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  • 特許-多缶設置ボイラ 図1
  • 特許-多缶設置ボイラ 図2
  • 特許-多缶設置ボイラ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】多缶設置ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
F22B35/00 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018231153
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020094708
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 享一
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-205502(JP,A)
【文献】特開2004-317105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に運転制御装置と蒸気圧力検出装置を持ったボイラを複数台設置している多缶設置ボイラであって、各ボイラは多缶設置時に複数台のボイラでの燃焼量の割り当てを調節する台数制御機能を持っており、各ボイラは前記複数台のボイラのうちの1台のボイラでの台数制御機能により決定した燃焼量で燃焼を行う台数制御を行うようにした多缶設置ボイラであり、台数制御を行う台数制御機能では、複数台設置しているボイラに対して稼働優先順位を設定するとともに、各ボイラに設置している蒸気圧力検出装置にて検出しているボイラの蒸気圧力値を取り込むことができるようにしておき、台数制御機能では検出したボイラの蒸気圧力値に基づき、稼働優先順位の順にボイラの燃焼を行わせるようにしている多缶設置ボイラにおいて、前記台数制御機能では稼働優先順位が最も高いボイラの蒸気圧力検出装置で検出している蒸気圧力値を使用して台数制御を行うものであって、稼働優先順位を入れ替えるローテーションが行われ一時的に前記稼働優先順位が最上位となるボイラが複数台となった場合には、最上位ボイラでの蒸気圧力値を比較し、その中で最も高い蒸気圧力値となっているボイラの蒸気圧力値を使用して台数制御を行い、台数制御機能が蒸気圧力値を参照するボイラを変更した場合には、変更から所定の不感時間が経過するまでは蒸気圧力値を比較しての蒸気圧力値を使用するボイラを変更することは行わないようにしていることを特徴とする多缶設置ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のボイラを並列に設置しておき、共通の蒸気ヘッダを通じて蒸気を供給するものであって、蒸気圧力値に基づいて各ボイラでの燃焼量を制御するようにした多缶設置ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2000-205502号公報の図4には、並列に設置した複数台のボイラと、ボイラ全体での燃焼必要量を算出する台数制御装置を設置しておき、ボイラ全体での負荷量に応じて運転を行うボイラの台数と燃焼量を決定し、台数制御装置から各ボイラへ燃焼指令を出力することで必要量分のボイラを燃焼させる台数制御を行うようにしている多缶設置ボイラが記載されている。この多缶設置ボイラでは、各ボイラで発生した蒸気を取り出す蒸気配管は、蒸気を集合させる蒸気ヘッダに接続しておき、各ボイラで発生した蒸気は蒸気ヘッダで集合させた後に蒸気使用箇所へ送るようにしている。そして蒸気ヘッダにはヘッダ部蒸気圧力検出装置を設けておき、台数制御装置は蒸気ヘッダでの蒸気圧力を検出し、検出された蒸気圧力値が所定の値を維持するようにボイラの運転を制御する。
