソルを合わせてクリックすることで、画面切替えが行われる。また、
図8に示す結果出力画面の上方には「設定画面に戻る」といった表示がなされ、この表示にカーソルを合わせてクリックすると、
図5に示す設定入力画面に戻る。
【0065】
図8に示す結果出力画面では、「湯口」の領域1215を除いて、押湯グループごとに演算結果が表示されている。一番上の「製品」の領域1211は、指定されたパスに記録されている製品データの製品についての演算結果であり、対象製品に関する結果表示になる。
【0066】
上述のごとく、
図5に示す「(2)製品モデル計算」領域1202における「押湯影響範囲」の開始位置および終了位置が空白の場合には、製品部の全体が対象になる。この場合には、CPU101は、読み出した製品データから製品部全体、すなわち対象製品全体の体積と表面積を算出する。算出した対象製品全体の体積の値は、
図8に示す結果出力画面の「製品」の領域1211における「体積」の欄に出力され、対象製品全体の表面積の値は、その「製品」の領域1211における「表面積」の欄に出力される。さらに、CPU101は、体積の値と表面積の値を用いて対象製品全体のモジュラス(対象製品全体モジュラス)を算出する。この対象製品全体のモジュラスを算出するCPU101が、
図4に示す製品特定比率算出部1013の一例に相当する。対象製品全体のモジュラスは、
図8に示す「製品」の領域1211における「モジュラス」の欄に表示される。加えて、CPU101は、製品データと材料に基づいて対象製品全体の重量も算出し、算出された重量は、
図8に示す「製品」の領域1211における「重量」の欄に出力される。
【0067】
一方、「押湯影響範囲」の開始位置および終了位置に値が入力されている場合には、開始位置の値および終了位置の値が範囲指定データの一例に相当し、製品部の全体ではなく一部が対象になる。CPU101は、入力された開始位置の値と終了位置の値から製品部における押湯影響範囲、すなわち対象製品における押湯影響範囲を算出し、押湯影響範囲を指定することになる。したがって、CPU101が、
図4に示す押湯影響部分指定部1012の一例に相当する。さらにCPU101は、指定した押湯影響範囲の体積を製品データから算出し、算出した値を、
図8に示す結果出力画面の「製品」の領域1211における「体積」の欄に出力し、指定した押湯影響範囲の表面積も製品データから算出し、算出した値を、
図8に示す結果出力画面の「製品」の領域1211における「表面積」の欄に出力する。加えて、CPU101は、体積の値と表面積の値を用いて、対象製品において指定した押湯影響範囲のモジュラス(対象製品部分モジュラス)を算出する。この押湯影響範囲のモジュラスを算出するCPU101が、
図4に示す押湯影響部分特定比率算出部1014の一例に相当する。押湯影響範囲のモジュラスは、
図8に示す「製品」の領域1211における「モジュラス」の欄に表示される。また、CPU101は、指定した押湯影響範囲の重量を、製品データと材料を用いて算出し、算出された重量は、
図8に示す「製品」の領域1211における「重量」の欄に出力される。
【0068】
なお、押湯影響範囲の指定の仕方は、ここで説明した仕方に限られない。例えば、製品形状を3次元あるいは2次元で画面表示し、表示された製品形状のうち押湯影響範囲に指定したい箇所をカーソルで囲むことで対象製品における押湯影響範囲の指定を行うことができるようにしてもよい。この仕方では、「STL表示」ボタン120dにカーソルを合わせてクリックすると別ウィンドゥに表示される製品形状の表示を利用することもできる。なお、この場合であっても、CPU101が、画面上でカーソルで囲まれた範囲に基づき、実際の対象製品における押湯影響範囲を算出し、押湯影響範囲を指定することになる。
【0069】
また、
図2に示すCPU101は、押湯グループごとに押湯に関する演算を行う。まず、「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201において入力した「押湯比」、および「製品」の領域1211における「モジュラス」の欄に算出された対象製品のモジュラス(対象製品全体モジュラスあるいは対象製品部分モジュラス)を用いて、対象製品に対する押湯のモジュラスを算出する。すなわち、“対象製品に対する押湯のモジュラス”=“対象製品のモジュラス”×「押湯比」の式が成り立ち、この式から、CPU101は、“対象製品に対する押湯のモジュラス”(対象製品用押湯モジュラス)を算出する。“対象製品に対する押湯のモジュラス”を算出するCPU101が、
