(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】測定器具
(51)【国際特許分類】
G01F 23/292 20060101AFI20221223BHJP
G01F 23/2962 20220101ALI20221223BHJP
G01F 23/284 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
G01F23/292 B
G01F23/2962
G01F23/284
(21)【出願番号】P 2021172864
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2022-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146238
【氏名又は名称】株式会社マツシマメジャテック
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】重枝 季伸
(72)【発明者】
【氏名】山本 弘尚
(72)【発明者】
【氏名】白石 和久
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504719(JP,A)
【文献】特開2013-29452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0056258(US,A1)
【文献】国際公開第2020/060421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/14-23/2965
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報を表示する表示機器と通信可能に接続されるアンテナを有し、貯蔵設備に設置し該貯蔵設備内の粉体の貯蔵量を測定する測定器具であって、
前記アンテナは、レーザー、超音波又は電波の受発信を行い、該レーザー、該超音波又は該電波の受発信に基づいて前記貯蔵設備内の前記粉体の前記貯蔵量を測定し、
前記測定器具は、前記貯蔵設備に設置された状態において、前記アンテナの軸の角度を計測するための情報を取得する角度計測部と、
前記アンテナの軸の方位を計測するための情報を取得する方位計測部と、
前記角度計測部が取得した前記アンテナの軸の角度を計測するための情報と、前記方位計測部が取得した前記アンテナの軸の方位を計測するための情報とに基づいて、前記アンテナの軸の角度と方位を演算する演算部と、
該演算部が演算した、前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを記憶している記憶部と
、
前記記憶部が記憶している前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを前記表示機器に送信する送受信部と
を備え
、
前記送受信部は、前記表示機器の表示部に、前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを表示するように構成され、
前記貯蔵設備に前記測定器具を取り付け直す際に、前記表示部に前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを表示させるとともに、前記表示部に前記取り付け直す前記測定器具のアンテナの軸の角度と方位とを表示させるように構成され、
前記角度計測部が加速度センサであり、
前記方位計測部が磁気センサである
ことを特徴とする測定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器具に関し、具体的には、効率的な測定が可能になる設置位置を数値で特定することができる測定器具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、粉体プロセスの状態量を検出するためには、計測する粉体状の特性及び挙動を的確に把握しなければならない。また、プロセス全体の安定化を図らなければならず、その安定化のための1つの道具として計測用機器があり、その中でも「レベル計」と呼ばれているものがある。レベル計は、貯蔵器における貯蔵レベルがどれくらいであるかをリアルタイムで把握することが可能となる機器である。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の発明のように、汎用性を向上させるとともに対象面を正確に測定できる電波式レベル計及びレベル計の調整方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクやサイロ、ヤードなどの貯蔵設備において、各種の貯蔵物の貯蔵量を測定するために、貯蔵設備の上部に非接触式のレベル計を設置することがある。レベル計の下部にアンテナを設け、アンテナによる超音波や電波などの受発信に要した時間を用いて対象物までの距離を換算し、換算した距離に基づいて貯蔵量を測定する。設置された環境によっては、梁や突起などの障害物がある場合があり、正確に貯蔵量を測定するためにはアンテナを最適な設置角度や方位に調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、測定の対象となる貯蔵物の堆積形状や環境によっては、アンテナの設置角度や方位の調整を行うことがあるが、これらの作業に多大な時間を要する。