(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂及びフェノール類を含む樹脂架橋剤、並びに該樹脂架橋剤を含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20221223BHJP
C08G 8/10 20060101ALI20221223BHJP
C08L 61/10 20060101ALI20221223BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
C08L21/00
C08G8/10
C08L61/10
C08K5/13
(21)【出願番号】P 2018078340
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 文哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸行
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001882(JP,A)
【文献】特開2015-017241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂と、下記一般式(1):
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1及びR
2は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又は4-ヒドロキシフェニル基を表す。)
で表される化合物、下記一般式(2):
【化2】
(上記一般式(2)中、nは1~9の整数を表す。)
で表される化合物、下記一般式(3):
【化3】
(上記一般式(3)中、R
3及びR
4は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又は4-ヒドロキシフェニル基を表す。)
で表される化合物、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のフェノール類とを含む
、ゴム用樹脂架橋剤。
【請求項2】
レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂100重量部に対し、フェノール類を1~15重量部含む、請求項1に記載の樹脂架橋剤。
【請求項3】
ゴムと、請求項1又は2に記載の樹脂架橋剤とを含むゴム組成物。
【請求項4】
ゴム100重量部に対し、樹脂架橋剤を5~23重量部含む、請求項3に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂及び特定の構造を有するフェノール類を含む樹脂架橋剤、並びに該樹脂架橋剤を含むゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種ゴムを架橋して架橋ゴムを得るに当たっては、硫黄を用いて架橋する方法の他、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂を架橋剤として用いて架橋する方法が一般的に行われている。特にブチルゴム、エチレンプロピレンゴムのように、極めて不飽和度が小さいゴムは、耐候性、耐熱性や機械的特性が良好であることが知られているが、さらなる耐熱性の向上が求められる用途では、架橋構造がC-C結合となるレゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂を架橋剤とする樹脂架橋が採用されている。
【0003】
一方、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂を架橋剤として用いて架橋する場合、該樹脂のみでは架橋速度が遅く、特に工業的に実施するに際しては通常、塩化スズ、塩化第二鉄等無機のハロゲン化合物、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等のハロゲン含有エラストマー、有機酸、ハロゲン化したアルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂等の架橋促進剤が併用されている。
【0004】
しかしながら、前記したハロゲン原子を有する化合物あるいは樹脂、または有機酸を架橋促進剤として用いると、ゴムの架橋成形時に金属製金型の腐食を生じたり、ゴム成形品を電気製品に用いた場合に金属部品の腐食を生じ、接触不良や成分の電解液への溶出による不良の発生といった問題点がある。そのため、微細なゴム成形品や電気製品に用いられるゴムの架橋では、前記した架橋促進剤が併用できないことから、一般的に用いられる前記架橋促進剤を使用せず、架橋速度を向上させる方法が検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂とノボラック型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂との混合物を樹脂架橋剤として用いる方法が提案されており、該方法によれば、ハロゲン原子を有する化合物あるいは樹脂、または有機酸を架橋促進剤として用いなくとも、架橋速度が十分改善されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明者らが、特許文献1記載の方法を追試したところ、架橋速度は改善されるものの、前記特許文献に記載される樹脂架橋剤、あるいは該樹脂架橋剤を含むゴム組成物(未架橋ゴム組成物)の粘着性が非常に高く、混練工程で2本ロールへの貼り付きの発生や、成型工程で架橋時に金属製金型へのゴム片等の固着、汚染が発生することから、該架橋剤、あるいは該架橋剤を含む未架橋ゴム組成物のハンドリング性が著しく悪化し、特に該樹脂架橋剤を工業的に使用することは困難であることが判明した。
【0008】
