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特許7199406リードスイッチ制御装置、及び、これを備えた押しボタンスイッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】リードスイッチ制御装置、及び、これを備えた押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20221223BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
H01H36/00 302J
H01H36/00 301B
H01H13/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020209181
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096209
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2022-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594124281
【氏名又は名称】大光電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593185050
【氏名又は名称】入江 寿一
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】入江 寿一
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-073546(JP,U)
【文献】特公昭48-015272(JP,B1)
【文献】特開2012-221618(JP,A)
【文献】特開2004-342565(JP,A)
【文献】米国特許第4056979(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 36/00 - 36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスイッチのオン・オフを制御するリードスイッチ制御装置において、
前記リードスイッチの電極軸を含む平面上で電極軸方向と直交する方向に磁化されたバイアス磁石と、
前記リードスイッチの電極軸方向と直交する方向に磁化された駆動磁石と、
を備え、
前記バイアス磁石は、その磁力により前記リードスイッチがオンするオン領域とオフするオフ領域との間のヒステリシス領域内、または、その付近に固定され、
前記駆動磁石は、
前記リードスイッチの近傍を通って、当該駆動磁石の磁化方向一方に移動するときそのN磁極またはS磁極のうちの一方の磁極が前記リードスイッチの一方の電極に接近して当該一方の電極を磁化し、前記バイアス磁石によるオン動作を補助して、前記リードスイッチをオンに駆動し、かつ、
前記リードスイッチの近傍を通って当該駆動磁石の磁化方向他方に移動するとき前記N磁極またはS磁極のうちの他方の磁極が前記リードスイッチの当該一方の電極に接近して当該一方の電極を磁化し、前記バイアス磁石によるオン動作を阻止して前記リードスイッチをオフに駆動するものであり、
前記駆動磁石は、その磁化方向および移動方向に長さが短い板状の形状を有する、
ことを特徴とするリードスイッチ制御装置。
【請求項2】
押しボタンと、
前記請求項1に記載のリードスイッチ制御装置と、
前記押しボタンを動かすことで前記駆動磁石をその磁化方向に移動する構造と、
を備えることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスイッチのオン・オフ駆動を制御するリードスイッチ制御装置、及び、このリードスイッチ制御装置を備えた押しボタンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客が少ない路線の電車や気動車には、駅に停車中、不必要に長くドアが開放されたままになって、冬場では暖房による暖気が流出して温度が低下したり、また、夏場では冷房による車内温度が上昇したりするのを防止するために、乗客自らが開閉操作できる半自動ドアを備えたものがある。