同様に、レベル計の保守や修理などによってレベル計を取り外したり、レベル計を交換する場合や、レベル計自体を更新する場合などは、アンテナの設置角度や方位を正確に当初の最適な状況に復帰させる必要があるが、これらの作業にも多大な時間を要し、作業員や工場管理者の大きな負担となっている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、アンテナの貯蔵設備に対する最適な設置位置を角度と方位といった数値で特定することができる測定器具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定の情報を表示する表示機器と通信可能に接続されるアンテナを有し、貯蔵設備に設置し該貯蔵設備内の粉体の貯蔵量を測定する測定器具であって、前記アンテナは、レーザー、超音波又は電波の受発信を行い、該レーザー、該超音波又は該電波の受発信に基づいて前記貯蔵設備内の前記粉体の前記貯蔵量を測定し、前記測定器具は、前記貯蔵設備に設置された状態において、前記アンテナの軸の角度を計測するための情報を取得する角度計測部と、前記アンテナの軸の方位を計測するための情報を取得する方位計測部と、前記角度計測部が取得した前記アンテナの軸の角度を計測するための情報と、前記方位計測部が取得した前記アンテナの軸の方位を計測するための情報とに基づいて、前記アンテナの軸の角度と方位を演算する演算部と、該演算部が演算した、前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを記憶している記憶部と、前記記憶部が記憶している前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを前記表示機器に送信する送受信部とを備え、前記送受信部は、前記表示機器の表示部に、前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを表示するように構成され、前記貯蔵設備に前記測定器具を取り付け直す際に、前記表示部に前記アンテナの軸の最適な角度と方位とに関するデータを表示させるとともに、前記表示部に前記取り付け直す前記測定器具のアンテナの軸の角度と方位とを表示させるように構成され、前記角度計測部が加速度センサであり、前記方位計測部が磁気センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、アンテナの角度を計測するための情報と方位を計測するための情報を取得することによって、貯蔵設備におけるアンテナの設置位置を特定しやすくなり、粉体の貯蔵物を計測するために、容易にレベル計の保守、交換、更新をすることができ、作業員や工場管理者の負担を軽減することができる。また、角度計測部が取得したアンテナの軸の角度を計測するための情報と、方位計測部が取得したアンテナの軸の方位を計測するための情報とに基づいて、アンテナの軸の角度と方位を演算する演算部をさらに有するので、アンテナの角度と方位を演算して、貯蔵設備に設置するアンテナの最適な角度と方位を数値で示すことができ、より正確かつ迅速にレベル計の保守、交換、更新をすることができる。さらに、アンテナがレーザー、超音波又は電波の受発信を行い、レーザー、超音波又は電波の受発信により貯蔵設備内の粉体の貯蔵量を非接触により測定するため、レベル計の可動部や消耗品がなく、メンテナンス性に優れたレベル計を提供することができる。また、記憶部がアンテナの軸の最適な角度と方位に関する数値を記憶しているため、記憶部が記憶しているこれらの情報を表示機器に送信し、表示機器に表示をさせることによって貯蔵設備に対するアンテナの軸の最適な角度と方位に関する数値を確認しながら、貯蔵設備に対して新たなレベル計を取り付けることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、加速度センサによりアンテナの加速度を計測し、磁気センサによりアンテナの磁束密度を計測するので、粉体の貯蔵物を計測するために、アンテナの設置位置をより最適な角度及び方位を数値で特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係るレベル計1を設置した貯蔵設備4の図の概略断面図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係るレベル計1の構成を示すブロック図である。
【
図3】この発明の実施の形態に係るレベル計1の演算部14によって求められたアンテナ2の確度と方位に関する数値が、専用のソフトウェアを用いることによって表示されている画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態について、
図1から
図3までを用いて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係るレベル計1を設置した貯蔵設備4の図の概略断面図である。
【0019】
レベル計1は、レベル計1の下部にアンテナ2を設け、貯蔵設備4に固定するためのフランジ3を備えている。レベル計1は、貯蔵設備4内にアンテナ2が位置するように貯蔵設備4の開口部から挿通させ、アンテナ2の角度と方位を任意に調整することができ、所定の位置に固定することができる状態でフランジ3によって貯蔵設備4に固定される。なお、貯蔵設備4の開口部が密閉状態ではなく開放されている場合には、レベル計1は、貯蔵設備4に備えられている支柱(図示せず)などにフランジ3やネジを用いて固定されることがある。
