(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】一液湿気硬化型ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20221223BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221223BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/04
C08G18/10
(21)【出願番号】P 2019014713
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】321011088
【氏名又は名称】シーカ・ハマタイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】荒木 公範
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-168435(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136800(WO,A1)
【文献】特開2005-239753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に活性イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
ジブチルフタレート吸油量が15~40ml/100gである特定カーボンブラックと、を含み、
前記特定カーボンブラックの含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して5~75質量部である、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物を製造する、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法であって、
前記特定カーボンブラックと、ポリオールを含む液体成分との混合液を、液温が120℃以上となるように加熱してカーボンブラック混合液を得る、カーボンブラック混合液製造工程、及び、
前記カーボンブラック混合液とポリイソシアネートとを混合し、前記カーボンブラック混合液中の前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させて前記ウレタンプレポリマーを生成し、プレポリマー混合液を得る、プレポリマー混合液製造工程、
を含む、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
【請求項2】
前記液体成分が、更に、可塑剤を含む、請求項1に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一液湿気硬化型ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用、建築用及び構造用のシーリング剤、接着剤等として一液湿気硬化型ポリウレタン組成物が使用されている。
特許文献1には、ウレタンプレポリマーと、カーボンブラックと、炭酸カルシウムと、脂肪族イソシアネートと、金属触媒と、アミン触媒とを含有する、一液湿気硬化タイプの接着剤組成物であり、上記カーボンブラックとして、複数の種類のカーボンブラックを含有し、第1のカーボンブラックのジブチルフタレート吸油量が23~40cm3/100gであり、第2のカーボンブラックのジブチルフタレート吸油量が85~120cm3/100gであり、上記第1のカーボンブラックの含有量1が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、25質量部以上であり、上記第2のカーボンブラックの含有量2が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、9質量部以上であり、上記炭酸カルシウムの含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、5~30質量部であり、上記炭酸カルシウムの含有量が、上記含有量1及び上記含有量2の合計100質量部に対して、5~50質量部である、接着剤組成物、が開示されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にして、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物を調製しこれを評価したところ、このような一液湿気硬化型ポリウレタン組成物には、深部硬化性に改善の余地があることが分かった。
また、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物は、保存中に粘度が変化しにくいことが好ましく、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物には粘度の経時安定性も求められている。
【0005】
そこで本発明は、深部硬化性及び粘度の経時安定性に優れる一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを知見した。
【0007】
〔1〕
末端に活性イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
ジブチルフタレート吸油量が15~40ml/100gである特定カーボンブラックと、を含み、
