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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】電力供給装置及び光部品駆動システム
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20221223BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20221223BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
G05F1/56 310S
G02F1/01 B
H05B3/00 310C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019000543
(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020109580
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】草山 敦
(72)【発明者】
【氏名】七海 康幸
(72)【発明者】
【氏名】木戸 清
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 裕二
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-177515(JP,A)
【文献】特開2017-228239(JP,A)
【文献】特開2007-230415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0084994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/445
G05F 1/56
G05F 1/613
G05F 1/618
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
H05B 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力供給対象のそれぞれに電圧を印加する定電圧源と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、
複数の前記電力供給対象へ印加する印加電圧を制御する出力電圧制御回路と、
前記電流検出回路が検出した前記電力供給対象の電流値が所望の値となるように前記出力電圧制御回路の電力を連続的に変化させる制御回路と、
を備える電力供給装置、及び
熱光学効果を利用した複数の光部品、前記光部品毎に配置されるヒーター、及びそれぞれの前記ヒーターが共用し、前記ヒーターへ電流を供給する共通電気配線、が形成された光波回路基板を備え、
前記電力供給装置は、前記光波回路基板の前記ヒーターを前記電力供給対象とすること、及び
前記共通電気配線と、前記定電圧源の間が2つ以上の経路で接続されていることを特徴とする光部品駆動システム。
【請求項2】
前記出力電圧制御回路は、
前記定電圧源と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタであり、
前記制御回路は、
それぞれの前記電界効果トランジスタのゲート電圧を制御し、前記電流検出回路が検出した前記電流値が所望の値となるように前記ソースと前記ドレインとの間の電気抵抗を連続的に変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光部品駆動システム
【請求項3】
複数の電力供給対象のそれぞれに電圧を印加する定電圧源と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、
複数の前記電力供給対象へ印加する印加電圧を制御する出力電圧制御回路と、
前記電流検出回路が検出した前記電力供給対象の電流値が所望の値となるように前記出力電圧制御回路の電力を連続的に変化させる制御回路と、
前記複数の電力供給対象の内、動作電圧の最も高い電力供給対象の動作電圧に前記定電圧源が発生した定電圧を変更し、全ての前記電力供給対象へ変更した電圧を印加する電圧変換器と、
を備える電力供給装置。
【請求項4】
前記出力電圧制御回路は、
