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特許7199349アピリモド組成物およびそれをアルツハイマー病の処置に使用するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】アピリモド組成物およびそれをアルツハイマー病の処置に使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20221223BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221223BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221223BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221223BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20221223BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K45/00
A61P25/28
A61P43/00 121
C12N9/99
C12Q1/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019519652
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017056147
(87)【国際公開番号】W WO2018071548
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/407,186
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519060232
【氏名又は名称】エイアイ・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】リチェンスタイン,アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ,ジョナサン・エム
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス,メリーレンズ
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510707(JP,A)
【文献】Wada, Y. et al.,Apilimod inhibits the production of IL-12 and IL-23 and reduces dendritic cell infiltration in psoriasis,PloS one,2012年,Vol.7, No.4,e35069,doi:10.1371/journal.pone.0035069
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知症の処置を必要とする対象において認知症を処置するための方法において用いるための、アピリモド又は薬学的に許容できるその塩を含む医薬組成物であって、当該方法が、当該対象の細胞においてアミロイド前駆体タンパク質(APP)がプロセシングされてアミロイドベータ(Ab)ペプチドになるのを阻害するのに有効な量の当該医薬組成物を当該対象に投与することを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記細胞が神経細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
経口剤形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記方法が、さらに、少なくとも1種類の追加薬剤を前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種類の追加薬剤が療法薬である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記療法薬がコリンエステラーゼ阻害薬である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記方法が、少なくとも1種類の追加薬剤を、アピリモド又は薬学的に許容できるその塩と同じ剤形で投与することを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記方法が、少なくとも1種類の追加薬剤を、アピリモド又は薬学的に許容できるその塩と異なる剤形で投与することを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
剤形が経口剤形である、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
認知症がアルツハイマー病である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記方法が患者においてアルツハイマー病の少なくとも1つの症状を軽減するのに有効
であるか、あるいは患者においてアルツハイマー病の進行を遅延させるのに有効である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
アピリモドが2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
インビトロで、細胞においてアミロイド前駆体タンパク質(APP)がプロセシングされてアミロイドベータ(Ab)ペプチドになるのを阻害するための方法であって、その細胞をAPPがプロセシングされてAbペプチドになるのを阻害するのに有効な量のアピリモド又は薬学的に許容できるその塩と接触させることを含む方法。
【請求項14】
認知症を治療する方法において用いるための、アピリモド又は薬学的に許容できるその塩を含む医薬組成物であって、当該方法が、細胞においてアミロイド前駆体タンパク質(APP)がプロセシングされてアミロイドベータ(Ab)ペプチドになるのを、APPがプロセシングされてAbペプチドになるのを阻害するのに有効な量の当該アピリモド又は塩と当該細胞を接触させることによって、インビボで阻害することを含む、前記組成物。
【請求項15】
前記細胞が組織の一部である、請求項13に記載の方法
【請求項16】
前記組織が神経組織である、請求項15に記載の方法
【請求項17】
アピリモドが2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)である、請求項13、15及び16のいずれか1項に記載の方法
【請求項18】
前記細胞が組織の一部である、請求項14に記載の組成物
【請求項19】
前記組織が神経組織である、請求項18に記載の組成物
【請求項20】
アピリモドが2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)である、請求項14、18及び19のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本開示はアピリモドを含む組成物およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02] アピリモド(apilimod)、すなわちSTA-5326とも呼ばれるもの(以下“アピリモド”)は、IL-12およびIL-23の有効な転写阻害薬として認識されている。たとえばWada et al. Blood 109 (2007): 1156-1164を参照。IL-12およびIL-23は、普通は、抗原刺激に応答した免疫細胞、たとえばB細胞およびマクロファージにより産生される炎症性サイトカインである。慢性炎症を特徴とする自己免疫障害および他の障害は、一部はこれらのサイトカインの不適正な産生を特徴とする。免疫細胞において、アピリモドによるIL-12/IL-23転写の選択的阻害はホスファチジルイノシトール-3-リン酸 5-キナーゼ(phosphatidylinositol-3-phosphate 5-kinase)(PIKfyve)へのアピリモドの直接結合により仲介されることが最近示された。たとえば、Cai et al. Chemistry and Biol. 20 (2013):912-921を参照。PIKfyveは、先天性免疫において重要であるToll様受容体シグナル伝達において役割を果たす。
【0003】
