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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
F16B19/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020015686
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021124125
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛裕
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特許第4768254(JP,B2)
【文献】実開昭63-104710(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に設けられた取付孔に挿入される筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記筒状部の挿入方向と反対側に延びて先端部が自由端とされ、該先端部が前記被取付部材における取付孔の周縁部に係合する弾性板部と、前記弾性板部の先端部側に設けられた被ガイド部と、を有する取付部材と、
前記筒状部の内側に挿入され、挿入状態では前記弾性板部を前記筒状部の内側から支持する棒状のピン部と、前記ピン部に設けられ、前記ピン部の引き抜き方向の移動にともない前記被ガイド部を前記筒状部の筒軸側に案内して前記弾性板部の先端部を前記筒状部の外側から内側へ向けて移動させるガイド部と、を有する挿入部材と、
を備え
前記ガイド部には、前記ピン部の先端部に向けて次第に前記ピン部の中心軸に近づく傾斜面が設けられており、
前記ピン部の引き抜き方向の移動にともなって前記被ガイド部が前記傾斜面に案内されて前記筒状部の筒軸側に移動する、クリップ。
【請求項2】
前記被ガイド部の前記傾斜面と当接する部分が円弧状に湾曲している、請求項に記載のクリップ。
【請求項3】
前記弾性板部は、前記筒状部に形成された筒軸方向に沿って延びる一対のスリット間に設けられており、
前記スリットと前記弾性板部との間に前記ガイド部の一部が収まっている、請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記傾斜面の前記中心軸から遠い側の外端が、前記ピン部を前記筒状部に挿入した状態で前記被ガイド部よりも前記筒状部の外側に位置する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記弾性板部の内面には、無負荷状態で前記筒状部の挿入方向の端部側から該挿入方向の反対側に向けて次第に前記筒状部の筒軸へ近づく傾斜部が設けられており、
前記挿入部材の挿入状態では、前記ピン部によって前記傾斜部が前記筒状部の内側から支持されている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被取付部材に取り付けられる樹脂製のクリップが開示されている。このクリップは、雄部材と雌部材を備えており、雄部材を雌部材に挿入することで、雌部材の脚部が開き、脚部に設けられた係止部が被取付部材の取付孔の周縁部に係止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4768254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のクリップでは、長期間の使用後に雄部材を雌部材に対して引き抜き方向に移動させても、脚部にクリープが生じている場合、脚部が完全に元の状態に戻らない、すなわち、脚部が完全に閉じない。