本発明の目的は、樹脂架橋剤を用いて架橋するに際し、金属腐食の可能性があるハロゲン原子を有する化合物あるいは樹脂、または有機酸を架橋促進剤として用いなくとも、十分な架橋速度が得られる樹脂架橋剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記する樹脂架橋剤を用いることで、前記架橋促進剤を用いなくとも十分な架橋速度が得られることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
【0010】
〔1〕
レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂と、下記一般式(1):
【0011】
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1及びR
2は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又は4-ヒドロキシフェニル基を表す。)
で表される化合物、下記一般式(2):
【0012】
【化2】
(上記一般式(2)中、nは1~9の整数を表す。)
で表される化合物、下記一般式(3):
【0013】
【化3】
(上記一般式(3)中、R
3及びR
4は水素原子、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又は4-ヒドロキシフェニル基を表す。)
で表される化合物、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のフェノール類とを含む樹脂架橋剤。
【0014】
〔2〕
レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂100重量部に対し、フェノール類を1~15重量部含む、請求項1に記載の樹脂架橋剤。
【0015】
〔3〕
ゴムと、請求項1又は2に記載の樹脂架橋剤とを含むゴム組成物。
【0016】
〔4〕
ゴム100重量部に対し、樹脂架橋剤を5~23重量部含む、請求項3に記載のゴム組成物。
【0017】
〔5〕
ゴムがブチルゴム又はエチレンプロピレンゴムを含むゴムである、請求項3又は4に記載のゴム組成物。
【0018】
〔6〕
ゴム組成物に含まれるハロゲン原子の含量が0.1重量%以下である、請求項3~5いずれか一項に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属腐食の可能性があるハロゲン原子を有する化合物あるいは樹脂、または有機酸を架橋促進剤として用いなくとも、十分な架橋速度が得られる樹脂架橋剤を提供することが可能となる。また、本発明の樹脂架橋剤を含む、本発明のゴム組成物(未架橋ゴム組成物)は粘着性が制御され、加工性・成形性に優れるといった特徴も兼ね備える。更には、本発明のゴム組成物を架橋させてなる架橋ゴム組成物は、公知の方法で架橋させたゴムと比較して架橋密度が向上することから、耐膨潤性・耐溶剤性に優れた架橋ゴム組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の樹脂架橋剤とは、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂と、上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(2)で表される化合物、上記一般式(3)で表される化合物、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のフェノール類とを含む、樹脂とフェノール類との混合物である。
【0021】
本発明の樹脂架橋剤に含まれるレゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂は公知の方法で合成されたものが使用される。該共縮合樹脂として例えば、レゾール型フェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、レゾール型クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、レゾール型アルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、レゾール型レゾルシノール・フェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、レゾール型レゾルシノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂等が挙げられる。これら共縮合樹脂の中でも、ゴムとの相溶性の点から、レゾール型アルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールのアルキル基が炭素数1~20の分岐を有してもよいアルキル基であるレゾール型アルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂が特に好ましい。
【0022】
本発明の樹脂架橋剤に含まれるレゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂の軟化点は、通常120℃以下であり、好ましくは80~110℃である。共縮合樹脂を構成するフェノール類の種類によるが、軟化点が120℃以下の樹脂を用いることにより、本発明の樹脂架橋剤を含むゴム組成物を調製する際の分散性が向上することから、ゴム混練時の温度を下げることができ、より容易に本発明の樹脂架橋剤を含むゴム組成物が調製できる。
【0023】
