(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】航空翼の一部を組み立てるためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B64F 5/10 20170101AFI20221223BHJP
【FI】
B64F5/10
(21)【出願番号】P 2020543718
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2018079399
(87)【国際公開番号】W WO2019081703
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】102017000122745
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520146341
【氏名又は名称】サルヴァー エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】SALVER S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バジール,レナト
(72)【発明者】
【氏名】ポリターノ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】アマティ,アルド
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-168789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0178083(US,A1)
【文献】米国特許第06638466(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/10
B64C 3/18, 3/26, 3/28, 7/00
B29C 70/34,70/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空翼の一部を組み立てるためのプロセスであって、
翼カバー(8)が、キャリア構造要素
である構造要素(10,11,12)と組み立てられ、
前記プロセスは、
・ 前記構造要素(10,11,12)を
組立て平面(17)上に長手方向に並べて配置し、上向きに配置された複数の長手方向接合部を有する平坦面(20)を画定することで、桁を形成するステップと、
・ 前記長手方向接合部に充填テープ(19)をそれぞれ接着するステップと、
・
単一の解決策を用いて前記組立て平面(17)を並進および回転することによって前記構造要素を並進および180°回転させ、それにより、前記構造要素(10,11,12)を相互の位置に固定したまま
維持し、前記構造要素
(10,11,12)を前記翼カバー(8)の内面(13)の上方に
移動させるステップと、
・ 前記構造要素の平坦面(20)を前記内面(13)と一致させ、前記構造要素(10,11,12)を相互の位置に固定したまま下方に移動させることで、単一の解決策を用いて前記構造要素
(10,11,12)を並進させるステップと、
を含む、
プロセス。
【請求項2】
前記構造要素(10,11,12)は、前記翼カバー(8)の凹部(9)に係合するように意図された機首側翼キャップ(14)と組み立てられる、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記構造要素(10,11,12)は、組み立てられる間に、位置決めピン(18)によって、
前記組立て平面(17)に固定される、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記構造要素(10,11,12)は、前桁(10)と、後桁(11)と、任意の縦通材(12)を含む、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
すべての前記長手方向接合部には、単一の解決策を用いて同時にまたは連続して対応する充填テープ(19)が充填される、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記構造要素(10,11,12)は、前記機首側翼キャップ(14)を前記
翼カバー(8)の前側凹部(9)内に挿入することを可能にする追加の部分的な回転を受ける、
請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
航空翼の一部を組み立てるための装置(100)であって、
翼カバー(8)が
、キャリア構造要素
である構造要素(10,11,12)と組み立てられ、
前記装置は、
・ 上向きの平坦面(20)を画定するように、その間で長手方向に並べて配置された前記
構造要素(10,11,12)を受容するように意図された
組立て平面(17)であって、前記構造要素(10,11,12)の長手方向延在部に垂直な方向に沿って前記
組立て平面(17)を並進させるための手段を有する、
組立て平面(17)と、