【0003】
台数制御装置は設置している各ボイラに稼働優先順位を設定しておき、台数制御装置ではボイラ全体での燃焼量を決定すると、稼働優先順位の順にボイラに対して燃焼指令の出力を行う。ボイラの燃焼量は蒸気圧力が高くなるほど減少し、蒸気圧力が低くなると燃焼量を増加するようにしており、優先順位の高いボイラでは蒸気圧力が比較的高い状態でも燃焼を開始し、優先順位の低いボイラでは蒸気圧力が比較的低い値となってから燃焼を開始する。
【0004】
台数制御装置による台数制御は、各ボイラで共通の蒸気ヘッダ部での圧力に基づいて決定されるが、個々のボイラでは単独でも運転することができるようにしている。具体的にはボイラ毎にボイラ運転制御装置と各自のボイラ内蒸気圧力を検出するボイラ蒸気圧力検出装置を設けておくことで個別での運転制御が行え、またボイラ内蒸気圧力がボイラに設定している燃焼停止圧力より高くなった場合には、台数制御装置から該当ボイラに対して燃焼指令が出力されていても燃焼を停止することもできるようにしている。
【0005】
そのため、蒸気圧力検出装置はボイラ台数+共通ヘッダ部用の台数が必要となる。ボイラの設置台数が大きな多缶設置システムでは、蒸気圧力検出装置の増加はあまり問題にならないが、設置台数2台で台数制御を行う場合には蒸気圧力検出装置は3台必要となると、蒸気圧力検出装置は1.5倍必要となり、更に台数制御用の制御装置も必要となるため、コスト的に負担が大きくなる。
【0006】
特開2000-205502号公報に記載の発明は、蒸気ヘッダの圧力検出装置を不要とすることで、コストダウンを図るようにしている。この発明では、ボイラ毎に燃焼量を変更する蒸気圧力の値をずらして設定しておき、各ボイラにおける個別蒸気圧力を用いて運転を行うようにしている場合、蒸気圧力値が低くなるほどボイラの燃焼台数が多くなり、蒸気圧力が高くなるほどボイラの燃焼台数が少なくなるため、台数制御に似た運転制御が行えるようになる。
【0007】
しかし、個別のボイラにおける蒸気圧力値は、共通蒸気ヘッダにおける蒸気圧力値とは異なる値となることで、運転状態にばらつきが発生することがある。各ボイラで発生した蒸気は、個別の蒸気配管を通じて共通の蒸気ヘッダに送っており、ボイラで燃焼を行って蒸気を供給している場合には、ボイラ内の蒸気圧力と共通蒸気ヘッダの蒸気圧力はほぼ相似する値となる。しかしボイラからの蒸気を蒸気ヘッダに送る各蒸気配管には逆止弁を設置しており、ボイラ内の圧力が蒸気ヘッダ内圧力より低い場合には蒸気ヘッダから蒸気がボイラ内へ逆流しないため、蒸気供給を行っていないボイラではボイラ内圧力と蒸気ヘッダ内圧力には差が発生する。蒸気ヘッダ内圧力とは異なるボイラ内蒸気圧力に基づいて台数制御を行うことになると、適切な運転制御を行うことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-205502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、並列設置した複数台のボイラの運転制御を供給蒸気圧力値に基づいて行う多缶設置ボイラにおいて、共通の蒸気ヘッダに蒸気圧力検出装置を設置せずとも適切な台数制御を行うことのできる多缶設置ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、個々に運転制御装置と蒸気圧力検出装置を持ったボイラを複数台設置している多缶設置ボイラであって、各ボイラは多缶設置時に複数台のボイラでの燃焼量の割り当てを調節する台数制御機能を持っており、各ボイラは前記複数台のボイラのうちの1台のボイラでの台数制御機能により決定した燃焼量で燃焼を行う台数制御を行うようにした多缶設置ボイラであり、台数制御を行う台数制御機能では、複数台設置しているボイラに対して稼働