図4に示す押湯特定比率算出部1015の一例に相当する。
図4に示す鋳造方案設計支援装置1および
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20は、クボリノフの法則における体積と表面積との比率であるモジュラスを利用して、対象製品のモジュラスの値を製品データから正確に算出した上で、上記式から“対象製品に対する押湯のモジュラス”を算出するため、「押湯比」という経験則上の値を用いながらも、鋳造・凝固現象を正確に理解して開発された鋳造方案設計支援ツールといえる。言い換えれば、
図4に示す鋳造方案設計支援装置1および
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20は、経験則も活かしながらも、客観的なモジュラスを用いて鋳造方案の設計を支援するツールである。
【0070】
こうして算出された“対象製品に対する押湯のモジュラス”の値は、
図8に示す「押湯」の領域1214における「算出モジュラス」の欄に出力される。さらに、“対象製品に対する押湯のモジュラス”は、体積/表面積であり、「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201において押湯種類を“球体”とした場合には、この体積/表面積を用いて、球体の押湯の直径を算出することができる。「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201において選択した押湯種類の情報が、押湯基本形状情報に相当する。CPU101は、押湯の直径を算出し、算出した値を、
図8に示す「押湯」の領域1214における「直径」の欄に出力する。押湯の直径を算出し出力するCPU101が、
図4に示す押湯情報出力部1017の一例に相当し、算出された押湯の直径の値が押湯情報の一例に相当する。
【0071】
また、CPU101は、「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201において選択した材料と、算出した直径から、押湯の重量も算出し、算出された重量は、
図8に示す「押湯」の領域1214における「重量」の欄に出力される。
【0072】
なお、押湯種類を“湯口”とした場合であっても、湯口カップと湯口棒の比率が定められ、逆円錐台形状の湯口カップの形状が、相似形となるように統一されていれば、押湯のモジュラスである体積/表面積を用いて、逆円錐台形状の湯口カップの、大きい方(受け口側、すなわち入口側)の直径と、小さい方(湯道につながる出口側)の直径と、高さを算出することができる。
【0073】
また、押湯種類は、球体と湯口に限られず、様々な基本形状のものであってもよい。例えば、真球以外の球体(楕円体等)や、円柱体であってもよい。ここにいう円柱体は、抜け勾配が設けられた形状であってもよい。また、球体を半分にした間に円柱体を高さ方向から挟み込んだ基本形状のものであってもよい。すなわち、湯口における受け口側の第1半球部、第1半球部とは反対側の第2半球部、および第1半球部と第2半球部の間に設けられた円柱部を有するものであってもよい。さらには、円柱体や円柱部は、高さ方向に直交する方向に沿った断面形状が真円の形状のものに限られない。なお、押湯の基本形状が相似形で統一されていれば、押湯のモジュラスである体積/表面積を利用して、押湯の直径であったり高さ等の寸法まで算出できる場合がある。
【0074】
