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特許7199213ばねスリーブ、シリンダ、ピストンシリンダ装置、およびピストンシリンダ装置の製造方法
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  • 特許-ばねスリーブ、シリンダ、ピストンシリンダ装置、およびピストンシリンダ装置の製造方法 図1
  • 特許-ばねスリーブ、シリンダ、ピストンシリンダ装置、およびピストンシリンダ装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】ばねスリーブ、シリンダ、ピストンシリンダ装置、およびピストンシリンダ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20221223BHJP
   F16F 9/00 20060101ALI20221223BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20221223BHJP
   F16F 9/38 20060101ALI20221223BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
F16F9/32 A
F16F9/00 A
F16F9/19
F16F9/32 J
F16F9/38
F16F1/12 Q
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018230747
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2019105373
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 129 539.9
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518438704
【氏名又は名称】スタブラス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュナイダー
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-076735(JP,U)
【文献】特開2017-172201(JP,A)
【文献】特開2001-059377(JP,A)
【文献】特開2011-161471(JP,A)
【文献】実開昭60-054851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00- 5/14
E05F 1/00-13/04
17/00
F16F 1/00- 6/00
9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(2)と、
前記シリンダ(2)の周りに同心に配置されたばね(3)と、
それぞれが前記ばね(3)の周りに同心に配置される、内側ばねスリーブ(5)および外側ばねスリーブ(4)と
を有するピストンシリンダ装置(1)であって、
前記シリンダ(2)および前記ばね(3)は、前記内側ばねスリーブ(5)および前記外側ばねスリーブ(4)の内側に配置され、また
前記ばね(3)に面する前記内側ばねスリーブ(5)の表面および/または
前記ばね(3)に面する前記外側ばねスリーブ(4)の表面および/または
前記ばね(3)に面する前記シリンダ(2)の表面
がいくつかの溝(6)を有し、前記溝(6)の長手方向軸が、前記ピストンシリンダ装置(1)のストローク経路に平行な軸方向に配向されている
ピストンシリンダ装置(1)において、
前記溝(6)の深さが、前記軸方向に沿って変化している
ことを特徴とする、ピストンシリンダ装置(1)。
【請求項2】
前記ばねスリーブ(4、5)は合成ブレンドからなり、前記合成ブレンドは、ポリアミドと、ポリテトラフルオロエチレンの添加剤、あるいは炭素繊維、ガラス繊維、および/またはプラスチック繊維で繊維強化されたポリアミドの添加剤とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のピストンシリンダ装置(1)
【請求項3】
前記ばねスリーブ(4、5)は、円筒状スリーブ基部層(9)とスリーブ表面層(10)とを有し、前記溝(6)は、前記スリーブ表面層(10)内に配置され、また前記円筒状スリーブ基部層(9)と前記スリーブ表面層(10)とは異なる材料からなることを特徴とする、請求項1または2に記載のピストンシリンダ装置(1)
【請求項4】
前記シリンダ(2)は、円筒状シリンダ基部層(11)とシリンダ表面層(12)とを有し、前記溝(6)は、前記シリンダ表面層(12)内に配置され、また前記円筒状シリンダ基部層(11)と前記シリンダ表面層(12)とは異なる材料からなることを特徴とする、請求項に記載のピストンシリンダ装置(1)
【請求項5】
