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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】直列多重電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/497 20070101AFI20221223BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221223BHJP
【FI】
H02M7/497
H02M7/48 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019046581
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020150688
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭介
(72)【発明者】
【氏名】東海林 和
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-320103(JP,A)
【文献】特許第6391897(JP,B1)
【文献】特開2013-090358(JP,A)
【文献】特開2017-085812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/497
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジセルのユニットを複数直列接続し、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する1パルス多重方式の直列多重電力変換装置であって、
電圧指令値のピーク時点とゼロクロス時点を判定してゲート閾値の更新タイミングとして出力する位相判定部と、
前記各ユニットのゲート閾値と前記電圧指令値とを比較することで現在運転しているユニットの台数を判定して運転台数判定値として出力する運転台数判定部と、
前記ゲート閾値の更新タイミングおよび前記運転台数判定値に基づいて、前記電圧指令値の正側のピーク時点で運転しているユニットの正側のゲート閾値を入れ替え、前記電圧指令値の負側のピーク時点で運転しているユニットの負側のゲート閾値を入れ替え、前記電圧指令値のゼロクロス点で入れ替えたゲート閾値を元に戻す閾値制御部と、
前記各ユニット毎に、前記電圧指令値と、前記閾値制御部から出力された正負のゲート閾値と、を比較してスイッチング素子のゲート信号を生成するPWM制御部と、
を備えたことを特徴とする直列多重電力変換装置。
【請求項2】
前記閾値制御部は、
前記電圧指令値の正側のピーク時点において、運転しているユニットのうち、ゲート閾値の絶対値の大きい上位2つの正側のゲート閾値のみを入れ替え、
前記電圧指令値の負側のピーク時点において、運転しているユニットのうち、ゲート閾値の絶対値の大きい上位2つの負側のゲート閾値のみを入れ替えることを特徴とする請求項1記載の直列多重電力変換装置。
【請求項3】
前記閾値制御部は、
前記電圧指令値の正側のピーク時点において、運転している全てのユニットの正側のゲート閾値の絶対値の大きさを逆順に並び替え、
前記電圧指令値の負側のピーク時点において、運転している全てのユニットの負側のゲート閾値の絶対値の大きさを逆順に並び替えることを特徴とする請求項1記載の直列多重電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 単相インバータユニットを2台以上直列に接続した1パルス多重方式の直列多重電力変換装置に係り、特に、最小オンパルス幅の影響を抑制するゲート生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、単相インバータユニット2台を直列接続した直列多重電力変換装置の例が記載されている。
【0003】
図6にインバータユニット6台を直列接続して電圧を多重にした直列多重電力変換装置の構成を示す。このような構成の直列多重電力変換装置におけるゲート信号生成方法として、図7に示すように電圧指令値Vrefと固定のゲート閾値とを比較しゲート信号を得る1パルス制御方式がある。
【0004】
ユニット1のゲート閾値Vth1a、Vth1bとゲート信号GU1,GV1,GX1,GY1(すなわち、スイッチング素子のオンオフ状態)の関係は以下のようになる。
・Vref>Vth1aならばGU1をON、GX1をOFF、Vref<Vth1aならばGU1をOFF、GX1をON
・Vref>Vth1bならばGY1をON、GV1をOFF、Vref<Vth1bならばGY1をOFF、GV1をON。
【0005】