本発明の樹脂架橋剤に含まれるレゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂の具体的な例としては、田岡化学工業(株)製タッキロール201、日立化成工業(株)製ヒタノール2501、Schenectady International Inc.製SP-1044、SP-1045等が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂架橋剤に含まれる上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(2)で表される化合物、上記一般式(3)で表される化合物、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のフェノール類(以下、特定の構造を有するフェノール類と称することがある)の内、上記一般式(1)で表されるフェノール類として具体的に例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールF(4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン)、ビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)、ビスフェノールE(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン)、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールBP(ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン)等が挙げられ、上記一般式(2)で表されるフェノール類として具体的に例えば、ビスフェノールZ(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等が挙げられ、上記一般式(3)で表されるフェノール類として具体的に例えば、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂架橋剤には、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂100重量部に対し、特定の構造を有するフェノール類を通常1~15重量部、好ましくは3~10重量部含む。特定の構造を有するフェノール類の含有量を1重量部以上とすることにより、十分な架橋速度を得ることが可能となり、15重量部以下とすることにより、樹脂架橋剤のゴムへの分散性を向上させることができ、また本来のゴム分子間の架橋を阻害せず、架橋ゴムの引っ張り強度の低下を抑制することが可能となる。
【0026】
本発明の樹脂架橋剤の製造方法として例えば、レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂と、特定の構造を有するフェノール類とをジェットミルやフェザーミル等を用いて粉砕しながら混合する方法、あらかじめ粉砕した共縮合樹脂と特定の構造を有するフェノール類とを撹拌混合する方法が挙げられる。
【0027】
続いて本発明の樹脂架橋剤を含むゴム組成物について詳述する。本発明の樹脂架橋剤は分子中に二重結合を有するゴムであれば架橋剤として使用可能であり、かかるゴムとして例えば、天然ゴム(NR)、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等が挙げられ、これらゴムの中でも、樹脂架橋剤を用いる架橋によって発現する、ゴム組成物の物性向上がより顕著に認められることから、ブチルゴム又はエチレンプロピレンゴムを含むゴムが好ましい。
【0028】
本発明のゴム組成物はハロゲン原子を含む架橋促進剤を併用しなくとも架橋速度が改善されるため、本発明のゴム組成物に含まれるハロゲン分を0.1重量%以下とすることが可能である。本発明のゴム組成物に含まれるハロゲン分は、酸素を満たしたフラスコ内でゴム組成物を燃焼分解し、発生したガス中の無機ハロゲン分をフラスコ内の吸収液に吸収させて分析試料とし、該試料を硝酸銀滴定法、電位差滴定法、イオンクロマト法等にて定量することができる。
【0029】
本発明のゴム組成物には、ゴムに通常配合される老化防止剤、カーボンブラック等の充填剤、焼成クレー等の各種無機フィラー、亜鉛華、ステアリン酸、オイル類等を、本発明の目的を妨げない範囲内で適宜選択して配合することができ、これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0030】
本発明の樹脂架橋剤、及びゴム組成物には、必要に応じ、ゴムに通常配合される架橋剤を一部併用することが可能である。本発明の樹脂架橋剤と他の架橋剤を併用する場合は、本発明の目的を妨げない範囲内で適宜選択して配合することができ、市販品を好適に使用することができる。
【0031】
本発明のゴム組成物を架橋させてなる架橋ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋することによって得られる。本発明のゴム組成物の架橋方法として例えば、成型加工から架橋終了までを加圧プレス等で通して実施する方法や、成型加工と一次架橋を加圧プレスで例えば5分間~15分間行い、次いで、二次架橋をオーブンや電気炉中で例えば30分間~4時間実施する方法が挙げられるが、架橋ゴム組成物の生産性の面から、一次架橋と二次架橋とを分割して実施する方法が好ましい。
【0032】
本発明のゴム組成物の架橋温度は、従来の樹脂架橋剤を用いる場合と同じ温度領域が適用可能である。具体的には、例えば130~230℃、好ましくは150~210℃、より好ましくは160~200℃である。
【0033】
本発明のゴム組成物を架橋させてなる架橋ゴム組成物は、各種ゴム製品として使用することができ、特にパッキン類やOリング等として好適に使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記するレゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂の軟化点は、JIS K2207に準拠した方法により測定した値である。
【0035】
1.レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂の製造例
<製造例1:樹脂-1の合成>