このように脚部が完全に閉じない場合、脚部の係止部が取付孔の周縁部に引っ掛かり、雌部材を被取付部材から取外し難いことがある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、長期間使用した後でも被取付部材から確実に取り外すことが可能なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のクリップは、被取付部材に設けられた取付孔に挿入される筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記筒状部の挿入方向と反対側に延びて先端部が自由端とされ、該先端部が前記被取付部材における取付孔の周縁部に係合する弾性板部と、前記弾性板部の先端部側に設けられた被ガイド部と、を有する取付部材と、前記筒状部の内側に挿入され、挿入状態では前記弾性板部を前記筒状部の内側から支持する棒状のピン部と、前記ピン部に設けられ、前記ピン部の引き抜き方向の移動にともない前記被ガイド部を前記筒状部の筒軸側に案内して前記弾性板部の先端部を前記筒状部の外側から内側へ向けて移動させるガイド部と、を有する挿入部材と、を備える。
【0007】
第1態様のクリップでは、被取付部材の取付孔に取付部材の筒状部を挿入した状態で、当該筒状部に挿入部材のピン部を挿入することで、ピン部によって取付部材の弾性板部が筒状部の内側から支持される。そして、ピン部によって支持された弾性板部の先端部が被取付部材の取付孔の周縁部に係合して、被取付部材にクリップが取り付けられる。
【0008】
ここで、上記クリップでは、ピン部を筒状部に対して引き抜き方向へ移動させると、弾性板部の被ガイド部とピン部のガイド部とが当接し、この当接状態で更にピン部を引き抜き方向へ移動させると、この移動にともない被ガイド部がガイド部によって筒状部の筒軸側に案内されて、弾性板部の先端部が筒状部の外側から内側へ強制的に移動させられる。これにより、弾性板部の先端部と取付孔の周縁部との係合状態が解消されて、被取付部材の取付孔から取付部材の筒状部を引き抜くことが可能になる。すなわち、上記クリップでは、被取付部材への取付状態が長期間経過して(言い換えると、長期間使用した後で)弾性板部にクリープが生じた後でも、弾性板部の先端部を強制的に移動させられるため、被取付部材から確実に取り外すことが可能になる。
【0009】
本発明の第2態様のクリップは、第1態様のクリップにおいて、前記ガイド部には、前記ピン部の先端部に向けて次第に前記ピン部の中心軸に近づく傾斜面が設けられており、前記ピン部の引き抜き方向の移動にともなって前記被ガイド部が前記傾斜面に案内されて前記筒状部の筒軸側に移動する。
【0010】
第2態様のクリップでは、ピン部を筒状部に対して引き抜き方向へ移動させると、ガイド部の傾斜面に被ガイド部が当接する。そして、ピン部の引き抜き方向の移動にともなって被ガイド部が傾斜面に案内されて筒状部の筒軸側に移動する。この被ガイド部の移動と共に弾性板部の先端部も移動し、弾性板部の先端部と取付孔の周縁部との係合状態が解消される。ここで、第2態様のクリップでは、ガイド部の傾斜面によって、ピン部に作用する引き抜き力が被ガイド部を筒状部の筒軸側、言い換えると、弾性板部の先端部を筒状部の外側から内側へ移動させる力に変換される。このように上記クリップでは、ガイド部に傾斜面を設ける簡単な構成で被取付部材からクリップを確実に取り外すことが可能になる。
【0011】
本発明の第3態様のクリップは、第2態様のクリップでは、前記被ガイド部の前記傾斜面と当接する部分が円弧状に湾曲している。
【0012】
第3態様のクリップでは、被ガイド部におけるガイド部の傾斜面と当接する部分が円弧状に湾曲していることから、ガイド部の傾斜面と被ガイド部の湾曲部分との接触面積が小さくなり、被ガイド部がガイド部の傾斜面上を移動しやすくなる。これにより、ピン部に加える引き抜き力が小さくても、被取付部材からクリップを確実に取り外すことが可能になる。
【0013】
本発明の第4態様のクリップは、第1態様~第3態様のいずれか一態様のクリップにおいて、前記弾性板部は、前記筒状部に形成された筒軸方向に沿って延びる一対のスリット間に設けられており、前記スリットと前記弾性板部との間に前記ガイド部の一部が収まっている。
【0014】
第4態様のクリップでは、筒状部のスリットと弾性板部との間にガイド部の一部が収まっていることから、筒状部に対するガイド部の筒状部周方向の位置が決まる。このため、ピン部を引き抜き方向に移動させた際に、ガイド部と被ガイド部とを確実に係合させられる。
【0015】
本発明の第5態様のクリップは、第2態様、第3態様、及び、第2態様を引用する第4態様のいずれか一態様のクリップにおいて、前記傾斜面の前記中心軸から遠い側の外端が、前記ピン部を前記筒状部に挿入した状態で前記被ガイド部よりも前記筒状部の外側に位置する。