他のユニット2~6も同様にゲート信号を生成する。この方式により、各ユニットの出力電圧(以下、ユニット出力電圧と称する)Vo1~Vo6の合計として階段状の出力電圧Voutが得られる。電圧指令値Vrefの絶対値がそのユニットに対応するゲート閾値未満の場合は、そのユニットの出力電圧は0となる。
【0006】
図6の例では6台構成だが、ユニット台数が多いほど正弦波に近い出力電圧Voutが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-324845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電圧指令値Vrefが増加し、それまで電圧を出力していなかったユニットに対応するゲート閾値を超え、電圧を出力しているユニット台数が増加する(運転台数が増加する)場合を考える。
【0009】
図8に2台運転から3台運転になった場合の出力電圧を示す。ユニット3のゲート閾値Vth3a、Vth3bを電圧指令値Vrefの絶対値が超えることで、ユニット出力電圧Vo3が出力され3台運転となる。
【0010】
スイッチング素子は、素子保護のために最小オンパルス幅以下のオン時間では駆動できない。そのため一台のユニットが出力できる最小の電圧幅は最小オンパルス幅で制限される。
【0011】
よって、ユニット出力電圧Vo3は、電圧指令値Vrefとゲート閾値Vth3a,Vth3bの比較結果が最小オンパルス幅未満のパルス幅となったとしても、最小オンパルス幅以上の電圧しか出力できないため、理想のオンパルス幅よりも大きい電圧を出力してしまうという問題がある。
【0012】
図9図8の電圧指令値Vrefとユニット3におけるゲート閾値Vth3aの比較とユニット出力電圧Vo3の拡大図を示す。理想的には、ゲート閾値Vth3aを電圧指令値Vrefが超えている間のみユニット出力電圧Vo3が出力されるのが望ましいが、最小オンパルス幅によって、理想のパルス幅よりも広い幅の電圧が出力されてしまう。
【0013】
運転台数が減少する場合にあっても、同様の問題は発生する。また、2台-3台間に限らず全ての運転台数で発生する。
【0014】
以上示したようなことから、直列多重電力変換装置において、最小オンパルス幅未満の電圧を出力することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、ブリッジセルのユニットを複数直列接続し、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する1パルス多重方式の直列多重電力変換装置であって、電圧指令値のピーク時点とゼロクロス時点を判定してゲート閾値の更新タイミングとして出力する位相判定部と、前記各ユニットのゲート閾値と前記電圧指令値とを比較することで現在運転しているユニットの台数を判定して運転台数判定値として出力する運転台数判定部と、前記ゲート閾値の更新タイミングおよび前記運転台数判定値に基づいて、前記電圧指令値の正側のピーク時点で運転しているユニットの正側のゲート閾値を入れ替え、前記電圧指令値の負側のピーク時点で運転しているユニットの負側のゲート閾値を入れ替え、前記電圧指令値のゼロクロス点で入れ替えたゲート閾値を元に戻す閾値制御部と、前記各ユニット毎に、前記電圧指令値と、前記閾値制御部から出力された正負のゲート閾値と、を比較してスイッチング素子のゲート信号を生成するPWM制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、その一態様として、前記閾値制御部は、前記電圧指令値の正側のピーク時点において、運転しているユニットのうち、ゲート閾値の絶対値の大きい上位2つの正側のゲート閾値のみを入れ替え、前記電圧指令値の負側のピーク時点において、運転しているユニットのうち、ゲート閾値の絶対値の大きい上位2つの負側のゲート閾値のみを入れ替えることを特徴とする。
【0017】
また、他の態様として、前記閾値制御部は、前記電圧指令値の正側のピーク時点において、運転している全てのユニットの正側のゲート閾値の絶対値の大きさを逆順に並び替え、前記電圧指令値の負側のピーク時点において、運転している全てのユニットの負側のゲート閾値の絶対値の大きさを逆順に並び替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、直列多重電力変換装置において、最小オンパルス幅未満の電圧を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1,2における直列多重電力変換装置の構成図。
図2】実施形態1における電圧指令値,ゲート閾値,ユニット出力電圧,出力電圧を示すタイムチャート(運転台数3台の場合)。
図3】実施形態1における電圧指令値,ゲート閾値,ユニット出力電圧,出力電圧を示すタイムチャート(運転台数6台の場合)。
図4】実施形態2における電圧指令値,ゲート閾値,ユニット出力電圧,出力電圧を示すタイムチャート(運転台数3台の場合)。
