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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】分離式トイレ
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/014 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
E03D5/014
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021500315
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 AT2019060064
(87)【国際公開番号】W WO2019178622
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】A50227/2018
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】520361863
【氏名又は名称】エーオース デザイン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】ベルグマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ボーマン,ゲルノット
(72)【発明者】
【氏名】グルエンドル,ハラルト
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-001891(JP,A)
【文献】特開平10-072858(JP,A)
【文献】実用新案登録第2547279(JP,Y2)
【文献】実公昭62-014207(JP,Y2)
【文献】特開平11-346955(JP,A)
【文献】中国実用新案第204112453(CN,U)
【文献】中国実用新案第201459886(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
A47K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に垂直な側壁(4)を有し排水領域(2)内で接続される管部(3)および前記管部(3)の下流側で接続される主導出路(5)を有する便器(1)を含む分離式トイレであって、前記管部(3)と前記主導出路(5)との間に防臭トラップが設けられており、尿の分離のための少なくとも1つの個別の副導出路(6)が設けられているものにおいて、
前記副導出路(6)の取入口(7)は、前記管部(3)の前記垂直な側壁(4)の側で、前記便器(1)の下方かつ前記防臭トラップの上方に配置され、
前記管部(3)の前記垂直な側壁(4)に対する前記副導出路(6)の前記取入口(7)の上縁の移行領域(8)が丸みを付けて形成されている
ことを特徴とする分離式トイレ。
【請求項2】
前記副導出路(6)の前記取入口(7)は、前記管部(3)の前側の前記垂直な側壁(4)の中央に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の分離式トイレ。
【請求項3】
前記防臭トラップが揺動可能なフラップ(9)によって形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の分離式トイレ。
【請求項4】
個別の洗浄水導出路が設けられており、
前記揺動可能なフラップ(8)は、前記主導出路(5)または前記洗浄水導出路を選択的に開放可能とする制御部を備えている
ことを特徴とする請求項3記載の分離式トイレ。
【請求項5】
前記防臭トラップがサイホン(10)によって形成されており、
前記サイホン(10)の下流側に位置する排水管(11)の上縁が前記副導出路(6)の前記取入口(7)の下縁よりも低い位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の分離式トイレ。
【請求項6】
前記便器(1)に少なくとも2つの洗浄水吐出口(12)が並置して設けられ、
前記洗浄水吐出口によって、洗浄水は実質逆向きで横方向の接線方向で前記便器(1)内に導入可能であり、
