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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20221223BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20221223BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
B25J9/06 D
B25J17/00 G
B25J19/00 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020562285
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2018048546
(87)【国際公開番号】W WO2020136890
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】早川 慶
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-025262(JP,A)
【文献】特開2008-141095(JP,A)
【文献】特開2018-089764(JP,A)
【文献】特開昭63-077677(JP,A)
【文献】特開2015-139853(JP,A)
【文献】特開平06-262581(JP,A)
【文献】特開2010-247250(JP,A)
【文献】特開昭61-168478(JP,A)
【文献】特開平01-316184(JP,A)
【文献】実開昭63-013689(JP,U)
【文献】特開昭61-288990(JP,A)
【文献】特開平01-240289(JP,A)
【文献】特開2009-196059(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103301(WO,A1)
【文献】米国特許第05064340(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、このベース部に対して第1回転軸回りに回転可能に連結される第1アーム部と、この第1アーム部に対して第2回転軸回りに回転可能に連結される第2アーム部とを備えた多関節ロボットであって、
前記ベースに各々備えられた第1モータ及び第2モータと、
前記ベース部と前記第1アーム部との間に配置される第1減速機を含み、前記第1モータが発生する回転力を前記第1アーム部に伝達する第1動力伝達機構と、
前記第1アーム部と前記第2アーム部との間に配置される第2減速機を含み、前記第2モータが発生する回転力を、前記第1アーム部を経由して前記第2アーム部に伝達する第2動力伝達機構と、を備え、
前記第1減速機は、前記第1回転軸に沿って中央部が貫通した円環構造を有し、
前記第1動力伝達機構は、前記第1モータの出力軸の回転を前記第1減速機に伝達する第1伝動機構を含み、
前記第2動力伝達機構は、前記ベース部から前記第1アーム部に亘って前記第1減速機の内側を貫通して延在する中空の第1伝動軸と、前記第2モータの出力軸の回転を、前記ベース部において前記第1伝動軸に伝動するとともに、当該第1伝動軸の回転を、前記第1アーム部において前記第2減速機に伝動する第2伝動機構と、を含み、
当該多関節ロボットは、さらに、前記第1伝動軸の内部を前記ベース部から前記第1アーム部に亘って貫通する中空の第1配線保護軸と、前記ベース部から前記第1配線保護軸の内部を通じて前記第1アーム部に至るように配索された電線類と、を含み、
前記第1アーム部は、中空のケーシングを備え、
前記第1配線保護軸は、前記第1伝動軸に対して相対回転可能に設けられるとともに、当該第1配線保護軸の先端部が前記ケーシングの内部に挿入されて、当該ケーシングの内壁面のうち、前記先端部が対向する位置に形成された第1嵌合部に嵌合されることにより、前記第1アーム部と一体に前記第1回転軸回りに回転可能に設けられている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の多関節ロボットにおいて、
前記ケーシングは、前記第1回転軸に対応する位置に開口部を備えるとともに、当該開口部を閉鎖する着脱可能な第1カバーを備え、
前記第1嵌合部は、前記第1カバーに設けられている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1配線保護軸は、円筒形状であってかつ前記先端部に断面半円形状の切欠部を備えており、
前記第1嵌合部は、前記切欠部が嵌合される形状を有する、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2伝動機構は、前記第2モータの回転を伝動ベルトにより伝達するためのプーリであって、前記ベース部において前記第1伝動軸に固定されたプーリと、前記第1アーム部において前記第1伝動軸に固定されたプーリとを含む、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2アーム部に対して第3回転軸回りに回転可能に連結されるツール装着部と、
前記ベースに備えられた第3モータと、
前記第2アーム部と前記ツール装着部との間に配置される第3減速機を含み、前記第3モータが発生する回転力を、前記第1アーム部及び前記第2アーム部を経由して前記ツール装着部に伝達する第3動力伝達機構と、をさらに備え
前記第2減速機は、前記第2回転軸に沿って中央部が貫通した円環構造を有し、
前記第3動力伝達機構は、前記第1伝動軸と同心上に配置されて、前記ベース部から前記第1アーム部に亘って前記第1減速機の内側を貫通して延在する中空の第2伝動軸と、前記第1アーム部から前記第2アーム部に亘って前記第2減速機の内側を貫通して延在する中空の第3伝動軸と、前記第3モータの出力軸の回転を、前記ベース部において前記第2伝動軸に伝動し、当該第2伝動軸の回転を、前記第1アーム部において前記第3伝動軸に伝動し、当該第3伝動軸の回転を、前記第2アーム部において前記第3減速機に伝動する第3伝動機構と、を含み、
当該多関節ロボットは、さらに、前記第3伝動軸の内部を前記第1アーム部から前記第2アーム部に亘って貫通する中空の第2配線保護軸を含み、
前記電線類は、前記第1アーム部から前記第2配線保護軸の内部を通じて前記第2アーム部に至るように配索され、
前記第2配線保護軸は、前記第3伝動軸に対して相対回転可能に設けられるとともに、当該第2配線保護軸の先端部が前記ケーシングの内部に挿入されて、当該ケーシングの内壁面のうち、前記先端部が対向する位置に形成された第2嵌合部に嵌合されることにより、前記第2アーム部に対して前記第1アーム部と一体に前記第2回転軸回りに回転可能に設けられている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項6】
請求項5に記載の多関節ロボットにおいて、
前記ケーシングは、前記第2回転軸に対応する位置に開口部を備えるとともに、当該開口部を閉鎖する着脱可能な第2カバーを備え、
前記第2嵌合部は、前記第2カバーに設けられている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2配線保護軸は、円筒形状であってかつ前記先端部に断面半円形状の切欠部を備えており、
前記第2嵌合部は、前記第2配線保護軸の前記切欠部が嵌合される形状を有する、ことを特徴とする多関節ロボット、
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第3伝動機構は、前記第3モータの回転を伝動ベルトにより伝達するためのプーリであって、前記第1アーム部において前記第3伝動軸に固定されたプーリと、前記第2アーム部において前記第3伝動軸に固定されたプーリとを含む、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項9】
請求項5に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1配線保護及び前記第2配線保護の各々前記先端部には、互いに向かい合う切欠部が形成されており、
前記電線類は、前記第1アーム部の内部において前記第1配線保護の前記切欠部と前記第2配線保護の前記切欠部とに亘って配索されている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項10】