図5に示す設定入力画面では、「(2)製品モデル計算」領域1202の下に、「(3)製品推定計算(凝固or鋳込み)」領域1203が用意されている。この「(3)製品推定計算(凝固or鋳込み)」領域1203の一番上には、「計算方法」を選択する欄が設けられており、この欄をクリックすると、プルダウンメニューが表示され、クボリノフとディタートとのうちのいずれか一方を選択することができる。「設定値」の欄については後述し、「材料」の欄には、「製品モデル計算」領域1220で選択した対象製品の材料が自動的に入力される。また、その下の「密度」、「比熱」、「熱伝導率」、および「クボリノフ定数」の各データは、材料に対応したデータが、自動的に入力される。また、その右横には、H.W.Dietertの計算式における、肉厚の程度によって決められる「ディタート定数」が示されている。これらの「密度」や「クボリノフ定数」や「ディタート定数」等は、
図2に示すハードディスク1031に予め記録されている。「設定値」の欄には、クボリノフを選択した場合には、「クボリノフ定数」に表示されている定数を入力し、ディタートを選択した場合には、表示されている「ディタート定数」の中から、対象製品の肉厚に応じて選択した「ディタート定数」を入力する。ここでは、「ディタート」が選択され、肉厚が8.0mmより厚い場合のディタート定数である「2.24」が設定値に入力されている。
【0075】
クボリノフを選択し、「(3)製品推定計算(凝固or鋳込み)」領域1203に設けられた「(3)計算」ボタン120fにカーソルを合わせてクリックすると、
図2に示すCPU101が、クボリノフの法則に従い、対象製品のモジュラスを二乗した値にクボリノフ定数を乗じることで、対象製品の凝固時間(秒)を算出し、算出された凝固時間は、
図8に示す「製品推定時間(凝固or鋳込み)」の領域1212に出力される。一方、ディタートを選択し、「(3)計算」ボタン120fにカーソルを合わせてクリックすると、CPU101が、H.W.Dietertの計算式に従い、対象製品の重量(kg)の平方根に、ディタート定数を乗じて鋳込時間(秒)を算出し、算出された鋳込み時間は、
図8に示す「製品推定時間(凝固or鋳込み)」の領域1212に出力される。
【0076】
図5に示す設定入力画面では、「(3)製品推定計算(凝固or鋳込み)」領域1203の下に、「(4)ネック計算」領域1204が用意されており、左端には、ネック部の解説図が示されている。この「(4)ネック計算」領域1204では、押湯につながるネック部に関する各種の値を、押湯グループごとに入力する。各種の値としては、ネック部の長さを指定する「長さ」、ネック部の縦横比を指定する「高さ比率」および「幅比率」が用意されている。
【0077】
「(4)ネック計算」領域1204における「長さ」の欄、「高さ比率」の欄、および「幅比率」の欄への入力を終え、「(4)ネック計算」領域1204に設けられた「(4)計算」ボタン120gにカーソルを合わせてクリックすると、
図2に示すCPU101が、各欄に入力された値に基づいて、押湯グループごとにネック部に関する演算を行う。まず、「(1)押湯数・モジュラス」の設定領域1201において入力した「ネック比」、および「製品」の領域1211における「モジュラス」の欄に算出された対象製品のモジュラス(対象製品全体モジュラスあるいは対象製品部分モジュラス)を用いて、対象製品に接続するネック部のモジュラスを算出する。すなわち、“対象製品に接続するネック部のモジュラス”=“対象製品のモジュラス”×「ネック比」の式が成り立ち、この式から、CPU101は、“対象製品に接続するネック部のモジュラス”(対象製品用ネック部モジュラス)を算出する。“対象製品に接続するネック部のモジュラス”を算出するCPU101が、
図4に示すネック部特定比率算出部1016の一例に相当する。
図4に示す鋳造方案設計支援装置1および
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20は、クボリノフの法則における体積と表面積との比率であるモジュラスを利用して、対象製品のモジュラスの値を製品データから正確に算出した上で、上記式から“対象製品に接続するネック部のモジュラス”も算出するため、ここでも、「ネック比」という経験則上の値を用いながらも、鋳造・凝固現象を正確に理解して開発された鋳造方案設計支援ツールといえる。
【0078】
こうして算出された“対象製品に接続するネック部のモジュラス”の値は、
