(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】電動フレア加工機
(51)【国際特許分類】
B21D 19/04 20060101AFI20221223BHJP
B21D 19/08 20060101ALI20221223BHJP
B21D 41/02 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
B21D19/04 A
B21D19/08 A
B21D41/02 A
(21)【出願番号】P 2022106803
(22)【出願日】2022-07-01
【審査請求日】2022-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321007302
【氏名又は名称】有限会社ゼンキュウ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-167953(JP,A)
【文献】特表2022-528092(JP,A)
【文献】特許第3951275(JP,B2)
【文献】特開平11-290975(JP,A)
【文献】特開昭60-133932(JP,A)
【文献】特開2005-324208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/04
B21D 19/08
B21D 41/02
B21D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら往復運動するスライダーの先端に偏芯コーンを装着し、この偏芯コーンでパイプ端部にフレア加工するフレア加工機と、
フレア加工機に一体に設けられ圧着部内に装着したパイプ端部を偏芯コーンの位置に合わせて固定するクランプ装置と、
パイプの端部外周に嵌合する開閉自在な嵌合口を備えクランプ装置の圧着部内にパイプごと装着固定される固定クリップと、を備えた電動フレア加工機において、
固定クリップは、嵌合口を常時拡開するバネ部材が設けられ、
クランプ装置の圧着部に固定クリップの嵌合口が拡開するスペースを形成し、
フレア加工したパイプの端部を圧着部内で拡開した嵌合口から抜き取るように構成したことを特徴とする電動フレア加工機。
【請求項2】
前記固定クリップは、前記嵌合口を有しパイプの側面を挟持する挟持部と、この挟持部を常時拡開付勢する前記バネ部材と、挟持部から延長され挟持部を強制的に閉じるように設けられた操作部とを備えた請求項1記載の電動フレア加工機。
【請求項3】
前記固定クリップは、前記圧着部の開閉と共に前記圧着部内の前記嵌合口が開閉するように構成された請求項1記載の電動フレア加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンの配管工事に使用する電動フレア加工機において、特に、パイプの先端に固定クリップを挟み付けた状態でクランプ装置に固定してフレア加工する電動フレア加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
当発明者は先に特許文献1に記載の電動フレア加工機を提案している。この加工機は、パイプP端部に偏芯コーン19を押圧してフレア加工するフレア加工機Fと、このフレア加工機Fに一体に設けられ偏芯コーン19の位置にパイプPを固定するクランプ装置6と、パイプの先端に雌型クリップを挟み付けた状態でクランプ装置6に固定される雌型クリップ2(本発明の固定クリップ30)とを備えた構成である。
【0003】
この雌型クリップ2は、パイプPの側面をバネ3aの押圧力にて挟持する挟持部2aが設けられており、この挟持部2aを開くには作業者がバネ3aを強制的に開く必要がある。
【0004】
そして、クランプ装置6の挟着部6a、6b間に雌型クリップ2がパイプPごと圧着固定されたときに、パイプPの開口端部が偏芯コーン19に当たるように設けている。
【0005】
