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特許7199081生産管理装置、生産管理システム、および生産管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】生産管理装置、生産管理システム、および生産管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221223BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20221223BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018152357
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020027470
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517012534
【氏名又は名称】i Smart Technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今井 武晃
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-215921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0079979(US,A1)
【文献】特開2018-124799(JP,A)
【文献】特開2011-018263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備を有する製造ラインの生産状況を管理するための生産管理装置であって、
前記生産設備に取り付けられ、前記生産設備から製品が繰り出される際に発生する前記生産設備の動作に応じて検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号が出力される時間間隔を、製品が繰り出されるサイクルタイムとして取得するサイクルタイム取得部と、
前記サイクルタイムを用いて前記生産状況を示す情報を生成する情報生成部と、を備え、
前記情報生成部は、前記取得されるサイクルタイムの大きさと、各前記大きさのサイクルタイムが取得される確率密度と、の関係を用いて、前記生産設備の生産能力に応じて定まる前記サイクルタイムの最小値を算出し、
前記関係から求められる最頻値と前記最小値とに応じて、前記生産状況を示す情報として生産効率を評価するための第1の評価指標を算出する、
生産管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生産管理装置であって、
前記情報生成部は、前記サイクルタイムの大きさと前記確率密度との関係を示す曲線に近似する近似曲線を算出し、
前記最頻値より小さい値のうち前記近似曲線において前記確率密度が0となる値の最大値を前記最小値として算出する、生産管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生産管理装置であって、
前記近似曲線は、極値分布における確率密度関数を用いて算出される、生産管理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の生産管理装置であって、
前記情報生成部は、さらに、前記近似曲線を用いて、取得されるサイクルタイムが前記サイクルタイム以下となる確率を、前記生産状況を評価するための第2の評価指標として算出する、生産管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記情報生成部は、前記最小値と前記サイクルタイムの最頻値との比較の結果に応じて、前記第1の評価指標を算出する、生産管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の生産管理装置であって、
前記情報生成部は、前記第1の評価指標として、前記最頻値と前記最小値との差を前記最頻値で除した値であるやる気指数を算出する、生産管理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記情報生成部は、さらに、前記サイクルタイムの大きさの平均値と、最頻値と中央値とのいずれか一方と、の比較の結果に応じて、前記生産状況として前記生産設備の停止状況を評価するための第3の評価指標を算出する、生産管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の生産管理装置であって、
前記情報生成部は、前記平均値と、前記最頻値と前記中央値とのいずれか一方と、の差を前記平均値で除した値である停止指数を前記第3の評価指標として算出する、生産管理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記生産管理装置は、複数の製造ラインの前記生産状況を管理し、
前記情報生成部は、前記複数の製造ラインのそれぞれについて、前記生産状況を評価するための評価指標として、前記サイクルタイムの標準偏差を前記サイクルタイムの平均値で除した値である変動係数を算出する、生産管理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記生産管理装置における情報伝達の経路の少なくとも一部には、インターネットを介した経路が含まれる、生産管理装置。
【請求項11】
生産設備を有する製造ラインの生産状況を管理するための生産管理システムであって、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の生産管理装置と、
前記生産管理装置と通信可能に接続され、前記生産状況に関する情報を利用者に提供する情報提供装置と、
を備える、生産管理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の生産管理システムであって、
前記生産管理装置と前記情報提供装置は、無線通信を介して接続されている、生産管理システム。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の生産管理システムであって、
前記生産管理装置と前記情報提供装置との間の情報伝達には、インターネットが介在している、生産管理システム。
【請求項14】
生産設備を有する製造ラインの生産状況を管理する生産管理方法であって、
前記生産設備に取り付けられるセンサを用いて、前記生産設備から製品が繰り出される際に発生する前記生産設備の動作に応じて検出信号を出力する検出工程と、
前記検出信号が出力される時間間隔を、製品が繰り出されるサイクルタイムとして取得するサイクルタイム取得工程と、
前記サイクルタイムを用いて生産状況を示す情報を生成する生成工程と、を備え、