[03] アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)(APP)は、プロテアーゼにより、まずベータセクレターゼ(BACE1)、次いでガンマセクレターゼによりプロセシングされて、アミロイドベータ(Abeta)(Ab)と呼ばれる40および42アミノ酸のペプチド、たとえばそれぞれAb 1-40およびAb 1-42を含めたペプチドフラグメントを生成する。APP遺伝子における幾つかの家族性アルツハイマー病関連変異およびトランケート型変異が、インビトロおよびインビボでのAPPからAbへのプロセシングの研究に記載されている。本開示は哺乳類においてAb形成を低減する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】Wada et al. Blood 109 (2007): 1156-1164
【文献】Cai et al. Chemistry and Biol. 20 (2013):912-921
【発明の概要】
【0005】
[04] 一側面において、本開示はその必要がある対象においてアルツハイマー病を処置する方法を提供し、その方法はその対象に療法有効量の本開示のアピリモド組成物を投与することを含み、その組成物はアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を含む。複数の態様において、アピリモド組成物はアピリモド遊離塩基またはアピリモドジメシレートを含む。複数の態様において、本方法はさらに、少なくとも1種類の追加の有効薬剤を対象に投与することを含む。少なくとも1種類の追加の有効薬剤は療法薬または非療法薬であってよい。少なくとも1種類の追加の有効薬剤はアピリモド組成物との単一剤形で、またはアピリモド組成物とは別個の剤形で投与することができる。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤はコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプト(Aricept)、エキセロン(Exelon)、ラザダイン(Razadyne))、メマンチン(memantine)(ナメンダ(Namenda))、およびその組合わせから選択される。複数の態様において、少なくとも1種類の有効薬剤はアピリモド組成物の1以上の副作用を改善するために選択される非療法薬である。複数の態様において、非療法薬はオンダンセトロン(ondanestron)、グラニセトロン(granisetron)、ドルセトロン(dolsetron)、およびパロノセトロン(palonosetron)からなる群から選択される。複数の態様において、非療法薬はピンドロール(pindolol)およびリスペリドン(risperidone)からなる群から選択される。複数の態様において、アピリモド組成物の剤形は経口剤形である。他の側面において、アピリモド組成物の剤形は静脈内投与に適切である;投与は単回注射によるか、あるいは点滴バッグによる。
【0006】
[05] 複数の態様において、対象はヒト アルツハイマー病患者である。複数の態様に
おいて、本開示のアピリモド組成物で処置する必要があるヒト アルツハイマー病患者は
そのアルツハイマー病が標準治療計画に対して治療抵抗性である者である。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
認知症の処置を必要とする対象において認知症を処置するための方法であって、対象の
細胞においてアミロイド前駆体タンパク質(APP)がプロセシングされてアミロイドベ
ータ(Ab)ペプチドになるのを阻害するのに有効な量のアピリモドを含む医薬組成物を
対象に投与することを含む方法。
[請求項2]
細胞が神経細胞である、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
医薬組成物が経口剤形である、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
さらに、少なくとも1種類の追加薬剤を対象に投与することを含む、請求項1に記載の
方法。
[請求項5]
少なくとも1種類の追加薬剤が療法薬である、請求項4に記載の方法。
[請求項6]
療法薬がコリンエステラーゼ阻害薬である、請求項5に記載の方法。
[請求項7]
少なくとも1種類の追加薬剤がアピリモドと同じ剤形で投与される、請求項4~6のい
ずれか1項に記載の方法。
[請求項8]
少なくとも1種類の追加薬剤がアピリモドと異なる剤形で投与される、請求項4~6の
いずれか1項に記載の方法。
[請求項9]
剤形が経口剤形である、請求項7または8に記載の方法。
[請求項10]
認知症がアルツハイマー病である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
[請求項11]
その方法が患者においてアルツハイマー病の少なくとも1つの症状を軽減するのに有効
であるか、あるいは患者においてアルツハイマー病の進行を遅延させるのに有効である、
請求項10に記載の方法。
[請求項12]
アピリモドが2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル
-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUP
AC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(
2-ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)である、請求
項1~11のいずれか1項に記載の方法。
[請求項13]
細胞においてアミロイド前駆体タンパク質(APP)がプロセシングされてアミロイド
ベータ(Ab)ペプチドになるのを阻害するための方法であって、その細胞をAPPがプ
ロセシングされてAbペプチドになるのを阻害するのに有効な量のアピリモドと接触させ
ることを含む方法。
[請求項14]
細胞がインビトロまたはインビボにある、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
細胞が組織の一部である、請求項14に記載の方法。
[請求項16]
組織が神経組織である、請求項15に記載の方法。
[請求項17]
アピリモドが2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル
-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUP
AC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(
2-ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)である、請求
項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[06] 図1A~1Bは、アピリモドがAPP野生型Hela細胞に由来するアミロイドベータ40(Aβ40)(図1A)およびアミロイドベータ42(Aβ42)(図1B)のレベルに及ぼす影響を示す棒グラフである。アミロイドベータ(Aβ)濃度はピコグラム(10-12グラム)/ミリリットル(pg/mL)である。
図2】[07] 図2A~2Bは、アピリモド(図2A)およびDAPT(図2B)がC99 APPトランケート型変異体(APP C99)変異細胞に及ぼす影響を示す棒グラフである。APP C99細胞においては、APP 695の最後の99アミノ酸をコードするC99フラグメントがAβの主Asp+1部位におけるBACE1開裂APPを模倣してC99を生成する。
図3】[08] 図3は、疾患シグネチャーデータベース(Disease Signature Database)の疾患カテゴリー組成を示す円グラフである。
図4】[09] 図4は、アピリモドについての有効指標としてのXSumメトリックにより同定した上位重要疾患を示す図である。疾患を薬物-疾患スコアによりランク付けした場合、アルツハイマー病が最上位適応症であった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[10] 本開示は、そのような処置を必要とする対象、好ましくはヒト対象において、アルツハイマー病を処置するためのアピリモドの組成物および使用に関連する方法を提供する。本開示はユニークなアピリモド感受性バイオマーカーをも提供する。そのようなバイオマーカーは、そのアルツハイマー病がアピリモド療法に応答する患者を同定することによりアルツハイマー病の処置に利用できる。さらに、本開示は、アルツハイマー病処置のためのアピリモドおよび少なくとも1種類の追加の療法薬を用いる併用療法に基づく新規療法を提供する。本明細書に記載する併用療法は、他の抗アルツハイマー病薬と組み合わせた際に相乗効果をもたらすことが示される、アピリモドのユニークな細胞傷害活性を開拓する。