前記定電圧源と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタであり、
前記制御回路は、
それぞれの前記電界効果トランジスタのゲート電圧を制御し、前記電流検出回路が検出した前記電流値が所望の値となるように前記ソースと前記ドレインとの間の電気抵抗を連続的に変化させる
ことを特徴とする請求項3に記載の電力供給装置。
【請求項5】
複数の電力供給対象のそれぞれに電圧を印加する定電圧源と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、
複数の前記電力供給対象へ印加する印加電圧を制御する出力電圧制御回路と、
前記電流検出回路が検出した前記電力供給対象の電流値が所望の値となるように前記出力電圧制御回路の電力を連続的に変化させる制御回路と、
電圧変換器と、
電圧モニタと、
電圧制御回路と、
を備え、
前記出力電圧制御回路は、前記定電圧源と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタであること、
前記電圧変換器は、前記定電圧源が発生した定電圧を印加電圧に変更し、全ての前記電力供給対象へ前記印加電圧を印加すること、
前記電圧モニタは、電流が流れている前記電力供給対象に接続されている前記電界効果トランジスタの前記ソースと前記ドレインとの間の電圧に関する電圧関連値を測定すること、
前記電圧制御回路は、前記電圧モニタが測定した全ての前記電圧関連値の平均値が最小となるように前記電圧変換器に前記印加電圧を変更させること、及び
前記制御回路は、それぞれの前記電界効果トランジスタのゲート電圧を制御し、前記電流検出回路が検出した前記電流値が所望の値となるように前記ソースと前記ドレインとの間の電気抵抗を連続的に変化させること、並びにそれぞれの前記電界効果トランジスタのゲート電圧を制御し、前記電力供給対象に流れる電流を透過又は遮断することができることを特徴とする電力供給装置。
【請求項6】
複数の電力供給対象のそれぞれに電圧を印加する定電圧源と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、
複数の前記電力供給対象へ印加する印加電圧を制御する出力電圧制御回路と、
前記電流検出回路が検出した前記電力供給対象の電流値が所望の値となるように前記出力電圧制御回路の電力を連続的に変化させる制御回路と、
を備え、
前記出力電圧制御回路は、
前記複数の電力供給対象のそれぞれに対応し、前記定電圧源が発生した定電圧を前記印加電圧に変更し、それぞれの前記電力供給対象へ前記印加電圧を印加する複数の電圧変換器であり、
前記制御回路は、
前記電流検出回路が検出した前記電流値が所望の値となるようにそれぞれの前記電圧変換器に前記印加電圧を変更させる
ことを特徴とする力供給装置。
【請求項7】
熱光学効果を利用した複数の光スイッチ、前記光スイッチ毎に配置され、前記光スイッチの方路を切り替えるヒーター、及びそれぞれの前記ヒーターが共用し、前記ヒーターへ電流を供給する電気配線、が形成された光波回路基板と、
前記光波回路基板の前記ヒーターを前記電力供給対象とする請求項からのいずれかに記載の電力供給装置と、
を備える光部品駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光回路基板上に形成された熱光学効果を利用した光部品に電力を供給するための電力供給装置及びそれを備える光部品駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に複数のヒーターが配置され、電圧源でそれらのヒーターを駆動するシステムが存在している。例えば、特許文献1に記載されるインクジェット記録ヘッド用基板である。特許文献1は、インクジェット記録ヘッドにおいて、複数の発熱抵抗体(ヒーター)を電圧源で駆動する時に、共通配線に分布する抵抗によって共通配線上の電圧が変動し、発熱する抵抗体の数に依存して発熱量が変わるという問題を解決するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-168179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電源から発熱体に至る共通配線と、発熱体からグランドに至る共通配線を対向した櫛状に配置し、この経路の配線抵抗を発熱体の位置に撚らず、均一化する手段を提案している。しかしながら、こうした電極配置は、発熱体の直近に通電する電流量を調節するトランジスタなどの素子が必要である。
