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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20221223BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/02 C
E04H9/02 341D
E04H9/02 331D
E04H9/02 351
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022009772
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2022122260
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】110105077
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】503416331
【氏名又は名称】國立臺灣科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】許丁友
(72)【発明者】
【氏名】汪向榮
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019849(JP,A)
【文献】特開2000-074135(JP,A)
【文献】特開平11-351318(JP,A)
【文献】特開2018-071599(JP,A)
【文献】特開平04-161678(JP,A)
【文献】特開2022-088760(JP,A)
【文献】特開2021-014905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板及び下板を含む免震サポートと、
回転ロッド及びフライホイールを含み、前記回転ロッドは前記上板の側辺に設置されていると共に上端及び下端を有し、前記回転ロッドの下端は前記下板の側辺まで延伸され、前記回転ロッドの上端は前記フライホイールを連動させ、前記上板及び前記下板が相対変位すると、変位応答を低下させるための慣性係数を提供する慣性ユニットと、を備えていることを特徴とする、
免震装置。
【請求項2】
前記免震サポートは前記下板の側辺に設置されているラックを更に備え、前記慣性ユニットはギアと、ギア組立部材と、電磁ダンパーと、を更に含み、前記ギアは前記回転ロッドの下端に設置されていると共に前記ラックに噛合し、前記ギア組立部材は前記回転ロッドを介して前記電磁ダンパーと連動し、前記電磁ダンパーは前記回転ロッドを介して前記フライホイールと連動していることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記ギア組立部材は変速ギア部材であり、前記電磁ダンパーは発電用モーターであることを特徴とする請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記免震サポートは、前記上板と前記下板との間に位置している少なくとも1つのローラーと、前記上板の側辺に設置されているベアリングと、前記ベアリングを前記上板の側辺に固定するための取付金具と、を更に備え、これにより前記回転ロッドを前記ベアリング中に貫設していることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項5】
前記下板の上面には少なくとも1つの下部リセット溝を有し、前記上板の下面には前記下部リセット溝に対応する少なくとも1つの上部リセット溝を有し、前記少なくとも1つのローラーは前記上部リセット溝と前記下部リセット溝との間に位置していることを特徴とする請求項4に記載の免震装置。
【請求項6】
第二慣性ユニットを更に備え、前記免震サポートは天板及び少なくとも1つのローラーを更に含み、前記天板は前記上板の上方に設置され、前記少なくとも1つのローラーは前記天板と前記上板との間に設置され、前記第二慣性ユニットは前記天板及び前記上板の側辺に設置され、前記天板及び前記上板が相対変位すると、変位応答を低下させるための他の慣性係数を提供し、前記天板及び前記上板が発生させる相対変位の方向は前記上板及び前記下板が発生させる相対変位の方向とは異なっていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項7】
前記フライホイールは可変慣性機構を備えたフライホイールであり、前記可変慣性機構を備えたフライホイールは前記回転ロッドの回転速度の違いに従って異なる慣性係数を提供することを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項8】