優先順位を設定するとともに、各ボイラに設置している蒸気圧力検出装置にて検出しているボイラの蒸気圧力値を取り込むことができるようにしておき、台数制御機能では検出したボイラの蒸気圧力値に基づき、稼働優先順位の順にボイラの燃焼を行わせるようにしている多缶設置ボイラにおいて、前記台数制御機能では稼働優先順位が最も高いボイラの蒸気圧力検出装置で検出している蒸気圧力値を使用して台数制御を行うものであって、稼働優先順位を入れ替えるローテーションが行われ一時的に前記稼働優先順位が最上位となるボイラが複数台となった場合には、最上位ボイラでの蒸気圧力値を比較し、その中で最も高い蒸気圧力値となっているボイラの蒸気圧力値を使用して台数制御を行い、台数制御機能が蒸気圧力値を参照するボイラを変更した場合には、変更から所定の不感時間が経過するまでは蒸気圧力値を比較しての蒸気圧力値を使用するボイラを変更することは行わないようにしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を実施することで、共通の蒸気ヘッダに蒸気圧力検出装置を設置せずとも適切な台数制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例における多缶設置ボイラのフロー図
図2】本発明の一実施例での台数制御説明図
図3】本発明の一実施例での使用蒸気圧力値変更説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における多缶設置ボイラのフロー図、図2は本発明の一実施例での台数制御説明図、図3は本発明の一実施例での使用蒸気圧力値変更説明図である。実施例では親ボイラ1Aと子ボイラ1Bからなる2台のボイラを設置しており、各ボイラで発生した蒸気は、ボイラの上部に接続している蒸気配管6を通して蒸気ヘッダ2へ送るようにしている。各ボイラからの蒸気配管6は共通の蒸気ヘッダ2に接続しており、各ボイラで発生した蒸気は蒸気ヘッダ2に一旦集合させてから、蒸気使用箇所へ供給する。
【0016】
各ボイラには、ボイラで発生している蒸気の圧力を検出する圧力検出装置を設けており、親ボイラ1Aの蒸気圧力検出装置を親ボイラ蒸気圧力検出装置3A、子ボイラ1Bの蒸気圧力検出装置を子ボイラ蒸気圧力検出装置3Bとしている。各ボイラには、ボイラの運転を制御する運転制御装置を持っており、運転制御装置も親ボイラ運転制御装置5Aと子ボイラ運転制御装置5Bとしている。
【0017】
複雑な台数制御を行う場合、一般的には専用の台数制御装置を設置することが必要になるが、ボイラ設置台数が2台など小規模な多缶設置であって単純な台数制御を行う場合には、ボイラの運転制御装置に台数制御機能を付加することで、コストを抑えつつ台数制御を行うものとすることもできる。台数制御機能は運転制御装置に台数制御用のプログラムを設定することで行う。本実施例では、2台設置しているボイラのそれぞれが台数制御プログラムを持ったボイラとしており、そのうちの一方である親ボイラ1Aの台数制御部4によって2台のボイラでの台数制御を行うようにしている。
【0018】
台数制御部4は親ボイラ運転制御装置5A及び子ボイラ運転制御装置5Bと通信を行うようにしており、子ボイラ運転制御装置5Bとの間はRS-485等の規格に基づいた通信装置7によって接続している。台数制御部4は、親ボイラ1A自身への運転指令を出力するとともに、子ボイラ1Bに対して運転指令の出力を行う。実際の運転制御は親ボイラ運転制御装置5A及び子ボイラ運転制御装置5Bが担当し、親ボイラ運転制御装置5A及び子ボイラ運転制御装置5Bは台数制御部4からの運転指令に基づいてボイラの運転を制御する。
【0019】