【0016】
第5態様のクリップでは、傾斜面におけるピン部の中心軸から遠い側の外端が、ピン部を筒状部に挿入した挿入状態で被ガイド部よりも筒状部の外側に位置していることから、弾性板部がクリープによって元の状態に戻らなくても、被ガイド部とガイド部を確実に係合させられる。
【0017】
本発明の第6態様のクリップは、第1態様~第5態様のいずれか一態様のクリップにおいて、前記弾性板部の内面には、無負荷状態で前記筒状部の挿入方向の端部側から該挿入方向の反対側に向けて次第に前記筒状部の筒軸へ近づく傾斜部が設けられており、前記挿入部材の挿入状態では、前記ピン部によって前記傾斜部が前記筒状部の内側から支持されている。
【0018】
第6態様のクリップでは、弾性板部の内面に無負荷状態で筒状部の挿入方向の端部側から該挿入方向の反対側に向けて次第に筒状部の筒軸へ近づく傾斜部が設けられている。ここで、上記クリップでは、ピン部を筒状部に挿入すると、弾性板部が筒状部の外側へ押し出され、弾性板部の先端部が取付孔の周縁部に係合する。そして、ピン部の挿入状態では、傾斜部がピン部によって筒状部の内側から支持されるため、弾性板部の先端部と取付孔の周縁部との係合状態が維持される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、長期間使用した後でも被取付部材から確実に取り外すことが可能なクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るクリップの分解斜視図である。
図2図1の取付部材を一方向から見た側面図である。
図3図1の取付部材を他方向から見た側面図である。
図4図3の4X-4X線断面図である。
図5図3の5X-5X線断面図である。
図6図1の挿入部材を一方向から見た側面図である。
図7図1の挿入部材を他方向から見た側面図であり、一部分を断面図としている。
図8図7の8X-8X線断面図である。
図9図1のクリップにおいて、取付部材に挿入部材を仮挿入状態で保持させた状態での側面図であり、一部分を断面図としている。
図10図9のクリップを被取付部材及び固定対象物に取り付ける前の状態を示す、クリップの側面図である。
図11図9のクリップの筒状部を被取付部材の取付孔及び固定対象物の取付孔に挿入した状態を示す、クリップの側面図である。
図12図9のクリップにおいて、挿入部材を取付部材に挿入した状態を示す、クリップの側断面図(図4に対応する断面図)である。
図13図9のクリップにおいて、挿入部材を取付部材に挿入した状態を示す、クリップの側断面図(図5に対応する断面図)である。
図14図12のクリップにおいて、挿入部材を取付部材に対して引き抜き方向に移動させて、ガイド部に被ガイド部が当接した状態を示す、クリップの側断面図(図12に対応する断面図)である。
図15図14のクリップにおいて、挿入部材を取付部材に対して更に引き抜き方向に移動させて、被ガイド部をガイド部に沿って移動させた状態を示す、クリップの側断面図(図14に対応する断面図)である。
図16図14のクリップを弾性板部側から見たクリップの側面図である。
図17図15のクリップを弾性板部側から見たクリップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態に係るクリップを図1図17を用いて説明する。
【0022】
図1及び図11に示されるように、本実施形態のクリップ20は、被取付部材100に取り付けられる部材であり、被取付部材100への取付状態では、被取付部材100に固定対象物102を取り付けられるようになっている。
【0023】
このクリップ20は、図1に示されるように、取付部材22と、挿入部材50と、を備えている。
【0024】
[取付部材]
図2図5に示されるように、取付部材22は、筒状部24と、弾性板部26と、被ガイド部28とを有している。なお、本実施形態の取付部材22は、樹脂の一体成形品である。
【0025】
図2図5に示されるように、筒状部24は、樹脂材料を筒状に形成した部分であり、被取付部材100に形成された取付孔101に挿入されるようになっている。また、筒状部24は、固定対象物102に形成された取付孔103にも挿入されるようになっている。また、本実施形態の筒状部24は、筒軸CL1と直交する方向の断面において、外形状が円形とされ、内形状が略矩形とされている。すなわち、筒状部24において、後述する挿入部材50のピン部52が挿入される部分の形状が略四角形とされている。