前記可変慣性機構を備えたフライホイールは少なくとも2つのガイドロッドと、2つの質量ブロックと、2つのバネと、を備え、前記各ガイドロッドの一端は前記回転ロッドに固定され、他端はバッフルを有し、前記2つのバネは前記2つのガイドロッドにそれぞれ覆設され、前記2つのガイドロッドは前記2つの質量ブロックをそれぞれ貫通し、前記各質量ブロックが前記各バネの一端に連結され、前記各バネの他端は前記回転ロッド及び前記バッフルのうちの何れか1つに選択的に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の免震装置。
【請求項9】
前記免震サポートの前記下板は床スラブの上方に設置され、前記上板の上面には高床が設置されていることを特徴とする請求項8に記載の免震装置。
【請求項10】
前記慣性ユニットの数量は少なくとも2つであり、共に前記免震サポートの同じ側辺に設置されている第一慣性ユニット及び第二慣性ユニットを含み、前記第一慣性ユニットは第一クラッチ及び第一フライホイールを備え、前記第二慣性ユニットは第二クラッチ及び第二フライホイールを備え、前記上板が前記下板に対し第一方向に変位すると、前記第一クラッチが前記第一フライホイールを反時計回りに回転するように連動すると同時に前記第二フライホイールを静止させ、前記上板が前記下板に対し第二方向に変位すると、前記第二クラッチが前記第二フライホイールを時計回りに回転するように連動すると同時に前記第一フライホイールを静止させることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置に関し、より詳しくは、慣性ユニット(inerter)を利用した免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震が発生すると、建築物に亀裂が入る、傾斜する、装飾品が倒れる、精密機械設備が損壊する、更には人が死傷する等、多くの財産が失われる。
【0003】
地震に伴う上述の多くの問題を軽減するため、市場には傾斜ローリングタイプアイソレーター(sloped rolling-type isolator、SRI)が登場し、前述の動産や不動産を支え、地震が発生した際に、水平力が引き起こす影響を低減させている。前述の傾斜ローリングタイプアイソレーターは主に伝達加速度を大幅に低下させて安定値にし、地震により干渉されて共振し難くし、良好な自律復位能力を更に備え、地震後に免震サポートが初期状態に戻るようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したSRIが速度パルスを有している地震に遭うと、変位応答が過大になり、SRIの内部構造が衝突していた。即ち、SRIが大きな地表面加速度(即ち、大きな地震が発生させる加速度)の作用を受けると、SRIの最大変位応答が容易に設計範囲を超えて衝突が発生し、保護すべき設備が損壊していた。
【0005】
免震サポートが前述の問題を回避するための既知の方法として、内設されている滑動摩擦ダンパーを増設することで、地震の水平力がもたらす変位応答を抑制する方法がある。しかし、この方法では過大な加速反応が伝送されるのを避けられず、地震後に残留変位が生じるという問題があった。
【0006】
また、建築物に同調質量ダンパー(Tuned Mass Damper、略称TMD)を増設する方法もある。TMDは質量ブロック、バネ、及びダンパーシステムで構成され、一般的には建築構造の違いに基づいて、建築物に支持または懸装し、建築物の振動エネルギーをTMDに転移して建築物本体の振動を低下させている。しかしながら、従来のTMDは巨大な質量を持つ質量ブロックにより制動作用を実現しているため、質量ブロックの質量は建築構造全体の数%にもなり、価格も高かった。また、101ビルディングのように建築室内の広い空間を占拠してしまった。なお、水/氷の貯蔵ボックスを質量ブロックとすることもあった。
【0007】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、その目的は、従来のSRIの変位応答が過大であり、従来のTMDには大質量で体積も大きい質量ブロックが必要である等の問題を改善し、加速反応及び変位応答を緩和する免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の免震装置は、上板及び下板を含む免震サポートと、回転ロッド及びフライホイールを含み、前記回転ロッドは前記上板の側辺に設置されていると共に上端及び下端を有し、前記回転ロッドの下端は前記下板の側辺まで延伸され、前記回転ロッドの上端は前記フライホイールを連動させ、前記上板及び前記下板が相対的変位すると、変位応答を低下させるための慣性係数を提供する慣性ユニットと、を備えている。
【0010】