【0020】
レベル計1の上部には複数のセンサが設けられている。ここでは、
図2に示す角度計測部12としての加速度センサと方位計測部13としての磁気センサの2つのセンサがレベル計1の上部に設けられている場合を例として説明する。角度計測部12は、加速度センサに限られず、貯蔵設備4に対するアンテナ2の角度を計測するための情報を取得する機能を有していれば、どのようなセンサを用いても良い。また、方位計測部13は、磁気センサに限られず、貯蔵設備4に対するアンテナ2の方位を計測するための情報を取得する機能を有していれば、どのようなセンサを用いても良い。なお、貯蔵設備4に対するアンテナ2の角度を計測するための情報と方位を計測するための情報を取得することができるのであれば、レベル計1に設けられるセンサの場所は問わない。
【0021】
加速度センサは、物体の加速度を計測する機器であり、主に圧電型加速度センサ、サーボ型加速度センサ、ひずみゲージ型加速度センサ及び半導体式加速度センサに分類される。
【0022】
磁気センサは、磁場の大きさや方向を計測することを目的とした機器であり、コイル、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、ウィーガント・ワイヤ、フラックス・ゲートセンサ、ファラデー素子、プロトン磁力計、電気力学的磁気センサ、超電導量子干渉素子などの種類がある。
【0023】
本発明の実施の形態においては、加速度センサと磁気センサの種類は問わないが、小型で低消費電力のため、静電容量型の加速度センサとホール素子の磁気センサを用いることが好ましい。
【0024】
図2のブロック図を用いて、レベル計1の構成について説明する。
【0025】
図2に示すとおり、レベル計1は、測定部11と、上記角度計測部12と、上記方位計測部13と、演算部14と、送受信部15とを備えており、これらは、それぞれの間においてバス接続されており、各種の信号やデータの伝送がされる。
【0026】
測定部11は、アンテナ2によって実行されるものであり、後述するとおり、レーザー(光など)、超音波や電波(マイクロ波、ミリ波など)などの測距センサによる受発信に要した時間を測定する。測定部11は、測定した時間に基づいてアンテナ2から貯蔵物5までの距離を計測し、計測した距離に基づいて貯蔵設備4に貯蔵されている貯蔵物5の量を測定する。また、測定部11は、測距センサによる受発信により生じた波形を測定する。後述するようにリアルタイムで貯蔵物5の量を監視する場合には、送受信部15から後述する表示機器に対して、測定部11が測定した貯蔵物5の量に関するデータを送信させ、受信させた表示機器の表示部(図示せず)に表示されている貯蔵物5の量に関するデータを確認しても良い。
【0027】
角度計測部12は、アンテナ2の角度を計測するための情報として、たとえば、貯蔵設備4に対するアンテナ2の各軸の加速度x、y、zを計測する機能を有する。この実施例では、加速度センサが角度計測部12として機能する。
【0028】
方位計測部13は、アンテナ2の方位を計測するための情報として、たとえば、貯蔵設備4に対するアンテナ2の各軸の磁束密度X、Y、Zを計測する機能を有する。この実施例では、磁気センサが方位計測部13として機能する。
【0029】
演算部14は、バスを介して伝送された、角度計測部12が計測した各軸の加速度x、y、zと、方位計測部13が計測した各軸の磁束密度X、Y、Zとに基づいて、後述する数式1及び数式2を用いて計算することにより、貯蔵物5の量を計測するために、貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な設置状態を角度と方位を演算し、アンテナ2の最適な角度と方位を数値で示すことができる。なお、演算部14の機能は、後述する表示機器など、レベル計1以外の機器や端末において実行させても良い。
【0030】
アンテナ2の貯蔵設備4に対する最適な設置状態を示す角度と方位に関する数値は、以下の計算式により求めることができる。まず、角度計測部12としての加速度センサを用いて、各軸の加速度x、y、zを計測する。アンテナ2の角度は地面に対して垂直方向をZ軸とし、アンテナ2の軸が地面に対して垂直になっている状況を0°、0°からアンテナ2の傾きを求める。各軸の加速度x、y、zの単位として、mm/s2を用いることができる。貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な角度は、次の数式1により求めることができる。
【0031】
【数1】
貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な角度を求めた後に、方位計測部13としての磁気センサを用いて、各軸の磁束密度X、Y、Zを計測する。北向きを0°とし、方位を数値などで表示する。各軸の磁束密度X、Y、Zの単位として、μTを用いることができる。貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な方位は、次の数式2により求めることができる。
【0032】
【数2】
