(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】携帯型施・解錠表示装置
(51)【国際特許分類】
E05B 19/22 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
E05B19/22
(21)【出願番号】P 2019060782
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 達也
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203105(JP,A)
【文献】特開2012-246638(JP,A)
【文献】特開2008-63918(JP,A)
【文献】特開2006-241874(JP,A)
【文献】特開平10-238180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠前の施錠又は解錠のいずれか一方の情報を選択的に表示する表示窓を有するケース状の握り部に、トリガー部分とスライダー部分を一体に有し、かつ、付勢手段により前記トリガー部分が前記握り部から常に突出する方向に付勢された駆動片と、前記握り部内で所要量回動することができるように支持され、かつ、標識を有する表示片と、前記スライダー部分
の係合部と係脱する表示切替え用可動障害子とをそれぞれ組み込み、
抜止態様の時、前記駆動片のスライダー部分と前記表示切替え用可動障害子との係合は、前記握り部が前記錠前の施錠又は解錠方向のいずれかへ所定角度まで回転することにより前記表示切替え用可動障害子の姿勢が位置変位した場合であり、これにより前記駆動片の突出方向への完全な戻りが阻止され、また、前記駆動片が前記握り部内へと後退する時、前記駆動片の運動は変換機構を介して回転運動として前記表示片に伝えられ、少なくとも前記表示片の標識が解錠から施錠に切り替わることを特徴する携帯型施・解錠表示装置。
【請求項2】
請求項1の携帯型施・解錠表示装置に於いて、前記表示片は、少なくとも前記駆動片の表面か又は裏面かの一側面に沿って所要量回動することができるように軸支されていることを特徴する携帯型施・解錠表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の携帯型施・解錠表示装置に於いて、前記駆動片は、トリガー部分とスライダー部分が一体成形された平面視略長板体であり、前記トリガー部分は、握り部の先端部に形成された第1案内部に案内され、一方、前記スライダー部分は幅広胸部に連設する係合腕を有し、この係合腕は、握り部の隔壁状の第2案内部を介して握り部の後端部の内側壁面側に向かって延びていることを特徴する携帯型施・解錠表示装置。
【請求項4】
請求項1の携帯型施・解錠表示装置に於いて、前記駆動片は係合腕を有し、この係合腕は対向状態に二本延在し、これら二本の係合腕は、前記表示切替え用可動障害子を抱えるように保持することができることを特徴する携帯型施・解錠表示装置。
【請求項5】
請求項1の携帯型施・解錠表示装置に於いて、前記変換機構は、前記駆動片に形成された駆動カム部と、前記表示片に設けられ
た従動カム部であることを特徴する携帯型施・解錠表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯型施・解錠表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、本発明と同様の「施・解錠状態の表示鍵や表示機能付き握り部」が記載されている。これらの特許文献の共通事項は、「本発明の駆動片に相当する長尺状のスライダー部分の表面に、鍵の挿入方向に沿って施錠標識と解錠標識を並べて表示すること」である。
【0003】
付言すると、前者の施・解錠状態の表示鍵は、その駆動部材が、トリガー部分と、このトリガー部分に連動する長尺スライダー部分であり、前記長尺スライダー部分の表面に、「あける」、「閉める」などの文字や色彩を含む施・解錠状態を意味するやや幅広の標識が付されている。一方、後者の表示機能付き握り部は、その駆動部材が、本発明の駆動片と同様に一個の部材であるものの、その標識の表示態様については特許文献1と全く同一である。
【0004】