シリンダ(2)と、
前記シリンダ(2)の周りに同心に配置されたばね(3)と、
それぞれが前記ばね(3)の周りに同心に配置される内側ばねスリーブ(5)および外側ばねスリーブ(4)
を有するピストンシリンダ装置(1)の製造方法であって、
出成形、アディティブ法、またはサブトラクティブ法によって
前記ばね(3)に面する前記内側ばねスリーブ(5)表面および/または
前記ばね(3)に面する前記外側ばねスリーブ(4)表面および/または
前記ばね(3)に面する前記シリンダ(2)表面
にいくつかの溝(6)を導入するステップであって、前記溝(6)は、その長手方向軸が、前記ピストンシリンダ装置(1)のストローク経路に平行な軸方向に配向された状態で導入される、ステップ
を含む、ピストンシリンダ装置(1)の製造方法において、
前記溝(6)は、その深さが、前記軸方向に沿って変化している状態で導入される
ことを特徴とする、ピストンシリンダ装置(1)の製造方法。
【請求項6】
円筒状スリーブ基部層(9)をスリーブ表面層(10)でコーティングすることにより前記内側ばねスリーブ(5)および/または前記外側ばねスリーブ(4)を製造するステップであって、前記溝(6)は、前記ばね(3)に面する前記スリーブ表面層(10)内に導入される、ステップ
を含むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
円筒状シリンダ基部層(11)をシリンダ表面層(12)でコーティングすることにより前記シリンダ(2)を製造するステップであって、前記溝(6)は、前記ばね(3)に面する前記シリンダ表面層(12)に導入される、ステップ
を含むことを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンシリンダ装置のためのばねスリーブに関し、このばねスリーブは、少なくとも部分的にばねを受け入れ、かつピストンシリンダ装置のストローク経路に沿ってばねを案内するように適合され、またばねスリーブは、好ましくは、円筒状スリーブ内面を有する。本発明は、ピストンシリンダ装置のためのシリンダにさらに関し、このシリンダは、ピストンシリンダ装置のばねの内側に配置されるように適合される。本発明はまた、シリンダと、シリンダの周りに同心に配置されたばねと、内側ばねスリーブおよび外側ばねスリーブであって、それぞれがばねの周りに同心に配置される内側ばねスリーブおよび外側ばねスリーブとを備えるピストンシリンダ装置に関し、シリンダおよびばねは、内側ばねスリーブおよび外側ばねスリーブの内側に配置される。最後に、本発明は、このようなピストンシリンダ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類のピストンシリンダ装置は、従来技術から知られ、例えば独国特許出願公開第102005007741A1号明細書から知られている。ピストンシリンダ装置は、中央シリンダを備え、その周りに2つのばねスリーブが配置される。部分的に互いに係合する2つのばねスリーブとシリンダとの間にコイルばねが支持および案内される。ピストンシリンダ装置がストローク運動を行うと、これによってピストンシリンダ装置のばねがストローク経路に沿って圧縮または復元される。
【0003】
この種のピストンシリンダ装置では、コイルばねの圧縮時にはコイルばねの直径が拡大し、コイルばねの復元時には直径が縮小する。よって、コイルばねの焼き付きおよびそこから生じるピストンシリンダ装置の破損を回避するために、案内部は、ある程度の許容度を持たなければならない。しかしながら、同時に、許容度が大きくなると、コイルばねの「座屈」および非弾性変形の危険性も増し、そうすると、望ましくない雑音および/またはシリンダもしくはばねスリーブに対する損傷が引き起こされる可能性がある。
【0004】
この問題を解決するために、独国特許出願公開第102005007741A1号明細書に記載されたピストンシリンダ装置は、シリンダ壁に向かって半径方向に向けられた弾性外側コーティングを少なくとも自身の表面上に有するコイルばねを備える。これによりコイルばねが安定し、摩擦相手(シリンダおよびばねスリーブ)の損傷の危険性が低減される。
【0005】
しかしながら、上記の解決策は、ばねと摩擦相手との間の摩擦および摩耗を通常増加させるという欠点を有する。これに加えて、コーティングされたばねは製造が難しく、したがってピストンシリンダ装置のコストを大幅に増加させるという事実がある。
【0006】
既知のピストンシリンダ装置の別の問題点は、摩耗、発生する雑音、および焼き付きの危険性を低減するために、ばねと摩擦相手との間に潤滑剤を使用する場合、潤滑剤の移動または蓄積がストローク運動によって生じ得るということであり、そうすると、潤滑剤の潤滑効果が制限され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102005007741A1号明細書
【発明の概要】
【0008】