図8に示す「ネック」の領域1213における「算出モジュラス」の欄に出力される。さらに、“対象製品に接続するネック部のモジュラス”は、体積/表面積であることから、CPU101は、この体積/表面積を用いて、「(4)ネック計算」領域1204において設定した長さ、高さ比率、および幅比率から、対象製品に接続するネック部の幅、高さ、重量を算出し、これらの値を、
図8に示す「ネック」の領域1213における各欄に出力する。「(4)ネック計算」領域1204において設定した高さ比率および幅比率が、ネック部基本形状情報に相当する。また、対象製品に接続するネック部の幅および高さを算出し出力するCPU101が、
図4に示すネック部情報出力部1018の一例に相当し、算出された、ネック部の幅および高さの各値がネック部情報の一例に相当する。
【0079】
図5に示す設定入力画面では、「(4)ネック計算」領域1204の下に、「(5)湯口計算」領域1205が用意されており、左端には、湯口の解説図が示されている。この「(5)湯口計算」領域1205の一番上には、「計算方法」を選択する欄が設けられており、この欄をクリックすると、プルダウンメニューが表示され、STL計算と寸法入力計算とのうちのいずれか一方を選択することができる。ここでは、STL計算が選択されており、その下の「湯口STLパス」を指定する欄以外は、グレーアウトしており入力不能である。一方、寸法入力計算を選択すると、「湯口STLパス」を指定する欄がグレーアウトして入力不能になり、湯口の直径を入力する「直径」の欄と、湯口の高さを入力する「高さ」の欄が入力可能になる。これら「直径」の欄と「高さ」の欄には、値を直接入力する。「湯口STLパス」を指定する欄の右横には、「参照」ボタン120hが設けられており、この「参照」ボタン120hにカーソルを合わせてクリックすると、所望の湯口データが記録されているハードウェア(例えば、ハードディスク1031や記録メディア挿入口1081に挿入された記録カード910等)上のパスを指定することができる。この例では、湯口データは3次元CADデータに対応しており、湯口の形状を表すデータになる。
【0080】
STL計算を選択し、「(5)湯口計算」領域1205に設けられた「(5)計算」ボタン120iにカーソルを合わせてクリックすると、
図2に示すCPU101が、湯口の体積、重量、直径、および高さを算出し、これらの値は、
図8に示す「湯口」の領域1215における各欄に出力される。一方、寸法入力計算を選択し、「(5)計算」ボタン120iにカーソルを合わせてクリックすると、CPU101が、湯口の体積と重量を算出し、これらの値は、
図8に示す「湯口」の領域1215における「体積」と「重量」の欄に出力される。
【0081】
図5に示す設定入力画面では、「(5)湯口計算」領域1205の下、すなわち一番下に「(6)湯道計算」領域1206が用意されている。この「(6)湯道計算」領域1206の一番上には、「上型高さ」を設定する欄が設けられており、有効湯口高さを計算する際に設定を行う。ただし、湯口計算の高さと同じため、
図8に示す「湯口」の領域1215における「高さ」の欄に値が出力されていれば、その値が自動で入力され、表示される。その下には、「鋳物見切り面上位高さ」の欄と「鋳物見切り面下位高さ」の欄が設けられており、鋳物見切り面の上位高さと下位高さそれぞれの設定を行う。また、「α-Runner」を入力する欄も設けられている。α-Runnerとは、湯口の断面積を求める計算式で必要になる流量係数Cdと呼ばれる補正係数である。さらに、押湯グループごとに、「湯道の幅」の欄と「湯道の長さ」の欄が設けられており、湯道の幅と長さをそれぞれ設定する。
【0082】
「(6)湯道計算」領域1206における各欄の設定を終え、「(6)湯道計算」領域1206に設けられた「(6)計算」ボタン120jにカーソルを合わせてクリックすると、
図8に示す「湯道」の領域1216における「湯口の有効高さ」の欄、「幅」の欄、および「長さ」の欄には、「(6)湯道計算」領域1206で設定された値が表示される。また、CPU101は、「(6)湯道計算」領域1206で設定された、鋳物見切り面の上位高さと下位高さと、α-Runnerの補正係数等を用いて、湯口の断面積を算出し、
図8に示す「湯道」の領域1216における「湯口の断面積」の欄に算出結果を出力する。また、CPU101は、湯口の断面積から高さも算出し、