また、本発明に係る免震装置において、前記慣性ユニットは前記回転ロッドの下端に設置されているギアを更に備え、前記免震サポートは前記下板の側辺に設置されていると共に前記ギアに噛合しているラックを更に備えている。前記ギアは前記回転ロッドの下端に設置されていると共に前記ラックに噛合し、前記ギア組立部材は前記回転ロッドを介して前記電磁ダンパーと連動し、前記電磁ダンパーは前記回転ロッドを介して前記フライホイールと連動している。
【0011】
また、本発明に係る免震装置において、前記ギア部材は変速ギア部材であり、前記電磁ダンパーは発電用モーターである。
【0012】
また、本発明に係る免震装置において、前記免震サポートは、前記上板と前記下板との間に位置している少なくとも1つのローラーと、前記上板の側辺に設置されているベアリングと、前記ベアリングを前記上板の側辺に固定するための取付金具と、を更に備え、これにより前記回転ロッドを前記ベアリング中に貫設している。
【0013】
また、本発明に係る免震装置において、前記下板の上面には少なくとも1つの下部リセット溝を有し、前記上板の下面には前記下部リセット溝に対応する少なくとも1つの上部リセット溝を有し、前記少なくとも1つのローラーは前記上部リセット溝と前記下部リセット溝との間に位置している。
【0014】
また、本発明に係る免震装置において、第二慣性ユニットを更に備え、前記免震サポートは天板及び少なくとも1つのローラーを更に含み、前記天板は前記上板の上方に設置され、前記ローラーは前記天板と前記上板との間に設置されている。前記第二慣性ユニットは前記天板及び前記上板の側辺に設置され、前記天板及び前記上板が相対的に変位すると、変位応答を低下させるための他の慣性係数を提供する。前記天板及び前記上板が発生させる相対的変位の方向は、前記上板及び前記下板が発生させる相対的変位の方向とは異なっている。
【0015】
また、本発明に係る免震装置において、前記フライホイールは可変慣性機構を備えたフライホイールであり、前記可変慣性機構を備えたフライホイールは前記回転ロッドの回転速度の違いに従って異なる慣性係数を提供する。
【0016】
また、本発明に係る免震装置において、前記可変慣性機構を備えたフライホイールは少なくとも2つのガイドロッドと、2つの質量ブロックと、2つのバネと、を備えている。前記各ガイドロッドの一端は前記回転ロッドに固定され、前記2つのバネは前記2つのガイドロッドにそれぞれ覆設されている。前記2つのガイドロッドは前記2つの質量ブロックをそれぞれ貫通し、前記各質量ブロックが前記各バネの一端に連結されている。前記各ガイドロッドの他端はバッフルを有し、前記各バネの他端は前記回転ロッド及び前記バッフルのうちの何れか1つに選択的に固定されている。
【0017】
また、本発明に係る免震装置において、前記免震サポートの前記下板は床スラブの上方に設置され、前記上板の上面には高床が設置されている。
【0018】
また、本発明に係る免震装置において、前記慣性ユニットの数量は少なくとも2つであり、共に前記免震サポートの同じ側辺に設置されている第一慣性ユニット及び第二慣性ユニットを含む。前記第一慣性ユニットは第一クラッチ及び第一フライホイールを備え、前記第二慣性ユニットは第二クラッチ及び第二フライホイールを備えている。前記上板が前記下板に対し第一方向に変位すると、前記第一クラッチが前記第一フライホイールを反時計回りに回転するように連動すると同時に前記第二フライホイールを静止させる。前記上板が前記下板に対し第二方向に変位すると、前記第二クラッチが前記第二フライホイールを時計回りに回転するように連動すると同時に前記第一フライホイールを静止させる。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明に係る免震装置は主に免震サポートが上板及び下板の間で相対的変位すると、慣性ユニットの回転ロッド及び回転ロッドと連動しているフライホイールを駆動させ、これにより慣性係数を提供し、上板及び下板が発生させる相対的変位の反応程度を減少させ、免震サポートが衝突して免震効果に影響するのを回避し、好ましい免震効果を提供する目的を達成する。
また、本発明に係る免震装置が天板及び第二慣性ユニットを更に備えている場合、異なる方向からの相対的変位の反応程度を減少させ、更に好ましい免震効果を提供する。本発明に係る免震装置に可変慣性機構を増設した後、免震装置の反応が大きい場合に、慣性係数を大幅に増加するように制御することで、免震装置の変位及び速度反応を大幅に低下させ、且つ加速反応を免震装置を装設していないときよりも小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例に係る免震装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1実施例に係る免震装置の使用状態を示す概略図である。
