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特許7199437等価直列抵抗についての情報を判定する方法およびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】等価直列抵抗についての情報を判定する方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20221223BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20221223BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
G01N27/416 336C
G01N27/327 353Z
G01N27/26 391Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020533015
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084750
(87)【国際公開番号】W WO2019115687
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】17207345.4
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ランバートソン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バウアー-エスピンドラ,クラウス・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エフギン,ザームエール
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】マルクアント,ミヒャエル
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-039526(JP,A)
【文献】特開2004-245839(JP,A)
【文献】特表平05-503158(JP,A)
【文献】特表2008-536139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等価直列抵抗についての情報を判定する方法であって、
-少なくとも1つの励起電圧信号Utargetを生成し、基準抵抗Rrefに直列の少なくとも2つの測定電極(116)に前記励起電圧信号を印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分Umeasuredを判定するステップと、
-前記オーム信号部分から前記等価直列抵抗ESRについての情報を、次の関係
【数1】
にしたがって判定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記励起電圧信号が方形波信号または正弦波信号を含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、前記励起電圧信号が、パルスのような、不連続信号を含む、方法。
【請求項4】
体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法において、前記方法が、請求項1~3のいずれか1項による、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含み、前記等価直列抵抗についての情報を判定する方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、前記励起電圧信号を少なくとも2つの測定電極(116)に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-前記オーム信号部分から前記等価直列抵抗についての情報を判定するステップと、
を含み、
前記方法が、少なくとも1つの電流応答を測定し、前記電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含み、
前記方法が、前記等価直列抵抗についての情報に応じて、前記複素インピーダンス情報を補正する、少なくとも1つの補正ステップを含む、方法。
【請求項5】
少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法であって、前記方法が、請求項1~3のいずれか1項による、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含み、前記等価直列抵抗についての情報を判定する前記方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、前記励起電圧信号を少なくとも2つの測定電極(116)に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-前記オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含み、
前記方法が、前記等価直列抵抗についての情報に応じて、前記励起電圧信号を調節するステップを含む、方法。
【請求項6】
体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、前記方法が、請求項5による、少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法を含み、前記補償する方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、前記励起電圧信号を少なくとも2つの測定電極(116)に印加するステップと、
第1電流応答を測定するステップと、
前記第1電流応答から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-前記オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
前記等価直列抵抗についての情報に応じて前記励起電圧信号を調節するステップと、
を含み、
前記方法が、前記調節した励起電圧信号を前記測定電極(116)に印加し、第2電流応答を測定し、前記第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含む、方法。
【請求項7】
体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、
d)等価直列抵抗についての情報を判定する少なくとも1つのステップであって、
a1)少なくとも1つの第1励起電圧信号を生成し、前記第1励起電圧信号を少なくとも2つの測定電極(116)に印加するステップと、
a2)応答信号を測定するステップと、
a3)前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
a4)前記オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含むステップと、
e)少なくとも1つの検体測定ステップであって、
b1)少なくとも1つの第2励起電圧を生成し、前記第2励起電圧を前記測定電極(116)に印加するステップと、
b2)第2電流応答を測定するステップと、
b3)前記第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定するステップと、
を含む、検体測定ステップと、
f)少なくとも1つの補正ステップであって、
-前記等価直列抵抗についての情報に応じて、前記第2励起電圧を調節するステップ、
-前記等価直列抵抗についての情報に応じて、前記複素インピーダンス情報の一方または双方を補正するステップ、
の内1つ以上を含む、補正ステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する分析デバイス(124)であって、
前記分析デバイス(124)が、少なくとも1つの励起電圧信号Utargetを生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイス(136)を備えており、前記分析デバイス(124)が、少なくとも1つの基準抵抗Rrefを備えており、前記信号生成デバイス(136)が、前記基準抵抗Rrefに直列な少なくとも2つの測定電極(116)に前記励起電圧信号を印加するように構成され、前記分析デバイス(124)が、少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニット(152)を備えており、前記分析デバイス(124)が少なくとも1つの評価デバイス(154)を備えており、前記評価デバイス(154)が、前記応答信号から信号フランクを判定し、前記信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分Umeasuredを判定するように構成され、前記評価デバイス(154)が、次の関係、
【数2】
にしたがって、前記オーム信号部分から等価直列抵抗ESRについての少なくとも1つの情報を生成するように構成される、分析デバイス(124)。
【請求項9】
請求項8記載の分析デバイス(124)において、前記分析デバイス(124)が、更に、前記等価直列抵抗についての情報に応じて、前記励起電圧信号を調節するように構成された少なくとも1つの制御デバイス(158)を備えている、分析デバイス(124)。
【請求項10】
請求項8または9記載の分析デバイス(124)において、前記分析デバイス(124)が少なくとも2つの動作モードで動作するように構成され、第1動作モードにおいて、前記分析デバイス(124)が前記等価直列抵抗についての情報を判定するように構成され、第2動作モードにおいて、前記分析デバイス(124)が前記検体濃度を測定するように構成される、分析デバイス(124)。
【請求項11】
体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する検査エレメント分析システム(112)であって、
請求項8~10のいずれか1項に記載の分析デバイス(124)と、
前記検体についての特性である少なくとも1つの変化を実行することができる少なくとも1つの測定ゾーン(114)を有する少なくとも1つの検査エレメント(110)であって、少なくとも2つの測定電極(116)を含む、検査エレメント(110)と、
を備えている、検査エレメント分析システム(112)。
【請求項12】
請求項11記載の検査エレメント分析デバイス(112)において、前記検査エレメント(110)が検査ストリップである、検査エレメント分析システム(112)。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項による等価直列抵抗についての情報を判定する方法のフェール・セーフのための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価直列抵抗についての情報を判定する方法およびデバイスを開示する。本発明による方法およびデバイスは、身体組織または体液の一方または双方内に存在する少なくとも1つの検体を検出するために使用することができる。特に、この方法およびデバイスは、専門的な診断の分野および家庭における監視の分野双方における、血液、好ましくは、全血、血漿、血清、尿、唾液、間質液、またはその他の体液というような体液における、ぶどう糖、乳酸、中性脂肪、コレステロール、またはその他の検体、好ましくは、代謝物というような1つ以上の検体を検出する分野に適用される。しかしながら、他の応用分野も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
医療技術および診断の分野では、体液において少なくとも1つの検体を検出するデバイスおよび方法が多数知られている。これらの方法およびデバイスは、身体組織または体液の一方または双方に存在する少なくとも1つの検体、具体的には、血液、好ましくは、全血、血漿、血清、尿、間質液、またはその他の体液というような体液における、ぶどう糖、乳酸、中性脂肪、コレステロール、またはその他の検体、好ましくは、代謝物というような1つ以上の検体を検出するために使用することができる。更に、活性化時間(activating time)の測定、例えば、凝固監視のためのトロンビン活性化時間測定のためのデバイスも知られている。本発明の範囲を限定することなく、以下では、一例としてそして好ましい検体として、主に、ぶどう糖の判定について言及する。
【0003】
検体濃度、例えば、血糖の判定、および対応する投薬は、多くの糖尿病患者のための日課の不可欠な部分である。利便性を高めるため、そして許容度を超えて日課を制限するのを回避するために、当技術分野では、作業中、余暇中、または家庭から離れる他の活動の間に血中ぶどう糖濃度を測定するためというような、携帯用デバイスおよび検査エレメントが知られている。一方で、多くの検査デバイスが市販されている。検査ストリップの形態とした検査エレメントの使用に基づく、大多数の検査デバイスおよび検査システムが知られている。複数の検査ストリップがマガジンによって供給される用途が知られており、検査デバイスによって、マガジンからの検査ストリップに自動的に供給することができる。しかしながら、他の用途では、1つずつの検査ストリップを使用し、手作業でユーザによって検査デバイスに挿入するものも知られている。この場合、通例では、検査ストリップの末端が検査デバイスに挿入され、検体を検出するように構成され、検査ストリップの反対側の末端は、ハンドルとして機能し、ユーザが検査ストリップを検査デバイスに押し込み、検査ストリップを検査デバイスから取り除くことを可能にする。試料を検査エレメントに投与するために、典型的な検査エレメントは、毛細管検査エレメントにおける毛細管開口または上位投薬システムを有する光学検査ストリップにおけるスプライト・ネット(sprite net)のような、少なくとも1つの試料投与部位を設けている。この種の検査ストリップは、例えば、Accu-Chek Active(登録商標)という商品名で市販されている。また、在宅医療の用途の代わりに、このような検査エレメントは、病院の用途におけるような、専門的な診断に使用することができる。
【0004】
多くの場合、検体を検出するために、1つ以上の検査化学薬品を有する1つ以上の検定圃(test field)を含む検査ストリップのような検査エレメントが使用される。検査化学薬品は、検出対象検体が存在するときに、1つ以上の検出可能なプロパティを変化させるように構成される。つまり、検査化学薬品の電気化学的に検出可能なプロパティおよび/または検査化学薬品の光学的に検出可能なプロパティを、検体の存在の影響によって、変化させることができる。本発明において使用してもよい潜在的な検査化学薬品については、J. Hones et al.のDiabetes Technology and Therapeutics(糖尿病技術および治療学), Vol. 10, Supplement 1, 2008, S-10 to S-26を参照するとよい。しかしながら、本発明の範囲内で、他の種類の検査化学薬品を使用してもよい。
【0005】
一般に、少なくとも1つの検体の検出は、電気化学バイオセンサを使用することによって行うことができる。電気化学バイオセンサ、例えば、血液試料におけるぶどう糖の濃度を判定するための電気化学バイオセンサは、検体によって特異的な反応を示す酵素を使用する。ぶどう糖は、酵素補因子によって特異的に酸化され、酵素補因子は永続的または一時的に酵素に結合される。酵素補因子が永続的に結合されるには、第2酸化還元活性物質が必要であり、この第2酸化還元活性物質は、電子受容体として、酵素補因子との反応によって還元される。拡散プロセスによって、還元物質は電極に移動させられ、適当な酸化還元電位を印加することによって、再度酸化される。遷移電子は、結果的に生じる電流によって、ぶどう糖濃度の尺度として測定することができる。他の例には、検査試料において刺激された生物学的プロセスの特定のステータスに達したときに、活性時間を測定するための電気化学バイオセンサがある。一例に凝固時間バイオセンサ検査ストリップがあり、活性化トロンビンが酸化還元タグを人工ペプチド基質から切断するときにプロテアーゼ・トロンビンの活性化が検出される。少なくとも2つの電極間に適した電圧を印加し、電流測定応答を監視することによって、還元された酸化還元タグを検出することができる。
【0006】
電気化学検査ストリップでは、金、またはパラディウム、またはこれらの貴金属の混合物が、電気化学的測定のため、および測定機器への接触のために使用される。一般に、これらの金属は、電気化学反応の正確な電流測定値を生成する適正な導電性を示す。何故なら、電気化学反応が起こる電気化学測定セルにおいて、印加電圧が存在しこれが分かるからである。しかしながら、これらの金属は非常に高価である傾向があり、その結果検査ストリップ当たりの商品原価が高くなる。この理由のために、このような電気化学検査ストリップにおける金層をできるだけ薄く生成する試みがなされているが、層の厚さが減少するに連れて電流経路の抵抗率が高くなる。他の可能性があるとすれば、貴金属を他の材料、例えば、炭素と置き換えることであろう。しかしながら、これらの材料は、層の厚さが減少するに連れて、電流経路の抵抗率が高くなることを示す。この電気化学セルに使用される可能性がある他の材料は、生産ロットにおいて、不均一で更に高い抵抗を呈するおそれがある。例えば、炭素のような材料を通過する電流は、生産ロットのストリップ毎に不均一であり、ストリップ毎に抵抗値が異なる可能性がある。
【0007】
つまり、炭素または非常に薄い金層を使用すると、回路経路の抵抗率が高くなり、電気化学測定セルにおいて、印加電圧が低下する。このため、電気化学測定セルにおいて、未知の電圧状態が生じるに至り、検体の未知の濃度を容易に測定することが不可能になる。この効果は、一般に、「IR-降下効果」と記述される。IR-降下の問題は、作用電極と基準電極との間における電圧損失、または対向電極と作用電極との間における電圧損失であり、電圧構成によって異なる。この電位差は見逃され、したがって、実際に作用電極に印加される電位は、一定に保たなければならない電圧とは異なることになる。
【0008】
具体的には、検査ストリップの両電気接点間の電流を正確に判定することが可能であろうが、高抵抗供給線のiR降下のために、試料上に印加される電位が、検査ストリップの両電気接点間に印加される電位よりも低くなる。この効果は、検査ストリップの形状設計に大きく依存し、試料と電気接点との間の距離が大きくなり、供給線の電導率が低下する場合、一層悪化する。
【0009】
更に、IR-降下は、抵抗器におけるエネルギ損失による電圧降下として記述することができる。抵抗器におけるエネルギ損失、および電気化学検査ストリップに対するその関係は、必要な厚さを有する非常に良い導体以外の他の材料が利用される(implement)と、現れる。試料についてのデータを収集するためにインピーダンス分光分析が使用される場合、貧弱な導体からの過度に高い抵抗が、測定されるアドミタンスおよび位相値に直接的な影響を及ぼすおそれがある。これらの抵抗は未知であるということは、信号を著しく弱め、回路におけるノイズが問題となることを含意するだけでなく、加えて、高く測定される抵抗および低い測定精度のために、アドミタンスおよび位相の計算が間違えるおそれがある。
【0010】
IR-降下の重要度は、3電極構成を使用する定電位回路(potentiostatic circuit)において検出された。ポテンショスタットの手段(instrument)および動作原理は、例えば、A. Hicking, Trans. Faraday Soc. 38, 27, 1942によって説明されている。IR-降下の影響は、例えば、D. Macdonald,“Transient Techniques in Electrochemistry”(電気化学における過渡技法), 1977, Plenum Press, New York, pages 30-33によって説明されている。IR-降下の影響を補正するための方法は多数開発されており、例えば、電流規制遮断器技法(galvanostatic interrupter technique)(J.D. E. McIntyre and W.F. Peck, Jr.,“An Interrupter Technique for Measuring the Uncompensated Resistance of Electrode Reactions under Potentiostatic Control”(定電位制御の下において電極反応の未補償抵抗を測定するための遮断器技法), J. Electrochem. Soc. 1970, 117(6): 747- 751を参照のこと)、および正フィードバック回路による直接補償(D.T. Sawyer and J.L. Roberts, Jr., Experimental Electrochemistry for Chemists(化学者のための実験電気化学), Wiley (Interscience), New York (1974)を参照のこと)がある。セル・パラメータが、定電位性能要件において予測されるIR降下の減少を許容しないときはいつでも、目標を達成するために正フィードバックの技法を実施することができる。これは種々の方法で応用し、非常に価値がある結果を得ることができる。安定性は、常に繰り返される問題となる可能性がある。
【0011】