前記生成工程では、前記取得されるサイクルタイムの大きさと、前記各大きさの確率密度との関係を用いて、前記生産設備の生産能力に応じて定まる前記サイクルタイムの最小値が算出され、
前記関係から求められる最頻値と前記最小値とに応じて、前記生産状況を示す情報として生産効率を評価するための第1の評価指標が算出される、生産管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産管理装置、生産管理システム、および生産管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品の作業手順と製造ラインの属性から製造状況を予測する生産管理支援装置が知られている(例えば、特許文献1)。この生産管理支援装置では、製造状況を予測のために作業時間の確率分布における平均値と標準偏差とが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009―245043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術における平均値や標準偏差を用いた評価方法では、正規分布と比べて非対称な分布の確率分布を評価することが困難である。これは、平均値や標準偏差を用いて作業時間の確率分布を評価する際には、作業時間の確率分布を正規分布に当てはめているためである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、生産設備を有する製造ラインの生産状況を管理するための生産管理装置が提供される。この生産管理装置は、前記生産設備に取り付けられ、前記生産設備から製品が繰り出される際に発生する前記生産設備の動作に応じて検出信号を出力する検出部と、前記検出信号が出力される時間間隔を、製品が繰り出されるサイクルタイムとして取得するサイクルタイム取得部と、前記サイクルタイムを用いて前記生産状況を示す情報を生成する情報生成部と、を備え、前記情報生成部は、前記取得されるサイクルタイムの大きさと、各前記大きさのサイクルタイムが取得される確率密度と、の関係を用いて、前記生産設備の前記サイクルタイムの最小値を算出し、前記関係と前記最小値とに応じて、前記生産状況を示す情報として生産効率を評価するための第1の評価指標を算出する。
この形態の生産管理装置によれば、情報生成部は、取得されるサイクルタイムの大きさと、各大きさのサイクルタイムが取得される確率密度と、の関係を用いて、生産設備のサイクルタイムの最小値を算出し、関係と最小値とに応じて、生産状況を示す情報として生産効率を評価するための第1の評価指標を算出する。このため、生産管理装置の利用者は、算出したサイクルタイムの最小値を用いて算出された第1の評価指標を用いて製造ラインの生産状況を管理できる。サイクルタイムの最小値は、サイクルタイムが取得される確率分布が非対称な分布であるか対象な分布であるかに関わらず、算出可能である。したがって、サイクルタイムが取得される確率分布が非対称な分布であるか対称な分布であるかに関わらず、この生産管理装置の利用者は、生産管理装置を用いて製造ラインの生産状況を管理できる。
(2)上記形態において、前記情報生成部は、前記サイクルタイムの大きさと前記確率密度との関係を示す曲線に近似する近似曲線を算出し、最頻値より小さい値のうち前記近似曲線において前記確率密度が0となる値の最大値を前記最小値として算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、サイクルタイムの大きさと確率密度との関係を曲線に近似するため、サイクルタイムの大きさと確率密度との関係の解析が容易になる。
(3)上記形態において、前記近似曲線は、極値分布における確率密度関数を用いて算出されてもよい。この形態の生産管理装置によれば、サイクルタイムの大きさの確率分布が非対称な分布である場合であっても、近似曲線を作成することができる。
(4)上記形態において、前記情報生成部は、さらに、前記近似曲線を用いて、取得されるサイクルタイムが前記サイクルタイム以下となる確率を、前記生産状況を評価するための第2の評価指標として算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、取得されるサイクルタイムを客観的な基準を用いて評価することができる。
(5)上記形態において、前前記情報生成部は、前記最小値と前記サイクルタイムの最頻値との比較の結果に応じて、前記第1の評価指標を算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、生産効率を評価するための指標としてサイクルタイムの最小値と最頻値との比較の結果を用いることができる。
(6)上記形態において、前記情報生成部は、前記第1の評価指標として、前記最頻値と前記最小値との差を前記最頻値で除した値であるやる気指数を算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、生産効率を評価するための指標としてやる気指数を用いることができる。
(7)上記形態において、前記情報生成部は、さらに、前記サイクルタイムの大きさの平均値と、最頻値と中央値とのいずれか一方と、の比較の結果に応じて、前記生産状況として前記生産設備の停止状況を評価するための第3の評価指標を算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、停止状況を評価するための指標として、サイクルタイムの大きさの平均値と、最頻値と中央値とのいずれか一方と、の比較の結果を用いることができる。
(8)上記形態において、前記情報生成部は、前記平均値と、前記最頻値と前記中央値とのいずれか一方と、の差を前記平均値で除した値である停止指数を前記第3の評価指標として算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、停止状態を評価するための指標として停止指数を用いることができる。
(9)上記形態において、前記生産管理装置は、複数の製造ラインの前記生産状況を管理し、前記情報生成部は、前記複数の製造ラインのそれぞれについて、前記生産状況を評価するための評価指標として、前記サイクルタイムの標準偏差を前記サイクルタイムの平均値で除した値である変動係数を算出してもよい。この形態の生産管理装置によれば、変動係数はサイクルタイムの平均値によって正規化されているため、複数の製造ライン間においてサイクルタイムの平均値の異なる場合であっても、複数の製造ライン間の生産状況の比較が容易になる。
(10)上記形態において、前記生産管理装置における情報伝達の経路の少なくとも一部には、インターネットを介した経路が含まれてもよい。この形態の生産管理装置によれば、インターネットを利用した生産管理が可能である。