数式1の計算の結果、貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な角度が数値として求められ、数式2の計算の結果、貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な方位が数値として求められる。これらによって、貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な設置状態としての角度と方位の数値を、後述する表示機器に表示をすることができる。
【0033】
アンテナ2の角度とは、具体的にはアンテナ2の鉛直線と、アンテナ2の軸線とからなる角度をいう。また、アンテナ2の方位とは、アンテナ2の軸が向いている方位をいう。
【0034】
送受信部15は、所定の機器(以下、「表示機器」という。)にダウンロードされている専用のソフトウェア(以下、「専用ソフトウェア」という。)からレベル計1に対する送信要求の信号を受信するとともに、送信要求の信号を受信した時点のアンテナ2の角度を計測するための情報と方位を計測するための情報(たとえば、アンテナ2の加速度と磁束密度)、貯蔵設備4に対するアンテナ2の角度や方位に関する数値の情報、測定部11が測定した波形やアンテナ2から貯蔵物5までの距離に関する情報、貯蔵設備4の内部の温度に関する情報などを、表示機器に送信する。
【0035】
専用ソフトウェアと表示機器について説明をする。専用ソフトウェアは、専用ソフトウェアからレベル計1に対して送信要求の信号を発することによって、レベル計1が送信要求の信号を受信した時点でのアンテナ2に関する上記の情報を送受信部15から表示機器に送信させる機能を実行するプログラムであり、これらの機能を実行するプログラムであれば、種類は問わない。専用ソフトウェアをダウンロードさせる表示機器は、パソコン、スマートフォン、タブレット端末などである。レベル計1と、表示機器とは、Bluetooth(登録商標)や無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信により、相互に通信が可能となる。レベル計1から表示機器に送信されたアンテナ2の角度と方位に関する数値などは、表示機器の表示部(図示せず)に表示される。
【0036】
図1に示すアンテナ2は、発信部(図示せず)がレーザー(光など)、超音波や電波(マイクロ波、ミリ波など)を発信してから、貯蔵物5の表面で反射し、反射波を受信部(図示せず)が受信するまでの往復時間を計測し距離に換算する。アンテナ2が換算した距離に基づいて、アンテナ2は、貯蔵物5の量を測定することができる。レベル計1は、アンテナ2によるレーザー(光など)、超音波や電波(マイクロ波、ミリ波など)の発信と、反射波の受信とを常時行わせることによって、貯蔵設備4にある貯蔵物5の量をリアルタイムで把握することができる。アンテナ2は、貯蔵設備4に貯蔵されている貯蔵物5の量を正確に測定することができる精度であれば、アンテナ2の種類や形状を問わない。
【0037】
図3を用いて、この発明の実施の形態に係るレベル計1の演算部14によって求められたアンテナ2の確度と方位に関する数値が、専用ソフトウェアを用いることによって表示されている画像について説明する。
図3は、アンテナ2が貯蔵設備4に設置されている状態を表示している。
図3にある方位盤の矢印は、N(北)の位置を0°としてアンテナ2は、角度が0°、方位がN(北)0°の状態で貯蔵設備4に設置されている。アンテナ2の方位の表示方法としては、
図3のように8方位と方位角を組み合わせても良いし、16方位のみでも良いし、方位角のみを用いても良い。アンテナ2の方位が明らかになるのであれば、表示方法に限定はない。
【0038】
図3に示している「操作」の右側にある「開始」をクリックやタッチなどをすることによって、アンテナ2の加速度と磁束密度を測定の準備を開始する状態になる。そして、
図3に示している「操作」の右側にある「実行」をクリックやタッチなどをすることによって、専用ソフトウェアからレベル計1に対して送信要求の信号を発する。送受信部15が送信要求の信号を受信すると、たとえば、レベル計1に備えられている角度計測部12と方位計測部13が貯蔵設備4に設置されているアンテナ2の加速度と磁束密度に関する情報を連続して取得し、表示機器の表示部(図示せず)に表示される。
図3に示している「操作」の右側にある「停止」をクリックやタッチなどをすることによって、アンテナ2の加速度と磁束密度に関する情報の取得を停止する。角度計測部12と方位計測部13がアンテナ2の加速度と磁束密度に関する情報を取得した後、演算部14は、加速度と磁束密度とに基づいて、貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な角度と方位に関する数値を求める。送受信部15は、演算部14が求めたアンテナ2の最適な角度と方位に関する数値を送信し、表示機器の表示部(図示せず)にアンテナ2の最適な角度と方位に関する数値が表示される。
【0039】
図1に示すフランジ3は、レベル計1を貯蔵設備4の開口部に固定させるための接続部品で、貯蔵設備4への固定状態でアンテナ2を稼働させることでアンテナ2の角度と方位を任意に調整できるようになっている。
【0040】
貯蔵設備4は、タンク、サイロ、ヤードなど、工業原料や農産物、飼料などを貯蔵することができる設備である。貯蔵設備4において、主に液体、個体、粉体の状態の物質を貯蔵するが、貯蔵する物質の状態は、これらに限られない。また、貯蔵設備4の開口部は、上記のとおり、密閉状態のときもあれば、開放状態のときもある。