この状態でパイプPの端部にフレア加工する場合、クランプ装置6の握り部6c、6dを操作すると、雌型クリップ2ごとパイプPが固定され、フレア加工機Fの偏芯コーン19が往復移動してパイプPの端部にフレアが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このフレア加工機の使用方法は、最初にパイプPの端部に雌型クリップ2を挟み付ける。この状態でパイプPごと雌型クリップ2をクランプ装置6に装着固定してフレア加工を施すものである。そして、フレア加工を施した後は、クランプ装置6から雌型クリップ2を取り出し、その後、雌型クリップ2を強制的に開いてパイプPから雌型クリップ2を取り外す作業になる。
【0008】
このように、パイプ端部にフレア加工するために次の5工程が必要になっている。
(1)パイプPの端部に雌型クリップ2を挟み付ける工程
(2)パイプPごと雌型クリップ2をクランプ装置6に固定する工程
(3)雌型クリップ2を固定した状態でパイプPにフレア加工する工程
(4)フレア加工後、クランプ装置6からパイプPごと雌型クリップ2を取り外す工程
(5)取り外したパイプPから雌型クリップ2をとり外す工程
【0009】
引用文献1のフレア加工機は、これらの工程により、それ以前の加工機と比較して格段に操作が容易になっている。それでも、1本のパイプ端部にフレア加工する際に5工程もの作業を要するものであった。
【0010】
そこで、本発明はパイプ端部にフレア加工する工程を更に簡略化し、エアコンの配管工事をより短時間で行うことができる電動フレア加工機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、回転しながら往復運動するスライダー11の先端に偏芯コーン12を装着し、この偏芯コーン12でパイプP端部にフレア加工するフレア加工機10と、フレア加工機10に一体に設けられ圧着部21内に装着したパイプP端部を偏芯コーン12の位置に合わせて固定するクランプ装置20と、パイプPの端部外周に嵌合する開閉自在な嵌合口31を備えクランプ装置20の圧着部21内にパイプPごと装着固定される固定クリップ30と、を備えた電動フレア加工機において、固定クリップ30は、嵌合口31を常時拡開するバネ部材34が設けられ、クランプ装置20の圧着部21に固定クリップ30の嵌合口31が拡開するスペースを形成し、フレア加工したパイプPの端部を圧着部21内で拡開した嵌合口31から抜き取るように構成したことにある。
【0012】
第2の手段の前記固定クリップ30は、前記嵌合口31を有しパイプPの側面を挟持する挟持部32と、この挟持部32を常時拡開付勢する前記バネ部材34と、挟持部32から延長され挟持部32を強制的に閉じるように設けられた操作部33とを備えている。
【0013】
第3の手段の前記固定クリップ30は、前記圧着部21の開閉と共に前記圧着部21内の前記嵌合口31が開閉するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、パイプ端部にフレア加工する工程を更に簡略化し、エアコンの配管工事をより短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の固定クリップをクランプ装置に装着する正面図である。
【
図2】(イ)~(ハ)は、本発明の固定クリップの操作例を示す正面図である。
【
図3】本発明の固定クリップを閉じた状態の背面図である。
【
図4】本発明にパイプの端部を挿入する状態を示す斜視図である。
【
図5】パイプの端部にフレア加工をする状態を示す斜視図である。
【
図6】フレア加工したパイプの端部を取り出す状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明のフレア加工機を示す縦断面図である。
【
図8】本発明のフレア加工機を示す横断面図である。
【
図9】本発明のギヤケース内部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明フレア加工機の基本構成は、フレア加工機10、クランプ装置20、固定クリップ30にて構成される(
図1参照)。そして、パイプPの先端に嵌合した固定クリップ30をクランプ装置20で固定し、パイプPの先端にフレア加工するものである(
図7参照)。
【0017】
固定クリップ30は、クランプ装置20の圧着部21内に着脱自在に装着して固定される部材で、パイプP端部の外周に嵌合する開閉自在な嵌合口31を備えている(
図2参照)。この嵌合口31は常時拡開するようにバネ部材34が設けられている(