・ 並べて配置された前記構造要素(10,11,12)を受容するように意図された操作平面(31)であって、
- 前記構造要素(10,11,12)を前記組立て平面(17)から前記操作平面(31)に同時に移動させることができるように、前記構造要素(10,11,12)の長手方向延在部に垂直な方向に沿って前記操作平面(31)を並進させる手段、
- 単一の解決策を用いて前記構造要素(10,11,12)を反転させるのに適した、前記操作平面(31)を回転させるための手段、および
- 前記操作平面(31)を上下方向に並進させる手段、
を備える操作平面(31)と、
・ 前記操作平面(31)が組み立てられたフレーム(21)によって形成された組立てコンパートメントと、
・ 前記翼カバー(8)を受容するのに適した且つ前記組立て平面(
17)が上昇したときに前記組立てコンパートメント内に挿入されるのに適した可動式平面(16)であって、前記可動式平面(16)上の前記翼カバー(8)の長手方向展開に平行な方向に沿って前記可動式平面(16)を移動させるための手段を備える、可動式平面(16)と、
を備える、
装置(100)。
【請求項8】
前記フレーム(21)は、その上で搬送台(26)が摺動するトランジットレーンと長手方向に交差し、その上で、前記
可動式平面(16)が画定される、
請求項7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記装置は、その上面において、走行クレーン(27)を有し、前記走行クレーンは、梁状の細長い形状を有し且つ前記フレーム(21)の一方の端部から他方の端部まで実質的に延在し且つ前記端部のそれぞれにおいて凸部(29)を有する支持要素(28)を支持し、前記凸部(29)の間には、操作板(30)が支持され、前記操作板(30)の上には、
前記操作平面(31)が形成される、
請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記フレーム(21)の端部(22,23)のそれぞれにおいて、前記フレーム(21)に形成された側方レール(40)上で組み立てられた支持カーソル(45)を備え、前記操作平面(31)が形成された操作板(30)は、一方の前記支持カーソル(45)から他方の前記支持カーソル(45)まで延在する、
請求項7に記載の装着(100)。
【請求項11】
前記
操作板(30)は、その端部においてボルト(32)を有し、前記ボルト(32)には、適切な操作ピン(34)によって前記操作板(30)に固定された操作アーム(33)が接続され、前記操作平面(31)を上向きまたは下向きにした状態で前記操作アーム(33)を所定の位置にロックするロックボルト(35)が設けられる、
請求項9に記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空翼の一部を組み立てるためのプロセスに関する。該プロセスにおいて、従来外板(skin)と呼ばれ、複合材料から形成されたカバーが、キャリア構造要素(carrier structural elements)、特に桁(spars)、クロス部材(cross-members)、縦通材(stringers)と組み立てられる。
【背景技術】
【0002】
翼部分とは、補助翼(ailerons)または高揚力(high-lift)フラップのような可動部分を含む、可動式および固定式の両方のドリフトフィンを含む航空機の翼面を構成するあらゆる要素を意味する。これらは、翼面の形状および延在部を変形させて、揚力を変更させるために操作される。これにより、適切な制御による油圧機械システムまたは電気機械システムによってコクピットから作動され且つ様々な飛行段階において電子的に制御されるいわゆる操縦翼面(control surfaces)が、航空機に提供される。
【0003】
層状カバーと構造要素との間の組み立ては、鋲付け作業によって実現することができる。しかしながら、これは時間のかかるプロセスであり、これにより、精度がかなり制限され、完全に滑らかな表面を実現することができない。
【0004】
より高度な手順では、専用の機械を使用して、外板、内部構造要素および前縁(leading edge)のより現代的な構造を提供する。これは、硬い金属ツールと柔軟なツールとを組み合わせたシステムによって実現される。これにより、炭素繊維から形成された層状製品を確保することができ、オートクレーブでの処理を可能にする。
【0005】
しかしながら、層状カバーと構造要素との間の完全な接着には、一致する表面が完全に滑らかであることが要求される。構造要素、特に桁は、翼部分まで長手方向に延在し且つそれらの間に並べて配置された要素から構成されるため、丸みを帯びた縁部によって画定される接合部が存在する。これらの接合部は、複合材料から形成された充填テープを追加することで滑らかになされる。全体として、オートクレーブで処理(硬化)されるように意図されている。
【0006】
テープの配置は、カバーの内面と、並べて配置された構造要素との間に挿入されるという点で複雑であり、これは、作業者に違和感と信頼性の低いプロセスを強いる。