US2006/231424A1は、電気化学検査ストリップにおける作業および対向電極対の直列抵抗の測定について記載し、検査ストリップの品質、および検査メータにおけるストリップの動作の複数のばらつきに対する誤差検出を可能にする。US2008/093230A1は、電気化学的に初期検体濃度を判定し、複数の電流測定/電位差測定切り替えサイクルを実行し、複数の切り替えサイクルの各々における信号の特性を観察し、この信号の特性に対して平均値を判定し、信号の特性の平均値に応じて、初期測定値を補正して検体濃度の最終測定値に到達する、または初期測定値を拒否することによる検体の判定について記載する。H. Schweiger et all: "Comparison of Several Methods for Determining the Internal Resistance of Lithium I on Cells"(リチウム・イオン電池の内部抵抗を判定する様々な方法の比較), SENSORS, vol. 10, no. 6, 3 June 2010, pages 5604-5625, XP055244934, DOI: l0.3390/sl00605604は、リチウム・イオン電池の内部抵抗の判定について記載する。W. Oelssner et al.: "The iR drop- well- known but often underestimated in electrochemical polarization measurements and corrosion testing"(iR降下-電気化学的分極測定および腐食検査において良く知られているが過小評価されている), MATERIALS AND CORROSION/WERKSTOFFE UND KORROSION, vol. 57, no. 6, 1 June 2006, pages 455- 466, XP055064318, ISSN: 0947-5117, DOl: 10.1 002/maco.200603982は、電気化学的分極測定におけるiR降下の補償について記載する。抵抗は、ルギン管と作用電極との間における電解質の抵抗によって判定することができる。
【0012】
以上で述べた開発によって達成された利点および進展にも拘わらず、未だ重大な技術的課題がいくつか残っている。具体的には、既知の補償方法は、バッテリの技術分野および大型機器(instrument)において使用されるに過ぎない。このように、検査ストリップにおいて望ましくない抵抗を特徴化するための適した補償方法の開発および実施には、なおも技術的課題が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、体液において少なくとも1つの検体を判定する方法およびデバイスを提供して、この種の既知のデバイスおよび方法の欠点を少なくとも部分的に回避し、以上で述べた課題に少なくとも部分的に取り組むことである。具体的には、薄い導電路を使用して体液における少なくとも1つの検体の濃度の測定結果の信頼性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題は、独立請求項の特徴を有する、等価直列抵抗(ESR)についての情報を判定する方法、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法、少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する分析デバイス、および体液における少なくとも1つの検体の濃度を判定する検査エレメント分析システムによって解決する。個別にまたは何らかの任意の組み合わせで実現することができる好ましい実施形態を、従属請求項において羅列する。
【0015】
以下で使用する場合、「有する」(have)、「備える」(comprises)、または「含む」(includes)という用語、またはこれらの任意のその他の文法的変形は、非網羅的に使用される。つまり、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴を除いて、このコンテキストで記載されるエンティティには他の特徴が存在しない状況、および1つ以上の他の特徴が存在する状況の双方を指すことができる。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、および「AはBを含む」という表現は、B以外には、Aに他のエレメントが存在しない状況(即ち、AはBのみで排他的に構成される状況)、およびB以外にもエレメントC、エレメントCおよびD、または更に他のエレメントも、というように、1つ以上の他のエレメントがエンティティAに存在する状況の双方を指すことができる。
【0016】
更に、「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語、あるいは1つの特徴またはエレメントが1回または1回よりも多く存在し得ることを示す同様の表現は、通例、それぞれの特徴またはエレメントを導入するときに、1回だけ使用される。以下では、殆どの場合、それぞれの特徴またはエレメントに言及するとき、それぞれの特徴またはエレメントが1回または1回よりも多く存在し得るという事実にも拘わらず、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現を繰り返さないこととする。
【0017】
更に、以下で使用する場合、「好ましくは」(preferably)、「更に好ましくは」(more preferably)、「特に」(particularly)、「更に特定すれば」(more particularly)、「具体的には」(specifically)、「更に具体的には」(more specifically)という用語、または同様の用語は、随意の特徴と合わせて使用され、代わりの可能性を制限することはないものとする。つまり、これらの用語によって導入される特徴は、随意の特徴であり、請求項の範囲を限定することは全く意図していない。本発明は、当業者には認められように、代わりの特徴を使用することによって実施されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現によって導入される特徴は、随意の特徴であることを意図しており、本発明の代替実施形態に関して全く制限がなく、本発明の範囲に関して全く制限がなく、更にこのように導入される特徴を本発明の他の随意のまたは随意でない特徴と組み合わせる可能性に関して全く制限がない。
【0018】
本発明の第1の態様において、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を開示する。この方法は、対応する独立請求項において示され、以下に列挙されるような方法ステップを含む。これらの方法ステップは、所与の順序で実行されればよい。しかしながら、これらの方法ステップには、他の順序の実現可能である。更に、これらの方法ステップの内1つ以上は、並列に実行されてもおよび/または時間的に重複して実行されてもよい。更に、これらの方法ステップの内1つ以上を繰り返し実行してもよい。更に、列挙されていない追加の方法ステップがあってもよい。
【0019】
この方法は、次のステップを含む。
-少なくとも1つの励起電圧信号Utargetを生成し、この励起電圧を、基準抵抗Rrefと直列の少なくとも2つの測定電極に印加するステップ、
-応答信号を測定するステップ、
-応答信号の信号フランク(signal flank)を判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分Umeasuredを判定するステップ、
-次の関係にしたがって、オーム信号部分から等価直列抵抗ESRに関する情報を判定するステップ。
【0020】
【数1】
【0021】
本明細書において使用する場合、「関係
【0022】
【数2】
【0023】
にしたがってオーム信号部分から等価直列抵抗ESRに関する情報を判定する」という表現は、この式の同等の再定式化(equivalent reformulation)および代わりの言い回し、更には導関数(derivative)にも関係する。
【0024】
本明細書において使用する場合、「測定電極」(measurement electrode)という用語は、一般に、例えば、少なくとも1つの検査エレメントの電極を指す。検査エレメントは、電解質と、具体的には、体液と接触し、電気的または電気化学的に検体および/または検体濃度を判定するように構成される。本明細書において使用する場合、「電極」(electrode)という用語は、一般に、電気的または電気化学的に検体を検出するように構成された、または使用可能な任意のエレメントを指すとしてよい。少なくとも2つの測定電極は、電気化学的反応が、1つ以上の作用電極のような、電極の内1つ以上において発生できるように、具体化することができる。つまり、電極は、酸化反応および/または還元反応が電極の内1つ以上において発生できるように具体化することができる。電気化学的検出反応は、作用電極の静電電位のような1つ以上の電極電位を、対向電極または基準電極のような、1つ以上の他の電極の静電電位と比較することによって検出することができる。
【0025】
少なくとも2つの測定電極は少なくとも1つの作用電極を含んでもよい。本明細書において使用する場合、「作用電極」(working electrode)という用語は、体液において少なくとも1つの検体を検出するために少なくとも1つの電気化学的検出反応を実行するように構成された、または使用可能な電極を指す。作用電極は、検出対象の検体に感応する少なくとも1つの検査化学物質(test chemical)を有してもよく、またはこれと接触させてもよい。少なくとも1つの検査化学物質は、少なくとも1つの体液と接触する可能性がある少なくとも1つの検査化学物質の表面を形成することができる。少なくとも2つの電極は、更に、少なくとも1つの対向電極を含んでもよい。本明細書において使用する場合、「対向電極」(counter electrode)という用語は、対向電極(opposing electrode)とも呼ばれ、少なくとも1つの電気化学的反作用を実行するように構成され、作用電極において検出反応に必要とされる電流を均衡化するように構成された電極を指す。加えて、または代わりに、少なくとも2つの電極は、更に、少なくとも1つの基準電極を含んでもよい。基準電極は、安定した既知の電極電位を有するのはもっともである。基準電極の電極電位は、非常に安定していることが好ましいのはもっともである。対向電極および基準電極は、共通電極または2つの別個の電極の内1つでもよい。
【0026】
電解質、例えば、体液の試料と接触する測定電極は、電気化学セルを形成してもよい。検査エレメントの電気化学セルは、電解質抵抗、電荷移動抵抗を含む等価回路によって近似することができ、例えば、対面電極または対向電極を有するサンドウィッチ検査ストリップの場合、二重層容量を含む等価回路によって近似することができる。
【0027】
測定電極および/または導電路のような他の導電性エレメントは、容量および抵抗のみを有する理想的な構成要素でなくてもよい。しかしながら、近似では、電気化学セルを、等価直列抵抗(ESR)と直列の理想的なキャパシタおよび抵抗器と見なすことができる。供給線に等価直列抵抗があることにより、ESRにおいて観察可能な電圧降下が生ずる可能性がある。電圧降下は、少なくとも1つの検体の濃度の判定に影響を及ぼす可能性があり、具体的には、誤った測定結果が生ずるおそれがある。ESRについての情報は、ESR値、および/または作用電極および対向電極の金属被膜によって形成される線抵抗についての少なくとも1つの情報、および/または電子回路の線抵抗測定値についての少なくとも1つの情報、および/またはコンタクト・ピンと検査エレメントとの間における接触抵抗についての少なくとも1つの情報を含むことができる。
【0028】
サンドウィッチ検査エレメントのインピーダンスZは、
【0029】
【数3】
【0030】
によって判定することができる。
ここで、Rは等価直列抵抗であり、Rは電解質抵抗であり、CおよびCは二重層容量を記述する。RおよびR、具体的には、Rと直列のRは電荷移動抵抗を記述し、ここで、iは虚数であり、iω=2πfである。「サンドウィッチ検査エレメント」(sandwich test elemente)という用語は、検査エレメントの層設定において測定電極が互いに重なり合って配置された検査エレメントを指す。検査エレメントは、少なくとも1つのスペーサ層、および/または少なくとも1つの試薬層、および/または少なくとも1つのキャリア層というような、追加の層を含んでもよい。インピーダンスは、実部Re(Z)および虚部-Im(Z)によって記述することができ、Z=Re(Z)-Im(Z)、ここで、
【0031】
【数4】
【0032】
および
【0033】
【数5】
【0034】
ここで、a=1-ω、b=C+C+C、d=R+R、e=C。つまり、ESRは、インピーダンスZの実部を使用して判定することができる。更に、虚部は周波数に強く依存するとしてよく、一方実部は周波数ωからは独立であるとしてよい。
【0035】
本明細書において使用する場合、「少なくとも1つの励起電圧信号」(at least one excitation voltage signal)という用語は、一般に、例えば、少なくとも2つの電極を使用することによって、体液に印加可能な少なくとも1つの任意の電圧信号を指す。励起電圧信号は、少なくとも1つの検査シーケンス、例えば、時間シーケンスの間に印加することができる。励起電圧信号は、方形波信号および/または正弦波信号を含んでもよい。例えば、励起電圧信号は正弦波信号であってもよく、励起電圧信号の周波数は20kHzから300kHzまでとしてもよい。励起電圧信号は、パルスのような、不連続信号を含んでもよい。具体的には、励起電圧信号は高速遷移方形波(fast transition square wave)を含んでもよい。
【0036】
励起電圧信号は、少なくとも1つの信号生成デバイスによって生成することができる。「信号生成デバイス」(signal generator device)という用語は、一般に、電圧信号を生成するように構成されたデバイス、例えば、電圧源を指す。信号生成デバイスは、少なくとも1つの電圧源を含んでもよい。信号生成デバイスは、少なくとも1つの方形波生成器および少なくとも1つの正弦波生成器から成る一群から選択された少なくとも1つの関数発生器(function generator)を含んでもよい。ESRを判定するためには、検査エレメントの両端間の電圧が低レベルに保持されるように、励起電圧信号を生成すればよい。例えば、信号生成デバイスは、1000mVpkpkおよび100kHzの周波数の関数を生成するように構成されてもよい。このようにすれば、電圧全体の殆どをESRの両端間で降下させることができる。
【0037】
信号生成デバイスは、測定電子回路の一部であってもよく、および/または測定電子回路に接続されてもよい。信号生成デバイスは、評価デバイスの一部のように、測定電子回路の一部であってもよく、または別個のデバイスとして設計されてもよい。信号生成デバイスは、励起電圧信号を測定電極に印加するように構成することができる。励起電圧信号は、少なくとも1つの信号印加ステップにおいて、少なくとも2つの測定電極に印加することができる。検査エレメントは、信号生成デバイスの少なくとも1つの出力端子に接続されればよい。
【0038】
励起電圧信号は、繰り返し可能なサイクルを構成してもよく、繰り返し可能なサイクルは少なくとも1つの励起信号フランク(excitation signal flank)を含む。本明細書において使用する場合、「信号フランク」(signal flank)という用語は、低から高信号値へ、または高から低信号値への励起の遷移を指す。励起信号フランクは、立ち上がり信号フランクまたは立ち下がり信号フランクであってもよい。励起電圧信号の励起信号フランクは、ミリ秒からナノ秒範囲の、励起信号フランクの第1点から励起信号フランクの第2点への信号の変化を有してもよい。第1および第2「点」(point)という用語は、信号の領域または地点を指す。第1点は、励起信号の極小値および/または全体の最小値であってもよい。第1点は、励起信号の第1プラトーであってもよい。第1点は、電圧が電極に印加されない時点を指してもよい。第1点は、信号の通過値(through value)または低値であってもよい。第2点は、励起信号の極小値および/または全体の最小値であってもよい。第2点は、励起信号の印加中に到達することができる、励起信号の第2プラトーであってもよい。第2点は、信号のピークまたは高値であってもよい。励起電圧信号は、高速遷移方形波であってもよく、またはこれを含んでもよい。高速遷移方形波は、前述のように、立ち上がり信号フランクを有してもよい。具体的には、高速遷移方形波は、50ns以下、好ましくは、20ns以下の、励起信号フランクの第1点から励起信号フランクの第2点への信号変化を有してもよい。
【0039】
励起電圧は、基準抵抗Rrefと直列の少なくとも2つの測定電極に印加される。Rrefは、所定の基準抵抗のような、既知の基準抵抗とすればよい。基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された平均値、具体的には予め決められた平均値であってもよい。たとえば、基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された平均Hct値に対応してもよい。基準抵抗は、オーム信号部分のように、測定対象の値を判定するのに適するように選択されてもよい。
【0040】
本明細書において使用する場合、「応答信号」(response signal)という用語は、一般に、印加された励起電圧信号に応答して測定電極において判定される電圧変化を指す。応答の鋭さ(steepness)が、応答のオーム部分の識別を可能にするとして差し支えない。応答信号は、少なくとも1つの応答信号検出器、例えば、少なくとも1つの信号アナライザおよび/または少なくとも1つのオシロスコープを使用することによって、測定することができる。本明細書において使用する場合、「オーム信号部分」(ohmic signal portion)は、インピーダンスZの実部を指す。応答信号は、複素インピーダンスにおけるオーム信号部分を含むのはもっともである。応答信号は、オーム信号部分と、検査エレメントの容量部分による非オーム信号部分とを含むこともある。応答信号の信号形状および信号の高さの内一方または双方を分析することによって、オーム信号部分を判定することができる。応答信号は、少なくとも1つの信号フランク、具体的には、少なくとも1つの立ち上がり信号フランクを含んでもよい。誘導方形波または正弦波電圧信号の特徴付けによって、応答信号の信号フランクからオーム信号部分を判定することができる。具体的には、誘導信号形状からの偏差(deviation)および/または示差(difference)を判定してもよい。応答信号は、ESRにおける電圧降下による垂直降下と、検査エレメントの容量部分からの充電積分によるその後の立ち上がり信号フランクとを呈することがわかった。
【0041】
等価直列抵抗ESRについての情報は、次の関係にしたがって、オーム信号部分から判定される。
【0042】
【数6】
【0043】
ここで、Utargetは、励起電圧信号であり、Rrefは基準抵抗であり、Umeasuredはオーム信号部分である。励起電圧信号Utargetは、予め分かっている値または予め判定されている値であってもよい。励起電圧信号Utargetは、少なくとも1つのアナログ-ディジタル変換器を使用することによってというようにして判定されてもよく、アナログ-ディジタル変換器は信号生成デバイスと基準抵抗器と直列に、そしてこれらの間に配置されればよい。
【0044】
具体的には、応答信号の高い値(high value)Uおよび降下値(drop value)U、即ち、立ち上がり信号フランクの始まりにおける電圧値を判定すればよい。等価直列抵抗ESRについての情報は、次の式によって判定することができる。
【0045】
【数7】
【0046】
ここで、Rcoaxは、検査エレメントおよび応答信号検出器を接続する電子ケーブルの抵抗である。Rrefは既知の基準抵抗である。基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された平均値、具体的には、予め判定されている平均値であってもよい。例えば、基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された平均Hct値に対応してもよい。
【0047】
更に、本方法は少なくとも1つの減算ステップを含んでもよく、ESRについての、具体的にはESR値からの、所定の情報から、体液の試料の電解質抵抗Rの所定値または既知の値を減算する。
【0048】
この方法は、検査エレメントの乾燥状態で、即ち、電解質に接触せずに実行されてもよい。この場合、インピーダンスZは、次の式で判定することができる。
【0049】
【数8】
【0050】
つまり、純粋線抵抗がインピーダンスZの実部であるとして差し支えなく、ESRを直接判定することができる。更に、2つの測定電極間にある材料の誘電体プロパティはzの虚部にあたるので、接着材の品質、接着材の種類、測定電極間の距離、異なる種類の箔、コーティングの効果、ウェット・コーティング(wet coating)、または湿度のような、材料または形状のあらゆる変化を判定することが可能であると言って差し支えない。これによって、信頼性のある品質管理および/またはフェール・セーフを判定することが可能になると言ってよい。
【0051】
iR降下を判定する既知の方法では、例えば、文献US2006/231424A1およびUS2008/093230A1に記載されているように、セルを開放することから得られる放電曲線を使用する。本発明による方法では、励起電圧信号の信号フランクを特徴付けすることができ、これから等価直列抵抗を導くことができる。つまり、本発明による方法では、セルの放電から生ずる応答ではなく、励起電圧信号からの過渡を分析することができる。これによって、iR降下の迅速な判定が可能となり、具体的には、結果的に得られる放電曲線を使用する方法、つまりこれを待つ方法と比較すると、それよりも高速に判定することができると言ってよい。