【0005】
光スイッチや可変光アッテネータのような熱光学効果を利用した光部品を光波回路基板上に形成した場合、これらの光部品における発熱量を制御する制御回路は当該光波回路基板上に配置することが難しく、外部に接続する必要がある。このため熱光学効果を利用した光部品を搭載する光波回路基板に対しては、特許文献1のような手法を適用することはできない。つまり、熱光学効果を利用した光部品を搭載する光波回路基板に対しては、共通配線に分布する抵抗によって共通配線上の電圧が変動し、ヒーターの数に依存して発熱量が変わるという課題が依然あった。
【0006】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、光波回路基板に搭載されるヒーターの数に関わらずヒーターの発熱量を一定に保つことができる電力供給装置及び光部品駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力供給装置は、ヒーターに流れる電流を個別に制御することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る電力供給装置は、
複数の電力供給対象のそれぞれに電圧を印加する定電圧源と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、
前記定電圧源と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタと、
それぞれの前記電界効果トランジスタのゲート電圧を制御し、前記電流検出回路が検出した前記電流値が所望の値となるように前記ソースと前記ドレインとの間の電気抵抗を連続的に変化させる制御回路と、
を備える。
【0009】
本電力供給装置は、電力供給対象であるヒーター毎に電流を検出し、所定の値になるように電界効果トランジスタ(FET)の抵抗をアナログ的に変化させる。ヒーター別に電流を制御できるため、本発明は、光波回路基板に搭載されるヒーターの数に関わらずヒーターの発熱量を一定に保つことができる電力供給装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明に係る光部品駆動システムは、
熱光学効果を利用した複数の光部品、前記光部品毎に配置されるヒーター、及びそれぞれの前記ヒーターが共用し、前記ヒーターへ電流を供給する共通電気配線、が形成された光波回路基板と、
前記光波回路基板の前記ヒーターを前記電力供給対象とする前記電力供給装置と、
を備える。
【0011】
本光部品駆動システムは、光波回路基板にヒーター別に電流を制御できる電力供給装置を接続する。このため、本発明は、光波回路基板に搭載されるヒーターの数に関わらずヒーターの発熱量を一定に保つことができる光部品駆動システムを提供することができる。
【0012】
本発明に係る光部品駆動システムの前記光波回路基板は、光波回路基板上で、前記共通電気配線と、前記定電圧源の間が2つ以上の経路で接続されていることを特徴とする。この構成により、共通配線で発生する電圧降下を低減できる。
【0013】
一方、本発明に係る電力供給装置は、
定電圧を発生させる定電圧源と、
複数の電力供給対象の内、動作電圧の最も高い電力供給対象の動作電圧に前記定電圧源が発生した定電圧を変更し、全ての前記電力供給対象へ変更した電圧を印加する電圧変換器と、
を備える構成であってもよい。
【0014】
本電力供給装置は、駆動対象の光波回路基板毎に出力電圧を電圧変換器に設定することができる。このため、本電力供給装置は、駆動する光波回路基板に最適な電圧を出力することでFETのソース・ドレイン間に印加される電圧を下げ、FETでの消費電力を削減することができる。従って、本発明は、駆動する光波回路基板に応じて省電力化が可能な電力供給装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る電力供給装置は、
定電圧を発生させる定電圧源と、
前記定電圧源が発生した定電圧を印加電圧に変更し、全ての電力供給対象へ前記印加電圧を印加する電圧変換器と、
前記電圧変換器と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタと、
それぞれの前記電界効果トランジスタのゲート電圧を制御し、前記電力供給対象に流れる電流を透過又は遮断する制御回路と、