【0007】
組み立てプロセスにおいて、構造要素と後続のものとを1つずつ時間をかけて配置する必要があるため、それらの配置は特に困難である。
【0008】
さらに、テープが隠されており、プロセスの間では間違った位置に置かれたかどうかを検出することが困難であるため、最終的な適性検査を受けた上で、製造プロセスの最終段階で翼部分を廃棄しなければならない可能性がある。
【0009】
米国特許第6,638,466号(A)には、航空補助翼を組み立てるプロセスが記載されている。ここでは、補助翼は、下側外板と上側外板とによって画定され、前桁との接続によって補助翼の前縁を形成するように意図されている。
【0010】
米国特許第9,352,822号(B2)には、オートクレーブでの硬化ステップを受けるように意図された複合翼部分を組み立てる際に使用される充填テープが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の根底にある技術的課題は、先行技術を参照して述べた欠点を回避することができる組み立てプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、上述したプロセスによって解決される。該プロセスは、
・ 構造要素を長手方向に並べて配置し、上向きに配置された複数の長手方向接合部を有する平坦面を画定することで、桁を形成するステップと、
・ 長手方向接続部に充填テープをそれぞれ接着するステップと、
・ 構造要素を相互の位置に固定したまま、構造要素を翼カバー、特に上側カバーの内面の上方に移動させることで、単一の解決策を用いて構造要素を並進および180°回転させるステップと、
・ 構造要素の平坦面を内面と一致させ、構造要素を相互の位置に固定したまま下方に移動させることで、単一の解決策を用いて構造要素を並進させるステップと、
を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明による組立てプロセスの主な利点は、プロセス自体を高速化し、信頼性を向上させて、露出した表面上にすべての充填テープを同時に塗布することを可能にすることである。
【0014】
本発明は、上記で定義されたプロセスを実現するための翼部分を組み立てるための装置に関する。該装置は、
・ 上向きの平坦面を画定するように、その間で長手方向に並べて配置された翼構造要素を受容するように意図された少なくとも組立て平面であって、構造要素の長手方向延在部に垂直な方向に沿って少なくとも組立て平面を並進させるための手段を有する、少なくとも組立て平面と、
・ 並べて配置された構造要素を受容するように意図された操作平面であって、
- 構造要素を組立て平面から操作平面に同時に移動させることができるように、構造要素の長手方向延在部に垂直な方向に沿って操作平面を並進させる手段、
- 単一の解決策を用いて構造要素を反転させるのに適した、操作平面を回転させるための手段、および
- 操作平面を上下方向に並進させるための手段、
を備える操作平面と、
・ 操作平面が組み立てられたフレームによって形成された組立てコンパートメントと、
・ 翼カバーを受容するのに適した且つ組立て平面が上昇したときに組立てコンパートメント内に挿入されるのに適した可動式平面であって、可動式平面上の翼カバーの長手方向展開に平行な方向に沿って可動式平面を移動させるための手段を備える、可動式平面と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、非限定的に例示する好ましい実施形態による本発明を、添付の図面を参照しながら説明する。
【
図1】航空機の補助翼を複数有する固定式翼の斜視図である。
【
図2】中間組立てステップにおける構造部分を示す可動式翼部分、特に高揚力外側フラップを示す図である。
【
図3】本発明による組立てプロセスにおいて使用される構造要素を模式的に示す図である。
【
図3A】本発明による組み立てプロセスの一ステップを模式的に示す図である。
【
図3B】本発明によるプロセスの一ステップを模式的に示す拡大図である。
【
図3C】
図3Aとは異なる、本発明による組み立てプロセスの一ステップを模式的に示す図である。
【
図3D】
図3Aおよび
図3Cとは異なる、本発明による組み立てプロセスの一ステップを模式的に示す図である。
【
図4】本発明によるプロセスを実現するための、翼部分を組み立てるための装置を上面から見た軸線図である。
【
図6】本発明による組立てプロセスの一ステップにおける
図4の装置の正面図である。
【
図7】
図6とは異なる、本発明による組立てプロセスの一ステップにおける
図4の装置の正面図である。
【
図8】
図6および
図7とは異なる、本発明による組立てプロセスの一ステップにおける
図4の装置の正面図である。
【
図9】
図6~
図8とは異なる、本発明による組立てプロセスの一ステップにおける
図4の装置の正面図である。
【
図10】
図6~
図9とは異なる、本発明による組立てプロセスの一ステップにおける
図4の装置の正面図である。
【
図11】
図6~