図5】実施形態2における電圧指令値,ゲート閾値,ユニット出力電圧,出力電圧を示すタイムチャート(運転台数6台の場合)。
図6】直列多重電力変換装置の一例を示す概略図。
図7】従来の1パルス多重方式における各信号のタイムチャート。
図8】従来の運転台数上昇時(2台→3台)における各信号を示すタイムチャート。
図9図8の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明における直列多重電力変換装置の実施形態1,2を図1図5に基づいて詳述する。
【0021】
[実施形態1]
本実施形態1は、図1に示す直列多重電力変換装置を例として、最小オンパルス幅未満の電圧を出力する方法を説明する。まず、図1に示す直列多重電力変換装置の主回路構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態1における直列多重電力変換装置は、6つの第1~第6ユニット(ブリッジセル)1~6を備える。第1ユニット1はスイッチング素子U1,V1,X1,Y1がブリッジ接続される。スイッチング素子U1,V1の共通接続点とスイッチング素子X1,Y1の共通接続点との間に直流電圧原C1が接続される。
【0023】
第1ユニット1のスイッチング素子U1とスイッチング素子X1の共通接続点はリアクトルLの一端に接続される。第1ユニット1のスイッチング素子V1,Y1の共通接続点と第2ユニット2のスイッチング素子U2,X2の共通接続点が接続される。同様に、第2ユニット2と第3ユニット3、第3ユニット3と第4ユニット4、第4ユニット4と第5ユニット5、第5ユニット5と第6ユニット6が接続される。リアクトルLの他端と第6ユニット6のスイッチング素子V6,Y6の共通接続点との間にコンデンサCが接続される。
【0024】
スイッチング素子U1,X1の共通接続点とスイッチング素子V1,Y1の共通接続点との間の電圧をユニット出力電圧Vo1とする。同様に、第2~第6ユニット2~6のユニット出力電圧をVo2~Vo6とする。また、第1ユニット1のスイッチング素子U1,X1の共通接続点と、第6ユニット6のスイッチング素子V6,Y6の共通接続点との間を合計の出力電圧Voutとする。なお、本実施形態1では、例えば、出力周波数1kHz以上の単相電圧を出力する。
【0025】
また、直列多重電力変換装置は、位相判定部10と、運転台数判定部20と、閾値制御部30と、PWM制御部PWMと、を備える。
【0026】
位相判定部10は、電圧指令値Vrefの位相θより、ゲート閾値の更新タイミング(位相0°,90°,180°,270°)を判定し、閾値制御部30に出力する。
【0027】
運転台数判定部20は、各ユニットのゲート閾値と電圧指令値Vrefを比較することで現在運転しているユニットの台数を判定し、運転台数判定値として閾値制御部30に出力する。
【0028】
閾値制御部30は、ゲート閾値の更新タイミングと運転台数判定値に基づいて、ゲート閾値の更新タイミング(位相0°,90°,180°,270°)で各ユニットのゲート閾値の制御を行う。電圧指令値Vrefの位相90°270°(ピーク)時点で、運転台数に応じてゲート閾値の入れ替えを行う。電圧指令値Vrefの位相0°,180°(ゼロクロス)時点で、交換していたゲート閾値を元に戻す。
【0029】
PWM制御部PWMは、1パルス制御方式のパルス幅変調制御を行う。PWM制御部PWMは、電圧指令値Vrefと閾値制御部30から出力されたゲート閾値を比較し、ゲート信号を生成する。ゲート閾値は、少なくとも電圧指令値Vefの1/4周期の間一定の値をとる正負のゲート閾値とする。比較の際、デッドタイム処理と最小オンパルス処理を行う。
【0030】
次に、最小オンパルス幅未満の電圧を出力する方法を説明する。本実施形態1では、出力電圧Voutの最上段のパルスを、ユニット2台の出力電圧の重なりで出力することで、それぞれのユニットの最小オンパルス幅によるパルス幅制限を回避する。
【0031】
本実施形態1では、運転中のユニットのうちゲート閾値の絶対値が大きい上位2つのユニットのゲート閾値のみを変更する方法を説明する。
【0032】
PWM制御部PWMにおいて、電圧指令値Vrefと各ユニットのゲート閾値との比較は従来と同様に行う。運転台数判定部20は、電圧指令値Vrefのピーク部(位相90°、270°)でその時点での運転台数を判定する。閾値制御部30は、電圧指令値Vrefの位相90°(ピーク部)の時点で運転しているユニットのうち正側のゲート閾値の絶対値が一番大きいユニットと正側のゲート閾値の絶対値が2番目に大きいユニットのゲート閾値を入れ替える。また、電圧指令値Vrefの位相270°(ピーク部)の時点で運転しているユニットのうち負側のゲート閾値の絶対値が一番大きいユニットと負側のゲート閾値の絶対値が2番目に大きいユニットのゲート閾値を入れ替える。また、電圧指令値Vrefの位相0°,180°で入れ替えたゲート閾値を元に戻す。あとは出力開始と同様に電圧指令値Vrefとゲート閾値との比較を行う。