請求項5乃至9の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1減速機と、前記第1伝動軸と、前記第2伝動軸と、前記第1伝動機構のうち前記第1減速機に固定される要素と、前記第2伝動機構のうち前記第1伝動軸に固定される要素と、前記第3伝動機構のうち前記第2伝動軸に固定される要素とは、前記ベース部及び前記第1アーム部に対して一体的に着脱することが可能な、前記第1減速機を主部材として組付けられた第1組立体を構築している、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項11】
請求項10に記載の多関節ロボットにおいて、
記第1配線保護軸がさらに前記第1減速機と共に前記第1組立体を構築するものである、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の多関節ロボットにおいて、
前記電線類は、当該電線類のうち前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸の内部に配索される部分をそれ以外の部分から分離させることが可能なコネクタを備えている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項13】
請求項5乃至12の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第2減速機と、前記第3伝動軸と、前記第2伝動機構のうち前記第2減速機に固定される要素と、前記第3伝動機構のうち前記第3伝動軸に固定される要素とは、前記第1アーム部及び前記第2アーム部に対して一体的に着脱することが可能な、前記第2減速機を主部材として組付けられた第2組立体を構築している、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項14】
請求項13に記載の多関節ロボットにおいて、
記第2配線保護軸がさらに前記第2減速機と共に前記第2組立体を構築するものである、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の多関節ロボットにおいて、
前記電線類は、当該電線類のうち前記第3伝動軸の内部に配索される部分をそれ以外の部分から分離させることが可能なコネクタを備えている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項16】
請求項5乃至15の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1アーム部における前記ケーシングの内部空間において前記第2、第3動力伝達機構が配置される空間とその他の空間とを仕切る仕切部材を備えており、
前記電線類は、前記第1アーム部の内部空間のうち、前記仕切部材により仕切られた前記その他の空間を経由するように配索されている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項17】
請求項16に記載の多関節ロボットにおいて、
前記電線類は、前記仕切部材に沿って配索されて当該仕切部材に固定されている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項18】
請求項5乃至17の何れか一項に記載の多関節ロボットにおいて、
前記第1~第3モータは、それらの出力軸が前記第1回転軸と平行となる姿勢で、当該第1回転軸を中心としてその周りに所定の角度間隔で配列されている、ことを特徴とする多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットとして多関節ロボットが公知である。特許文献1には、多関節ロボットの一例として、スカラロボット(水平多関節ロボット)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるスカラロボットは、基台上に固定されるベース部と、このベース部に対して旋回可能に支持された第1アーム部と、この第1アーム部の先端に旋回可能に連結された第2アーム部と、この第2アーム部の先端に上下方向の移動及び鉛直軸回りの回転が可能に保持された作動軸と、を備えている。
【0004】
このスカラロボットは、ベース部に、第1アーム部を駆動するためのモータ及び減速機を備え、第2アーム部に、当該第2アーム部を駆動するためのモータ及び減速機と、作動軸を駆動するためのモータ及び減速機とを備える。そして、ベース部と第2アーム部とに亘ってアーチ状の配線用配管が設けられ、第2アーム部に搭載されるモータなどの電気部品の配線がこの配線用配管を通じて第2アーム部からベース部に配索されている。
【0005】
上記のスカラロボットの構造は、スカラロボットの代表的なものであるが、次のような課題を有している。すなわち、第2アーム部にモータが搭載されているため、第2アーム部の重量が比較的重くイナーシャの影響を受け易く、駆動速度を高めるには高出力のモータが必要となる。また、作動軸を省略した場合でも、第2アーム部の薄型化(上下方向の薄型化)は難しく、アーム部先端を狭所に挿入させて作業を行うような用途にスカラロボットを適用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-85393号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みて成されたものであって、多関節ロボットに関して、モータの高出力化を伴うことなくより高速で駆動できるようにすること、また、アーム部の薄型化を通じて用途の拡大を図ることを目的としている。
【0008】
そして、本発明は、ベース部と、このベース部に対して第1回転軸回りに回転可能に連結される第1アーム部と、この第1アーム部に対して第2回転軸回りに回転可能に連結される第2アーム部とを備えた多関節ロボットであって、前記ベースに各々備えられた第1モータ及び第2モータと、第1減速機を含み、前記第1モータが発生する回転力を前記第1アーム部に伝達する第1動力伝達機構と、第2減速機を含み、前記第2モータが発生する回転力を、前記第1アーム部を経由して前記第2アーム部に伝達する第2動力伝達機構と、を備え、前記第1減速機は、前記ベース部と前記第1アーム部との間に配置され、前記第2減速機は、前記第1アーム部と前記第2アーム部との間に配置されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る多関節ロボットが適用された産業用ロボットの側面図である。
図2図2は、産業用ロボットの断面図である。
図3図3は、産業用ロボットの斜視図(斜め下から視た状態)である。
図4図4は、産業用ロボットの斜視図(斜め下から視た状態)である。
図5図5は、産業用ロボットの断面拡大図である。
図6図6は、産業用ロボットの断面拡大図である。
図7図7は、産業用ロボットの分解斜視図である。
図8図8は、第1減速機ユニットの断面図である。
図9図7は、配線構造を示す産業用ロボットの断面図である。
図10図10は、配線構造を示す産業用ロボットの下面図である。
図11図11は、配線構造を示す産業用ロボットの上方からの斜視図である。
図12図12は、配線構造のコネクタ部分を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図4は、本発明に係る多関節ロボットが適用された産業用ロボットを示しており、図1は側面図で、図2は断面図で、図3及び図4は斜視図で各々産業用ロボットを示している。なお、各図中には、説明の便宜上、XYZの直角座標系を示している。当例では、Z方向は上下方向である。
【0011】
産業用ロボット1は、多関節ロボットの一種であるスカラロボット(水平多関節ロボット)2と、このスカラロボット2を直動(直線的に移動)させる単軸ロボット3とを備えた複合型ロボットである。当例では、単軸ロボット3は、スカラロボット2をZ方向に移動(昇降)させる。
【0012】
[単軸ロボット3の構成]
単軸ロボット3は、Z方向に延在する構造体を含む中空のケーシング10と、このケーシング10に沿ってZ方向に移動可能に支持されるスライダ12と、このスライダ12を駆動する駆動機構14とを含む。
【0013】
スライダ12は、ケーシング10の内壁面に固定されたZ方向に延在する一対のガイドレール(図示省略)に移動自在に支持されている。ケーシング10の側面には、Z方向に延在するスリット状の開口部10aが形成されており、スライダ12は、当該開口部10aを介して外部に露出している。
【0014】