図10とは異なる、本発明による組立てプロセスの一ステップにおける
図4の装置の正面図である。
【
図12】本発明による組立てプロセスの特定のステップにおける一実施形態を詳細に示す図である。
【
図13】
図4の組立て装置の一部詳細を示す図である。
【
図14】
図4の組立て装置の一部詳細を示す図である。
【
図15】
図4の組立て装置の一部詳細を示す図である。
【
図16】
図4の組立て装置の一部詳細を示す図である。
【
図17】
図4の組立て装置の一部詳細を示す図である。
【
図18】
図4の組立て装置の一部詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照すると、航空機の翼が参照符号1によって示されている。翼1は、前縁2と、後縁(trailing edge)3とを備える。翼1は、後縁2において複数の補助翼4を備え、後縁3において、高揚力外側フラップ5と、航空機の胴体(fuselage)7に隣接する高揚力内側フラップ6とを備える。
【0017】
補助翼および高揚力フラップは、以下に説明するプロセスを用いて製造することができる翼部分の一例であり、厳密にこれらに限定されるものではない。
【0018】
図2を参照すると、高揚力外側フラップ5が部分的に示されており、特にその上側カバー8は、高揚力フラップ5の前縁によって画定される前側凹部9を有する。
【0019】
カバー8内には、前側凹部9と結合されるように意図された前桁10、後桁11、および2つの桁10,11の中間に位置する複数の縦通材12が配置される。
【0020】
桁10,11および縦通材12は、本明細書において考慮される翼部分の長手方向構造要素である。これらは、外側のカバー8の内面13と結合される必要がある平坦面を形成することで、互いに並べて配置される必要がある。これらは、図示しないクロス部材によって横方向に接合される。この翼部分は、作動中、外側カバー8が上向きであるのに対して下向きになる内側カバーをも含むことを意味する。内側の構造要素10,11,12を見やすくするために、内側カバーを図示しない。
【0021】
図3を参照すると、外側カバー8の内側部分を構成する構造部分が示されている。これらは、左から順に、前桁10、機首側翼キャップ14、縦通材12、後桁11および後部翼キャップ15である。これらは、受容平面16上に好都合に配置されたカバー8の内面13に配置される。
図3Bおよび後続の図面において、構造部分は、組立て平面17上に並べて配置される。
【0022】
したがって、本明細書に記載されるプロセスは、構造要素を長手方向に並べて配置し、上向きに配置された複数の長手方向接合部を有する平坦面を画定するステップを含む。
【0023】
【0024】
第1のサブステップ(1)において、機首側翼キャップ14と前桁10とがそれらの間で結合され、組立て平面17から一定の距離を置いて、位置決めピン18によって特定の位置に位置決めされる。その上向きの面には、2つの構造要素の丸みを帯びた縁が接近することで画定される第1の接合部が形成される。第2の接合部は、反対側の面で同様に接近することで形成される。
【0025】
第2のサブステップ(2)において、縦通材12が位置決めされる。ここでは、第3の接合部を形成して、前桁10と共に平坦面20が形成される。ここでも縦通材12の位置決めは、組立て平面17に取り付けられた適切な位置決めピン18によって行われる。
【0026】
第3のサブステップ(3)において、後桁11が追加される。これにより、縦通材12および前桁10と共に平坦面20が延ばされて、第4の接合部が形成される。
【0027】
第4のサブステップ(4)において、後部翼キャップ15が追加される。これにより、後桁11、縦通材12および前桁10と共に平坦面20が延ばされて、第5の接合部が形成される。
【0028】
これらのサブステップにおいて、複数の長手方向接合部を有する且つ上向きに配置された平坦面20を画定することで、上述した構造要素が長手方向に並べて配置される。
【0029】
第5のサブステップ(5)において、対応する充填テープ19を接着させることで、
図3Bには1つのみを示す5つの長手方向接合部が充填され、これにより、平坦面20全体が滑らかになり、外側カバー8の内面13との結合のために準備される。
【0030】
第6のサブステップ(6)(
図3C)において、平坦面20が下向きになり、すべての構造要素が位置決めピン18によってそれぞれの位置に保持されるように、組立て平面17が180°回転される。
【0031】
したがって、構造要素は、それらの相互の位置に固定された状態で保持されること、および翼カバーの内面13の上方に移動されることで、単一の解決策を用いて並進および180°の回転を受けることができる。
【0032】
その後、構造要素は、平坦面20を内面13と一致させて、下向きにそれらの相互の位置に固定された状態を維持しながら、再び単一の解決策を用いて並進される。
【0033】
このようにして、平坦面20は、内面13に結合され得る。第7のサブステップ(7)(
図3D)における追加の部分的な回転により、機首側翼キャップ14を外側カバー8の凹部9内に挿入することができる。
