(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】通線工具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20221223BHJP
H02G 1/08 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G1/08
(21)【出願番号】P 2018202465
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】株式会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 佑
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-192709(JP,U)
【文献】特開2010-155689(JP,A)
【文献】特開2012-060751(JP,A)
【文献】実開昭52-044389(JP,U)
【文献】特開平10-066216(JP,A)
【文献】特開2001-128350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの配線ルートに通すリード線と、該リード線を巻き取って収納するリング形状の収納ケースとを備えた通線工具において、収納ケースは、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部を有し内部にリード線の基端部を固定すると共に、該リード線を巻き付けて収納する内側ケースと、該内側ケースを回転自在に収納する筒体状を成しリード線を挿通する引出孔を筒体外輪部の一部に備えた外側ケースとで構成され、
前記内側ケースが前記外側ケースの内部で回転する二重構造を成していることを特徴とする通線工具。
【請求項2】
ケーブルの配線ルートに通すリード線と、該リード線を巻き取って収納するリング形状の収納ケースとを備えた通線工具において、収納ケースは、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部を有し内部にリード線の基端部を固定すると共に、該リード線を巻き付けて収納する内側ケースと、該内側ケースを回転自在に収納する筒体状を成しリード線を挿通する引出孔を筒体外輪部の一部に備えた外側ケースとで構成され、
前記内側ケースの一部が露出する操作用開口部を外側ケースに形成し、該操作用開口部から露出した前記内側ケースをつかんで前記リード線を引き戻すように構成すると共に、該操作用開口部から露出する前記内側ケース内の前記リード線を覆うガード体を前記外側ケースに設けた
ことを特徴とする通線工具。
【請求項3】
ケーブルの配線ルートに通すリード線と、該リード線を巻き取って収納するリング形状の収納ケースとを備えた通線工具において、収納ケースは、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部を有し内部にリード線の基端部を固定すると共に、該リード線を巻き付けて収納する内側ケースと、該内側ケースを回転自在に収納する筒体状を成しリード線を挿通する引出孔を筒体外輪部の一部に備えた外側ケースとで構成され、
前記内側ケース内に巻き付けた前記リード線が、前記内側ケースの幅中心部にまとまるように前記リード線の両側を囲んで規制する規制部を前記内側ケース内に設けた
ことを特徴とする通線工具。
【請求項4】
ケーブルの配線ルートに通すリード線と、前記リード線を巻き取って収納するリング形状の収納ケースとを備えた通線工具において、前記収納ケースは、内部に前記リード線の基端部を固定すると共に、前記リード線を巻き付けて収納し、前記リード線を挿通する引出孔を備え、引出孔の幅中心部と前記リード線の幅中心がほぼ同位置に収納されるように前記リード線に対して規制する規制部を設けたことを特徴とする通線工具。
【請求項5】
前記規制部は、前記リード線の底部側から両側を囲む断面逆コ字形状の溝を成すように形成され、前記リード線は、前記規制部内で順次積み重なる帯状鋼線にて設けられた請求項3または4記載の通線工具。
【請求項6】
ケーブルの配線ルートに通すリード線と、該リード線を巻き取って収納するリング形状の収納ケースとを備えた通線工具において、収納ケースは、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部を有し内部にリード線の基端部を固定すると共に、該リード線を巻き付けて収納する内側ケースと、該内側ケースを回転自在に収納する筒体状を成しリード線を挿通する引出孔を筒体外輪部の一部に備えた外側ケースとで構成され、
前記内側ケースは、リング形状の筒体外輪部を中心として左右に分割された内側面体を接合して構成すると共に、前記外側ケースはリング形状の筒体外輪部を中心として左右に分割された外側面体を接合して構成する
ことを特徴とする通線工具。
【請求項7】
前記内側ケースの外側面に前記外側ケースの内側面に当接する回転軌条を突設した請求項