逆向きの2つの洗浄水流(13)が前記管部(3)の上端において前記副導出路(6)の前記取入口(7)に対して隣接するおよび/または逸れている側壁部で合流するように、前記2つの洗浄水吐出口(12)の流量は相互に異なるように設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分離式トイレ。
【請求項7】
前記便器(1)の底部から始まって前記副導出路(6)のための前記取入口(7)の上方の部位に、前記取入口(7)の上方への張り出しの形態の突起(14)が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分離式トイレ。
【請求項8】
前記便器(1)の底部において深さがある中央の段差の部分(15)が設けられ、
前記部分(15)を横方向で限定する両方の段差の縁(16)は、前記主導出路(5)の方向で互いに接近している
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の分離式トイレ。
【請求項9】
前記部分(15)を横方向で限定する前記両方の段差の縁(16)の間隔は、前記主導出路(5)に最も近い末端において、最大で前記取入口(7)の幅に一致する距離を有し、
前記縁は、前記取入口(7)に対して対称に整列している
ことを特徴とする請求項8記載の分離式トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に垂直な側壁を有し排水領域に接続される管部及びこの管部の下流側で接続される主導出路を有する便器を含む分離式トイレであって、管部と主導出路との間に防臭トラップが設けられており、尿を分離するための少なくとも1つの個別の副導出路が設けられているものに関する。
【背景技術】
【0002】
分離式トイレにおける課題は、糞と尿、場合によっては洗浄水を相互に十分に分離し、個々の成分を相互に独立して継続処理できるようにすることである。まさに発展途上国では、人間の排泄物の廃棄処理が、大きな環境問題であり、土壌や河川の負担となっている。分離式トイレによって、高価な下水・汚水処理システムを必要とすることなく、個々の成分を、例えば肥料として再利用に供することが容易となる。分離式トイレとして利用されるのは、たいていの場合、糞用の主導出路と尿用の副導出路とを有する諸システムであり、両導出路は、たいていの場合、便器の各排水領域に配置されており、便器は両領域を相互に分離するために隔壁または中央の渡し板を適宜有している。したがって、これらの機構は、割り当てられた各排水領域に適切に合わせるために利用者が正しく位置する必要があるので、利用にあたって利用者の一定の慣れを必要とする。まさに子供の場合、成人用に規格化されたトイレをほとんど正しく利用することができず、糞または尿のいずれかが間違った導出路内に達するという問題が生じる。
【0003】
先進諸国でも、経済的で環境に優しい仕方で排泄物の処理を可能とする分離式トイレを使用する試みが強まっている。ここで分離式トイレシステムを訴求させるには、トイレの快適性や清掃の容易性などの追加的な観点を考慮しなければならない。取付け、利用、または清掃の点で費用が掛かるシステムは、市場で普及するチャンスが殆どない。非常に複雑な分離式トイレの一例として、レディガー社が製造する分離式トイレがある。上述の特殊成形された便器の他に、ここでは、便座に加わる利用者の圧力によって尿排出用の弁を開放する付加的で複雑な弁制御部が設けられている。そのため、この装置は、構造が複雑で、非常に不具合が起こり易く、整備に費用がかかる。
特開2000-001891号公報には、上記欠点を有する複雑に構成された分離式トイレがやはり示されている。一方で、尿導出路用の取入口が便器の底部にあり、利用者の適切な「狙い」を必要とする。他方で、フラップ状の防臭トラップの上方に取入口を有する付加的な洗浄水導出路が開示されており、この導出路がやはり尿導出路の方向に通じている。そこでは、洗浄水と尿の分離が尿導出路内部の弁制御部を介して行われるだけであり、そのため当該トイレの構造が著しく複雑となっている。
【0004】