(11)本開示の他の形態によれば、生産設備を有する製造ラインの生産状況を管理するための生産管理システムが提供される。この生産管理システムは、上記形態の生産管理装置と、前記生産管理装置と通信可能に接続され、前記生産状況に関する情報を利用者に提供する情報提供装置と、を備える。
この形態の生産管理システムによれば、情報生成部は、取得されるサイクルタイムの大きさと、各大きさのサイクルタイムが取得される確率密度との関係を用いて、生産設備の前記サイクルタイムの最小値を算出するので、算出したサイクルタイムの最小値を用いて、製造ラインの生産状況を管理できる。また、生産状況に関する情報を利用者に提供する情報提供装置を備えるので、生産管理システムの利用者は、生産管理装置から離れた位置であっても、生産状況を確認することができる。
(12)上記形態において、前記生産管理装置と前記情報提供装置は、無線通信を介して接続されていてもよい。この形態の生産管理システムによれば、有線による通信を用いる場合に比べて、生産管理装置と情報提供装置との位置関係の変更が容易である。
(13)上記形態において、前記生産管理装置と前記情報提供装置との間の情報伝達には、インターネットが介在していてもよい。この形態の生産管理システムによれば、インターネットを利用した生産管理が可能である。
本開示は、生産管理装置、生産管理システム以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、生産管理方法や、生産管理システムを備えた製造ラインや、生産管理プログラム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る生産管理システムを備えた製造ラインの概略図。
図2】第1実施形態に係る生産管理システムにおける情報伝達を示すブロック図。
図3】第1実施形態に係る生産管理装置の構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態に係る生産管理装置の検出部が設置されている様子を示す模式図。
図5】第1実施形態に係る生産管理装置の制御部において実行される設備限界値の算出処理を示すフローチャート。
図6】第1実施形態において算出される近似曲線の一例を示す図。
図7】第2実施形態に係る生産管理システムを備えた製造ラインの概略図。
図8】第2実施形態に係る生産管理装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態に係る生産管理システム100を備えた製造ラインL1、L2の概略図である。図2は、第1実施形態に係る生産管理システム100における情報伝達を示すブロック図である。生産管理システム100は、インターネットINTを利用するInternet of Things(IoT)技術によって生産管理を行なうシステムである。生産管理システム100は、それぞれ別の場所である、第1エリアAr1と、第2エリアAr2と、第3エリアAr3と、第4エリアAr4と、での情報共有を可能にする。第1エリアAr1は、製造ラインL1、L2を備えた工場である。第2エリアAr2および第3エリアAr3は、第1エリアAr1である工場の敷地外である。第4エリアAr4は、第1エリアAr1とは別の工場である。生産管理システム100におけるインターネットINTへの接続は、通信装置70が利用される。通信装置70は、例えば、無線LAN通信装置や、無線中継機、アクセスポイント、無線基地局、である。
【0009】
製造ラインL1、L2は、搬送機構31と、複数の搬送機構31に沿って配置された複数の生産設備30a~30dと、を有する。製造ラインL1、L2において、製品は、複数の製造工程を経て製造される。なお、製品は、製造ラインL1、L2で製造される物であり、完成した状態だけではなく、加工途中の状態も含む。製品は、加工対象や検査対象とも記載される。搬送機構31は、製品を搬送するための機構であり、例えば、ベルトコンベアや無人搬送車等の自動搬送装置や、フォークリフト等を用いた有人による搬送手段、である。本実施形態において、搬送機構31は、ベルトコンベアである。生産設備30a~30dは、例えば、製品の製造工程における加工を行なう加工設備や、加工設備による加工品の品質を検査する検査設備である。生産設備30a~30dとしての加工設備は、例えば、金属加工機や、溶接機、樹脂成形機、である。生産設備30a~30dとしての検査設備は、例えば、画像解析装置や強度検査装置である。各生産設備30a~30dには、生産処理や、加工処理、検査処理を実行するためのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)およびPLCに接続されているセンサが備えられている。PLCに接続されたセンサとは、例えば、生産設備30a~30dあるいは搬送機構31に予め組み込まれている生産設備30a~30dの状態を検出するためのセンサである。本実施形態において、生産設備30a~30dは、PLCを備えているが、PLCとは別の手段によって制御されている場合には、PLCを備えていなくてもよい。生産設備30a~30dが用いられる製造工程の一部には、作業者による操作や作業が含まれていてもよい。また、本実施形態において生産設備30a~30dは、装置もしくは機器であるが、作業者による作業、例えば、加工や目視による点検、を行なう場所であってもよい。本実施形態において、生産設備30a~30dおよび製造工程は、複数であるが、単数であってもよい。
【0010】
生産管理システム100は、生産管理装置20と、生産状況に関する情報を利用者に提供する情報提供装置である複数の表示装置601~608と、を備える。生産管理システム100は、製造ラインL1、L2の生産状況を管理する。
【0011】
生産管理装置20は、複数の検出部10a~10dと、本体部202と、管理部40と、を備える。生産管理装置20は、製造ラインL1、L2の生産管理を行なう。検出部10a~10dは、生産設備30a~30dに取り付けられている。ここで、「生産設備30a~30dに取り付けられている」とは、それぞれの検出部10a~10dに対応する生産設備30a~30dの状態を検出できるように配置されていることを意味し、直接取り付けられている場合に限定されない。検出部10a~10dは、生産設備30a~30dが製造ラインL1、L2に設置された後に取り付けられている。検出部10a~10dは、本体部202と無線通信を介して接続され、検出結果である検出信号を本体部202へと出力する。本体部202は、検出部10a~10dが出力した検出信号の計数と、検出信号が出力される時間間隔の計時と、を行う。また、本体部202は、通信装置70を介して、インターネットINTに接続されたサーバ上に設けられた管理部40へと計数の結果と計時の結果を送信する。本体部202と管理部40との間の情報伝達には、インターネットINTが介在している。管理部40は、サイクルタイムや検出信号を用いて生産管理情報を生成する。生成された生産管理情報は、表示装置601~608へと送信される。管理部40から第1エリアAr1に配置された表示装置601~604への生産管理情報の送信は、通信装置70および本体部202を介して行なわれる。生産管理装置20の管理部40と表示装置601~608との間の情報伝達には、インターネットINTが介在している。管理部40から第2から第4エリアAr2~Ar4に備えられた表示装置605~608への生産管理情報の送信は、通信装置70を介して実行される。ここで、生産管理情報とは、製造ラインL1、L2の生産状況を示す情報である。生産状況は、例えば、製造ラインL1、L2の生産効率と停止状況と稼働状況とを含む。生産管理情報は、例えば、製品が繰り出されるサイクルタイムと、生産設備30a~30dの可動率と、生産設備30a~30dの運転および停止時間と、後述する生産状況の各種評価指標と、を含む情報である。なお、以下において、検出部10a~10dの共通の機能を説明する場合には、検出部10a~10dは、検出部10とも記載される。