【0033】
図2に3台運転の場合の例を示す。正電圧を出力する場合について説明する。ユニット1~3の正側のゲート閾値Vth1a、Vth2a、Vth3aを電圧指令値Vrefが超えると、ユニット1~3がそれぞれ正電圧を出力する。電圧指令値Vrefの位相90°(ピーク部)時点で運転台数を判定し、運転中のユニット1~3の正側のゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3aの中から絶対値の大きい上位2つのゲート閾値を選択する。ここでは、絶対値の大きい上位2つのゲート閾値はゲート閾値Vth3a,Vth2aであるため、ゲート閾値Vth3aとゲート閾値Vth2aを入れ替える(図2下線部)。
【0034】
電圧指令値Vrefの位相90°後は、入れ替え後のゲート閾値と電圧指令値Vrefとの比較が行われ、ユニット2、ユニット3、ユニット1の順で出力が0になる。これにより、出力電圧Voutの最上段の電圧はユニット2、3のユニット出力電圧Vo2,Vo3の重ね合わせで構成されるようになる。各ユニット出力電圧Vo1~Vo6のパルス幅は十分最小オンパルス幅よりも大きいため、最小オンパルス幅に制限されることなく出力電圧Voutを構成することができる。
【0035】
なお、電圧指令値Vrefの位相180°(ゼロクロス)の時点でゲート閾値を元の順番に戻す。負電圧を出力する場合も同様に、電圧指令値Vrefの位相270°(ピーク部)時点で運転しているユニットのうち負側のゲート閾値の絶対値が大きい上位2つ(ゲート閾値Vth3b,Vth2b)を交換する。その後、電圧指令値Vrefの位相360°(ゼロクロス)の時点でゲート閾値を元の順番に戻す。
【0036】
図3に6台の場合の例を示す。正電圧を出力する場合について説明する。ユニット1~6のゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3a,Vth4a,Vth5a,Vth6aを電圧指令値Vrefが超えると、ユニット1~6がそれぞれ正電圧を出力する。運転台数判定部20は、電圧指令値Vref=90°(ピーク部)時点で運転台数を判定する。閾値制御部30は、運転中のユニット1~6の正側のゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3a,Vth4a,Vth5a,Vth6aの中から絶対値の大きい2つのゲート閾値を選択する。ここでは、絶対値の大きい2つの正側のゲート閾値はゲート閾値Vth6a,Vth5aであるため、ゲート閾値Vth6aとゲート閾値Vth5aを入れ替える(図3下線部)。
【0037】
入れ替え後のゲート閾値に対して電圧指令値Vrefとの比較が行われ、ユニット5,ユニット6,ユニット4,ユニット3,ユニット2,ユニット1の順で出力が0になる。これにより、出力電圧Voutの最上段の電圧はユニット5、6のユニット出力電圧Vo5,Vo6の重ね合わせで構成されるようになる。各ユニット出力電圧Vo1~Vo6のパルス幅は十分最小オンパルス幅よりも大きいため、最小オンパルス幅に制限されることなく出力電圧Voutを構成することができる。
【0038】
なお、電圧指令値Vrefの位相180°(ゼロクロス)の時点でゲート閾値を元の順番に戻す。負電圧を出力する場合も同様に、電圧指令値Vrefの位相270°(ピーク部)時点で運転しているユニットのうち負側のゲート閾値の絶対値が大きい上位2つ(ゲート閾値Vth6b,Vth5b)を入れ替える。その後、電圧指令値Vrefの位相360°(ゼロクロス)の時点でゲート閾値を元の順番に戻す。
【0039】
以上示したように、本実施形態1によれば、各ユニットが最小オンパルス幅による出力電圧幅の制限を受けないため、直列多重電力変換装置として最小オンパルス幅未満の出力電圧Voutを出力できるようになる。また、本実施形態1は、最小オンパルス幅の部分を除けば、従来のゲート生成方法と同一の出力電圧波形となる。
【0040】
[実施形態2]
実施形態1では、運転しているユニットのうちゲート閾値の絶対値が大きい上位2つのユニットのゲート閾値を交換する方法について説明したが、本実施形態2では、運転している全てのユニットのゲート閾値を変更する方法を説明する。
【0041】
PWM制御部PWMにおける電圧指令値Vrefと各ユニットのゲート閾値との比較は従来と同様に行う。運転台数判定部20は、電圧指令値Vrefの位相90°(ピーク部)の時点での運転台数を判定する。閾値制御部30は、電圧指令値Vrefの位相90°(ピーク部)の時点で運転しているユニットの正側のゲート閾値を逆順に並び替える。また、電圧指令値Vrefの位相270°(ピーク部)の時点で運転しているユニットの負側のゲート閾値を逆順に並び替える。また、電圧指令値Vrefの位相0°,180°で入れ替えたゲート閾値を元に戻す。あとは、通常と同様に電圧指令値Vrefと各ゲート閾値とを比較し、ゲート信号を生成する。