図3】本発明の免震装置の地震時の状態を示す概略図である。
図4】本発明の第2実施例に係る免震装置を示す概略構成図である。
図5】従来技術による傾斜ローリングタイプアイソレーター(sloped rolling-type isolator)の変位と加速度との関係を示す概略図である。
図6】本発明に係る免震装置の変位と加速度との関係を示す概略図である。
図7】本発明の第3実施例に係る免震装置を示す概略構成図である。
図8A】本発明の第4実施例に係る免震装置の側面構成と地震時の状態を示す概略図である。
図8B】本発明の第4実施例に係る免震装置を示す上面図である。
図9A】本発明の可変慣性機構を備えたフライホイールが低速な状態の上面図である。
図9B】本発明の可変慣性機構を備えたフライホイールが高速な状態の上面図である。
図10】本発明に係る免震装置が免震床スラブを形成するために適用される概略図である。
図11A】本発明のクラッチを備えた免震装置の概略側面図である。
図11B】本発明のクラッチとそのラチェット、デテントと上板間の動作関係を上から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本明細書に添付する図面に描写されている構造、比率、大きさ等は、全て明細書に記載の内容に対応させ、この技術に習熟する者に閲読させて理解を促すためにすぎず、本発明の可能な実施条件を限定するものではない。よって、技術的に実質的な意義はなく、あらゆる構造の修飾、比率に関する改変、大きさの調整も、本発明が発生させる効果及び達成する目的に影響を与えなければ、全て本発明に記載の技術内容の範囲内に含まれる。また、本明細書で引用する「上」及び「側」等の用語は、説明を明確にするために用いているにすぎず、本発明の実施可能な範囲を限定するものではなく、その相対的な関係の改変や調整も、技術内容を実質的に変更しないものであれば、本発明の実施可能な範囲に含まれる。
【0023】
図1は本発明の第1実施例に係る免震装置を示す概略構成図である。図2は本発明の第1実施例に係る免震装置の使用状態を示す概略図である。図3は本発明の免震装置の地震時の状態を示す概略図である。
図2に示すように、本発明に係る免震装置100は、物30を積載するための免震サポート10及び免震サポート10の側辺に設置されている慣性ユニット20を備え、地震が発生した際に、地表の水平力により免震サポート10内部で相対的に変位し、慣性ユニット(inerter)20が動作するように連動し、慣性係数(inertance)を提供する。
【0024】
以下、本発明に係る免震装置を図1図11Bに基づいて説明する。免震サポート10は上板11と、下板12と、上板11と下板12との間に位置している少なくとも1つのローラー13と、を備えている。下板12の上面には下部リセット溝121が更に形成され、ローラー13が下部リセット溝121中に設置されている。また、上板11の下面には下部リセット溝121に対応する上部リセット溝111が形成されている。一実施例において、下部リセット溝121はV型溝であり、上部リセット溝111は逆V型溝である。但し、下部リセット溝121及び上部リセット溝11は例えば半楕円形等でもよく、本発明はこれに限定されない。これにより、上部リセット溝111と下部リセット溝121との間に位置限定空間が形成されている。
ローラー13が上部リセット溝111と下部リセット溝121との間に形成されている位置限定空間中に設置され、地震が発生した際に、免震サポート10の下板12が地表の水平力により押動されて免震サポート10が水平方向に変位し、ローラー13が転動し、上板11と下板12との間に相対的変位が生じる。本実施例では、ローラー13、上部リセット溝111、及び下部リセット溝121の数量は各々2つ設置されているが、但しこれに限られない。
【0025】
免震サポート10には慣性ユニット20を設置するためのベアリング14、及びベアリング14を上板11の側辺に固定するための取付金具15が更に設置されている。慣性ユニット20はベアリング14及び取付金具15により免震サポート10の側辺に回転可能に設置されている。また、免震サポート10は下板12の側辺にラック16が更に横設されている。
【0026】
慣性ユニット20は、ベアリング14により上板11の側辺に回転可能に設置されている回転ロッド21、及び回転ロッド21の上端と連動するフライホイール22を備えている。回転ロッド21の下端は下方に向けて下板12箇所まで延伸されている。具体的には、慣性ユニット20の回転ロッド21は免震サポート10のベアリング14中に設置され、回転ロッド21がベアリング14の助けを借りてスムーズに回転し、これにより回転過程で発生する摩擦力を減少させることで、回転ロッド21の回転が不順になって上板11と下板12との間の変位過程で詰まってしまい、上板11が積載している物30が受ける力が不均一になって損壊することがないようにしている。また、慣性ユニットの耐用年数も延長している。