前記駆動機構14は、いわゆる送りねじ機構であり、スライダ12に組込まれたナット部材12aと、このナット部材12aに挿入されて前記ガイドレールと平行に延在するねじ軸16と、このねじ軸16の一端に連結された電動モータ18とを含む。つまり、駆動機構14は、モータ18によりねじ軸16を回転させ、このねじ軸16の回転運動を、ナット部材12a及びガイドレールを介してスライダ12のZ方向の直線運動に変換する。この構成によりスライダ12がZ方向に移動する。
【0015】
[スカラロボット2の構成]
スカラロボット2は、ベース部20と、このベース部20に連結されたロボットアーム22とを含む。ベース部20は、単軸ロボット3の前記スライダ12に固定されており、これにより、スカラロボット2が、スライダ12の移動に伴い当該スライダ12と共にZ方向に移動する。
【0016】
ロボットアーム22は、ベース部20に対して第1回転軸Ax1回りに回転可能に連結された第1アーム部23と、この第1アーム部23に対して第2回転軸Ax2回りに回転可能に連結された第2アーム部24と、この第2アーム部24に対して第3回転軸Ax3回りに回転可能に搭載されたツール装着部25とを備えている。ツール装着部25は、ロボットハンド等などの各種用途に応じたエンドエフェクタが着脱自在に装着される部分であり、第2アーム部24の先端部に設けられている。なお、第1回転軸Ax1、第2回転軸Ax2及び後述する第3回転軸Ax3は、Z方向に延びる互いに平行な仮想軸である。
【0017】
スカラロボット2は、第1アーム部23の駆動源である第1モータ31と、この第1モータ31が発生する回転力を前記第1アーム部23に伝達する第1動力伝達機構PT1とを備えている。また、スカラロボット2は、第2アーム部24の駆動源である第2モータ32と、この第2モータ32が発生する回転力を前記第2アーム部23に伝達する第2動力伝達機構PT2とを備えている。また、スカラロボット2は、ツール装着部25の駆動源である第3モータ33と、この第3モータ31が発生する回転力をツール装着部25に伝達する第3動力伝達機構PT3とを備えている。
【0018】
第1~第3のモータ31~33は全てベース部20に搭載されている。ベース部20は、下方が開口した中空かつ箱形の剛性を有した構造体からなるケーシング201を備えており、モータ31~33は、第1回転軸Ax1を中心としてその周囲に配置され、各々、ブラケットを介してケーシング201の天井部202に固定されている。具体的には、第1モータ31は、第1回転軸Ax1に対してX方向に隣接する位置に配置されている。第2モータ32及び第3モータ33は、第1回転軸Ax1を挟んでY方向に並ぶ位置に各々配置されている。すなわち、第1~第3のモータ31、32、33は、第1回転軸Ax1の周りに90°間隔で配置されている。ケーシング201の下面には、カバー203が着脱可能に固定されている。
【0019】
[第1動力伝達機構PT1の構成]
図5は産業用ロボット1の要部断面図である。この図に示すように、前記第1動力伝達機構PT1は、ベース部20とロボットアーム22との間に介設された第1減速機40と、第1モータ31の出力軸31aの回転を第1減速機40に伝達する第1伝動機構46とを含む。
【0020】
第1減速機40は、波動歯車減速機構からなる減速機本体42と、この減速機本体42が組み込まれた、剛性を有する構造体からなるケーシング44とを含み、第1回転軸Ax1に沿って貫通した概略円環状の構造を有している。
【0021】
ケーシング44は、周壁部を備えた有天円筒状の上部ケーシング45aと、周壁部を備えた有底円筒状の下部ケーシング45bとを含み、周壁部同士の間にラビリンス状の隙間44aが形成されるように、これら上、下のケーシング45a、45bが向かい合わせに配置された中空構造を有する。上部ケーシング45aは、第1アーム部23の後記ケーシング231の下面232に固定されており、下部ケーシング45bは、ベース部20の前記ケーシング201の上面に固定されている。
【0022】
減速機本体42は、周知の波動歯車減速機構であり、ケーシング44の内側に組み込まれている。減速機本体42は、ウェーブジェネレータ43a、サーキュラスプライン43b、フレクススプライン43c、及び、サーキュラスプライン43bとフレクススプライン43cとを相対的に回転可能な状態で連結するベアリング43dとを備えている。
【0023】
ウェーブジェネレータ43aは、上下のケーシング45a、45bにベアリング43eを介して回転自在に保持されかつ楕円形のカムの外周にベアリング(図示省略)が外嵌された構造を有する。サーキュラスプライン43bは、内歯を備えた円環状の剛体であり、ウェーブジェネレータ43aの径方向外側に配置されて下部ケーシング45bに固定されている。フレクススプライン43cは、サーキュラスプライン43bの内歯と噛合する外歯を備えた薄肉の金属弾性体であり、ウェーブジェネレータ43aとサーキュラスプライン43bとの間に配設されて、上部ケーシング45aに固定されている。
【0024】
ウェーブジェネレータ43aは、第1モータ31の回転力の入力部であり、フレクススプライン43cが固定された上部ケーシング45aは減速後の回転力の出力部とされる。すなわち、第1減速機40は、ウェーブジェネレータ43a(入力部)に入力される回転駆動力の回転速度を減速して上部ケーシング45a(出力部)から出力させる。
【0025】
前記第1伝動機構46はベルト伝動機構である。すなわち、第1伝動機構46は、第1モータ31の出力軸31aに固定されたプーリ47aと、第1減速機40の前記ウェーブジェネレータ43aに固定されたプーリ47bと、これらプーリ47a、47bとに掛け渡された伝動ベルト48とを含む。
【0026】
このような第1動力伝達機構PT1の構成により、第1モータ31の出力軸31aの回転は、第1減速機40の入力部(ウェーブジェネレータ43a)に伝達され、この第1減速機40で回転速度が減速されながら第1アーム部23に伝達される。これにより、第1アーム部23が、ベース部20に対して所定の回転速度で第1回転軸Ax1回りに回転(旋回)する。
【0027】
[第2動力伝達機構PT2の構成]
前記第2動力伝達機構PT2は、図2に示すように、第1アーム部23と第2アーム部24との間に介設された第2減速機50と、ベース部20から第1アーム部23に亘って第1減速機40の内側を貫通して延在する第1伝動軸56と、前記第2モータ32の出力軸32a(図示省略)の回転を、ベース部20において第1伝動軸56に伝動するとともに、当該第1伝動軸56の回転を、第1アーム部23において第2減速機50に伝動する第2伝動機構57と、を含む。
【0028】
図6は産業用ロボット1の断面拡大図である。この図に示すように、第2減速機50は、波動歯車減速機構からなる減速機本体52と、この減速機本体52が組み込まれた、剛性を有する構造体からなるケーシング54とを含み、全体が第2回転軸Ax2に沿って貫通した概略円環状の構造を有している。この第2減速機50の基本的な構造は、以下の通り、第1減速機40の構造とほぼ共通している。
【0029】
ケーシング54は、周壁部を備えた有天円筒状の上部ケーシング55aと、周壁部を備えた有底円筒状の下部ケーシング55bとを含み、周壁部同士の間にラビリンス状の隙間54aが形成されるように、これら上、下のケーシング55a、55bが向かい合わせに配置された中空構造を有する。上部ケーシング55aは、第1アーム部23の後記ケーシング231の下面232に固定されており、下部ケーシング55bは、第2アーム部24の後記ケーシング241の上面243に固定されている。
【0030】
減速機本体52は、上下のケーシング55a、55bにベアリング53eを介して回転自在に保持されたウェーブジェネレータ53aと、このウェーブジェネレータ53aの径方向外側に配置されて下部ケーシング55bに固定されたサーキュラスプライン53bと、ウェーブジェネレータ53aとサーキュラスプライン53bとの間に配設されて上部ケーシング55aに固定されたフレクススプライン53cと、サーキュラスプライン53bとフレクススプライン53cとを相対的に回転可能な状態で連結するベアリング53dとを備えている。
【0031】
ウェーブジェネレータ53aは、第2モータ32の回転力の入力部であり、フレクススプライン53cが固定された上部ケーシング55aは減速後の回転力の出力部とされる。すなわち、第2減速機50は、ウェーブジェネレータ53a(入力部)に入力される回転駆動力の回転速度を減速して上部ケーシング55a(出力部)から出力させる。なお、第2減速機50では、上部ケーシング45aが第1アーム部23に固定されるため、サーキュラスプライン53bが固定された下部ケーシング45bが相対的に回転することで回転力が第2アーム部24に伝達される。