したがって本発明の目的は、ピストンシリンダ装置の摩耗を低減し、運動特性を改良するのを助ける、低コストのピストンシリンダ装置のためのばねスリーブ、ピストンシリンダ装置のためのシリンダ、ピストンシリンダ装置、およびそのようなピストンシリンダ装置の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の意味におけるピストンシリンダ装置は、例えば、ガス圧ばね(ガススプリング)、または空気圧および/もしくは油圧ショックアブソーバとすることができる。
【0010】
(1.ばねスリーブ)
本発明の第1の主題は、冒頭で述べた種類のピストンシリンダ装置のためのばねスリーブを提供し、このばねスリーブは、ばねスリーブが、そのスリーブ内面に1本、2本、3本、または4本以上の数の溝を有することで、本発明によるこの目的を達成する。
【0011】
本発明によれば、「溝」は、表面にある細長い窪みを意味すると理解され、表面に平行である溝の長手方向軸に沿った溝の溝長が、長手方向軸に直交しかつ表面に平行である溝の溝幅よりも実質的に大きく、例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、または100倍大きい。
【0012】
スリーブ内面において溝を使用することは、最初、案内されるばねの摩擦相手としてのばねスリーブの全面積をより小さくし、それにより、摩擦および振動の伝達が抑制され、起こり得る雑音の発生が防止されるという効果を有する。しかしながら、同時に、達成されるばねの案内は、実質的に変化のない良好な案内になり得る。
【0013】
これに加えて、溝がピストンシリンダ装置において使用される潤滑剤のためのリザーバとして機能する、という事実がある。特に潤滑剤の表面張力効果により、潤滑剤の残りが重力によりピストンシリンダ装置の下端部に集まる場合でさえ、溝は潤滑剤の一部を保持する。これにより潤滑油の潤滑効果が向上し、その結果、ピストンシリンダ装置の耐用年数および整備間隔が長くなる。この効果は、溝の幾何学的寸法を潤滑剤に対して調整することによって最適化することができる。
【0014】
ピストンシリンダ装置においてスリーブを使用する場合、溝の長手方向軸は、ストローク経路に平行な軸方向に向いていると有利である。このような溝は、本発明によれば「軸方向の溝」と呼ばれる。長手方向軸を軸方向に向けることにより、達成されるばねの案内は、例えば長手方向軸をスリーブ内面の円周方向に向けた場合よりも良好な案内になる。
【0015】
ピストンシリンダ装置においてスリーブを使用する場合、溝の溝長は、ピストンシリンダ装置のストローク運動においてばねによってカバーされるばねスリーブのスリーブばね長の少なくとも半分に相当すること、特にスリーブばね長全体に相当すること、またはスリーブばね長よりも長いことが有利である。このような溝長により、ばねがストローク運動全体にわたって最適に案内および潤滑されることが確保される。溝長がスリーブばね長よりも長い場合、この特別な利点の結果、ばね長の外側に追加的な潤滑剤リザーバが形成され、それにより、追加的な潤滑剤を必要に応じてばねに到達させることができる。
【0016】
本発明によるばねスリーブは、ピストンシリンダ装置のための内側ばねスリーブまたは外側ばねスリーブとすることができる。
【0017】
軸方向の溝は、好ましくは、スリーブ内面の周りに円周方向に均等に分布され、よって、例えば、次の隣接する溝に対して、360°/2、360°/3、360°/4、360°/5などのそれぞれの間隔で分布される。シリンダにおけるより良好かつより均一な圧力分布およびより良好な案内を得るために、特にエリア単位に対して、半径方向に同じ角度分布を有する少なくとも3本の溝が設けられることが好ましい。
【0018】
溝は、好ましくは、円周方向における他のスリーブ内面への移行部に、丸みのある縁部を有する。ばねスリーブに対するばねコイルの回転中の、ばねコーティングに対する不必要な摩擦効果および損傷は、これによって回避され得る。
【0019】
溝は、軸方向に一定の深さを有することができる。溝の深さは、ここでは、仮想の理想的な円筒状スリーブ内面からの溝の最も深い点の半径方向の距離として理解されたい。本実施形態は、例えば一体での射出成形による、ばねスリーブの簡素な製造を可能にする。しかしながら、同時に、溝の深さが一定であれば、潤滑剤は依然として溝に沿って容易に流れることができる。よって、本実施形態では、ピストンシリンダ装置のストローク運動による潤滑剤の蓄積または移動が防止されるように、「リザーバ」効果を形状によってさらに適応可能である。
【0020】
1つの特定の実施形態では、溝の深さは軸方向に沿って変化する。溝の深さは、例えば、シリンダ軸に沿って周期的に変化するのであってもよい。本実施形態は、潤滑剤が、溝における、特に最も深い領域における表面張力によってさらに良好に保持され得るという利点を有する。よって、本実施形態では、「リザーバ」効果は幾何形状によっていっそう効果的である。他方、本実施形態は製造がより難しく、特に、スリーブ内面における溝の深さが変化する一体の射出成形はほとんど不可能であり、そのために製造コストが増加する。