上記特定カーボンブラックの含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して5~75質量部である、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物を製造する、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法であって、
上記特定カーボンブラックと、ポリオールを含む液体成分との混合液を、液温が120℃以上となるように加熱してカーボンブラック混合液を得る、カーボンブラック混合液製造工程、及び、
上記カーボンブラック混合液とポリイソシアネートとを混合し、上記カーボンブラック混合液中の上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを反応させて上記ウレタンプレポリマーを生成し、プレポリマー混合液を得る、プレポリマー混合液製造工程、
を含む、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
〔2〕
上記液体成分が、更に、可塑剤を含む、〔1〕に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、深部硬化性及び粘度の経時安定性に優れる一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、ジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217-4:2017「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第4部:オイル吸収量の求め方」に準じて測定される値である。
本明細書において、得られる一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の深部硬化性及び/又は粘度の経時安定性がより優れることを、本発明の効果がより優れるとも言う。
【0010】
[一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法]
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法は、
末端に活性イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(以下、「末端に活性イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」を「ウレタンプレポリマー」とも言う)と、
ジブチルフタレート吸油量(以下、「ジブチルフタレート吸油量」を、「吸油量」とも言う)が、15~40ml/100gである特定カーボンブラックと、を含み、
上記特定カーボンブラックの含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して5~75質量部である、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物を製造する、一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法であって、
特定カーボンブラックと、ポリオールを含む液体成分との混合液を、液温が120℃以上となるように加熱してカーボンブラック混合液を得る、カーボンブラック混合液製造工程、及び、
上記カーボンブラック混合液とポリイソシアネートとを混合し、上記カーボンブラック混合液中の上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを反応させて上記ウレタンプレポリマーを生成し、プレポリマー混合液を得る、プレポリマー混合液製造工程、
を含む。
以下、本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法で得られる一液湿気硬化型ポリウレタン組成物を、ウレタン組成物とも言う。
【0011】
このような構成をとることで本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推定している。
すなわち、所定の吸油量を有するカーボンブラックと液体成分とを高温(120℃以上)で混合すると、液体成分中に、カーボンブラックから、詳細不明の特定の微量成分が抽出されると考えられている(以下、所定の吸油量を有するカーボンブラックから抽出された詳細不明の特定の微量成分を、「特定抽出成分」とも言う)。このように抽出された特定抽出成分を含む液体成分を用いてウレタン組成物を製造すると、得られるウレタン組成物の液中にも特定抽出成分が含まれることとなる。組成物を硬化させる際には、特定抽出成分が触媒的に作用して、深部硬化性を向上させている、と推定している。
【0012】
以下、本発明の製造方法の各工程及び各成分について、詳述する。
【0013】
<製造方法>
本発明のウレタン組成物の製造方法(以下、「本発明のウレタン組成物の製造方法」を「製造方法」とも言う)は、カーボンブラック混合液製造工程、及び、プレポリマー混合液製造工程を含む。
【0014】
(カーボンブラック混合液製造工程)
カーボンブラック混合液製造工程は、特定カーボンブラックと、ポリオールを含む液体成分との混合液を、液温が120℃以上となるように加熱してカーボンブラック混合液を得る工程である。
【0015】
