(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】工具管理システム、ツールプリセッタ、および端末
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20221223BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20221223BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20221223BHJP
B23Q 41/00 20060101ALI20221223BHJP
B23Q 15/16 20060101ALI20221223BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20221223BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
B23Q17/00 C
B23Q3/155 D
B23Q3/155 F
B23Q11/00 F
B23Q41/00 F
B23Q15/16
B23Q15/00 307A
G05B19/404 F
(21)【出願番号】P 2020043314
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2021-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591028072
【氏名又は名称】株式会社日研工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三▲角▼ 進
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-275855(JP,A)
【文献】特開平04-093143(JP,A)
【文献】実開平4-70445(JP,U)
【文献】特開2001-259970(JP,A)
【文献】特開平5-337789(JP,A)
【文献】特開2000-317774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-41/08;
G05B 19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシニングセンタでのワークの加工に用いられる工具付き工具ホルダを一括管理する管理システムであって、
固有の識別子である工具番号を特定するためのコード情報が
工具ホルダ本体の表面にマーキングされ、各々に工具が取り付けられた複数の
工具付き工具ホルダと、
ネットワークを介して互いに接続された、プログラム作成装置、ツールプリセッタ、マシニングセンタ、および、前記工具番号ごとに工具データを記憶する工具データベースとを備え、
前記プログラム作成装置は、前記マシニングセンタでのワークの加工制御に用いられる加工プログラム、および、前記加工プログラムに記述された工具の識別子である加工番号の一覧を表わす対応リストを作成し、
前記
ツールプリセッタには、測定対象の
工具付き工具ホルダに付与された前記コード情報を読み取るための第1の読み取り手段
が設けられており、
前記
ツールプリセッタは、
前記プログラム作成装置で作成された前記対応リストに記述された加工番号が指定された状態で、前記第1の読み取り手段
が測定対象の工具付き工具ホルダの前記コード情報を読み取ることによって、前記コード情報
から当該測定対象の
工具付き工具ホルダの工具番号を特定
する特定手段と、
当該測定対象の工具付き工具ホルダの工具長形状および工具径形状を測定してそれぞれの補正値を算出する測定処理手段と、
前記特定手段により特定された工具番号に対応する前記工具データとして、前記測定処理手段により算出された前記補正値を登録するとともに、前記コード情報の読み取り時に指定された加工番号を登録することによって、前記工具データベース上において、当該測定対象の工具付き工具ホルダの工具番号と
前記加工プログラム上の加工番号とをリンク
させる登録手段とを含む、工具管理システム。
【請求項2】
前記マシニングセンタは、複数のポットが設けられ
、前記複数のポットを1つずつ所定の工具交換位置に移動可能に設けられた工具マガジンを有しており、
前記マシニングセンタは、前記ポットの識別番号と前記
加工プログラム上の加工番号
との対応関係を示すマガジンテーブル
を記憶する第1の記憶手段を含み、
当該工具管理システムは、
前記マシニングセンタおよび前記工具データベースとネットワークを介して接続された端末をさらに備え、
前記端末には、前記工具マガジンの前記工具交換位置に位置する交換対象ポットに着脱される工具付き工具ホルダに付与された前記コード情報を読み取るための第2の読み取り手段が設けられており、
前記端末は、
前記第2の読み取り手段により読み取られた前記コード情報によって、前記
交換対象ポット
に対して着脱される工具付き工具ホルダの工具番号を特定し、前記工具データベース上において当該特定された工具番号に
対応付けられた前記工具データを検索する検索手段と、
前記交換対象ポットに工具付き工具ホルダを取り付ける際に、前記第1の記憶手段に記憶された前記マガジンテーブルに、前記交換対象ポットの識別番号に対応する加工番号として、前記検索手段により検索された前記工具データに含まれる加工番号を入力する第1のデータ入力手段とを含む、請求項1に記載の工具管理システム。
【請求項3】
前記マシニングセンタは、前記加工プログラム上の加工番号ごとに、ワークの加工時に必要な補正値が対応付けて記録される補正値テーブル
を記憶する第2の記憶手段をさらに含み、
前記端末は、前記工具マガジン
の前記交換対象ポットに
工具付き工具ホルダを取り付ける際に、
前記第2の記憶手段に記憶された前記補正値テーブルに、前記検索手段に検索された前記工具データの補正値
を入力する
第2のデータ入力手段をさらに含む、請求項2に記載の工具管理システム。
【請求項4】
前記端末は、前記工具マガジン
の前記交換対象ポットから工具付き工具ホルダを取り外す際に、
前記検索手段により検索された前記工具データに含まれる加工番号を