ボイラの台数制御は、供給している蒸気圧力値に基づいてボイラ全体で必要な燃焼量を決定し、各ボイラでの燃焼量を割り振る。設置しているボイラには稼働優先順位を設定しておき、稼働優先順位の高い側から燃焼量を割り振り、稼働優先順位の順に燃焼を行う。稼働優先順位が高いボイラでは、蒸気圧力が比較的高い状態で燃焼を開始するようにし、蒸気圧力値が低くなると稼働優先順位の低いボイラでも燃焼を行う。稼働優先順位は、固定のままであると特定のボイラに運転が集中するため、稼働優先順位を定期的に入れ替えるローテーションを行っている。そのため、親ボイラ1Aの稼働優先順位が第1位となって子ボイラ1Bの稼働優先順位が第2位となる場合と、子ボイラ1Bの稼働優先順位が第1位となって親ボイラ1Aの稼働優先順位が第2位となる場合が交互に訪れる。
【0020】
台数制御部4で台数制御を行う場合、親ボイラ蒸気圧力検出装置3Aにて検出している蒸気圧力値、又は子ボイラ蒸気圧力検出装置3Bにて検出している蒸気圧力値に基づき、ボイラの燃焼量を決定する。その際に使用する蒸気圧力値は、稼働優先順位が最上位となっているボイラの蒸気圧力検出装置で検出した蒸気圧力値を使用して台数制御を行う。稼働優先順位は定期的にローテーションを行うものであるため、台数制御に使用する蒸気圧力値の検出先はその時々によって変更されることになる。
【0021】
台数制御部4は、稼働優先順位が上位となっているボイラの運転制御装置に対して蒸気圧力値を送信させる信号を出力し、信号を受けたボイラ運転制御装置は自ボイラのボイラ蒸気圧力検出装置にて検出している蒸気圧力値を台数制御部4へ返信する。台数制御部4では取り込んだ蒸気圧力値に基づいて台数制御を行う。
【0022】
親ボイラ1Aの稼働優先順位が上位にある場合、台数制御部4では親ボイラ側蒸気圧力検出装置3Aにて検出している親ボイラ1Aの蒸気圧力値に基づいてボイラ全体での燃焼量を決定し、親ボイラ側を優先的に稼働する台数制御を行う。逆に子ボイラ1Bの稼働優先順位が上位にある場合、台数制御部4は稼働優先順位が上位となっている子ボイラ蒸気圧力検出装置3Bにて検出している子ボイラ1Bの蒸気圧力値に基づいてボイラ全体での燃焼量を決定し、子ボイラ側を優先的に稼働する台数制御を行う。
【0023】
このように使用する蒸気圧力値を変更するのは、ボイラ内の蒸気圧力値と蒸気ヘッダ2から供給する蒸気圧力値にずれが発生するためである。燃焼を行って蒸気を発生しているボイラの場合、ボイラ内の圧力が高まると蒸気ヘッダ2内の圧力も高まり、ボイラ内の蒸気圧力値と蒸気ヘッダ2から供給する蒸気圧力値は近似する値となる。しかし一方のボイラでのみ蒸気供給を行っている場合、他方の燃焼を行っていないボイラでは、蒸気ヘッダ2からボイラ内への蒸気の逆流は発生しないようにしているため、燃焼を行っていないボイラ内の蒸気圧力は蒸気ヘッダ2での蒸気圧力より低い値となる。この時、低い値となっている燃焼を行っていない側の圧力検出装置にて検出される蒸気圧力に基づいて台数制御を行うと、実際に蒸気使用箇所へ供給している蒸気圧力値とはかけ離れた蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うことになり、適正な運転を行うことができないということになってしまう。
【0024】
ローテーションによって稼働優先順位が変化する毎に、台数制御に使用する蒸気圧力値を最上位となるボイラの蒸気圧力値に変更するようにし、常に稼働優先順位が高い側のボイラにおける蒸気圧力値を使用すると、蒸気ヘッダでの蒸気圧力値と近似した値のボイラ内蒸気圧力値を使用して台数制御を行うことになる。そのため、蒸気ヘッダ2での蒸気圧力値との乖離を防ぐことができ、適正な台数制御を行えるようになる。
【0025】