図3参照)。図示例では、パイプPの側面を挟持する挟持部32に嵌合口31を形成したもので、この挟持部32は、連結軸36を介して開閉自在に揺動する一対の部位である。この挟持部32に拡開付勢するバネ部材34と、挟持部32から延長され挟持部32を強制的に閉じるように設けられた操作部33とを備えている。
【0018】
操作部33は、作業者が操作して挟持部32を強制的に閉じる際に使用する(
図2参照)。すなわち、通常の固定クリップ30は、バネ部材34の弾性力で挟持部32が開いた状態にある(
図2(イ)参照)。この挟持部32を把持すると圧着部21が閉じる(
図2(ロ)参照)。そして、挟持部32を完全に閉じると嵌合口31が形成されパイプPの外周に嵌合する(
図2(ハ)参照)。
【0019】
クランプ装置20の圧着部21内に固定クリップ30を装着する場合、挟持部32を閉じた状態でクランプ装置20の圧着部21内に挿入する。その後、挟持部32から手を離すと圧着部21内で固定クリップ30の嵌合口31が拡開した状態で装着されるものである(
図7参照)。
【0020】
クランプ装置20は、この嵌合口31内に挿入したパイプP端部ごと固定クリップ30を固定する。すなわち、固定クリップ30が圧着部21内に装着されると、圧着部21の開閉に伴って嵌合口31が開閉するように構成している。開口した嵌合口31はフレア加工後のパイプP端部を抜き取り可能になる(
図6参照)。
【0021】
一方、クランプ装置20の圧着部21は、固定クリップ30の嵌合口31が拡開してフランジ加工後のパイプP端部を抜き出すのに十分なスペースがある(
図7参照)。したがって圧着部21内の嵌合口31にパイプPの端部を挿入してフレア加工した後圧着部21内の嵌合口31からフレア加工後のパイプP端部を抜き取る作業になる。この結果、同じ径のパイプPであれば、クランプ装置20の圧着部21に固定クリップ30を装着したままで次々とフレア加工することができる。
【0022】
このように、本発明加工機にてパイプPにフレア加工する場合は次の工程になる。
(1)クランプ装置20の圧着部21に所定の固定クリップ30を装着する工程
(2)固定クリップ30の嵌合口31にパイプP端部を挿入して圧着部21で固定すると共に、パイプP端部にフレア加工機10でフレア加工する工程
(3)フレア加工後、圧着部21を開いてフレアが付いたパイプP端部を嵌合口31から取り出す工程
【0023】
尚、(1)の工程は、加工するパイプPの径が同じ場合、次の加工から省くことができる。したがって、同径のパイプPを順次フレア加工するには、(2)~(3)の2工程を繰り返すことで順次加工することができる。すなわち、クランプ装置20の圧着部21を開閉すると共にパイプP端部を挿脱することで、次々とフレア加工することができるものである。
【0024】
また、パイプPの径が異なる場合、パイプPに適応する嵌合口31を備えた固定クリップ30を圧着部21に装着することで、同様に加工することができる。このとき一つの固定クリップ30に異なった径の嵌合口31を複数形成すると、パイプPの径に応じて使い分けることも可能である(図示せず)。
【0025】
フレア加工機10は、回転しながら往復運動するスライダー11の先端に偏芯コーン12を装着したもので、この偏芯コーン12でパイプP端部にフレア加工する(
図7参照)。図示のフレア加工機10は、モーター13の駆動軸に設けられたウォーム歯車14とウォーム歯車14の回転を直角に伝えるホイル歯車15とを介して進退自在なスライダー11を設け、該スライダー11の先端に偏芯コーン12を装着したものである。
【0026】
フレア加工機10のウォーム歯車14、ホイル歯車15、スライダー11は、ギヤケース16の内部に収納されている(
図7、
図9参照)。更に、フレア加工機10に、偏芯コーン12の進出側に略ボックス形状の固定顎部17を設けており、後述するクランプ装置20の圧着部21の片側を固定するものである(
図7参照)。
【0027】
図7~
図9は、ギヤケース16内の断面図を示している。これらの図において、スタートスイッチS1を押すとモーター13が回転しウォーム歯車14が減速して直角方向に回転を伝えホイル歯車15を回す(
図11参照)。ホイル歯車15の内に凹凸の回転連結部18によりスライダー11に回転を伝える(