【0027】
回転ロッド21の下端には免震サポート10のラック16に対応するギア23が更に設置されている。回転ロッド21は下端に設置されたギア23により免震サポート10のラック16と噛合するように接触している。これにより、図3に示すように、下板12が受力して変位すると、ラック16が下板12の変位に従ってギア23を連動させ、ギア23が回転することにより回転ロッド21が駆動され、回転ロッド21と連動しているフライホイール22が連動する。
これにより、免震サポート10の上板11と下板12との間に相対的な変位が発生すると、慣性係数を提供する。慣性係数は慣性ユニット20中で慣性力と上板11及び下板12との間の相対加速度の比率であり、上板11と下板12との間の変位応答を大幅に低下させ、変位応答過程で摩擦により減衰振動が過大になって地震後に残留変位が生じる問題を更に回避している。
【0028】
図4は本発明の第2実施例に係る免震装置を示す概略構成図である。図4に示すように、本実施例の免震装置100Aは第1実施例の構造と略同じであり、異なる箇所は、慣性ユニット20’がギア組立部材24及び電磁ダンパー25を更に備えている点である。以下、差異について詳述し、技術内容が同じであるものについては説明を省略する。
【0029】
ギア組立部材24は上板11または側辺に固定され、且つ回転ロッド21を介してフライホイール22と連動している。本実施例では、ギア部材24はギアボックス(Gearbox)のような変速ギア部材であり、回転ロッド21がフライホイール22に伝送する回転速度を変換する効果を達成しているが、本発明はこれに限定されない。
上板11と下板12との間に相対的な水平変位が存在する場合、ラック16は下板12の変位に従って同時にギア23を回転させ、ギア23により回転ロッド21を回転するように連動する。ギア組立部材24が回転ロッド21の回転速度を速めることで、フライホイール22の回転速度も追随して速くなり、例えば、数倍または数十倍に速めると、上板11と下板12との間の水平な相対的変位が僅かとなっても、フライホイール22は高速な回転速度で回転する。これにより、微少な質量のフライホイール22で構成されているシステムが上板11及び下板12が相対的に変位すると、大きな慣性係数を提供し、上板11と下板12との間の変位応答を低下させ、上板11と下板12との間の変位が過大になって衝突する問題を回避し、免震サポート10に積載された物30が衝突により毀損するのを更に回避している。
【0030】
電磁ダンパー25はギア組立部材24と連動する。具体的には、電磁ダンパー25は発電用モーターであり、即ち、フライホイール22とギア部材24との間に電磁ダンパー25が更に設置されることにより、回転が発生させるエネルギーを消散させ、免震サポートの最大変位応答を低下させる効果を更に達成し、摩擦減衰が過大で地震後に残留変位が生じる問題を改善している。よって、本発明は免震サポート10が衝突するのを回避する効果を達成している。
また、慣性ユニット20’に設置されている電磁ダンパー25が発電用モーターであるため、部分的な回転エネルギーを電気エネルギーに変換する目的を更に達成している。
【0031】
以上を総合すると、本発明は免震サポート10の上板11及び下板12に慣性ユニット20,20’を設置することにより、上板11と下板12との間で相対的に変位した場合、慣性ユニット20,20’が慣性係数を提供する。これにより、本発明が大きな地震の作用を受けた際に、免震サポート10の最大変位応答が設計範囲を超えて衝突が生じないようにしている。即ち、本発明は慣性ユニット20,20’が提供する慣性係数により、免震サポート10が大きな地震を受けて生じる最大変位応答を低下させ、同時に免震サポート10が地震を受けて発生する加速度の反応が過剰にならないようにしている。
換言すれば、本発明は慣性ユニット20,20’を増設する方式により、免震サポート10の上板11及び下板12が相対的に変位するか、免震サポート10が加速度の影響を受けた場合に、慣性ユニット20,20’が発生させる慣性係数により比率に応じて対応する慣性力を増加させることで、加速度が免震サポート10に与える影響を低下させている。また、本発明は慣性ユニット20,20’を設置することにより、変位が僅かに増えるだけで、フライホイールが高速回転し、慣性係数が大幅に増加する。よって、本発明は好ましい免震効果を提供し、免震サポートが衝突して免震効果に影響が出るのを回避する目的を達成している。
【0032】