1、2、3または6のいずれか記載の通線工具。
【請求項8】
ケーブルの配線ルートに通すリード線の先端に
ヘッドが取り付けられ、該ヘッドは、リード線の先端に固定されるヘッド基体と、折り畳み可能な延長片を複数備え、延長片を伸ばすことにより長さを調整することができるように構成された
請求項1~7いずれか記載の通線工具。
【請求項9】
前記内側ケースの一部が露出する操作用開口部を外側ケースに形成し、該操作用開口部から露出した前記内側ケースをつかんで前記リード線を引き戻すように構成された請求項1記載の通線工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のケーブルを床下あるいは天井裏などに配線する際に、ケーブル配線ルートに先行してリード線を通す通線工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床下あるいは天井裏などに各種のケーブルを配線する工事として、まず通線工具の長いリード線を配線ルートに通した後、このリード線の先端部にケーブルを繋げ、リード線を引き戻すことでケーブルを配線する工事がある。
【0003】
リード線の材質として、帯状鋼線やピアノ線、ワイヤーケーブルなどの各種の線状材が使用されている。このようなリード線は、床下あるいは天井裏などに通す際に、障害物をよけながら通すことができるように弾性力を備えている。ところが、この弾性力がリード線の巻き取り作業を困難にしていた。
【0004】
すなわち、直線状のリード線をケース内に巻き取ると、丸められたリード線自身の弾性力でケースの外側に向けた反発力が高まる。そのため、この反発力によりケース内に巻き取られたリード線が乱れる現象が生じていた。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の「リード線収納引出器」は、巻き取り操作時に、リード線の基端部が反発してケースからはみ出ないようにするものである。このリード線の基端部とは、ケースの中に回転自在に収納している円環状の誘導部材に最初に巻き付ける端部のことで、この基端部から順に誘導部材に巻き付けた後、最後に残る端部がリード線の先端部となる。
【0006】
そして、このリード線の先端部をケースの開口部から引き出した後、このリード線を巻き取る操作になる。この巻き取り操作の際に、ケースの一部から露出しているリール状のリード線を手でつかんで回転させると、最初に巻き付けてあるリード線の基端部が反発してケースの開口部からはみ出る現象が回転操作の妨げになっていた。特許文献1の「リード線収納引出器」では、リード線の基端部を円環状の誘導部材に連結することで、このようなリード線の乱れを解消するものである。
【0007】
また、特許文献2に記載の「通線用ワイヤの巻取リール製造方法」には、パイプを使用した環状体のケースを外側と内側とに分割し、内側の環状体にリード線を巻き取るように構成したケースが示されている。
【0008】
この環状体のケースは、外側の環状体に連結具を設け、この連結具で内側環状体を回転自在に保持する構成である。そして連結具で保持された内側環状体の内部にリード線の基端部を連結し、内側環状体を回転させるとリード線が内側環状体に巻き付くように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案登録第2574018号公報
【文献】特開昭57-199409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のケースでは、リード線を巻き取る際に、ケースの一部から露出しているリール状のリード線を手でつかんで回転操作する為、手の皮や指等がリード線に挟まり易く、巻き取り操作が極めて危険な作業になっていた。
【0011】
しかも、パイプ状のケース内と巻き取ったリード線との間に隙間がある場合、ケース内で反発するリード線が乱れ易くなるため、この隙間を埋めるようにリード線が外側に広がる現象が生じる。したがって、ケース内に収納したリード線を何度も出し入れすると、ケース内の隙間に沿って広がったリード線が次第に内壁に密着し、この密着が操作時の大きな抵抗になっていた。
【0012】
一方、特許文献2に記載のケースは、パイプを外部と内部とに二分した構成である。そのため、内側の環状体に巻き取ったリード線と外側の環状体との間に広い隙間が生じている上、リード線を巻き取った内側の環状体は、パイプを二分した半円形状を成しているので、リード線の左右にも隙間が生じている。したがって、このケースでは、リード線の周囲に広がっている隙間を埋めるようにリード線が極めて反発し易い状態になっている。そのため、巻き取ったリード線が隙間に沿って乱れると、大きく膨らんだリード線が外側の環状体にまで接し、内側の環状体の回転操作が極めて困難になる虞がある。
【0013】