特定カーボンブラックとは、吸油量が15~40ml/100gであるカーボンブラックであり、特定カーボンブラックの詳細については後述する。
本発明の効果がより優れる点から、混合液中、特定カーボンブラックの含有量は、混合液100質量部に対して、5~75質量部が好ましく、20~70質量部がより好ましく、45~65質量部が更に好ましい。
【0016】
液体成分は、液温が120℃である上記混合液中で、液体として存在する成分である。液体成分は、120℃で液状であれば、常温(例えば25℃)の大気中において固体として存在する化合物であってもよい。また、純物質として存在する場合に120℃の大気中において固体である化合物であっても、上記混合液中で液体として存在していれば、液体成分とみなす。
本発明の効果がより優れる点から、混合液中、液体成分の含有量は、混合液100質量部に対して、50~95質量部が好ましく、55~85質量部がより好ましく、60~70質量部が更に好ましい。
上記液体成分は、ポリオールを含む。
ポリオールの詳細については後述する。
本発明の効果がより優れる点から、上記液体成分中、ポリオールの含有量は、液体成分100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、50~100質量部がより好ましく、80~100質量部が更に好ましい。
上記液体成分中、ポリオール以外の成分としては、例えば、可塑剤が挙げられる。可塑剤の詳細については後述する。
本発明の効果がより優れる点から、上記液体成分が可塑剤を含む場合、上記液体成分中、可塑剤の含有量は、液体成分100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~45質量部がより好ましく、15~35質量部が更に好ましい。
【0017】
上記混合液は、特定カーボンブラックと液体成分と以外の、その他の成分を含んでもよい。上記その他の成分としては、例えば、炭酸カルシウムなどの充填剤が挙げられる。充填剤の詳細については後述する。
本発明の効果がより優れる点から、混合液が充填剤を含む場合、上記混合液中、上記その他の成分の含有量は、液体成分100質量部に対して、3~70質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましく、20~40質量部が更に好ましい。
ただし、液体成分は、イソシアネート基を有する化合物を実質的に含まないのが好ましい。具体的には、液体成分がイソシアネート基を有する化合物を含む場合、その含有量は、液体成分100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.1質量部が更に好ましい。
【0018】
特定カーボンブラックと液体成分との混合液を得る手順は特に限定されない。
例えば、特定カーボンブラック、液体成分、及び/又は、所望に応じて加えるその他の成分が、それぞれ2以上の成分を含む場合、それぞれの成分の全部又は一部を、順次又は同時に混合して混合液を得てもよい。
【0019】
上記混合液は、液温が120℃以上になるように加熱(加熱処理)されて、カーボンブラック混合液とされる。
本発明の効果がより優れる点から、加熱処理によって加熱される混合液の液温は、120℃超であるのが好ましく、120℃超150℃以下であるのがより好ましく、125~145℃であるのが更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、加熱処理の持続時間(混合液の液温が120℃以上(好ましくは120℃超、より好ましくは120℃超150℃以下、更に好ましくは125~145℃)の状態で維持されている時間)は、10~300分が好ましく、30~240分がより好ましく、60~180分が更に好ましい。
加熱処理の前、後、及び/又は、最中に、混合液の撹拌を行ってもよい。
また、加熱処理の前、後、及び/又は、最中に、混合液に脱気処理を行ってもよい。
【0020】
(プレポリマー混合液製造工程)
プレポリマー混合液製造工程は、カーボンブラック混合液製造工程で得られたカーボンブラック混合液とポリイソシアネートとを混合し、上記カーボンブラック混合液に由来するポリオールと上記ポリイソシアネートとを反応させて、ウレタンプレポリマーを生成する工程である。
ポリイソシアネート及びウレタンプレポリマーの詳細については後述する。
【0021】
カーボンブラック混合液とポリイソシアネートとを混合して混合液(プレポリマー前駆体混合液)を得る手順は特に限定されない。例えば、カーボンブラック混合液とポリイソシアネートとを、それぞれの全部又は一部を、順次又は同時に混合してプレポリマー前駆体混合液を得てもよい。
また、プレポリマー前駆体混合液は、カーボンブラック混合液及びポリイソシアネート以外の成分を含んでもよい。
上記カーボンブラック混合液及びポリイソシアネート以外の成分としては、例えば、触媒(特に金属触媒)、可塑剤、充填剤が挙げられる(これらの成分の詳細については後述する)。また、プレポリマー前駆体混合液は、カーボンブラック混合液に含まれていたポリオール以外のポリオールを更に含んでもよいし、カーボンブラック混合液に含まれていた特定カーボンブラック以外の特定カーボンブラックを更に含んでもよい。
プレポリマー前駆体混合液が、カーボンブラック混合液に含まれていたポリオール以外のポリオールを更に含む場合、本発明の効果がより優れる点から、カーボンブラック混合液に含まれていたポリオールの含有量は、プレポリマー前駆体混合液中の全ポリオール100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、50~100質量部がより好ましく、80~100質量部が更に好ましい。