【0052】
更に他の態様では、体液における少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法を開示する。この方法は、対応する独立請求項において示され、以下に列挙するような方法ステップを含む。これらの方法ステップは、所与の順序で実行されればよい。しかしながら、これらの方法ステップには他の順序の実現可能である。更に、これらの方法ステップの内1つ以上は、並列におよび/または時間的に重複して実行されてもよい。更に、これらの方法ステップの内1つ以上を繰り返し実行してもよい。更に、列挙されていない追加の方法ステップがあってもよい。
【0053】
本方法は、先に開示したような方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の1つ以上にしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含む。
等価直列抵抗についての情報を判定する方法は、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての情報を判定するステップと、
を含む。
【0054】
この方法の特徴の定義について、そしてこの方法の随意的な詳細について、以上で開示したような等価直列抵抗または以下で更に詳しく開示するような等価直列抵抗についての情報を判定する方法の実施形態の1つ以上を参照するとよい。
【0055】
この方法は、少なくとも1つの電流応答を測定し、この電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含む。この方法は、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正する、少なくとも1つの補正ステップを含む。
【0056】
この方法は、少なくとも1つの試料塗布(application)ステップを含んでもよい。試料塗布ステップでは、体液の試料を少なくとも2つの測定電極に塗布することができる。測定電極は、体液の試料と接触することができる。測定電極は、少なくとも1つの検査エレメントによって構成されてもよい。検査エレメントは、試料を受けるように構成された、少なくとも1つの試料塗布エリアを含むことができる。試料は、試料塗布エリアから測定電極に、例えば、毛管力によって移送されてもよい。
【0057】
本明細書において使用する場合、「体液」(body fluid)という用語は、一般に、ユーザまたは患者の身体あるいは身体組織内に通例存在する液体、および/またはユーザの身体もしくは患者によって生成することができる液体を指す。具体的には、体液は体液の試料であってもよい。身体組織の一例として、間質組織をあげることができる。つまり、一例として、体液は、血液および間質液から成る一群から選択されてもよい。例えば、体液は全血であってもよい。しかしながら、加えてまたは代わりに、唾液、涙液、尿、またはその他の体液というような、1つ以上の他の種類の体液も使用されてもよい。一般に、任意の種類の体液を使用してよい。
【0058】
具体的には、体液の試料において、少なくとも1つの検体の濃度を判定するのでもよい。本明細書において使用する場合、「試料」(sample)という用語は、分析、検査、または調査のために採取された任意の材料または材料の組み合わせを指すことができる。試料は、もっと大きな量と同様であることおよびもっと大きな量を表すことを意図した何かの中の限られた量としてもよい。しかしながら、試料が標本全体(full specimen)を構成してもよい。試料は、固体の試料、液体の試料、気体の試料、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、試料は、流体試料、即ち、完全にまたは部分的に液体状態および/または気体状態にある試料でもよい。試料の量は、その分量(volume)、質量、または大きさに関して記述可能であるのはもっともである。しかしながら、他の寸法も実現可能である。試料は、1つの材料のみまたは1つの組成物のみを含むのでもよい。あるいは、試料は様々な材料または組成物を含んでもよい。
【0059】
更に本明細書において使用する場合、「検体」(analyte)という用語は、体液の中に存在する可能性があり、その濃度がユーザまたは患者にとって関心がありそうな任意のエレメント、成分、または組成物を指すことができる。好ましくは、検体は、少なくとも1つの代謝物というような、患者の新陳代謝の一部となり得る任意の化学物質または化合物であってもよく、または含んでもよい。一例として、少なくとも1つの検体は、ぶどう糖、コレステロール、中性脂肪、および乳酸から成る一群から選択されてもよい。しかしながら、加えてまたは代わりに、他の種類の検体も使用されてもよく、および/または検体の任意の組み合わせが判定されてもよい。
【0060】
本発明内において一般的に使用される場合、「ユーザ」(user)および「患者」(patient)という用語は、人または動物がそれぞれ健康状態にある、または1つ以上の疾病に罹患しているかもしれないという事実とは無関係に、人または動物を指すことができる。一例として、患者は、糖尿病を患っている人または動物であってもよい。しかしながら、加えてまたは代わりに、本発明は他の種類のユーザまたは患者にも適用することができる。
【0061】
「体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する」(determining a concentration of at least one analyte in body fluid)という表現は、一般に、少なくとも1つの検体の定量的検出を指す。この判定の結果、少なくとも1つの測定信号というような少なくとも1つの信号、および/または判定の成果を特徴付ける少なくとも1つの測定値を生成および/または供給することができる。この信号は、具体的には、少なくとも1つの電圧および/または少なくとも1つの電流というような、少なくとも1つの電子信号であってもよく、または含んでもよい。少なくとも1つの信号は、少なくとも1つのアナログ信号であってもよく、もしくは含んでもよく、および/または少なくとも1つのディジタル信号であってもよく、もしくは含んでもよい。
【0062】
励起電圧信号は、等価直列抵抗についての情報を判定するために使用することができ、それに適した第1励起電圧信号を含んでもよい。励起電圧信号は、等価直列抵抗についての情報を判定するための方形波信号または正弦波信号を含んでもよい。
【0063】
励起電圧信号は、少なくとも1つの検体の濃度を判定するために使用することができ、それに適した第2励起電圧信号を含んでもよい。励起電圧信号は、複素インピーダンス情報を判定するための少なくとも1つの測定正弦波信号を含んでもよい。励起電圧信号は、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧および少なくとも1つの直流(DC)プロファイルを含んでもよい。第1および第2励起電圧信号は、同時にまたは非同時に、測定電極に印加されてもよい。第1励起電圧信号は、それが検体の濃度判定を混乱させないように選択されればよい。第2励起電圧信号は、それがESRの判定を混乱させないように、選択されればよい。
【0064】
本明細書において使用する場合、「AC電圧」という用語は、AC励起とも呼ばれ、周期的信号波形、例えば、正弦波形または三角形波形を有する交流電圧を指す。本明細書において使用する場合、「ポリ周波数」(poly frequency)という用語は、一般に、少なくとも第1周波数および少なくとも1つの第2周波数を含む少なくとも1つのAC電圧を指し、第1および第2周波数は異なる。ポリ周波数AC電圧は、少なくとも2つの周波数を含む。AC電圧は、正弦波形または三角形波形を有してもよい。他の波形も実現可能である。例えば、AC電圧は、異なる周波数を有する少なくとも2つのAC正弦波を含んでもよい。AC電圧は、異なる周波数を有する少なくとも2つのAC正弦波形を含んでもよく、2つのAC信号は重畳される。ポリ周波数AC電圧は、3つ,4つ、またはそれ以上の周波数を含んでもよい。これらの周波数は500Hzから20kHzの範囲であってもよい。ポリ周波数AC電圧は、4つの重畳された周波数、たとえば、1kHz、2kHz、10kHz、および20kHzを含んでもよい。
【0065】
AC電圧は、ファラデイ電流応答が生成されないような大きさ即ち振幅を有するとよい。例えば、AC電圧の振幅は30mVrms(二乗平均平方根)未満にしてもよい。
本明細書において使用する場合、「DC電圧プロファイル」(DC voltage profile)という用語は、一般に、時間プロファイルを有する任意のDC電圧を指す。本明細書において使用する場合、「DC電圧」(DC voltage)という用語は、本質的に一定の電圧の連続位相および/または傾斜区間(ramp section)を有する直流電圧を指す。このような位相または傾斜区間の時間スパンは、1/10秒よりも長くするとよい。本明細書において使用する場合、「本質的に一定」(essential constant)とは、一般に、1V/sまでの増加率のランプを有するDC電圧プロファイルを指す。DC電圧プロファイルは時間プロファイルを含んでもよい。本明細書において使用する場合、「時間プロファイル」(time profile)という用語は、測定サイクルまたは検査サイクル、測定間隔または検査間隔、測定シーケンスまたは検査シーケンス、全体的または総合的測定あるいは検査時間の内1つ以上におけるDC電圧の変化を指す。DC電圧を変化させてもよく、および/または連続的にもしくは段階的に可変させて(vary)もよい。例えば、DC電圧は少なくとも1つのステップ・シーケンスを含んでもよい。例えば、DC電圧プロファイルは少なくとも2つの電圧ステップを含んでもよい。例えば、DC電圧プロファイルは3つ、4つ、または5つの電圧ステップを含んでもよい。それよりも多い電圧ステップも可能である。DC電圧プロファイルのステップは、分析反応と種々の干渉反応との間における差別化(differentiation)を可能にするように選択してもよい。DC電圧は矩形波形を有してもよい。他の波形も実現可能である。
【0066】
DC電圧プロファイルは、ボルタンメトリ電圧プロファイル(voltammetric voltage profile)、アンペロメトリ電圧プロファイル(amperometric voltage profile)から成る一群から選択されてもよい。
【0067】
DC電圧プロファイルとして、あらゆる種類のボルタンメトリ方法のボルタンメトリ・プロファイル、例えば、循環ボルタンメトリまたは示差パルス・ボルタンメトリを使用してもよい。例えば、循環ボルタンメトリでは、例えば、作用電極と対向即ち基準電極との間に印加されるDC電圧を時間に対して線形に傾斜させてもよい。循環ボルタンメトリの一実施形態では、DC電圧プロファイルは、開始値から第1転機までのDC電圧の、例えば、段階的増加、その後に続く第1転機から第2転機までの減少、およびその後に続く第2転機から開始値までの増加を含んでもよい。循環ボルタンメトリまたは示差パルス・ボルタンメトリのようなボルタンメトリ方法を使用すると、電子メディエータ(electro mediator)または測定電極と反応する酸化還元活性物質の干渉効果を少なくとも部分的に補償するために使用することができる情報を得ることができる。ボルタンメトリを使用することによって、分析検出を指示するために使用される酸化還元メディエータと比較して、干渉物質が異なる電位において還元または酸化する。ボルタンメトリ法は、干渉効果を識別しその補償を行うために使用できる情報を得ることができる。具体的には、循環ボルタンメトリまたは示差パルス・ボルタンメトリのようなボルタンメトリ方法は、血液における物質の影響を補償することを可能にし、基質系または酵素系と競って酸化還元メディエータを減少させ、正に偏倚した検査結果もたらすことができる。例えば、電圧プロファイルは、このような干渉、例えば、異なる極性を有するDC測定値を差別化するように構成された少なくとも1つのシーケンスを含むこともある。このシーケンス中における同時インピーダンス測定を使用すると、試料の温度および/または湿った試薬層の粘度による影響を補償することができる。
【0068】
DC電圧プロファイルは、アンペロメトリ電圧プロファイルであってもよく、またはこれを含んでもよい。アンペロメトリ電圧プロファイルは、異なる電圧ステップ、例えば、異なる電圧における一連のアンペロメトリ・ステップを含んでもよい。DC電圧プロファイルは、少なくとも2つの異なる電圧ステップを含む少なくとも1つのアンペロメトリDC電圧ステップ・シーケンスであってもよく、またはこれを含んでもよい。例えば、DC電圧プロファイルは3つの電圧ステップを含んでもよく、第1電圧ステップにおいて、DC電圧は500mVに達し、第2電圧ステップにおいて、DC電圧は200mVに達し、第3電圧ステップにおいて、DC電圧は-400mVに達する。しかしながら、他の電圧ステップも実現可能である。アンペロメトリ応答の時間プロファイルからの情報を使用すると、酸化還元メディエータの干渉物質との望ましくない副反応、および/または実際の検出反応と比較すると異なる反応速度、および/または直接電極と干渉する試料における物質の内1つ以上の補償が可能になる。更に、アンペロメトリ応答の時間プロファイルを使用することにより、一次検査エレメントの包装を開くときと実際の測定との間における、保管時間または露出時間からの経時的効果を補償することができる。経時的効果は、検出試薬における特効薬(specific agent)としての酵素の活動逸失によって発生する場合がある。他の経時的効果または露出時間による効果として、メディエータの劣化をあげることができ、これは空白電流または信号喪失を増大させる可能性がある。アンペロメトリ応答時間プロファイルを使用することによって、経時的効果および/または経時的効果 の影響を判定することができる。アンペロメトリ応答時間プロファイルを使用することによって、酸化還元活性干渉物質によって生ずる偏倚、酵素活動逸失または酸化還元メディエータ劣化、および周囲温度効果の殆どを補償することができる。具体的には、アンペロメトリ応答の時間的進行(progression)を使用しての干渉物質の効果および/または温度効果の補償は、競合反応の反応速度が著しく異なる場合、そしてインピーダンス測定が同時に行われる場合に可能である。即ち、反応の完了後だけでなく、反応の進行中にも、具体的には、直前の化学反応中に行われる場合にも、可能であるとして差し支えない。
【0069】
信号生成デバイスは、少なくとも1つのポリ周波数AC電圧を生成するように構成することができる。例えば、信号生成デバイスは、各々異なる周波数を有する複数のAC電圧信号を生成し、これら複数のAC信号を合計するように構成されるのでもよい。信号生成デバイスは、少なくとも1つのDCプロファイルを生成するように構成されるのでもよい。
【0070】
AC電圧およびDCプロファイルを重畳して励起電圧信号を形成することもできる。信号生成デバイスは、AC電圧およびDCプロファイルを同時に体液に印加するように構成することもできる。信号生成デバイスは、重畳されたポリ周波数AC電圧およびDCプロファイルを含む励起電圧信号を体液に印加するように構成することもできる。ポリ周波数AC電圧およびDCプロファイルは、オフセット時間および/または時間遅延を設けずに、測定電極に印加することもできる。
【0071】
以上で概説したように、本方法は少なくとも1つの検体測定ステップを含む。この測定ステップにおいて、電流応答を測定し、電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する。電流応答は、異なる測定時点において測定されてもよい。電流応答は、継続的に測定されてもよく、あるいは選択可能なおよび/または調節可能な測定時点において測定されてもよい。経時的な電流応答は、選択可能な時間単位および/または調節可能な時間単位を使用することによって測定することができる。例えば、電流応答は、1/10秒毎に、または1/10秒毎よりも多く測定してもよい。本明細書において使用する場合、「電流応答」(current response)という用語は、一般に、印加された励起電圧信号に応答して、少なくとも2つの測定電極によって生成される電流応答信号を指す。電流応答は複数の信号を含んでもよい。電流応答はACおよびDC応答を含んでもよい。本明細書において使用する場合、「測定」(measurement)という用語は、一般に、応答、例えば、電流信号の定量的判定および/または定性的判定を指す。本明細書において使用する場合、「測定時点」(measurement time point)とは、一般に、任意の時点および/または任意の時間期間を指し、具体的には、検体の濃度判定中における時間間隔、即ち、測定サイクルまたは検査サイクル、測定間隔または検査間隔、測定シーケンスまたは検査シーケンス、測定時間または検査時間全体、あるいは合計測定時間または検査時間の内の1つ以上において、応答を判定する任意の時点および/または任意の時間期間を指す。測定時点は、検査シーケンス中における異なる時点、例えば、DCプロファイルの異なる励起電圧における時点でもよい。
【0072】
更に、本方法は、少なくとも1つの評価ステップを含んでもよく、このステップにおいて、少なくとも1つの評価デバイスによって、電流応答から周波数毎のAC電流応答およびDC電流応答を評価し、周波数毎に、評価デバイスによってAC電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を評価する。本明細書において使用する場合、「評価デバイス」(evaluation device)という用語は、一般に、データから少なくとも1つの情報項目を導き出すように構成された任意のデバイスを指す。評価デバイスは、体液における検体の存在および/または濃度、あるいは体液のパラメータに関する少なくとも1つの情報項目を、少なくとも1つの信号から導き出すように構成されてもよい。評価デバイスは、応答を評価するように構成されてもよい。一例として、評価デバイスは、1つ以上の特定用途集積回路(ASIC)のような1つ以上の集積回路、および/または1つ以上のコンピュータのような、1つ以上のデータ処理デバイス、好ましくは1つ以上のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラであってもよく、あるいはこれらを含んでもよい。1つ以上の前処理デバイスおよび/またはデータ取得デバイスのような追加のコンポーネント、電極信号の受信および/または前処理のための1つ以上のデバイスのような追加のコンポーネント、1つ以上の変換器および/または1つ以上のフィルタのような追加のコンポーネントを含んでもよい。更に、評価デバイスは1つ以上のデータ記憶デバイスを備えてもよい。更に、先に概説したように、評価デバイスは、1つ以上のワイヤレス・インターフェースおよび/または1つ以上の結線(wire-bound)インターフェースというような、1つ以上のインターフェースを備えてもよい。評価デバイスは、血中ぶどう糖メータ、例えば、検査ストリップに基づくメータ、インシュリン・ポンプ、マイクロプロセッサ、セルラ・フォン、スマート・フォン、パーソナル・ディジタル・アシスタント、パーソナル・コンピュータ、またはコンピュータ・サーバを含んでもよい。
【0073】
評価デバイスは、電流応答を位相情報およびインピーダンス、即ち、虚成分および実成分、AC電流応答および対応するDC電流応答の各周波数についての情報に分割および/または分離(separate)するように構成することができる。
【0074】
本方法は、評価デバイスによって、AC電流応答から、周波数毎に、アドミタンスの少なくとも1つの実部および虚部を評価するステップを含んでもよい。具体的には、評価デバイスは、周波数毎に、AC電流応答からアドミタンスの少なくとも1つの実部および虚部を評価するように構成されてもよい。
【0075】
複素インピーダンスZは、Z=R+iXと記述することができ、Rは複素インピーダンスの実部であり、Xは複素インピーダンスの虚部である。極座標型式では、複素インピーダンスはZ=|Z|eiΘと記述することができ、Θは電圧と電流との間の位相差である。アドミタンスYはY=1/Zで定義することができる。つまり、複素インピーダンス情報とは、アドミタンスについての情報、具体的には、アドミタンス値、位相情報、実部および/または虚部についての情報の内1つ以上を指す。
【0076】
本明細書において使用する場合、「AC電流応答」(AC current response)および「DC電流応答」(DC current response)という用語は、一般に、応答のACおよびDC部分(portion)またはACおよびDC部(part)を指す。AC電流応答およびDC電流応答は、周波数範囲に関して分離されてもよい。評価デバイスは、電流応答の一部分を、所定の周波数範囲に関してACまたはDCとして分類するように構成することができる。評価デバイスは、約100Hzおよび500Hzの間で、応答をAC電流応答と対応するDC電流応答とに分離するように構成された少なくとも1つの電子フィルタ、例えば、双方向アナログ電子フィルタを備えてもよい。評価デバイスは、応答を低速DC電流応答と高速変化AC電流応答とに分離するように構成することもできる。例えば、評価デバイスは、周波数に応じて応答信号を増幅するように構成された少なくとも1つのトランスインピーダンス増幅器を備えてもよい。続いて、応答信号をクロスオーバーによって分離することができる。500Hz以上、具体的には、500から20kHzまでの周波数範囲におけるAC電流応答を周期的に評価してもよく、1V/s未満の増加率を有するDC電流応答を、時間的進行に連れて、評価する。100Hz未満では、応答をDC電流応答と分類してもよく、500Hz超では、応答をAC電流応答と分類してもよい。評価ステップにおいて、AC電流応答およびDC電流応答は、少なくとも1つの双方向アナログ電子フィルタを使用して分離してもよい。双方向アナログ電子フィルタは、約100Hzおよび500Hzの間の信号を分割し、100Hz未満では、応答をDCとして分析し、500Hz超ではACとして分析する。評価デバイスは、少なくとも1つの周波数アナライザを備えてもよい。つまり、DC電流応答およびAC電流応答を同時に、具体的には、1つの応答として判定することもできる。つまり、DC電流応答およびAC電流応答は、オフセット時間および/または時間遅延を設けることなく、判定および/または測定することができる。