電流が流れている前記電力供給対象に接続されている前記電界効果トランジスタの前記ソースと前記ドレインとの間の電圧に関する電圧関連値を測定する電圧モニタと、
前記電圧モニタが測定した全ての前記電圧関連値の平均値が最小となるように前記電圧変換器に前記印加電圧を変更させる電圧制御回路と、
を備える構成であってもよい。
【0016】
本電力供給装置も、駆動対象の光波回路基板毎に出力電圧を電圧変換器に設定することができる。さらに本電力供給装置は、FETとヒーターとの間の電位を常時測定する電圧モニタを有しており、当該電圧モニタが測定した電圧をもとに制御回路が電圧変換器の出力電圧を変更することができる。光波回路基板に最適な電圧とは、光波回路の動作時に、駆動電流を流しているヒーターの間で最も大きな両端電圧を駆動可能な電圧になる。本電力供給装置では、本装置が駆動している光波回路基板上にあるヒーターの両端電圧を、電圧モニタを使用して随時測定することにより、その時に最適な電圧値を、電圧変換器に設定することができる。光波回路基板に最適な電圧は、オンとなるヒーターの数や分布によって変動する。本電力供給装置は、そのようなオンとなるヒーターの数や分布の変動に追従して最適な出力電圧を電圧変換器に設定することができる。
【0017】
また、本発明に係る電力供給装置は、
定電圧を発生させる定電圧源と、
複数の電力供給対象のそれぞれに対応し、前記定電圧源が発生した定電圧を印加電圧に変更し、それぞれの前記電力供給対象へ前記印加電圧を印加する複数の電圧変換器と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路が検出した前記電流値が所望の値となるようにそれぞれの前記電圧変換器に前記印加電圧を変更させる複数の制御回路と、
を備える構成であってもよい。
【0018】
本電力供給装置も、駆動対象の光波回路基板毎に出力電圧を電圧変換器に設定することができる。さらに本電力供給装置は、電圧変換器をヒーター毎に備える。このため、本電力供給装置は、光波回路基板内のヒーター毎に、最適な供給電圧で駆動できるので、全体のヒーターを同一の電圧源で駆動する場合に比べて、消費電力を効果的に削減することができる。このため、本電力供給装置は、ヒーター抵抗や光スイッチのオンに必要なヒーター電力のばらつきによらず、それぞれのヒーターを最適な電圧で駆動することができる。 また、本電力供給装置は、FETを不備とするので、過剰電圧でFETで無駄な電力が消費されるという課題を完全に解決することができる。
【0019】
本発明に係る光部品駆動システムは、
熱光学効果を利用した複数の光スイッチ、前記光スイッチ毎に配置され、前記光スイッチの方路を切り替えるヒーター、及びそれぞれの前記ヒーターが共用し、前記ヒーターへ電流を供給する電気配線、が形成された光波回路基板と、
前記光波回路基板の前記ヒーターを前記電力供給対象とする前記電力供給装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、光波回路基板に搭載されるヒーターの数に関わらずヒーターの発熱量を一定に保つことができる電力供給装置及び光部品駆動システムを提供することができる。さらに、本発明は、駆動する光波回路に応じて省電力化が可能な電力供給装置及び光部品駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】熱光学効果を利用した光部品を搭載する光波回路基板とこれを駆動する駆動回路を説明する図である。
図2】本発明に係る光部品駆動システムを説明する図である。
図3】本発明に係る光部品駆動システムを説明する図である。
図4】本発明に係る光部品駆動システムを説明する図である。
図5】本発明に係る光部品駆動システムを説明する図である。
図6】本発明に係る光部品駆動システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(発明概要)
本発明に係る電力供給装置は、例えば熱光学効果を利用した光波回路などの複数の電力供給対象のそれぞれに電圧を印加する定電圧源と、それぞれの電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路と、複数のそれらの電力供給対象への印加電圧を制御する出力電圧制御回路と、電流検出回路が検出したそれぞれの電力供給対象の電流値が所望の値となるように出力電圧制御回路の電力を連続的に変化させる制御回路とを備える。出力電圧制御回路は、定電圧源の供給電圧を適切な電圧(印可電圧)に変換して光波回路などの電力供給対象に加える働きを有し、例えば、FETや電圧変換器が挙げられる。