ゼロクリアし、前記工具データベース上の前記工具データを更新する更新手段をさらに含む、請求項
3に記載の工具管理システム。
【請求項5】
前記工具データベースの前記工具データ、および、前記マシニングセンタの
前記第2の記憶手段に記憶された前記補正値テーブルは、
工具長および工具径の摩耗状態
を数値化した摩耗補正値が記録される項目を有しており、
前記マシニングセンタは、前記工具マガジンに取り付けられた工具付き工具ホルダの
工具長および工具径の摩耗を測定する測定部
と、前記測定部による測定結果
に応じて前記補正値テーブルの
摩耗補正値を書き替える書替手段とを含み、
前記端末
の前記更新手段は、前記工具マガジン
の前記交換対象ポットから
工具付き工具ホルダを取り外す際に、
前記検索手段により検索された前記工具データに含まれる摩耗補正値を、前記補正値テーブルに記録された
摩耗補正値
に更新する、請求項4に記載の工具管理システム。
【請求項6】
前記
ツールプリセッタは、工具ホルダに保持された工具が新たな工具に取り替えられた場合に、前記工具データベースの前記工具データの前記
摩耗補正値をゼロクリアする、請求項5に記載の工具管理システム。
【請求項7】
前記ツールプリセッタは、前記加工プログラムごとに、前記コード情報の読み取り時に指定された加工番号と前記特定手段により特定された工具番号とを関連付けることにより、前記対応リストに記述された加工番号ごとに工具番号を対応付けた工具レイアウトデータを作成する作成手段をさらに含み、
前記端末は、
前記マシニングセンタ
で用いる前記加工プログラムを切り替える際に、次の加工プログラム
用に前記作成手段で作成された前記工具レイアウトデータ上の加工番号と、前記マシニングセンタの
前記第1の記憶手段に記憶されている前記マガジンテーブル上の加工番号とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記工具マガジンから取り外す
工具付き工具ホルダのリスト、新たに前記工具マガジンに取り付ける
工具付き工具ホルダのリスト、および、前記工具マガジンに残す
工具付き工具ホルダのリストを表示する表示手段とをさらに
含む、請求項2に記載の工具管理システム。
【請求項8】
前記マシニングセンタは複数存在し、
前記
ツールプリセッタの前記登録手段は
、前記特定手段により特定された工具番号
に対応付けて、
オペレータにより選択された前記マシニングセンタの識別子である機械番号を、
前記工具データベースにさらに登録し、
前記工具データベースの前記工具データは、前記機械番号をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の工具管理システム。
【請求項9】
ネットワークを介して、プログラム作成装置、および、工具ホルダ固有の識別子である工具番号ごとに工具データを記憶する工具データベース
と接続された
ツールプリセッタであって
、
測定対象の
工具付き工具ホルダ
の工具ホルダ本体の表面にマーキングされ
たコード情報を読み取るための読み取り手段と、
前記プログラム作成装置で作成された、加工プログラムに記述された工具の識別子である加工番号の一覧を表わす対応リストを受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記対応リストに記述された加工番号が指定された状態で、前記読み取り手段
が測定対象の工具付き工具ホルダの前記コード情報を読み取ることによって、前記コード情報
から当該測定対象の
工具付き工具ホルダの工具番号を特定
する特定手段と、
当該測定対象の工具付き工具ホルダの工具長形状および工具径形状を測定してそれぞれの補正値を算出する測定処理手段と、
前記特定手段により特定された工具番号に対応する前記工具データとして、前記測定処理手段により算出された前記補正値を登録するとともに、前記コード情報の読み取り時に指定された加工番号を登録することによって、前記工具データベース上において、当該測定対象の工具付き工具ホルダの工具番号と
前記加工プログラム上の加工番号とをリンクさせ
る登録手段とを含む、
ツールプリセッタ。
【請求項10】
請求項9に記載の
ツールプリセッタ、複数のポットを1つずつ所定の工具交換位置に移動可能に設けられた工具マガジンを有するマシニングセンタ
、および前記工具データベースと
、ネットワークを介して接続された端末であって、
前記工具マガジンの前記工具交換位置に位置する交換対象ポットに着脱される工具付き工具ホルダの工具ホルダ本体の表面にマーキングされた前記コード情報を読み取るための読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取られた前記コード情報によって、前記
交換対象ポット
に対して着脱される工具付き工具ホルダの工具番号を特定し、前記工具データベース上において当該特定された工具番号と関連付けられた前記工具データを
検索する検索手段と、
前記交換対象ポットに工具付き工具ホルダを取り付ける際に、前記マシニングセンタの第1の記憶手段に記憶されたマガジンテーブルに、前記交換対象ポットの識別番号に対応する加工番号として、前記検索手段により検索された前記工具データに含まれる加工番号を入力する第1のデータ入力手段と、
前記交換対象ポットに工具付き工具ホルダを取り付ける際に、前記マシニングセンタの第2の記憶手段に記憶された補正値テーブルに、前記検索手段に検索された前記工具データの補正値
を入力する第2のデータ入力手段と
、
前記
交換対象ポットから
工具付き工具ホルダを取り外す際に、
前記検索手段により検索された前記工具データに含まれる加工番号を
ゼロクリアし、前記工具データベース上の前記工具データ