【0003】
上記のような車両では、ドア収容部の車外側と車内側とに、それぞれ、ドア開閉用のスイッチとして押しボタンスイッチが設置されている。
【0004】
この種の押しボタンスイッチには、従来、図6に示すものがある。図6において、x、y、zは三次元直交座標系内のx軸、y軸及びz軸を示す。この三次元直交座標系は各図共通である。
【0005】
図6に示す押しボタンスイッチにおいては、ケーシング(図示略)内に固定的に設けられたリードスイッチ2と、ケーシングに対して出没自在に設けられた押しボタン3とを備え、押しボタン3のリードスイッチ2側の面部にはリードスイッチ2を駆動するための磁石4が取り付けられている。この押しボタンスイッチでは、リードスイッチ2がその接点部分を構成する。
【0006】
この押しボタンスイッチでは、押しボタン3の操作に伴い、磁石4により、リードスイッチ2の対向する電極の一方を磁化し、リードスイッチ2の電極間に発生する磁束による磁気吸引力で対向する電極を導通・非導通としてリードスイッチ2をオン・オフ制御するようになっている。
【0007】
なお、図6の押しボタンスイッチにおいて、磁石4の磁極軸の方向は、リードスイッチ2の電極軸のx方向 (長さ方向でもある)と直交するy方向に設定されていて、磁石4の磁極軸におけるN極もしくはS極の一方はリードスイッチ2の側に向いている。
【0008】
上記構成の押しボタンスイッチでは、その接点部分が上記のようにリードスイッチ2であることで、比較的高い電圧での使用が可能となり、電車等の車両に設置することが容易になるほか、リードスイッチ2が押しボタン3の矢印で示す操作方向の変位経路の脇に位置するので、全体の厚みが、押しボタン3の奥行き長さにその変位ストロークを加えた程度の厚みに収まり、薄型化できる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本ハムリン株式会社「リードスイッチの知識」玄同社 昭和55年
【文献】特開2001-184973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、リードスイッチ制御装置をリードスイッチ2と磁石4とで構成する場合、リードスイッチ2に対する磁石4の作用には、改良の余地があり、リードスイッチ2のオン・オフ動作の確実性を損なうことなく、さらに押しボタン3の移動ストロークを短くし、薄型にすることが望まれる。
【0011】
以下、従来のリードスイッチ制御装置(1)(2)の動作と課題について述べる。
【0012】
従来のリードスイッチ制御装置(1)におけるリードスイッチ2と磁石4との配置は、図7(a)(b)の配置図のようになる。図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。これらの図において、リードスイッチ2の電極軸方向はx方向であり、磁石4の磁極方向は、y方向に設定され、磁石4は、z方向に移動するようになっている。また、図7(a)においてz軸は紙面を垂直に貫通する軸方向であり、図7(b)においてx軸は紙面を垂直に貫通する軸方向である。
【0013】
押しボタン3が押され、それに伴い、磁石4が図7(b)のように破線4´で示す位置から実線で示す位置z=0に移動すると、磁石4はリードスイッチ2に最接近しているので磁化力は最大で、リードスイッチ2はオンの状態である。
【0014】
磁石4の位置がz=0の位置から増加もしくは減少するにつれてリードスイッチ2に対する磁化力は緩やかに減少し、さらに離れた位置ではリードスイッチ2はオフとなる。
【0015】
磁石4がz軸上の位置z=0に向って移動するときは、磁化力がオン磁化力以上になった位置で、リードスイッチ2はオンとなる。
【0016】
このように、磁石4の磁極方向がy方向で、磁石4がz方向に移動する方式では、磁化力の変化が緩やかであるから、リードスイッチ2をオン・オフするための磁石4の移動距離が長くなる。そのため、このリードスイッチ制御装置では、押しボタン3の操作ストロークが長くなり、この方式による押しボタンスイッチでは、その薄型化に限度がある。