【0026】
また、筒状部24の筒軸方向の一方側、言い換えると、筒状部24の取付孔101への挿入方向と反対側には、筒状部24の外周面から径方向外側へ張り出すフランジ部30が設けられている。このフランジ部30の外径は、取付孔101及び取付孔103よりも大きい。
【0027】
図4及び図5に示されるように、弾性板部26は、筒状部24の筒軸方向と直交する方向で対向する位置に一対設けられている。この弾性板部26は、筒状部24の挿入方向(図中矢印Iで示す方向)と反対側に延びて先端部26Aが自由端とされている。具体的には、弾性板部26は、筒状部24に片持ち状態で支持されている。このため、弾性板部26は、基端部26Bを支点として筒状部24の内側及び外側へ撓むことが可能となっている。また、弾性板部26の先端部26Aは、ピン部52が筒状部24に挿入された挿入状態で、ピン部52によって筒状部24の内側から支持されて被取付部材100の取付孔101の周縁部101Aに係合するようになっている。
【0028】
また、弾性板部26は、筒状部24に形成された筒軸方向に沿って延びる一対のスリット32間に設けられている。また、一対のスリット32の筒状部24の挿入方向と反対側の端部同士が筒状部24の外周に沿って延びるスリット34によって連結されている。
【0029】
また、弾性板部26の内面26Cには、無負荷状態(ピン部52の非挿入状態)で筒状部24の挿入方向の端部24A側から該挿入方向の反対側に向けて次第に筒状部24の筒軸CL1へ近づく傾斜部26Dが設けられている。この傾斜部26Dは、ピン部52を筒状部24に挿入した状態(図12及び図13に示す完全挿入状態)でピン部52の幅広部56に乗り上げて該幅広部56によって筒状部24の内側から支持されるようになっている。また、弾性板部26の内面26Cには、傾斜部26Dの端部から挿入方向の反対側に向けて次第に筒軸CL1から離れる傾斜部26Eが設けられている。この傾斜部26Eは、ピン部52の挿入時に、ピン部52の後述する傾斜部58と当接してピン部52の挿入力を、弾性板部26を筒状部24の外側に移動させる移動力に変換するようになっている。
【0030】
また、弾性板部26の両側面(弾性板部26の延在方向に対して幅方向の両側面)26Fには、被ガイド部28がそれぞれ設けられている。この被ガイド部28は、側面26Fから弾性板部26の幅方向に突出する突部である。
【0031】
図14に示されるように、被ガイド部28は、ピン部52におけるガイド部54の傾斜面64に当接するようになっている。この被ガイド部28におけるガイド部54の傾斜面64と当接する部分は、円弧状に湾曲する湾曲部28Aとされている。具体的には、被ガイド部28の筒状部24の挿入方向側の部分が湾曲部28Aとされている。
【0032】
[挿入部材]
図6図8に示されるように、挿入部材50は、ピン部52と、ガイド部54と、を有している。なお、本実施形態の挿入部材50は、樹脂の一体成形品である。
【0033】
図6図8に示されるように、ピン部52は、棒状とされ、取付部材22の筒状部24の内側に挿入されるようになっている。このピン部52は、中心軸CL2と直交する方向の断面において、外形状が略矩形とされている。このピン部52の中心軸方向の一方側、言い換えると、ピン部52の挿入方向と反対側には、ピン部52の中心軸CL2から放射状に張り出す頭部55が設けられている。また、ピン部52の中心軸方向の他方側、言い換えると、ピン部52の挿入方向側の先端部52A側には、後述するガイド部54が設けられている。また、ピン部52の中間部には、幅広部56と、この幅広部56よりも先端部52A側の幅狭部60と、幅広部56と幅狭部60とをつなぐ傾斜部58が形成されている。具体的には、ピン部52を筒状部24に挿入した状態で、ピン部52の弾性板部26に対応する側面52Bに幅広部56、幅狭部60、及び傾斜部58が形成されている。なお、ピン部52の側面52Cは、平坦面とされている。
【0034】