図7参照)。
【0028】
スライダー11の内側に雌ネジ19Aを設けてあり、スライダー15の中にギヤケース16に固定された雄ネジ19Bとの作用によりスライダー15はギヤケース16内を回転しながら往復動し、スライダー11の先に設けた偏芯コーン12が偏心しながら前進する(
図8参照)。
【0029】
偏芯コーン12によるフレア加工後は、モーターの負荷電流を制御する自動制御回路により極違いの電流を送りモーター13を反転させ偏芯コーン12が元の位置に戻ると自動停止して電源が切れる。
【0030】
クランプ装置20は、フレア加工機10に一体に設けられパイプP端部を偏芯コーン12の位置に合わせて固定する装置である(
図7参照)。このクランプ装置20は、一対の圧着部21と圧着部21の固定状態をロックするロック機構(図示せず)とを有する。図示のクランプ装置20は、圧着部21を操作する握り部22と筒状に形成してモーター12を収納した握り筒24を設けたものである(
図1参照)。この握り筒24に対して握り部22を開閉自在に設けている。そしてクランプ装置20のロック機構は、この握り部22を閉じたときに作動し、握り部22を開放したときに解除されるように設けている。
【0031】
クランプ装置20の開口した圧着部21内に固定クリップ30を挿入する(
図1参照)。このとき、作業者が操作部33を操作して挟持部32を閉じた状態で圧着部21内に固定クリップ30挿入し、操作部33から手を離すと挟持部32が圧着部21内で開いた状態になる(
図4参照)。更に、この挟持部32の嵌合口31にパイプPの端部を挿入した状態で圧着部21を閉じると固定クリップ30ごとパイプPがロックされる(
図5参照)。そして、ロックされたパイプPにフレア加工機10でフレアP1を形成した後は、圧着部21と嵌合口31を開いてパイプPを取り出す(
図6参照)。
【0032】
また、図示のクランプ装置20には、固定クリップ30を磁着するマグネット23を配設している(
図1参照)。そして、開口した圧着部21内にパイプPの端部周囲に固定した固定クリップ30挿入したときに、この固定クリップ30をフレア加工する位置に合わせて圧着部21内に磁着せしめるようにしている(
図7参照)。更に、圧着部21内に位置センサー(図示せず)を設けてあり、固定クリップ30がフレア加工位置にあることを知らせる。この位置センサーにより、固定クリップ30が定位置にない時はスタートボタンS1を押してもスタートしない。このように、マグネット23と位置センサーとを設けると、固定クリップ30の位置決めが確実に行え、クランプミスを防止することができ、作業に不慣れな人でも容易に行える。
【0033】
尚、本発明における図示例の各構成は、本発明の一実施例に過ぎず、フレア加工機10やクランプ装置20、固定クリップ30などの形状、構造等の設計変更、材質の転換及び使用態様の変更など、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更することができるものである。
【符号の説明】
【0034】
P パイプ
P1 フレア
S1 スタートスイッチ
10 フレア加工機
11 スライダー
12 偏芯コーン
13 モーター
14 ウォーム歯車
15 ホイル歯車
16 ギヤケース
17 固定顎部
18 回転連結部
19A 雌ネジ
19B 雄ネジ
20 クランプ装置
21 圧着部
22 握り部
23 マグネット
24 握り筒
25 バッテリー
30 固定クリップ
31 嵌合口
32 挟持部
33 操作部
34 バネ部材
35 テーパー
36 連結軸
【要約】
【課題】パイプ端部にフレア加工する工程を更に簡略化し、エアコンの配管工事をより短時間で行うことができる電動フレア加工機を提供する。
【解決手段】パイプP端部にフレア加工するフレア加工機10を設ける。フレア加工機10に設けられパイプP端部を固定するクランプ装置20を備える。クランプ装置20の圧着部21内に装着固定する固定クリップ30を設ける。固定クリップ30にされパイプP端部に挟着する開閉自在な嵌合口31を設ける。この嵌合口31を常時拡開するように設ける。クランプ装置20の圧着部21を嵌合口31が拡開する広さとする。嵌合口31からフレア加工後のパイプP端部を抜き取るように構成する。
【選択図】
図1