を更新する更新手段とを備える、端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具管理システム、工具寸法測定装置、および端末に関し、特に、マシニングセンタでのワークの加工に用いられる工具(刃物)が取り付けられた工具ホルダ(工具付き工具ホルダ)を一括管理する工具管理システム、ならびに、当該システムに好適な工具寸法測定装置および端末に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタのようなNC(Numerical Control)工作機械は、加工プロセスを記述したNCプログラムに従って制御される。NCプログラムに記述された個々の加工プロセスに必要な工具付き工具ホルダは、工具マガジンから選択され、自動工具交換装置を介して工作機械本体へ供給される。そのため、工具マガジン内にはNCプログラムを実行するために必要な全ての工具ホルダが、NCプログラムで指令される加工番号を付与されて、個別の番号が付された工具ポットに装着された状態で収納されている。NCプログラムに従った加工制御を行うため、工具マガジン内に収納されている全ての工具ホルダに関する工具データが必要となる。
【0003】
WO2015/029232号公報(特許文献1)に開示された工具管理システムでは、工場内に準備されている工具の一覧を含む工具データベースと、NCプログラムを実行するために必要な工具の一覧を含む使用工具リストと、使用工具リストと工具データベースとから使用工具となり得る工具候補を抽出した工具候補リストとを具備し、工具候補リストを画面に表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/029232号公報(特許第6114828号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の工具管理システムでは、工具が取り付けられる工具ホルダに、固有の識別子である工具番号(コード情報)が付与されておらず、当然、工具番号を読み取るための読み取り装置もない。そのため、手作業で、工具マガジンの工具(工具付き工具ホルダ)および加工に必要なデータを入れ替えなければならず、誤りが起こる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、汎用性があり、簡易な構成で工具付き工具ホルダを一括管理することのできる工具管理システムを提供することである。
【0007】
また、このような工具管理システムにおいて好適な工具寸法測定装置および端末を提供することも、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う工具管理システムは、マシニングセンタでのワークの加工に用いられる工具付き工具ホルダを一括管理する管理システムである。工具管理システムは、固有の識別子である工具番号を特定するためのコード情報が予め付与され、各々に工具が取り付けられた複数の工具ホルダと、各工具ホルダに関する補正値を含む工具データを、工具番号に対応付けて記憶する工具データベースと、加工プログラムに記述されたプログラム上の識別子である加工番号と、工具種類、工具長、ならびに工具径を含む使用工具情報との対応リストに基づいて、加工番号ごとに、使用する工具付き工具ホルダの形状を測定する工具寸法測定装置と、工具寸法測定装置での測定対象の工具ホルダに付与されたコード情報を読み取るための第1の読み取り手段とを備える。工具寸法測定装置は、第1の読み取り手段により読み取られたコード情報によって測定対象の工具ホルダの工具番号を特定し、工具データベース上において、特定された工具番号と加工番号とをリンクさせるリンク処理を実行する。
【0009】
この工具管理システムにおいては、工具データベース上の工具データは工具ホルダに固有の工具番号で管理しながら、マシニングセンタでの工具ホルダの管理はプログラム上の加工番号で実現される。したがって、本システムによれば、汎用性が向上し、簡易な構成で、工具付き工具ホルダを一括管理することができる。なお、第1の読み取り手段は、工具寸法測定装置と一体的に設けられていることが望ましい。
【0010】
マシニングセンタは、複数のポットが設けられた工具マガジンを有しており、ポットの識別番号と加工番号とを対応付けたマガジンテーブル、および、加工番号と補正値とを対応付けた補正値テーブルに基づいて、工具マガジンに取り付けられた工具ホルダを選択的に用いてワークを加工する。工具管理システムは、工具マガジンに取り付ける工具ホルダまたは工具マガジンから取り外す工具ホルダに付与されたコード情報を読み取るための第2の読み取り手段が設けられた端末をさらに備えることが望ましい。この場合、端末は、工具マガジンに工具ホルダを取り付ける際に、第2の読み取り手段により読み取られたコード情報によって、工具マガジンの所定のポットに挿入される工具ホルダの工具番号を特定し、工具データベース上において、当該特定された工具番号と関連付けられた加工番号を、マガジンテーブルに入力することが望ましい。
【0011】
また、端末は、工具マガジンに工具ホルダを取り付ける際に、工具データベース上において、特定された工具番号に対応付けられた工具データの補正値を、当該特定された工具番号と関連付けられた加工番号対応の補正値テーブルに入力することが望ましい。
【0012】
さらに、端末は、工具マガジンから工具ホルダを取り外す際に、第2の読み取り手段により読み取られたコード情報によって、工具マガジンから取り外される工具ホルダの工具番号を特定し、工具データベース上における、当該特定された工具番号と加工番号とのリンクを解除することが望ましい。
【0013】
好ましくは、工具データベースの工具データ、および、マシニングセンタで用いられる補正値テーブルは、摩耗状態に関する項目を有しており、マシニングセンタは、工具マガジンに取り付けられた工具付き工具ホルダの摩耗を測定する測定部を有し、測定部による測定結果に基づいて、補正値テーブルの摩耗状態に関する項目に補正値を記録する。この場合、端末は、工具マガジンから工具ホルダを取り外す際に、工具データベースに記憶されている、特定された工具番号に対応する工具データの摩耗状態に関する項目に、特定された工具番号に関連付けられた加工番号についての補正値テーブルに記録された補正値を入力することが望ましい。
【0014】
好ましくは、工具寸法測定装置は、工具ホルダに保持された工具が新たな工具に取り替えられた場合に、工具データベースの工具データの摩耗状態に関する項目の補正値をゼロクリアする。
【0015】