【0021】
別の実施形態では、ばねスリーブは、ポリアミド(PA)などのプラスチックと、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であって、ポリテトラフルオロエチレンの割合が、好ましくは10%~30%の範囲、特に15%~25%の範囲、特に約20%である、ポリテトラフルオロエチレンの添加剤、またはガラス繊維強化ポリアミドの添加剤と、を含む合成ブレンドからなる。
【0022】
ばねスリーブのための上記材料は、例えば弾性鋼などの通常のばね材料との摩擦相手として特に有利な特性を有することが判明している。ポリテトラフルオロエチレンの添加剤は、ばねとの摩擦を低減させる。特に、ポリテトラフルオロエチレンの割合が約20%の製品の耐用年数全体にわたって特に低い摩擦をもたらすことが試行により明らかになっている。繊維強化ポリアミドの添加剤は、ばねスリーブの耐久性を高め、ばねによる摩耗を低減させる。強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、および/または合成繊維であると有利であり得る。
【0023】
別の実施形態では、ばねスリーブは、円筒状スリーブ基部層とスリーブ表面層とを備え、溝は、スリーブ表面層に配置され、好ましくは、スリーブ基部層とスリーブ表面層とは異なる材料から構成される。表面層は、好ましくは、表面硬度または摩擦低減を高めるための摩擦学的コーティングを含み、両方とも互いに対して動かされる摩擦相手の摩耗の低減に寄与する。
【0024】
本実施形態は、スリーブ基部層が、特に耐久性があり安定な材料、例えば繊維強化ポリアミドまたはダイヤモンドライクカーボンベースのコーティングおよび/もしくは窒素ベースのコーティング(C-、CN-)から構成され得るという利点を有する一方、スリーブ表面層は、ばねとの摩擦が低減された材料から、例えばポリアミド(PA)と特にポリテトラフルオロエチレンの添加剤とを含む合成ブレンドから構成され得る。さらに、このようにして、深さが変わる溝をより容易に実現することもできる。よって、スリーブ表面層は、例えば、アディティブ法によってスリーブ基部層の内面に加えることができ、このプロセスでは、好ましくは深さの異なる溝を、形成されるスリーブ表面層に導入することができる。
【0025】
(2.シリンダ)
本発明による目的はまた、冒頭に述べた種類のシリンダにおいて、シリンダが、そのシリンダ外面に少なくとも1本の溝、特に2本、3本、または4本以上の溝を有することで達成される。
【0026】
ここでも、シリンダ外面において溝を使用することは、最初、案内されるばねの摩擦相手としてのばねスリーブの全面積をより小さくし、それにより、摩擦および振動の伝達が抑制され、起こり得る雑音の発生が防止されるという効果を有する。しかしながら、同時に、達成されるばねの案内は、実質的に変化のない良好な案内になり得る。
【0027】
これに加えて、溝がピストンシリンダ装置において使用される潤滑剤のためのリザーバとして機能する、という事実がある。特に潤滑剤の表面張力効果により、潤滑剤の残りが重力によりピストンシリンダ装置の下端部に集まる場合でさえ、溝は潤滑剤の一部を保持する。これにより、潤滑油の潤滑効果が向上し、その結果、ピストンシリンダ装置の耐用年数および整備間隔が長くなる。この効果は、溝の幾何学的寸法を潤滑剤に対して調整することによって最適化することができる。
【0028】
ピストンシリンダ装置においてシリンダを使用する場合、溝の長手方向軸は、ストローク経路に平行な軸方向に向いていると有利である。このような溝は、本発明によれば「軸方向の溝」と呼ばれる。長手方向軸を軸方向に向けることにより、達成されるばねの案内は、例えば長手方向軸をシリンダ外面の円周方向に向けた場合よりも良好な案内になる。
【0029】
ピストンシリンダ装置においてシリンダを使用する場合、溝の溝長は、ピストンシリンダ装置のストローク運動においてばねによってカバーされるシリンダのシリンダばね長の少なくとも半分に相当すること、特にシリンダばね長全体に相当することが有利である。このような溝長により、ばねがストローク運動全体にわたって最適に案内および潤滑されることが確保される。
【0030】
軸方向の溝は、好ましくは、シリンダ外面の周りに円周方向に均等に分布され、よって、例えば、次の隣接する溝に対して、360°/2、360°/3、360°/4、360°/5などのそれぞれの間隔で分布される。シリンダにおけるより良好かつより均一な圧力分布およびより良好な案内を得るために、特に各エリア単位に対して、半径方向に同じ角度分布を有する少なくとも3本の溝が設けられることが好ましい。
【0031】
溝は、好ましくは、円周方向における他のシリンダ外面への移行部に丸みのある縁部を有する。シリンダに対するばねコイルの回転中の、ばねコーティングに対する不必要な摩擦効果および損傷は、これによって回避され得る。