【0024】
本発明に係る光部品駆動システムは、ヒーターで光導波路の温度を変えることで光の経路を制御する、熱光学効果を利用した光波回路が複数集積された光波回路基板と、その光波回路基板と電気的に接続して光波回路のヒーターに電流を供給する駆動する駆動回路と、を備える。当該ヒーターは2端子を有し、第1の端子がそれぞれ駆動回路に接続され、第2の端子が光波回路基板上に形成された共通配線の任意の位置に接続されている。そして、当該駆動回路はヒーターに流れる電流をモニタしており、その電流が所定値となるように制御される。
【0025】
この構成によれば、共通配線への接続位置や、共通配線上の寄生抵抗の大きさに依存することなく、ヒーターで設定した熱量を発生させることができる。このため、駆動するヒーターの数によってヒーターの発熱量が変動する課題を解決できる。また、特許文献1と比較して電源からヒーターまでの配線数は増えるが、共通配線は配線抵抗を考慮せずに自由に結線できるので、電源からヒーター、ヒーターからグランドまでの配線長をそろえる必要がある特許文献1の手法と比較して、光波回路基板上の光回路の位置に合わせて、共通配線の経路や本数を任意に設定できるという利点がある。
【0026】
(発明課題の詳説)
図1は、光部品駆動システム100を説明する図である。光部品駆動システム100は、定電圧源21を光波回路基板11の外に配置した構成であり、光波回路基板11は1入力2出力光スイッチを4チャンネル備えている。ここで、光スイッチには、マッハツェンダー干渉計が使用され、干渉計で分岐した導波路の一方にヒーターを装荷することで、その光導波路の屈折率を温度によって変化させ、2つの光出力経路に分岐する光の量を変えるという、光スイッチの機能を実現している。なお、図1では、光スイッチのマッハツェンダー干渉計の記載を省略し、ヒーターのみを示している。
【0027】
各ヒーターの第1の端子は、電力供給装置(ヒーター駆動回路)12のFET33に接続される。FET33はヒーターごとに用意されている。各ヒーターの第2の端子は、R1,R2,R3,R4という抵抗のシンボルで示した光波回路基板11の共通配線31に、それぞれ異なる合流点1,合流点2,合流点3で接続されている。
【0028】
ここで、FET33は制御回路22によって、一定のドレイン・ソース電圧になる様に設定されている。ヒーターの抵抗はRh、電力供給装置12から各ヒーターへの配線抵抗は、Rs1,Rs2,Rs3,Rs4である。
【0029】
制御回路22がヒーター4に対応するFETのゲート・ソース間に電圧を印加するとヒーター電流I4が流れる。この時、光波回路基板11の端子4と端子5の間の電位差V4は次式で与えられる。ヒーター4には電力P4が発生する。
V4=I4×(Rs4+Rh+R4)
この時に発生する、ヒーターの発熱量P4は次式となる。
P4=I4×Rh
【0030】
この時に、他のヒーターにそれぞれ、I1,I2,I3の電流が流れた場合、ヒーター4に流れる電流はI4’に変化する。つまり、電位差V4は次式で与えられる。
V4=I4’×(Rs4+Rh)+(I1+I2+I3+I4’)×R4
この時、ヒーター4で発生する熱量P4’は、次式で与えられる。
P4’=I4’×Rh
【0031】
すなわち、V4を一定とするヒーター駆動の場合、他のヒーターに電流I1,I2,I3が流れることにより、配線抵抗R4での電圧降下が増大し、その値だけ、ヒーター4に印加する電圧I4’×Rhが減少する。これによって、ヒーター4で発生する熱量P4’も、他のヒーターからの電流が流れていない時の熱量P4より少なくなる。つまり、動作する光スイッチの数によって、光スイッチに使用しているヒーターの発熱量が変化し、結果として挿入損失が変わるという問題が発生する。この問題は、図中の全てのヒーターにおいて発生し、ヒーター数が増えるほど発熱量の変動は大きい。
【0032】
(実施形態1)
図2は、本実施形態の光部品駆動システム101を説明する図である。光部品駆動システム101は、
熱光学効果を利用した複数の光部品、前記光部品毎に配置されるヒーター、及びそれぞれの前記ヒーターが共用し、前記ヒーターへ電流を供給する共通電気配線31、が形成された光波回路基板11と、
光波回路基板11の前記ヒーターを電力供給対象とする電力供給装置(ヒーター駆動回路)13と、