これらの特許文献1、2の問題点は、標識の視認性を十分に確保するために、スライダー部分を長尺状に形成する必要がある。特に、特許文献2では、トリガー部分とスライダー部分とを一体に形成したスイッチ部材20は、ケース状の握り部から突出するトリガー部分27a及びこれに連設すると共にやや幅広の標識を有する長板状のスライダー部分であるために、その全長は、直方体形状の握り部の鍵軸方向の長さよりも大きいので、握り部の大きさや形状に自由度がなく、その小型化を実現することができない(符号は特許文献2のもの)。そのため、携帯用の握り部としては、その携帯性にもう少し配慮する必要があった。そこで、出願人は前記問題点を克服するために、従来技術との相違を視点に入れ、本願発明を提案する。
【0005】
〈従来との相違…視点〉
(a)トリガー部分と、該トリガー部分よりも幅広のスライダー部分を一体にすること、好ましくは駆動片を1個にすること。
(b)駆動片と標識を有する表示片とを別部材(別の物品)にすると共に、駆動片に対する表示片の配設態様を工夫すること。例えば表示片を回転可能に支持すること。
(c)部品の組み立て時に省力化を図ること。例えば動力変換機構は、望ましくは幅広のスライダー部分に形成された駆動カム部と、表示片に設けられた従動カム部にすること。同様に駆動片を案内する案内部を別個に製作して握り部に組み込むのではなく、可能な限り、予め握り部の内壁に形成すること。例えば握り部の後端部の内側壁側に、駆動片用の隔壁状第2案内部し、この隔壁状の2案内部に、さらにバネ受け座、軸受け部等の機能を持たせることにより、部品点数を減らすこと。
(d)さらに、表示装置本体が既存鍵を備える場合には、握り部を合理的に構成し、例えば外郭を構成するケース本体又は蓋体のいずれか一方と、握り部に内設した内蓋の両方で既存鍵がガタ付かないようにすること等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-246638号公報
【文献】特許第5463445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は、特許文献1及び特許文献2の問題点に鑑み、握り部の先端部から後端部までの長さを短くし、これにより小型化を実現することである。第2の目的は、部品点数を減らすことである。その他の目的は、従属項によって特定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の携帯型施・解錠表示装置は、錠前の施錠又は解錠のいずれか一方の情報を選択的に表示する表示窓を有するケース状の握り部に、トリガー部分とスライダー部分を一体に有し、かつ、付勢手段により前記トリガー部分が前記握り部から常に突出する方向に付勢された駆動片と、前記握り部内で所要量回動することができるように支持され、かつ、標識を有する表示片と、前記スライダー部分の係合部と係脱する表示切替え用可動障害子とをそれぞれ組み込み、抜止態様の時、前記駆動片のスライダー部分と前記表示切替え用可動障害子との係合は、前記握り部が前記錠前の施錠又は解錠方向のいずれかへ所定角度まで回転することにより前記表示切替え用可動障害子の姿勢が位置変位した場合であり、これにより前記駆動片の突出方向への完全な戻りが阻止され、また、前記駆動片が前記握り部内へと後退する時、前記駆動片の運動は変換機構を介して回転運動として前記表示片に伝えられ、少なくとも前記表示片の標識が解錠から施錠に切り替わることを特徴する(請求項1)。前記変換機構は、好ましくは、直線運動を回転運動に変える動力変換機構である。
【0009】
上記構成に於いて、前記表示片は、少なくとも前記駆動片の表面か又は裏面かの一側面に沿って所要量回動することができるように軸支されていることを特徴する(請求項2、好ましい実施形態)。このように構成すると、例えば表示片を握り部の内部空間に形成した環状又は半円弧状の案内壁で回転可能に支持する実施形態よりも、シンプルな構造で表示片を支持することができる。
【0010】