【0012】
第1エリアAr1に配置された表示装置601~604は、製造ラインL1、L2において作業を行なう者に生産管理情報を提供する。表示装置601~604は、生産管理装置20の本体部202と通信可能に無線接続され、本体部202を介して送信される生産管理情報をディスプレイ等の情報表示部61に表示する。表示装置601、602は、利用者が携帯することが可能な通信端末であり、例えば、スマートフォンや、タブレット型PCや、スマートウォッチ、である。表示装置601、602の利用者は、作業を行なっている場所から移動することなく生産管理情報の提供を受けることができる。表示装置603、604は、設置場所に固定されるモニタ装置、例えば液晶モニタやデスクトップ型PCや電光掲示板、であって、製造ラインL1、L2における複数の作業者に生産管理情報を提供する装置である。表示装置603、604は、複数の利用者に生産管理情報を提供することができる。表示装置601~604は、生産管理装置20と無線接続されているため、有線接続されている場合と比べて、使用位置を変更する際の手間や制限が少ない。本実施形態において、表示装置601~604は、管理部40によって生成された生産管理情報を本体部202との無線通信を介して取得しているが、これに限定されない。例えば、表示装置601~604は、本体部202を介さずに通信装置70と接続され、通信装置70から送信される生産管理情報を直接受信することによって生産管理情報を取得してもよい。また、設置位置に固定して利用される表示装置603、604は、本体部202もしくは通信装置70と有線接続されていてもよい。
【0013】
第2エリアAr2に配置された表示装置605は、製造ラインL1、L2の生産状況を管理する者(管理者)に生産管理情報を提供する。第2エリアAr2は、製造ラインL1、L2から離れた場所であり、本体部202との無線接続が困難な場所である。表示装置605は、利用者が携帯することが可能な通信端末であり、例えば、スマートフォンや、タブレット型PCや、スマートウォッチ、である。表示装置605は、通信装置70と通信可能に無線接続され、通信装置70を介して管理部40が生成した生産管理情報を取得し、生産管理情報をディスプレイ等の情報表示部61に表示する。第2エリアAr2における通信装置70は、例えば、無線LANを用いたアクセスポイントや無線基地局である。表示装置605は、業務中に利用者が製造ラインL1、L2から離れた場所に移動する場合であっても生産管理情報を提供することができる。表示装置605の利用者は、製造ラインL1、L2の生産状況を直接得ることができない場合であっても、第1エリアAr1にいる製造ラインL1、L2の作業者に生産管理情報に応じた指示や製造ラインL1、L2で発生した異常への対応ができる。
【0014】
第3エリアAr3に配置された表示装置606は、製造ラインL1、L2を有する企業の責任者等の通常の業務において製造ラインL1、L2が配置された工場に訪れない者に生産管理情報を提供する。第3エリアAr3は、製造ラインL1、L2から離れた場所であり、本体部202との無線接続が困難な場所である。表示装置606は、通信装置70と通信可能に無線接続されている。表示装置606は、通信装置70を介して管理部40が生成した生産管理情報を取得し、取得した生産管理情報をディスプレイ等の情報表示部61に表示する。第3エリアAr3における通信装置70は、例えば、無線LANを用いたアクセスポイントや無線基地局である。表示装置606の利用者は、外出先や出張先であっても、生産管理情報を取得することが可能である。本実施形態において、表示装置606は、携帯可能な通信端末であるが、これに限定されない。例えば、利用者の通常業務において使用されるデスクトップ型PCの様に使用位置が固定された装置であってもよい。表示装置606として使用位置が固定された装置が採用されている場合には、通信装置70ではなく有線LANを介してインターネットINTに接続されていてもよい。
【0015】
第4エリアAr4に配置された表示装置607、608は、製造ラインL1、L2を有する工場とは別の工場において作業または業務を行なう者に製造ラインL1、L2についての生産管理情報を提供する。表示装置607、608は、通信装置70と通信可能に無線接続されている。表示装置607、608は、通信装置70を介して管理部40が生成した生産管理情報を取得し、取得した生産管理情報をディスプレイ等の情報表示部61に表示する。表示装置607、608は、第1エリアAr1と離れた場所である第4エリアAr4とでの、管理情報の共有を可能にする。このため、例えば、事業所間での連携を容易にできる。本実施形態において、第4エリアAr4に生産管理装置20の本体部202が設置されている場合には、表示装置607、608は、本体部202を介して管理部40が生成した生産管理情報を取得してもよい。
【0016】
本実施形態において、生産管理システム100は、8台の表示装置601~608を有しているが、これに限定されない。表示装置601~608は、9台以上であってもよく、また、7台以下であってもよい。例えば、表示装置601~608の数は、生産管理情報の提供を受ける者の人数や生産管理情報の提供が必要な場所の数に応じて適宜変更が可能である。また、表示装置601~608が使用される位置や環境に応じて、表示装置601~608に用いられる装置は、変更可能である。例えば、第1エリアAr1において、作業者が表示装置601、602を携帯する必要がない場合には、生産管理システム100は、設置位置に固定されるモニタ装置である表示装置603、604のみを備えていてもよい。また、表示装置601~608による生産管理情報の提供が不要である場合には、生産管理システム100は、表示装置601~608を備えていなくてもよい。
【0017】
図3は、第1実施形態に係る生産管理装置20の構成を示すブロック図である。以下では、生産管理装置20の詳細を説明する。
【0018】