極力単純に構成された乾燥分離式トイレは、いわゆるオチ・トイレ(otjitoilet.org)である。この分離式トイレでは、排水管部の後続で側壁に環状溝があり、尿は表面張力によって側壁に沿ってこの溝内に導出され、その後、副導出路を介して導出される。開発途上国用に開発されたこのトイレには、従来のトイレと同様に使用できる利点がある。しかし、基本的に、このトイレは、乾式トイレとして、もしくは、尿を単純に土壌に導き尿の更なる処理に供しないトイレとして設計されている。糞は単純に下降管を介して下方に導出される。乾式トイレであるがゆえに予定されていないが、洗浄が使用される場合、糞はやはり大部分が副導出路を介して流出する。このことは、集めた尿の継続処理時に望ましくない。また、環状溝は大きさと位置のために清掃が難しい。利用者が下痢している場合、この構造ではやはり糞の大部分が副導出路内に達し、副導出路を汚し、または最悪な場合閉塞することになろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、副導出路を介した尿の集中的な排出及び回収を可能とする分離式トイレを提供することである。このトイレは、乾式トイレ、真空トイレまたは水洗トイレとしても使用可能でなければならない。このトイレは、従来のトイレと同様に利用可能でなければならず、また簡単な清掃を可能としなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、副導出路の取入口が管部の垂直な側壁の側で、便器の下方かつ防臭トラップの上方に配置されており、管部の垂直側壁に対する副導出路の取入口の上縁の移行領域が丸みを付けて形成されていることによって解決される。それによって、導出は下降管の末端で全周に亘って起きるのでなく、従来の使用において尿の大部分が排出される領域でのみ起きる。ここでは、大気圧、流速、液体の表面張力、及び、幾何学形状や材質などの基準によって、尿の流れの付着や副導出路の取入口への転向が達成される、いわゆるティーポット効果が利用される。ここでは、大気圧と液体の表面張力が予め定まっている。同様に、材質は、通常、似たような特性を有するセラミックスまたはステンレス鋼である。流速もまた、放尿時の液体量のゆえに管理しやすい範囲内におさまっている。したがって、専門家が選択すべきファクタは、尿の流れの効率的な迂回を達成するために、便器の適切な幾何学形状や副導出路の取入口の位置を選ぶことにある。取入口は、便器の直下かつ通常設けられる防臭トラップの上方に位置しており、そのため、簡単に清掃することもでき、多種多様な種類のトイレや下水接続部において利用可能である。尿の大部分が液体の表面張力及びそれに伴う側壁への付着によって取入口内に導かれるように、丸みの程度はトイレおよび当該管部の高さとデザインに応じて選択することができる。これにより、主に主導出路を介して流出する洗浄を提供することも可能となっている。付加的な利点は、弁制御部やセンサなどの複雑な装備品が何ら必要ないことである。これにより、製造費は従来のトイレよりも高くなく、清掃も同様に簡単である。付加的な弁などが必要ないので、従来のトイレと比べて特別な整備費用も生じない。
【0007】
本発明の別の特徴として、副導出路の取入口は管部の前側側壁の中央に配置されている。これは、すべての利用者が同じ位置につくしゃがみ式トイレや着座式トイレに関して代表的な位置である。その際、尿は便器の前側領域を介して管部の方向に流れ、したがって副導出路の取入口がある側壁部を介しても流れ、これにより尿は側壁での液体の表面張力によって取入口内に導かれる。従来の着座式トイレを使用する子供は、やはり傾向的にむしろ便器の前縁に着座し、それゆえここでも尿の適切な導出が起きる一方、糞はこの着座位置でも適切に主導出路内に達する。
【0008】
可能な一実施形態によれば、防臭トラップが揺動可能なフラップによって形成されている。この種の防臭トラップは、下水システムに接続されるトイレにおいて最も頻繁なものではないが、しかし例えば洗浄水フィードバックも予定される場合、付加的利点をもたらすことがある。
【0009】
有利な付加的な1つの特徴によれば、個別の洗浄水導出路が設けられており、揺動可能なフラップは主導出路または洗浄水導出路を選択的に開放可能とする制御部を備えているようにすることができる。フラップ及び付加的な制御部によって、糞がいつ発生したのか否かを区別することもできる。状況に応じて、例えば、糞が入り込まないときには洗浄水の大部分をリサイクルすることができ、あるいは、糞と洗浄水は主導出路内に導かれる。
【0010】