還流冷却器および温度計を備えた4つ口フラスコに、p-tert-ブチルフェノール300g(2.00モル)、92%パラホルムアルデヒド130g(4.00モル)、48%水酸化ナトリウム水溶液8.33g(0.10モル)、トルエン150gを仕込み、内温を65℃まで昇温後、同温度で1時間撹拌し、さらに88℃まで昇温後、同温度で5時間撹拌した。
その後65℃まで冷却し、水84g、トルエン90g、30%硫酸16.4gを加え、攪拌、静置、分離した。その後、水洗を3回繰り返した。
続いて樹脂液を含むトルエン層を常圧下、内温118℃に達するまで1時間濃縮を行い、次いで減圧度90torr、内温121℃に達するまで1時間減圧濃縮を行うことで、レゾール型p-tert-ブチルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂(樹脂―1)368gを得た。得られた共縮合樹脂の軟化点は110℃であった。
【0036】
2.レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂と特定の構造を有するフェノール類を含む樹脂架橋剤の製造例
【0037】
<実施例1:樹脂架橋剤A-1の調製>
乳鉢に市販品のレゾール型アルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂であるタッキロール201(軟化点:88℃、田岡化学工業株式会社製、以下、樹脂201と称することがある)50gと、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(以下、THPEと称することがある)4.0gを仕込み、25℃の下、乳棒で粗砕しながら混合し、THPEを含む樹脂架橋剤A-1(THPE含量7.4重量%)54gを得た。
【0038】
<実施例2:樹脂架橋剤A-2の調製>
THPEの代わりにビスフェノールA(以下、Bis-Aと称することがある)4.0gを使用した以外は実施例1と同様にし、ビスフェノールAを含む樹脂架橋剤A-2(ビスフェノールA含量7.4重量%)54gを得た。
【0039】
<実施例3:樹脂架橋剤A-3の調製>
THPEの代わりにビスフェノールF(以下、Bis-Fと称することがある)4.0gを使用した以外は実施例1と同様にし、ビスフェノールFを含む樹脂架橋剤A-3(ビスフェノールF含量7.4重量%)54gを得た。
【0040】
<比較例1:樹脂架橋剤A-14の調製>
THPEの代わりにレゾルシン(以下、RESと称することがある)4.0gを使用した以外は実施例1と同様にし、レゾルシンを含む樹脂架橋剤A-14(レゾルシン含量7.4重量%)54gを得た。
【0041】
<比較例2:樹脂架橋剤A-15の調製>
THPEの代わりにフェノール(以下、Phと称することがある)4.0gを使用した以外は実施例1と同様にし、フェノールを含む樹脂架橋剤A-15(フェノール含量7.4重量%)54gを得た。
【0042】
<比較例3:樹脂架橋剤A-16の調製>
THPEの代わりにp-クレゾール4.0g(以下、p-Crと称することがある)を使用した以外は実施例1と同様にし、p-クレゾールを含む樹脂架橋剤A-16(p-クレゾール含量7.4重量%)54gを得た。
【0043】
<比較例4:樹脂架橋剤A-17の調製>
THPEの代わりに無水マレイン酸(以下、MAと称することがある)4.0gを使用した以外は実施例1と同様にし、無水マレイン酸を含む樹脂架橋剤A-17(無水マレイン酸含量7.4重量%)54gを得た。
【0044】
<実施例4:樹脂架橋剤B-1の調製>
乳鉢に製造例1で製造したレゾール型p-tert-ブチルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂(樹脂―1)50gと、THPE2.5gを仕込み、25℃の下、乳棒で粗砕しながら混合し、THPEを含む樹脂架橋剤B-1(THPE含量4.8重量%)53gを得た。
【0045】
<実施例5:樹脂架橋剤B-2の調製>
THPEの代わりにビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン{ビスフェノールS(以下、Bis-Sと称することがある)}2.5gを使用した以外は実施例4と同様にし、ビスフェノールSを含む樹脂架橋剤B-2(ビスフェノールS含量4.8重量%)53gを得た。
【0046】
3.レゾール型フェノール類ホルムアルデヒド共縮合樹脂、及び特定の構造を有するフェノール類を含むゴム組成物の製造例及び物性評価
【0047】
<実施例6>
ブチルゴム(ポリサーブチル402)100重量部、カーボンブラック(東海カーボン株式会社製「シーストS」(SRFグレード))50重量部、亜鉛華(正同化学工業(株)亜鉛華2種)5重量部、焼成クレー(バーゲス・ピグメント社製「BURGESS KE」)100重量部及びステアリン酸(日油株式会社製「ビーズ ステアリン酸 つばき」)1重量部を含むマスターバッチゴム(256g)を、20℃に保温した関西ロール株式会社製6インチオープンロールに入れ、ロール幅2mmでロールに巻き付けた。その後、実施例1で製造した樹脂架橋剤A-1(THPE含量7.4重量%、16.2g)を添加し、3回切返しを行った。次いで、ロール幅0.25mmとし、三角通しを10回行い混練りし、ゴム組成物272gを作成した。
次いで、前記ゴム組成物を190℃、6MPaで加圧下、10分間加温し、プレス成型を行った。次いで、プレス成型したゴムシートを、190℃に加熱した真空オーブンに入れ、40mmHgの減圧下、190℃で150分間加熱することで、前記ゴム組成物を架橋させた架橋ゴム組成物(架橋ゴムシート)を作成した。
上記した方法により得られたゴム組成物及び架橋ゴム組成物について、下記する試験を
を行った。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例7~10、参考例1及び2、比較例5~8>