他の制御方式として、図8を参照して、リードスイッチ制御装置(2)の動作を非特許文献1に従って説明する。
【0017】
このリードスイッチ制御方式(2)においては、磁石4(M)の磁極方向はy方向で、磁石4はあるx方向の位置でy方向に移動することができるようになっている。
【0018】
図8中、ONはオン境界線であり、このオン境界線ONより内側の領域は、リードスイッチ2がオンするオン領域である。電極軸がx方向に配置されたリードスイッチ2は、磁石4がオン領域にあるときは、オンである。
【0019】
図8中、OFFはオフ境界線であり、このオフ境界線OFFより外側の領域は、リードスイッチ2がオフするオフ領域である。リードスイッチ2は、磁石4がオフ領域にあるときは、オフである。
【0020】
2つの境界線ONとOFFとの間は、ヒステリシス領域であり、磁石4がヒステリシス領域にあるときは、リードスイッチ2は、磁石4がヒステリシス領域に入る以前のオン・オフ状態を保つ。
【0021】
リードスイッチ制御装置(2)による方式では、オン境界線ONとオフ境界線OFFとの間におけるヒステリシス領域の幅がy方向に比較的広い。
【0022】
ヒステリシス領域の幅が広いと、押しボタンの操作に伴う磁石4の動く方向をy方向とすれば、リードスイッチ2をオン・オフさせるためには、磁石4が、広い領域幅のヒステリシス領域を通り越すように押しボタンを操作する必要があるため、その操作方向においての押しボタンの操作ストロークが大きくなり、押しボタンスイッチの薄型化が困難になる。
【0023】
本発明の主たる目的は、押しボタンスイッチに備えられるリードスイッチ制御装置において、押しボタンスイッチが備える押しボタンの操作ストロークが短くて済むと共に、押しボタンスイッチの薄型化を図ることができるリードスイッチ制御装置と、これを備えた押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(1)本発明に係るリードスイッチ制御装置は、上述の目的を達成するため、
リードスイッチのオン・オフを制御するリードスイッチ制御装置において、
前記リードスイッチの電極軸を含む平面上で電極軸方向と直交する方向に磁化されたバイアス磁石と、
前記リードスイッチの電極軸方向と直交する方向に磁化された駆動磁石と、
を備え、
前記バイアス磁石は、その磁力により前記リードスイッチがオンするオン領域とオフするオフ領域との間のヒステリシス領域内、または、その付近に固定され、
前記駆動磁石は、
前記リードスイッチの近傍を通って、当該駆動用磁石の磁化方向一方に移動するときそのN磁極またはS磁極のうちの一方の磁極が前記リードスイッチの一方の電極に接近して当該一方の電極を磁化し、前記バイアス磁石によるオン動作を補助して、前記リードスイッチをオンに駆動し、かつ、
前記リードスイッチの近傍を通って当該駆動用磁石の磁化方向他方に移動するとき前記N磁極またはS磁極のうちの他方の磁極が前記リードスイッチの当該一方の電極に接近して当該一方の電極を磁化し、前記バイアス磁石によるオン動作を阻止して前記リードスイッチをオフに駆動することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、駆動磁石を、その磁化方向一方に移動してバイアス磁石の磁化を補助して、磁化を強めると、バイアス磁石それ自体は固定されてヒステリシス領域またはその付近に固定されていても、当該バイアス磁石が、あたかも、前記オン領域に入ったと同様となり、これにより、リードスイッチはオンに駆動される。また、駆動磁石を、その磁化方向他方に移動してバイアス磁石の磁化が弱まると、バイアス磁石それ自体は固定されてヒステリシス領域またはその付近に固定されていても、当該バイアス磁石が、あたかも、オフ領域に入ったと同様となって、リードスイッチをオフに駆動できる。
【0026】
従って、本発明によれば、駆動磁石の磁力は、バイアス磁石の磁化力を補助、またはバイアス磁石の磁化力に反抗することで、リードスイッチのオン・オフ動作を制御すればよいので、駆動磁石は、磁力が小さい小型の磁石で、かつ、その磁化方向の長さを短くすることが可能となり、これにより、駆動磁石の移動距離を短くし、これに伴い、駆動磁石を移動させる押しボタンの操作ストロークが短くて済み、これにより、リードスイッチ制御装置を備える押しボタンスイッチの薄型化を図ることができるようになる。