なお、ピン部52は、筒状部24への挿入状態では、幅広部56が弾性板部26の傾斜部58に当接して弾性板部26を筒状部24の内側から支持して、弾性板部26の先端部26Aと取付孔101の周縁部101Aとの係合状態を維持するようになっている。
【0035】
ピン部52の幅広部56には、弾性変形可能な略半円状又は略山形状の凸部62が設けられている。この凸部62は、ピン部52を筒状部24に挿入した状態で、筒状部24のスリット34に引っ掛かるようになっている。
【0036】
また、ガイド部54は、上記のようにピン部52の先端部52A側に設けられており、図6及び図8に示されるように、ピン部52の引き抜き方向の移動にともない被ガイド部28を筒状部24の筒軸CL1側に案内して弾性板部26の先端部26Aを筒状部24の外側から内側へ向けて移動させる部分である。なお、本実施形態では、被ガイド部28が4つ設けられており、これらに対応するガイド部54もピン部52に同数設けられている。
【0037】
ガイド部54には、図6及び図8に示されるように、ピン部52の先端部52A側から中心軸CL2と直交する方向に突出する突起である。このガイド部54には、ピン部52の先端部52Aに向けて次第にピン部52の中心軸に近づく傾斜面64が設けられている。ここで、ピン部52が引き抜き方向に移動すると、被ガイド部28が傾斜面64に当接し、ピン部52の引き抜き方向の移動にともなって被ガイド部28が傾斜面64に案内されて筒状部24の筒軸CL1側に移動するようになっている。
また、本実施形態では、傾斜面64の中心軸CL2から遠い側の外端64Aが、ピン部52を筒状部24に挿入した状態で、被ガイド部28よりも筒状部24の外側に位置している。
【0038】
また、スリット32と弾性板部26との間には、ガイド部54の一部が収まっている。具体的には、ガイド部54の中心軸CL2から最も遠い位置にある外側端部54Aがスリット32と弾性板部26との間に収まっている。
【0039】
次に本実施形態の作用について説明する。
図10図12に示されるように、クリップ20では、被取付部材100の取付孔101に取付部材22の筒状部24を挿入し、さらに固定対象物102の取付孔103に筒状部24を挿入した状態で、筒状部24に挿入部材50のピン部52を挿入することで、ピン部52によって取付部材22の弾性板部26が筒状部24の内側から支持される。そして、ピン部52によって支持された弾性板部26の先端部26Aが被取付部材100の取付孔101の周縁部101Aに係合して、被取付部材100にクリップ20が取り付けられる。なお、ピン部52を筒状部24に挿入した状態では、筒状部24の筒軸CL1とピン部52の中心軸CL2が略一致する。
【0040】
ここで、クリップ20では、図13図15に示されるように、ピン部52を筒状部24に対して引き抜き方向へ移動させると、弾性板部26の被ガイド部28とピン部52のガイド部54とが当接する。そして、この当接状態で更にピン部52を引き抜き方向へ移動させると、この移動にともない被ガイド部28がガイド部54によって筒状部24の筒軸CL1側に案内されて、弾性板部26の先端部26Aが筒状部24の外側から内側へ向けて強制的に移動させられる。これにより、弾性板部26の先端部26Aと取付孔101の周縁部101Aとの係合状態が解消されて、被取付部材100の取付孔101及び固定対象物102の取付孔103から取付部材22の筒状部24を引き抜くことが可能になる。すなわち、クリップ20では、被取付部材100への取付状態が長期間経過して(言い換えると、長期間使用した後で)弾性板部26にクリープが生じた後でも、弾性板部26の先端部26Aを強制的に移動させられるため、被取付部材100から確実に取り外すことが可能になる。
【0041】
また、クリップ20では、ピン部52を筒状部24に対して引き抜き方向へ移動させると、ガイド部54の傾斜面64に被ガイド部28が当接する。そして、ピン部52の引き抜き方向の移動にともなって被ガイド部28が傾斜面64に案内されて筒状部24の筒軸CL1側に移動する。この被ガイド部28の移動と共に弾性板部26の先端部26Aも移動し、弾性板部26の先端部26Aと取付孔101の周縁部101Aとの係合状態が解消される。ここで、クリップ20では、ガイド部54の傾斜面64によって、ピン部52に作用する引き抜き力が被ガイド部28を筒状部24の筒軸CL1側、言い換えると、弾性板部26の先端部26Aを筒状部24の外側から内側へ移動させる力に変換される。このようにクリップ20では、ガイド部54に傾斜面64を設ける簡単な構成で被取付部材100からクリップ20を確実に取り外すことが可能になる。