【0009】
[11] 本明細書中で用いる用語“アピリモド”は、アピリモドそのものを表わすことができ、あるいは以下に記載するようにアピリモドの医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログまたは誘導体を含むことができる。アピリモドの構造を式Iに示す:
【0010】
【化1】
【0011】
[12] アピリモドの化学名は2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)であり、CAS番号は541550-19-0である。
【0012】
[13] アピリモドは、たとえばU.S. Patent No. 7,923,557および7,863,270、ならびにWO 2006/128129に記載された方法に従って製造できる。
[14] 本明細書中で用いる用語“医薬的に許容できる塩”は、たとえば酸と本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の塩基性基から形成される塩である。具体的な塩類には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クロリド、ブロミド、ヨージド、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(たとえば、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩)。好ましい態様において、アピリモドの塩はメタンスルホン酸塩を含む。用語“医薬的に許容できる塩”は、酸性官能基、たとえばカルボン酸官能基をもつ本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)と、医薬的に許容できる無機塩基または有機塩基から製造される塩をも表わす。
【0013】
[15] 適切な塩基には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:アルカリ金属、たとえばナトリウム、カリウムおよびリチウムの水酸化物;アルカリ土類金属、たとえばカルシウムおよびマグネシウムの水酸化物;他の金属、たとえアルミニウムおよび亜鉛の水酸化物;アンモニア、ならびに有機アミン、たとえば非置換またはヒドロキシ置換されたモノ-、ジ-またはトリ-アルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-またはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、たとえばモノ-、ビス-またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N、N,-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、たとえばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、またはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;およびアミノ酸、たとえばアルギニン、リジンなど。用語“医薬的に許容できる塩”は、塩基性官能基、たとえばアミノ官能基をもつ本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)と、医薬的に許容できる無機酸または有機酸から製造される塩をも表わす。適切な酸には、硫酸水素塩(hydrogen sulfate)、クエン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)、硝酸、硫化水素塩(hydrogen bisulfide)、リン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、ビタルタリックアシッド(bitartratic acid)、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸(glucaronic acid)、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸が含まれる。
【0014】
[16] 本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の塩類は、親化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)から、常法、たとえばPharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Hemrich Stalil (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, August 2002に記載された方法により合成できる。一般に、そのような塩類は、親化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)を水中もしくは有機溶媒中または両者の混合物中で適切な酸と反応させることにより製造できる。
【0015】
[17] 本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)のある塩形を当業者に周知の方法により遊離塩基に変換し、そして場合により他の塩に変換することができる。たとえば、遊離塩基は、アミン固定相を収容したカラム(たとえば、Strata-NHカラム)に塩溶液を導通することにより形成できる。あるいは、水中における塩溶液を炭酸水素ナトリウムで処理して塩を分解し、遊離塩基を析出させることができる。次いでルーティン方法を用いて遊離塩基を他の酸と結合させることができる。
【0016】
[18] 本明細書中で用いる用語“多型”は、本開示の化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)またはその複合体の結晶形態を意味する。同じ化合物の異なる多型は、異なる物理的、化学的および/または分光分析特性を示す可能性がある。異なる物理的特性には安定性(たとえば、熱または光に対する)、圧縮適性および密度(配合および製品加工に際して重要である)、および溶解速度(それは生物学的利用能に影響を与える可能性がある)が含まれるが、これらに限定されない。安定性の相違は下記の変化から生じる可能性がある:化学反応性(たとえば、酸化の相違;それにより、剤形が、ある多型から構成される場合に他の多型から構成される場合より速やかに退色する)、または機械的特性(たとえば、動力学的に好ましい多型がより熱力学に安定な多型に変換する結果として、貯蔵に際して錠剤が破砕する)、または両方(たとえば、ある多型の錠剤は高湿度ではより分解しやすい)。多型の物理的特定の相違はそれらの加工に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、ある多型は、たとえばそれの粒子の形状または粒度分布のため、他の多型より溶媒和物を形成しやすい可能性があり、あるいは濾過または洗浄して不純物を除去するのがより困難である可能性がある。
【0017】
[19] 本明細書中で用いる用語“水和物”は、本開示の化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)またはその塩であって、非共有分子間力により結合した化学量論的量または非-化学量論的量の水をさらに含有するものを意味する。
【0018】
[20] 本明細書中で用いる用語“包接化合物”は、内部にゲスト分子(たとえば、溶媒または水)がトラップされた空間(たとえば、チャネル)を含む結晶格子の形態の本開示化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)またはその塩を意味する。
【0019】
[21] 本明細書中で用いる用語“プロドラッグ”は、本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の誘導体であって、生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で加水分解、酸化、または他の形で反応して本開示の化合物を供給できるものを意味する。プロドラッグは生物学的条件下でのそのような反応に際して初めて活性になることができるか、あるいはそれらはそれらの未反応形態で活性をもつ可能性がある。本開示において考慮するプロドラッグの例には、本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)のアナログまたは誘導体であって生物学的加水分解性部分を含むもの、たとえば下記のものが含まれるが、それらに限定されない:生物学的加水分解性アミド、生物学的加水分解性エステル、生物学的加水分解性カルバメート、生物学的加水分解性カーボネート、生物学的加水分解性ウレイド、および生物学的加水分解性ホスフェートアナログ。プロドラッグの他の例には、本明細書に開示する式のいずれかの化合物の誘導体であって-NO、-NO、-ONO、または-ONO部分を含むものが含まれる。プロドラッグは一般に、周知の方法、たとえばBurger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff ed., 5th ed)に記載された方法を用いて製造できる。