また請求項1又は請求項2の携帯型施・解錠表示装置に於いて、前記駆動片は、トリガー部分とスライダー部分が一体成形された平面視略長板体であり、前記トリガー部分は、握り部の先端部に形成された第1案内部に案内され、一方、前記スライダー部分は幅広胸部に連設する係合腕を有し、この係合腕は、握り部の隔壁状の第2案内部を介して握り部の後端部の内側壁面側に向かって延びていることを特徴する(請求項3)。このように構成すると、他の構成要素と合理的に係合する。さらに、前記駆動片は係合腕を有し、この係合腕は対向状態に二本延在し、これら二本の係合腕は、前記表示切替え用可動障害子を抱えるように保持することができることを特徴する(請求項4)。加えて、前記動力変換機構は、前記駆動片に形成された駆動カム部と、前記表示片に設けられた従動カム部であることを特徴する(請求項5)。その他、色々な特徴があるので、「発明を実施するための形態」の欄で述べる。
【0011】
なお、この明細書の「駆動片」は、例えばトリガー部分と、該トリガー部分よりも幅広のスライダー部分とが一体に設けられているが、ここで「一体」とは、トリガー部分とスライダー部分が接着剤、ネジ等の固定手段を介して一体的になったもの、トリガー部分とスライダー部分が合成樹脂材、金属等の素材により一体成形されたものを含む概念である。またここで「軸支」とは、軸を有するもの、又は軸を有しないが、軸に代わって案内部等で支持するものが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、握り部の先端部から後端部までの長さを短くし、これにより装置本体を全体的に小型化することができる。したがって、携帯性に優れている。また請求項2以下に記載の発明は、部品点数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至
図17は本発明の一実施形態を示す各説明図。
【
図1】既存鍵を含む平面図(握り部のケース本体3が見える)。
【
図2】
図1を基準とした正面図(握り部のケース本体3が上側で、その蓋体4,5が下方に見える)。
【
図5】握り部のケース本体3を取り外した平面視からの内部構造を示す説明図。
【
図6】握り部のケース本体3のひっくり返し、その凹所に平面視略長板体の駆動片11などを組み込んだ斜視からの説明図。
【
図8】(a)表示片の一側面側から見た説明図(鍔状部の一部に従動カム部が見える)。(b)表示片の他側面から見た説明図(鍔状部に明度差がある山形形状の解錠標識とその余の施錠標識が見える)。(c)
図8の(b)のA-A線断面図。
【
図9】(a)動力変換機構の初期状態の説明図。(b)動力変換機構によって表示片が駆動片の一側面に沿って所要量回動する旨の説明図。
【
図10】
図7で示した表示切替え用可動障害子の拡大図。
【
図12】表示片の抜去態様(解錠表示)、表示片の挿通態様(解錠から施錠へ)、表示片の挿止態様(施錠状態のまま)及び表示片の抜止態様(施錠状態を保持)を、フローチャート形式で示した説明図。
【
図13】駆動片のトリガー部分が初期位置(例えばトリガー部分が3mm突出)の説明図。
【
図14】
図13の状態に於いて、トリガー部分が鍵穴の周辺に押され、このトリガー部分の突出量が0mmになる説明図。
【
図15】
図14の状態に於いて、鍵を鍵穴に挿入したまま90度回してボールが反対側に移動した説明図。
【
図16】錠前を施錠後に、握り部を水平状態に戻し(鍵を元の状態に戻し)、さらに、鍵を鍵穴から抜いた時に於いて、トリガー部分の突出量が3mmになる説明図。
【
図17】駆動片と表示片と可動障害子の作動状態を一覧表的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図17は、本発明の一実施形態の携帯型施・解錠表示装置の各説明図である。まず、
図1は既存鍵(鍵ともいう)を含む平面図で、握り部のケース本体が見える。また
図2は、
図1を基準とした正面図で、握り部のケース本体が上側で、その蓋体が下方に見える。さらに、
図3は
図1を基準とした左側面図である。
【0015】
これらの
図1に於いて、Xは携帯型施・解錠表示装置(以下、「本装置X」という)、1は握り部、2は、例えば建物の玄関扉の錠前に用いられる鍵である。握り部1は、後述するように、ケース本体3と、このケース本体に固着手段を介して結合する大小の蓋体4、5とから成る。実施形態の本装置Xは、握り部1(ケース本体3、大きい蓋体4、小さい蓋体5)が、後述するように、抜去態様(後述する駆動片11が完全に初期位置へ戻った状態)で略水平となる向きで鍵穴に挿入され、双方向の回転、例えば90度回転することにより、錠前を施錠することができる。