検出部10は、センサ11と、コントロール部12と、送受信部13と、を有している。センサ11は、生産設備30a~30d(図1)に後付け可能なセンサであり、製造ラインL1、L2の生産状況として製品の繰り出しに応じて信号を出力するセンサである。センサ11による生産状況の検出は、直接的であってもよく、間接的であってもよい。生産状況を直接的に検出するセンサとは、例えば、生産設備30a~30dから繰り出される製品を検出するセンサである。生産状況を直接的に検出するセンサとして、例えば、生産設備30a~30dが製品を繰り出す際の扉の開閉を検出する加速度センサを用いることができる。生産状況を間接的に検出するセンサとは、例えば、製品の繰り出しに関する生産設備30a~30dの動作や、生産設備30a~30dによる加工対象の取り込みおよび排出に伴う動作、を検出するセンサである。生産状況を直接的に検出するセンサとして、例えば、生産設備30a~30dから繰り出される製品を検出する光センサを用いることができる。センサ11は、アナログセンサでもよくデジタルセンサであってもよい。
【0019】
センサ11には、検出する対象に応じて適切なセンサが採用される。例えば、生産設備30a~30dの動作を検出する場合には、生産設備30a~30dへの通電を検出する通電チェッカーや、生産設備30a~30dの可動部の動きを検出する加速度センサやジャイロセンサが用いられる。また、搬送機構31が製品が繰り出される場合にのみ動作する場合には、搬送機構31の動作を検出してもよい。作業者による作業を検出する場合には、作業者が使用する工具等の動作を検出する通電チェッカーを用いることができる。搬送機構31の動作の検出には、例えば、加速度センサや動作音を検出する音センサを用いることができる。また、搬送に決められた経路を移動するフォークリフト等の有人による搬送手段を検出する場合には、通過を検出するための光センサや搬送時の音を検出するための音センサを用いることができる。上述のように、検出部10は、生産設備30a~30dに後付けされている。このため、生産設備30a~30dや搬送機構31の変更に応じて柔軟な対応が可能である。また、生産状況に影響を与えやすい製造工程や、作業時間に変化が生じやすい自動化されていない工程についての動作を検出するように設計することができる。
【0020】
コントロール部12は、図示しない中央演算処理装置(CPU)と記憶装置とを備えている。コントロール部12は、例えば、センサ11から出力された信号に含まれるノイズの除去や、時間情報の生成を行なう。時間情報は、検出部10が生産状況を検出した時刻を示す情報であり、例えば、センサ11から出力された信号がコントロール部12に到達した時刻である。コントロール部12は、センサ11がアナログセンサである場合には、センサ11から出力された信号をアナログ信号からデジタル信号への変換を行なってもよい。アナログ信号からデジタル信号への変換には、例えば、二値化処理が用いられる。本実施形態において、コントロール部12は、二値化処理により、センサ11から出力された信号の電力値または電圧値が予め定めた値以上である場合に、検出信号を送受信部13へ出力する。
【0021】
送受信部13は、検出信号を生産管理装置20へと無線通信によって送信する。無線通信とは、例えば、IEEE802.11aの規格に準拠した2.4GHz帯域もしくは5GHz帯域を用いた無線通信や、1GHz未満の周波数帯域(916.5-927.5MHz)であるサブギガ帯域を用いた無線通信や、Bluetooth(登録商標)を用いた無線通信、である。
【0022】
本体部202は、中央演算処理部(CPU)21と、記憶部22と、送受信部23と、生産管理情報を表示するモニタである表示部24と、入力部25と、を有する。CPU21と記憶部22と送受信部23は、通信バスを介して相互に通信が可能となるように接続されている。
【0023】
CPU21は、例えば、検出信号が出力された時刻である時間情報を取得する取得部211や、出力される検出信号を計数する計数部212や、検出信号が出力される時間間隔を計時する計時部213、として機能する。CPU21は、時間情報と計時の結果と計数の結果とを管理部40および記憶部22へ出力する。また、CPU21は、送受信部23や表示部24を制御する。
【0024】
記憶部22は、読み込み及び書き込みが可能な記憶媒体であり、例えば、RAMや、ハードディスクドライブ(HDD)や、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることができる。本実施形態では、記憶部22として、HDDが採用されている。記憶部22は、例えば、前述したCPU21の各種機能を実現するための各種プログラムや、各種情報を生成する際に必要となる基準パルス数や、基準パルス間隔を格納している。また、記憶部22は、検出信号と時間情報と計時の結果と計数の結果とを一時的に記憶する。
【0025】
送受信部23は、検出部10から検出信号を受信し、管理部40から生産管理情報を受信する受信部として機能する。また、送受信部23は、記憶部22に記憶されている情報を表示装置601~604および管理部40に送信する送信部としても機能する。
【0026】
入力部25は、外部から生産管理装置20へ信号を入力するための入力装置、例えば、スウィッチやキーボードである。生産管理装置20の利用者は、入力部25を介して生産管理装置20の設定変更、例えば、生産管理装置20から情報を送信する表示装置601~608の変更、が可能である。また、利用者は、入力部25を介して管理部40への情報、例えば生産設備30a~30dの故障や保守についての情報、を入力が可能である。
【0027】
管理部40は、送受信部41と、制御部43と、記憶部42と、を有する。管理部40は、本体部202とは別の場所に備えられている。本実施形態において、管理部40は、本体部202とインターネットINTを介して接続されたサーバ上に設けられている。サーバとして、情報共有サービスを利用してもよい。
【0028】
送受信部41は、管理部40をインターネットINTに通信可能な状態で接続する。送受信部41は、本体部202から送信された検出信号およびサイクルタイムを受信し、記憶部42へと出力する。また、送受信部41は、本体部202および予め設定された表示装置605~608へ生産管理情報を送信する。
【0029】
制御部43は、中央演算処理装置(CPU)を有する。制御部43は、検出信号と時間情報と計時の結果と計数の結果と用いて生産管理情報を生成する情報生成部431として機能する。
【0030】
記憶部42は、読み込み及び書き込みが可能な記憶媒体であり、例えば、RAMや、ハードディスクドライブ(HDD)や、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることができる。記憶部22は、例えば、前述したCPU21の各種機能を実現するための各種プログラムを格納している。また、記憶部42は、本体部202から送信された情報や、制御部43によって生成された生産管理情報を記憶する。