【0027】
また、本発明によれば、バイアス磁石を固定し、駆動磁石でバイアス磁石の磁化を補助し、または、弱めることにより、駆動磁石の移動方向はバイアス磁石の磁化方向とは別の方向にすることができるから、本発明のリードスイッチ制御装置を押しボタンスイッチに採用すると、バイアス磁石と駆動用磁石とリードスイッチとを互いに接触にして、それらが相互に摩擦する箇所を無くし、押しボタンスイッチの長寿命化を図ることができる。
【0028】
本発明では、好ましくは、前記駆動磁石は、磁化方向および駆動方向に長さが短い板状の形状を有し、前記リードスイッチをオンまたはオフに駆動するために必要とされる移動距離を小さく設定することが可能となっている。
【0029】
(2)本発明に係る押しボタンスイッチは、押しボタンと、本発明のリードスイッチ制御装置と、前記押しボタンを動かすことで前記駆動磁石を磁化方向に移動する構造とを有することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、上記リードスイッチ制御装置を用いるので、押しボタンの操作ストロークが短く、薄型の押しボタンスイッチを提供することができ、電車や気動車のドア開閉用のスイッチとして押しボタンスイッチに採用すると、ドア開閉操作を容易に行うことでき、より薄型で長寿命の押しボタンスイッチを得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
(1)本発明のリードスイッチ制御装置によれば、押しボタンスイッチが備える押しボタンの操作ストロークが短くて済むと共に、押しボタンスイッチの薄型化を図ることができるリードスイッチ制御装置を提供することができる。
【0032】
また、本発明のリードスイッチ制御装置によれば、リードスイッチ制御装置を備える押しボタンスイッチにおいて、ドア開閉のための押しボタン操作を容易に行うことが可能で、かつ、押しボタンスイッチの長寿命化に寄与できるリードスイッチ制御装置を提供することができる。
【0033】
(2)本発明の押しボタンスイッチによれば、電車や気動車のドア開閉用に採用した場合、ドア開閉操作を容易に行うことができると共に、薄型長寿命の押しボタンスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1(a)(b)は、それぞれ、本発明の実施形態に係るリードスイッチ制御装置の平面図と側面図である。
図2図2は、実施形態のリードスイッチ制御装置において、図8に示すリードスイッチのオン・オフ境界特性を示す図である。
図3図3は、実施形態のリードスイッチ制御装置の動作説明に供する図である。
図4図4は、実施形態のリードスイッチ制御装置の動作説明に供する図である。
図5図5は、実施形態のリードスイッチ制御装置を備える押しボタンスイッチの斜視図である。
図6図6は、従来の押しボタンスイッチの概略斜視図である。
図7図7(a)(b)は、それぞれ、従来の押しボタンスイッチの磁石とリードスイッチとの配置を示す平面図と側面図である。
図8図8は、リードスイッチと直交しリードスイッチに向かう方向に磁化した磁石の位置と,リードスイッチのオン・オフ境界特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係るリードスイッチ制御装置の構成を示す。同図(a)はその平面図、同図(b)はその側面図である。
【0037】
本実施形態に係るリードスイッチ制御装置を備える押しボタンスイッチは、押しボタン(図示略)と、押しボタンが出没するケーシング(図示略)とを備える。特には図示しないが、押しボタンは、z方向への押し込み操作あるいは押し込み操作の解除により、ケーシング内外を出没するように構成されている。
【0038】
図1において、符号1は、リードスイッチ制御装置全体を示す。このリードスイッチ制御装置1は、リードスイッチ2のオン・オフを制御する装置であり、バイアス磁石4と、駆動磁石42とを備える。
【0039】