を備える。
【0033】
電力供給装置13は、
複数の電力供給対象(ヒーター)のそれぞれに電圧を印加する定電圧源21と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流値を検出する電流検出回路24と、
定電圧源21と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタ23と、
それぞれの電界効果トランジスタ23のゲート電圧を制御し、電流検出回路24が検出した前記電流値が所望の値となるように前記ソースと前記ドレインとの間の電気抵抗を連続的に変化させる制御回路25と、
を備える。
【0034】
前記電流検出回路としては、例えば電力供給対象と、定電圧源21の間に直列に挿入された電流検出抵抗ないし、電流センス・アンプ(Current sense amplifier)が例示される。前記制御回路は、電流検出抵抗における電圧降下量や、電流値に対応した電圧値を出力する電流センス・アンプの出力信号にしたがって、前記電流値を測定する。
【0035】
光部品駆動システム101の光波回路基板11には、図1と同じ構成の4チャンネルの1入力2出力光スイッチを備える。光部品駆動システム101と光部品駆動システム100とは、電力供給装置13が異なり、本実施形態の電力供給装置13は各光スイッチのヒーターに対応する制御回路25と電流検出回路24を備えている。
【0036】
電力供給装置13は、光波回路基板11のヒーターの第1の端子を、それぞれFET23及び電流検出回路24の直列回路に接続する。光波回路基板11のヒーターの第2の端子は、光波回路基板11の共通配線31を介して定電圧電源21に接続している。電流検出回路24は制御回路25に接続されている。制御回路25は、電流検出回路24の発生する電圧から、ヒーターに流れる電流を検出し、それが指定の値になる様に、FET23に印加するゲート電圧を制御する。つまり、制御回路25は、FET23へ印加するゲート電圧を調整することでソース・ドレイン間の抵抗値を変え、ヒーターに流れる電流を所定値に調整している。
【0037】
本実施形態の電力供給装置13を使用することで、各ヒーターに流れる電流を、共通配線31との合流点における電位の変化に関わらず所定の電流値に調整できる。従って、本実施形態の電力供給装置13は、光波回路基板11の駆動するヒーターの数に影響されずに、一定の発熱量をヒーターで発生させることができる。つまり、電力供給装置13は、動作する光スイッチの数の変動による光スイッチの動作不良や挿入損失が変わるという課題を解決できる。
【0038】
(実施形態2)
図3は、本実施形態の光部品駆動システム102を説明する図である。光部品駆動システム102は、光回路基板11が光回路基板11aであることが図2の光部品駆動システム101との相違点である。光波回路基板11aは、各ヒーターRhと定電圧源21を接続する共通電気配線32が、経路14と15を経由して、定電圧源21に対して複数系統形成されていることを特徴とする。
【0039】
光波回路基板11aは、共通配線32が、R1,R2,R3,R4,R5という抵抗のシンボル示した経路で形成され、電力供給装置13からの電流は接続点35でR4側とR5側の2つの経路(14,15)に分流している。これらの経路は、3つ以上に増やしてもよい。また、光波回路基板11aは、電気配線が交差しないようにレイアウトされ、単層の電気配線を使用できるようになっている。
【0040】
光部品駆動システム102では、電流が流れる経路は、駆動するヒーターの数によって変化し、ヒーターと共通配線32との接続点34の電位が変化する。光部品駆動システム102も図2の光部品駆動システム101と同様に、制御回路25が、個々のヒーターに流れる電流を所定値に保つので、動作する光スイッチの数による接続点34の電圧変動によって、光スイッチの動作不良や挿入損失が変わるという課題を解決できる。
【0041】
さらに、光部品駆動システム102の構成では、定電圧源21から、それぞれのヒーターに流れる電流がR4側とR5側の2つの経路に分流するので、共通配線32を流れる電流の電流密度を低減(電圧降下を低減)できる効果もある。また、定電圧源への経路が増えることによって、電流による電圧降下が軽減されるので、定電圧源に必要な出力電圧を下げる効果がある。
【0042】