【0032】
前記第2伝動機構57はベルト伝動機構である。すなわち、第2伝動機構57は、図3図5及び図6に示すように、第2モータ32の出力軸32aに固定されたプーリ58aと、ベース部20において第1伝動軸56の下端部に固定されたプーリ58bと、これらプーリ58a、58bとに掛け渡された伝動ベルト59とを含む。また、第2伝動機構57は、第1アーム部23において、第1伝動軸56の上端部に固定されたプーリ61aと、第2減速機50の前記ウェーブジェネレータ53aに固定されたプーリ61bと、これらプーリ61a、61bとに掛け渡された伝動ベルト62とを含む。
【0033】
前記第1伝動軸56は中空軸からなり、第1動力伝達機構PT1の第1減速機40及び第1伝動機構46のプーリ47bを貫通してZ方向に延在している。第1伝動軸56は、第1減速機40の上部ケーシング45a及び第1伝動機構46のプーリ47bにベアリング64a、64b(図8参照)を介して相対回転が可能な状態で保持されている。詳しくは、上部ケーシング45aと第1伝動軸56との間にベアリング64aが、プーリ47bと第1伝動軸56との間にベアリング64bが各々配置され、Cリング等の抜け止め部材により、第1伝動軸56がこれらベアリング64a、64bの上下両側で当該ベアリング64a、64bの内輪に対して抜け止めされている。なお、プーリ47bは第1減速機40のウェーブジェネレータ43aに固定されおり、従って、第1伝動軸56は、第1減速機40に相対回転が可能に保持されていると言える。
【0034】
このような第2動力伝達機構PT2の構成により、第2モータ32の出力軸32aの回転が、第1アーム部23を通じて第2減速機50の入力部(ウェーブジェネレータ53a)に伝達され、この第2減速機50で回転速度が減速されながら第2アーム部24に伝達される。これにより、第2アーム部24が第1アーム部23に対して所定の回転速度で第2回転軸Ax2回りに回転(旋回)する。
【0035】
[第3動力伝達機構PT3の構成]
前記第3動力伝達機構PT3は、図2に示すように、第2アーム部24とツール装着部25との間に介設された第3減速機70と、第1伝動軸56と同心上に配置されて、ベース部20から第1アーム部23に亘って第1減速機40の内側を貫通して延在する第2伝動軸76と、第1アーム部23から第2アーム部24に亘って第2減速機50の内側を貫通して延在する第3伝動軸77と、前記第3モータ33の出力軸33a(図示省略)の回転を、ベース部20において第2伝動軸76に伝動し、当該第2伝動軸76の回転を、第1アーム部23において第3伝動軸77に伝動し、当該第3伝動軸77の回転を、第2アーム部において第3減速機70に伝動する第3伝動機構78と、を含む。
【0036】
図5及び図6に示すように、第3減速機70は、波動歯車減速機構からなる減速機本体72と、この減速機本体72が組み込まれた、剛性を有する構造体からなるケーシング74とを含み、全体が第3回転軸Ax3に沿って貫通した概略円環状の構造を有している。この第3減速機70の基本的な構造は、以下の通り、第1、第2の減速機40、50の構造と共通している。
【0037】
ケーシング74は、周壁部を備えた有天円筒状の上部ケーシング75aと、周壁部を備えた有底円筒状の下部ケーシング75bとを含み、周壁部同士の間にラビリンス状の隙間74aが形成されるように、これら上、下のケーシング75a、75bが向かい合わせに配置された中空構造を有する。上部ケーシング75aは、第2アーム部24の後記ケーシング241の下面242に固定されており、下部ケーシング75bは、ツール装着部25の上部に固定されている。
【0038】
減速機本体72は、上下のケーシング75a、75bにベアリング73eを介して回転自在に保持されたウェーブジェネレータ73aと、このウェーブジェネレータ73aの径方向外側に配置されて下部ケーシング75bに固定されたサーキュラスプライン73bと、ウェーブジェネレータ73aとサーキュラスプライン73bとの間に配設されて上部ケーシング75aに固定されたフレクススプライン73cと、サーキュラスプライン73bとフレクススプライン73cとを相対的に回転可能な状態で連結するベアリング73dとを備えている。
【0039】
ウェーブジェネレータ73aは、第3モータ33の回転力の入力部であり、フレクススプライン73cが固定された上部ケーシング75aは減速後の回転力の出力部とされる。すなわち、第3減速機70は、ウェーブジェネレータ73a(入力部)に入力される回転駆動力の回転速度を減速してウェーブジェネレータ73a(出力部)から出力させる。なお、第3減速機70では、上部ケーシング75aが第2アーム部24に固定されているため、サーキュラスプライン73bが固定された下部ケーシング75bが相対的に回転することで回転力がツール装着部25に伝達される。
【0040】
前記第3伝動機構78はベルト伝動機構である。すなわち、第3伝動機構78は、図3図5及び図6に示すように、第3モータ33の出力軸33aに固定されたプーリ79aと、ベース部20において第2伝動軸76の下端部に固定されたプーリ79bと、これらプーリ79a、79bとに掛け渡された伝動ベルト80とを含む。また、第3伝動機構78は、第1アーム部23において、第2伝動軸76の上端部に固定されたプーリ82aと、第3伝動軸77の上端部に固定されたプーリ82bと、これらプーリ82a、82bとに掛け渡された伝動ベルト83とを含む。さらに、第3伝動機構78は、第2アーム部24において、第3伝動軸77の下端部に固定されたプーリ84aと、第3減速機70の前記ウェーブジェネレータ73aに固定されたプーリ84bと、これらプーリ84a、84bとに掛け渡された伝動ベルト85とを含む。
【0041】
前記第2伝動軸76は、その外径が前記第1伝動軸56の内径よりも小さい中空軸からなり、第1伝動軸56の内側を貫通してZ方向に延在している。第2伝動軸76と第1伝動軸56とは、第1回転軸Ax1を中心とする同心円状に配置されている。
【0042】
第2伝動軸76は、第1伝動軸56にベアリング86a、86b(図8参照)を介して相対回転が可能な状態で保持されている。詳しくは、第1伝動軸56の両端において当該第1伝動軸56と第2伝動軸76との間にベアリング86a、86bが各々配置され、Cリング等の抜け止め部材により、第2伝動軸76がこれらベアリング86a、86bの上下両側で当該ベアリング86a、84bの内輪に対して抜け止めされている。
【0043】
第3伝動軸77は中空軸からなり、第2動力伝達機構PT2の第3伝動機構78のプーリ61b及び第2減速機50を貫通してZ方向に延在している。第3伝動軸77は、第3伝動機構78のプーリ61b及び第2減速機50の下部ケーシング55bにベアリング88a、88b(図6参照)を介して相対回転が可能な状態で保持されている。詳しくは、プーリ61bと第3伝動軸77との間にベアリング88aが、下部ケーシング55bと第3伝動軸77との間にベアリング88bが各々配置され、Cリング等の抜け止め部材により、第3伝動軸77がこれらベアリング88a、88bの上下両側で当該ベアリング88a、88bの内輪に対して抜け止めされている。なお、プーリ61bは第2減速機50のウェーブジェネレータ53aに固定されおり、従って、第3伝動軸77は、第2減速機50に相対回転が可能に保持されていると言える。
【0044】
このような第3動力伝達機構PT3の構成により、第3モータ33の出力軸33aの回転が、第1アーム部23及び第2アーム部24を通じて第3減速機70の入力部(ウェーブジェネレータ73a)に伝達され、この第3減速機70で回転速度が減速されながらツール装着部25に伝達される。これにより、ツール装着部25が第2アーム部24に対して所定の回転速度で第3回転軸Ax3回りに回転する。
【0045】
なお、第3動力伝達機構PT3の第2伝動軸76の内側には、当該第2伝動軸76を貫通してベース部20から第1アーム部23に亘って延在する、中空軸からなる第1配線保護軸90が配置されている。また、第3伝動軸77の内側には、当該第3伝動軸77を貫通して第1アーム部23から第2アーム部24に亘って延在する、中空軸からなる第2配線保護軸94が配置されている。第1配線保護軸90、第2伝動軸76及び第1伝動軸56は、共に断面円形の中空軸(円筒体)であり、これら第1配線保護軸90、第2伝動軸76及び第1伝動軸56は、第1回転軸Ax1を中心とする同心円状にこの順番で内側から配置されている。また、第2配線保護軸94及び第3伝動軸77は、共に断面円形の中空軸(円筒体)であり、これら第2配線保護軸94及び第3伝動軸77は、第2回転軸Ax2を中心とする同心円状にこの順番で内側から配置されている。