【0016】
付言すると、外出時、普通一般に玄関扉の図示しない錠前を施錠する場合、例えば水平状態の鍵穴に既存鍵2のブレード2aを差し込み(挿通態様)、次に鍵挿したままの状態で、施錠方向(例えば右又は左)に90度回すと施錠状態になる(挿止態様)。次に施錠後、前記既存鍵2を元の水平状態に戻し、そのままの姿勢で既存鍵2を引き抜く(抜止態様)。
【0017】
実施形態では、前記抜去態様の時は、
図1で示すようにケース本体3の弧状の前壁付近の略中央部に形成された表示窓6から解錠標識M1が現れる。一方、前記抜止態様の時、駆動片11が後退しているので、前記表示窓
6から施錠標識M2が現れる。
【0018】
上記解錠標識M1と施錠標識M2は、実施形態では、明度差がある色彩、例えば橙色と灰色を用いており、いずれか一方を解錠、他方を施錠と観念付けている。
図1は、後述する駆動片のトリガー部分が最大量突出した初期状態(抜去態様)を示しているので、例えば解錠標識M1を意味する橙色が表示窓
6から現れている。なお、実施形態では、前記表示窓
6は、図面で示すようにケース本体3の弧状の前壁付近の略中央部に形成されているが、前記解錠標識M1と施錠標識M2を設ける位置如何(例えば標識が表示片の側周面にある場合)によっては、それに対応するようにケース本体3の周側壁の適宜部位に形成しても良い。
【0019】
したがって、本装置Xは、外出時に錠前を施錠した場合には、少なくとも施錠状態を握り部1(例えばケース本体3)に施錠情報を表示させ、ユーザーはそれを視認により確認することができる。
【0020】
ここで、握り部1のケース本体3の外観形状について説明する。握り部1(ケース本体3)の平面視の全体形状は、やや正方形に近く、かつ、その周壁は丸みを帯びている。例えば
図1を基準にすると、符号Aを既存鍵2の挿入方向、符号Bを既存鍵2の抜去方向、符号Cを握り部の円周方向、符号Oは既存鍵2の中心軸線、符号1aを握り部の前壁部、符号1bを握り部の後壁部とした場合に於いて、握り部の前壁部1aは、半円弧状面となし、一方、握り部の後壁部1bの両角を帯びた丸面状に形成することにより、平面視矩形状というよりは、むしろ、平面視略方形の丸面状の握り部となっている。
【0021】
そして、既存鍵2のブレード2aの中心軸線上Oの握り部1の長さと、該握り部1の前壁部1aの中央部から突出するブレード2aの先端までの長さを対比すると、例えば略1対1、又は略1.1対1、あるいは又略1.2対1以内になっている。その理由は、(A)駆動片が一つのみであること、すなわち、駆動片は、首状のトリガー部分と、該トリガー部分よりも幅広のスライダー部分を一体に有し、かつ、付勢手段により前記トリガー部分が前記握り部から常に突出する方向に付勢されていること、(B)及び前記駆動片と表示片が別個の部材であり、前記表示片は前記駆動片の表面か又は裏面かの一側面に沿って所要量回動することができるように軸支され、かつ、握り部の表示窓側の幅広側面に施錠及び解錠用の標識を設けたことから、ケース状の握り部1の小型化を実現することができる。
【0022】
なお、既存鍵2は、リバーシブル対応のもの、又はそうでないもののいずれであっても良い。また実施形態は、錠が時計回りで施錠、反時計回り解錠される場合を例に説明するが、本装置Xはその反対回動操作の錠にも適用できる。また本発明は、本装置Xをクレームしていることから、既存鍵2を構成要件とするもの、又は既存鍵2を備えないものものいずれであっても直接侵害の対象となる。さらに、この明細書及び図面では、便宜上、前記(A)及び(B)に全く関係のない構成、例えば窓部材であるクリヤーウィンドゥ、窓部材の左右に形成された一対の突片なども記載されているが、これらは実施化レベルの示唆事項であり、本発明の技術的思想に全く関係がない。さらに、実施形態では、既存鍵2の幅広の摘み部分(頭部)は、後述するように保持されている。
【0023】
次に、
図4は
図1の4-4線概略断面図、
図5は握り部1のケース本体3を取り外した平面視からの内部構造を示す説明図、
図6は握り部1のケース本体3のひっくり返し、その凹所に平面視略長板体の駆動片などを組み込んだ斜視からの説明図、そして、