プレポリマー前駆体混合液が、カーボンブラック混合液に含まれていた特定カーボンブラック以外の特定カーボンブラックを更に含む場合、本発明の効果がより優れる点から、カーボンブラック混合液に含まれていた特定カーボンブラックの含有量は、プレポリマー前駆体混合液中の全特定カーボンブラック100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、50~100質量部がより好ましく、80~100質量部が更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、プレポリマー前駆体混合液中、カーボンブラック混合液及びポリイソシアネートの合計含有量は、プレポリマー前駆体混合液100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、50~100質量部がより好ましく、80~100質量部が更に好ましい。
【0022】
プレポリマー前駆体混合液の組成は、後段で詳述するウレタンプレポリマーについての好ましい条件を満たすウレタンプレポリマーを製造できる組成であるのが好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、プレポリマー前駆体混合液の組成としては、ポリオール等が有する活性水素含有基(代表的には水酸基)1モルに対し、1.5~2.5モルのイソシアネート基が存在するようにポリイソシアネートを添加された組成が好ましい。
【0023】
本工程では、プレポリマー前駆体混合液中の、上記カーボンブラック混合液に由来するポリオール(及び、所望に応じて含む上記「カーボンブラック混合液に含まれていたポリオール以外のポリオール」)と、ポリイソシアネートとを反応(反応処理)させてウレタンプレポリマーを生成する。
本発明の効果がより優れる点から、反応処理を実施する際、プレポリマー前駆体混合液の液温は、45~90℃が好ましく、50~70℃がより好ましい。
また、本発明の効果がより優れる点から、プレポリマー前駆体混合液の液温を上記範囲内にした状態で維持する時間は、15~240分が好ましく、30~90分がより好ましい。
反応処理の前、後、及び/又は、最中に、プレポリマー前駆体混合液(又はプレポリマー混合液)の撹拌を行ってもよい。
また、加熱処理の前、後、及び/又は、最中に、プレポリマー前駆体混合液(又はプレポリマー混合液)に窒素パージや脱気処理を行ってもよい。
【0024】
プレポリマー前駆体混合液は、上述の反応処理を経てプレポリマー混合液となる。
プレポリマー混合液は、そのままウレタン組成物としてもよいし、更に異なる成分と混合してウレタン組成物としてもよい。
上記更に異なる成分としては、触媒(特に金属触媒又はアミン系触媒)、可塑剤、充填剤が挙げられる(これらの成分の詳細については後述する)。また、上記更に異なる成分は、プレポリマー混合液に含まれるプレポリマーとは異なるウレタンプレポリマーであってもよいし、プレポリマー混合液に含まれる特定カーボンブラック以外の特定カーボンブラックであってもよい。
【0025】
<一液湿気硬化型ポリウレタン>
以下、本発明の製造方法で得られるウレタン組成物の好ましい条件(組成、成分等)について説明する。
【0026】
(特定カーボンブラック)
ウレタン組成物は、ウレタンプレポリマーと、特定カーボンブラックと、を含む。
ウレタン組成物中、特定カーボンブラックの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して5~75質量部であり、本発明の効果がより優れる点から、20~70質量部が好ましく、45~65質量部がより好ましい。
【0027】
上述の通り、ウレタン組成物が含む特定カーボンブラックは、そのすべてが、カーボンブラック混合液に由来する必要はない。
ただし、本発明の効果がより優れる点から、ウレタン組成物中、カーボンブラック混合液に由来する特定カーボンブラックの含有量(上述の加熱処理に供された特定カーボンブラックの含有量)は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して5~75質量部が好ましく、20~70質量部がより好ましく、45~65質量部がより好ましい。
言い換えると、ウレタン組成物は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、5~75質量部(好ましくは20~70質量部、より好ましくは45~65質量部)の特定カーボンブラックから抽出される量の特定抽出成分を含むのが好ましい。
【0028】
特定カーボンブラックの吸油量は15~40ml/100gであり、本発明の効果がより優れる点から、20~35ml/100gが好ましく、25~33ml/100gがより好ましい。
特定カーボンブラックの種類は、上記吸油量の範囲を満たせば制限はない。中でも、本発明の効果がより優れる点から、特定カーボンブラックは、上記吸油量の範囲を満たすサーマルブラック(サーマル法で製造されたカーボンブラック)が好ましく、上記吸油量の範囲を満たすファインサーマル(FT(FineThermal)級のカーボンブラック)がより好ましい。
特定カーボンブラックとして使用できる市販品としては、例えば、ニテロン#20(新日化カーボン社製、吸油量:29ml/100g)、旭サーマル(旭カーボン社製、吸油量:28ml/100g)が挙げられる。