【0020】
[22] さらに、本開示の方法に使用するのに適したある化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)は1以上の二重結合、または1以上の不斉中心をもつ。そのような化合物はラセミ体、ラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、およびcis-もしくはtrans-またはE-もしくはZ-二重異性体形態で生じる可能性がある。すべてのそのような異性体形態のこれらの化合物が、明らかに本開示に含まれる。本開示の化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)は多数の互変異性体形態で表わすこともでき、そのような場合、本開示はすべての互変異性体形態の本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)を明らかに含む(たとえば、多数の構造形態の化合物が速やかに平衡化する可能性がある)本開示はすべてのそのような反応生成物を明らかに含む)。すべてのそのような異性体形態のそのような化合物が明らかに本開示に含まれる。すべての結晶形態の本明細書に記載する化合物(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)が明らかに本開示に含まれる。
【0021】
[23] 本明細書中で用いる用語“溶媒和物”または“医薬的に許容できる溶媒和物”は、1以上の溶媒分子が本明細書に開示する化合物の1つ(たとえば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)に会合することから形成される溶媒和物である。溶媒和物という用語には水和物(たとえば、ヘミ水和物、1和物、2水和物、3水和物、4水和物など)が含まれる。
【0022】
[24] 本明細書中で用いる用語“アナログ”は、他のものと構造的に類似するけれども組成において(たとえば、ある原子が異なる元素の原子により置き換えられたことにおいて、または特定の官能基が存在することもしくはある官能基が他の官能基により置き換えられたことにおいて)わずかに異なる化学物質を表わす。よって、アナログは機能および外観においては基準化合物と類似するかまたは同等であるけれども構造または由来においてはそうでない化合物である。本明細書中で用いる用語“誘導体”は、共通のコア構造をもち、本明細書に記載する種々の基で置換された化合物を表わす。
【0023】
[25] 本明細書に開示するある態様において、アピリモド、またはアピリモドの医薬的に許容できる塩、水和物、包接化合物、もしくはプロドラッグを、前記のように1種類以上の追加の療法薬との組合わせで提供できる。複数の態様において、アピリモドをイブルチニブ(ibrutinib)との組合わせで提供する。他の側面において、アピリモドをベムラフェニブ(vemurafenib)との組合わせで提供する。これらの態様のいずれにおいても、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を1種類以上の追加の療法薬と同じ剤形中において、または別個の剤形中において提供できる。
【0024】
処置方法
[26] 本開示は、その必要がある対象において、対象に療法有効量のアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を投与することにより、アルツハイマー病を含めた認知症を処置するための方法を提供する。本開示はさらに、アルツハイマー病の処置に有用な医薬を製造するための、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0025】
[27] 本開示は、アルツハイマー病の処置のための併用療法を含む方法をも提供する。本明細書中で用いる“併用療法(combination therapy)”または“共療法(co-therapy)”には、本明細書に記載する化合物、たとえばアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を、本明細書に記載する少なくとも1種類の追加薬剤と共に、これらの療法化合物の協同作用からの有益な効果を得ることを意図した特定の処置計画の一部として投与することを含む。少なくとも1種類の追加薬剤は療法薬または非療法薬であってよい。併用の有益な効果には、療法化合物の組合わせから生じる薬物動態的または薬力学的な協同作用が含まれるが、これらに限定されない。併用の有益な効果は、組合わせ中の他の薬剤に関連する毒性、副作用、または有害事象の軽減にも関係する。“併用療法”は、別個の単剤療法計画の一部として2種類以上のこれらの療法化合物を投与してそれらが偶然および恣意的に本開示の組合わせを生じるのを含む可能性があるが、一般的には含まない。
【0026】
[28] 併用療法に関して、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体の投与は、1種類以上の追加の有効薬剤の投与と同時または逐次であってよい。他の側面において、併用療法の異なる成分の投与は異なる頻度であってもよい。1種類以上の追加薬剤を、本開示の化合物の投与の前(たとえば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、それと同時、またはその後(たとえば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与することができる。
【0027】
[29] 1種類以上の追加薬剤を本開示の化合物との共投与のために、より詳細に本明細書に記載するように単一剤形中に配合することができる。1種類以上の追加薬剤を、本開示の化合物を含む剤形とは別個に投与することができる。追加薬剤を本開示の化合物とは別個に投与する場合、それは本開示の化合物と同じまたは異なる投与経路によることができる。
【0028】
[30] 好ましくは、本開示の化合物を含む組成物を1種類以上の追加薬剤と組み合わせて投与することにより、本開示の障害、疾患または状態を伴なう対象において相乗的応答が得られる。これに関して、用語“相乗的”は、組合わせの有効性がいずれかの単剤療法のみの相加的効果より有効であることを表わす。本開示による併用療法の相乗効果によって、組合わせのうちの少なくとも1種類の薬剤をその組合わせ以外でのそれの投与量および/または頻度と比較してより低い投与量および/またはより少ない投与頻度で使用することが可能になる。相乗効果は、組合わせのうちのいずれかの療法の単独使用に関連する有害または目的外の副作用の回避または低減に明らかに表われる可能性がある。
【0029】
[31] “併用療法”は、本開示の化合物を非薬物療法(たとえば、外科処置または放射線療法)とのさらなる組合わせで投与することも包含する。併用療法がさらに非薬物処置を含む場合、療法化合物と非薬物処置との組合わせの協同作用から有益な効果が達成される限り、その非薬物処置をいずれか適切な時点で実施できる。たとえば、適切な場合、療法化合物の投与から非薬物処置を一時的に、おそらく数日間または数週間すら除いた場合にもなお、有益な効果が達成される。
【0030】
[32] 本明細書に記載する複数の態様において、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を単独で、または少なくとも1種類の追加薬剤との組合わせで、アルツハイマー病を処置するための方法において投与することができる。複数の態様において、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体、および少なくとも1種類の追加薬剤を、単一剤形中において投与する。他の側面において、アピリモドおよび少なくとも1種類の追加薬剤を別個の剤形中において投与する。複数の態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は療法薬である。複数の態様において、療法薬はアルツハイマー病の処置のために適用され、たとえば抗アルツハイマー病薬である。他の側面において、アピリモドをアルツハイマー病の処置のためのものではない少なくとも1種類の追加薬剤、たとえば併用療法において投与する他の薬剤、たとえばアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体に関連する毒性または有害事象を軽減する作用をもつ第2薬剤との組合わせで投与する。