【0046】
これら第1、第2の配線保護軸90、94は、後述する通り、スカラロボット2内に配索される電気配線およびエア配管などの電線類を保護するものである。
【0047】
第1配線保護軸90は、第3動力伝達機構PT3のプーリ79bに固定された連結部材91にベアリング92を介して相対回転可能に支持されるとともに、第2伝動軸76に対してCリング等の抜け止め部材により抜け止めされている。また、第2配線保護軸94は、第3動力伝達機構PT3のプーリ84aに固定された連結部材95にベアリング96を介して相対回転可能に支持されるとともに、第2伝動軸76に対してCリング等の抜け止め部材により抜け止めされている。
【0048】
第1配線保護軸90の上端部には、平面視半円形に切り欠かれた切欠部が設けられている。第1配線保護軸90の上端部は、第1アーム部23のケーシング231の後記カバー234aの下面に形成された平面視半円形の凹部に嵌合されている。これにより、第1配線保護軸90は第1アーム部23と共に前記第1伝動軸56及び第2伝動軸76に対して相対的に回転する。
【0049】
第2配線保護軸94の上端部にも同様に、平面視半円形に切り欠かれた切欠部が設けられている。第2配線保護軸94の上端部は、第1アーム部23のケーシング231の後記カバー234bの下面に形成された平面視半円形の凹部に嵌合されている。これにより、第2配線保護軸94は第1アーム部23と共に前記第3伝動軸77に対して相対的に回転するようになっている。なお、第1、第2の配線保護軸90の切欠部は、第1アーム部23の長手方向において互いに向かい合っている。
【0050】
[第1アーム部23及び第2アーム部24の構造]
第1アーム部23は、水平方向(Z方向と直交する方向)に延在する側面視長方形の剛性を有した中空の箱型構造体からなるケーシング231を有している。このケーシング231の基端部(図2では右端部)に前記第1減速機40が固定されている。詳しくは、第1減速機40の上部ケーシング45aがケーシング231の下面232にボルトで締結されることにより、第1減速機40がケーシング231に固定されている。ケーシング231の下面232のうち当該第1減速機40が固定された領域の中心部には開口部232aが開口されており、第2動力伝達機構PT2の前記第1伝動軸56及び第3動力伝達機構PT3の前記第2伝動軸76が、プーリ61a及びプーリ82aと共に当該開口部232aを通じてケーシング231内に挿入されている。
【0051】
一方、ケーシング231の先端部(図2では左端部)には、前記第2減速機50が固定されている。詳しくは、第2減速機50の上部ケーシング55aがケーシング231の下面232にボルトで締結されることにより、第2減速機50がケーシング231に固定されている。ケーシング231の下面232のうち当該第2減速機50が固定された領域の中心部には開口部232bが開口されており、第3動力伝達機構PT3の第3伝動軸77がプーリ82b及びプーリ61bと共に当該開口部232bを通じてケーシング231内に挿入されている。そして、ケーシング231内において、プーリ61aとプーリ61bとに前記伝動ベルト62が、プーリ82aとプーリ82bとに前記伝動ベルト83が各々掛け渡されている。
【0052】
なお、ケーシング231の基端部及び先端部において、当該ケーシング231の上面233には、開口部233a、233bが形成されている。これら開口部233a、233bは、上面233に着脱可能にボルトで締結されたカバー234a、234bにより閉鎖されている。
【0053】
第2アーム部24は、水平方向(Z方向と直交する方向)に延在する剛性を有した中空の箱型構造体からなるケーシング241を有している。このケーシング241の基端部(図2では右端部)に前記第2減速機50が固定されている。詳しくは、第2減速機50の下部ケーシング45bがケーシング241の上面243にボルトで締結されることにより、第2減速機50がケーシング231に固定されている。ケーシング241の上面243のうち当該第2減速機50が固定された領域の中心部には開口部243aが開口されており、第3動力伝達機構PT3の前記第3伝動軸77がプーリ84aと共に当該開口部243aを通じてケーシング241内に挿入されている。
【0054】
一方、ケーシング241の先端部(図2では左端部)には、前記第3減速機70が固定されている。詳しくは、第3減速機70の上部ケーシング75aがケーシング241の下面242にボルトで締結されることにより、第3減速機70がケーシング241に固定されている。ケーシング241の下面242のうち当該第3減速機70が固定された領域の中心部には開口部242bが開口されており、第3動力伝達機構PT3のプーリ84bが当該開口部242bを通じてケーシング241内に挿入されている。そして、ケーシング241内において、プーリ84aとプーリ84bとに前記伝動ベルト85が掛け渡されている。
【0055】
なお、ケーシング241の基端部においてその下面242には開口部242aが形成され、先端部においてその上面243には開口部243bが形成されている。開口部242aは、下面242に着脱可能にボルト締結されたカバー244により閉鎖され、開口部243bは、上面243に着脱可能にボルト締結されたカバー245により閉鎖されている。
【0056】
[スカラロボット2の配線構造]
スカラロボット2の内部には、第1~第3のモータ31~33の駆動用の電線や、ツール装着部25に装着されるツールの駆動用の電線及び/又は可撓性を有するパイプ(チューブ)が配索されている。パイプは、例えば圧縮空気などの給排に用いられる。
【0057】
図9図11は、スカラロボット2内の配線構造を示しており、主にツールを駆動するための電線及び/又はパイプの配線構造を示している。
【0058】
前記ツールを駆動するための電線及び/又はパイプ(以下、電線類100称す)は、第1~第3のモータ31~33の駆動用の電線と共にベース部20の上部からそのケーシング201内に導入されている。
【0059】
電線類100は、第1配線保護軸90の下端部からその内部に挿入され、この第1配線保護軸90を通じて第1アーム部23のケーシング231内に導入されている。電線類100は、このケーシング231内において、第1アーム部23の基端部から先端部に向かってその長手方向に沿って配索され、第2配線保護軸94の上端部からその内部に挿入され、この第2配線保護軸94を通じて第2アーム部24のケーシング241内に導入されている。
【0060】
第1アーム部23のケーシング231の内部には、第2、第3の伝動機構57、78とその上方の空間とを仕切る仕切板236が設けられている。電線類100は、図9及び図11に示すように、この仕切板236の上面に沿ってほぼ弛み無く直線状に配索され、結束バンド等の配線固定部材237によって当該仕切板236に固定されている。これにより、第1アーム部23の旋回に伴いケーシング231内で電線類100が暴れることや第2、第3の伝動機構57、78に接触することが防止される。
【0061】
第2アーム部24のケーシング241内において、電線類100は、第2アーム部24の基端部から先端部に向かってその長手方向に沿って配索され、プーリ84b及び第3減速機70の内側を通じてツール装着部25に導入されている。ケーシング241の内部には、電線類100をガイドするガイド部材246が設けられ、電線類100は、このガイド部材246に沿って配索されている。詳しくは、第2配線保護軸94の下端部から導出された電線類100は、両プーリ84a、84bの間の位置で伝動ベルト85の内側を下側から上側に通過するように配索され、プーリ84bの上側から第3減速機70の内部に挿入されている。
【0062】
[ユニット構造について]