【0029】
(ウレタンプレポリマー)
本発明の組成物は、末端に活性イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む。
本発明の効果がより優れる点から、1分子のウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を複数有することが好ましく、イソシアネート基を2~3個有することがより好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、イソシアネート基の含有量は、ウレタンプレポリマー全量に対して0.5~5質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。
【0030】
ウレタンプレポリマーは、例えば、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)に、ポリイソシアネートを反応させて得られる化合物である。
例えば、上述のプレポリマー混合液製造工程において実施される反応処理において、ウレタンプレポリマーが得られる。
【0031】
・ポリイソシアネート
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む);
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;
これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
また、分子内にイソシアネート基を2個以上有するプレポリマー状の化合物をポリイソシアネートとして、これを更に活性水素化合物と反応させ、ウレタンプレポリマーとしてもよい。
【0032】
ポリイソシアネートは、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0033】
・活性水素化合物(ポリオール等)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
本発明の効果がより優れる点から、活性水素化合物としては、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオールが好ましい。
【0034】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点から、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0035】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、水酸基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0036】
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネートとの相溶性に優れる点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、イソシアネートとの反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有する点から、500~20,000が好ましい。本発明において上記数平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0037】
ウレタンプレポリマーは、接着性により優れ、硬化性に優れる点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンプレポリマーが好ましく、ポリプロピレングリコール及びポリオキシプロピレントリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種とジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーがより好ましい。
なお、ウレタンプレポリマーの製造時に、ポリイソシアネートが未反応のまま残存していたとしても、このような未反応のポリイソシアネートもウレタンプレポリマーとして含める。言い換えると、ウレタンプレポリマーは、活性水素化合物及びポリイソシアネートの反応物と、未反応のポリイソシアネートとの混合物であってもよい。
【0038】
本発明の効果がより優れる点から、ウレタン組成物中、ウレタンプレポリマーの含有量は、ウレタン組成物の全質量に対して、15~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましく、25~40質量%が更に好ましい。
【0039】
(可塑剤)
ウレタン組成物は、更に、可塑剤を含んでもよい。
可塑剤の全部又は一部は、カーボンブラック混合液製造工程でカーボンブラック混合液に混合されてもよいし、プレポリマー混合液製造工程でプレポリマー前駆体混合液に混合されてもよいし、プレポリマー混合液製造工程の後にプレポリマー混合液に混合されてもよい。
ウレタン組成物が可塑剤を含む場合、本発明の効果がより優れる点から、可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、10~45質量部が好ましく、15~35質量部がより好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0040】
(充填剤)
ウレタン組成物は、更に、充填剤を含んでもよい。