好ましくは、工具管理システムは、工具データベースを参照して、マシニングセンタにおいて次の加工プログラムで用いられる工具レイアウトデータ上の加工番号と、マシニングセンタのマガジンテーブル上の加工番号とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、工具マガジンから取り外す工具ホルダのリスト、新たに工具マガジンに取り付ける工具ホルダのリスト、および、工具マガジンに残す工具ホルダのリストを表示する表示手段とをさらに備える。
【0016】
マシニングセンタは複数存在してもよい。この場合、工具寸法測定装置は、リンク処理において、特定された工具番号と、加工番号およびマシニングセンタの識別子である機械番号の双方とをリンクさせることが望ましい。
【0017】
この発明のある局面に従う工具寸法測定装置は、固有の識別子である工具番号を特定するためのコード情報が予め付与された複数の工具付き工具ホルダに関する工具種類、補正値、ならびに寿命値を含む工具データを、工具番号に対応付けて記憶する工具データベースと、ネットワークを介して接続されている。工具寸法測定装置は、加工プログラムに記述されたプログラム上の識別子である加工番号と工具の種類を含む使用工具情報との対応リストに基づいて、加工番号ごとに使用する工具付き工具ホルダの形状を測定する測定手段と、測定手段による測定対象の工具ホルダに付与されたコード情報を読み取るための読み取り手段と、読み取り手段で読み取られたコード情報によって、測定対象の工具ホルダの固有の識別子である工具番号が特定された場合に、特定された工具番号と加工番号とをリンクさせて、工具データベース上の工具データを更新する更新手段とを備える。
【0018】
この発明のある局面に従う端末は、上記記載の工具寸法測定装置、および、マガジンテーブルおよび補正値テーブルを格納したマシニングセンタと、ネットワークを介して接続されている。端末は、マシニングセンタの工具マガジンに工具ホルダを取り付ける際に、読み取り手段で読み取られたコード情報によって、工具マガジンの所定のポットに挿入される工具ホルダの工具番号が特定された場合に、工具データベース上において、特定された工具番号と関連付けられた加工番号を、マガジンテーブルに入力する第1のデータ入力手段を備えるとともに、工具データベース上において、特定された工具番号に対応付けられた工具データの補正値を、当該特定された工具番号と関連付けられた加工番号対応の補正値テーブルに入力する第2のデータ入力手段を備える。また、端末は、工具マガジンから工具ホルダを取り外す際に、読み取り手段で読み取られたコード情報によって、工具マガジンから取り外される工具ホルダの工具番号が特定された場合に、当該特定された工具番号と加工番号とのリンクを解除して、工具データベース上の工具データを、マシニングセンタ上のデータに従って更新する更新手段を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、汎用性を向上でき、かつ、簡易な構成で、工具付き工具ホルダを一括管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る工具管理システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る工具管理システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態における各種データのデータ構造例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態において、工具寸法測定装置で新たな加工プログラムに使用する工具ホルダの寸法を測定する際の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施の形態において、マシニングセンタの工具マガジンに工具ホルダを取り付ける際の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態において、マシニングセンタの工具マガジンから工具ホルダを取り外す際の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態において、マシニングセンタで用いる加工プログラムを切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0022】
<概略構成について>
図1は、本実施の形態に係る工具管理システム1の概略構成を示す模式図である。
【0023】
工具管理システム1は、マシニングセンタ7でのワークの加工に用いられる工具21が取り付けられた工具ホルダ2を、一括管理するシステムである。工具管理システム1は、管理対象となる複数の工具ホルダ2と、工具データベース3と、CAM(Computer Aided Manufacturing)4と、工具寸法測定装置5と、マシニングセンタ7と、端末6とを備えている。工具データベース3、CAM4、工具寸法測定装置5、マシニングセンタ7、および端末6は、ネットワーク9を介して互いに接続されている。
【0024】
各工具ホルダ2は、刃物である工具21を保持している。工具ホルダ2には、固有の識別子(以下「工具番号」という)を特定するためのコード情報としてのQRコード(登録商標)23が付与されている。「識別子」は、数字に限定されず、記号、アルファベットなどで表されてもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。QRコード23は、本体部22の外周面の一部分に設けられた平坦面に、マーキングされている。なお、以下の説明において、工具ホルダ2は、特筆しない限り、工具21が取り付けられた「工具付き工具ホルダ」を意味する。
【0025】
工具データベース3は、各工具ホルダ2に関する工具種類(フライス、ドリル、など)、補正値、ならびに寿命値などを含む工具データを、工具番号に対応付けて記憶している。工具データのデータ構造例については後述する。
【0026】