【0032】
溝は、軸方向に一定の深さを有することができる。溝の深さは、ここでは、仮想の理想的な円筒状シリンダ外面からの溝の最も深い点の半径方向の距離として理解されたい。本実施形態は、シリンダの簡素な製造を可能にする。しかしながら、同時に、溝の深さが一定であれば、潤滑剤は依然として溝に沿って容易に流れることができる。よって、本実施形態では、ピストンシリンダ装置のストローク運動による潤滑剤の蓄積または移動が防止されるように、「リザーバ」効果を形状によってさらに適応可能である。
【0033】
本用途の状況における構成要素としての「シリンダ」は、通常、理想的には円筒状ではないが、好ましくは少なくとも円筒状の外面を有する。
【0034】
1つの特定の実施形態では、溝の深さは軸方向に沿って変化する。溝の深さは、例えば、シリンダ軸に沿って周期的に変化するのであってもよい。本実施形態は、潤滑剤が、溝における、特に最も深い領域における表面張力によってさらに良好に保持され得るという利点を有する。よって、本実施形態では、「リザーバ」効果は幾何形状によっていっそう効果的である。他方、本実施形態は、シリンダ外面に特に様々な深さの溝を有するシリンダの一体の射出成形による製造がより難しく、そのために製造コストが増加する。
【0035】
別の実施形態では、シリンダは、円筒状シリンダ基部層とシリンダ表面層とを備え、溝は、シリンダ表面層に配置され、好ましくは、シリンダ基部層とシリンダ表面層とは異なる材料から構成される。
【0036】
本実施形態は、シリンダ基部層が、特に耐久性があり安定な材料、例えばガラス繊維強化ポリアミドから構成され得るという利点を有する一方、シリンダ表面層は、ばねとの摩擦が低減された材料から、例えばポリアミド(PA)と特にポリテトラフルオロエチレンの添加剤とを含む合成ブレンドから構成され得る。さらに、このようにして、深さが変わる溝をより容易に実現することもできる。よって、シリンダ表面層は、例えば、アディティブ法によってシリンダ基部層の外面に加えることができ、このプロセスでは、好ましくは深さの異なる溝を、形成されるシリンダ表面層に導入することができる。
【0037】
(3.ピストンシリンダ装置)
本発明による目的はまた、冒頭に述べた種類のピストンシリンダ装置において、内側ばねスリーブおよび/または外側ばねスリーブおよび/またはシリンダが、ばねに面する表面上に少なくとも1本の溝、特に2本、3本、または4本以上の溝を有することで達成される。
【0038】
よって、本発明によれば、溝は、ピストンシリンダ装置の3つの部品のうちの1つ、2つ、または3つすべての上記の部品に配置することができる。ここでも、溝を使用することは、最初、案内されるばねの摩擦相手としてのばねスリーブの全面積をより小さくし、それにより、摩擦および振動の伝達が抑制され、起こり得る雑音の発生が防止されるという効果を有する。しかしながら、同時に、達成されるばねの案内は、実質的に変化のない良好な案内になり得る。
【0039】
これに加えて、溝は、ピストンシリンダ装置において使用される潤滑剤のためのリザーバとして機能するという事実がある。特に潤滑剤の表面張力効果により、潤滑剤の残りが重力によりピストンシリンダ装置の下端部に集まる場合でさえ、溝は潤滑剤の一部を保持する。これにより、潤滑油の潤滑効果が向上し、その結果、ピストンシリンダ装置の耐用年数および整備間隔が長くなる。この効果は、溝の幾何学的寸法を潤滑剤に対して調整することによって最適化することができる。
【0040】
溝は、好ましくは、少なくとも内側ばねスリーブのばねに面する表面に、より好ましくはシリンダのばねに面する表面にも配置される。よって、ピストンシリンダ装置の長い休止段階の後でさえも、低減された摩擦およびばねの良好な潤滑を達成することができる。
【0041】
溝の長手方向軸は、ストローク経路に平行な軸方向に向けられると有利である。このような溝は、本発明によれば「軸方向の溝」と呼ばれる。長手方向軸を軸方向に向けることにより、達成されるばねの案内は、例えば長手方向軸をスリーブ内面またはシリンダ外面の円周方向に向けた場合よりも良好な案内になる。
【0042】
溝の溝長は、ピストンシリンダ装置のストローク運動においてばねによってカバーされるばねスリーブのスリーブばね長またはシリンダのシリンダばね長の少なくとも半分に相当すること、特にスリーブばね長またはシリンダばね長全体に相当すること、またはスリーブばね長またはシリンダばね長よりも長いことが有利である。このような溝長により、ばねがストローク運動全体にわたって最適に案内および潤滑されることが確保される。溝長がスリーブばね長またはシリンダばね長よりも長い場合、この特別な利点の結果、ばね長の外側に追加的な潤滑剤リザーバが形成され、それにより、追加的な潤滑剤を必要に応じてばねに到達させることができる。
【0043】