【0077】
ESRは、インピーダンスもしくはアドミタンスの計算および/または判定における大きなエラー、ならびに位相値の計算および/または判定における大きなエラーに寄与するおそれがある。先に概説したように、本方法は少なくとも1つの補正ステップを含み、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正する。ESRが判定された場合、計算からESRを除去し、位相およびインピーダンス値を精度高く判定することが可能になるのはもっともである。
【0078】
本方法は、少なくとも1つの判定ステップを含んでもよく、少なくとも1つの所定の関係を使用することによって、DC電流応答から、そして複素インピーダンス情報から、検体の濃度を判定する。検体の濃度は、評価デバイスによって、例えば、評価デバイスの少なくとも1つのコンピューティング・デバイスによって判定されてもよい。本明細書において使用する場合、「所定の関係」という用語は、検体の濃度とDC電流応答および複素インピーダンス情報との間における既知のまたは判定可能な評価を指す。この関係は、断定することができ、あるいは経験的に、分析的に、または半経験的に判定可能にすることもできる。この関係は、前述した可能性の少なくとも1つの較正曲線、少なくとも1組の較正曲線、少なくとも1つの関数、または組み合わせを含んでもよい。1本または複数の較正曲線は、例えば、1組の値およびその関連する関数値という形態で、例えば、データ記憶デバイスおよび/または表に格納することができる。しかしながら、代わりにまたは加えて、少なくとも1本の較正曲線は、例えば、パラメータ化した形態で、および/または関数方程式として格納することもできる。種々の可能性が着想可能であり、組み合わせることもできる。所定の関係は、少なくとも1つの参照表の形態で、および/または少なくとも1つの数式の形態で提示されてもよい。所定の関係は、例えば、評価デバイスのストレージに、保存(deposit)および/または格納されてもよい。本方法は、検体の濃度とDC電流応答および複素インピーダンス情報との所定の関係を判定するステップを含んでもよい。
【0079】
評価デバイスは、所定の関係を判定するように構成することもできる。評価デバイスは、数学的関数および重み係数を提供するように構成することもでき、例えば、評価デバイスのデータ・ストレージおよび/または参照表にこれらを格納してもよい。本方法は、少なくとも1つの訓練ステップを含んでもよく、このステップにおいて、所定の関係を判定する。所定の関係、具体的には、所定の関係の重み係数は、多変量分析、多線性主成分分析、ニューラル・ネット、移動メッシュ、LASSO法、ブースティング・ランダム・フォーレスト (boosted random forest)、およびブートストラッピングから成る一群から選択された数学的方法によって、少なくとも1つの訓練データ集合に対して選択、判定、および確認の内1つ以上が行われてもよい。訓練データ集合は、共分散研究を実行することによって収集されてもよい。訓練データ集合は、例えば、均質に生成された検査エレメントによる、および/または選択された検査シーケンスに測定デバイス、例えば、メータの接続された電子回路を適用することによる、適した数の繰り返し測定値を含んでもよい。訓練データ集合を得るために、各検査試料の検体濃度を、参照法、例えば、ぶどう糖濃度の場合ヘキソキナーゼ法によって、判定してもよい。訓練データ集合を得るために、検体の関連濃度範囲にわたって十分な量だけ繰り返すことによって、検査の組み合わせおよび検査試料毎に、関連する複合干渉効果の各組み合わせを検査してもよい。例えば、血液試料におけるぶどう糖濃度を判定する場合、主要な干渉効果は、周囲温度、ヘマトクリット・レベル、イオン強度、血漿濃度、脂質濃度、または投与される対象妨害物質、特に、抗酸化剤としてもよい。非構造化対面電極(unstructured face-to-face electrodes)を有する検査エレメントの場合、別々の十分充填検出電極(separate fill sufficient detection electrodes)を備えていない場合もあり、訓練データ集合の生成のために、毛細管の充填レベルを検査してもよい。他の干渉効果は、一次検査エレメント包装における保管時間(storage time)、または測定を実行する前に検査エレメントが包装から取り出されるときの検査エレメント、例えば、検査ストリップの環境条件および露出時間の影響としてもよい。検査エレメントがこれらの影響に対して十分に強くない場合、訓練データ集合を得るときに、これらの要因も考慮するとよい。
【0080】
一実施形態では、所定の関係は、
【0081】
【数9】
【0082】
としてもよい。ここで、bGは判定された検体濃度であり、iは時点の個数を示し、i、n、f、およびmは自然整数であり、mは周波数の数を示し、a、b、およびcは重み係数であり、Ymiは、複数の時点の異なる周波数におけるAC応答からのアドミタンス値であり、Pmiは、複数の時点の異なる周波数におけるAC応答からの位相角度値であり、DCは、選択されたDC応答時点におけるDC応答値である。この所定の関係は、共面電極を有し電極が電気化学セルにおいて互いに隣接して配置される、検査エレメントに使用することができる。重み係数a、b、およびcは、例えば、評価デバイスのストレージに保存および/または格納されてもよい。重み係数a、b、およびcは、多変量分析、多線性主成分分析、ニューラル・ネット、移動メッシュ、LASSO法、ブースティング・ランダム・フォーレスト (boosted random forest)、およびブートストラッピングから成る一群から選択された数学的方法によって、少なくとも1つの訓練データ集合に対して選択、判定、および確認の内1つ以上が行われてもよい。
【0083】
一実施形態では、所定の関係は、
【0084】
【数10】
【0085】
としてもよい。ここで、bGは判定された検体濃度であり、iは測定時点の個数を示し、i、n、f、およびmは自然整数であり、mは周波数の数を示し、 aおよびbは重み係数であり、Y(imag)miおよびY(real)miは、複数の時点の異なる周波数におけるAC応答からのアドミタンス値の実部および虚部であり、DCは、選択されたDC応答時点におけるDC応答値である。この所定の関係は、対面電極を有する検査エレメントに使用することができる。この所定の関係は、特に、対面電極を有し、電極が電気化学セルの対向面に配置された検査エレメントに有利であるとしてよい。何故なら、これによって、DCおよびAC信号間における全ての関連する効果の正しい相関が可能になるからである。特に、この所定の関係は、
【0086】
【数11】
【0087】
としてもよい。ここで、bGは判定された検体濃度であり、iおよびjは測定時点の個数を示し、i、j、およびnは自然整数であり、a、b、cは重み係数であり、YiおよびYjは、時点iおよびjにおける異なる周波数におけるAC応答からのアドミタンス値の実部または虚部のいずれかであり、DC、DCは、選択されたDC応答時点におけるDC応答値である。
【0088】
一実施形態では、この所定の関係は、
【0089】
【数12】
【0090】
としてもよい。ここで、 bGは判定された検体濃度であり、iおよびjは測定時点の個数を示し、i、j、n、f、m、およびlは自然整数であり、mおよびlは周波数の数を示し、a、b、およびci、は重み係数であり、Y(imag)mi、Y(real)mi、Y(imag)mj、Y(real)mjは、時点iおよびjにおける異なる周波数におけるAC応答からのアドミタンス値の実部および虚部であり、DC、DCは、選択されたDC応答時点におけるDC応答値である。この所定の関係は、対面電極を有する検査エレメントに使用することができる。
【0091】
重み係数は、節点移動法によって判定されてもよい。あるいは、ニューラル・ネットまたは多変量回帰法、あるいはこれらの方法の組み合わせを使用してもよい。独立して収集された検証データ集合に対して使用された訓練データから発見されたモデルの複雑さを低減し移行性(portability)を高めるために、関連する観察量を識別および選択し、総数を減らすために、他の数学的方法、例えば、LASSO法も使用することができる。
【0092】
先に概説したように、少なくとも1つの検査シーケンスの間に励起電圧信号を印加すればよい。本明細書において使用する場合、「検査シーケンス」(test sequence)という用語は、一般に、励起電圧信号が印加される任意の時間期間を指す。ACおよびDC電流応答は、測定時点において連続的に、および/または少なくとも1つの検査シーケンスの間に不連続的に判定されてもよい。
【0093】
更に、本方法は、少なくとも1つの選択ステップを含んでもよく、この選択ステップにおいて、測定時点から少なくとも1つのDC時点を選択する。測定時点から、分析結果の判定に使用されるDC時点を選択することができる。この選択ステップにおいて、測定時点から複数のDC時点を選択することができる。例えば、少なくとも1つの検査シーケンスの間、および/または検査シーケンス中における励起電圧信号の少なくとも1つの電圧ステップの間に、3、4、5、6、10、または12箇所のDC時点でも選択してもよい。それよりも多いDC時点であっても、実現可能な場合もある。加えてまたは代わりに、個々のDC時点を、時間回帰から導き出される係数によって置換することも実現可能な場合もある。DC時点とは、DC応答電流が判定ステップにおいて使用される時点としてもよい。
【0094】
AC応答の測定は、異なる測定時点において実行することができる。具体的には、異なる測定時点に対して、アドミタンス値および位相角度値を判定することができる。AC応答は、検査シーケンス全体の少なくとも1つの測定時間間隔中に測定してもよい。測定時間間隔において、分析結果の計算のためにAC応答を積分してもよい。例えば、測定時間間隔において、分析結果の計算のために少なくとも1つの測定ベクトルを積分してもよい。電流応答の時間的進展に関して、測定時間間隔および/または測定ベクトルを選択してもよい。加えてまたは代わりに、分析結果の計算のために、少なくとも2つの異なる測定時点または少なくとも1つの測定時間間隔を選択してもよい。
【0095】
DC時点におけるDC応答値は、種々の妨害効果の差別化を可能にする時点というように、特定の品質条件を満たせばよい。
励起電圧信号を測定電極に印加してもよく、その時点におけるAC電流応答および対応するDC応答の周波数毎の位相およびインピーダンス情報を使用して、応答を測定し評価する。具体的には、複素インピーダンス情報、更に加えて、位相情報を分析することもできる。複数のDC時点に対して同時に得られたDCi個の応答値を、検査シーケンス全体から選出することができ、更に格納し、測定の後、濃度を計算するために使用することができる。本方法は、少なくとも1つの格納ステップを含んでもよく、この格納ステップにおいて、検査シーケンスの適した数の時点に対してDC電流応答を、例えば、少なくとも1つの参照表に格納する。DC電流応答は、評価デバイスによって、例えば評価デバイスの少なくとも1つのデータ記憶デバイスおよび/またはデータ・キャリア(data carrier)に格納してもよい。選択するDC時点の数、および/またはDC時点の選択は、時点の品質、プロファイル形状および/または特性というようなDCプロファイル、検査シーケンスの長さまたは期間(duration)、予期される妨害、検体反応の時間的進展、検体反応の動力学の内1つ以上に依存してもよい。例えば、DC時点は、特定の期間、例えば、検査シーケンスにわたって均等に離間されてもよく、または互いに可変間隔で離間されてもよい。DC時点は、少なくとも各DC電圧ステップにおいて、1つのDC時点が選択されるように、選択されてもよい。例えば、3つのDC電圧ステップの場合、電圧ステップ毎に、少なくとも4つのDC時点が選択されるのでもよい。
【0096】
更に他の態様において、少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法を開示する。この方法は、対応する独立請求項において示され、以下に列挙するような方法ステップを含む。これらの方法ステップは、所与の順序で実行されればよい。しかしながら、これらの方法ステップには他の順序も実現可能である。更に、これらの方法ステップの内1つ以上は、並列におよび/または時間的に重複して実行されてもよい。更に、これらの方法ステップの内1つ以上は繰り返し実行されてもよい。更に、列挙されない追加の方法ステップがあってもよい。
【0097】
この方法は、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の内1つ以上にしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含む。この等価直列抵抗についての情報を判定する方法は、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの内一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含む。
【0098】
この方法は、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧信号を調節するステップを含む。例えば、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧信号の振幅またはパルス高を調節してもよい。例えば、励起電圧信号のパルス高を所望の電圧または公称電圧に調節してもよい。例えば、AC電圧信号を増加してもよい。加えてまたは代わりに、DC信号を規制(regulate)してもよい。ESR値が判定されているとき、この方法は、更に、次の式を使用することによって利得を計算するステップを含んでもよい。先に概説したように、等価直列抵抗ESRは、次の式によって判定することができる。
【0099】
【数13】
【0100】
iR降下が存在しても体液の試料に対するUtargetの印加を維持および/または確保するために、例えば、励起電圧信号を利得係数g倍に増大させることによって、励起電圧信号を利得係数gによって調節することができる。測定セルにおけるAC電流ISystemは、次の式で示される。
【0101】
【数14】
【0102】
targetは、AC目標励起電圧であり、公称または所望の励起電圧とも呼ぶ。測定セルUcellにおける電圧は、次のように書くことができる。
【0103】
【数15】
【0104】
ESRによる電圧降下UDropは、
【0105】
【数16】
【0106】
であり、ESRadjは、調節後の線抵抗である。
【0107】
【数17】
【0108】
ここで、OptimalESRは、体液の試料上に目標電圧を確保するための最適な線抵抗を示す。つまり、利得係数gは、次の式によって判定することができる。
【0109】
【数18】
【0110】
一旦利得係数が判定されたなら、この利得係数にしたがたってACまたはDC電圧信号の一方または双方を増大または減少させることができる。検体測定ならびにESRおよび利得設定値の判定は、同期させることもできる。例えば、検体測定は50ミリ秒毎に行っても良く、ESR値および利得設定値も50ミリ秒毎に判定してもよい。
【0111】
DC励起信号を調節するために、検体測定が開始する前に、暫定電流電圧応答曲線を判定してもよい。電流の増大がもはや電圧利得に比例しないプラトーを判定することもできる。この点は、DC利得として使用することもでき、検体測定全体について設定してもよく、および/または繰り返し判定してもよい。
【0112】
この方法の特徴の定義について、そしてこの方法の任意の詳細については、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の1つ以上を参照するとよい。
本明細書において使用する場合、「測定回路」(measurement circuit)という用語は、少なくとも1つの電子コンポーネントを含む電気回路を指す。例えば、測定回路は複数の抵抗器およびキャパシタを含んでもよい。例えば、測定回路は少なくとも2つの電極および複数のリードを含んでもよい。例えば、測定回路は電気化学セルを含んでもよい。
【0113】
「電圧降下」(voltage drop)という用語は、一般に、例えば、電圧が低下する変化を指す。電圧降下は、等価直列抵抗の存在に起因する場合がある。電圧降下は、観察可能な電圧変化である場合もある。例えば、電圧は高い値から5~50%の偏差(deviations)を示すことがある。例えば、金の検査ストリップでは、10mVrmsの励起振幅を有するAC測定信号における電圧降下は、1から6mVrmsまでの降下を呈することもある。例えば、炭素製検査ストリップは、9または9.5mVrmsまでのIR降下、即ち、本来の振幅の90~95%のIR降下を有する場合もある。本明細書において使用する場合、「電圧降下を補償する」(compensating voltage drop)という表現は、判定されたESRに応じて、励起電圧信号を規制するおよび/または調節するおよび/または適合させることを指す。例えば、測定電極の分極電圧が十分な分極、例えば、公称分極に対応するように、等価直列抵抗についての情報に応じて励起電圧信号を調節することによって、電圧降下を補償してもよい。「分極」(polarization)という用語は、電極と電解質との間の界面を通る電流の場合、酸化還元反応による電極と電解質との間の電位差の変化を指す。分極は相対的な変化であってもよい。「十分な分極」(sufficient polarization)という用語は、測定可能な信号を生成するのに十分な分極を指す。測定可能な信号とは、例えば、10%、好ましくは5%、最も好ましくは1%の許容範囲内で、NADに対して450mVとしてもよい。例えば、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧の振幅を調節するのでもよい。例えば、AC電圧信号を増加してもよい。加えてまたは代わりに、DC信号を規制してもよい。例えば、最大電流対電圧プラトーを確立するために、調節可能なDC信号を使用してもよい。iR降下を補償するために、DC電位を段階的に調節してもよい。
【0114】
更に他の態様において、体液における少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法を開示する。この方法は、対応する独立請求項において示され、以下に列挙するような方法ステップを含む。これらの方法ステップは、所与の順序で実行されればよい。しかしながら、これらの方法ステップには他の順序も実現可能である。更に、これらの方法ステップの内1つ以上は、並列におよび/または時間的に重複して実行されてもよい。更に、これらの方法ステップの内1つ以上を繰り返し実行してもよい。更に、列挙されていない追加の方法ステップがあってもよい。
【0115】
この方法は、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の内1つ以上にしたがって、少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法を含む。
【0116】
この補償方法は、次のステップを含む。
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップ、
-応答信号を測定するステップ、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップ、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップ、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧を調節するステップ。
【0117】
この方法は、少なくとも1つの検体測定ステップを含む。検体測定ステップにおいて、調節された励起電圧を測定電極に印加する。第2電流応答を測定し、第2電流応答から、少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する。
【0118】
この方法の特徴の更に他の定義について、そしてこの方法の任意の詳細については、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の1つ以上を参照するとよい。
【0119】
本明細書において使用する場合、「補償」(compensation)という用語は、具体的には、電圧降下による影響を受けない目標電圧を維持するための、励起電圧信号の規制および/または調節を指す。本明細書において使用する場合、「第2電流応答」(second current response)という用語は、調節された励起電圧に応答して判定された電流応答信号を指す。
【0120】
等価直列抵抗についての情報を判定するステップは、検体測定ステップと同時にまたは非同時に実行してもよい。例えば、等価直列抵抗についての情報を判定するステップは、検体測定ステップの前に実行してもよい。例えば、等価直列抵抗についての情報を判定するステップは、検体測定ステップ中に繰り返し実行してもよい。補償方法および検体測定は、これらが互いに妨害しないように、実行されればよい。例えば、補償方法の間、検体測定を一時中止してもよい。しかしながら、検体測定および補償方法を同時に実行する実施形態も実現可能である。例えば、正弦波を使用してESRを測定する場合、正弦波は、同じ周波数、または異なる周波数、ならびに任意の位相および振幅(magnitude)の他の正弦波に追加されたときに、その波形を維持するという事実により、一時中止は必要としなくてもよい。したがって、試料を測定するため、そしてESRのような他の情報を測定するために、複数の正弦波が可能であるとしてもよい。