CAM4は、プログラム作成装置であり、マシニングセンタ7での加工に用いられる加工プログラム、すなわちNCプログラム41を作成する。また、NCプログラム41に記述されたプログラム上の識別子(以下「加工番号」という)ごとの対応リスト42を作成する。対応リスト42には、NCプログラム41に記述された全ての加工番号と、それぞれの加工番号に対応する使用工具情報とが記述されている。使用工具情報は、工具種類、工具径、および工具長を含む。なお、加工番号は、通常、TNo.で表される識別子である。NCプログラム41および対応リスト42は、ネットワーク9を介して他装置に送信される。
【0027】
工具寸法測定装置5は、ツールプリセッタと称される装置であり、測定部51および操作パネル52を備えている。工具寸法測定装置5は、上述の対応リスト42に基づいて、加工番号ごとに、測定部51にセットされた工具ホルダ2の形状(工具長および工具径)を測定して、工具レイアウトデータ54を作成する。より具体的には、対応リスト42に基づいて工具データベース3を参照して、プログラム上の加工番号ごとに適した工具ホルダ2の工具データを抽出し、操作パネル52に表示する。そして、工具21の形状の測定結果に基づいて、マシニングセンタ7での制御に用いられる工具レイアウトデータ54を作成する。工具レイアウトデータ54は、加工番号に対応付けて、工具種類、および、工具長/工具径補正値を記述したデータである。
【0028】
マシニングセンタ7は、複数のポット72が設けられた工具マガジン71を有しており、NCプログラム41および工具レイアウトデータ54に基づいて、工具マガジン71に取り付けられた工具ホルダ2を選択的に用いてワークを加工する。具体的には、工具マガジン71のポット72に、ワークの加工に用いられる全ての工具ホルダ2が収容されており、加工部73の主軸に、工具マガジン71に収容されている工具ホルダ2のうちの一つが取り付けられる。工具マガジン71の制御は主にPMC(Programable Machine Controller)装置によって実行され、加工部73の制御は主にNC装置によって実行される。
【0029】
上述のように、マシニングセンタ7は、プログラム上の加工番号に基づいて作動する。これに対し、工具データベース3においては、工具ホルダ2そのものの工具番号に基づいて工具データが管理されている。そのため、工具管理システム1は、マシニングセンタ7での加工前に、工具データベース3上において工具番号と加工番号とをリンクさせる(関連付ける)ことで、工具ホルダ2の一元管理を可能にしている。また、このような一元管理を実現するために、工具寸法測定装置5に、工具ホルダ2のQRコード23を読み取るためのリーダ53を設ける(接続する)とともに、マシニングセンタ7の近傍に、リーダ62付きの端末6を設けている。
【0030】
リーダ53は、工具寸法測定装置5による測定対象の工具ホルダ2に付与されたQRコード23を読み取る。リーダ62は、工具マガジン71に取り付ける工具ホルダ2または工具マガジン71から取り外す工具ホルダ2に付与されたQRコード23を読み取る。リーダ53,62は、たとえば光学式の読み取り手段である。
【0031】
端末6は、たとえば操作パネル61が設けられたタブレット端末により構成されている。端末6は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、各種プログラムおよびデータを記憶するメモリ、および、通信インターフェイスを有する情報処理装置である。端末6は、IPC(intelligent Process Control)とも称される。なお、マシニングセンタ7が複数存在する場合、マシニングセンタ7と端末6とは1対1で設けられることが望ましい。
【0032】
以下に、工具管理システム1の機能構成および動作について、詳細に説明する。なお、本実施の形態において、マシニングセンタ7は、工具マガジン71に取り付けられた工具ホルダ2の摩耗を測定する機能を有しているものとする。
【0033】
<機能構成について>
図2および
図3を参照して、工具管理システム1の機能構成について説明する。
図2は、工具管理システム1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3は、各種データのデータ構造例を示す図である。
【0034】
図3(A)を参照して、工具データベース3は、管理対象の工具ホルダ2の個数(n個)分の工具データ30を格納している。各工具データ30は、複数の項目I1~I7を有している。項目I1は、マシニングセンタ(M/C)7の識別子(以下「機械番号」という)を記憶する。項目I2は、プログラム上の加工番号(TNo.)を記憶する。項目I3は、形状に関する工具長の補正値を記憶する。項目I4は、形状に関する工具径の補正値を記憶する。項目I5は、摩耗状態に関する工具長の補正値を記憶する。項目I6、摩耗状態に関する工具径の補正値を記憶する。項目I7は、工具寿命値を記憶する。工具寿命値は、工具ホルダ2に固定された工具21の使用時間または使用回数などに基づき算出される。なお、各工具データ30は、工具種類を記憶する項目をさらに有している(図示せず)。
【0035】
工具寸法測定装置5による測定前の段階において、機械番号の項目I1および加工番号の項目I2はNULL(=0)である。なお、マシニングセンタ7の個数が一つの場合には、機械番号の項目I1は工具データ30に含まれなくてもよい。
【0036】
工具データベース3は、ネットワーク9に接続された装置からアクセス可能であればよい。工具データベース3は、たとえば端末6において管理されてもよいし、クラウド上で管理されてもよい。
【0037】
(工具寸法測定装置について)
図1および
図2(A)を参照して、工具寸法測定装置5は、マシニングセンタ7でのワークの加工に用いられる工具ホルダ2の形状を測定する際に実行される機能として、検索部501と、測定処理部502と、更新部503と、作成部504とを含む。
【0038】
検索部501は、リーダ53により読み取られたQRコード23によって、測定対象の工具ホルダ2の工具番号を特定し、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられている工具データ30を検索する。リーダ53によるQRコード23の読み取りは、プログラム上の加工番号が指定された状態で行われる。検索された工具データ30は、メモリに展開される。
【0039】