ここで言う充填剤に、特定カーボンブラックは含まない。なお、特定カーボンブラック以外のカーボンブラックは、充填剤として使用できる。
ただし、ウレタン組成物が、特定カーボンブラック以外のカーボンブラックを含む場合ウレタン組成物中の全カーボンブラックのうち特定カーボンブラックが占める割合は、本発明の効果がより優れる理由から、95質量%超であることが好ましい。上限は特に制限されず、100質量%である。
充填剤の全部又は一部は、カーボンブラック混合液製造工程でカーボンブラック混合液に混合されてもよいし、プレポリマー混合液製造工程でプレポリマー前駆体混合液に混合されてもよいし、プレポリマー混合液製造工程の後にプレポリマー混合液に混合されてもよい。
充填剤としては、例えば、特定カーボンブラック以外のカーボンブラック(吸油量が15ml/100g未満、又は、40ml/100g超であるカーボンブラック)、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムのような炭酸カルシウム;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
ウレタン組成物が充填剤を含む場合、本発明の効果がより優れる点から、充填剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
【0041】
(触媒)
ウレタン組成物は、更に、触媒を含んでもよい。
触媒の全部又は一部は、カーボンブラック混合液製造工程でカーボンブラック混合液に混合されてもよいし、プレポリマー混合液製造工程でプレポリマー前駆体混合液に混合されてもよいし、プレポリマー混合液製造工程の後にプレポリマー混合液に混合されてもよい。
中でも、ウレタン組成物が後述するアミン系触媒を含む場合、本発明の効果がより優れる点から、アミン系触媒は、プレポリマー混合液製造工程の後にプレポリマー混合液に混合されるのが好ましい。
【0042】
・アミン系触媒
上記触媒としては、例えば、アミン系触媒が挙げられる。
アミン系触媒は、窒素原子を有し、イソシアネート基の反応を促進する化合物である。
アミン系触媒は、本発明の効果がより優れる点から、第3級アミノ基(1個の窒素原子が3個の炭素原子と単結合する、又は、1つの窒素原子が1つの炭素原子と単結合し別の炭素原子と二重結合する)を有するのが好ましい。
第3級アミノ基を有するアミン系触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルフォリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-1、1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、トリエタノールアミン、N,N′-ジメチルピペラジン、テトラメチルブタンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物等が挙げられる。
【0043】
アミン系触媒は、本発明の効果がより優れる点から、モルフォリン環を有する化合物が好ましく、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物がより好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0044】
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0045】
上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
m、nは、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。
【0046】
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、具体的には例えば、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE。4,4′-(オキシジ-2,1-エタンジイル)ビス-モルフォリン、ビス(2,2-モルフォリノエチル)エーテル)、ジ(メチルモルフォリノ)ジエチルエーテル、及び、ジ(ジメチルモルフォリノ)ジエチルエーテルが挙げられる。
【0047】
ウレタン組成物がアミン系触媒を含む場合、本発明の効果がより優れ、硬化性、未硬化物の貯蔵安定性に優れる点から、アミン系触媒の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.05~1.0質量部が好ましく、0.07~0.5質量部がより好ましい。
【0048】
・金属触媒
上記触媒としては、例えば、金属触媒も挙げられる。
上記金属触媒はイソシアネート基の反応を促進できる化合物であれば特に制限されない。例えば、有機金属触媒、有機基を有さない金属のみからなる金属触媒(無機金属触媒ともいう)が挙げられる。
金属触媒が有する金属としては、例えば、錫、ビスマス、チタンが挙げられる。
【0049】
有機金属触媒が有する有機基は特に制限されない。有機金属触媒としては、金属のカルボン酸塩、アルコキシド、錯体が挙げられる。有機金属触媒は、例えば、カルボン酸イオン、アルキル基、カルボン酸、アルコキシ基、及び、配位子からなる群から選ばれる少なくとも1種を有していてよい。カルボン酸イオン、アルキル基、カルボン酸、アルコキシ基及び配位子は特に制限されない。
【0050】