上述したスカラロボット2では、第1減速機40を主部品として第1~第3の動力伝達機構PT1~PT3を構成する部品(要素)の一部が当該第1減速機40に予め組み付けられることにより、第1減速機40を含む当該一部の部品が一つのユニット化された部品(第1減速機ユニットU1と称する)として構築されている。また、第2減速機50に対して第2、第3の動力伝達機構PT2、PT3を構成する部品の一部が当該第2減速機50に予め組み付けられることにより、第2減速機50を含む当該一部の部品が一つのユニット化された部品(第2減速機ユニットU2と称する)として構築されている。また、第3減速機70に対して第3動力伝達機構PT3を構成する部品の一部が予め組み付けられることにより、第3減速機70を含む当該一部の部品が一つのユニット化された部品(第3減速機ユニットU3と称する)として構築されている。そして、スカラロボット2の組立時やメンテナンスの際には、図7に示すように、第1アーム部23や第2アーム部24に対して当該減速機ユニットU1~U3が着脱されるようになっている。なお、当例では、第1減速機ユニットU1が本発明の「第1組立体」に相当し、第2減速機ユニットU2が本発明の「第2組立体」に相当する。
【0063】
上述した説明と重複するところもあるが、以下、第1~第3の減速機ユニットU1~U3について説明する。
【0064】
図8は、第1減速機ユニットU1を示す断面図である。図7及び図8に示すように、第1減速機40のウェーブジェネレータ43aの下端部には、第1伝動機構46のプーリ47bが固定されている。これら第1減速機40及びプーリ47bの内側を貫通するように第1伝動軸56が設けられている。第1伝動軸56は、第1減速機40の上部ケーシング45a及び第1伝動機構46のプーリ47bに対してベアリング64a、64bを介して相対回転が可能な状態で保持され、これらベアリング64a、64bの上下両側で当該ベアリング64a、64bの内輪に対して抜け止めされている。
【0065】
第1伝動軸56の上端は、上部ケーシング45aの上方に突出しており、この突出部分に、第2伝動機構57のプーリ61aが固定されている。第1伝動軸56の下端は、プーリ47bの下方に突出しており、この突出部分に、第2伝動機構57のプーリ58bが固定されている。
【0066】
そして、第1伝動軸56の内側に第2伝動軸76が配置されている。第2伝動軸76は、ベアリング86a、86bを介して第1伝動軸56に相対回転が可能な状態で保持され、これらベアリング86a、86bの上下両側で当該ベアリング86a、84bの内輪に対して抜け止めされている。
【0067】
第2伝動軸76の上端は、プーリ61aの上方に突出しており、この突出部分に、第3伝動機構78のプーリ82aが固定されている。第2伝動軸76の下端は、プーリ58bの下方に突出しており、この突出部分に、第3伝動機構78のプーリ79bが固定されている。
【0068】
そして、第2伝動軸76の内側に第1配線保護軸90が配置されている。第1配線保護軸90は、プーリ79bに固定された連結部材91にベアリング92を介して相対回転可能に支持されるとともに、第2伝動軸76に対して抜け止めされている。
【0069】
このように、第1減速機ユニットU1は、第1減速機40に対して、第1、第2の伝動軸56、76、第1配線保護軸90及びプーリ47b、58b、61a、79b、81aが予め各々組み付けられた構造を有している。そして、スカラロボット2の組立時などには、図7に示すように、第1減速機40より下側の部分、すなわちプーリ47b、58b、79bの部分が、ベース部20のケーシング201の上面に形成された開口部204に挿入され、この状態で第1減速機40の下部ケーシング45bがケーシング201にボルトで締結される。これにより、第1減速機ユニットU1がベース部20に組み付けられる。また、第1減速機40より上側の部分、すなわちプーリ61a、82aの部分が、第1アーム部23のケーシング231の開口部232aに挿入され、この状態で第1減速機40の上部ケーシング45aがケーシング231にボルトで締結される。これにより、第1減速機ユニットU1が第1アーム部23に組み付けられる。
【0070】
第2減速機ユニットU2は、ユニット単体での断面図を省略しているが、図4及び図7に示すように、第2減速機50に対して、第3伝動軸77、第2配線保護軸94及びプーリ61b、82b、84aが予め組み付けられた構造を有している。すなわち、第2減速機50のウェーブジェネレータ53aの上端部に、第2伝動機構57のプーリ61bが固定され、これら第2減速機50及びプーリ61bの内側を貫通するように第3伝動軸77が設けられている。第3伝動軸77は、第2減速機50の下部ケーシング55b及び第2伝動機構57のプーリ61bに対してベアリングを介して相対回転が可能な状態で保持され、これらベアリングの上下両側で当該ベアリングの内輪に対して抜け止めされている。
【0071】
第3伝動軸77の上端は、プーリ61bの上方に突出しており、この突出部分に、第3伝動機構78のプーリ82bが固定されている。第3伝動軸77の下端は、下部ケーシング55bの下方に突出しており、この突出部分に、第3伝動機構78のプーリ84aが固定されている。
【0072】
そして、第3伝動軸77の内側に第2配線保護軸94が配置されている。第2配線保護軸94は、プーリ84bに固定された連結部材95にベアリング96を介して相対回転可能に支持されるとともに、第3伝動軸77に対して抜け止めされている。
【0073】
図7に示すように、スカラロボット2の組立時などには、第2減速機ユニットU2のうち第2減速機50より上側の部分、すなわちプーリ61b、82bの部分が、第1アーム部23のケーシング231の開口部232bに挿入され、この状態で第2減速機50の上部ケーシング55aがケーシング231にボルトで締結される。これにより、第2減速機ユニットU2が第1アーム部23に組み付けられる。また、第2減速機50より下側の部分、すなわちプーリ84aの部分が、第2アーム部24のケーシング241の開口部243aに挿入され、この状態で第2減速機50の下部ケーシング55bがケーシング241にボルトで締結される。これにより、第2減速機ユニットU2が第2アーム部24に組み付けられる。
【0074】
第3減速機ユニットU3は、ユニット単体での断面図を省略しているが、図6及び図7に示すように、第3減速機70に対してプーリ84b及びツール装着部25が予め各々組み付けられた構造を有している。すなわち、第3減速機70のウェーブジェネレータ73aの上端部に、第3伝動機構78のプーリ84bが固定され、第3減速機70の下部ケーシング75bにツール装着部25が固定されている。
【0075】
そして、スカラロボット2の組立時などには、図7に示すように、第3減速機ユニットU3のうち第3減速機70より上側の部分、すなわちプーリ84bの部分が、第2アーム部24のケーシング241の開口部242bに挿入され、この状態で第3減速機70の上部ケーシング75aがケーシング241にボルトで締結される。
【0076】
[スカラロボット2の作用効果]
以上説明した産業用ロボット1に適用されたスカラロボット2によれば、上記の通り、第1、第2のアーム部23、24を駆動する第1、第2のモータ31、32およびツール装着部25を駆動する第3モータ33が全てベース部20に搭載されている。そのため、ロボットアーム22の重量、特に第2アーム部24の重量が軽減され、これによりロボットアーム22のイナーシャが効果的に低減される。従って、第1、第2のモータ31、32として高出力のモータを用いることなく、ロボットアーム22を比較的高速で作動させることが可能となる。
【0077】
しかも、このスカラロボット2によれば、第1減速機40がベース部20と第1アーム部23との間に配置され、第2減速機50が第1アーム部23と第2アーム部24との間に配置され、第3減速機70が第2アーム部24とツール装着部25との間に配置されている。そのため、第1~第3の全てのモータ32~33をベース部20に搭載しながらも、第1、第2のアーム部23、24やツール装着部25の作動時の位置精度を高度に保つことができる。すなわち、例えば第2モータ32に第2減速機50を直結し、第2モータ32が発生する回転力の回転速度を所定速度に減速してからベルト伝動により第2アーム部24に回転力を伝達することも考えられる。しかし、この場合には、第2減速機50から第2アーム部24までの回転力の伝達過程において回転速度に誤差が生じ、第2アーム部24の位置精度が低下することが考えられる。これに対して、第1アーム部23に第1減速機40が直接固定され、第2アーム部24に第2減速機50が直接固定され、ツール装着部25に第3減速機70が直接固定されている上記実施形態のスカラロボット2によれば、減速後の回転力が直ちにアーム部23、24やツール装着部25に伝達されるため、第1、第2のアーム部23、24及びツール装着部25を確実に減速後の回転速度で作動させることができる。従って、第1、第2のアーム部23、24やツール装着部25の作動時の位置精度をより高度に保つことが可能となる。
【0078】