別の一実施形態によれば、防臭トラップがサイホンによって形成されており、サイホンの下流側に位置する排水管の上縁は、副導出路の取入口の下縁よりも低い位置に配置されている。これは、下水システムに接続されるトイレにおける防臭トラップの最も一般的なバリエーションである。サイホンの内部に水柱があり、したがって排水管からの臭いの漏出を防止する。排水管の上縁が副導出路の取入口の下縁の下方にあるので、水がサイホンから副導出路にまで達することは決してなく、それによって、尿導出路を介した水の誤導出は避けられる。
【0011】
他の有利な1つの特徴として、便器に少なくとも2つの洗浄水吐出口が並置して設けられ、洗浄水吐出口によって洗浄水は実質逆向きで横方向の接線方向で便器内に導入可能であり、逆向きの2つの洗浄水流が管部の上端において副導出路の取入口に対して隣接するおよび/または逸れている側壁部で合流するように、2つの洗浄水吐出口の流量は相互に異なるように設定されている。通常のトイレ洗浄は、便器の壁部領域全体にわたって一様な洗浄水のカーテンが形成されるように、便器縁の周囲にあって下向き穴を複数有する空洞内で洗浄水流を分配する。このことは、本発明に係る分離式トイレにおいて、洗浄水が側壁での液体の表面張力によって少なくとも部分的に副導出路内に達する結果をもたらし、望ましくないであろう。張り出した縁領域のない特に簡単に清掃できるトイレ便器を実現するために、近年、いわゆる「縁なし」便器用の独自の洗浄が開発された。その際、洗浄水導入部が便器の後側上方領域に設けられ、この洗浄水導入部は洗浄水流を側面に対して接線方向に、場合によっては直接的に下方に分配する。両方の接線方向の洗浄水流は、便器壁に沿って互いに接近し、便器の前側領域で合流し、この地点で渦を巻き、排水領域に流れ込む。それゆえ、これらの洗浄は洗浄水の大部分を副導出路内に導くことになろう。この理由から、上記特徴による好ましい一実施形態では、互いに接近する2つの接線方向の洗浄水流が非対称に導入され、これにより、両方の流れのうち、より多くの流量を有する一方が便器の前側領域を通り過ぎ、側方ではじめて弱い逆向きの洗浄水流と合流する。つまり、渦流地点は副導出路の上にはなく、流出する洗浄水の大部分は管部における副導出路の取入口の隣の側壁に流下する。したがって、洗浄水はほとんど副導出路内に入り込まないので、集められて排出される尿を継続処理に供することができる。
【0012】
可能で有利な一実施形態によれば、便器の底部から始まって副導出路のための取入口の上方の部位に、取入口の上方への張り出しの形態の突起が形成されている。この張り出しは、副導出路の上方で洗浄水の流れの剥離を促進するが、しかし尿の流れの剥離を防止し、いっそう効率的な尿の分離をもたらす。突起の他の利点は、副導出路の取入口が張り出しによって視覚的に見えにくくなることです。
【0013】
別の有利な一実施形態において、便器の底部において深さがある中央の段差の部分が設けられ、この部分を横方向で限定する両方の段差の縁は主導出路の方向で互いに接近している。便器底部における下向きの段差の部分によって、ぶつかる尿の流れは側方の段差によって副導出路の取入口の方向に適切に導かれる。便器の形状に応じて、横方向で限定する段差は、尿の流れを取入口の方向に理想的に導くために直線状または弧状に形成することができる。
【0014】
最後に、他の有利な1つの特徴として、前記部分を横方向で限定する両方の段差の縁の間隔は、主導出路に最も近い末端において、最大で取入口の幅に一致する距離を有し、当該縁は取入口に対して対称に整列している。副導出路を介した尿の流れの極力完全な分離を行うには、段差の部分の縁が副導出路の上方の導出末端で終わると有利である。したがって、この末端における両縁の間隔は、尿の流れのどの部分も取入口の横側を通過することがないように、最大で副導出路の取入口の幅に一致させるか、または、小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、本発明は実施例に基づいて添付の図を用いてより詳細に説明される。
図1】本発明に係る分離式トイレの第1の実施形態の概略断面図である。
図2】本発明に係る分離式トイレの別の一実施形態の概略断面図である。
図3】洗浄水流が描かれた本発明に係る分離式トイレの概略図である。
図4】取入口の上方に張出部を有する別の一実施形態の概略断面図である。
図5】深さのある中央の段差部を有する別の一実施形態の概略図である。