測定処理部502は、測定部51のスケールカウンタによって、工具ホルダ2の形状の測定処理を実行し、その測定結果を、メモリ上に展開されている工具データ30の項目I3およびI4に入力する。具体的には、
図3(A)を参照して、工具長の項目I3に、スケールカウンタのZ値を入力し、工具径の項目I4に、スケールカウンタのX値を入力する。
【0040】
更新部503は、測定処理部502による測定結果に基づいて、工具データベース3の更新処理を行う。このとき、更新部503は、検索部501において特定された工具番号と、測定対象の工具ホルダ2の加工番号(すなわち、指定された加工番号)とをリンクさせる。具体的には、メモリ上に展開されている工具データ30の項目I2に、指定されている加工番号を入力してから、工具データベース3上の対象の工具データ30を展開されている工具データ30の情報に書き換える。
【0041】
なお、工具寸法測定装置5によって工具ホルダ2の形状を測定する段階において、摩耗状態に関する項目I15およびI16をNULL(=0)にする。また、工具ホルダ2に保持された工具21が新しい工具である場合には、工具寿命に関する項目I17はNULL(=0)である。
【0042】
作成部504は、上述のように、測定処理部502による測定結果に基づいて、工具レイアウトデータ54を作成する。工具レイアウトデータ54は、自装置のメモリ505に格納される。工具レイアウトデータ54は、端末6に転送され、端末6内のメモリ(図示せず)に格納されてもよい。
【0043】
なお、上述の各部501~504の機能は、典型的にはプロセッサがソフトウェアを実行することにより実現される。
【0044】
(端末について)
図1および
図2(B)を参照して、端末6は、工具マガジン71への工具ホルダ2の着脱時に実行される機能として、検索部601と、送受信部603と、更新部604とを含む。
【0045】
検索部601は、工具マガジン71に工具ホルダ2を取り付ける際、または、取り外す際に、リーダ62により1本ずつ読み取られたQRコード23によって工具番号を特定し、その工具番号に対応する工具データ30を検索する。検索された工具データ30は、メモリ上に展開される。
【0046】
ここで、工具マガジン71への工具ホルダ2の取り付け/取り外し位置は固定である。つまり、工具マガジン71の所定の位置(
図1において円Cで囲む位置、以下「工具交換位置」という。)に位置するポット72においてのみ、工具ホルダ2の着脱が可能となっている。
【0047】
工具ホルダ2の取り付け時、リーダ62で1本ずつQRコード23を読み取って、送受信部603からネットワークを介してマシニングセンタ7のマガジンテーブル74および補正値テーブル75に、(検索された)工具データ30の情報を入力する。この結果、全てのマガジンテーブル74および補正値テーブル75に、ワークの加工に必要なデータが自動的に入力される。
【0048】
マガジンテーブル74のデータ構造例が
図3(B)に示され、補正値テーブル75のデータ構造例が
図3(C)に示されている。
【0049】
図3(B)に示されるように、マガジンテーブル74は、工具ホルダ2が取り付けられているポット72の識別番号と、加工番号(TNo.)とを1対1で対応付けて記憶している。加工番号のデータは、工具データ30の項目I2から読み取られたデータである。
【0050】
図3(C)に示されるように、補正値テーブル75は、加工番号(TNo.)と、少なくとも補正値に関するデータとを対応付けて記憶している。補正値に関するデータは、工具データ30の項目I3~I6から読み取られたデータである。補正値テーブル75には、工具データ30の項目I7に記録された工具寿命データがさらに含まれてもよい。本実施の形態では、補正値テーブル75は、工具データ30の項目I3~I7にそれぞれ対応する項目I13~I17を有している。
【0051】
このように、マシニングセンタ7のマガジンテーブル74および補正値テーブル75は、工具番号ではなく加工番号を基に管理されている。なお、マガジンテーブル74はPMC装置702のメモリ704に格納され、補正値テーブル75はNC装置703のメモリ705に格納されている。
【0052】
本実施の形態では、上述のように、端末6の送受信部603によって、工具番号と関連付けられた加工番号が、マシニングセンタ7で用いられるマガジンテーブル74に入力される。また、工具データベース3上において工具番号に対応付けられた工具データの補正値および工具寿命データが、マシニングセンタ7で用いられる補正値テーブル75に入力される。つまり、工具番号と関連付けられた加工番号対応の補正値テーブル75に、補正値および工具寿命データが入力される。このように、送受信部603は、(第1および第2の)データ入力手段として機能する。
【0053】
また、送受信部603は、マシニングセンタ7での加工制御に用いるNCプログラム41を切り替える場合など、工具マガジン71から工具ホルダ2を取り外す際に、マシニングセンタ7から補正値テーブル75のデータを受信する。
【0054】
工具ホルダ2の取り外し時においても、工具交換位置に移動させたポット72から取り外した工具ホルダ2のQRコード23を、リーダ62で1本ずつ読み取る。
【0055】
更新部604は、工具マガジン71から工具ホルダ2を取り外す際に、リーダ62で特定された工具番号を見出しとする工具データベース3上の工具データ30の情報を、補正値テーブル75の情報に更新する。上述のように、工具データ30が加工番号の項目I2を有しているため、リーダ62によって工具番号を特定することで、補正値テーブル75から対象となる工具径補正値(摩耗)のデータおよび工具寿命データを抽出することができる。これにより、更新部604は、特定された工具番号に対応する工具データ30の情報(項目I5~I7の情報)を、当該特定された工具番号に関連付けられた加工番号についての補正値テーブル75の情報(I15~I17の情報)に書き換えることができる。
【0056】
更新部604は、工具データ30の補正値情報を書き換えるととともに、工具データベース3上における、工具番号と加工番号とのリンクを解除する。つまり、工具データ30の項目I2から加工番号をゼロクリアする。また、マシニングセンタ7のPMC装置702に、送受信部603を介して、該当ポット番号のマガジンテーブル74の加工番号をゼロクリアするよう指示する。