【0034】
最後の第8のサブステップ(8)(
図3E)において、機首側翼キャップ15と、4つの接合部がそれぞれ充填テープ19で充填された平坦面20との両方が、外側カバー8の内面13と完全に一致する。この半製品は、その後のプロセスへと導かれる。
【0035】
この場合に必要とされる5つの充填テープ19のすべてが、露出した表面に作用して、単一の解決策を用いて同時にまたは連続して同じステップで配置されることに留意されたい。ただし、充填テープ19の数は、構造要素および関連する接合部の数に基づいて、当然のことながら変更することができる。
【0036】
各テープ19の対称性は、反転させて翼カバーを接着する前に容易に確認することができる。
【0037】
このプロセスの最後には、位置決めピン18が取り外される。
【0038】
上述したプロセスを実用的な観点から実現するために、上述したプロセスを実現するための装置が設けられる。該装置は、全体として参照符号100によって示されており、以下、
図4および後続の図面を参照しながら説明する。
【0039】
該装置は、二重T字形の金属梁から形成されたフレーム21を備える。フレーム21は、それぞれゲート24によって閉鎖される入口端22および出口端23と、内側結合コンパートメントを画定する長手方向延在部と、それぞれの側部における2つの対称の処理領域とを有する。その上には、組立て平面17を画定する組立て板25がそれぞれ配置され、その間で長手方向に並べて配置された翼構造要素を受容するように意図されており、位置決めピンによって組立て平面に取り付けられており、これにより、上向きの平坦面が画定される。
【0040】
各組立て板25には、組立て平面を所定の高さ、場合によっては調整可能な高さに維持することで、構造要素の長手方向延在部に垂直な方向、すなわち組立て装置100のフレーム21の方向に沿ってそれぞれの組立て平面17を並進させる手段が設けられる。
【0041】
フレーム21は、レールが設けられる場合がある、その上で搬送台(carriage)26が摺動可能なトランジットレーンと長手方向に交差し、その上で、翼構造要素と結合されるように意図された翼カバーを搭載することができる可動式受容平面16が画定される。
【0042】
搬送台26は、入口端22から入り、フレーム21内で所定の位置で正確に停止し、結合が完了すると、出口端23から出てくる。
【0043】
フレーム21は、その上面において、荷重を移動させるための走行クレーン27を有する。これは、梁状の細長い形状を有し、フレーム21の一方の端部から他方の端部まで実質的に延在し、それぞれの端部において凸部29を有する支持要素28を支持する(
図4~
図11および
図16~
図18)。
【0044】
凸部の間では、操作板30が支持される。操作板30も、フレーム21の一方の端部から他方の端部まで延在する。この操作板30の表面には、操作平面31が形成される。
【0045】
走行クレーン27は、昇降可能または横方向に並進可能な支持要素28に作用する。したがって、操作平面31には、組立て板25によって画定される側方の組立て平面上に配置された構造要素10,11,12の長手方向延在部に垂直な方向に沿った操作平面を並進させるための手段が設けられる。
【0046】
さらに、操作平面31には、操作平面を上下方向に並進させるための手段が設けられる。
【0047】
より詳細には、走行クレーン27は、フレーム21に固定された側方レール40および垂直レール上に組み立てられ、走行クレーン27の両側にある2対のギア43によって、その上を摺動することができる(
図17)。好都合には、走行クレーン27は、昇降用の駆動手段をさらに備える。駆動手段は、走行クレーンに対して横方向に配置された制御輪42に作用し、走行クレーン27自体に対向する側方レール40の面に形成された
図17に図示しない歯付きラックに係合する。
【0048】
走行クレーン27は、その下向きの表面において、1対の水平レール43をさらに有する。各水平レール43は、支持要素28に取り付けられた1対の摺動ブロック(sliding shoes)44を支持し、これにより、横方向に並進され、下方の操作板30も並進され得る(
図18)。
【0049】
図13~
図15を参照すると、走行クレーンを含まない装置100の代替実施例が示されている。ここで、フレーム21は、それぞれの端部22,23において、フレーム21に形成された側方レール40上で組み立てられた支持カーソル45を備える。操作板30は、一方の支持カーソル45から他方の支持カーソル45まで延在し、第1のタイロッド46が取り付けられ、牽引または解放で駆動する第1のモータ47によって制御される。これにより、2つのカーソル45すなわち操作板30は、同時に上昇することができ、または加工され得る(
図13および
図15)。
【0050】
各カーソル45は、可動要素(moving armature)49を支持する支持梁48を有する。可動要素49は、支持梁48の上面に形成された1対の水平ガイド5上に配置される。
【0051】
各可動要素50は、板30に接続される(