【0031】
図4は、第1実施形態に係る生産管理装置20の検出部10aが設置されている様子を示す模式図である。検出部10aは、生産設備30aに備えられた開閉ドア301に取り付けられている。開閉ドア301は、加工が終了した製品が生産設備30aから排出される際に開く。センサ11は、生産設備30aの稼働状態を示す情報として製品PWが排出される際に開く開閉ドア301の動きを検出する。検出部10aは、センサ11として磁気センサを有している。磁気センサであるセンサ11による開閉ドア301の動きの検出は、センサ11と開閉時に位置が変動しないように設置された磁石112との距離の変化によるセンサによって検出される磁力の変化を用いて行なうことができる。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る生産管理装置20の制御部43において実行される設備限界値の算出処理を示すフローチャートである。この設備限界値の算出処理が開始されると、情報生成部431として機能する制御部43(以下において、単に情報生成部431とも記載する)は、サイクルタイムの大きさに応じて定められる階級と、各大きさのサイクルタイムが取得される頻度である度数との関係を示すヒストグラムを作成する(ステップS101)。
【0033】
ヒストグラムを作成した後に、情報生成部431は、ヒストグラムを実測されたサイクルタイムCTの確率分布に変換する(ステップS102)。次に、情報生成部431は、実測されたサイクルタイムCTの確率分布の近似曲線を算出する(ステップS103)。本実施形態において、近似曲線の算出には、例えば一般極値分布に対する確率密度関数のタイプ1(Gumbelタイプ)が用いられている。具体的には、以下に示す式(1)を用いて、近似曲線が算出される。
【数1】
本実施形態において、式(1)におけるχは、サイクルタイムCTである。また、μとθとγは、それぞれ位置パラメータとスケールパラメータと形状パラメータである。本実施形態では、近似曲線は、μとγとθとの3つのパラメータを未知数として、サイクルタイムCTの確率分布にフィッティング処理を行う。サイクルタイムCTの確率分布を曲線近似する場合には、実測された確率分布を直接用いる場合と比べて、データを簡略化することができる。このため、サイクルタイムCTの確率分布を用いた生産状況を示す各種情報の生成が容易になる。また、近似曲線の算出に一般極値分布に対する確率密度関数が用いられているため、情報生成部431は、実測された確率分布が非対称な分布であっても、近似曲線を作成することができる。
【0034】
近似曲線の算出(ステップS103)が完了した後に、情報生成部431は、サイクルタイムCTの最小値を設備限界値Limとして算出する(ステップS104)。情報生成部431は、設備限界値Limを算出した後に、設備限界値の算出処理を終了する。設備限界値Limとは、生産設備30a~30dの生産能力に応じて定まるサイクルタイムCTの最小値である。例えば、設備限界値Limは、故障等に影響されない理想環境における生産設備30a~30dの生産能力を評価するための指標として用いられる。本実施形態において、設備限界値Limは、最頻値Modeより小さい値のうち、近似曲線において確率が0となる値の最大値である。なお、確率が0となるとは、厳密に0となる場合だけでなく、0とみなすことが可能な値を含んでもよい。例えば、確率密度が最頻値Modeにおける確率密度の100分の1未満となった場合を、0とみなすことが可能な値として設定してもよい。なお、本実施形態において、最頻値Modeは、サイクルタイムCTのヒストグラムにおいて最も度数の高い階級の階級値である。
【0035】
図6は、第1実施形態において算出される近似曲線の一例を示す図である。図6では、近似曲線に加えて、実測された確率分布が破線によって示されている。図6において示された実測された確率分布は、サイクルタイムCTのヒストグラムにおける度数を確率値に変換することによって作成されている。また、図6では、設備限界値Limと、サイクルタイムの最頻値Modeと、サイクルタイムCTの平均値Aveと、が示されている。
【0036】
図6に示した例では、サイクルタイムCTのうち最頻値Modeより大きい側である最大値側では、停止等の異常や作業者の作業速度によって変動する。一方、サイクルタイムCTのうち最頻値Modeより小さい側である最小値側では、設備限界値Limが工程全体のサイクルタイムCTの最小値を規定するボトルネックとなっているため、最大値側と比べてばらつきが小さい。このため、図6に示す様に、実測されたサイクルタイムCTの確率分布は、正規分布の場合と比較して、非対称な形状をしている。
【0037】
本実施形態において、情報生成部431は、設備限界値Limと最頻値Modeとを比較することによって、生産状況を示す情報として生産効率を評価するための評価指標を算出する。ここで、生産効率を評価するための評価指標は、製造ラインL1、L2に備えられた生産設備30a~30dの現実の生産能力が生産能力の理論上の限界にどの程度近づけられているかを示す値である。例えば、本実施形態では、生産設備30a~30dにおける生産能力の理論上の限界を示す指標として、設備限界値Limが用いられる。また例えば、生産設備30a~30dにおける現実の生産能力の指標として、最頻値Modeが用いられる。
【0038】
具体的には、情報生成部431は、下記の式2を用いて、生産効率を評価するための評価指標として、やる気指数Imotを算出する。
【数2】
【0039】
やる気指数は、最頻値Modeの値が設備限界値Limに近いほど、小さくなる。ここで、最頻値Modeには、サイクルタイムCTにおいて恒常的に存在する遅延の影響が反映される。一方、最頻値Modeには、突発的に生じるサイクルタイムCTの遅延、例えば生産設備30a~30dの停止、の影響が反映されない。このため、最頻値Modeと設備限界値Limとの差は、生産設備30a~30dの生産能力以外の要因によるサイクルタイムCTの遅延が大きい場合に、大きくなる。本実施形態において、やる気指数は、最頻値Modeによって正規化されている。このため、やる気指数が正規化されていない場合と比べて、やる気指数を用いた、異なる生産設備30a~30d間や異なる製造ラインL1、L2間における生産状況の比較が容易である。
【0040】
生産能力以外のサイクルタイムCTの遅延の要因には、例えば、作業者のやる気に応じた作業効率の変化がある。このため、やる気指数Imotは、作業者の作業速度の影響を判断する指標として用いられてもよい。例えば、やる気指数が小さいほど、作業者のやる気が高いと評価される。
【0041】