軸方向の溝は、内側ばねスリーブおよび/または外側ばねスリーブのスリーブ内面(一方または両方)、ならびに/あるいはシリンダのシリンダ外面の周りに円周方向に均等に分布させることが好ましく、よって、例えば、次の隣接する溝に対して、360°/2、360°/3、360°/4、360°/5などのそれぞれの間隔で分布させることが好ましい。シリンダにおけるより良好かつより均一な圧力分布およびより良好な案内を得るために、特に各エリア単位に対して、半径方向に同じ角度分布を有する少なくとも3本の溝が設けられることが好ましい。
【0044】
溝は、好ましくは、円周方向における他のスリーブ内面またはシリンダ外面への移行部に、丸みのある縁部を有する。ばねスリーブ(一方または両方)またはシリンダに対するばねコイルの回転中の、ばねコーティングに対する不必要な摩擦効果および損傷は、これによって回避され得る。
【0045】
溝は、軸方向に一定の深さを有することができる。溝の深さは、ここでは、仮想の理想的な円筒状スリーブ内面またはシリンダの仮想の理想的な円筒状外面からの溝の最も深い点の半径方向の距離として理解されたい。本実施形態は、例えば一体での射出成形による、ばねスリーブまたはシリンダの簡素な製造を可能にする。しかしながら、同時に、溝の深さが一定であれば、潤滑剤は依然として溝に沿って容易に流れることができる。よって、本実施形態では、ピストンシリンダ装置のストローク運動による潤滑剤の蓄積または移動が防止されるように、「リザーバ」効果を形状によってさらに適応可能である。
【0046】
一実施形態では、溝の深さは軸方向に沿って変化する。溝の深さは、例えば、シリンダ軸に沿って周期的に変化するのであってもよい。本実施形態は、潤滑剤が、溝における、特に最も深い領域における表面張力によってさらに良好に保持され得るという利点を有する。よって、本実施形態では、「リザーバ」効果は幾何形状によっていっそう効果的である。他方、本実施形態は製造がより難しく、特に、一体の射出成形はほとんど不可能であり、そのために製造コストが増加する。
【0047】
ピストンシリンダ装置のためのばねスリーブの実施形態およびピストンシリンダ装置のためのシリンダの実施形態に関連して説明したすべての特徴はまた、本発明によるピストンシリンダ装置に関して個々にまた任意の組み合わせで特許請求される。
【0048】
一実施形態では、ばねはフロック加工されていない。従来技術では、ピストンシリンダ装置におけるばねは、雑音の発生を最小限に抑え、それにもかかわらずばねの安定した装着を達成するために、少なくとも摩擦部の上においてフロック加工されている。しかしながら、フロック加工されたばねは、フロック加工繊維が摩擦相手(ばねスリーブ(一方または両方)および/またはシリンダ)と溝内で同様に擦れると、本発明の溝の効果を部分的に低減または打ち消し、他方では、溝における「リザーバ」から使用されているあらゆる潤滑剤を除去する。
【0049】
1つの特定の実施形態では、内側ばねスリーブおよび/または外側ばねスリーブおよび/またはシリンダのうちの少なくとも1つの表面が、ばねの材料に関して、好ましくはシリンダのシリンダ表面層、および/または内側ばねスリーブおよび/または外側ばねスリーブのスリーブ表面層の材料の選択によって、摩擦最適化される。
【0050】
例えば、ポリアミドと、ポリテトラフルオロエチレンであって、ポリテトラフルオロエチレンの割合が、好ましくは10%~30%の範囲、特に15%~25%の範囲、特に約20%である、ポリテトラフルオロエチレンの添加剤とを含む合成ブレンドからのスリーブ表面層および/またはシリンダ表面層は、例えばばね鋼のばねに関して有利な摩擦特性を有することが判明している。
【0051】
(4.ピストンシリンダ装置の製造方法)
本発明の目的はまた、
シリンダと、
シリンダの周りに同心円状に配置されたばねと、
内側ばねスリーブおよび外側ばねスリーブであって、それぞれがばねの周りに同心円状に配置される、内側ばねスリーブおよび外側ばねスリーブと、
を備えるピストンシリンダ装置の製造方法であって、本方法は、好ましくは射出成形、アディティブ法、またはサブトラクティブ法によって、ばねに面する表面上において、
内側ばねスリーブおよび/または
外側ばねスリーブおよび/または
シリンダ
に溝を導入するステップ
により特徴付けられるピストンシリンダ装置の製造方法によって達成される。
【0052】
本発明による製造方法により、上記の利点を有する本発明によるピストンシリンダ装置を得ることができる。このようにして、溝は、ピストンシリンダ装置の1つ、2つ、または3つすべての名称の付いた部分に、好ましくは少なくとも内側ばねスリーブに導入することができる。ここでも、溝を使用することは、最初、案内されるばねの摩擦相手としてのばねスリーブの全面積をより小さくし、それにより、摩擦および振動の伝達が抑制され、起こり得る雑音の発生が防止されるという効果を有する。しかしながら、同時に、達成されるばねの案内は、実質的に変化のない良好な案内になり得る。
【0053】