更に、特許文献1及び特許文献2のいずれのケースも、巻き取ったリード線を外部に引き出す引出口が広く、巻き取ったリード線の一部が露出する構造をなしている。すなわち、特許文献1はケースの一部を切り欠いた切欠部からリード線の外側の一部が露出する。また、特許文献2では、外側の環状体の一部を切り欠いた通過許可部で内側の環状体に巻き付けたリード線の外側が露出するのみならず、外側の環状体と内側の環状体との間においてもリード線の外側全体が露出している状態になっている。
【0014】
このように、リール状の外側のリード線が露出した部分では、常に外側に向けて反発する弾性力により、リード線がより膨らみ易い状態になっている。また、引出口が広いと、この引出口に係止しているリード線の先端部の位置が移動し易いので、巻き取ったリード線の乱れを誘引する虞もある。そして、露出部分のリード線がケースの外側に大きく広がってしまうと、もはや操作不能にならざるを得ない。
【0015】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、リード線の出し入れ作業を極めて安全、且つ容易に行うことができる通線工具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、ケーブルの配線ルートに通すリード線1と、該リード線1を巻き取って収納するリング形状の収納ケース2とを備えた通線工具において、収納ケース2は、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部11を有し内部にリード線1の基端部を固定すると共に、該リード線1を巻き付けて収納する内側ケース10と、該内側ケース10を回転自在に収納する筒体状を成しリード線1を挿通する引出孔21を筒体外輪部の一部に備えた外側ケース20とで構成され、前記内側ケース10が前記外側ケース20の内部で回転する二重構造を成していることにある。
【0017】
第2の手段は、ケーブルの配線ルートに通すリード線1と、該リード線1を巻き取って収納するリング形状の収納ケース2とを備えた通線工具において、収納ケース2は、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部11を有し内部にリード線1の基端部を固定すると共に、該リード線1を巻き付けて収納する内側ケース10と、該内側ケース10を回転自在に収納する筒体状を成しリード線1を挿通する引出孔21を筒体外輪部の一部に備えた外側ケース20とで構成され、
前記内側ケース10の一部が露出する操作用開口部22を外側ケース20に形成し、該操作用開口部20から露出した前記内側ケース10をつかんで前記リード線1を引き戻すように構成すると共に、該操作用開口部22から露出する前記内側ケース10内の前記リード線1を覆うガード体23を前記外側ケース20に設けたものである。
【0018】
第3の手段は、ケーブルの配線ルートに通すリード線1と、該リード線1を巻き取って収納するリング形状の収納ケース2とを備えた通線工具において、収納ケース2は、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部11を有し内部にリード線1の基端部を固定すると共に、該リード線1を巻き付けて収納する内側ケース10と、該内側ケース10を回転自在に収納する筒体状を成しリード線1を挿通する引出孔21を筒体外輪部の一部に備えた外側ケース20とで構成され、
前記内側ケース10内に巻き付けた前記リード線1が、前記内側ケース10の幅中心部にまとまるように前記リード線1の両側を囲んで規制する規制部12を前記内側ケース10内に設けたことにある。
【0019】
第4の手段は、ケーブルの配線ルートに通すリード線1と、前記リード線1を巻き取って収納するリング形状の収納ケース2とを備えた通線工具において、前記収納ケース2は、内部に前記リード線1の基端部を固定すると共に、前記リード線1を巻き付けて収納し、前記リード線1を挿通する引出孔21を備え、引出孔21の幅中心部と前記リード線1の幅中心がほぼ同位置に収納されるように前記リード線1に対して規制する規制部12を設けたものである。
【0020】
第5の手段の前記規制部12は、前記リード線1の底部側から両側を囲む断面逆コ字形状の溝を成すように形成され、前記リード線1は、前記規制部12内で順次積み重なる帯状鋼線にて設けられている。
【0021】
第6の手段において、ケーブルの配線ルートに通すリード線1と、該リード線1を巻き取って収納するリング形状の収納ケース2とを備えた通線工具において、収納ケース2は、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部11を有し内部にリード線1の基端部を固定すると共に、該リード線1を巻き付けて収納する内側ケース10と、該内側ケース10を回転自在に収納する筒体状を成しリード線1を挿通する引出孔21を筒体外輪部の一部に備えた外側ケース20とで構成され、
前記内側ケース10は、リング形状の筒体外輪部を中心として左右に分割された内側面体13を接合して構成すると共に、前記外側ケース20はリング形状の筒体外輪部を中心として左右に分割された外側面体24を接合して構成する。
【0022】