ウレタン組成物が金属触媒を含む場合、本発明の効果がより優れる点から、金属触媒の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.001~1.0質量部が好ましく、0.008~0.08質量部がより好ましい。
【0051】
ウレタン組成物は、更に、上述した成分以外の添加剤を含んでもよい。
添加剤としては、例えば、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、チクソ付与剤が挙げられる。
添加剤の種類、含有量は、適宜選択できる。
【0052】
<使用方法>
本発明の製造方法で得られるウレタン組成物は、1液型であり、典型的には常温(例えば25℃)で液状である。
ウレタン組成物の不揮発分(JIS K 6833-1:2008)は、本発明の効果がより優れる点から、60~100質量%が好ましく、95~100質量%がより好ましい。
ウレタン組成物は、湿気によって硬化できる。本発明の組成物は、例えば、大気中の湿気によって-20~+50℃の条件下で硬化できる。
なお、本発明において「一液湿気硬化型ポリウレタン組成物」のポリウレタンは、広義のポリウレタン、つまり、イソシアネート基から誘導される化合物を意味する。
【0053】
ウレタン組成物の用途としては、例えば、接着剤が挙げられる。
ウレタン組成物を適用する被着体(基材)は特に制限されない。例えば、金属(塗板、電着塗装鋼板を含む。)、プラスチック、ゴム、ガラスが挙げられる。
被着体に対して必要に応じてプライマーを使用してもよい。プライマーは特に制限されない。例えば、イソシアネート基、及び/又は、アルコキシシリル基のような加水分解性シリル基を有する化合物を含有する組成物が挙げられる。
【0054】
ウレタン組成物は、例えば、車体と窓ガラスとの接着剤;ロケットピン及びヒンジのような部品と窓ガラスとの接着剤として使用できる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0056】
[ウレタン組成物の製造]
以下に示す方法で、ウレタン組成物(一液湿気硬化型ポリウレタン組成物)を製造した。
<実施例2>
(カーボンブラック混合液製造工程)
カーボンブラックである特定カーボンブラック(日鉄カーボン社製:ニテロンHTC#20、吸油量:29ml/100g)40質量部と、ポリオールであるポリオール混合物(AGC社製:エクセノール5030と2020を70:30で混合したもの)87質量部とを混合した混合液を得た。
上記混合液を加熱し、混合液の液温を135℃とした状態で2時間維持して、カーボンブラック混合液を得た。
【0057】
(プレポリマー混合液製造工程)
得られたカーボンブラック混合液全量と、ポリイソシアネートであるポリイソシアネートA(東ソー:ミリオネートMT)13質量部とを混合して、プレポリマー前駆体混合液を得た。
上記プレポリマー前駆体混合液を加温し、上記プレポリマー前駆体混合液の液温を60℃とした状態で2時間維持することで、ポリオール混合物とポリイソシアネートAとを反応させ、カーボンブラック40質量部とウレタンプレポリマー100質量部とを含むプレポリマー混合液を得た。
【0058】
(その他の工程)
得られたプレポリマー混合液に、更に、炭酸カルシウム20質量部、可塑剤20質量部、金属触媒0.01質量部、アミン系触媒0.3質量部を混合することで、実施例2のウレタン組成物を得た。
【0059】
<実施例1、3、比較例5~7、及び、9~10>
「カーボンブラック混合液製造工程」において使用するカーボンブラックの種類及び質量部を表1に記載のとおり変更した点以外は実施例2と同様の手順に従って、ウレタン組成物を得た。
【0060】
<実施例4>
「その他の工程」においてプレポリマー混合液に混合した可塑剤20質量部を、「カーボンブラック混合液製造工程」の時点で混合液に添加した以外は、実施例2と同様の手順に従って、ウレタン組成物を得た。
【0061】
<比較例1>
カーボンブラックである特定カーボンブラック40質量部を加熱し、特定カーボンブラックの温度を135℃とした状態で2時間維持して、加熱済みカーボンブラックを得た。
【0062】
ポリオールであるポリオール混合物(AGC社製:エクセノール5030と2020を70:30で混合したもの商品名)87質量部と、ポリイソシアネートであるポリイソシアネートA(東ソー:ミリオネートMT商品名)13質量部とを混合して、プレポリマー前駆体混合液を得た。
上記プレポリマー前駆体混合液を加温し、上記プレポリマー前駆体混合液の液温を60℃とした状態で2時間維持することで、ポリオール混合物とポリイソシアネートAとを反応させ、ウレタンプレポリマー100質量部を得た。
【0063】
得られたウレタンプレポリマーに、更に、すでに製造した加熱済みカーボンブラック全量、炭酸カルシウム20質量部、可塑剤20質量部、金属触媒0.01質量部、アミン系触媒0.3質量部を混合することで、比較例1のウレタン組成物を得た。
【0064】
<比較例2~4>
使用するカーボンブラックの種類を表1に記載のとおり変更した点以外は比較例1と同様の手順に従って、ウレタン組成物を得た。
【0065】
<比較例8>
「カーボンブラック混合液製造工程」において、混合液を加熱する際の混合液の液温を、135℃から115℃に変更した以外は、実施例2と同様の手順に従って、ウレタン組成物を得た。
【0066】
<比較例11>
ウレタンプレポリマーに、加熱済みカーボンブラックの代わりに、未加熱のカーボンブラックを混合した点以外は、比較例1と同様の手順に従って、ウレタン組成物を得た。