溝の長手方向軸は、ピストンシリンダ装置の装着後に、ストローク経路に平行な軸方向に向いていると有利である。このような溝は、本発明によれば「軸方向の溝」と呼ばれる。長手方向軸を軸方向に向けることにより、達成されるばねの案内は、例えば長手方向軸をスリーブ内面またはシリンダ外面の円周方向に向けた場合よりも良好な案内になる。
【0054】
溝の溝長は、ピストンシリンダ装置のストローク運動においてばねによってカバーされるばねスリーブのスリーブばね長またはシリンダのシリンダばね長の少なくとも半分に相当すること、特にスリーブばね長またはシリンダばね長全体に相当すること、またはスリーブばね長またはシリンダばね長よりも長いことが有利である。このような溝長により、ばねがストローク運動全体にわたって最適に案内および潤滑されることが確保される。溝長がスリーブばね長またはシリンダばね長よりも長い場合、この特別な利点の結果、ばね長の外側に追加的な潤滑剤リザーバが形成され、それにより、追加的な潤滑剤を必要に応じてばねに到達させることができる。
【0055】
1つの特定の実施形態では、溝は、軸方向に沿って深さが変化する状態で導入される。本実施形態は、上で既に述べたように、溝に導入されるあらゆる潤滑剤に関するリザーバ効果を改善する。しかしながら、このような溝をばねスリーブ(一方または両方)の内面に導入することは難しい。
【0056】
先の実施形態の代わりに、溝を一定の深さとして導入することもできる。このことには、特にばねスリーブの製造がより簡単であるという利点がある。スリーブの内面に深さが変わる溝を導入することは、特にスリーブを一体に製造する場合には難しい。
【0057】
別の実施形態では、本方法は、円筒状スリーブ基部層をスリーブ表面層でコーティングすることにより内側ばねスリーブおよび/または外側ばねスリーブを製造するステップを含み、溝はスリーブ表面層に導入される。本実施形態では、軸方向に深さが変化する溝を導入するのがより容易である。さらに、スリーブ基部層(一方または両方)の材料は、できるだけ安定するように選択することができるが、スリーブ表面層(一方または両方)の材料は、ばねとの摩擦に関して最適化することができる、すなわち、摩擦学的コーティングを使用できる。
【0058】
一実施形態では、本方法は、円筒状シリンダ基部層をシリンダ表面層でコーティングすることによりシリンダを製造するステップを含み、溝はシリンダ表面層に導入される。本実施形態では、軸方向に深さが変化する溝を導入するのがより簡単である。さらに、シリンダ基部層(一方または両方)の材料は、できるだけ安定するように選択することができるが、シリンダ表面層(一方または両方)の材料は、ばねとの摩擦に関して最適化すること、すなわち、摩擦学的コーティングを使用することができる。
【0059】
本発明の他の利点、目的、および特性は、本発明の実施形態が例として示されている、以下の説明および添付の図面によって説明される。図面において、少なくとも実質的にそれらの機能に関して対応する構成要素は、この場合、同じ参照番号によって特徴付けることができ、これらの構成要素は、必ずしもすべての図で番号付けおよび説明されない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明によるピストンシリンダ装置、ならびに本発明によるばねスリーブおよび本発明によるシリンダの概略断面図である。
図2】本発明によるピストンシリンダ装置の図1のA-A面における断面図である。
図3】第1の実施形態における図1のB1、B2またはB3のセクションの概略断面図である。
図4】第2の実施形態における図1のB1、B2またはB3のセクションの概略断面図である。
図5】第3の実施形態における図1のB1、B2またはB3のセクションの概略断面図である。
図6】第4の実施形態における図1のB1、B2またはB3のセクションの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、シリンダ2と、ばね3と、外側ばねスリーブ4と、内側ばねスリーブ5とを備える本発明によるピストンシリンダ装置1の概略断面図を示している。2つのばねスリーブ4、5は、中央に配置されたシリンダ2の周りに同心円状に配置されている。部分的に互いに係合する2つのばねスリーブ4、5と、シリンダ2との間にばね3が支持および案内される。外側ばねスリーブ4は、内側ばねスリーブ5の外径よりも大きな内径を有し、それにより内側ばねスリーブ5は、ピストンシリンダ装置1に負荷がかかったときに、外側ばねスリーブ4の中にさらに入り込むことができる。
【0062】
シリンダ2の内部には、例えばガス圧ばね(ガススプリング)を配置することもできるし、シリンダ2をガス圧ばねの一部にすることもできる。シリンダ2はまた、シリンダ2を短くまたは長くするために、部分的に互いに入り込むことができるいくつかのシリンダセグメントから構成することもできる。したがってここでは単に簡潔にするためにシリンダ2は一体であるものとして描かれている。
【0063】