【0057】
端末6は、さらに、マシニングセンタ7での加工制御に用いるNCプログラム41を切り替える場合に実行される機能として、比較部605および表示部606を含んでいてもよい。比較部605および表示部606が実行する処理については後述する。
【0058】
なお、送受信部603は主に通信インターフェイスにより構成され、表示部606は操作パネル61により構成される。他の各部601,604,606の機能は、典型的にはプロセッサがソフトウェアを実行することにより実現される。
【0059】
(マシニングセンタについて)
図1および
図2(C)を参照して、マシニングセンタ7は、機械の制御を行うPMC装置702と、NC制御を行うNC装置703とを含んでいる。マシニングセンタ7は、工具マガジン71への工具ホルダ2の着脱時に実行される機能として、送受信部701を含む。送受信部701は主に通信インターフェイスにより構成される。
【0060】
送受信部701は、工具マガジン71に工具ホルダ2を取り付ける際に、端末6から工具データ30を受信する。上記したように、受信した工具データ30の情報が、マガジンテーブル74および補正値テーブル75に入力される。
【0061】
NC装置702は、加工部73の主軸に取り付けられた工具ホルダ2の摩耗を、加工後に測定する測定部706を有している。そのため、補正値テーブル75の摩耗状態に関する補正値データが、測定部706の測定結果に応じて書き換えられる。具体的には、NC装置703において、測定部706による測定結果に応じた工具長/工具径補正値(摩耗)が、当初ゼロであった補正値テーブル75の項目I15,I16に記録される。
【0062】
送受信部701はまた、工具マガジン71から工具ホルダ2を取り外す際に、端末6からの要求に応じて、メモリ705から補正値テーブル75内の摩耗状態に関する補正値データすなわち工具長/工具径補正値(摩耗)のデータ、および、工具寿命データを読み出して、端末6に送信する。
【0063】
<動作について>
図4~
図7を参照して、工具管理システム1の動作について説明する。
【0064】
(工具寸法測定装置において工具寸法を測定する際の手順)
図4は、工具寸法測定装置5において新たなNCプログラム41に使用する工具ホルダ2の寸法を測定する際の手順を示すフローチャートである。
【0065】
図1、
図2(A)および
図4を参照して、まず、オペレータが操作パネル52を介して、使用するマシニングセンタ7を選択する(ステップS11)。次に、工具寸法測定装置5のプロセッサが、NCプログラム41に対応する対応リスト42より、工具レイアウトデータを作成する(ステップS12)。
【0066】
オペレータは、対応リスト42に記述された加工番号(TNo.)のうちの一つを入力し(ステップS13)、対応リスト42を参照して、必要な工具ホルダ2に切削工具21を取り付ける(ステップS14)。オペレータは、リーダ53を用いて、工具21が取り付けられた測定対象の工具ホルダ2のQRコード23を読み込む(ステップS15)。これにより、検索部501が、測定対象の工具ホルダ2の工具番号を特定し、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられた工具データ30を検索および抽出する。
【0067】
オペレータによって測定部51に工具ホルダ2がセットされると、工具寸法測定装置5の測定処理部502が工具ホルダ2のX値(工具長)およびZ値(工具径)を測定する(ステップS16)。
【0068】
測定処理が終わると、工具寸法測定装置5の更新部503によって、以下の工具データが工具データベースに登録される(ステップS17)。すなわち、更新部503は、対象の工具データ30の項目I1に、ステップS11で選択されたマシニングセンタ7の機械番号を登録し、項目I2に、ステップS13で入力された加工番号を登録する。これにより、工具番号と加工番号とがリンクする。更新部503はまた、項目I3およびI4に、ステップS16での測定結果に基づき、工具長補正値および工具径補正値をそれぞれ入力する。このとき、項目I5およびI6の摩耗状態に関する工具長補正値および工具径補正値はゼロクリアする。
【0069】
更新部503によって対象の工具データ30の更新が完了すると、次の加工番号があるか否かを判断する(ステップS18)。次の加工番号がある場合、ステップS13に戻り、上記処理を繰り返す。次の加工番号がない場合、すなわち対応リスト42に記述された全ての加工番号に対する処理が完了した場合、マシニングセンタ7で使用される、加工番号対応の工具レイアウトデータ54が完成する(ステップS19)。
【0070】
(工具マガジンに工具ホルダを取り付ける際の手順)
図5は、マシニングセンタ7の工具マガジン71に工具ホルダ2を取り付ける際の手順を示すフローチャートである。
【0071】
図1、
図2(B)および
図5を参照して、まず、オペレータは、工具マガジン71を回転させて、工具交換位置に空のポット72を移動させる(ステップS21)。
【0072】
端末6のリーダ62を用いて、取り付ける工具ホルダ2のQRコード23を読み込む(ステップS22)。これにより、端末6の検索部601が、挿入対象の工具ホルダ2の工具番号を特定し、特定された工具番号をキーとして工具データベース3を検索する。すなわち、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられた工具データ30を検索および抽出する。抽出された工具データ30の情報が、操作パネル61に表示される。
【0073】
表示された工具データ30の情報の確認が終わり、マシニングセンタ7への登録を指示すると、確認した工具データ30のデータが、マガジンテーブル74および補正値テーブル75に自動で入力される(ステップS23)。つまり、送受信部603を介して、工具データベース3上において、特定された工具番号と関連付けられた加工番号を、マガジンテーブル74に入力する。また、工具データベース3上において、特定された工具番号に対応付けられた工具データ30の工具長/工具径補正値(形状/摩耗)および工具寿命値を、特定された工具番号と関連付けられた加工番号対応の補正値テーブル75に入力する。