また、このスカラロボット2によれば、第2アーム部24やツール装着部25にはモータが一切搭載されていないため、その分、ロボットアーム22の先端部分を薄型化(Z方向に薄型化)することができる。また、単軸ロボット3の作動によりロボットアーム22のZ方向の移動も可能である。従って、このスカラロボット2によれば、従来のスカラロボットでは侵入させることが困難であった狭所エリアにロボットアーム22を侵入させることが可能であり、これにより、スカラロボット2の用途を拡大することができる。
【0079】
また、このスカラロボット2では、ツール装着部25に装着されるツール用の電線類100は、全てスカラロボット2の内部に配索されている。そのため、ツール用の電線類がベース部とアーム部とに亘って設けられたアーチ状の配線用配管内に配索された従来のスカラロボットのように、ロボットアームの作動に伴い電線類(配線用配管)が振り回されることがない。従って、ロボットアーム22を高速で作動させる上で有利であり、また、スカラロボット2が使用される周辺環境の制約を受け難くなるので、この点でもスカラロボット2の用途を拡大することができる。
【0080】
しかも、電線類100は、図9に示したように、ロボットアーム22の関節部分において第1回転軸Ax1、第2回転軸Ax2及び第3回転軸Ax3に沿って配索されているため、当該電線類100に余長(あそび)を殆ど設ける必要がなく、当該電線類100をベース部20からツール装着部25に亘って可及的に短い距離で配索することができる。すなわち、電線類100が第1回転軸Ax1、第2回転軸Ax2及び第3回転軸Ax3からずれた位置で配索されている場合には、その分、ロボットアーム22の動作に追従させるために電線類100に余長(あそび)を設ける必要があるが、電線類100が第1回転軸Ax1、第2回転軸Ax2及び第3回転軸Ax3に沿って配索されている上記のスカラロボット2ではその必要が殆どない。従って、このスカラロボット2によれば、電線類100の全長を短縮でき、また、電線類100の余長部分がロボットアーム22の内部で周辺部材に擦れて損傷すると言った不都合も回避することができる。
【0081】
しかも、電線類100は、第1、第2の回転軸Ax1、Ax2の位置では、第1配線保護軸90、94の内部に配置されており、比較的高速で回転する第3伝動機構78の第2、第3の伝動軸76、77に直接接触することがない。従って、第1、第2の回転軸Ax1、Ax2に沿って電線類100を配索しながらも、第2、第3の伝動軸76、77に電線類100が接触して損傷することがない。なお、第1、第2の配線保護軸90、94の上端部は、上述の通り、第1アーム部23のケーシング231(カバー234a、234b)に形成された平面視半円形の凹部に嵌合されており、第1、第2の配線保護軸90、94それ自体が回転することはない。従って、電線類100がこれら第1、第2の配線保護軸90、94に接触しても損傷することはない。
【0082】
また、このスカラロボット2では、上記の通り、第1減速機40を含む一部の部品が一つのユニット化された部品(第1減速機ユニットU1)として構築され、第2減速機50を含む当該一部の部品が一つのユニット化された部品(第2減速機ユニットU2)として構築され、第3減速機70を含む一部の部品が一つのユニット化された部品(第3減速機ユニットU3)として構築されている。そして、スカラロボット2の組立時やメンテナンスの際には、第1アーム部23や第2アーム部24に対してこれら第1~第3の減速機ユニットU1~U3がユニット単位で着脱されるようになっている。従って、このスカラロボット2によれば、組立性及びメンテナンス性が非常に良いという利点もある。特に、予めユニット単体で減速機にグリスを馴染ませるエージング作業を実施しておけば、スカラロボット2の組立後やメンテナンス後にエージング作業のためだけにスカラロボット2を試運転する必要がなくなり、これにより、トータル的な組立時間やメンテナンス時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0083】
なお、図9に示すスカラロボット2の配線構造においては、例えば電線類100の途中部分に、図12に示すようなコネクタ110を設け、各ユニットU1~U3に対応する部分の電線類を其れ以外の部分の電線類から分離できるようにするのが好適である。具体的には、電線類100のうち、図9の丸枠で示す位置P1~P5にコネクタ110を設けるのが好適である。ここで、P1、P2は、電線類100のうち第1配線保護軸90の両端の位置であり、P3、P4は、電線類100のうち第2配線保護軸94の両端の位置であり、P5は、プーリ84bの上部の位置である。この構成によれば、スカラロボット2の組立時やメンテナンス時に、電線類100の一部を各ユニットU1~U3と共に脱着することが可能となるため、スカラロボット2の組立性やメンテナンス性がより一層向上する。
【0084】
[変形例]
以上、本発明に係るスカラロボット2が適用された産業用ロボット1の実施形態について説明したが、上記スカラロボット2は本発明に係る多関節ロボットの好ましい実施形態の例示であって、スカラロボット2やこれを含む産業用ロボット1の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような態様を採用することも可能である。
【0085】
(1)実施形態では、単軸ロボット3のスライダ12にスカラロボット2が固定され、これによりスカラロボット2がZ方向に移動する構成である。しかし、スカラロボット2は、ベース部20が接地面上に直接固定されて使用されるものであってもよい。
【0086】
(2)実施形態のスカラロボット2は、第2アーム部24が第1アーム部23に対して上方に位置する構成であるが、第2アーム部24が第1アーム部23に対して下方に位置する構成であってもよい。この場合には、第1伝動軸56と第2伝動軸76の内外関係を上記実施形態とは逆にし、第1アーム部23内における第2伝動機構57と第1伝動軸56の上下の位置関係を逆にするように構成すればよい。
【0087】
(3)実施形態では、第1、第2の配線保護軸90、94は円筒体からなるが、第1配線保護軸90は、電線類100が配索する空間内に第1回転軸Ax1が存在し得る中空軸であれば、円筒体に限定されるものではない。同様に、第2配線保護軸94は、電線類100が配索する空間内に第2回転軸Ax2が存在し得る中空軸であれば、円筒体に限定されるものではなくその他の形状の筒状体であってもよい。例えば、第1、第2の配線保護軸90、94は、ベアリングで支持される部分のみが円筒形でそれ以外の部分が多角形断面とされた変則的な形状の筒状体や、途中に部分的に切欠き部を備えた筒状体からなるものであってもよい。また、実施形態では、第1、第2の配線保護軸90、94は、その上端部が第1アーム部23のケーシング231(カバー234a、234b)に形成された平面視半円形の凹部に嵌合されることで、当該第1アーム部23に対して回転不能に連結されているが、連結部分の形状(前記凹部の形状)は半円形に限定されるものではなく多角形であってもよい。また、第1アーム部23に対する第1、第2の配線保護軸90、94の連結構造は、第1アーム部23に対して第1、第2の配線保護軸90、94を回転不能に連結できれば、実施形態のように第1、第2の配線保護軸90、94の上部を凹部に嵌合させる構造に限定されるものではなく、それ以外の構造であってもよい。
【0088】
(4)実施形態では、スカラロボット2の内部に電線類100が配索されているが、必要な場合には、スカラロボット2の外部に電線類100を設けるようにしてもよい。この場合には、第1、第2の配線保護軸90、94は省略可能である。第1、第2の配線保護軸90、94を省略する場合には、第2伝動軸76や第3伝動軸77は中空軸である必要はなく中実軸であってもよい。
【0089】
(5)実施形態では、第1~第3の伝動機構46、57、78はベルト伝動機構であるが、第1~第3の伝動機構46、57、78の何れか、又は全についてギア伝動機構を採用することも可能である。
【0090】
(6)実施形態では、本発明をスカラロボット2(水平多関節ロボット)に適用した例について説明したが、本発明は、垂直多関節ロボットなど他の多関節ロボットについても適用可能である。
【0091】
[本発明のまとめ]
以上説明した本発明をまとめると以下の通りである。
【0092】