図7は既存鍵2を含む分解斜視図である。
【0024】
特に、
図7を参照にして説明すると、図面左側に位置するのがケース本体3、一方、図面右側に位置するのが、大の蓋体4と小の蓋体5である。既存鍵2は、サブクレームでは発明の特定要件になるので、実施形態の一例として
図7に描いてある。
図7の略真ん中に描いてある幅広固定板7は、縦長状でかつ薄い矩形板であり、その下端部は握り部の弧状前壁部1aの内側壁面にピッタリと沿うように弧状に形成され、その弧状縁の中央部に不番の舌片状の突部が形成されている。また幅広固定板7の中心部には小孔が形成されていると共に、左右の縁部分には、不番の一対の耳状取り付け部が形成されている。
【0025】
この幅広固定板7は内蓋に相当することから、例えば
図4で示すように扁平状の大の蓋体4の内面に沿って固定的に組み込まれ、前述した既存鍵2の摘み部(頭部)2bを、サンドイッチ状に挟持する。これにより、既存鍵2はガタつかない。なお、既存鍵2の摘み部(頭部)2bは、設計如何により、ケース本体3又は大きい蓋体4の一方と前記幅広固定板7の両方により、サンドイッチ状に挟持することができる。
【0026】
次に、
図7のケース本体3と幅広固定板7の間に描いている部材が、本発明の特定要件となる駆動片11と、駆動片用の付勢手段12と、駆動片11の幅広一側面に沿って所定角度まで回動する表示片13とを示してある。一方、前記幅広固定板7と小さい蓋体5との間に表示切替え用可動障害子14が描かれている。
【0027】
しかして、本装置Xは、錠前の施錠又は解錠のいずれか一方の情報を選択的に表示する表示窓6を有するケース状の握り部1に、トリガー部分17と、該トリガー部分よりも幅広のスライダー部分18を一体に有し、かつ、付勢手段12により前記トリガー部分が前記握り部1から常に突出する方向に付勢された駆動片11と、この駆動片の表面か又は裏面かの一側面に沿って所要量回動することができるように軸支され、かつ、前記表示窓6側の幅広側面に前記施錠及び解錠用の標識M1、M2を有する表示片13と、前記スライダー部分18の係合腕18cと係脱する表示切替え用可動障害子14とをそれぞれ組み込み、抜止態様の時、駆動片のスライダー部分と表示切替え用可動障害子との係合は、握り部が錠前の施錠又は解錠方向のいずれかへ所定角度まで回転することにより前記表示切替え用可動障害子の姿勢が位置変位した場合であり、これにより前記駆動片の突出方向への完全な戻りが阻止され、また、前記駆動片11が前記握り部1内へと後退する時、前記駆動片11の直線運動は動力変換機構15を介して回転運動として前記表示片13に伝えられ、少なくとも前記表示片13の標識が解錠M1から施錠M2に切り替わることを特徴する。
【0028】
そこで、以下、上記特定要件に関係がある部材について、さらに説明する。
図6及び
図7で示すように、前記駆動片11は、首状のトリガー部分17と幅広のスライダー部分18が一体成形された平面視略長板体であり、前記トリガー部分17は、握り部1の先端部、実施形態では弧状の前壁部1aの中央部に透孔状に形成された第1案内部21に案内され、一方、前記スライダー部分18は、握り部1の先端部1aの内側壁面側に直接または間接的に当接する肩部分18aと、この肩部分に連設する幅広胸部18bと、この幅広胸部に連設する複数本の係合腕18c、18cとを有し、前記係合腕18cは、握り部1の隔壁状の第2案内部22を介して握り部1の後壁部1bの内側壁面側に向かって延びている。
【0029】
そして、実施形態では、前記係合腕18cの後端部には、表示切替え用可動障害子14と係脱する互い違い状に対向する単数又は複数の爪状の係合部25、25が設けられ、この係合部25は、握り部1が錠前の施錠方向へ所定角度まで回転することにより前記表示切替え用可動障害子14の姿勢が位置変位した場合に、該表示切替え用可動障害子14の溝状の被係合部26、26に同時に係合し、これにより前記駆動片11の突出方向(鍵の挿入方向A)への完全な戻りが阻止される。付言すると、前記一対の係合腕18cは、対向状態に二本延在し、これら二本の係合腕は、前記表示切替え用可動障害子14の外壁面を抱えるように保持することができる。
【0030】
さらに、
図5、