図6】主に傾斜している主導出路を有する更に別の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示された本発明に係るトイレの可能な一実施形態の概略図は、便器1を含んでおり、便器の最も低い箇所に排水領域2がある。そこで、便器1は、点線で示した管部3に移行する。管部3は、少なくとも部分的に垂直な側壁4を有する。管部3の下端には防臭トラップがあり、図1に示す実施形態に係る防臭トラップはサイホン10によって形成されている。サイホン10の下流側に主導出路5があり、ここでは主導出路がドレン管11によって形成されている。
【0017】
管部3の前側の垂直な側壁4に副導出路6の取入口7が配置されている。このトイレに関して「前側」とは着座した利用者が前方とみなす側であり、「後側」とは一般に壁に向き合うトイレの側を意味する。取入口7はちょうど当該側壁4で終わり、側壁4に対する取入口7の上縁の移行領域8は丸み付けしてある。使用中に便器の前側領域に当たる尿は、液体の表面張力によって便器1の壁と管部3の側壁に沿って取入口7へ、最終的に副導出路6内に導かれ、それ故、集中的に別個に排出して継続処理に供することができる。図1の実施形態には洗浄水吐出口12も示してあり、この洗浄水吐出口は図3で詳しく言及される。
【0018】
図2には、防臭トラップが揺動可能なフラップ9によって形成された一実施形態が示されている。副導出路6の形態は図1の実施形態と同じである。揺動可能なフラップ9は、例えば分離式トイレにおいて利用することができる。または、追加的な洗浄水フィードバック(図示せず)を設けることができ、その場合、フラップ9は、応用事例に応じて洗浄水を再利用に供するために、または例えば糞と一緒に主導出路5に導入するために、制御部を備えている。
【0019】
図3には、洗浄水吐出口12とそこから吐出される洗浄水流13が詳しく示してある。ここに示す実施形態はいわゆる「縁なし」トイレであり、便器1の上縁に空洞がないので特に容易かつ衛生的に清掃することができる。洗浄水吐出口12は便器の後側の上部領域にある。洗浄水の一部は直に下方の管部3の方向に導かれる一方、2つの洗浄水流13は接線方向で逆向きに便器壁に沿って側方に導入される。2つの接線方向の吐出口12は非対称に形成されており、これにより流量も異なり、その結果、両方の洗浄水流13は便器1の前側領域で正確に相向き合って合流するのでなく横にずらされている。つまり、強い方の洗浄水流13は便器の前側で排水領域2に流れ込むことなくそこを通り過ぎ、その後に始めて逆向きの洗浄水流13にぶつかり、これと共に流出する。これにより、洗浄水の大部分は副導出路6の取入口7のそばを通り過ぎ、こうして所望どおり主導出路5を介して排出される。
【0020】
図4に示す実施形態では、副導出路6用の取入口7の上方の部分において、便器1の底部から排水領域2の方向に突起14が形成されており、この突起が張出し部となる。低速で便器の底部を流下する尿の流れは、液体の表面張力によって張出し部を介して導かれ、問題なく副導出路6の取入口7内に達する。それに対して、著しく高速で流出する洗浄水流は、張出し部のところで壁から引き剥がされ、ほぼ完全に主導出路5内に達する。突起14は、さらに、副導出路6の取入口7を視覚的に覆い隠して見にくくするという利点を有する。これは、本発明に係る分離式トイレが従来のトイレと視覚的に殆ど区別することができなくなるので、形状的な利点も有する。
【0021】
次に図5には本発明に係る分離式トイレの可能な一実施形態の他の好ましい特徴が示してある。ここでは、便器1の底部において深さがある中央の段差の部分15が設けられている。当該部分15を限定する両方の段差の側方縁16は主導出路5の方向で互いに接近している。その結果、両段差は、尿の流れを完全に副導出路6の取入口7の方向に誘導するガイダンス機構を形成する。
【0022】
図6は本発明に係る分離式トイレの別の可能な一実施形態を概略的に示している。ここでの便器1は、例えば多くの真空トイレにおいて一般的である形状を有している。便器の底部は傾斜しており、同様の傾斜角にて後続の管部3を介して主導出路5へ延びている。尿の流れの必要な分離をもたらすことができるように、また、別の廃水または糞が副導出路6内に達するのを避けるために、副導出路6の取入口7の周りの部分でのみ管部3の側壁が垂直に延びている。つまり、管部3の全体が垂直に延びるように形成しておく必要はなく、大部分を各種トイレの一般的な形状に合わせておくことができる。側壁の垂直部分は副導出路6の取入口7の領域にとってのみ必要である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6