図2は、図1のA-A面における断面図を示している。ここでは、本発明の一実施形態のみが一例として示されており、本実施形態は、内側ばねスリーブ5にのみ軸方向の溝6を有している。
【0064】
スリーブ内面における軸方向の溝は、案内されるばね3の摩擦相手として与えられるばねスリーブの全面積をより小さくする。ここでは、ばね3は、内側ばねスリーブ5との摩擦面積の減少を明確にするために、ハッチングされた円形のリングによって断面が表されている。点線は、軸方向の溝6のない別の内側ばねスリーブ5の輪郭を表している。
【0065】
軸方向の溝6はまた、ピストンシリンダ装置1において使用される潤滑剤のためのリザーバとして機能する。潤滑剤の残り(余り)が重力によりピストンシリンダ装置1の下端部に集まる場合でさえ、潤滑剤の表面張力効果によって溝6は潤滑剤の一部を保持する。この効果は、溝の幾何学的寸法を潤滑剤に対して調整することによって最適化することができる。
【0066】
図3図6は、図1の平面領域B1、B2、およびB3の単純化した概略断面図を示している。よって、図示の構造は、ばね3と内側ばねスリーブ5との間(B1)、またはばね3と外側ばねスリーブ4との間(B2)、またはばね3とシリンダ2との間(B3)の接触領域に対応し得る。
【0067】
図3は、ばね3と、軸方向の溝6のエリアにおけるばねスリーブ4、5またはシリンダ2のうちの1つの表面との間の接触領域の概略断面図を示している。ばね3は、溝エリアの外側で摩擦相手と接触しているが、示されたエリアでは直接接触していないことが認識されよう。よって、ばね3との摩擦相手として利用可能なばねスリーブ4、5またはシリンダ2の表面全体が減少する。さらに、軸方向の溝6に潤滑剤を導入することができる。すると、溝は、潤滑剤のためのリザーバとして作用し、ピストンシリンダ装置が長時間停止しているときに、潤滑剤がピストンシリンダ装置1の一端に完全に集まるのを防止する。本実施形態の軸方向の溝6は、軸方向に(図3図6ではそれぞれ水平方向に)沿って一定の深さH1を有する。
【0068】
図4は、ばね3と、軸方向の溝6のエリアにおけるばねスリーブ4、5またはシリンダ2のうちの1つの表面との間の接触領域の別の概略断面図を示している。先の実施形態とは対照的に、ここでは軸方向の溝6は軸方向に深さが変化する。溝6の深さは、溝最高点7での最小深さH2と、溝最低点8での最大深さH3との間で変化する。本実施形態の軸方向の溝6は、周期的に変化する深さ、例えば正弦曲線の輪郭を有する。
【0069】
図5は、ばね3と、軸方向の溝6のエリアにおけるばねスリーブ4、5またはシリンダ2のうちの1つの表面との間の接触領域のさらに別の概略断面図を示している。図3のように、本実施形態の軸方向の溝6は一定の深さH1を有する。
【0070】
しかしながら、本実施形態では、ばねスリーブ4、5および/またはシリンダ2は、少なくとも2つの層を有する。
【0071】
外側ばねスリーブ4および/または内側ばねスリーブ5は、スリーブ基部層9とスリーブ表面層10とを有し、かつ/またはシリンダは、シリンダ基部層11とシリンダ表面層12とを有する。
【0072】
軸方向の溝6は、スリーブ表面層10またはシリンダ表面層12内に完全に配置される。軸方向の溝6は、例えばスリーブ表面層10またはシリンダ表面層12をそれぞれの基部層9、11に加える(塗布する)ときに導入することができる。
【0073】
それぞれの基部層9、11は、機械的に特に耐久性があり安定した材料、例えばガラス繊維強化ポリアミドから構成され得る。それぞれの表面層10、12は、ばね3の材料(例えば、ばね鋼)に対する摩擦が低減された材料、例えばポリアミドとポリテトラフルオロエチレンの添加剤とを含む合成ブレンド(シンセティックブレンド)からなることができる。
【0074】
図6は、ばね3と、軸方向の溝6のエリアにおけるばねスリーブ4、5またはシリンダ2のうちの1つの表面との間の接触領域のさらに別の概略断面図を示している。図4の実施形態の場合と同様に、軸方向の溝6は軸方向に深さが変化する。溝6の深さは、溝最高点7での最小深さH2と溝最低点8での最大深さH3との間で変化する。
【0075】
本実施形態では、ばねスリーブ4、5および/またはシリンダ2は、図5の実施形態と同様に、少なくとも2つの層を有する。
【0076】
外側ばねスリーブ4または内側ばねスリーブ5は、スリーブ基部層9とスリーブ表面層10とを有し、あるいはシリンダは、シリンダ基部層11とシリンダ表面層12とを有する。この対応関係は、材料の選択に関しても図5のように当てはまる。
【0077】
本実施形態の軸方向の溝6は、周期的に変化する深さ、例えば正弦曲線の輪郭を有する。
【符号の説明】
【0078】
1 ピストンシリンダ装置
2 シリンダ
3 ばね
4 外側ばねスリーブ
5 内側ばねスリーブ
6 溝
7 溝最高点
8 溝最低点
9 スリーブ基部層
10 スリーブ表面層
11 シリンダ基部層
12 シリンダ表面層
図1
図2
図3
図4
図5
図6