図6を参照にして説明すると、握り部1は、ケース本体3と、このケース本体に一体的に合体する大小の蓋体4,5とから成り、該握り部1は、前記ケース本体と前記大の蓋体4或いはケース本体3の内面に突出形成された隔壁状の第2案内部22で区画された第1空間領域と、前記ケース本体3と前記小の蓋体5で区画された第2空間領域とを有し、前記第1空間領域にコイル型の付勢手段12が組み込まれ、この付勢手段12の先端部は、
図5で示すように駆動片11の幅広胸部18bの後端面の略中央部に支持され、一方、その付勢手段12の後端部は前記隔壁状の第2案内部22の内側面の略中央部(バネ受け座)に支持され、常に駆動片11を突出方向(鍵の挿入方向A)に付勢している。そして、前記第2空間領域に表示切替え用可動障害子14が前後一対の軸部27、27を介して揺動自在に組み込まれている。
【0031】
次に
図8(a)は、表示片13の一側面13a側から見た説明図で、その鍔状部の一部に従動カム部が見える。一方、
図8(b)は、表示片13の他側面13bから見た説明図で、鍔状部に明度差がある山形形状の解錠標識M1とその余の施錠標識M2が見える。そして、
図8(c)は前記(b)のA-A線断面図である。
【0032】
これらの図から明らかなように、表示片13は、握り部1の内壁に突設された軸部31が嵌入する略真円状の嵌合部31と、この嵌合部の周壁から半径外方向に、少なくとも略半円弧状又は略扇状のいずれかに突設された鍔状部32と、この鍔状部の一側面13a側に突設された従動カム部33と、この従動カム部の位置とは反対側の前記鍔状部32の他側面13bに付された施錠標識M2及び解錠標識M1とから成り、前記施錠標識M2の面積は、例えば橙色で扇状に描かれた解錠標識M1よりも大きい。
【0033】
次に、
図9(a)は、動力変換機構15の初期状態の説明図。
図9(b)は、動力変換機構15によって表示片13が駆動片11の一側面に沿って所要量回動する旨の説明図である。動力変換機構15は、複数個のピニオン及びラックではなく、部品点数を減らす、駆動片11の長さを極力短くする等により、発明の主たる課題を達成するため、望ましくは、駆動片11のスライダー部分18の幅広胸部18bの略中央部に形成した開口部28の縁部分に形成した駆動カム部29と、握り部1内に設けられた軸部8に直接又は間接的に軸支された従動カム部33であり、この従動カム部33は、実施形態では、前述したように表示片13の一側壁又は他側壁に設けられている。
【0034】
次に、
図10は
図7で示した表示切替え用可動障害子の拡大図、
図11は
図10の11-11線断面図である。これらの図を参照にして表示切替え用可動障害子14(以下、「可動障害子14」という)の構成について説明する。ところで、この可動障害子14の構成は、出願人が提案した特許第5846569号の段落0027及び
図9、
図12、
図15に示した通り、公知乃至周知の技術である。
【0035】
したがって、ここでは、簡単に説明するが、この特許第5846569号の発明と相違する点は、握り部1の案内部材を貫通する規制アームや係合腕或いは脚部が、可動障害子14の揺動方向のストッパー機能の役割を果たすものではなく、この実施形態の可動障害子14の揺動は、好ましくは、部品が増えることや構造の複雑化を避け、握り部1の内壁面に直接当接することにより停止するように第2空間領域に組み込んでいる。なお、可動障害子14は、外壁面に一対の被係合部26、26を有する長筒状ガイド14aと、この長筒状ガイドに組み込まれ玉状の重心移動体14bの二物品から成り、握り部1の後端部側の第2空間領域内に揺動自在に組み込まれる。
【0036】
次に
図12は、表示片13の抜去態様(解錠表示)、表示片13の挿通態様(解錠から施錠へ)、表示片13の挿止態様(施錠状態のまま)及び表示片13の抜止態様(施錠状態を保持)を、フローチャート形式で示した説明図である。ここで「抜去態様」とは、抜止態様に於いて、駆動片11のトリガー部分17を握り部1に若干押し込み、かつ、握り部1を適宜に反転や回転をする
ことにより、駆動片11が付勢手段12の付勢力により、初期位置まで突出したことをいう(
図13を参照)。例えば
図13は、駆動片11のトリガー部分17が初期位置(例えばトリガー部分が3mm突出)の説明図である。この時、表示窓6には解錠M1が現れる。
【0037】