【0121】
本方法は、少なくとも1つの試料塗布ステップを含んでもよい。試料塗布ステップにおいて、体液の試料を少なくとも2つの測定電極に塗布するのでもよい。
更に他の態様において、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法を開示する。この方法は、対応する独立請求項において示され、以下に列挙するような方法ステップを含む。これらの方法ステップは、所与の順序で実行されればよい。しかしながら、これらの方法ステップには、他の順序の実現可能である。更に、これらの方法ステップの内1つ以上は、並列におよび/または時間的に重複して実行されてもよい。更に、これらの方法ステップの内1つ以上を繰り返し実行してもよい。更に、列挙されていない追加の方法ステップがあってもよい。
【0122】
この方法は、
a)等価直列抵抗についての情報を判定する少なくとも1つのステップであって、
a1)少なくとも1つの第1励起電圧信号を生成し、第1励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップ、
a2)応答信号を測定するステップ、
a3)応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップ、
a4)オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップ、を含む、ステップと、
b)少なくとも1つの検体測定ステップであって、
b1)少なくとも1つの第2励起電圧を生成し、第2励起電圧を測定電極に印加するステップ、
b2)第2電流応答を測定するステップ、
b3)第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定するステップ、を含む、検体測定ステップと、
c)少なくとも1つの補正ステップであって、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、第2励起電圧を調節するステップ、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正するステップ、
の内1つ以上を含む、補正ステップと、
を含む。
【0123】
この方法の特徴の定義について、そしてこの方法の任意の詳細については、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の1つ以上を参照するとよい。
本明細書において使用する場合、「第1励起電圧信号」(first excitation voltage signal)という用語は、等価直列抵抗を判定するように構成された電圧信号を指す。本明細書において使用する場合、「第2励起電圧」(second excitation voltage)という用語は、少なくとも1つの検体の濃度を判定するように構成された電圧信号を指す。第2励起電圧信号は、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧、少なくとも1つの直流(DC)プロファイルを含むことができる。第1および第2励起電圧信号を同時にまたは非同時に測定電極に印加してもよい。
【0124】
等価直列抵抗についての情報を判定するステップは、検体測定ステップと同時にまたは非同時に実行してもよい。例えば、等価直列抵抗についての情報を判定するステップは、検体測定ステップの前に実行してもよい。例えば、等価直列抵抗についての情報を判定するステップは、検体測定ステップ中に繰り返し、例えば、周期的に実行してもよい。補償方法および検体測定は、これらが互いに妨害しないように実行されればよい。例えば、補償方法の間、検体測定を一時中止してもよい。しかしながら、検体測定および補償方法を同時に実行する実施形態も実現可能である。例えば、正弦波を使用してESRを測定する場合、正弦波は、同じ周波数、または異なる周波数、ならびに任意の位相および振幅(magnitude)の他の正弦波に追加されたときに、その波形を維持するという事実により、一時中止は必要としなくてもよい。したがって、試料を測定するため、そしてESRのような他の情報を測定するために、複数の正弦波が可能であるとしてもよい。
【0125】
この方法は、少なくとも1つの試料塗布ステップを含んでもよく、体液の試料を少なくとも1つの検査エレメントに塗布するのでもよい。
この方法は、システムの他の部分から、例えば、接点、ストリップ電気接続等から生ずる線抵抗というような、測定試料自体から発生するのではない、測定のあらゆる支配的実部に対する補正に対応することができる。
【0126】
更に、本発明は、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ・プログラムを開示および提案する。このプログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態の1つ以上において本発明による方法を実行する。具体的には、コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能なデータ担体上に格納することができる。つまり、具体的には、先に示したような方法ステップの内1つ、1つよりも多い方法ステップ、または全ての方法ステップでさえも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって、好ましくは、コンピュータ・プログラムを使用することによって実行することができる。
【0127】
更に、本発明は、プログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラム製品を開示および提案する。プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態の1つ以上において本発明にしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法、および/または体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法、および/または少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法の内少なくとも1つを実行する。具体的には、プログラム・コード手段は、コンピュータ読み取り可能なデータ担体上に格納することができる。
【0128】
更に、本発明は、データ構造が格納されているデータ担体を開示および提案する。コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークの作業メモリまたは主メモリへというように、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークにロードした後、本明細書において開示した方法(the embodiments)の1つ以上による方法を実行することができる。
【0129】
更に、本発明は、プログラム・コード手段が機械読み取り可能担体上に格納されたコンピュータ・プログラム製品も提案および開示する。プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書において開示する実施形態の1つ以上による方法の内少なくとも1つを実行する。本明細書において使用する場合、コンピュータ・プログラム製品とは、取引可能な製品としてのプログラムを意味する。製品は、一般に、紙のフォーマットでまたはコンピュータ読み取り可能データ担体上にというように、任意のフォーマットで存在することができる。具体的には、データ・ネットワークを通じてコンピュータ・プログラム製品を流通させることもできる。
【0130】
最後に、本発明は、本明細書において開示する実施形態の1つ以上による方法を実行するために、コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワークによって読み取り可能な命令を収容する変調データ信号を提案および開示する。
【0131】
好ましくは、本発明のコンピュータ実装される態様を参照すると、本明細書において開示する実施形態の1つ以上による方法の少なくとも1つの方法ステップの内1つ以上、または方法ステップの全てでも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって実行することができる。つまり、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップはいずれも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって実行することができる。一般に、これらの方法ステップは、通例、試料を供給するというような手作業および/または実際の測定を実行するための特定の態様を必要とする方法ステップを除いて、方法ステップのいずれでも含むことができる。
【0132】
具体的には、本発明は、更に、
-少なくとも1つのプロセッサを備えているコンピュータまたはコンピュータ・ネットワークであって、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法の少なくとも1つを実行するように構成される、プロセッサ、
-コンピュータにロード可能なデータ構造であって、このデータ構造がコンピュータ上で実行されている間、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法の少なくとも1つを実行するように構成される、データ構造、
-コンピュータ・プログラムであって、このプログラムがコンピュータ上で実行されている間、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法の少なくとも1つを実行するように構成される、コンピュータ・プログラム、
-コンピュータ・プログラムであって、コンピュータ上またはコンピュータ・ネットワーク上でこのコンピュータ・プログラムが実行されている間、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法の少なくとも1つを実行するためのプログラム手段を備えている、コンピュータ・プログラム、
-直前の実施形態によるプログラム手段を備えているコンピュータ・プログラムであって、プログラム手段が、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に格納される、コンピュータ・プログラム、
-記憶媒体であって、この記憶媒体上にデータ構造が格納され、このデータ構造が、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークの主ストレージおよび/または作業ストレージにロードされた後に、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法の少なくとも1つを実行するように構成される、記憶媒体、および
-プログラム・コード手段を有し、プログラム・コード手段を記憶媒体上に格納することができるまたは格納した、コンピュータ・プログラム製品であって、プログラム・コード手段がコンピュータ上またはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書において説明する実施形態の1つによる方法の少なくとも1つを実行する、コンピュータ・プログラム製品を開示する。
【0133】
本発明の更に他の態様において、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する分析デバイスを開示する。
この分析デバイスは、少なくとも1つの励起電圧信号を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイスを備えている。この分析デバイスは、少なくとも1つの基準抵抗Rrefを備えている。信号生成デバイスは、例えば、基準抵抗Rrefと直列の少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも2つの測定電極に、励起電圧信号Utargetを印加するように構成される。分析デバイスは、少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニットを備えている。分析デバイスは、少なくとも1つの評価デバイスを備えている。評価デバイスは、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方から、オーム信号部分Umeasuredを判定するように構成される。評価デバイスは、次の関係にしたがって、オーム信号部分から等価直列抵抗ESRについての少なくとも1つの情報を生成するように構成される。
【0134】
【数19】
【0135】
分析デバイスは、本発明による方法の実施形態の1つ以上にしたがって、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法を実行するように構成することができる。この分析デバイスの特徴の定義について、そしてこの分析デバイスの任意の詳細については、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の実施形態の1つ以上を参照するとよい。
【0136】
「測定ユニット」(measuring unit)という用語は、一般に、少なくとも1つの信号、具体的には応答を検出するように構成する(configure)ことができる任意のデバイス、好ましくは、電子デバイスを指すことができる。測定ユニットは、第1励起電圧信号に応答して生成された応答信号、および/または電流応答を検出するように構成することができる。測定ユニットは、第1励起電圧信号に応答して生成された応答信号および/または電流応答の一方または双方を、少なくとも2つの異なる測定時点において受け取るように構成することもできる。
【0137】
信号生成デバイスは、少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも2つの測定電極に励起電圧信号を印加するように構成することができる。分析デバイスは、検査エレメントとは独立して扱うことができ、少なくとも1つの応答を検出することによってというようにして、分析を実行するために検査エレメントと相互作用するように構成することもできる。したがって、「分析デバイス」(analytical device)という用語は、多くの場合、測定デバイス、分析デバイス、メータ、または検査デバイスと呼んでもよい。
【0138】
分析デバイスは、少なくとも1つの基準抵抗を備えてもよい。基準抵抗は、測定電極と直列である。基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された、具体的には、予め決められている平均値であってもよい。例えば、基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された平均Hct値に対応してもよい。
【0139】
更に、分析デバイスは、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧を調節するように構成された少なくとも1つの制御デバイスを備えてもよい。評価デバイスは、少なくとも1つの電気化学セルによる電圧降下を計算するように構成することができる。制御デバイスは、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧の振幅を調節するように構成することもできる。制御デバイスは、評価デバイスの一部であってもよく、または別個のデバイスとして設計されてもよい。信号生成デバイスは、調節した励起電圧信号を測定電極に印加するように構成される。
【0140】
評価デバイスは、励起電圧信号に応答して測定電極によって生成された電流応答を判定し、電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を評価するように構成することができる。評価デバイスは、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正するように構成することもできる。例えば、評価デバイスは、アドミタンス値またはインピーダンス値、および/または位相情報を補正するように構成されてもよい。
【0141】
分析デバイスは、少なくとも2つの動作モードで動作するように構成することができる。第1動作モードにおいて、分析デバイスは、等価直列抵抗についての情報を判定するように構成することができ、第2動作モードにおいて、分析デバイスは検体濃度を測定するように構成することができる。分析デバイスは、これらの動作モード間で切り替えるように構成することができる。
【0142】
信号生成デバイスは、少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも2つの測定電極に励起電圧信号を印加するように構成することができる。信号生成デバイスは、少なくとも1つの方形波信号および/または少なくとも1つの正弦波信号を生成するように構成することもできる。
【0143】
評価デバイスは、少なくとも1つの所定の関係から、検体の濃度を判定し、少なくとも1つの所定の関係を使用することによって複素インピーダンス情報を判定するように構成することができる。所定の関係の定義および実施形態に関して、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法の説明を参照する。
【0144】
本発明の更に他の態様において、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する検査エレメント分析システムを開示する。この検査エレメント分析システムは、
-以上で開示したようなまたは以下で更に詳しく開示するような少なくとも1つの分析デバイスと、
-検体についての特性である少なくとも1つの変化を実行することができる少なくとも1つの測定ゾーンを有する少なくとも1つの検査エレメントであって、少なくとも2つの測定電極を含む、検査エレメントと、
を備えている。
【0145】
検査エレメント分析システムの特徴の定義について、そしてこの検査エレメント分析システムの任意の詳細については、先に開示した方法または以下で更に詳しく開示する方法および分析デバイスの実施形態の1つ以上を参照するとよい。具体的には、検査エレメント分析システムは、分析デバイスの実施形態の1つ以上による分析デバイスに関係する特徴を有して、具体化されてもよい。
【0146】
更に本明細書において使用する場合、「システム」(system)という用語は、全体を形成する、任意の1組の相互作用または相互依存コンポーネント部を指す。具体的には、コンポーネントは、少なくとも1つの共通機能を実現するために、互いに相互作用することができる。少なくとも2つのコンポーネントは、独立して扱うことも、または結合することもでき、あるいは接続可能であってもよい。つまり、「検査エレメント分析システム」(test element analysis system)という用語は、一般に、任意の検査エレメントと相互作用することによって、少なくとも1つの分析検出を実行するために、 具体的には、試料の少なくとも1つの検体の少なくとも1つの分析検出を実行するために、相互作用することができる少なくとも2つのエレメントまたはコンポーネントの集合体を指す。また、検査エレメント分析システムは、一般に、分析システム、分析キット、センサ・システム、または測定システムと呼んでもよい。検査エレメント分析システムは、具体的には、少なくとも2つのコンポーネントを含む装置(apparatus)であってもよい。
【0147】
「検査エレメント」(test element)という用語は、一般に、試料において検体を検出するまたは試料のパラメータを判定することができる任意のデバイスを指すことができる。検査エレメントは、具体的には、ストリップ形状の検査エレメントであってもよい。本明細書において使用する場合、「ストリップ形状」(strip shaped)という用語は、細長い形状および厚さを有するエレメントを指し、エレメントの横方向の長さ(extension)が、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、更に好ましくは少なくとも10倍、そして最も好ましくは少なくとも20倍、または少なくとも30倍だけ、エレメントの厚さを超える。したがって、検査エレメントを検査ストリップと呼んでもよい。
【0148】
検査エレメントは、検体が検査化学薬品のような試料中に存在するときに、少なくとも1つの検出可能なプロパティを変化させる少なくとも1つの成分または少なくとも1つの試薬を含めばよい。「検査化学薬品」(test chemistry)という用語は、検査化学物質(test chemical)とも呼ばれ、検体の存在下において少なくとも1つの検出可能なプロパティを変化させるように構成された任意の材料または材料の組み合わせを指すことができる。一般に、このプロパティは、色の変化および/または軽減プロパティ(remissive properties)の変化というような、電気化学的に検出可能なプロパティおよび/または光学的に検出可能なプロパティから選択することができる。具体的には、検査化学薬品は、検査エレメントに加えられた体液の試料内に検体が存在する場合にのみプロパティを変化させ、検体が存在しない場合には変化が生じない、非常に選択的な検査化学薬品であってもよい。更に好ましくは、検体の定量的検出に対処するために、プロパティの変化の度合いが体液における検体の濃度に依存してもよい。