図8に示す「湯道」の領域1216における「高さ」の欄に算出結果を出力する。さらに、CPU101は、湯道の高さ、幅、長さを用いて、湯口のモジュラス(体積/表面積)を算出し、
図8に示す「湯道」の領域1216における「モジュラス」の欄に算出結果を出力する。
【0083】
図8に示す結果出力画面の一番下には、「結果考察」ボタン120lが用意されており、この「結果考察」ボタン120lにカーソルを合わせてクリックすると、表示画面全体が別画面である結果考察画面に切り替わる。結果考察画面では、結果を考察し、鋳造方案修正前後での思考を記録し、履歴データとして管理番号を付して登録する。履歴データとして登録しておくことで、過去の修正履歴を後から参照することができる。この履歴データは、上述のごとく、
図5に示す設定入力画面の上部に用意された、「履歴読込No」の欄に管理番号を入力し、「履歴読込」のボタン120aにカーソルを合わせてクリックすることで読み出すことができる。
【0084】
なお、
図4に示す鋳造方案設計支援装置1および
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20では、対象製品(製品部)の凝固時間や鋳込時間を算出可能であるが、製品部の他、湯口、湯道、押湯、ネック部を含む鋳物全体の凝固時間や鋳込時間も算出可能としてもよい。また、湯道を除いた、湯口、押湯、ネック部、および製品部の凝固時間や鋳込時間も算出可能としてもよい。
【0085】
さらに、“対象製品に対する押湯のモジュラス”を算出する際に、“対象製品に対する押湯のモジュラス”=対象製品のモジュラス×「製品比」×「押湯比」といったように、「製品比」を用いてもよい。また、“対象製品に接続するネック部のモジュラス”を算出する際にも同様に、“対象製品に接続するネック部のモジュラス”=対象製品のモジュラス×「製品比」×「ネック比」といったように、「製品比」を用いてもよい。ここにいう「製品比」とは、多数個込めの場合等に対象製品のモジュラスを調整するためのものであり、経験則による値である。例えば、一つの製品部に一つの押湯を用いる場合よりも、複数の製品部に一つの押湯を用いる場合の方が、押湯を大きくする必要があるといった経験則がある。「製品比」は、通常は“1”の値としておいて、多数個込めの場合等に、「押湯比」の値は変えずに「製品比」の値を変えて、調整することができるようにしてもよい。
【0086】
以上説明した、
図4に示す鋳造方案設計支援装置1および
図3に示す鋳造方案設計支援プログラム20によって支援されて設計される鋳造方案は、砂型における鋳造方案であってもよいし金型における鋳造方案であってもよい。また、鋳鉄の鋳造方案であってもよいしアルミニウム合金等の非鉄金属の鋳造方案であってもよい。さらに、注湯方向と鋳型における見切り面の方向との関係が直角な関係にある横込め鋳造の鋳造方案であってもよいし、その関係が平行な関係にある縦込め鋳造の鋳造方案であってもよい。
【0087】
また、本実施形態では、鋳造方案設計支援装置として
図1に示すノートパソコンを用いて説明したが、
図3に示す鋳造方案設計支援プログラムをサーバにインストールして、クラウド上で運用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 鋳造方案設計支援装置
10 ノートパソコン
101 CPU
120 液晶表示装置
121 表示画面
1031 ハードディスク
13 キーボード
14 ポインティングデバイス
1011 製品データ取得部
1012 押湯影響部分指定部
1013 製品特定比率算出部
1014 押湯影響部分特定比率算出部
1015 押湯特定比率算出部
1016 ネック部特定比率算出部
1017 押湯情報出力部
1018 ネック部情報出力部
20 鋳造方案設計支援プログラム
21 製品データ取得部
22 押湯影響部分指定部
23 製品特定比率算出部
24 押湯影響部分特定比率算出部
25 押湯特定比率算出部
26 ネック部特定比率算出部
27 押湯情報出力部
28 ネック部情報出力部
C3 押湯
C31 第1押湯
C32 第2押湯
C4 製品部
C5 ネック部
C51 第1ネック部
C52 第2ネック部