また「挿通態様」とは、トリガー部分17が鍵穴の周辺Yに押され駆動片11が最大の位置まで後退したことをいう。例えば
図14は、
図13の状態に於いて、トリガー部分17が鍵穴の周辺Yに押され、このトリガー部分17の突出量が0mmになる説明図である。この時、動力変換機構15により、表示片13が所定量回動することから、標識が解錠M1から施錠M2へと切り替わる。
【0038】
また「挿止態様」とは、鍵2を鍵穴に完全に鍵挿したまま、例えば右へ回した状態をいう。これにより、可動障害子14の玉状の重心移動体14bが滑動して位置変位するので、その長筒状ガイド14aが軸部27を支点に所定角度まで回転し、その結果、逆方向に傾倒する。この時、可動障害子14は握り部1の内壁面に直接当接することにより停止する。したがって、
図15は、
図14の状態に於いて、鍵2を鍵穴に挿入したまま90度回してボール14bが反対側に移動した説明図である。
【0039】
さらに、「抜止態様」とは、
図16で示すように、錠前を施錠後に、握り部1を水平状態に戻し(鍵2を元の状態に戻し)、さらに、鍵2を鍵穴から抜いた時に於いて、トリガー部分17の突出量が1mmになる説明図である。この時、駆動片11の二本の係合腕
18cの爪状係合部25が可動障害子14の溝状被係合部26に同時に係合し、いわば駆動片11の二本の係合腕
18cは可動障害子14を抱えるように保持するので、駆動片11の突出方向への完全な戻りが阻止される。それ故に、表示窓6の標識は施錠M2に維持される。付言すると、
抜止態様の時、駆動片のスライダー部分と表示切替え用可動障害子との係合は、握り部が錠前の施錠又は解錠方向のいずれかへ所定角度まで回転することにより前記表示切替え用可動障害子の姿勢が位置変位した場合であり、これにより前記駆動片の突出方向への完全な戻りが阻止される。
【0040】
なお、
図17は、駆動片11と、表示片13と、可動障害子14の作動状態が、外観的に判るように、いわば一覧表的に示した説明図である。
【実施例】
【0041】
第1実施形態では、動力変換機構は、幅広のスライダー部分に形成された駆動カム部と、表示片に設けられた従動カム部であるが、例えば前記駆動カム部をラックに代え、一方、前記表示片を前記ラックに噛合するピニオンに代えると共に、このピニオンの螺合歯と直交する一側表面に、文字、色彩等の施・解錠を意味する標識を付しても良い。したがって、表示片13は、実施形態では、駆動片11の表面か又は裏面かの一側面に沿って所要量回動することができるように軸支されているが、必ずしも軸支する必要はなく、例えば握り部の内部空間に、表示片13用の略弧或いは円形状の案内部を設け、この案内部の内周面に支持されるように表示片13を配設しても良い。
【0042】
また設計変更をする場合には、特に図示しないが、駆動片11の移動量、ピニオンの大きさ等を考慮し、幅広胸部18bの開口部28の長さ寸法及び幅寸法を適宜に決め、前記開口部28の縁部分に形成したラックに噛合するように該開口部28内にピニオンを位置付けると良い。
【0043】
また、駆動片の係合腕をやや湾曲状に形成する。係合腕の一部を幅広くする、係合腕の一部を細幅にする、係合腕の先の係合部の形状や角度を変える、係合腕の数を増減する等の事項は、発明の主たる課題を逸脱しない範囲で、当業者が容易に設計変更し得る。
その他、握り部に電子部品を内装する等の構成を加味することも可能である。また、握り部の外観形状を略円形(円形に近いもの)にすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
発明は、例えば建物の玄関扉の施錠確認のために用いられる携帯型施・解錠表示装置である。
【符号の説明】
【0045】
X…携帯型施・解錠表示装置(本装置X)、
Y…鍵穴の周辺、
1…握り部、
2…鍵(例えば既存鍵)、
3…ケース本体、
4…大きい蓋体、
5…小さい蓋体、
6…表示窓、
7…幅広固定板、
8…軸部、
11…駆動片、
12…付勢手段、
13…表示片、
14…可動障害子、
15…動力変換機構、
17…トリガー部分、
18…スライダー部分、
18c…一対の係合腕、
22…第2案内部、
27…一対の軸部、
29…駆動カム部、
31…嵌合部、
32…鍔部、
33…従動カム部、
M1…解錠、
M2…施錠、
M1、M2…標識。