本発明の一局面に係る多関節ロボットは、ベース部と、このベース部に対して第1回転軸回りに回転可能に連結される第1アーム部と、この第1アーム部に対して第2回転軸回りに回転可能に連結される第2アーム部とを備えた多関節ロボットであって、前記ベースに各々備えられた第1モータ及び第2モータと、第1減速機を含み前記第1モータが発生する回転力を前記第1アーム部に伝達する第1動力伝達機構と、第2減速機を含み前記第2モータが発生する回転力を、前記第1アーム部を経由して前記第2アーム部に伝達する第2動力伝達機構と、を備え、前記第1減速機は、前記ベース部と前記第1アーム部との間に配置され、前記第2減速機は、前記第1アーム部と前記第2アーム部との間に配置されているものである。
【0093】
この多関節ロボットによれば、第1、第2のアーム部を駆動する第1、第2のモータが全てベース部に搭載されている。そのため、第1、第2アーム部の重量が軽減され、これにより第1、第2アーム部のイナーシャが低減される。従って、第1、第2のモータとして高出力のモータを用いることなく、第1、第2のモータを比較的高速で作動させることが可能となる。また、第2アーム部にモータが搭載されてないため第2アーム部の先端を薄型化することが可能となる。
【0094】
この多関節ロボットは、前記第2アーム部に対して第3回転軸回りに回転可能に連結されるツール装着部と、前記ベースに備えられた第3モータと、第3減速機を含み前記第3モータが発生する回転力を、前記第1アーム部及び前記第2アーム部を経由して前記ツール装着部に伝達する第3動力伝達機構と、をさらに備え、前記第3減速機は、前記第2アーム部と前記ツール装着部との間に配置されているものであってもよい。
【0095】
この多関節ロボットによれば、第1、第2アーム部の重量増大を抑制しながら第2アーム部にツール装着部を設けることが可能となる。従って、第2アーム部にツール装着部を備えた構成においても、第1、第2のモータとして高出力のモータを用いることなく、第1、第2のアーム部を比較的高速で作動させることが可能となる。
【0096】
上記各態様の多関節ロボットにおいて、前記第1減速機は、前記第1回転軸に沿って中央部が貫通した円環構造を有し、前記第1動力伝達機構は、前記第1モータの出力軸の回転を前記第1減速機に伝達する第1伝動機構を含み、前記第2動力伝達機構は、前記ベース部から前記第1アーム部に亘って前記第1減速機の内側を貫通して延在する第1伝動軸と、前記第2モータの出力軸の回転を、前記ベース部において前記第1伝動軸に伝動するとともに、当該第1伝動軸の回転を、前記第1アーム部において前記第2減速機に伝動する第2伝動機構と、を含むものであるのが好適である。
【0097】
この構成によると、第1減速機の内側を、第2モータから第2アーム部への回転力の伝達経路として利用したコンパクトな構成が達成される。
【0098】
この場合、前記ツール装着部、前記第3モータ及び前記第3動力伝達機構を備えるものでは、前記第2減速機は、前記第2回転軸に沿って中央部が貫通した円環構造を有し、前記第3動力伝達機構は、前記第1伝動軸と同心上に配置されて、前記ベース部から前記第1アーム部に亘って前記第1減速機の内側を貫通して延在する第2伝動軸と、前記第1アーム部から前記第2アーム部に亘って前記第2減速機の内側を貫通して延在する第3伝動軸と、前記第3モータの出力軸の回転を、前記ベース部において前記第2伝動軸に伝動し、当該第2伝動軸の回転を、前記第1アーム部において前記第3伝動軸に伝動し、当該第3伝動軸の回転を、前記第2アーム部において前記第3減速機に伝動する第3伝動機構と、を含むのが好適である。
【0099】
この構成によると、第1、第2の減速機の内側を、第3モータからツール装着部への回転力の伝達経路として利用したコンパクトな構成が達成される。
【0100】
この場合、前記第1伝動軸、前記第2伝動軸及び前記第3伝動軸は中空軸であって、当該多関節ロボットは、前記ベース部から前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸の内部と、前記1アーム部と、前記第3伝動軸の内部とを経由して前記第2アームに至るように配索された電線類を備えるものであってもよい。
【0101】
この構成によれば、第1アーム部の回転中心(第1回転軸)に沿って電線類が配置されるため、ベース部から第1アーム部に亘る電線類の線長を可及的に短くすることが可能となる。なお、本発明において、電線類とは、電線及び/又は可撓性を有するパイプ(エアチューブなど)を含む概念である。
【0102】
この場合には、前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸の内部を前記ベース部から前記第1アーム部に亘って貫通し、前記電線類を包囲する中空の第1配線保護軸を備えているのが好適である。
【0103】
この構成によると、比較的高速で回転するおそれがある第1伝動軸(又は第2伝動軸)と電線類との接触による当該電線類の損傷を未然に防止することができる。
【0104】
また、上記多関節ロボットは、前記第3伝動軸の内部を前記第1アーム部から前記第2アーム部に亘って貫通し、前記電線類を包囲する中空の第2配線保護軸を備えているのが好適である。
【0105】
この構成によると、比較的高速で回転するおそれがある第3伝動軸と電線類との接触による当該電線類の損傷を未然に防止することができる。
【0106】
上述した各態様の多関節ロボットにおいては、前記第1減速機と、前記第1伝動軸と、前記第2伝動軸と、前記第1伝動機構のうち前記第1減速機に固定される要素と、前記第2伝動機構のうち前記第1伝動軸に固定される要素と、前記第3伝動機構のうち前記第2伝動軸に固定される要素とは、前記ベース部及び前記第1アーム部に対して一体的に着脱することが可能な、前記第1減速機を主部材として組付けられた第1組立体を構築しているのが好適である。
【0107】
この構成によると、多関節ロボットの組立時やメンテナンス時には、第1減速機を含む第1組立体を一体的にベース部や第1アーム部に対して着脱することが可能となる。そのため、多関節ロボットの組立性及びメンテナンス性の向上に寄与するものとなる。
【0108】
この場合、前記第1配線保護軸を備えるものでは、当該第1配線保護軸がさらに前記第1減速機と共に前記組立体を構築するものであるのが好適である。
【0109】
この構成によれば、第1配線保護軸についても、第1減速機など共にベース部や第1アーム部に対して着脱することが可能となる。
【0110】
この場合、前記電線類を備えるものについては、当該電線類は、当該電線類のうち前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸の内部に配索される部分をそれ以外の部分から分離させることが可能なコネクタを備えているのが好適である。
【0111】
この構成によれば、多関節ロボットの組立時やメンテナンス時には、電線類の一部を、第1減速機を含む第1組立体と共に着脱することが可能となる。そのため、より一層、多関節ロボットの組立性やメンテナンス性の向上に寄与するものとなる。
【0112】
上述した各態様の多関節ロボットにおいては、前記第2減速機と、前記第3伝動軸と、前記第2伝動機構のうち前記第2減速機に固定される要素と、前記第3伝動機構のうち前記第3伝動軸に固定される要素とは、前記第1アーム部及び前記第2アーム部に対して一体的に着脱することが可能な、前記第2減速機を主部材として組付けられた第2組立体を構築しているのが好適である。
【0113】
この構成によると、多関節ロボットの組立時やメンテナンス時には、第2減速機を含む第2組立体を一体的に第1アーム部や第2アーム部に対して着脱することが可能となる。そのため、多関節ロボットの組立性及びメンテナンス性の向上に寄与するものとなる。
【0114】
この場合、前記第2配線保護軸を備えるものでは、当該第2配線保護軸がさらに前記第2減速機と共に前記第2組立体を構築するものであるのが好適である。
【0115】
この構成によれば、第2配線保護軸についても、第2減速機など共に第1アーム部や第2アーム部に対して着脱することが可能となる。
【0116】
この場合、前記電線類を備えるものについては、当該電線類は、当該電線類のうち前記第3伝動軸の内部に配索される部分をそれ以外の部分から分離させることが可能なコネクタを備えているのが好適である。
【0117】
この構成によれば、多関節ロボットの組立時やメンテナンス時には、電線類の一部を、第2減速機を含む第2組立体と共に着脱することが可能となる。そのため、より一層、多関節ロボットの組立性やメンテナンス性の向上に寄与するものとなる。
図1
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図10
図11
図12