図5図6を参照する。図5から分かるように、従来のSRIは、ある地震では最大変位が80cmを超えていたが、図6から分かるように、本発明は同じ地震において最大変位が僅か40cmであった。これは本発明が従来のSRIよりもより好ましい免震効果を確実に有していることを十分に証明している。
【0033】
図7は本発明の第3実施例に係る免震装置を示す概略構成図である。図7に示すように、本実施例は第1実施例の構造と略同じであり、異なる箇所は、免震サポート10が天板17と、別途設置されている少なくとも1つのローラー13”及び慣性ユニット20”とを備えている点である。以下、差異のある箇所について詳述し、第1実施例と同じである残りの技術内容については説明を省略する。
【0034】
本実施例では、天板17は上板11の上方に設置され、且つ天板17は少なくとも1つの上部リセット溝171を有している。上板11は上部リセット溝111を有している以外、上部リセット溝111がある表面の反対の表面には少なくとも1つの下部リセット溝112を更に有している。下部リセット溝112及び上部リセット溝111の延伸方向は異なっている(例えば、90度の差がある)。天板17と上板11との間にある上部リセット溝171及び下部リセット溝112中には少なくとも1つのローラー13”が設置されている。
【0035】
また、本実施例では、天板17及び上板11の側辺には慣性ユニット20”が設置され、下部リセット溝112及び上部リセット溝111の延伸方向が異なっているため、慣性ユニット20”、回転ロッド21”、フライホイール22”、ギア23”、ベアリング14”、取付金具15”、及びラック16”に設置されている上板11/天板17の側辺が、慣性ユニット20、回転ロッド21、フライホイール22、ギア23、ベアリング14、取付金具15、及びラック16に設置されている上板11/下板12の側辺とは異なっている(例えば、2つの慣性ユニット20及び20”が90度で隣接するように設置されている)。
これにより、天板17及び上板11が相対的に変位すると、慣性ユニット20”が変位応答を低下させるために慣性係数を提供し、且つ天板17及び上板11が発生させる相対的変位の方向が、上板11及び下板12が発生させる相対的変位の方向とは異なっている。よって、前述の第1実施例では単一の方向の相対的変位の反応程度のみが減少したのに比べ、本実施例では、異なる方向からの相対的変位の反応程度も更に減少し、更に好ましい免震効果を提供している。
以上は2つの慣性ユニット及び上板、下板、及び天板の組合せを例として説明しているが、本発明はこれに限定されず、本発明は複数の慣性ユニット及び対応する免震サポートの個数により複数の異なる方向からの相対的変位の反応程度を同時に減少させることも可能である。また、本実施例は需要に応じて前述の第2実施例の電磁ダンパー及びギア部材を増設してもよい。
【0036】
ある実施例では、上述の第1実施例、第2実施例、または第3実施例のフライホイール22,22”を可変慣性機構を備えたフライホイール22Aに改変し、慣性ユニット20,20’,20”が可変慣性システム20Aを形成するようにしてもよい。
【0037】
図8Aは本発明の第4実施例に係る免震装置の側面構成と地震時の状態を示す概略図である。図8Bは本発明の第4実施例に係る免震装置を示す上面図である。図に示すように、本実施例は第2実施例のフライホイール22を可変慣性機構を備えたフライホイール22Aに改変し、慣性ユニット20’が可変慣性システム20Aを形成するようにしている。
可変慣性システム20Aを免震サポート10の側面に増設し、両者を組み合わせた免震装置は新規の可変慣性同調質量ダンパー200(Tuned mass damper with varying inerter、略称TMDVI)となる。残りは第2実施例と同じ技術内容であるため、その説明を省略する。また、上述の第1実施例及び第3実施例のフライホイール22及び22”も可変慣性機構を備えたフライホイール22Aに置換してもよい。
【0038】
図9Aは本発明の可変慣性機構を備えたフライホイール22Aが低速での上面図である。図9Bは本発明の可変慣性機構を備えたフライホイール22Aが高速での上面図である。
本実施例の可変慣性機構は2つのガイドロッド221,221”と、2つの質量ブロック222,222”と、2つのバネ223,223”と、を備えている。各ガイドロッド221,221”の一端は回転ロッド21に固定され、他端はバッフル224,224”を有している。各ガイドロッド221,221”は1つのバネ223,223”及び1つの質量ブロック222,222”を対応するように貫通し、2つのバネ223,223”を2つのガイドロッド221,221”の外面にそれぞれ覆設させている。各バネ223,223”の一端は1つの質量ブロック222,222”に連結され、バネ223,223”の他端は回転ロッド21またはバッフル224,224”に選択的に固定されている。これにより、バネ223,223”の最大変形量が回転ロッド21及びバッフル224,224”の間隔に制限され、同時に質量ブロック222,222”及び回転ロッド21の最長距離も制限されている。