図14)。同時に行われるそれらの側方移動により、操作板30の水平方向および横方向の並進が画定される。
【0052】
下向き、横向き、および上向きに並進する操作平面31の能力により、
図3A~
図3Eを参照して説明した形態で組立て平面に組み立てられた構造要素10,11,12を、組立て平面から操作平面31に移動することができるようになる。
【0053】
図6を参照すると、組立て平面は、フレーム21に近づくと並進させられ、同時に、操作平面31は、組立て平面と同じレベルまで下降され且つフレーム21内に残っていても横方向に並進される。2つの平面が並べて整列された場合、操作平面31への固定を実現させることで、一体的に組み立てられた構造要素10,11,12を一方の平面から他方の平面に同時に並進させることができる。
【0054】
この時点で(
図7)、操作平面31が上昇されて、操作平面31が組み立てられたフレーム21によって形成された組立てコンパートメントから係合解除される。
【0055】
なお、
図6に示す装置100は、別の図に示すものとは若干異なるが、機能的には類似していることに留意されたい。
【0056】
別の変形例によれば、組立て板25は、支持要素28に引っ掛けられて、操作板として機能することができる。固定式または可動式の始動支持体60から支持要素28への同一の板の通過は、同一の板によって実現された2つの組み立て平面および操作平面31に関連する手段の並進を構成する。
【0057】
組立て平面31および組立て板30が上昇すると、可動式平面を画定する搬送台26を入口端22からフレーム21内に挿入できるようになり、その上で翼カバー(外板)が受容される。
【0058】
搬送台26の正しい位置決めによって、可動式平面および最終位置における翼カバーに対して組み立てられた構造要素10,11,12の最適な位置決めを実現することができる。翼カバーは、組立て平面31が上昇したときに、組立てコンパートメント内に挿入される。
【0059】
これに関連して、搬送台は、可動式平面自体に設置された翼ケースの長手方向の展開に平行な方向に沿って可動式平面を移動させるための手段を構成することに留意されたい。
【0060】
組立て板30は、その端部に配置されたボルト32に関して回転され得る。これに関連して、操作平面31は、操作平面を回転させるための手段を有し、その回転は、単一の解決策を用いて、取り付けられた構造要素10,11,12の反転を生じさせる。この回転は、組み立て時の条件に応じて、任意の角度で制御することができる。
【0061】
より詳細にはおよび
図4、
図5および
図16を参照すると、ボルト32には、適切な操作ピン34によって操作板30に固定された操作アーム33が接続される。凸部29には、操作平面31を上向きまたは下向きにした状態で操作アーム33を所定の位置に固定するロックボルト35が設けられる。ロックボルト35を引き下げることにより、操作アーム33および操作板30を所望の回転角度で回転させることができる。回転を決定するモータは、同一の凸部29に受容され得る。
【0062】
図13~
図15の変形例を参照すると、板30の図示しない操作ボルトは、可動要素50内に受容され、操作板30の回転を制御するそれぞれの第2のモータ52による牽引または解放されるように制御されたそれぞれの第2のタイロッド51に接続される。
【0063】
図8および
図9を参照すると、操作板30の操作平面31上に組み立てられた構造要素10,11,12は、搬送台26上の翼カバーにおいて上下方向に配置され、180°回転される。これにより、構造要素10,11,12が翼カバーの上方に位置する。
【0064】
この時点で、操作平面30が下降(
図10)および回転(
図10および
図12)されて、前桁10上に組み立てられた機首側翼キャップ4の前側凹部9への挿入を決定する。この回転は緩やかなものであり、同時に最終位置における翼カバー内に配置されるすべての構造要素10,11,12の漸進的な下降を伴うものである。
【0065】
この動作の終了時には、操作平面30が反転されて水平になる(
図11)。位置決めピン18は、最終位置にある構造要素10,11,12を解放するように、分解され得る。
【0066】
この時点で、操作板30を持ち上げて新たなサイクルに備えることができ、搬送台26をフレーム21の出口端23から取り出すことができる。
【0067】
プロセスを加速させるために装置100は、両側に1つずつ配置される1対の組立て板25を備えることができる。
【0068】
このようにして、構造要素と翼カバーとの間の組み立てが行われている間に、その時点では係合していない組立て板25上の別の構造要素のセットを同時に組み立てることが可能となる。最終的には、フレーム21の反対側でプロセスを再度開始することができる。
【0069】
当業者は、追加的および偶発的な要件を満たすために、上述したプロセスおよび組立て装置に対して多数の修正および変形を行うことができる。これらのすべては、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の保護の範囲に含まれる。