【0041】
貯蔵物5は、貯蔵設備4で貯蔵されるものであり、原料や農産物、飼料などが該当する。上記のとおり、貯蔵物5は、貯蔵設備4に貯蔵されるものであれば、液体、個体、粉体など物質の状態を問わない。
【0042】
次に、レベル計1を貯蔵設備4に最初に設置する際のアンテナ2の最適な角度と方位の定め方について、説明する。表示機器に表示される表示部(図示せず)を観測しながら、まずはアンテナ2の反射状態が最も安定する角度を探索する。探索の過程でアンテナ2の角度と方位を調整していき、反射状態が最も安定した時に、専用ソフトウェアによってその時の角度と方位を読み取らせる。この際、専用ンソフトウェアによって表示部(図示せず)に表示される測定部11が測定した貯蔵物5の波形に関する情報を確認しながら行っても良い。精緻な調整が必要な場合には、貯蔵物5の投入の影響や投入・抜出による堆積形状の変化を確認することによって、アンテナ2の角度と方位の最適な状態を定める。貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な設置状態であるアンテナ2の角度と方位の数値は、公知の方法で記録することができる。貯蔵設備4に貯蔵されている貯蔵物5の内容が変わったことによりアンテナ2を調整する必要が生じた場合にも、同様の手順によってアンテナ2の角度と方位を調整して最適な設置位置にすることができる。
【0043】
後述するような記憶部を備えていない場合に、レベル計の故障などを原因として、レベル計1を交換する必要があるときは、上記のように公知の方法で記録したアンテナ2の最適な設置状態としての角度と方位に関する数値に基づいて、貯蔵設備4に備えられているレベル計1の交換を行う。たとえば、表示機器の表示部(図示せず)にアンテナ2の最適な角度と方位に関する数値を表示させながら、レベル計1の角度と方位の調整を行い、貯蔵設備4における最適な設置状態になるようにレベル計1の交換を行う。
【0044】
上記の「反射状態が最も安定する角度」について説明する。貯蔵設備4に貯蔵される貯蔵物5の量をアンテナ2が計測する際に、貯蔵物5の傾斜角度によって、レーザー(光など)、超音波や電波(マイクロ波、ミリ波など)の反射角度が異なる。貯蔵物5の貯蔵されている状況によって反射波が弱く反射が小さくなってしまう場合がある。この反射波がより受信できる角度(反射波が大きく得られる角度)のことを「反射状態が最も安定する角度」といい、アンテナ2の最適な角度を指す。
【0045】
なお、レベル計1は、貯蔵物5の量を計測するために、演算部14によって演算された貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な設置位置(アンテナ2の最適な角度と方位の数値)に関するデータを記憶する記憶部を備えても良い。レベル計1に記憶部を備えた場合、貯蔵設備4の形状や貯蔵物5の物質の状態などによって、最適に貯蔵物5の量を測定することができるアンテナ2の設置位置(アンテナ2の最適な角度と方位の数値)は異なるため、記憶部は、貯蔵設備4の形状や貯蔵物5の物質の状態などに応じて、貯蔵物5の量を測定するための貯蔵設備4におけるアンテナ2の最適な設置位置(アンテナ2の最適な角度と方位の数値)に関するデータを記憶させても良い。もちろん、レベル計1ではなく、表示機器に記憶部を備えても良い。
【0046】
記憶部がアンテナ2の最適な設置位置(アンテナ2の最適な角度と方位の数値)に関するデータを記憶している場合には、レベル計1を交換する際にこれらのデータを活用することができる。たとえば、記憶部がアンテナ2の最適な角度と方位に関する数値を記憶しているため、送受信部15が、記憶部が記憶しているこれらの情報を表示機器に送信し、表示機器に表示をさせることができる。表示機器によって表示されている貯蔵設備4に対するアンテナ2の最適な角度と方位に関する数値を確認しながら、貯蔵設備4に対して新たなレベル計1を取り付けることができる。そのため、多大な時間を要することなく、容易にレベル計1の交換を行うことができるようになる。
【0047】
なお、記憶部が記憶している貯蔵設備4におけるアンテナ2の最適な設置位置(アンテナ2の角度と方位の数値)に関するデータに基づいて、貯蔵物5の量を測定するために、貯蔵設備4に対するアンテナ2の角度及び方位が最適な位置になるようにアンテナ2を自動的に動かせて調整できる機能を備えても良い。
【0048】
また、リアルタイムで複数の貯蔵設備4における貯蔵物5の量を監視するために、複数のレベル計1との間で通信可能に接続された他の機器や端末を用いて一括で管理しても良い。
【0049】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1・・・レベル計
2・・・アンテナ
3・・・フランジ
4・・・貯蔵設備
5・・・貯蔵物
11・・・測定部
12・・・角度計測部
13・・・方位計測部
14・・・演算部
15・・・送受信部
【要約】
【課題】アンテナの貯蔵設備に対する角度と方位に基づいてアンテナの最適な設置位置を数値で特定することができる測定器具を提供する。
【解決手段】アンテナを有し、貯蔵設備に設置し貯蔵設備内の貯蔵量を測定する測定器具であって、測定器具は、アンテナの角度を計測するための情報を取得する角度計測部と、アンテナの方位を計測するための情報を取得する方位計測部とを有する。
【選択図】
図1