リードスイッチ2は、その電極軸方向(長手方向)がx方向でケーシング内に固定され、押しボタンがその操作によりケーシング内外を出没するとき、駆動磁石42は、押しボタンの操作に伴い、ケーシング内において、x方向とy方向とに一定の間隔を保ちながらz方向に移動する。
【0040】
リードスイッチ2は、右側電極21と、左側電極22とを含み、その間のギャップ23に接点が設けられ、両電極21、22は不活性ガスと共にガラス容器24に封入されている。リードスイッチ2のオン・オフ状態は、端子25を通じてガラス容器24外に導かれる。リードスイッチ2のギャップ23は、三次元直交座標系における座標の原点とする。
リードスイッチ2の電極は、x方向において右側電極21と左側電極22とで構成され、リードスイッチ2がオフ状態では両電極21、22間にはギャップ23が介在して両電極21、22は非導通であり、リードスイッチ2がオン状態では両電極21、22は導通している。
【0041】
バイアス磁石4は、その作用は従来の磁石と同様であるが、位置が固定されている。バイアス磁石4は、N磁極とS磁極とからなる磁極軸を有し、この磁極軸の方向はリードスイッチ2の電極軸を含む平面上で電極軸方向に直交するy方向となるように磁化されている。
【0042】
駆動磁石42は、リードスイッチ2の電極軸方向とバイアス磁石4の磁化方向とに直交するz方向に磁化されており、図示しない適宜の磁石移動手段に取り付けられて押しボタンに繋がっており、押しボタンの操作に伴い、磁石移動手段により、その磁化方向に移動可能になっている。
【0043】
すなわち、駆動磁石42の磁極軸は、図1(b)のように、z方向であり、駆動磁石42は、その磁化方向に移動する。駆動磁石42は、リードスイッチ2の近傍において、その右側電極21か、または、左側電極22のいずれか一方に対向しており、z方向に移動するときそのN磁極またはS磁極が、リードスイッチ2の左右両側の電極21,22のうちの一方に接近する。
【0044】
バイアス磁石4の磁力はリードスイッチ2をオンに制御することができる強さがあり、そのx軸上の位置x1が、リードスイッチ2のギャップ23の位置である座標の原点より右側(x>0)に位置すれば、バイアス磁石4の一方の磁極たとえばN磁極がリードスイッチ2の右側の電極21を磁化する。
【0045】
バイアス磁石4は、リードスイッチ2がオンするオン領域とオフするオフ領域との間のヒステリシス領域またはその付近となる位置y1に固定されている。
【0046】
駆動磁石42は、リードスイッチ2の一方の電極である右側の電極21の近くに、または、破線で示す駆動磁石42´のように、リードスイッチ2の他方の電極である左側の電極22の近くに置かれる。
【0047】
駆動磁石42は、z方向に動くことによって、そのN磁極またはS磁極がリードスイッチ2に近づく。
【0048】
一例として、バイアス磁石4と駆動磁石42それぞれのN・S磁極は、図1(a)(b)のように配置される。バイアス磁石4のN磁極はリードスイッチ2の右側の電極21をN極性に磁化し、リードスイッチ2の動作におけるヒステリシス領域にあるとする。
【0049】
駆動磁石42が図1(b)のようにリードスイッチ2の脇(z=0)を通って右方向(0<z)に移動したとき、駆動磁石42のN磁極がリードスイッチ2に近づき、リードスイッチ2の右側の電極21をN極性に磁化する。バイアス磁石21の磁化を助けて、リードスイッチ2はオンとなる。
【0050】
駆動磁石42が図1(b)でリードスイッチ2の脇を通って-z方向、すなわち左方(z<0)に移動したとき、駆動磁石42のS磁極がリードスイッチ2に近づき、リードスイッチ2の電極21をS極性に磁化する。これにより、バイアス磁石4のN磁極によるリードスイッチ2の右方の電極21の磁化が弱められ、リードスイッチ2はオフとなる。
【0051】
駆動磁石42は、図1(b)に示すように、側面視が矩形をなす板状の磁石であり、その厚さ方向はz方向である。この厚さ方向は、駆動磁石42の磁化方向であり駆動方向である。駆動磁石42は、上記形状により磁化方向および駆動方向の長さが短くなり、これにより、リードスイッチ2をオンまたはオフに駆動するに必要な移動距離が小さく設定可能となる。
【0052】
以下、更に詳細に説明する。
【0053】