【0149】
具体的には、検査エレメントは、体液の成分の凝固を活性化するように構成された少なくとも1つの試薬を含んでもよい。試薬は、トロンボプラスチンの反応成分およびペプチド基質を含んでもよい。つまり、試薬が試料に露出される場合、トロンボプラスチンが凝固を活性化することができ、トロンビンを生成することができる。トロンビンは、ペプチド基質を切り裂く(cleave)ことができ、電気化学信号を生成することができる。電気化学信号は、その発生時点に関して評価されてもよい。しかしながら、他の試薬および/または測定原理が実現可能な場合もある。
【0150】
本明細書において使用する場合、「電気化学的検出」(electrochemical detection)という用語は、電気化学的検出反応のような、電気化学的手段による検体の電気化学的検出可能プロパティの検出を指す。つまり、例えば、電気化学的検出反応は、作用電極の電位と、対向電極または基準電極のような1つ以上の他の電極の電位というように、1つ以上の電極電位を比較することによって検出することができる。検出は、検体特異的であってもよい。検出は、定性的および/または定量的検出であってもよい。
【0151】
検査エレメントは、検体の特性またはパラメータである少なくとも1つの変化を行うことができる少なくとも1つの測定ゾーンを有すればよい。更に本明細書において使用する場合、「測定ゾーン」(measuring zone)という用語は、任意の測定、具体的には、分析測定が行われる物体の任意のエリアまたは領域を指すことができる。具体的には、先に説明したような検査化学薬品が、測定ゾーンの内部、特に、測定ゾーンの表面上にあればよい。検査エレメントは、電気化学検出エレメントであってもよい。
【0152】
「電気化学検査エレメント」(electrochemical test element)という用語は、少なくとも1つの電気化学的検出を行うように構成された任意の検査エレメントを指すことができる。本明細書において使用する場合、「電気化学的検出」(electrochemical detection)という用語は、電気化学的検出反応のような、少なくとも1つの任意の検体の電気化学的に検出可能なプロパティの検出を指す。つまり、例えば、電気化学的検出反応は、作用電極の静電電位と、対向電極または基準電極のような1つ以上の他の電極の静電電位というように、1つ以上の電極電位を比較することによって検出することができる。検出は検体特異的であってもよい。検出は、定性的および/または定量的検出であってもよい。例えば、検査エレメントが検査ストリップであってもよい。
【0153】
検査エレメントは、試料を受け取るように構成された少なくとも1つの毛細管を含んでもよい。「毛細管」(capillary)という用語は、一般に、小管のような、任意の小さく細長い空隙空間を指す。一般に、毛細管は、ミリメートルまたはミリメートル未満の範囲の寸法を有するとして差し支えない。通常、流体媒体は毛細管作用によって毛細管を通過することができ、流体媒体と、流体媒体と面する毛細管の表面との間における分子間力により、重力のような外部力の補助がなくても、流体媒体は毛細管の狭い空間内に流入することができる。例えば、検査エレメントは少なくとも1つの対面電極構成を有するとよい。検査エレメントは、三方に開く少なくとも1つの毛細管を有してもよい。対面する電極表面には、吸収試薬層が被覆され、この試薬被覆によって試料が吸収および拡散されるようにしてもよい。液体層を使用することによって、 対面する電極表面同士を導電接続してもよい。
【0154】
分析デバイスは、検査エレメント・ホルダを備えてもよい。「検査エレメント・ホルダ」(test element holder)という用語は、一般に、任意の検査エレメントを受け入れるまたは保持するように構成された任意の物体を指すことができる。具体的には、少なくとも1つの方向への検査エレメントの移動の、少なくとも大部分が抑制されるように、検査エレメント・ホルダ内の特定の位置に検査エレメントを配置することができる。したがって、検査エレメントの測定ゾーンを、測定ユニットに対して、所定の位置に設定することができる。検査エレメントは、具体的に、検査エレメント・ホルダ内に逆向きに入れられるように構成されてもよい。つまり、検査エレメントは、難しい話は抜きにして、検査エレメント・ホルダから取り出せればよい。更に、他の実施形態も実現可能である。検査エレメントは、少なくとも部分的に検査エレメント・ホルダ内に受け入れられればよい。「受け入れられる」(being received)という用語は、一般に、受容体または他のエレメントの開口内に完全にまたは少なくとも部分的に配置あるいは挿入されたような、物体の状態を指すことができる。つまり、物体の一部が、他のエレメントの外側に出ていてもよい。一例をあげると、検査エレメント・ホルダは、検査エレメントを受け入れるように構成された少なくとも1つの受容体を含むのでもよい。このため、受容体は検査エレメントに対して相補的な形状に作られるとよい。したがって、受容体および検査エレメントは、形状にぴったり合った接続ができるように構成することができる。検査エレメント・ホルダは、検査エレメントと検査エレメント・ホルダとの間で電気的接触を可能にする、少なくとも1つの接触エレメントを含んでもよい。
【0155】
検査エレメントは、導電性支持部および/または導電性通路のような、導電性エリアを含んでもよく、電解質と接触する導電性エリアの部分を、電極と呼んでもよい。導電性エリアの少なくとも1つは、薄い層、例えば、薄い電極層を含んでもよい。この薄い層は、50nm以下の層厚を有してもよい。
【0156】
例えば、薄い層は金を含んでもよく、または金層であってもよい。例えば、薄い層は、20nmの層厚を有し、スパッタリングによる金層であってもよい。
例えば、薄い層は炭素を含んでもよい。炭素は、例えば、ペーストの形態でおよび/または厚膜として、少なくとも1つのキャリア・ホイル(carrier foil)上に塗布されてもよい。導電性エリアは、追加の金属層を全く用いずに、炭素を含む薄い層を有してもよい。
【0157】
測定電極は、非構造化電極(non-structured electrode)であってもよい。本明細書において使用する場合、「非構造化」(non-structured)という用語は、電極が、例えば、印刷したことによって、形成された構造を呈していないという事実を指す。例えば、測定電極の各々は、材料層を少なくとも1つのキャリア層上、例えば、少なくとも1つのフォイルに、スパッタリング、および/または蒸着、および/またはスロット・ダイ・コーティング(slot die coating)、および/または印刷、および/または切除術、および/またはブレード・コーティングすることによって、製造されてもよい。測定電極は、対面電極として設計されてもよい。
【0158】
更に他の態様において、等価直列抵抗についての情報を判定する方法のフェール・セーフのための使用を開示する。第1ステップにおいて、本発明にしたがって等価直列抵抗についての情報を判定する方法を使用して、等価直列抵抗についての情報を判定することができる。少なくとも1つのフェール・セーフ・ステップにおいて、例えば、少なくとも1つの評価デバイスを使用することによって、等価直列抵抗についての情報を、少なくとも1つの所定の抵抗限度および/または既定の抵抗限度と比較してもよい。本明細書において使用する場合、「フェール・セーフ・ステップ」(fail-safe step)という用語は、信頼性のないまたは偽りの測定値を生成および/または判定および/または表示するのを確実に防止する少なくとも1つのステップを指す。例えば、抵抗限度は少なくとも1つの上限であってもよい。例えば、抵抗限度は、100Ω、好ましくは150Ω、最も好ましくは180Ωにしてもよい。フェール・セーフ・ステップは、ESRについての情報を複数の抵抗値と比較するステップを含んでもよい。フェール・セーフ・ステップは、例えば、評価デバイスの、例えば、測定エンジン電子回路内部に、所定の抵抗限度および/または既定の抵抗限度を格納するステップを含んでもよい。
【0159】
フェール・セーフ・ステップは、体液における少なくとも1つの検体の判定の前および/または最中に実行してもよい。フェール・セーフ・ステップは、繰り返し、例えば、50ms毎というように、既定の間隔で実行してもよい。しかしながら、他の実施形態および時間間隔も可能である。
【0160】
ESRについての情報は、フェール・セーフ・ステップにおいて、体液の試料の充填が、信頼性のある測定値を判定するのに十分か否か、および/または検査エレメントと分析デバイスとの間に十分な接触が存在するか否か、および/または検査エレメントの接点が損傷しているかまたはいないか、および/または検査エレメントが分析デバイスに挿入され、その内部にあるか否か、および/または検査エレメントが分析デバイスから取り除かれたか否か、および/またはDC測定の間にスパイクのような異常が発生したか否か、 の内1つ以上を判定するために使用することができる。
【0161】
この比較に基づいて、フェール・セーフ・ステップにおいて、少なくとも1つのフェール・セーフ判断を判定することができ、および/または少なくとも1つのフェイル・セーフ・アクションを実行することができる。例えば、フェール・セーフ・ステップは、ESRについての情報が抵抗限度を超過した場合、エラー・メッセージを発行および/または表示するステップを含むのでもよい。例えば、フェール・セーフ・ステップは、ESRについての情報が抵抗限度を超過した場合、分析結果を発行および/または表示するのを禁止するステップを含むのでもよい。代わりに、フェール・セーフ・ステップは、ESRについての情報が抵抗限度を超過した場合、エラー・メッセージを発行および/または表示するステップを含んでもよい。フェール・セーフ・ステップは、ESRについての情報が抵抗限度を超過した場合、警告メッセージを表示するステップを含んでもよい。フェール・セーフ・ステップは、ESRについての情報が抵抗限度を超過した場合、分析デバイスから検査エレメントを取り出すステップを含んでもよい。
【0162】
例えば、等価直列抵抗についての情報を判定する方法は、検査エレメント分析システム、血液ガス・センサ、イオン感応センサ、代謝センサの内1つ以上において、フェール・セーフとして使用することもできる。
【0163】
提案した方法、分析デバイス、および検査エレメント分析システムは、既知のデバイスおよび方法に対して多くの利点を提供する。具体的には、提案した方法、分析デバイス、および検査エレメント分析システムは、個々の検査ストリップを特徴付け、抵抗路を評価し、より高い抵抗からの振幅損失を補償し、特徴付けられた抵抗データを使用して、測定から得られた(result)複素インピーダンスおよび位相を補正することを可能にする。非常に薄い金導体の製造、または貴金属以外の他の材料の使用により、大きな導通許容度(conductance tolerance)が生ずるに至る可能性がある。これは、検査ストリップ製造プロセスにおいて問題となる可能性があり、制御するのは不可能であるおそれがある。提案した方法、分析デバイス、および検査エレメント分析システムは、測定毎に特徴付けおよび動的な補償を可能にし、したがって、検査エレメントの製造コスト低減を可能にする。
【0164】
本発明からわかった結果を要約すると、以下の実施形態が好ましい。
実施形態1:等価直列抵抗についての情報を判定する方法であって、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、この信号フランクの形状および高さの一方または双方から、オーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての情報を判定するステップと、
を含む。
【0165】
実施形態2:直前の実施形態による方法において、信号フランクが立ち上がり信号フランクまたは立ち下がり信号フランクである。
実施形態3:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、励起電圧信号が方形波信号または正弦波信号を含む。
【0166】
実施形態4:直前の実施形態による方法において、励起電圧信号が正弦波信号であり、励起電圧信号の周波数が20kHzから300kHzまでである。
実施形態5:前出の実施形態のいずれか1つによる方法において、励起電圧信号は、パルスのような不連続信号を含む。
【0167】
実施形態6:直前の実施形態による方法において、励起電圧信号が反復サイクルを含み、この繰り返しサイクルが少なくとも1つの励起信号フランクを含む。
実施形態7:直前の実施形態による方法において、励起電圧信号の励起信号フランクが、励起信号フランクの第1点から励起信号フランクの第2点まで、マイクロ秒ないしナノ秒範囲の信号変化を有する。
【0168】
実施形態8:直前の実施形態による方法において、応答信号が複素インピーダンスにおけるオーム信号部分を含む。
実施形態9:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、この方法は、等価直列抵抗についての情報を判定する方法に関係する前出の実施形態のいずれか1つにしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含み、等価直列抵抗についての情報を判定する方法は、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての情報を判定するステップと、
を含み、
この方法は、少なくとも1つの電流応答を測定し、この電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含み、
この方法は、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正する、少なくとも1つの補正ステップを含む。
【0169】
実施形態10:直前の実施形態による方法において、この方法が、体液の試料を少なくとも2つの測定電極に塗布する、少なくとも1つの試料塗布ステップを含む。
実施形態11:2つの直前の実施形態のいずれか1つによる方法において、励起電圧信号が、等価直列抵抗についての情報を判定するために、方形波信号または正弦波信号を含み、励起電圧信号が、複素インピーダンス情報を判定するために、少なくとも1つの測定正弦波信号を含む。
【0170】
実施形態12:直前の実施形態による方法において、励起電圧信号が、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧と、少なくとも1つの直流(DC)プロファイルとを含む。
【0171】
実施形態13:少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法において、この方法は、等価直列抵抗についての情報を判定する方法に関係する前出の実施形態のいずれか1つにしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含み、等価直列抵抗についての情報を判定する方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含み、
この方法が、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧信号を調節するステップを含む。
【0172】
実施形態14:直前の実施形態による方法において、測定電極の分極電圧が十分な分極に対応するように、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧信号を調節することによって、電圧降下を補償する。
【0173】
実施形態15:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法において、この方法は、補償方法に関係する前出の実施形態のいずれか1つにしたがって、少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法を含み、この補償方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-第1電流応答から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧を調節するステップと、
を含み、
この方法は、調節された励起電圧を測定電極に印加し、第2電流応答を測定し、第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンスを判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含む。
【0174】
実施形態16:直前の実施形態による方法において、等価直列抵抗についての情報を判定するステップが、検体測定ステップと同時にまたは非同時に実行される。
実施形態17:直前の実施形態による方法において、補償方法の間、検体測定を一時停止する。
【0175】
実施形態18:前出の3つの実施形態のいずれか1つによる方法において、この方法が、少なくとも1つの試料塗布ステップを含み、少なくとも2つの測定電極に体液の試料を塗布する。
【0176】
実施形態19:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、
a)等価直列抵抗についての情報を判定する少なくとも1つのステップであって、
a1)少なくとも1つの第1励起電圧信号を生成し、第1励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
a2)応答信号を測定するステップと、
a3)応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
a4)オーム信号部分から、等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含む、ステップと、
b)少なくとも1つの検体測定ステップであって、
b1)少なくとも1つの第2励起電圧を生成し、第2励起電圧を測定電極に印加するステップと、
b2)第2電流応答を測定するステップと、
b3)第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定するステップと、
を含む、検体測定ステップと、
c)少なくとも1つの補正ステップであって、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、第2励起電圧を調節するステップと、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正するステップと、
の内1つ以上を含む、補正ステップと、
を含む。
【0177】
実施形態20:直前の実施形態による方法において、等価直列抵抗についての情報を判定するステップが、検体測定ステップと同時にまたは非同時に実行される。
実施形態21:直前の実施形態による方法において、等価直列抵抗についての情報を判定するステップの間、検体測定を一時停止する。
【0178】
実施形態22:直前の3つの実施形態のいずれか1つによる方法において、この方法が少なくとも1つの試料塗布ステップを含み、少なくとも1つの検査エレメントに体液に試料を塗布する。
【0179】
実施形態23:直前の4つの実施形態のいずれか1つによる方法において、第2励起電圧信号が、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧と少なくとも1つの直流(DC)プロファイルとを含む。
【0180】
実施形態24:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する分析デバイスであって、この分析デバイスが、少なくとも1つの励起電圧信号を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイスを備えており、この信号生成デバイスが、励起電圧信号を少なくとも2つの測定電極に印加するように構成され、分析デバイスが、少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニットを備えており、分析デバイスが少なくとも1つの評価デバイスを備えており、この評価デバイスが、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するように構成され、評価デバイスが、オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を生成するように構成される。
【0181】
実施形態25:直前の実施形態による分析デバイスにおいて、この分析デバイスが少なくとも1つの基準抵抗を備えている。
実施形態26:直前の2つの実施形態のいずれか1つによる分析デバイスにおいて、この分析デバイスが、更に、等価直列抵抗についての情報に応じて励起電圧を調節するように構成された少なくとも1つの制御デバイスを備えている。
【0182】
実施形態27:直前の実施形態による分析デバイスにおいて、評価デバイスが、少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも1つの電気化学セルによる電圧降下を計算するように構成される。
【0183】
実施形態28:直前の実施形態による分析デバイスにおいて、制御デバイスが、等価直列抵抗についての情報に応じて励起電圧の振幅を調節するように構成される。
実施形態29:直前の実施形態による分析デバイスにおいて、信号生成デバイスが、調節された励起電圧信号を測定電極に印加するように構成される。
【0184】
実施形態30:前出の実施形態の内、分析デバイスに関係するいずれか1つによる分析デバイスにおいて、評価デバイスが、励起電圧信号に応答して測定電極によって生成された電流応答を判定し、電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を評価するように構成される。