【0074】
オペレータは、工具交換位置にあるポット72に、工具ホルダ2を取り付ける(ステップS24)。
【0075】
工具レイアウトデータ54に記述された加工番号に関連付けられた工具番号の工具ホルダ2の全ての取り付けが終了するまで(ステップS25)、上記ステップS21~S24の処理を繰り返す。
【0076】
(工具マガジンから工具ホルダを取り外す際の手順)
図6は、マシニングセンタ7の工具マガジン71から工具ホルダ2を取り外す際の手順を示すフローチャートである。
【0077】
図1、
図2(B)および
図6を参照して、まず、オペレータは、工具マガジン71を回転させて、工具交換位置に取り外す工具ホルダ2を移動させる(ステップS31)。
【0078】
工具交換位置にある工具ホルダ2を取り外すと(ステップS32)、端末6のリーダ62を用いて、取り外した工具ホルダ2のQRコード23を読み込む(ステップS33)。これにより、端末6の検索部601が、取り外した工具ホルダ2の工具番号を特定し、工具データベース3においてその工具番号に対応付けられた工具データ30を検索および抽出する。抽出された工具データ30の情報が、操作パネル61に表示される。
【0079】
次に、端末6が、取り外した工具ホルダ2の最新の工具長/工具径補正値(摩耗)のデータおよび工具寿命データをマシニングセンタ7から受信し、工具データ30を書き換える(ステップS34)。具体的には、端末6は、工具データ30の項目I2に記録された加工番号対応のデータの送信をマシニングセンタ7に要求し、マシニングセンタ7から、当該加工番号に対応付けられた補正値テーブル75のデータ、すなわち工具長/工具径補正値(摩耗)のデータおよび工具寿命データ(項目I15~I17のデータ)を取得する。これにより、更新部604が、取得したデータによって工具データ30を書き換えて、工具データベース3に反映する。つまり、工具データベース3上の工具データ30を、マシニングセンタ7上のデータに従って更新する。なお、マシニングセンタ7では、マガジンテーブル74の該当ポット番号の加工番号をゼロクリアする処理が行われる。
【0080】
更新部604は、具体的には、工具データベース3の項目I5,I6の摩耗状態に関する補正値を更新する。また、項目I7の工具寿命値を、加工後の値に更新する。工具データ30および補正値テーブル75に工具使用値が含まれる場合には、その値も更新する。このとき、更新部604は、工具データ30の項目I1の機械番号をゼロクリアするとともに、項目I2の加工番号をゼロクリアする。これにより、工具番号と加工番号とのリンクが解除される。
【0081】
(マシニングセンタで用いる加工プログラムを切り替える際の手順)
図7は、マシニングセンタ7で用いるNCプログラム41を切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【0082】
図1、
図2(B)および
図7を参照して、たとえば端末6において、工具寸法測定装置5により事前に作成された工具レイアウトデータ54のうち、次の加工で用いる工具レイアウトデータ54を選択する(ステップS41)。次に、新たなNCプログラム41での加工に用いるマシニングセンタ7を選択する(ステップS42)。端末6とマシニングセンタ7とが1対1の関係である場合には、マシニングセンタ7の選択は不要である。
【0083】
比較部605は、選択された新たな工具レイアウトデータ54上の加工番号と、対象のマシニングセンタ7のマガジンテーブル74上の加工番号とを比較する(ステップS43)。具体的には、新たな工具レイアウトデータ54の加工番号と、マガジンテーブル74上の加工番号とを比較する。
【0084】
比較の結果、加工番号が一致する工具ホルダ2は、工具マガジン71に残してよい工具ホルダと判断でき、加工番号が一致しない工具ホルダ2を、工具マガジン71から取り外してよい工具ホルダとして判断できる。表示部606は、取り外す工具ホルダのリスト、および、残しておいてよい工具ホルダのリストを一覧表示するとともに(ステップS44,46)、新たな工具レイアウトデータ54に基づいて、新たに組付けして取り付ける工具ホルダのリストを一覧表示する(ステップS45)。
【0085】
なお、比較部605および表示部606の機能は、端末6以外の装置によって実現されてもよい。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態に係る工具管理システム1においては、NCプログラム41上の加工番号と工具ホルダ2に固有の工具番号とを、マシニングセンタ7での加工前(工具ホルダ2のプリセット時)にリンクし、加工終了後、工具マガジン71から工具ホルダ2を取り外す際ににリンクを解除している。そのため、本システム1によれば、加工番号の上限(たとえば999)を超える個数の工具ホルダ2の管理を行うことができる。また、工具ホルダ2のQRコード23は後付けできるため、管理対象の工具ホルダ2の増数にも対応できる。
【0087】
なお、本実施の形態では、工具ホルダ2の付与されるコード情報がQRコード23であることとして説明したが、これに限定されず、たとえば二次元コードなどであってもよい。また、本実施の形態では、コード情報を読み取る読み取り手段が、光学式のリーダであることとしたが、これに限定されず、たとえば画像情報からコード情報を読み取るものであってもよい。また、端末6自体に読み取り手段が搭載されていてもよい。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 工具管理システム、2 工具ホルダ、3 工具データベース、5 工具寸法測定装置、6 端末、7 マシニングセンタ、9 ネットワーク、21 工具、23 QRコード(コード情報)、30 工具データ、41 NCプログラム、42 対応リスト、53,62 リーダ(読み取り手段)、54 工具レイアウトデータ、74 マガジンテーブル、75 補正値テーブル、71 工具マガジン、72 ポット、501,601 検索部、502 測定処理部、503,604 更新部、504 作成部、603,701 送受信部、605 比較部、606 表示部。