本実施形態では、バイアス磁石4の位置とリードスイッチ2のオン領域とオフ領域とに関して、図9に示す制御特性のうち0<XまたはX<0の一方の特性を使用する。図2図9のオン領域とオフ領域それぞれの特性を再掲している。
【0054】
図2において、ONはオン領域とヒステリシス領域との間の境界を定めるオン境界線、OFFはオフ領域とヒステリシス領域との間の境界を定めるオフ境界線、xMはバイアス磁石4のx軸上の位置、yMはバイアス磁石4のy軸上の位置を示す。オン領域は、バイアス磁石4がリードスイッチ2に近くて、バイアス磁石4のy軸上の位置yMがオン境界線ONの内側の領域である。オフ領域は、バイアス磁石4がリードスイッチ2から遠くて、バイアス磁石4のy軸上の位置yMがオフ境界線OFFの外側の領域である。バイアス磁石4のy軸上の位置yMがオン境界線ONとオフ境界線OFFとの間の領域はヒステリシス領域である。
【0055】
バイアス磁石4がリードスイッチ2に対してx方向に一定の距離xMを保ち、y方向の位置yMが変化し、この位置yMがオフ境界線OFFの外のオフ領域にあるとードスイッチ2はオフとなり、オン境界線ONの内のオン領域にあるとリードスイッチ2はオンとなる。バイアス磁石4が、境界線OFFと境界線ONとの間のヒステリシス領域にあると、リードスイッチ2はヒステリシス動作をする。
【0056】
バイアス磁石4のx方向の中央位置xMが、図2に示すように座標原点の近くで2つのオン・オフ境界線ON,OFF間のヒステリシス領域内、または、その付近にあるとき、バイアス磁石4のy方向の位置によっては、リードスイッチ2のオン・オフが変化する。
この現象を以下に説明する。
【0057】
バイアス磁石4のx軸上の中央位置xMが、y軸上、すなわち、x=0のギャップ23の位置より右方にあるときは、バイアス磁石4はリードスイッチ2の右側の電極21をNに磁化し、磁束はリードスイッチ2の右側の電極21からギャップ23を通り、ギャップ23を閉じるように吸引力を生じる。
【0058】
バイアス磁石4のy軸上の位置yMが小さく磁化が強いときは、リードスイッチ2のギャップ23が閉じてリードスイッチ2はオンとなる。
【0059】
バイアス磁石4のy軸上の位置yMが大きいときはバイアス磁石4のリードスイッチ2の電極21に対する磁化が弱くリードスイッチ2はオフとなる。
【0060】
ギャップ23が閉じていると磁束は通りやすく吸引力は大きくなり、開いているときは吸引力が小さいので、オン領域とオフ領域との間はヒステリシス領域となる。
【0061】
バイアス磁石4のx軸上の中央位置xMが、リードスイッチ2のギャップ23の真上にあるxM=0付近では、バイアス磁石4は、リードスイッチ2の左右の電極21、22を同極性に磁化するので、バイアス磁石4の磁束は、リードスイッチ2のギャップ23を通らずリースイッチ2は常にオフである。
【0062】
バイアス磁石4のx軸上の中央位置xMがy軸すなわちx=0のギャップ位置より左方にあるときは、磁束の流れが左右逆になるが、リードスイッチ2のオン・オフ特性はバイアス磁石4のx軸上の中央位置xMがx=0のギャップ位置より右方にあるときと同じで、オン・オフ領域特性は左右対称となる。
【0063】
バイアス磁石4は図2のようにヒステリシス領域に固定されているとする。
【0064】
図2では、バイアス磁石4の配置について説明したが、図3及び図4を参照して、駆動磁石42が配置されている場合を説明する。
【0065】
まず、図3に示すように、リードスイッチ2のギャップ23に磁束を生じさせるバイアス磁石4のx軸上の中央位置xMがx1で、y軸上の位置yMがy1であるとき、リードスイッチ2の右側電極21はN極性に磁化されている。
【0066】
このとき、駆動磁石42のN磁極がリードスイッチ2の右側電極21に近づき、この右側電極21をN極性に磁化している場合を考えると、バイアス磁石4がヒステリシス領域に固定されていても、バイアス磁石4が点線で示す位置4´に移動してバイアス磁石4のy軸上の位置y1が小さくなった場合と同等で、リードスイッチ2の動作点はヒステリシス領域からオン領域に移動することが出来る。
【0067】