本実施形態では、情報生成部431は、平均値Aveと最頻値Modeとを比較することによって、生産状況として停止状況を評価するための評価指標を算出する。ここで、停止状況を評価するための評価指標は、生産設備30a~30dの停止による生産の遅れの大きさに応じた値である。具体的には、情報生成部431は、下記の式3を用いて、評価指標として停止指数Istopを算出する。
【数3】
【0042】
図6に示す様に、最頻値Modeは、サイクルタイムの平均値Aveと比べて小さい値である。これは、最頻値Modeには生産設備30a~30dにおける停止の影響が反映されず、一方、平均値Aveには生産設備30a~30dにおける停止等の異常の影響が反映されるためである。具体的には、最頻値Modeは、例えば停止が発生したことによって通常より長いサイクルタイムCTが取得された場合であっても、変動しない。一方、平均値Aveは、例えば停止が発生したことによって通常より長いサイクルタイムCTが取得された場合には、停止が発生していない場合と比べて長くなる。このため、停止指数Istopの値が小さいほど、生産設備30a~30dの生産状況において停止の影響が小さいと判断することが可能である。本実施形態において、停止指数は、平均値Aveを用いて正規化されている。このため、停止指数が正規化されていない場合と比べて、停止指数を用いた、異なる生産設備30a~30d間や異なる製造ラインL1、L2間における生産状況の比較が容易である。
【0043】
以上説明した第1実施形態に係る生産管理システム100によれば、管理部40の情報生成部431は、取得されるサイクルタイムCTの大きさと、各大きさのサイクルタイムCTが取得される確率密度との関係を用いて、生産設備30a~30dのサイクルタイムCTの最小値である設備限界値Limを算出する。これにより、生産管理システム100の利用者は、製造ラインL1、L2の生産状況を管理において、サイクルタイムCTの最小値を用いることができる。このため、例えば、生産管理システム100の利用者は、予め定められた期間内における目標生産数を達成するために必要となるサイクルタイムと、設備限界値Limと、を比較することによって、目標生産数の達成の困難性を判断することが可能である。例えば、必要なサイクルタイムが設備限界値Limよりも小さい場合には、利用者は、達成が困難であると判断することができる。この場合には、利用者は、目標生産数を達成するために、製造ラインL1、L2の増設による生産能力の向上や、製造工程の改善によるサイクルタイムCTの短縮が必要であると判断することができる。また、本実施形態において、設備限界値Limは、生産設備30a~30dの生産能力に応じて定まるサイクルタイムCTの最小値である。このため、必要なサイクルタイムが設備限界値Limよりも小さい場合には、利用者は、目標生産数を達成するためには、生産設備30a~30dの変更や増設等の設備投資が必要であると判断することができる。また、必要なサイクルタイムが設備限界値Limよりも大きい場合には、利用者は、生産効率を向上させることによって目標生産数を達成可能、つまり、生産設備30a~30dの変更や増設等の設備投資の必要性が低いと判断することができる。
【0044】
B.第2実施形態
図7は、第2実施形態に係る生産管理システム400を備えた製造ラインL1、L2の概略図である。図8は、第2実施形態に係る生産管理装置520の構成を示すブロック図である。生産管理システム400は、インターネットを用いた情報共有を行なっていない。また、表示装置611~614は、生産管理装置520が配置された工場ar1内でのみ利用される。第1実施形態の構成については、第1実施形態と同様の符号を付し、説明を省略する。本実施形態において、生産管理システム400は、インターネットに接続されていないが、これに限定されない。例えば、生産管理装置520は、インターネットに接続され、インターネットを介して、工場ar1の外部に生産管理情報を提供してもよい。
【0045】
以上説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の構成を有する点において、同様の効果を奏する。さらに、第2実施形態によれば、インターネット上のサーバに管理部40を設けていないため、生産管理システム400は、インターネットに接続されていないオフライン状態であっても生産管理が可能である。
【0046】
C.他の実施形態
C1.第1の他の実施形態
上記実施形態において、実測されたサイクルタイムCTの確率分布曲線の近似曲線を作成するために、極値分布における確率密度関数を用いたフィッティング処理が行われている。しかし、近似曲線の作成方法は、これに限定されない。例えば、極値分布における確率密度関数に代えて、歪度と尖度とを考慮可能な分散モデル、例えば連続型確率分布であるガンマ分布やワイブル分布における確率密度関数を用いても良い。また、確率密度関数を用いたフィッティング処理に代えて、フーリエ変換や複数の正弦曲線を用いたカーブフィッティングを用いて、近似曲線を作成してもよい。
【0047】
C2.第2の他の実施形態
上記実施形態において、サイクルタイムCTの分布が歪度を有している場合を例として説明しているが、サイクルタイムCTの分布は歪度を有していなくてもよい。例えば、装置限界LimがサイクルタイムCTに対して十分に小さく、サイクルタイムCTの分布が正規分布の場合であっても、上記実施形態に係る生産管理システム100を用いた生産管理が可能である。この場合には、例えば、平均値から標準偏差の三倍を引いた値を生産設備30a~30dのサイクルタイムCTの最小値として算出してもよい。この場合において、算出されたサイクルタイムCTの最小値が、設備限界値Limに代えて上記実施形態における各種解析に用いられてもよい。
【0048】
C3.第3の他の実施形態
上記実施形態において、設備限界値Limは、生産効率の評価に用いられている。しかし、設備限界値Limは、生産効率の評価以外に用いられてもよい。例えば、設備限界値Limは、サイクルタイムが正常であるか否かを判定するための閾値として用いられても良い。具体的には、取得されるサイクルタイムCTが設備限界値Limより小さい場合には、生産管理装置20は、工程飛ばし等のおそれがあると判定してもよい。サイクルタイムCTが設備限界値Limを下回った場合には、生産管理装置20は、利用者に対してサイクルタイムCTの異常を報知してもよい。
【0049】
C4.第4の他の実施形態