【0039】
このように、質量ブロック222,222”は回転ロッド21が低速回転すると、回転ロッド21に近接し、この際の慣性係数が小さくなる。回転ロッド21が高速回転すると、質量ブロック222,222”が回転ロッド21から離間し、この際に慣性係数が大幅に増加し、速度及び変位応答が大幅に低下する。その後、速度が低下した後、質量ブロック222,222”がバネ223,223”の弾力により回転ロッド21に近接する位置に戻され、慣性係数が小さい状態に回復し、加速反応が過大になる状況を回避している。
以上は2つのガイドロッド221,221”、2つの質量ブロック222,222”、及び2つのバネ223,223”を組み合わせた例について説明しているが、これはガイドロッド、質量ブロック、及びバネの個数を制限するものではない。
【0040】
図10は前述のTMDVI200を建築物の床板に装設して免震床板構造を形成している。本発明のTMDVI200は可変慣性機構により従来のTMDの巨大な質量ブロックを代替しており、TMDVI200の反応が大きい場合、慣性係数が大幅に増加するように制御することで、TMDVI200の変位及び速度反応を大幅に低下させ、且つ加速反応はTMDVI200が装設されていないよりも小さくしている。
これにより、このTMDVI200の免震サポート10の下板12が建築物の主構造の床スラブ40の上方に安置され、且つ免震サポート10の上板11の上面に高床41が安置されることにより、TMDVI200及び高床41の両者が免震床板を構成し、同調質量ダンパー床板と呼んでもよい。この免震床板は必要に応じ、例えば、回転を低下させ、離調効果(detuning effect)を回避する等の異なる需要に応じ、異なる位置または異なる階層にそれぞれ装設することが可能である。
【0041】
従来のTMDと本発明とを比較すると、従来のTMDは建築物内で一定容量の空間、例えば、101ビルディングのダンパーでは5階を占拠し、1つの巨大な質量ブロックか、複数の分散した小さい質量ブロックかによらず、全て十分な総質量に達する必要があるため、空間の浪費が避けられなかった。また、従来のTMDの質量ブロックの振動反応は大きいため、その上に高床を安置することもできず、高床を設置すると高床の上方の反応が過大になり、快適性が低くなるという問題があった。
【0042】
以上の実施例では、免震サポート10の同じ側辺に2つまたは更に多くのフライホイールを設置し、免震サポート10の上板11が異なる方向に変位する際に、異なるフライホイールが異なる方向に回転するように連動している。図11Aに示すように、免震サポート10の同じ側辺に2つの慣性ユニット20L及び20Rを設置している。慣性ユニット20L/20Rはフライホイール22L/22R、モーター25L/25R及びギアボックス24L/24R等の部材をそれぞれ有している以外、ギアボックス24L/24Rの下方にクラッチ26L/26Rを更にそれぞれ増設している。クラッチ26L及び26Rはラチェット261L/261Rと、デテント262L/262Rと、回転ベース263L/263Rと、をそれぞれ備えている。
左方のクラッチ26Lを例にすると、ラチェット261Lは棘状辺縁を有しているフライホイールである。デテント262Lの一端は回転ベース263Lに連結され、他端はラチェット261Lの棘状辺縁に係止している。回転ベース263Lは、上板11の側辺に固定されていると共に下方のピニオン23Lに回転可能に設置されているシャフト264Lを備えている。ラチェット261Lは回転ロッド21Lを介してその上方にあるフライホイール22L、モーター25L、及びギアボックス24Lに連結されている。ちなみに、回転ロッド21Lと回転ベース263Lのシャフト264Lとの間は直接連結されていない。
【0043】
図11Bではフライホイール22L/22R、モーター25L/25R、及びギアボックス24L/24R等の部材を省略し、ラチェット261L/261R及びデテント262L/262Rと上板11との作動関係のみを重点的に描写している。図11Bのラチェット261L/261R及びデテント262L/262Rの配置方式により、左方のクラッチ26Lのデテント262Lが反時計回り方向にのみラチェット261Lに対し力を付勢する。右方のクラッチ26Rのデテント262Rは時計回り方向にのみラチェット261Rに対し力を付勢する。
【0044】