なお、ローテーションの実施時、稼働優先順位が第1位であったものを第2位に変更すると同時に稼働優先順位が第2位であったものを第1位に変更するものであると、第1位ボイラでは燃焼中、第2位ボイラでは燃焼待機中であれば、順位変更によって燃焼中のボイラでは燃焼が停止され、燃焼待機中ボイラは燃焼を開始することになる。その場合、燃焼待機の状態から燃焼を開始して蒸気の供給を開始するまでには時間が必要であり、その間は蒸気の発生が止まっていると、蒸気圧力値が大きく低下してしまうことがある。そのため、ローテーション実施時には、先に稼働優先順位が第2位であったものを第1位に変更することで一時的に第1位ボイラを2台とし、燃焼待機中であったボイラの燃焼準備を先行し、一定時間後に稼働優先順位が元から第1位であったものを第2位に変更することにより、ローテーション時に蒸気圧力値が低下することを防止することが行われている。
【0026】
この場合には、ローテーション実施時には一時的に優先順位が最上位となるボイラが複数となるため、その間での蒸気圧力値を検出するボイラを定めておく必要がある。優先順位が最上位のボイラが複数存在する場合には、最上位ボイラでの蒸気圧力値を比較し、蒸気圧力値がより高い方の値に基づいて台数制御を行う。
【0027】
同一順位であっても蒸気圧力値の低いボイラは、蒸気を供給していなかったボイラであって、ボイラ内の圧力は蒸気ヘッダでの圧力より低くなっていることが考えられる。もしもその実際の蒸気供給圧力値よりも低い蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うことになると、必要以上に燃焼指令が出力されることになり、燃焼量を大きくしすぎると供給蒸気圧力値が急上昇する。そして蒸気圧力値が高くなると、燃焼量を急減するように燃焼指令を出力することになり、そのことによって蒸気圧力値の乱高下を招くことになる。
【0028】
蒸気圧力値の高い側のボイラは、蒸気供給を行っていたボイラであって、ボイラ内圧力は蒸気ヘッダから供給している蒸気圧力値と近似する圧力にあると考えられる。蒸気圧力値の高い側のボイラで検出した蒸気圧力値に基づいて制御を行うことで、優先順位が同一であっても適切な適正な台数制御を行うことができる。
【0029】
そして参照する蒸気圧力値を変更した場合は、所定の不感時間経過後に双方の蒸気圧力を比較して台数制御を行うようにする。2台のボイラがともに優先順位第1位となると、ボイラ全体での燃焼量が大きくなり、そのことで蒸気圧力値が一時的に上昇することがある。一時的な圧力変動にあわせて台数制御を行うと、却ってオーバーシュートを招くことによる蒸気圧力値の乱高下の原因になることがある。その場合、蒸気圧力値の変更直後は不感時間を設定してその間は台数制御に反映させないようにすることで、蒸気圧力値の変化に伴う不要な運転指令の変更を抑制する。
【0030】
本発明の一実施例におけるタイムチャートを図2に基づいて説明する。実施例では親ボイラの稼働優先順位が第1位、子ボイラの稼働優先順位が第2位の状態から開始しており、稼働優先順位の高い親ボイラでは蒸気圧力値は高い値、稼働優先順位の低い子ボイラでは蒸気圧力値は低い値となっている。台数制御には稼働優先順位の高いボイラにおける蒸気圧力値を使用するため、図2の最初は親ボイラの蒸気圧力値を使用して台数制御を行う。
【0031】
図2の時刻Aで稼働優先順位のローテーションを開始する。時刻Aで子ボイラの稼働優先順位を第1位に変更し、時刻A以降は親ボイラと子ボイラの両方で稼働優先順位が第1位となる。稼働優先順位が最上位のボイラが複数ある場合、台数制御に使用する蒸気圧力値は稼働優先順位最上位ボイラで蒸気圧力値を比較してより高い側の値を使用する。時刻A直後の場合、親ボイラの蒸気圧力値の方が高いため、しばらくは蒸気圧力値の高い親ボイラの蒸気圧力値を使用して台数制御が行われる。図2では時刻Bから子ボイラで蒸気圧力値が上昇し始めており、時刻Cで子ボイラの蒸気圧力値は親ボイラの蒸気圧力値に追いついたことで、台数制御に使用する蒸気値を子ボイラ側に変更している。