【0185】
実施形態31:直前の実施形態による分析デバイスにおいて、評価デバイスが、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正するように構成される。
実施形態32:前出の実施形態の内分析デバイスに関係するいずれか1つによる分析デバイスにおいて、分析デバイスが少なくとも2つの動作モードで動作するように構成され、第1動作モードにおいて、分析デバイスは等価直列抵抗についての情報を判定するように構成され、第2動作モードにおいて、分析デバイスは検体濃度を測定するように構成される。
【0186】
実施形態33:直前の実施形態による分析デバイスにおいて、分析デバイスが動作モード間で切り替えるように構成される。
実施形態34:前出の実施形態の内、分析デバイスに関係するいずれか1つによる分析デバイスにおいて、信号生成デバイスが、少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも2つの測定電極に、励起電圧信号を印加するように構成される。
【0187】
実施形態35:前出の実施形態の内、分析デバイスに関係するいずれか1つによる分析デバイスにおいて、信号生成デバイスが、少なくとも1つの方形波信号および/または少なくとも1つの正弦波信号を生成するように構成される。
【0188】
実施形態36:前出の実施形態の内、分析デバイスに関係するいずれか1つによる分析デバイスにおいて、評価デバイスが、少なくとも1つの所定の関係を使用することによって、複素インピーダンス情報から検体の濃度を判定するように構成される。
【0189】
実施形態37:前出の実施形態の内、分析デバイスに関係するいずれか1つによる分析デバイスにおいて、分析デバイスが、前出の実施形態の内体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法に関係するいずれかにしたがって、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法を実行するように構成される。
【0190】
実施形態38:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する検査エレメント分析システムであって、
前出の実施形態の内分析デバイスに関係するいずれかによる少なくとも1つの分析デバイスと、
検体についての特性である少なくとも1つの変化を実行することができる少なくとも1つの測定ゾーンを有する少なくとも1つの検査エレメントであって、少なくとも2つの測定電極を含み、測定電極が非構造化電極である、検査エレメントと、
を備えている。
【0191】
実施形態39:直前の実施形態による検査エレメント分析システムにおいて、検査エレメントが、導電性支持部および/または導電性通路のような導電性エリアを含み、導電性エリアの少なくとも1つが薄い層を含み、この薄い層が50nm以下の層厚を有する。
【0192】
実施形態40:直前の実施形態による検査エレメント分析システムにおいて、薄い層が、炭素、金から成る一群から選択された材料を含む。
実施形態41:前出の実施形態の内、検査エレメント分析システムに関係するいずれか1つによる検査エレメント分析システムにおいて、測定電極が対面電極として設計される。
【0193】
実施形態42:前出の実施形態の内、検査エレメント分析システムに関係するいずれか1つによる検査エレメント分析システムにおいて、検査エレメントが検査ストリップである。
【0194】
実施形態43:前出の実施形態の内、等価直列抵抗についての情報を判定する方法に関係するいずれか1つにしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法のフェール・セーフのための使用。
【0195】
実施形態44:等価直列抵抗についての情報を判定する方法であって、
-少なくとも1つの励起電圧信号Utargetを生成し、基準抵抗Rrefに直列な少なくとも2つの測定電極に励起電圧を印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分Umeasuredを判定するステップと、
-関係
【0196】
【数20】
【0197】
にしたがってオーム信号部分から等価直列抵抗ESRについての情報を得るステップと、
を含む。
実施形態45:実施形態44による方法において、励起電圧信号が方形波信号または正弦波信号を含む。
【0198】
実施形態46:実施形態44または45による方法において、励起電圧信号が、パルスのような、不連続信号を含む。
実施形態47:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、この方法は、実施形態44~46のいずれかにしたがって等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含み、等価直列抵抗についての情報を判定する方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、この励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての情報を判定するステップと、
を含み、
この方法が、少なくとも1つの電流応答を測定し、電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含み、
この方法が、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正する、少なくとも1つの補正ステップを含む。
【0199】
実施形態48:少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法であって、この方法が、実施形態44~46のいずれか1つにしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法を含み、等価直列抵抗についての情報を判定する方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含み、
この方法が、等価直列抵抗についての情報に応じて励起電圧信号を調節するステップを含む。
【0200】
実施形態49:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、この方法が、実施形態48にしたがって少なくとも1つの測定回路によって電圧降下を補償する方法を含み、補償する方法が、
-少なくとも1つの励起電圧信号を生成し、励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
-応答信号を測定するステップと、
-第1電流応答から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
-オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
-等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧を調節するステップと、
を含み、
この方法が、調節された励起電圧を測定電極に印加し、第2電流応答を測定し、この第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定する、少なくとも1つの検体測定ステップを含む。
【0201】
実施形態50:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する方法であって、
a)等価直列抵抗についての情報を判定する少なくとも1つのステップであって、
a1)少なくとも1つの第1励起電圧信号を生成し、第1励起電圧を少なくとも2つの測定電極に印加するステップと、
a2)応答信号を測定するステップと、
a3)応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するステップと、
a4)オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を判定するステップと、
を含む、ステップと、
b) 少なくとも1つの検体測定ステップであって、
b1)少なくとも1つの第2励起電圧を生成し、第2励起電圧を測定電極に印加するステップと、
b2)第2電流応答を測定するステップと、
b3)第2電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定するステップと、
を含む、検体測定ステップと、
c)少なくとも1つの補正ステップであって、
-等価直列抵抗についての情報に応じて第2励起電圧を調節するステップと、
-等価直列抵抗についての情報に応じて複素インピーダンス情報の1つまたは双方を補正するステップ、
の内1つ以上を含む、補正ステップと、
を含む。
【0202】
実施形態51:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する分析デバイスであって、この分析デバイスが、少なくとも1つの励起電圧信号Utargetを生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイスを備えており、分析デバイスが少なくとも1つの基準抵抗Rrefを含み、信号生成デバイスが、基準抵抗Rrefに直列な少なくとも2つの測定電極に、励起電圧信号を印加するように構成され、分析デバイスが、少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニットを備え、分析デバイスが、少なくとも1つの評価デバイスを備え、この評価デバイスが、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分Umeasuredを判定するように構成され、評価デバイスが、関係
【0203】
【数21】
【0204】
にしたがってオーム信号部分から等価直列抵抗ESRについての少なくとも1つの情報を生成するように構成される。
実施形態52:実施形態51による分析デバイスにおいて、この分析デバイスが、更に、等価直列抵抗についての情報に応じて励起電圧を調節するように構成された少なくとも1つの制御デバイスを備えている。
【0205】
実施形態53:実施形態51または52のいずれか1つによる分析デバイスにおいて、この分析デバイスが少なくとも2つの動作モードで動作するように構成され、第1動作モードにおいて、分析デバイスが等価直列抵抗についての情報を判定するように構成され、第2動作モードにおいて、分析デバイスが検体濃度を測定するように構成される。
【0206】
実施形態54:体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定する検査エレメント分析システムであって、
実施形態51~53のいずれかによる少なくとも1つの分析デバイスと、
検体についての特性である少なくとも1つの変化を実行することができる少なくとも1つの測定ゾーンを有する少なくとも1つの検査エレメントであって、少なくとも2つの測定電極を含む、検査エレメントと、
を備えている。
【0207】
実施形態55:実施形態54による検査エレメント分析システムにおいて、検査エレメントが検査ストリップである。
実施形態56:実施形態44~46のいずれか1つにしたがって、等価直列抵抗についての情報を判定する方法のフェール・セーフのための使用。
【図面の簡単な説明】
【0208】
本発明の更に他の随意の特徴および実施形態について、好ましい実施形態についての後続の説明において更に詳しく、好ましくは従属請求項と併せて開示する。本発明において、それぞれの随意の特徴は、当業者には認められるであろうが、別個に実現されても、任意の実現可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されるのではない。図において、実施形態を模式的に示す。本明細書において、これらの図における同一の参照番号は、同一のエレメントまたは機能的に比肩し得るエレメントを指す。
図1図1A~1Dは、ナイキスト図における等価直列抵抗(図1A)、検査エレメントの省略等価回路(図1B)および検査エレメントの更に詳細な等価回路(図1C)、ならびに図1Cに示す等価回路のコンポーネントを検査エレメントにおいて可視化したもの(図1D)を示す。
図2図2Aおよび2Bは、本発明による検査エレメントの実施形態を、分解図において示し、更に組み立てた場合を示す。
図3図3は、本発明による検査エレメント分析システムの例示的な実施形態を示す。
図4図4AおよびBは、応答信号の時間的進展および概略的な等価回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0209】
図1Aは、模式ナイキスト図を示し、具体的には、複素インピーダンスの虚部Im(z)、および複素インピーダンスの実部Re(z)を示す。ナイキスト図は、等価直列抵抗(ESR)によってオーム、実部を示し、電荷移動抵抗(CTR:charge transfer resistance)によって虚部を示す。複素インピーダンスは、励起電圧信号から生じ、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧と、少なくとも1つの直流(DC)プロファイルとを含む。ナイキスト図において、AC測定値に対応する半円部を示す。更に、検体の拡散制御DC測定値に対応する45°部分も示す。AC電圧の高周波数は、半円部の低いRe(z)において現れることができ、一方AC電圧の低周波数はDC測定値に対して反応を示す(reactive with)ことができる。AC電圧の高周波数は、Re(z)の判定を可能にすることができる。AC電圧の低周波数は、信頼性のあるAC測定値を高い分解能で確定することができる。
【0210】
図1Bは、等価直列抵抗に直列な電気化学セル128として近似された検査エレメント110の省略等価回路を示す。ここで、Rは等価直列抵抗であり、Rは電解質抵抗であり、CおよびCは二重層容量を記述する。等価直列抵抗が存在することにより、ESRにおいて観察可能な電圧降下を生じさせることができる。この電圧降下は、少なくとも1つの検体の濃度判定に影響を及ぼすおそれがあり、具体的には、誤った測定結果が生ずるおそれがある。RおよびR、具体的には、Rに直列のRは、電荷移動抵抗を記述する。更に、図1Bにおいて、Rはウオーバーグ拡散エレメント(Warburg diffusion element)Wと直列である。このウオーバーグ拡散エレメントは、定位相エレメントであり、45°の定位相を有し、位相が周波数とは独立であり、二乗根に反比例する大きさを有する。
【0211】
【数22】
【0212】
ここで、Aはウオーバーグ係数であり、Rは理想的なガス定数であり、Tは熱力学温度であり、Fはファラデイ係数であり、nは価数であり、Dは種の拡散係数であり、下付き文字OおよびRは、それぞれ、酸化種および還元種であり、CbはバルクにおけるO種およびR種の濃度であり、Cは電解質の濃度であり、Aは表面積を示し、Qは存在するRおよびO種の端数を示す。
【0213】
図1Cは、検査エレメント分析システム112の検査エレメント110の更に詳細な等価回路である。図1Dは、図1Cに示す等価回路のコンポーネントを、検査エレメント110において可視化したもの示す。図1Dに示すように、検査エレメント110は少なくとも2つの測定電極116を備えている。検査エレメント110は、検体についての特性である少なくとも1つの変化を行うことができる、少なくとも1つの測定ゾーン114を有する。測定電極116は、非構造化電極であってもよい。測定電極116の1つは、作用電極118として具体化することができ、他方の測定電極は対向電極120として具体化することができる。測定電極116は、電解質、例えば、体液の試料と接触し、電気化学セル128を形成することができる。先に概説したように、測定電極116の複数の層が、上昇する回路経路固有抵抗(circuit path resistivity)を呈し、これは図1Cおよび図1Dの等価回路において、電極の各々、および電気化学セル128における電解質の等価直列抵抗(ESR)として図示されている。双方の測定電極116の電荷移動抵抗(CTW)およびウオーバーグ拡散エレメントWは、二重層容量CDLに並列に図示されている。更に、図1Dにおいて、模式的に、励起電圧Uの印加、結果的に生ずる電流の流れi、および回路経路電圧UCP、対向電極における電圧UCE、作用電極における電圧UWEの電圧の方向、そして測定クランプにおいて結果的に生じる電圧Usenseも示す。
【0214】
図2Aに示すように、測定電極116を対面電極として設計してもよい。測定電極116は、例えば、約20nmの厚さを有するスパッタ金層を含んでもよい。更に、図2Aは、サンドイッチ状検査エレメントの実施形態も示し、測定電極116が、検査エレメント110の層構造において、互いに重ね合わされている。検査エレメント110は、少なくとも1つのスペーサ層130、例えば、少なくとも1つの接着性スペーサ・フォイル、および/または少なくとも1つの試薬層132、および/または少なくとも1つのキャリア層134、例えば、打ち抜きPETフォイルというような、追加層を含んでもよい。図2Aおよび図2Bの実施形態では、検査エレメント110は2つの試薬層132を含み、試薬層の1つは、スロット・ダイ・コーティングされ酵素がない試薬を含み、他の1つは、スロット・ダイ・コーティングされた酵素含有試薬を含む。図2Bは、組み立てられた検査エレメント110を示す。測定電極116は、検査エレメント110を他のデバイスと接触させる複数の電気接点122を含むことができる。例えば、検査エレメント110を少なくとも1つの分析デバイス124に接続するのでもよい。検査エレメント110は、例えば、前方投与位置125および/または側方投与位置126を使用することによって、体液の試料を受け取るように構成されてもよい。検査エレメント110は、体液の試料を受け取るおよび/または保管するように構成された少なくとも1つの毛細管エレメント127を含んでもよい。
【0215】
分析デバイス124は、例えば、図3に示すような、少なくとも1つの励起電圧信号を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイス136を備えている。信号生成デバイス136は、少なくとも2つの測定電極116に、例えば、電気接点122を介して、励起電圧信号を印加するように構成される。励起電圧信号は、少なくとも1つの検査シーケンス、例えば、時間シーケンスの間に印加されてもよい。励起電圧信号は、第1励起電圧を含むことができ、この第1励起電圧は、ESRを判定するために使用することができ、それに適している。励起電圧信号、具体的には、第1励起電圧は、方形波信号および/または正弦波信号を含んでもよい。例えば、第1励起電圧信号は正弦波信号であってもよく、励起電圧信号の周波数は20kHzから300kHzとしてもよい。励起電圧信号は、パルスのような、不連続信号を含んでもよい。信号生成デバイス136は、少なくとも1つの電圧源を含んでもよい。電圧生成デバイス136は、少なくとも1つの方形波生成器および少なくとも1つの正弦波生成器から成る一群から選択された、少なくとも1つの関数発生器を含んでもよい。
【0216】
検査エレメント110の電気化学セル128は、電解質抵抗、電荷移動抵抗、および、例えば、対面電極または対向電極を有するサンドイッチ状検査ストリップの場合、二重層容量を含む等価回路によって近似することができる。測定電極116および/または導電路126のような他の導電性エレメントは、容量および抵抗のみを有する理想的なコンポーネントでない可能性もある。しかしながら、近似では、電気化学セル128は、図1Bに示すように、等価直列抵抗に直列な理想的なキャパシタおよび抵抗器と見なすことができる。
【0217】
図1Bの等価回路を使用することによって、検査エレメント110のインピーダンスZは、次の式によって判定することができる。
【0218】
【数23】
【0219】
ここで、Rは等価直列抵抗であり、Rは電解質抵抗であり、CおよびCは二重層容量を記述する。RおよびR、具体的には、Rに直列なRは、電荷移動抵抗を記述し、iは虚数であり、iω=2πfである。インピーダンスは、実部Re(Z)および虚部-Im(Z)によって記述することができ、Z=Re(Z)-Im(Z)である。ここで、
【0220】
【数24】
【0221】
更に、
【0222】
【数25】
【0223】
このように、インピーダンスZの実部を使用して、ESRを判定することができる。更に、虚部は周波数に強く依存し、一方実部は周波数とは独立であるとしてよい。
図3は、検査エレメント分析システム112の例示的な実施形態のブロック図を、非常に模式的に示す。検査エレメント分析システム112は、少なくとも1つの検査エレメント110と分析デバイス124とを備えている。分析デバイス124は、体液において少なくとも1つの検体の濃度を判定するように構成されている。図3の実施形態では、分析デバイス124はアナログ・フロントエンド・ポテンショスタットとして具体化されている。分析デバイス124は、ESRを判定し、検査エレメントを特徴付けるために使用される規制(regulation)を得るように構成されてもよい。ポテンショスタットは、リアル・タイムでESRを判定し、それに応じて、電圧降下による影響を受けない目標電圧を維持するために、励起電圧信号を補償するように構成することができる。分析デバイス124は、閉ループ・システムを備えてもよい。この閉ループ・システムは、少なくとも1つの検体の濃度の判定と同時にESRの判定を実行し、この判定は電気化学的測定とも呼ばれる。
【0224】