上記実施形態において、生産管理装置20は、図5に示したステップS103で算出した近似曲線を用いて、異なる生産状況の評価指標を算出してもよい。例えば、生産管理装置20は、近似曲線のうちサイクルタイムCTが予め定められた閾値以下の領域の面積である第1の面積において最頻値Mode未満の領域の面積である第2の面積が占める割合をやる気指数Imotに替えて生産効率の評価指標として用いても良い。この場合において閾値は、サイクルタイムCTが生産設備30a~30dの停止時間を含むかを判定するための値である。閾値は、例えば、最頻値Modeの定数倍であってもよい。この場合には、閾値の設定が容易である。また、閾値は、サイクルタイムCTの確率密度分布を用いて、予め定められた割合のサイクルタイムCTが含まれるように設定されていてもよい。この場合には、生産管理装置20は、生産設備30a~30dの能力に応じて、閾値を自動的に設定することが可能である。なお、サイクルタイムCTの確率密度分布を用いる場合において、確率密度分布が正規分布に近似可能である場合には、サイクルタイムCTの平均値にサイクルタイムCTの標準偏差の定数倍を加えた値を閾値としても良い。また、閾値は、予め記録された発生した停止毎における停止時間のリストである停止リストを用いて設定されても良い。
【0050】
上記実施形態において、生産管理装置20は、近似式を作成するためのパラメータを用いて、生産状況を評価してもよい。具体的には、例えば、式(1)におけるγを用いて、生産状況を評価してもよい。γの値が大きいほど、図6に示された近似曲線の形状は、尖度が大きくなる。このため、サイクルタイムCTの確率分布におけるばらつきが小さくなる。例えば、作業者のやる気が高い場合には、作業効率が高く、サイクルタイムCTのばらつきが小さくなる傾向がある。このため、利用者は、やる気指数Imotに代えて若しくは加えて、γの値を作業者のやる気の指標として評価に用いてもよい。
【0051】
C5.第5の他の実施形態
上記実施形態において、情報生成部431は、さらに、式(1)を用いて作成した近似曲線を用いて、サイクルタイムCTが確率分布において取得されたサイクルタイムCT以下となる確率を、生産状況の評価指標として算出してもよい。具体的には、情報生成部431は、取得されたサイクルタイムCT以下の範囲において近似曲線を積分することによって、取得されたサイクルタイムCT以下となる確率を算出する。この場合には、利用者は、算出された確率を用いて、取得されるサイクルタイムCTを評価することができる。
【0052】
C6.第6の他の実施形態
上記実施形態において、生産管理装置20は、例えば、作業者毎にやる気指数Imotを算出してもよい。この場合において、生産管理装置20の利用者は、作業者毎に算出されたやる気指数を用いて生産状況と作業者との関係を調査に用いても良い。また、生産管理装置20は、例えば、時間帯毎にやる気指数Imotを算出しても良い。この場合において、生産管理装置20の利用者は、時間帯毎に算出されたやる気指数を用いて生産状況と時間帯との関係を調査に用いても良い。
【0053】
C7.第7の他の実施形態
上記実施形態において、情報生成部431は、さらに、生産状況の評価指標として、サイクルタイムCTの標準偏差をサイクルタイムCTの平均値Aveで除した値である変動係数を算出してもよい。評価指標として変動係数を用いる場合には、複数の製造ラインL1、L2間においてサイクルタイムCTの平均値Aveが異なる場合であっても、複数の製造ラインL1、L2間の生産状況の比較が容易になる。これは、変動係数が平均値Aveによって正規化されているためである。変動係数は、例えば、作業工程におけるサイクルタイムCTのばらつきの度合いの評価に用いることができる。サイクルタイムCTのばらつきは、例えば、作業者の習熟度によって変動する。このため、変動係数は、作業者の習熟度の評価に用いられても良い。
【0054】
C8.第8の他の実施形態
上記実施形態において、情報生成部431は、各種評価指標の算出の際に最頻値Modeを用いているが、最頻値Modeに代えてサイクルタイムCTの中央値を用いてもよい。これは、最頻値Modeと同様に、サイクルタイムCTの中央値は、平均値Aveと比べて、突発的に発生する停止等の影響を受けないためである。また、中央値は、最頻値Modeを算出する際に必要となる階級の設定等の処理を省略することができる。
【0055】
C9.第9の他の実施形態
上記実施形態において、生産管理システム100、400は、サイクルタイムCTの最小値を設備限界値Limとして用いているが、これに限定されない。例えば、サイクルタイムCTの最小値は、生産設備30a~30dの生産能力を考慮せずに算出された値であってもよい。
【0056】
C10.第10の他の実施形態
上記実施形態において、情報提供装置は、表示装置601~608であるが、これに限定されない。例えば、情報提供装置は、画像以外を用いて情報を提供する装置、例えばスピーカを備え音声を用いた情報提供が可能な装置であってもよい。また、音声を用いた情報提供が可能な装置を用いる場合には、さらに音声による操作が可能な装置、例えばAIスピーカを用いても良い。ここでAIスピーカは、人工知能(AI)を有し、自然言語による指示を理解する機能と自然言語によって指示された処理を実行する機能とを含むAIアシスタント機能を備えたスピーカである。
【0057】
C11.第11の他の実施形態
第1実施形態に係る生産管理システム100は、製造ラインL1、L2が配置された工場の敷地外、例えば第2から第4エリアAr2~Ar4、から接続可能なインターネットINTを用いて情報を共有している。しかし、生産管理システム100は、これに限定されない。例えば、生産管理システム100は、インターネットINTに代えて、企業内ネットワーク、いわゆるイントラネットを用いて情報の共有を行なってもよい。この場合には、生産管理装置20の管理部40は、企業内ネットワークに接続されたサーバに設けられている。通信装置70は、例えば、企業内ネットワークに接続された無線LAN通信装置である。表示装置601~608は、企業内ネットワークへの接続が可能な場所、例えば、製造ラインL1、L2を有する事業所内で使用される。
【0058】
以上説明した第1から第11の他の実施形態であっても、上記実施形態と同様の構成を有する点において、同様の効果を奏する。
【0059】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行なうことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
Ave…平均値、CT…サイクルタイム、INT…インターネット、Imot…気指数、Istop…停止指数、L1、L2…製造ライン、Lim…設備限界値、Mode…最頻値、PW…製品、10、10a~10d…検出部、11…センサ、12…コントロール部、13…送受信部、20…生産管理装置、21…CPU、22…記憶部、23…送受信部、24…表示部、25…入力部、30a~30d…生産設備、31…搬送機構、40…管理部、41…送受信部、42…記憶部、43…制御部、61…情報表示部、70…通信装置、100…生産管理システム、112…磁石、202…本体部、211…取得部、212…計数部、213…計時部、301…開閉ドア、400…生産管理システム、431…情報生成部、520…生産管理装置、601~608、611~614…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8