【0042】
クリップ20では、被ガイド部28におけるガイド部54の傾斜面64と当接する部分が円弧状に湾曲した湾曲部28Aとされていることから、ガイド部54の傾斜面64と被ガイド部28の湾曲部28Aとの接触面積が小さくなり、被ガイド部28がガイド部54の傾斜面64上を移動しやすくなる。これにより、ピン部52に加える引き抜き力が小さくても、被取付部材100からクリップ20を確実に取り外すことが可能になる。
【0043】
さらにクリップ20では、図16及び図17に示されるように、筒状部24のスリット32と弾性板部26との間にガイド部54の一部である外側端部54Aが収まっていることから、筒状部24に対するガイド部54の筒状部周方向の位置が決まる。このため、ピン部52を引き抜き方向に移動させた際に、ガイド部54と被ガイド部28とを確実に係合させられる。
【0044】
またさらに、クリップ20では、ガイド部54の傾斜面64におけるピン部52の中心軸CL2から遠い側の外端64Aが、ピン部52を筒状部24に挿入した挿入状態で被ガイド部28よりも筒状部24の外側に位置していることから、弾性板部26がクリープによって元の状態に戻らなくても、被ガイド部28とガイド部54を確実に係合させられる。
【0045】
そして、クリップ20では、弾性板部26の内面26Cに無負荷状態で筒状部24の挿入方向の端部24A側から該挿入方向の反対側に向けて次第に筒状部24の筒軸CL1へ近づく傾斜部26Dが設けられている。ここで、クリップ20では、ピン部52を筒状部24に挿入すると、弾性板部26が筒状部24の外側へ押し出され、弾性板部26の先端部26Aが取付孔101の周縁部101Aに係合する。そして、ピン部52の挿入状態では、傾斜部26Dがピン部52によって筒状部24の内側から支持されるため、弾性板部26の先端部26Aと取付孔101の周縁部101Aとの係合状態が維持される。
【0046】
前述の実施形態では、ピン部52にガイド部54を設け、弾性板部26に被ガイド部28を設けているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ピン部52に被ガイド部28を設け、弾性板部26にガイド部54を設けてもよい。
【0047】
前述の実施形態では、ピン部52の断面形状を略矩形とし、筒状部24の内側の断面形状も略矩形としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ピン部の断面形状を略円形とし、筒状部24の内側の断面形状も略円形としてもよい。
【0048】
前述の実施形態では、無負荷状態では、弾性板部26の先端部26Aが筒状部24から突出していないが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、無負荷状態で弾性板部の先端部が筒状部から突出していてもよい。この場合には、筒状部を取付孔101に挿入する際に、弾性板部が筒状部内側に撓み、取付孔101を通り過ぎた後に、弾性板部が元の状態に戻り、弾性板部の先端部が取付孔101の周縁部101Aに係合する。そして、ピン部52が筒状部に挿入されると、ピン部52によって弾性板部が筒状部の内側から支持されるため、弾性板部が筒状部内側へ撓むのが抑制される。その結果、弾性板部の先端部と取付孔101の周縁部101Aとの係合状態が維持される。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
20 クリップ
22 取付部材
24 筒状部
24A 端部
26 弾性板部
26A 先端部
26C 内面
26D 傾斜部
28 被ガイド部
28A 湾曲部
30 フランジ部
32 スリット
50 挿入部材
52 ピン部
52A 先端部
54 ガイド部
54A 外側端部(ガイド部の一部)
64 傾斜面
64A 外端
100 被取付部材
101 取付孔
101A 周縁部
CL1 筒軸
CL2 中心軸
図1
図2
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