【0031】
[33] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい(dizziness)、立ちくらみ(lightheadedness)、眠気(drowsiness)およびストレスのいずれかから選択されるアピリモドの1以上の副作用を軽減する薬剤である。この態様の一側面において、追加薬剤はセロトニン受容体(5-ヒドロキシトリプタミン受容体または5-HT受容体としても知られる)のアンタゴニストである。一側面において、追加薬剤は5-HTまたは5-HT1a受容体のアンタゴニストである。一側面において、薬剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン(dolasetron)およびパロノセトロンからなる群から選択される。他の側面において、非療法薬はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0032】
[34] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬(たとえば、アリセプト、エキセロン、ラザダイン)、およびメマンチン(ナメンダ)から選択される抗アルツハイマー病薬である。
【0033】
[35] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は標的療法を目的とするものであり、その処置はアルツハイマー病の特異的な遺伝子、タンパク質、またはアルツハイマー病の進行に関与する組織環境を標的とする。このタイプの処置はアルツハイマー病細胞の進行をブロックし、一方で健康な細胞に対する損傷は制限される。
【0034】
[36] 用語“療法有効量”は、疾患、障害または状態を治療し、その症状を改善し、その重症度を軽減し、またはその期間を短縮し、あるいは他の療法の療法効果を増強または改善し、あるいは同定した疾患、障害または状態を阻止し、あるいは検出可能な療法効果または阻害効果を示すのに十分な、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体の量を表わす。その効果は、当技術分野で知られているいずれかのアッセイ法により検出できる。ある対象についての厳密な有効量は、その対象の体重、体格および健康状態;その状態の性質および程度;ならびに投与のために選択する療法薬または療法薬の組合わせに依存するであろう。
【0035】
[37] 有効量のアピリモドを1日1回、1日2~5回、1日2回まで、もしくは3回まで、または1日8回まで投与することができる。複数の態様において、アピリモドを1日3回、1日2回、1日1回、14日間のオン(投薬)(1日4回、1日3回、または1日2回、または1日1回)および7日間のオフ(休薬)の3週サイクルで、最大5または7日間のオン(1日4回、1日3回、または1日2回、または1日1回)および14~16日間のオフの3週サイクルで、あるいは2日毎に1回、または週1回、または2週毎に1回、または3週毎に1回、投与する。
【0036】
[38] 化合物、たとえばアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体の有効量は、約0.001mg/kgから約1000mg/kgまで、より好ましくは0.01mg/kgから約100mg/kgまで、より好ましくは0.1mg/kgから約10mg/kgまでの範囲であってもよく;あるいはその範囲の下端が0.001mg/kg~900mg/kgのいずれかの量であり、その範囲の上端が0.1mg/kg~1000mg/kgのいずれかの量であってもよい(たとえば、0.005mg/kg~200mg/kg、0.5mg/kg~20mg/kg)。当業者に認識されているように、有効量は処置される疾患、投与経路、賦形剤の使用、および他の療法処置との併用、たとえば他の薬剤の使用の可能性によっても異なるであろう。たとえば、U.S. Patent No. 7,863,270を参照;本明細書に援用する。
【0037】
[39] より特定の側面において、本開示の化合物(たとえば、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体)を30~300mg/日(たとえば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、または300mg/日)の用量で少なくとも1週間(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、36、48週間、またはそれ以上)の投与計画で投与する。好ましくは、本開示の化合物を100~300mg/日で4または16週間の投与計画で投与する。あるいは、またはそれに続いて、本開示の化合物を100mg、1日2回、8週間、または場合により52週間の投与計画で投与する。
【0038】
[40] 本明細書中で用いる“その必要がある対象”は、ある疾患、障害もしくは状態を伴なう対象、または集団全体に対比してある疾患、障害もしくは状態を発現するリスクが高い対象である。好ましい側面において、その必要がある対象は、アルツハイマー病を伴なう対象、または集団全体に比較してアルツハイマー病を発現するリスクが高い対象である。その必要がある対象は、その疾患または障害に現在適用できる療法に対して“不応性(non-responsive)”または“治療抵抗性(refractory)”の者である可能性がある。これに関して、用語“不応性”または“治療抵抗性”は、療法に対するその対象の応答がその疾患または障害に関連する1以上の症状を軽減するために臨床的に適切ではないことを表わす。
【0039】
[41] “対象”には哺乳類が含まれる。哺乳類は、たとえばいずれかの哺乳類、たとえばヒト、霊長類、脊椎動物、鳥類、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであってもよい。好ましくは、哺乳類はヒトである。用語“対象”と“患者”は本明細書中で互換性をもって用いられる。
【0040】
[42] 本開示は、本明細書に記載する疾患、障害または状態の処置のための単剤療法を提供する。本明細書中で用いる“単剤療法(monotherapy)”は、その必要がある対象に単一の有効化合物または療法化合物を投与することを表わす。好ましくは、単剤療法は療法有効量の有効化合物の投与を伴なうであろう。たとえば、本開示の化合物またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体による単剤療法を、処置の必要がある対象に療法有効量で施すことができる。単剤療法は、複数の有効化合物の組合わせを好ましくは組合わせの各成分が療法有効量で存在する状態で投与する併用療法と対比できる。一側面において、本開示の化合物またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体による単剤療法は、目的とする生物学的効果の誘導において併用療法より有効である。
【0041】
[43] 本明細書中で用いる“治療(treatment)”、“治療すること(treating)”または“治療(treat)”は、疾患、状態または障害と戦う目的での患者の管理およびケアを表わし、疾患、状態または障害の症状または合併症を改善するために、あるいは疾患、状態または障害を排除するために、本開示の化合物またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を投与することを含む。
【0042】
[44] 本明細書中で用いる“予防(prevention)”、“予防すること(preventing)”または“予防する(prevent)”は、疾患、状態または障害の症状または合併症の発症を低減または排除することを表わし、疾患、状態または障害の症状の発症、発現または再発を低減するために、本開示の化合物またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を投与することを含む。
【0043】