【0067】
[評価]
上記の通り製造した各ウレタン組成物を用いて以下の評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0068】
<粘度の経時安定性>
製造した各ウレタン組成物を、密閉容器に入れた状態で、50℃で7日間貯蔵した。貯蔵前後で各ウレタン組成物の粘度を測定し、貯蔵前のウレタン組成物の粘度を基準として、貯蔵後のウレタン組成物の粘度増加率(%)を求めた。
粘度は、SOD粘度計(見かけ粘度計)を用いて、20℃、せん断速度430sec-1で測定した粘度(見かけ粘度)である。
粘度増加率が20%以下であったウレタン組成物は、粘度の経時安定性が良好(「〇」)と判断し、粘度増加率が20%超であったウレタン組成物は、粘度の経時安定性が不十分(「×」)であると判断した。
【0069】
<深部硬化性>
2枚のアルミシートの間に、ウレタン組成物を、厚さ2mmで、直径50mmの円形になるように充填して配置し、試験体を作製した。上記試験体において円形になるように配置されたウレタン組成物は、円の外周部でのみ大気と接触できる。
上記試験体を、40℃、相対湿度5%の環境下に3日間静置した後、円形になるように配置されたウレタン組成物の中心部分の硬度を、硬度計(JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータ)を用いて測定した。
硬度の測定は20℃の環境で実施した。硬度を測定する際、上記試験体は、8mm厚で硬度50(A型硬度)のゴムシート上に置き、硬度を測定する側のアルミシートを剥離した状態で測定した。硬度は、アルミシートを剥離した試験体に硬度計を押し当ててから、5秒後の値を読み取った。
測定された硬度の値が大きいほど、製造されたウレタン組成物の深部硬化性が優れると判断した。
また、硬度を測定する時点でウレタン組成物の中心部分が液状のままであり硬度が測定できなかった試験体については、深部硬化性が不十分(「×」)であると判断した。
【0070】
[結果]
ウレタン組成物の配合、製造の方法、評価の結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
表中の配合は、それぞれ質量部である。
また、各成分の詳細は以下の通りである。
・ウレタンプレポリマー:各製造方法において合成されたウレタンプレポリマー
(つまり、ポリオール(エクセノール5030と2020(共にAGC社製)を70:30(質量比)で混合したもの)87質量部と、ポリイソシアネート(MDI、東ソー社製、ミリオネートMT)13質量部とを反応させて得られるウレタンプレポリマー)。
なお、エクセノール5030は、分子量5100のポリオキシプロピレントリオールであり、エクセノール2020は、分子量2000のポリオキシプロピレンジオールである。
・特定カーボンブラック:日鉄カーボン社製 ニテロンHTC#20(FT(Fine Thermal)、吸油量:29ml/100g)
・比較用カーボンブラック1:日鉄カーボン社製 ニテロン#300(ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、吸油量:115ml/100g)
・比較用カーボンブラック2:日鉄カーボン社製 ニテロン#200(HAF(High Abrasion Furnace)、吸油量:101ml/100g)
・比較用カーボンブラック3:三菱化学社製 MA600(着色用カーボンブラック、吸油量:131ml/100g)
・炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製 スーパーS
・可塑剤:ジイソノニルフタレート
・金属触媒:日東化成社製、ネオスタンU-600(無機ビスマス系触媒)
・アミン系触媒:DMDEE
【0073】
表1中の「製造の方法」欄における番号は、それぞれのウレタン組成物を製造した方法の概要を示す。
・「1」:カーボンブラックを、ポリオールと混合することなく加熱処理(135℃、2時間)した。加熱処理を経たカーボンブラックを、他の原料とともにウレタンプレポリマーに混合し、ウレタン組成物を得た。
・「2」:カーボンブラックとポリオールとの混合液を調製し、得られた混合液を加熱処理(135℃、2時間)した。加熱処理を経た混合液を使用してウレタンプレポリマーを合成し、そこへ更に他の原料を加えて、ウレタン組成物を得た。
・「3」:カーボンブラックとポリオールとの混合液を調製し、得られた混合液を加熱処理(115℃、2時間)した。加熱処理を経た混合液を使用してウレタンプレポリマーを合成し、そこへ更に他の原料を加えて、ウレタン組成物を得た。
・「4」:加熱処理をしていないカーボンブラックを、他の原料とともにウレタンプレポリマーに混合し、ウレタン組成物を得た。
・「5」:カーボンブラックとポリオールと可塑剤との混合液を調製し、得られた混合液を加熱処理(135℃、2時間)した。加熱処理を経た混合液を使用してウレタンプレポリマーを合成し、そこへ更に他の原料を加えて、ウレタン組成物を得た。
【0074】
表1に示す結果から、本発明の方法で製造されたウレタン組成物は、深部硬化性及び粘度の経時安定性に優れることが確認された。
なかでも、特定カーボンブラックの含有量が、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、10質量部以上である場合、ウレタン組成物の深部硬化性がより優れ、50質量部以上である場合、ウレタン組成物の深部硬化性が更に優れることが確認された(実施例1~3の比較)。