駆動磁石42のS磁極が位置42´で示すようにリードスイッチ2の左側電極22に近づいた場合も、リードスイッチ2の一方の電極21の磁化と他方の電極22の磁化との差が大きくなり、ギャップ23の磁束の流れを強め、リードスイッチ2をオンにする。その結果、駆動磁石42のS磁極は、駆動磁石42のN磁極と同等の作用を持つ。
【0068】
図4は、図3の場合とは逆に、駆動磁石42のS磁極をリードスイッチ2の右側電極21に近づけるか、駆動磁石42のN磁極を点線の位置42´´で示すようにリードスイッチ2の左側電極22に近づけた場合で、リードスイッチ2の右側電極21をS極性に磁化し、またはリードスイッチ2の左側電極22をN極性に磁化し、ギャップ23における左右電極21、22の磁化の差を小さくし、磁束を少なくして吸引力を小さくし、リードスイッチ2をオフに導いている。
【0069】
そのためバイアス磁石4がヒステリシス領域に固定されていても、駆動磁石42の上記移動により、バイアス磁石4を点線で示す位置4´´にリードスイッチ2から離した場合と同様に、リードスイッチ2の動作点をオフの領域に移動させることができる。
【0070】
上記2つを総合すると、バイアス磁石4がヒステリシス領域に固定されていても、駆動磁石42のNまたはS磁極をリードスイッチ2の右側電極21または左側電極22に近づけることによって、リードスイッチ2の動作点をオン領域またはオフ領域に移動させることが出来る。
【0071】
このように磁化力が弱い駆動磁石42をz方向に動かしてリードスイッチ2の電極21,22の一方をNまたはS極に磁化すれば、バイアス磁石4がヒステリシス領域に固定されていても、リードスイッチ2をオンまたはオフに駆動できる。
【0072】
図5は本発明のリードスイッチ制御装置を有する押しボタンスイッチの主要部を示す斜視図である。この押しボタンスイッチ6は、リードスイッチ2をオン・オフ制御するリードスイッチ制御装置1、矢印方向(z方向)に押し操作が可能な押しボタン3、及び、y方向の中央部が押しボタン3により下方(z方向)に押されるバネ5を備える。リードスイッチ制御装置1は、バイアス磁石4と、駆動磁石42とを有する。
【0073】
この押しボタンスイッチ6において、バイアス磁石4は、y方向に磁化され、リードスイッチ2がオン・オフ動作においてヒステリシス動作する位置(ヒステリシス領域)またはその付近に固定される。駆動磁石42は、上下方向(z方向)に磁化されている。駆動磁石42は、板バネ5のy方向の前端に取り付けられ、板バネ5のたわみに従い、そのy方向の前端側が、リードスイッチ2の脇を通ってz方向に移動し、そのN磁極またはS磁極がリードスイッチ2に接近する。
【0074】
板バネ5はy方向の右端(後端)が固定され、y方向の中央部が押しボタン3に押され、または、戻されることによってz方向にたわみ、その前端に取り付けられた駆動磁石42をz方向に移動させ、リードスイッチ2をオン・オフする。
【0075】
上記押しボタンスイッチ6によれば、押しボタン3をy方向に押し込み操作すると、板バネ5の前端側がz方向下方にたわみ、板バネ5の前端側に固定されている駆動磁石42は、磁化方向であるz方向に移動して、上述の原理により、リードスイッチ2がオン・オフする。
【0076】
上記押しボタンスイッチ6によれば、押しボタン3の操作ストロークを、板バネ5により拡大して、リードスイッチ2をオン・オフ駆動することができ、押しボタンの3の操作ストロークが短くなると共に、押しボタン3の操作方向において薄型の押しボタンスイッチ6を提供することができる。これにより、当該押しボタンスイッチ6を電車や気動車のドア開閉用のスイッチとして採用すると、ドア開閉操作が容易で、より薄型長寿命の押しボタンスイッチを得ることができる。
【符号の説明】
【0077】
2 リードスイッチ
21 リードスイッチの電極
22 リードスイッチの電極
23 リードスイッチのギャップ
24 リードスイッチのガラス容器
25 リードスイッチの端子
3 押しボタン
4 バイアス磁石
4´ バイアス磁石
4´´ バイアス磁石
42 駆動磁石
42´ 駆動磁石
42´´ 駆動磁石
5 板バネ
ON オン境界線
OFF オフ境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8