図11A図11Bを参照する。上板11が下板12に対し右に変位すると同時にピニオン23L及び23Rを反時計回りに回転するように連動すると、左方の慣性ユニット20Lが先にピニオン23Lからクラッチ26Lのシャフト264Lを経て回転ベース263Lを反時計回りに回転するように連動する。この際、ラチェット261Lの回転速度が回転ベース263L及びそのデテント262Lの同じ方向の回転速度よりも遅い場合、デテント262がラチェット261を反時計回りに回転するように連動し、これにより最上方にあるフライホイール22Lを反時計回りに回転するように連動している。しかしながら、反時計回りに回転する場合、右方のクラッチ26Rのデテント262Rはラチェット261Rに対し力を付勢せず、このため、右方のラチェット261Rは連動されない。換言すれば、上板11が下板12に対し右変に位した場合、右方のピニオン23Rはクラッチ26Rの回転ベース263Rを回転させるが、回転ベース263Rが右方ラチェット261Rを更に回転させることはない。
【0045】
同様に、上板11が下板12に対し左に変位した場合、右方のラチェット261Rがデテント262Rにより連動されるように変化し、これにより右方のフライホイール22Rを時計回りに回転するように連動するが、左方のフライホイール22Lは連動されずに静止を保持する。これにより、連動されたフライホイール22L(または22R)の回転エネルギーがモーター25L(または25R)を押動して回転させた後に消散し、モーター25L(または25R)が回転により電気エネルギーを発生させ、これにより提供される減衰振動力が回転速度に従って増加する。また、平行移動方向が各自異なる場合、何れか1つのフライホイール22L(または22R)のみが受力して回転し、同時に建築構造物に反作用力を提供し、これにより、建築構造物の反応を効果的に減少している。
【0046】
他の実施例では、上述のラチェットデテント形式のクラッチ26L/26Rは、ローラークラッチ(roller clutch)、オーバーランニングクラッチ(formsprag overrunning clutch)のような他の形式のクラッチにより代替してもよい。
【0047】
また、ある実施例では、上述の可変慣性システム20Aが粘性減衰液が充満した容器内部に装設され、同時に減衰振動を提供し、且つ減衰振動は慣性係数の増加に従って増大する。
【0048】
以上を総合すると、本発明は従来技術と比較して下記利点を有している。
1.各バネを調整することで異なる最大伸縮長さを有し、慣性係数を段階的に表現し、大きさの異なる振動が入力される状況を制御している。
2.従来の同調質量ダンパー(TMD)には大質量の質量ブロックが必要であるという問題を改善し、小質量の質量ブロックを有している慣性システムにより代替している。
3.従来の定慣性係数の同調質量ダンパー(TMDI)が加速反応及び変位応答を兼ね備えることができないという問題を改善している。
4.従来のTMDと比較し、本発明のTMDVIは振動反応を大幅に低下させているため、高床に応用でき、同調質量ダンパー床板を形成し、同時に従来の質量ブロックは巨大な空間を占拠するという問題を解決している。
5.各免震階層の周期を小幅に調整することにより、免震床板の周期が主構造の周期と僅かに異なることで離調効果(detuning)が発生することがないようにしている。
【0049】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
100 免震装置
100A 免震装置
10 免震サポート
11 上板
171 上部リセット溝
111 上部リセット溝
12 下板
112 下部リセット溝
121 下部リセット溝
13 ローラー
13” ローラー
14 ベアリング
14” ベアリング
15 取付金具
15” 取付金具
16 ラック
16” ラック
17 天板
200 可変慣性係数の同調質量ダンパー
20 慣性ユニット
20’ 慣性ユニット
20” 慣性ユニット
20L 慣性ユニット
20R 慣性ユニット
20A 可変慣性システム
21 回転ロッド
21” 回転ロッド
21L 回転ロッド
22 フライホイール
22” フライホイール
22L フライホイール
22R フライホイール
22A 可変慣性機構を備えたフライホイール
221 ガイドロッド
221” ガイドロッド
222 質量ブロック
222” 質量ブロック
223 バネ
223” バネ
224 バッフル
224” バッフル
23 ギア
23” ギア
23L ピニオン
23R ピニオン
24 ギア組立部材
24L ギアボックス
24R ギアボックス
25 電磁ダンパー
25L モーター
25R モーター
26L クラッチ
26R クラッチ
261L ラチェット
261R ラチェット
262L デテント
262R デテント
263L 回転ベース
263R 回転ベース
264L シャフト
30 物
40 床スラブ
41 高床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B