第7の手段は、前記内側ケース10の外側面に前記外側ケース20の内側面に当接する回転軌条14を突設したことにある。
【0023】
第8の手段において、ケーブルの配線ルートに通すリード線1の先端にヘッド3が取り付けられ、該ヘッド3は、リード線1の先端に固定されるヘッド基体3Aと、折り畳み可能な延長片3Bを複数備え、延長片3Bを伸ばすことにより長さを調整することができるように構成されたものである。
【0024】
第9の手段は、前記内側ケース20の一部が露出する操作用開口部22を外側ケース20に形成し、該操作用開口部22から露出した前記内側ケース20をつかんで前記リード線1を引き戻すように構成されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、内側ケースと外側ケースを設けることより、リード線に一切触れることはなく巻き取ることができるため、安全に且つスムーズに操作できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図6】本発明の内側面体と外側面体を示す分解斜視図である。
【
図7】(イ)~(ハ)は、本発明のヘッドを示す側面図である。
【
図8】本発明収納ケースからリード線を引き出す操作を示す側面図である。
【
図9】本発明収納ケースにリード線を巻き取る操作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明工具は、ケーブルの配線ルートに通すリード線1と、このリード線1を巻き取って収納するリング状の収納ケース2とを備えた通線工具である(
図1参照)。
【0028】
リード線1は、帯状鋼線やピアノ線、ワイヤーケーブルなどの、弾性力を持った各種の線状材が使用される。特に、帯状鋼線は直進性に優れた性質があり、重ねて巻き付けることが可能になるので、巻き取った状態では最も乱れ難いリード線1となる(
図3参照)。
【0029】
収納ケース2は、リング形状の筒体から成る内側ケース10と外側ケース20との二重構造を成している(
図1参照)。収納ケース2内に収納しているリード線1を引き出す場合は、外側ケース20から突出しているリード線1を引き出しながらケーブルの配線ルートに通すものである(
図2、
図8参照)。
【0030】
内側ケース10は、外側ケース20の内部で回転する部位で、この内側ケース10内にリード線1を巻き付けて収納する。そのため、リード線1の基端部をこの内側ケース10内に固定している(
図2参照)。図示例では、リード線1の基端部から内側ケース10を貫通する固定ボルト30を使用して固定している。そのため、巻き取る操作の際、リード線は露出していないので、必ずリード線の内側から引っ張ることになり、スムーズな操作ができる。
【0031】
この内側ケース10に、リング形状の筒体外輪部に沿って開口する開口部11を形成している(
図3参照)。この開口部11を通して内側ケース10にリード線1を巻き付けたり引き出したりするものである。
【0032】
更に、この内側ケース10にリード線1の位置を規制する規制部12を設けている(
図3参照)。この規制部12は、内側ケース10に巻き付けるリード線1が、内側ケース10の厚みの中央側にまとまるようにリード線1の両側を規制するものである。このように、規制部12を内側ケース10内に設けることにより、巻き付けたリード線1の左右が規制されリード線1の左右への乱れを防止することができる。この結果、リード線1を何度も出し入れしても、巻き取ったリード線1の乱れを防止することができる。
【0033】
図示の規制部12は、内側ケース10に巻き付けられるリード線1の底部側から両側を囲む断面逆コ字形状の溝を成すように形成されている。更に、図示例では、規制部12を形成する複数の突起を内側ケース10の内側面体13内に間隔を置いて突設している(
図6参照)。そして、一対の内側面体13を筒状に合わせると、複数の規制部12によって断面逆コ字形状の複数の溝が間隔を開けて連続形成されるものである(
図3参照)。
【0034】
また、図示のリード線1は、規制部12により断面逆コ字形状に形成されている溝内に収まる帯状鋼線にて設けられている(
図3参照)。このリード線1は、溝内で順次積み重なるので、重なったリード線1が左右にずれるような乱れを確実に防止することができる。
【0035】
すなわち、リード線1は、規制部12内で順次積み重なる帯状鋼線にて設けることで、規制部12内へのリード線1の収まりが最も良好な状態になる。そのため、規制部12内におけるリード線1の乱れ防止効果が最も高くなり、長期間の使用でも安定した操作性は変わらないものになる。
【0036】
一方、外側ケース20は、内側ケース10を回転自在に収納する外側の部位であり、内側ケース10内のリード線1を引き出す引出孔21を筒体外輪部の一部に開口している(
図1参照)。そして、内側ケース10から、外側ケース20の引出孔21を通してリード線1を出し入れするように構成している(
図2参照)。
【0037】