参照する蒸気圧力値を変更すると、そこから所定の不感時間が経過するまでは参照する蒸気圧力値の変更は行わないため、その間は子ボイラの蒸気圧力値の参照を継続する。その後、不感時間が経過した時刻Dで再び同じ稼働優先順位が第1位である親ボイラと子ボイラの蒸気圧力値を比較し、今度は親ボイラの蒸気圧力値を参照している。時刻Dからの不感時間は時刻Eまでであり、時刻Eからは蒸気圧力の比較が始まるが、ここでは親ボイラの蒸気圧力値の参照が継続している。そして時刻Fで親ボイラの稼働優先順位が第2位に変更され、第1位は子ボイラだけとなると、台数制御装置は子ボイラ側の蒸気圧力値を参照して台数制御を行う。上記のような制御を行うことで、各ボイラに設置している蒸気圧力検出装置による蒸気圧力値を参照しての台数制御を行うことができる。
【0032】
また、参照する蒸気圧力値を変更した場合に所定の不感時間経過後に双方の蒸気圧力を比較して台数制御を行うのは、次の理由によるものであり、図3を参照して説明する。図3は蒸気圧力の変化を示したものであり、蒸気圧力αと蒸気圧力βの時間による変化を示している。前提として2台のボイラは稼働優先順位が同じであり、検出している蒸気圧力値によって使用する蒸気圧力値を切り替えている状態である。ボイラでは検出される蒸気圧力値に対応させて燃焼量を決定するようにしており、圧力値がある設定値より高い区分に入ると、燃焼量を1段階減少する制御を行っている。図中の圧力Aは燃焼状態を変更する圧力としている。
【0033】
図3での時刻t1までは蒸気圧力αの方が高いため、より高い圧力の値に基づいて台数制御を行うルールに従い蒸気圧力αを基に台数制御を行っている。その後、時刻t1で圧力α<圧力βになると、時刻t1からは圧力βに基づく制御に切り替わる。圧力α<圧力βの状態が続くのであれば、しばらくの間は使用する側の蒸気圧力の変更は行われない。しかし図3では、蒸気圧力αは短時間で傾向が大きく変化しており、時刻t1以降に急激な上昇が発生していることで、時刻t1で圧力α<圧力βとなったものが、短い時間経過後の時刻t2で圧力β<圧力αに再逆転している。この場合、圧力値の高い方を採用する条件のみであると、時刻t2からは圧力値が極端に変化している圧力αの値で台数制御を行うことになる。圧力αの値は、その後に燃焼状態を変更する値Aを超えており、この値に基づくと、圧力αが圧力Aを超えた時点で燃焼状態を変更することになる。
【0034】
しかし、一度参照する圧力を切り換えると、不感時間Tの間は参照先を切り換えないというルールを適用すると、時刻t2以降も蒸気圧力値の変化が緩やかである圧力βを使用して台数制御を行うことになり、その場合には燃焼状態の変更は行われない。短時間でより高い圧力値の側が再度入れ替わるのは、短時間で圧力値の変化傾向が変化している場合であり、この様に検出蒸気値の切り換え後は所定の不感時間が経過するまでは再切り換えを行わないルールを設定しておくことで、瞬間・短時間の蒸気圧力の変化によって燃焼状態を必要以上に変化してしまうことを防止することができる。必要以上に燃焼量を変更することは、蒸気圧力値の無駄な変動を招き、特に両ボイラの稼働優先順位を同じにしている状態でボイラの燃焼量を変更する制御を行うと、2台とも燃焼量が変更されるため、燃焼量変更の影響は通常よりも大きくなり、蒸気圧力値の変動が発生しやすくなる。短時間での参照先の切り換えを抑制することで、このような状況で安定した燃焼を継続することができる。
【0035】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0036】
1A 親ボイラ
1B 子ボイラ
2 蒸気ヘッダ
3A 親ボイラ蒸気圧力検出装置
3B 子ボイラ蒸気圧力検出装置
4 台数制御装置
5A 親ボイラ運転制御装置
5B 子ボイラ運転制御装置
6 蒸気配管
7 通信装置

図1
図2
図3