光部品駆動システム102は、共通配線32の電圧降下が小さくヒーターを流れる電流への影響が小さいので、共通配線の設計の自由度が高く、光波回路基板11aの光回路のレイアウトや、配線の層数の制限に対応しやすいという利点がある。
【0043】
(実施形態3)
図4は、本実施形態の光部品駆動システム103を説明する図である。光部品駆動システム103は、電力供給装置14を備える。電力供給装置14は、実施形態1や2で説明した電力供給装置13に、
複数の電力供給対象の内、動作電圧の最も高い電力供給対象の動作電圧に前記定電圧源が発生した定電圧を変更し、全ての前記電力供給対象へ変更した電圧を印加する電圧変換器27をさらに備える。
【0044】
ヒーター駆動電源に定電圧電源のみを使用する場合、光回路を備える複数の光波回路基板を制御しようとすれば、複数の光波回路基板の内の最も高い動作電圧を必要とする光波回路基板に合わせて定電圧電源の電圧値を設定することになる。そのため、低い動作電圧で駆動できる光波回路基板に含まれる光回路に対しては、その分FETのソース・ドレイン間に印加される電圧が高くなり、FETで消費される電力が増加し、無駄な電力が消費されていた。
【0045】
光部品駆動システム103の電力供給装置14は、光部品駆動システム101の電力供給装置13と異なり、回路の構成に応じて光波回路基板ごとに供給する電圧を調整し、自身の消費電力を削減することができる。電力供給装置14には、定電圧電源21に加え、電圧変換器27とこれを制御する制御回路26を備えることを特徴とする。
【0046】
光部品駆動システム103の光波回路基板11bは、図2で説明した1入力2出力光スイッチを一つの光導波路に4つ直列させた構成である。図2の抵抗(R1等、Rs1等)は省略してある。
【0047】
光部品駆動システム103は、電圧変換器27の出力が各ヒーターに接続されている。電圧変換器27は、電圧制御回路26からの信号に従って、定電圧源21からの電圧を任意の電圧に変換することが可能である。電圧変換器27は、例えばDC/DCコンバータである。電圧制御回路26は、電力供給装置14に接続される光波回路基板11b毎に、それに形成されている光スイッチのうち、動作電圧の高い光スイッチに合わせた出力電圧を電圧変換器27に設定することができる。
【0048】
したがって、光部品駆動システム103は、光波回路基板11bの間のヒーター消費電力の相違やヒーター抵抗の分布の相違に関わらず、電力供給装置14に接続される光波回路基板11bに最適な電圧を電圧変換器27に設定できる。光波回路基板11b毎に供給する電圧を調整できるため、FET23のソース・ドレイン間に印加される電圧が下がり、FET23での消費電力を削減できる。
【0049】
なお、電圧変換器27に設定する電圧値は、制御回路が設定する。例えば、光スイッチを動作するのに必要な電力値から、ヒーター抵抗値と光スイッチの動作に必要な電圧との関係を制御回路26が備える不揮発メモリ―に記録しておき、光波回路基板11bと電力供給装置14とを接続するときに、制御回路26がR1~R4の電圧値からRhを計算し、記憶されている当該種類に対応する電圧値を電圧変換器27に設定してもよい。また、光スイッチの光出力をモニタしているモニタ回路(不記載)の出力信号を制御回路26が受信できる構成とし、制御回路26が電圧変換器27の電圧値を変化させ、光出力が所定値以上になった電圧値を設定する電圧値としても良い。
【0050】
(実施形態4)
図5は、本実施形態の光部品駆動システム104を説明する図である。光部品駆動システム104は、電力供給装置15が図4の光部品駆動システム103の電力供給装置14と異なっている。
【0051】
電力供給装置15は、前記第一の電力供給装置であって、
定電圧を発生させる定電圧源21と、
定電圧源21が発生した定電圧を印加電圧に変更し、全ての電力供給対象へ前記印加電圧を印加する電圧変換器27と、
電圧変換器27と前記電力供給対象とを接続するそれぞれの電気経路にソースとドレインが接続される電界効果トランジスタ(FET)23と、
それぞれの電界効果トランジスタ23のゲート電圧を制御し、前記電力供給対象に流れる電流を透過又は遮断する制御回路25と、
電流が流れている前記電力供給対象に接続されている電界効果トランジスタ23の前記ソースと前記ドレインとの間の電圧に関する電圧関連値を測定する電圧モニタ28と、
電圧モニタ28が測定した全ての前記電圧関連値の平均値が最小となるように電圧変換器27に前記印加電圧を変更させる電圧制御回路26と、