この引出孔21は、リード線1の太さに合わせてできるだけ開口部を小さく形成することで、リード線1が引出孔21に係止している状態を維持することができる。すなわち、この引出孔21が広く大きい場合は、引出孔21に係止しているリード線1の位置がぶれやすく、又巻き付けているリード線1が外側へ膨れるように変形する虞がある。ところが、引出孔21の開口部分をできるだけ小さくすることで、リード線1のブレが生じ難くなり、巻き付けているリード線1の変形も防止することが可能になる。
【0038】
更に、このリード線1を挿通する引出孔21を外側ケース20の筒体外輪部の一部に備えているので、巻き取ったリード線1の先端部分は、自身の弾性力にてこの引出孔21に常時係止状態となり、リード線1先端部の乱れを防止する。この結果、リード線1の先端部から操作用開口部22のリード線1に至るまで弾性力による乱れを防止できるので、繰り返し使用しても極めてスムーズな操作を維持することができる。
【0039】
更に、外側ケース20には、引出孔21の開口部分とは別の位置に、内側ケース10の一部が露出する操作用開口部22を形成している(
図4参照)。そして、この操作用開口部22から露出した内側ケース10内の開口部11を覆うガード体23を、外側ケース20の外輪部に沿って設けている(
図5参照)。この結果、操作用開口部22から内側ケース10の一部が露出していても、内側ケース10内部のリード線1はガード体23に覆われて全く外部に露出しない状態になっている(
図4参照)。
【0040】
このガード体23により、操作用開口部22から内側ケース10内のリード線1が反発して外側に飛び出すおそれを確実に防止することができる。
【0041】
引き出したリード線1を内側ケース10に戻すには、この操作用開口部22から露出した内側ケース10の側面をつかんでリード線1を引き戻す作業になる(
図9参照)。このとき、リード線1は全く露出していないので、この引き戻し作業時にリード線1で手指を痛めるといった従来の不都合は完全に解消されている。
【0042】
このように、操作用開口部22から露出した内側ケース10の側面をつかんでリード線1を引き戻すように構成することで、作業者はリード線1に一切触れずに操作ができる。したがって、リード線の出し入れ作業が極めて安全な作業になった。
【0043】
また、図示例では、内側ケース10の外側面に回転軌条14を突設し、この回転軌条14を外側ケース20の内側面に当接させている(
図3、4参照)。この回転軌条14により、内側ケース10と外側ケース20との摩擦面を少なくすることができる。この結果、内側ケース10の回転操作時の負荷が少なくなり、内側ケース10の回転操作を軽くすることができる。
【0044】
また、収納ケース2を構成する内側ケース10と外側ケース20とは、いずれもリングの外輪部に沿って左右に分割された部材を連結することで構成している(
図6参照)。すなわち、内側ケース10は、リング形状の筒体外輪部を中心として左右に分割された内側面体13を接合して内側ケース10を構成する。また、外側ケース20も、左右に分割された外側面体24を接合して構成したものである。このような構成は、収納ケース2の製造工程のみならず、リング状を成す収納ケース2の組立てが容易になり、メンテナンスにも好適である。尚、分割された各部材の連結手段は、例えばボルトとナットを使用する他、従来周知の連結手段を選択することができる。
【0045】
ヘッド3は、リード線1の先端に設けられる部材である(
図7参照)。このヘッド3は、床下あるいは天井裏などにリード線1を通す際に、障害物をよけ易いように装着されている。図示のヘッド3は、先端部の形状が3段階に変化するように構成している。すなわち、ヘッド基体3Aに、延長片3Bと再延長片3Cとが重なった第1の形状(
図7(イ)参照)。次に、ヘッド基体3Aに、延長片3Bが展開して全長が伸びた第2の形状(同図(ロ)参照)。更に、展開した延長片3Bから再延長片3Cが展開して全長が最も長くなった第3の形状である(同図(ハ)参照)。また、このヘッド3の任意の部分に反射ステッカー(図示せず)等を貼り付けることで、視認性を良くすることも可能である。尚、ヘッド3の形状や材質、付属品等は、任意に変更することが可能である。
【0046】
収納ケース2内のリード線1を引き出す場合は、外側ケース20から突出しているリード線1を引き出しながらケーブルの配線ルートに通すものである(
図8参照)。また、引き出したリード線1を引き戻すには、外に出ている内側ケース10をつかんで回転させることで、安定した巻き取り操作ができるものである(
図9参照)。
【0047】
尚、本発明の形状等は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【符号の説明】
【0048】
1 リード線
2 収納ケース
3 ヘッド
3A ヘッド基体
3B 延長片
3C 再延長片
10 内側ケース
11 開口部
12 規制部
13 内側面体
14 回転軌条
20 外側ケース
21 引出孔
22 操作用開口部
23 ガード体
24 外側面体
30 固定ボルト