[45] 本明細書中で用いる用語“軽減する(alleviate)”は、障害の徴候または症状の重症度を低減するプロセスを表わすものとする。重要なことは、徴候または症状を排除することなく軽減できることである。好ましい態様において、本開示の化合物の投与により徴候または症状の排除がもたらされるが、排除は要求されない。有効な投与量は徴候または症状の重症度を低減すると予想される。
【0044】
[46] 本明細書中で用いる用語“症状(symptom)”は、疾患、疾病、傷害の指標、または身体において何らかが適正ではないことと定義される。症状はその症状を経験している個体は感じるかまたは気付くが、他者は容易には気付かない可能性がある。他者とはヘルスケア専門家ではない者と定義される。
【0045】
[47] 本明細書に記載する方法による障害、疾患または状態の処置は、アルツハイマー病進行速度の低減をもたらす可能性がある。好ましくは、処置前の数値と比較して処置後にアルツハイマー病の進行速度が少なくとも5%低減する;より好ましくは、アルツハイマー病の進行速度が少なくとも10%低減する;より好ましくは、少なくとも20%低減する;より好ましくは、少なくとも30%低減する;より好ましくは、少なくとも40%低減する;より好ましくは、少なくとも50%低減する;よりさらに好ましくは、少なくとも50%低減する;最も好ましくは、少なくとも75%低減する。アルツハイマー病の進行速度はいずれか再現性のある測定手段により測定できる。
【0046】
[48] 本明細書中で用いる用語“選択的に”は、ある集団において他の集団より高い頻度で起きる傾向があることを意味する。比較される集団は細胞集団であってもよい。好ましくは、本開示の化合物またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体は過剰増殖している細胞に選択的に作用するが、正常細胞には作用しない。本開示の化合物またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体は選択的に作用して、ある分子標的(たとえば、アミロイド前駆体タンパク質)を調節するが、他の分子標的(たとえば、アミロイド前駆体タンパク質)を有意に調節することはない。本開示は、酵素、たとえばベータセクレターゼ(BACE-1)またはガンマセクレターゼの活性を選択的に阻害するための方法をも提供する。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて2倍を超える頻度で起きるならば、それは集団Bと比較して集団Aにおいて選択的に起きる。ある事象は、それが集団Aにおいて5倍を超える頻度で起きるならば、選択的に起きる。ある事象は、それが集団Bと比較して集団Aにおいて10倍を超える;より好ましくは50倍を超える;よりさらに好ましくは100倍を超える;最も好ましくは1000倍を超える頻度で起きるならば、選択的に起きる。
【0047】
医薬組成物および配合物
[49] 本開示は、ある量のアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を、少なくとも1種類の医薬的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと組み合わせて含む医薬組成物を提供し、その量は疾患または障害を処置するために有効である。複数の態様において、疾患または障害は認知症およびアルツハイマー病から選択される。
【0048】
[50] 複数の態様において、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を少なくとも1種類の追加薬剤と単一剤形中において組み合わせる。複数の態様において、医薬組成物はさらに抗酸化剤を含む。
【0049】
[51] “医薬組成物”は、本明細書に記載する化合物を対象への投与に適した医薬的に許容できる形態で含有する配合物である。本明細書中で用いる“医薬的に許容できる”という句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当なベネフィット/リスク比に相応して、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、キャリヤー、および/または剤形を表わす。
【0050】
[52] “医薬的に許容できる賦形剤”は、全般的に安全、無毒性であり、生物学的にも他の形でも不都合ではない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、動物医療用およびヒトの医療用に許容できる賦形剤を含む。医薬的に許容できる賦形剤の例には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:無菌液体、水、緩衝塩類溶液、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油、界面活性剤、懸濁化剤、炭水化物(たとえば、グルコース、ラクトース、スクロースまたはデキストラン)、抗酸化剤(たとえば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート化剤、低分子量タンパク質、またはその適切な混合物。
【0051】
[53] 医薬組成物は、バルクまたは単位剤形で提供できる。投与の容易さおよび投与量の均一性のために医薬組成物を単位剤形で配合することは特に有利である。本明細書中で用いる用語“単位剤形”は、処置される対象に対する単位量として適した物理的に別個の単位を表わす;それぞれの単位は、希望する療法効果を生じるように計算された前決定量の有効化合物を必要な医薬用キャリヤーと一緒に含有する。本開示の単位剤形についての明細事項は、有効化合物独自の特性および達成すべき特定の療法効果によって支配され、それらに直接依存する。単位剤形はアンプル、バイアル、坐剤、糖衣丸、錠剤、カプセル剤、IVバッグ、またはエアゾールインヘラーでの1回圧出であってもよい。
【0052】
[54] 療法適用に際して、投与量は、選択した投与量に影響を及ぼす要因のうち特に、その薬剤、受容患者の年齢、体重および臨床状態、ならびにその療法を施す臨床医または専門家の経験および判断に応じて変動する。一般に、投与量は療法有効量であるべきである。投与量はmg/kg/日の測定単位で提供できる(その用量は患者の体重kg、体表面積m、および年齢について調整できる)。医薬組成物の有効量は、臨床医または他の適格な観察者が認識する客観的に確認できる改善をもたらすものである。たとえば、障害、疾患または状態の症状の軽減。本明細書中で用いる用語“有効投与量(dosage effective manner)”は、対象または細胞において目的とする生物学的効果を生じるための医薬組成物の量を表わす。
【0053】
[55] たとえば、単位剤形は1ナノグラム~2ミリグラム、または0.1ミリグラム~2グラム;または10ミリグラムから1グラムまで、または50ミリグラムから500ミリグラムまで、または1マイクログラムから20ミリグラムまで;または1マイクログラムから10ミリグラムまで;または0.1ミリグラムから2ミリグラムまでを含むことができる。
【0054】
[56] 医薬組成物は、いずれか希望する経路(たとえば、肺、吸入、鼻内、経口、口腔、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜腔内、クモ膜下、経皮、経粘膜、直腸など)による投与のために、いずれか適切な形態(たとえば、液体、エアゾール剤、液剤、吸入剤、ミスト、スプレー剤;または固体、散剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、パッチ剤など)をとることができる。たとえば、本開示の医薬組成物は、吸入または吹入(口または鼻のいずれかを通して)によるエアゾール投与のための水溶液または粉末の形態;経口投与のための錠剤またはカプセル剤の形態;直接注射、または静脈内注入のための無菌注入液への添加のいずれかによる投与に適した、無菌、水性の溶液または分散液の形態;あるいは経皮または経粘膜投与のためのローション剤、クリーム剤、発泡製剤、パッチ剤、懸濁液剤、液剤または坐剤の形態であってもよい。
【0055】