を備える。
【0052】
電力供給装置15は、図4の電力供給装置14に電圧モニタ28をさらに備える。電圧モニタ28は、ヒーター毎にFET23とヒーターの間の電位(グランドからの電圧)を測定する。電圧制御回路26は、電圧モニタ28の測定したヒーター毎の電位に基づいて、FET23にかかる電圧を最小にするように電圧変換器27の出力電圧を設定する。具体的には、電圧制御回路26は、オンしたヒーターに接続するFET23のソース・ドレイン間の電圧(電流検出回路24の抵抗を含む電圧)の変動をモニタ可能となるので、観測した時点でオンであるFET23にかかる電圧を最小にするように電圧変換器27の出力電圧を設定する。なお、「オンであるFET23にかかる電圧を最小にする」とは、オンであるFET23の中で、最小の電圧値で光スイッチを正常動作させることができるFETを、その最小電圧になるように電圧変換器27の出力電圧を設定することを意味する。FET23にかかる電圧が前記最小の電圧を下回ると、電流検出回路24の制御回路25がFET23の電圧上昇を指令するため、2つの制御回路(25、26)が独立にFET23を制御し、FET23にかかる電圧が前記最小の電圧に維持される。
【0053】
電力供給装置15は、常時、オンであるFET23にかかる電圧を最小にすることができるため、FET23のソース・ドレイン間に印加される電圧が下がり、FET23での消費電力を削減できる。
【0054】
(実施形態5)
図6は、本実施形態の光部品駆動システム105を説明する図である。光部品駆動システム105は、電力供給装置16が光部品駆動システム103の電力供給装置15と異なっている。本発明に係る電力供給装置16は、ヒーターごとに具備された電圧変換器29と、ヒーター電流を検出する電流検出回路24が検出した電流レベルを入力信号として、電圧変換器29の出力電圧を制御する制御回路25を組み合わせている。実施形態1~4で用いたFETの代わりに、実施形態5では電圧変換器29を用いている。これは、FETでは、適切な電圧と定電圧源の間の電圧差が大きい場合、所定のヒーター電流になるようにFETの消費電力を増加させて、ヒーターに印加される電圧を調整するが、電圧変換器で消費電力を消費することなく、ヒーターに印加される電圧を調整することができるので、電力供給装置の消費電力をより削減できる。
【0055】
電力供給装置16は、
定電圧を発生させる定電圧源21と、
複数の電力供給対象のそれぞれに対応し、定電圧源21が発生した定電圧を印加電圧に変更し、それぞれの前記電力供給対象へ前記印加電圧を印加する複数の電圧変換器29と、
それぞれの前記電力供給対象を流れる電流により電圧降下を発生させる複数の電流検出回路24と、
それぞれの電流検出回路24の抵抗で発生する電圧降下量が所定値となるようにそれぞれの電圧変換器29に前記印加電圧を変更させる複数の制御回路25と、
を備える。
【0056】
電力供給装置16は、ヒーターごとに電圧変換器29が配置される。電圧変換器29とヒーターとの間に電流検出回路24が接続される。制御回路25は、電流検出回路24の出力電圧にしたがってヒーターに流れる電流が所定値となるように電圧変換器29の出力電圧を設定する。電圧変換器29は、例えば、DC/DCコンバータである。
【0057】
電力供給装置16は、個別のヒーターに対して最適な電圧を出力することができる。このため、ヒーターの抵抗やヒーターへの配線の分布(抵抗分布)、さらに光スイッチのオンに必要なヒーター電力のばらつきに影響されずに、それぞれのヒーターを最適な電圧で駆動することができ、光波回路基板のヒーターとヒーターへの配線の分布(抵抗分布)に応じて消費電力を最小に調整できる。また、電力供給装置16は、電流を制御するFETが不要なので、FETでの消費電力を考慮する必要が無く、消費電力をさらに削減できる。
【符号の説明】
【0058】
11、11a、11b:光波回路基板
12、13:電力供給装置(ヒーター駆動回路)
14、15:共通電気配線と定電圧源を接続する経路
21:定電圧源
22:制御回路
23:電界効果トランジスタ(FET)
24:電流検出回路
25:制御回路
26:電圧制御回路
27:電圧変換器
28:電圧モニタ
29:電圧変換器
31、32:共通配線
33:FET
34:接続点
35:接続点
100~105:光部品駆動システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6