【0042】
図4に3台運転の場合の例を示す。正電圧を出力する場合について説明する。ユニット1~3のゲート閾値Vth1a、Vth2a、Vth3aを電圧指令値Vrefが超えると、ユニット1~3がそれぞれ正電圧を出力する。
【0043】
電圧指令値の位相90°時点で運転台数を判定する。3台運転であるため、ユニット1~3の正側のゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3aの絶対値の大きさを逆順にする。具体的には、正側のゲート閾値の絶対値の小さい順からゲート閾値Vth1a、Vth2a、Vth3aであったものを、逆順にして正側のゲート閾値の絶対値の小さい順からVth3a、Vth2a、Vth1aに並び替える(図4下線部)。
【0044】
並び替えた正側のゲート閾値Vth3a、Vth2a、Vth1aと電圧指令値Vrefとの比較が行われ、ユニット1、ユニット2、ユニット3の順でユニット出力電圧Vo1,Vo2,Vo3が0になる。
【0045】
これにより、出力電圧Voutの最上段の電圧はユニット1、3のユニット出力電圧Vo1,Vo3の重ね合わせで構成されるようになる。各ユニット出力電圧Vo1~Vo6のパルス幅は、十分最小オンパルス幅よりも大きいため、最小オンパルス幅に制限されることなく出力電圧Voutを構成することができる。
【0046】
なお、電圧指令値Vrefの位相180°(ゼロクロス)時点でゲート閾値を元の順番に戻す。負電圧を出力する場合も同様に、電圧指令値Vrefの位相270°の時点で運転しているユニットの負側のゲート閾値の絶対値の大きさを逆順にする。その後、電圧指令値Vrefの位相360°(ゼロクロス)時点でゲート閾値を元の順番に戻す。
【0047】
図5に6台運転の場合の例を示す。正電圧を出力する場合について説明する。ユニット1~6の正側のゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3a,Vth4a,Vth5a,Vth6aを電圧指令値Vrefが超えると、ユニット1~6がそれぞれ正電圧を出力する。
【0048】
運転台数判定部20は、電圧指令値Vrefの位相90°(ピーク部)時点で運転台数を判定する。閾値制御部30は、6台運転であるため、ユニット1~6の正側のゲート閾値Vth1a,Vth2a,Vth3a,Vth4a,Vth5a,Vth6aの絶対値の大きさを逆順にする。具体的には、正側のゲート閾値の絶対値の小さい順からゲート閾値Vth1a、Vth2a、Vth3a,Vth4a,Vth5a,Vth6aであったものを、逆順にして正側のゲート閾値の絶対値の小さい順からVth6a,Vth5a,Vth4a,Vth3a,Vth2a,Vth1aに並び替える(図5下線部)。
【0049】
並び替えた正側のゲート閾値Vth6a,Vth5a,Vth4a,Vth3a,Vth2a,Vth1aと電圧指令値Vrefとの比較が行われ、ユニット1,ユニット2,ユニット3,ユニット4,ユニット5,ユニット6の順で出力が0になる。
【0050】
これにより、出力電圧Voutの最上段の電圧はユニット1,6のユニット出力電圧Vo1,Vo6の出力の重ね合わせで構成されるようになる。各ユニット出力電圧Vo1~Vo6のパルス幅は、十分最小オンパルス幅よりも大きいため、最小オンパルス幅に制限されることなく出力電圧Voutを構成することができる。
【0051】
なお、電圧指令値Vrefの位相180°(ゼロクロス)時点でゲート閾値を元の順番に戻す。負電圧を出力する場合も同様に、電圧指令値Vrefの位相270°(ピーク)の時点で運転しているユニットの負側のゲート閾値の絶対値の大きさを逆順にする。その後、電圧指令値Vrefの位相360°(ゼロクロス)時点でゲート閾値を元の順番に戻す。
【0052】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態2は、実施形態1よりも、全てのユニット出力電圧幅が均一に近づく。
【0053】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0054】
10:位相判定部
20:運転台数判定部
30:閾値制御部
PWM:PWM制御部
Vth1a~Vth6a,Vth1b~Vth6b…ゲート閾値
Vo1~Vo6:ユニット出力電圧
Vout:出力電圧
Vref:電圧指令値
U1~U6,V1~V6,X1~X6,Y1~Y6:スイッチング素子
C1~C6:直流電圧源
C:コンデンサ
L:リアクトル
GU1,GV1,GX1,GY1:ゲート信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9