[57] 医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、口腔剤形、トローチ剤、ロゼンジ、および、乳剤、水性の懸濁液剤、分散液剤または液剤の形態の経口液剤、を含む経口用として許容できる剤形であってもよいが、それらに限定されない。カプセル剤は、本開示の化合物と、不活性な増量剤および/または希釈剤、たとえば医薬的に許容できるデンプン(たとえば、トウモロコシ、バレイショまたはタピオカのデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末セルロース、たとえば結晶質および微結晶質セルロース、穀粉、ゼラチン、ガムなどとの混合物を収容することができる。経口用錠剤の場合、慣用されるキャリヤーにはラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムも添加できる。カプセル剤の形態での経口投与について、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性の懸濁液剤および/または乳剤を経口投与する場合、乳化剤および/または懸濁化剤と混和した油相に本開示の化合物を懸濁または溶解することができる。所望により、特定の甘味料および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0056】
[58] 医薬組成物は錠剤の形態であってもよい。錠剤は、単位量の本開示化合物を不活性な希釈剤またはキャリヤー、たとえば糖類または糖アルコール、たとえばラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトールと一緒に含むことができる。錠剤はさらに、非糖由来の希釈剤、たとえば炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはセルロースもしくはその誘導体、たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン、たとえばトウモロコシデンプンを含むことができる。錠剤はさらに、結合剤および造粒剤、たとえばポリビニルピロリドン、崩壊剤(たとえば、膨潤性架橋ポリマー、たとえば架橋カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(たとえば、ステアレート類)、保存剤(たとえば、パラベン類)、抗酸化剤(たとえば、BHT)、緩衝剤(たとえば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤、たとえばシトレート/バイカーボネート混合物を含むことができる。
【0057】
[59] 錠剤はコーティング錠であってもよい。コーティングは、保護膜コーティング(たとえば、ろうまたはワニス)、または有効薬剤の放出を制御するためにデザインされたコーティングであってもよい;たとえば遅延放出(摂取の後、前決定した遅滞時間後に有効成分を放出する)または胃腸管内の特定位置における放出。後者は、たとえば腸溶膜コーティング、たとえば商品名Eudragit(登録商標)で販売されているものを用いて達成できる。
【0058】
[60] 錠剤配合物は一般的な圧縮法、湿式造粒法または乾式造粒法により調製でき、下記のものを含めた(それらに限定されない)医薬的に許容できる希釈剤、結合剤、滑沢剤,崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定化剤を使用する:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アラビアゴム、キサンタンゴム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉末糖。好ましい表面改質剤には、非イオン性およびアニオン性の表面改質剤が含まれる。表面改質剤の代表例には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール(cetomacrogol)乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミン。
【0059】
[61] 医薬組成物はハードまたはソフトゼラチンカプセル剤の形態であってもよい。この配合によれば、本開示の化合物は固体、半固体、または液体の形態であってもよい。
[62] 医薬組成物は、非経口投与に適した無菌、水性の液剤または分散液剤の形態であってもよい。本明細書中で用いる非経口という用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、クモ膜下、病巣内、および頭蓋内の注射または注入法が含まれる。
【0060】
[63] 医薬組成物は、直接注射、または静脈内注入のための無菌注入液への添加のいずれかによる投与に適した、無菌、水性の液剤または分散液剤の形態であってもよく、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、その適切な混合物、または1種類以上の植物油を含有する、溶媒または分散媒を含む。遊離塩基または医薬的に許容できる塩としての本開示化合物の液剤または懸濁液剤は、界面活性剤と適宜混合した水中に調製できる。適切な界面活性剤の例を下記に示す。分散液剤は、たとえば油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中に調製することもできる。
【0061】
[64] 本開示の方法に使用するための医薬組成物は、配合物中に存在するいずれかのキャリヤーまたは希釈剤(たとえば、ラクトースまたはマンニトール)のほかに、さらに1種類以上の添加剤を含むことができる。1種類以上の添加剤は、1種類以上の界面活性剤を含むか、あるいはそれからなることができる。界面活性剤は一般に1以上の長い脂肪族鎖、たとえば脂肪酸をもち、それによりそれらは細胞の脂質構造内へ直接挿入されて薬物の透過および吸収を高めることができる。界面活性剤の相対的な疎水性および親水性を特徴づけるために一般に用いられる経験的パラメーターは、親水性-親油性バランス(“HLB”値)である。より低いHLB値をもつ界面活性剤はより疎水性であり、油中においてより大きな溶解度をもち、一方、より高いHLB値をもつ界面活性剤はより親水性であり、水溶液中においてより大きな溶解度をもつ。よって、親水性界面活性剤は一般に約10より大きいHLB値をもつ化合物であるとみなされ、疎水性界面活性剤は一般に約10より小さいHLB値をもつ化合物であるとみなされる。しかし、多くの界面活性剤について、HLB値はHLB値を決定するために選択した経験的方法に応じて約8HLB単位も異なる可能性があるので、これらのHLB値は目安にすぎない。
【0062】
[65] 本開示の組成物に使用するための界面活性剤には下記のものが含まれる:ポリエチレングリコール(PEG)-脂肪酸、ならびにPEG-脂肪酸モノおよびジエステル、PEGグリセロールエステル、アルコール-油 エステル交換生成物、ポリグリセリル脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステロールおよびステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖類およびそれの誘導体、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(POE-POP)ブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、脂溶性ビタミンおよびそれらの塩類、水溶性ビタミンおよびそれらの両親媒性誘導体、アミノ酸およびそれらの塩類、ならびに有機酸およびそれらのエステルおよび無水物。
【0063】
[66] 本開示は、本開示の方法に使用するための医薬組成物を含むパッケージおよびキットをも提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、および注射器からなる群から選択される1以上の容器を含むことができる。キットはさらに、本開示の疾患、状態または障害を治療および/または予防するのに使用するための1以上の指示、1以上の注射器、1以上のアプリケーター、あるいは本開示の医薬組成物を再構成するのに適した無菌溶液を収容することができる。
【0064】
[67] 本明細書中で用いるパーセントおよび比率はすべて、別に指示しない限り重量による。本開示の他の特徴および利点は種々の例から明らかである。提示した例は本開示を実施するのに有用な種々の構成要素および方法を示す。それらの例は特許請求の範囲に記載する発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は本開示を実施するのに有用な他の構成要素および方法を確認および使用できる。
【実施例
【0065】
実施例1:
[68] アミロイド前駆体タンパク質(APP)を、プロテアーゼにより、まずベータセクレターゼ(BACE1)、続いてガンマセクレターゼにより処理して、アミロイドベータ(Ab)と命名される40および42アミノ酸のサイズのもの、たとえばAb 1-40およびAb 1-42を含むペプチドフラグメントを生成させることができる。APP遺伝子における家族性アルツハイマー病関連の幾つかの変異およびトランケート型変異が、インビトロおよびインビボでのAPPからAbへのプロセシングの研究に記載されている。ここに提示するデータは、インビトロモデル系においてアピリモド処理によってAbが用量依存症で低減することを立証する。要約すると、2つの構築体を用いてAbを生成させた:(1)695アミノ酸APP構築体におけるAPP Swedish/Indiana二重変異体(APPSw-I)は、Swedish変異体APP K670N、M671L(Mullan M et al, A pathogenic mutation for probable Alzheimer's disease in the APP gene at the N-terminus of beta-amyloid. Nat Genet., 1992 Aug;1(5):345-7)とIndiana変異体APP V717F(Suzuki N et al, An increased percentage of long amyloid beta protein secreted by familial amyloid beta protein precursor (beta APP717) mutants. Science, 1994 May 27; 264(5163):1336-40)を組み合わせたものである;および(2)APP 695の最後の99アミノ酸をコードするC99 APPトランケート型変異体(C99)フラグメント:この構築体は、Aβの主Asp+1部位におけるBACE1開裂APPを模倣して、C99を生成させたものである。
【0066】
[69] Hela細胞を2種類の構築体APPSw-IまたはC99のいずれかで一過性トランスフェクションし、次いでトランスフェクションの24時間後に(Ab産生に十分な時間をとるために)細胞を下記の用量のアピリモド(LAM-002) 10000ナノモル濃度(nM)、1000nM、100nM、1nM、またはDMSOで2日間処理した。並行してガンマセクレターゼ阻害薬、DAPT(N-[(3,5-ジフルオロフェニル)アセチル]-L-アラニル-2-フェニル]グリシン-1,1-ジメチルエチルエステル)を、陽性対照として1000nm、100nM、10nMまたは1nMを含む濃度で用いた。
【0067】
[70] 細胞培養上清を採集し、プロテアーゼ阻害薬AEBSF(4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩)で処理した。次いで製造業者のプロトコルに従って上清をAb 40 ELISAアッセイでアッセイし、データ解析を実施し(SensoLyte 抗ヒトβアミロイド(1-40)定量ELISA,カタログ# AS-55551 Anaspec)、結果を図1および2に示す。
【0068】
[71] 図1は、細胞をAPPSw-I二重変異構築体でトランスフェクションし、続いてアピリモド(LAM-002)(左パネル)または陽性対照DAPT(右パネル)で処理した実験からのデータを示す。Ab濃度をピコグラム(10-12グラム)/ミリリットル(pg/mL)で示す。
【0069】
[72] 図2は、細胞をAPP C99変異構築体でトランスフェクションし、続いてアピリモド(LAM-002)(左パネル)または陽性対照DAPT(右パネル)で処理した実験からのデータを示す。
【0070】
[73] 両方の実験とも、アピリモド処理による用量依存症のAb低減を立証する。
実施例2:コンピューター法により同定したアピリモドについての有望な適応症としてのアルツハイマー病
[74] コンピューターによる薬物再開発(drug repurposing)法を用いてアピリモドについて新規適応症を同定した。この解析のコアアルゴリズムにより、多数の細胞株において種々の濃度のアピリモドによって種々の時点で誘導される遺伝子発現プロフィールを、多数の疾患の遺伝子発現シグネチャーと比較した。この比較を実施するために、210の疾患発現シグネチャーから構成される疾患データベースを作成した;それには、種々の組織タイプにおいて対照/正常試料と患者試料の間で有意に変化した遺伝子が含まれていた。そのデータベースには疾患当たり多数の発現シグネチャー、および多数の疾患カテゴリーが含まれていた(図3)。
【0071】
[75] アピリモド遺伝子発現プロファイルを自社作成した。7種類の異なる細胞株を種々の濃度および時点でプロファイリングした(下記の表1)。これらの細胞株を選択した理由は、それらが広域スペクトルの薬物摂動空間(drug perturbation space)を獲得すると以前にレポートされており、他の薬物再開発プロジェクトにおける使用に成功しているからである(Lamb J et al. The Connectivity Map: using gene-expression signatures to connect small molecules, genes, and disease. Science. 2006 Sep 29;313(5795) :1929-35, 2006; Dudley JT et al. Computational repositioning of the anticonvulsant topiramate for inflammatory bowel disease. Sci Transl Med. 2011 Aug 17;3(96); Jahchan NS et al. A drug repositioning approach identifies tricyclic antidepressants as inhibitors of small cell lung cancer and other neuroendocrine tumors. Cancer Discov. 2013 Dec;3(12):1364-77)。
【0072】
[76] 表1:7種類の異なる癌細胞株で自社作成したアピリモド発現プロフィール
【0073】
【表1】
【0074】
[77] 対照/正常試料と疾患試料の間の発現プロフィールを比較することにより、疾患発現シグネチャーデータベースを作成した。NCBI Gene Expression Omnibus(GEO)からこれらのプロフィールを抽出し、手動でキュレートした。BioconductorソフトウェアのRankProdライブラリーを用いてRで疾患試料と対照試料の間の遺伝子発現の相違を計算した(https://bioconductor.org)。0.05未満の偽検出率(false discovery rate)(FDR)をもつ遺伝子のみを統計的に有意とみなし、疾患シグネチャーに採用した。
【0075】
[78] 要約すると、それぞれの疾患シグネチャーを順位付け(rank-ordered)薬物発現プロフィールに照会して、両プロフィール間の類似性を定量的に評価し、アップレギュレートされた遺伝子セットとダウンレギュレートされた遺伝子セットについて別個にスコアを計算した。この解析は、アップレギュレートされた疾患遺伝子が薬物発現プロフィールの底部(ダウンレギュレートされた)に局在し、ダウンレギュレートされた疾患遺伝子が薬物発現プロフィールの頂部(アップレギュレートされた)に局在すれば、その薬物-疾患ペアは適合良好(good match)であると考えられることを示した。
【0076】
[79] 最終的に、薬物-疾患発現プロフィールの類似性を評価する薬物-疾患スコア(drug-disease score)(dds)を計算し、その比較によって有意スコアが示された場合のみがアピリモドについて有望適応症選択肢とみなされる疾患であった。3つの異なるメトリックを用いて薬物-疾患発現プロフィールを比較した:濃縮スコア(Enrichment Score)(ES)、極値和(Extreme Sum)(XSum)および極値コサイン(Extreme Cosine)(XCos)(Cheng J, et al. Systematic evaluation of connectivity map for disease indications. Genome Med. 2014 Dec 2;6(12):540)。
【0077】
[80] それぞれの疾患プロフィールについての薬物-疾患スコア(図4)を計算した後、各メトリックの結果を合わせて、有意プロフィールのパーセントに従って疾患をランク付けした。このランク付けは、より高い数値の有意プロフィールによって表わされる疾患はその薬物について真の適応症である可能性がより大きいという理論的根拠に基づいていた。
【0078】
[81] 結果は、アルツハイマー病がアピリモドについて上位5つの予測適応症内にあることを指摘し(下記の表2)、これはアピリモドがこの疾患について処置選択肢となる可能性があることの指標となる。
【0079】
[82] 表2:3つのメトリックにわたる有意プロフィールの数値に従って上位にランク付けされた疾患
【0080】
【表2】
図1
図2
図3
図4