樹脂架橋剤を以下表1及び2に示したものに変更した以外は実施例6と同様の方法によりゴム組成物及び架橋ゴム組成物を作成し、下記する評価測定を行った。結果を表1及び2に示す。なお、以下表1及び2中、各成分の配合量はブチルゴム100重量部に対する配合量(重量部)を表す。また、参考例1及び2においては、樹脂架橋剤として樹脂201(参考例1)、製造例1で得られた樹脂-1(参考例2)のみをそれぞれ用いた。
【0049】
<ゴム組成物および架橋ゴム組成物の試験方法>
(1)架橋特性
JIS K6300-2:2001に準拠する方法にて試験を行った。具体的には、ゴム組成物をロータレスレオメータ(振動角±3.00°)を用いて、ゴム組成物を190℃、60分の条件で加熱しながらトルク変化を測定し、その測定値からゴム組成物の最大トルク(MH(dN・m))、加硫速度t(10)、t(90)を得た。なお、加硫速度t(10)及びt(90)は、実施例6~8及び比較例5~8については参考例1において得られた最大トルク値の10%に達する時間(t(10))、及び90%に達する時間(t(90))とし、実施例9及び10については参考例2において得られた最大トルク値の10%に達する時間(t(10))、及び90%に達する時間(t(90))をとした。
(2)硬度
JIS K6253に準拠する方法にて試験を行った。(試験機の種類:タイプA デュロメータ、試験温度:25℃)
(3)引張試験
JIS K6251に準拠する方法にて試験を行った。(試験片の形状:ダンベル3号、引張速度:500mm/min、試験温度:25℃)
具体的には、架橋ゴムで試験片を作成しモジュラスM50(MPa)、M100(MPa)、破断強度Tb(MPa)、破断伸びEb(%)を測定した。
(4)SWELL試験
架橋ゴムシートから長さ50mm×幅5mm×厚さ2mmの直方体にカッターで打ち抜いて作成した試験片を2本1セットとして、トルエン中に浸漬し、72時間浸漬後の体積変化率及び重量変化率を測定した。
【0050】
<ゴム組成物および架橋ゴム組成物の評価>
(1)評価値(数値)について
上記(1)~(4)の評価値(数値)について、実施例6~8及び比較例5~8については参考例1において得られた各試験結果の値を100とした際の相対比較値で表した。また、実施例9及び10については参考例2において得られた各試験結果の値を100とした際の相対比較値で表した。
【0051】
(2)相対評価について
架橋速度、架橋密度、分散性・成形性(Tb/Eb)、分散性・成形性(外観)、耐膨潤性・対溶剤性の5つの項目に付、下記方法にて参考例と対比・評価した結果を表1及び表2に示した。なお、実施例6~8及び比較例5~8については参考例1と、実施例9及び10については参考例2と対比・評価した。
【0052】
(2-1)架橋速度の評価について
架橋初期の速度を示すt(10)が各参考例より20ポイント以上小さい場合、スコーチ(早期架橋)が生じる懸念があることから、各参考例に対し20ポイント以上減少したものを各参考例より劣るとし、また、架橋終点の目安となるt(90)は値が小さい方がより速く架橋されていることを示すことから、各参考例に対し5ポイント以上減少したものを、各参考例より向上するとした。そして、これら二つの評価値の内、各参考例より向上する結果を含むものを◎、劣る結果を含むものを×、それ以外のもの(各参考例と同等のもの)を〇とした。
【0053】
(2-2)架橋密度の評価について
硬度及び引張試験の内、M50・M100、並びにレオメーター試験の最大トルク(MH)についてそれぞれ参考例と対比し、すべての値が参考例に対し3ポイント以上増加したものを参考例より向上したとし、3ポイント以上減少したものを参考例より劣るとし、差が±2ポイントの範囲のものを参考例と同等とし、前記4つのパラメータの内、すべてのパラメータが参考例より向上したものを◎、劣る結果を含むものを×、それ以外のもの(参考例と同等のもの)を〇とした。
なお、比較例5については試験片が50%伸長以前に破断した為、M50・M100が測定できなかったことから-(ブランク)とし、同等以下と判断した。
【0054】
(2-3)分散性、成形性(Tb、Ebによる評価)
樹脂架橋剤の分散性、及びゴム組成物の成形性について、引張試験の内、Tb、Ebについてそれぞれ参考例と対比し、両方の値が参考例に対し5ポイント以上減少したものを参考例より劣るとして×を、それ以外のものについて参考例と同等として〇とした。
【0055】
(2-4)分散性、成形性(目視による評価)
ロールによる混練り後のゴム組成物及びプレス成形後の架橋ゴムシート、並びにロール及び金型表面を目視で観察し、ゴムの凝集物や発泡、変形(薄くなる等)の有無、並びにロール及び金型の汚染の有無について確認し、ゴムの凝集物や発泡、変形が認められたもの等、又はロールや金型等の汚染が認められたものを×、認められなかったものを〇とした。
【0056】
(2-5)耐膨潤性、耐溶剤性
SWELL試験の体積変化率(トルエン浸漬前後のゴム試験片の体積の差/トルエン浸漬前のゴム試験片の体積)及び重量変化率(トルエン浸漬前後のゴム試験片の重量の差/トルエン浸漬前のゴム試験片の重量)についてそれぞれ参考例と対比し、両方の値が参考例に対し4ポイント以上増加したものを参考例より劣るとして×を、4ポイント以上減少したものを参考例より向上したとして◎を、それ以外のものを参考例と同等として〇とした。
【0057】
【0058】
【0059】
上記表1及び表2に示す通り、本発明の樹脂架橋剤により架橋したゴム組成物は、レゾール型アルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂のみを架橋剤として用いる場合(参考例1、参考例2)と対比し、上記した各物性が向上することが判明した。
【0060】
また、特定の構造を有するフェノール類以外のフェノール類を含む樹脂架橋剤により架橋したゴム組成物は、逆にレゾール型アルキルフェノール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂のみを架橋剤として用いる場合と比べ、上記した各物性が悪化することが判明した(比較例1~4)。