分析デバイス124は、少なくとも1つの励起電圧信号を生成するように構成された少なくとも1つの信号生成デバイス136を備えている。信号生成デバイス136は、少なくとも2つの測定電極116に、具体的には電気接点122を介して、励起電圧信号を印加するように構成される。励起電圧は、基準抵抗Rrefに直列な測定電極116に印加される。Rrefは、所定の基準抵抗のような、既知の基準抵抗にしてもよい。基準抵抗は、複数の基準測定値から判定された、具体的には予め判定されている平均値であってもよい。例えば、基準抵抗は、複数の基準測定値から判定される平均Hct値に対応してもよい。基準抵抗は、オーム信号部分のような、測定すべき値を判定するのに適するように選択されればよい。この実施形態では、信号生成デバイス136は少なくとも1つの関数発生器、例えば、少なくとも1つの方形波生成器を含んでもよい。第1励起電圧信号は、象徴的に矢印142によって示される、方形波信号を含んでもよい。励起電圧信号は、予め分かっている電圧値を有するというように、予め分かっている信号であってもよく、または少なくとも1つのアナログ/ディジタル変換器を使用することによってというようにして判定されてもよい。アナログ/ディジタル変換器は、信号生成デバイス136および基準抵抗Rrefに直列に、そしてこれらの間に配置すればよい。
【0225】
励起電圧信号は、少なくとも1つの検体の濃度を判定するように構成することができる。励起電圧信号は、複素インピーダンス情報を判定するために少なくとも1つの測定正弦波信号を含んでもよい。励起電圧信号は、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧と、少なくとも1つの直流(DC)プロファイルとを含んでもよい。少なくとも1つの検体の濃度を判定するように構成された励起電圧信号は、第2励起電圧信号と呼んでもよい。第1および第2励起電圧信号を測定電極に同時にまたは非同時に印加してもよい。第1励起電圧信号は、それが検体の濃度の判定を混乱させないように選択されればよい。第2励起電圧信号は、それがESRの判定を混乱させないように選択されればよい。
【0226】
励起電圧信号は、少なくとも1つの検体の濃度を判定するために使用されそれに適した、第2励起電圧信号を含んでもよい。励起電圧信号は、複素インピーダンス情報を判定する少なくとも1つの測定正弦波信号を含んでも良い。励起電圧信号は、少なくとも1つのポリ周波数交流(AC)電圧と、少なくとも1つの直流(DC)プロファイルとを含んでもよい。第1および第2励起電圧信号を測定電極に同時にまたは非同時に印加してもよい。第1励起電圧信号は、それが検体の濃度の判定を混乱させないように選択されればよい。第2励起電圧信号は、それがESRの判定を混乱させないように選択されればよい。
【0227】
信号生成デバイス136は、少なくとも1つのアナログ・ドライバ144と、少なくとも1つのディジタル/アナログ(DAC)波生成器146とを備えることができる。アナログ・ドライバ144は、ACおよびDC信号の振幅を、DAC波生成器146によって判定された設定値に設定するように構成することができる。分析デバイス124は、補助方形波生成器148、例えば、第1励起電圧信号を生成するように構成された100kHz方形波生成器を含んでもよい。方形波生成器148は、評価デバイス154の一部であってもよく、例えば、第1励起電圧信号を処理し、および/またはESRを判定し、および/またはPID(比例-積分-微分)規制パラメータを判定し、および/または演算増幅器150とアナログ・ドライバ144との間で行われる「目標および実際」の比較のための利得設定値を判定するように構成された、少なくとも1つのマイクロプロセッサでであってもよい。評価デバイス154は、PID規制を行うように構成されてもよい。評価デバイス154は、少なくとも1つのPIDコントローラを含んでもよい。PID規制は、振幅規制を安定させるために使用することができる。PID規制は、閉ループ規制を安定させるために使用することができる。PIR規制は、制御ループ・フィードバック・メカニズムであるとしてもよい。PIDコントローラは、少なくとも1つのエラー値を、具体的には連続的に、判定するように構成することもできる。例えば、エラー値は、所定の設定点および/または既定の設定点と確定プロセス変数(determined process variable)との間の差としてもよい。PIDコントローラは、比例項、積分項、および微分項に基づいて、少なくとも1つの補正を適用するように構成することができる。評価デバイス154は、判定されたESR値を考慮して、位相およびアドミタンスの計算を補正するように構成することができる。そうしなければ、信号経路における高い抵抗値のために、ESRにおける電圧降下が大きな計算誤差を発生させることになる。評価デバイスは、測定中に必要とされる利得値を格納することができる。これらの利得値は、アルゴリズムによって使用することもできる。
【0228】
第2励起電圧信号のAC信号は、10mV RMSにおいて約1kHzから20kHzまでとしてもよい。第1励起電圧信号は、約100kHzの周波数を有してもよい。あるいは、約5nsの近DC高速過渡(near DC fast transient)を使用してもよい。ESRを判定するために使用される少なくとも1つの周波数は、それが検体の濃度の判定に使用される周波数に影響を及ぼさない(influence or effect)ように選択されればよい。例えば、干渉を低減するために、非常に小さい振幅を使用してもよい。例えば、分析デバイス124は、背景ノイズからESR周波数を「引き出す」ために、ESRを判定する周波数に選択された少なくとも1つのロックイン増幅器(lock-in amplifier)を含んでもよい。ESRを補正するために信号振幅の調節を使用することによって、検体の濃度を判定するために使用される周波数の信号対ノイズ比の改善を観察可能にすることができる。具体的には、信号対ノイズ比を高めるために、ESRを使用してもよい。ESRをAC信号の減少(reduction)のために使用すると、信号対ノイズ比を高めることができる。測定における二重層容量が過負荷および可能な信号の倍音を生じさせる非線形エリアに測定信号を押し出すために、大きな信号において弱い信号を増幅および/または抑制してもよい。ESRは、測定システムが大きな抵抗を表し信号を弱くさせるときに、AC信号を増幅するために使用することもできる。次いで、振幅を増幅することができる。システムの抵抗が低い程、AC信号が大きくなり過ぎ、ESR測定値がACの利得または振幅を小さくすることができる。
【0229】
分析デバイス124は、少なくとも1つの応答信号を受け取るように構成された少なくとも1つの測定ユニット152を備えている。応答信号は、第1励起電圧信号に応答して生成することができる。分析デバイス124は、少なくとも1つの評価デバイス154を備えている。評価デバイス154は、応答信号から信号フランクを判定し、信号フランクの形状および高さの一方または双方からオーム信号部分を判定するように構成されている。評価デバイス154は、オーム信号部分から等価直列抵抗についての少なくとも1つの情報を生成するように構成されている。分析デバイス124は、信号フランクをトリガおよび/またはサンプリングし、および/または電圧降下を測定するように構成された少なくとも1つの高速並列アナログ/ディジタル変換器156を備えてもよい。高速並列アナログ/ディジタル変換器156は、高い分解能で、結果的に得られる垂直高速フランクを容量電荷から分離するように構成することができる。分離を判別し測定してもよい。
【0230】
測定ユニット152は、電流応答を測定するように構成することができる。評価デバイス154は、電流応答から少なくとも1つの複素インピーダンス情報を判定するように構成することができる。異なる測定時点において電流応答を測定することができる。電流応答は、連続的に測定されてもよく、あるいは選択可能なおよび/または調節可能な測定時点において測定されてもよい。選択可能および/または調節可能な時間単位(time units)を使用することによって、経時的な電流応答を測定することもできる。例えば、電流応答は、1/10秒毎またはもっと頻繁に測定されてもよい。電流応答は複数の信号を含んでもよい。電流応答は、ACおよびDC応答を含んでもよい。評価デバイス154は、周波数毎のAC電流応答およびDC電流応答を評価するように構成することができる。周波数毎に、評価デバイス154によって、少なくとも1つの複素インピーダンス情報をAC電流応答から評価することができる。評価デバイスは、体液における検体の存在および/または濃度に関する情報、あるいは体液のパラメータの内少なくとも1つの情報項目を、少なくとも1つの信号から導き出すように構成することができる。評価デバイス154は、応答を評価するように構成することができる。一例として、評価デバイス154は、1つ以上の特定用途集積回路(ASIC)のような1つ以上の集積回路、および/または1つ以上のコンピュータ、好ましくは、1つ以上のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラのような1つ以上のデータ処理デバイスであってもよく、あるいは備えてもよい。1つ以上の前処理デバイスおよび/またはデータ取得デバイスのような追加のコンポーネント、電極信号の受信および/または前処理のための1つ以上のデバイスのような追加のコンポーネント、1つ以上の変換器および/または1つ以上のフィルタのような追加のコンポーネントを含んでもよい。更に、評価デバイス154は、1つ以上のデータ格納デバイスを含んでもよい。更に、先に概説したように、評価デバイス154は、1つ以上のワイヤレス・インターフェースおよび/または1つ以上の結線(wire-bound)インターフェースのような1つ以上のインターフェースを備えてもよい。評価デバイス154は、血中ぶどう糖メータ、例えば、検査ストリップに基づくメータ、インシュリン・ポンプ、マイクロプロセッサ、セルラ・フォン、スマート・フォン、パーソナル・ディジタル・アシスタント、パーソナル・コンピュータ、またはコンピュータ・サーバを含んでもよい。
【0231】
評価デバイス154は、AC電流応答および対応するDC電流応答の周波数毎に、電流応答を位相情報およびインピーダンスに、即ち、虚成分および実成分情報に分割(split up)および/または分離(separate)するように構成することができる。評価デバイス154は、周波数毎に、AC電流応答からのアドミタンスの少なくとも1つの実部および虚部を評価するように構成することもできる。評価デバイス154は、周波数毎に、AC電流応答からのアドミタンスの少なくとも1つの実部および虚部を評価するように構成することもできる。AC電流応答およびDC電流応答は、周波数範囲に関して分離することができる。評価デバイス154は、所定の周波数範囲に関して、電流応答の一部をACまたはDCに分類するように構成することもできる。評価デバイス154は、約100Hzおよび500Hz間で、電流応答をAC電流応答と対応するDC電流応答とに分離するように構成された、少なくとも1つの電子フィルタ、例えば、双方向アナログ電子フィルタを備えてもよい。評価デバイス154は、電流応答を、低速DC電流応答と、高速で変化するAC電流応答とに分離するように構成することもできる。例えば、評価デバイスは、周波数に応じて応答信号を増幅するように構成された少なくとも1つのトランスインピーダンス増幅器を備えてもよい。続いて、応答信号をクロスオーバーによって分離することができる。500Hz以上、具体的には、500Hzから20kHzまでの周波数範囲におけるAC電流応答を周期的に評価してもよく、1V/s未満の増加率を有するDC電流応答を、時間的進行に連れて評価する。100Hz未満では、応答をDC電流応答に分類することができ、500Hz超では、応答をAC電流応答に分類することができる。評価デバイス154は、少なくとも1つの周波数アナライザを備えてもよい。つまり、DC電流応答およびAC電流応答を同時に、具体的には1つの応答として判定してもよい。このようにすると、オフセット時間および/または時間遅延なく、DC電流応答およびAC電流応答を判定および/または測定することができる。
【0232】
ESRは、インピーダンスもしくはアドミタンスの計算および/または判定における大きな誤差、ならびに位相値の計算および/または判定における大きな誤差に寄与するおそれがある。評価デバイス154は、等価直列抵抗についての情報に応じて、複素インピーダンス情報を補正するように構成することができる。ESRが判定された場合、計算からESRを除去し、精度高く位相およびインピーダンス値を判定することができるのはもっともである。
【0233】
評価デバイス154は、DC電流応答および複素インピーダンス情報から、少なくとも1つの所定の関係を使用することによって、検体の濃度を判定するように構成することができる。検体の濃度は、評価デバイス154によって、例えば、評価デバイス154の少なくとも1つのコンピューティング・デバイスによって判定することができる。この関係は、断定することができ、あるいは経験的に、分析的に、または半経験的に判定可能にすることもできる。この関係は、少なくとも1本の較正曲線、少なくとも1組の較正曲線、少なくとも1つの関数、またはここで述べた可能性の組み合わせを含んでもよい。1本または複数の較正曲線を、例えば、1組の値およびその関連する関数値という形態で、例えば、データ記憶デバイスおよび/または表に格納することができる。しかしながら、代わりにまたは加えて、少なくとも1本の較正曲線を、例えば、パラメータ化した形態でおよび/または関数方程式として格納することもできる。種々の可能性が着想可能であり、組み合わせることもできる。所定の関係は、少なくとも1つの参照表の形態および/または少なくとも1つの数式の形態で、提示されてもよい。所定の関係は、例えば、評価デバイスのストレージに保存および/または格納することができる。本方法は、検体の濃度とDC電流応答および複素インピーダンス情報との所定の関係を判定するステップを含んでもよい。
【0234】
検出デバイス124は、励起電圧信号、具体的には、第2励起電圧信号を、判定されたESRに応じて、規制するおよび/または調節するおよび/または適合させるように構成することができる。例えば、測定電極の分極電圧が十分な分極に対応するように、等価直列抵抗についての情報に応じて第2励起電圧信号を調節することによって、電圧降下を補償してもよい。例えば、等価直列抵抗についての情報に応じて、励起電圧信号の振幅またはパルス高を調節してもよい。例えば、励起電圧信号のパルス高を、目標電圧Utargetに調節してもよい。目標電圧は所望の電圧または公称電圧とも呼ばれる。例えば、AC電圧信号を増加させてもよい。加えてまたは代わりに、DC信号を規制してもよい。例えば、分析デバイス124は、励起電圧を調節するように構成された少なくとも1つの制御デバイス158を備えてもよい。ESR値が測定されているとき、制御デバイス158のこのタスクを責務とする少なくとも1つのマイクロプロセッサが、次の式を使用することによって、利得を計算するように構成される。
【0235】
等価直列抵抗ESRは、線抵抗とも呼ばれ、次のように書くことができる。
【0236】
【数26】
【0237】
ここで、Utargetは励起電圧信号のパルス高であり、Rrefは基準抵抗であり、Umeasuredは測定された応答電圧の高さであり、例えば、電流電圧変換器によって判定される。例えば、ESR=74.841Ωとなるように、Utarget=1V、Umeasured=572mV、Rref=56Ωとする。
【0238】
例えば、IR降下後に体液の試料上に目標電圧Utargetを維持するために、例えば、励起電圧信号を利得係数g倍に増加させることによって、励起電圧信号を利得係数gによって調節してもよい。測定セルにおけるAC電流ISystemは、
【0239】
【数27】
【0240】
となる。
targetは、AC目標励起電圧であり、公称または所望の励起電圧とも呼ばれる。測定セルUcellにおける電圧は、
cell=Utarget-UDrop
と書くことができ、ESRによる電圧降下UDropは、
Drop=ESRadj×ISystem
調節された線抵抗ESRadjは、
ESRadj=ESR-OptimalESR
となる。ここで、OptimalESRは、体液の試料上において目標電圧を確保する最適線抵抗を示す。つまり、利得gは、次の式によって判定することができる。
【0241】
【数28】
【0242】
例えば、Utarget=10mVrms ac、ESR=74.841Ω、およびOptimalESR=18Ωの場合、利得gは4.15となる。
一旦利得が計算されたなら、評価デバイス154は、利得値にしたがって、ACまたはDC電圧信号の一方または双方を増加または減少させるように構成される。検体測定値の判定、ならびにESRおよび利得設定値の判定を、同期させることもできる。例えば、分析デバイス124は50ミリ秒毎に検体測定値をサンプリングするように構成されてもよい。分析デバイス124は、ESR値および利得設定値も50ミリ秒毎に判定するように構成されてもよい。分析デバイス124は、AC電圧励起信号のAC周波数に対して利得振幅を設定するように構成されたディジタル8ビット・ポテンショメータを備えてもよい。利得の計算は、評価デバイス154によって実行されてもよく、利得設定コマンドを直列周辺インターフェース・バス(SPI: Serial Peripheral Interface)通信によって送ってもよい。256通りの設定値を有するポテンショメータは、精細利得設定を行うように構成することもできる。DC励起信号を調節するために、分析デバイスは、検体測定が開始する前に、暫定的な電流電圧応答曲線を判定するように構成することもできる。評価デバイス154は、電流の増加がもはや電圧利得に比例しないプラトーを判定するように構成することもできる。この点は、DC利得として使用することもでき、検体測定全体に対して設定することもでき、および/または繰り返し判定することもできる。
【0243】
図4Aは、検査エレメント110に接続された2.5Gs/Sオシロスコープ上における信号フランク測定の実験結果を示す。応答信号は、複素インピーダンスにおけるオーム信号部分を含んでもよい。応答信号は、オーム信号部分と、検査エレメントの容量部による非オーム信号部分とを含んでもよい。応答信号の信号形状および信号高の一方または双方を分析することによって、オーム信号部分を判定することができる。応答信号は、少なくとも1つの信号フランク、具体的には、少なくとも1つの立ち上がり信号フランクを含むことがある。誘導方形波または正弦電圧信号の特徴付けにより、応答信号の信号フランクからオーム信号部分を判定することができる。具体的には、誘導信号形状からの偏差および/または示差というような補足情報を判定してもよい。図4Aにおいて、方形状(squared shaped)励起電圧信号(破線)および対応する応答信号が示されている。応答信号は、ESRにおける電圧降下による垂直降下、および検査エレメントの容量部からの充電積分(charging integration)による後続の立ち上がり信号フランクを呈することが分かった。
【0244】
所望の電圧または公称電圧とも呼ばれる目標電圧Utarget、例えば、既知の目標電圧、具体的には1Vに対応する高い値、および電圧降下Umeasured、即ち、立ち上がり信号フランクの開始点における電圧値を判定することができる。例えば、図1Bにおけるシミュレーション回路を参照すると、等価直列抵抗ESRが74,841オームになることができるように、Utargetは1Vにすればよく、Umeasuredは572mVに、そしてRrefは56オームにすればよい。
【0245】
等価直列抵抗ESRについての情報は、次の式によって判定することができる。
【0246】
【数29】
【0247】
ここで、Rrefは予め分かっている内部基準抵抗または予め判定することができる内部基準抵抗である。評価デバイス154は、ESRについて判定された情報から、体液の試料の電解質抵抗Rの所定値または既知の値を減算するように構成することができる。
【0248】
他の例では、線抵抗とも呼ばれるESRは、誘導正弦波電圧信号を使用することによって判定することもできる。正弦波を使用する図1Bのシミュレーション回路(図1Dにおける体液の試料を用いるぶどう糖検査エレメントのシミュレーション回路の一方側を表す)により、以下の計算を使用することによってESRを判定することができる。RおよびRは完全な線抵抗および体液の試料上に含まれる溶液抵抗を表すことができる。検査エレメントのインピーダンスZは、次の式によって判定することができる。
【0249】
【数30】
【0250】
ここで、Rは等価直列抵抗であり、Rは電解質抵抗であり、CおよびCは二重層容量を記述する。RおよびR、具体的には、Rに直列なRは電荷移動抵抗を記述し、iは虚数であり、iω=2πfである。一例では、Z=(75.006-0.97i)Ω、検査エレメント・システム全体の抵抗がSystemresistance=|Z|=75.012Ω、位相がarctan=-0.741°となるように、R=23Ω、R=52Ω、R=169Ω、R=620Ω、C=820nF、C=330nF、およびf=200kHzとする。この例では、高周波数の使用により、図1DにおけるCDLおよびWを表すCおよびCを、検査エレメント・システム全体の抵抗から排除することができる。
【符号の説明】
【0251】
110 検査エレメント
112 検査エレメント分析システム
114 測定ゾーン
116 測定電極
118 作用電極
120 対向電極
122 電気接点
124 分析デバイス
125 前方投与位置
126 側方投与位置
127 毛細管エレメント
128 電気化学セル
130 スペーサ層
132 試薬層
134 キャリア層
136 信号生成デバイス
138 矢印
140 矢印
142 矢印
144 アナログ・ドライバ
146 ディジタル/アナログ(DAC)波形生成器
148 補助方形波生成器
150 演算増幅器
152 測定ユニット
154 評価デバイス
156 アナログ/ディジタル変換器
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B