(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】成膜装置及び実装機
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20221223BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20221223BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20221223BHJP
B23K 3/00 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
H01G13/00 391B
H05K3/34 503B
H05K3/34 505E
H05K3/32 B
B23K3/00 A
(21)【出願番号】P 2021503323
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2019008749
(87)【国際公開番号】W WO2020178996
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-01-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】太田 桂資
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-204977(JP,A)
【文献】特開平08-148394(JP,A)
【文献】特開2012-119616(JP,A)
【文献】特開2015-093465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H05K 3/34
H05K 3/32
B23K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性材料が載せられる供給面を有する成膜トレイと、
前記成膜トレイの前記供給面に押し付けられるスキージと、
前記成膜トレイの前記供給面において、角型表面実装部品が有する一対の電極間に対応したピッチで設けられ、前記角型表面実装部品が有する一対の電極が上下方向で出し入れされることで前記角型表面実装部品の本体より下方に飛び出た前記一対の電極の下面に前記粘性材料を転写することを可能とする開口形状を有し、前記成膜トレイと前記スキージとが相対的に動かされることによって、前記スキージで前記成膜トレイの前記供給面から取り除かれた粘性材料が入れられるように構成された一対の凹部とを備え
、
前記開口形状は、前記角型表面実装部品の前記電極に応じた大きさおよび形状であって、
前記一対の凹部は、前記成膜トレイの前記供給面において複数設けられる成膜装置。
【請求項2】
前記一対の凹部の開口形状は、前記角型表面実装部品が有する一対の電極に対応した短冊形状である請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記一対の凹部の開口幅は、前記成膜トレイと前記スキージとが相対的に動かされる移動方向よりも、前記移動方向と直交する方向が長い請求項1
又は請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜トレイの前記供給面に設けられ、前記角型表面実装部品が有する一対の電極が上下方向で出し入れされる際の基準となるマークを備える請求項1乃至
請求項3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記成膜トレイ又は前記スキージを往復運動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部とを備える請求項1乃至
請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
請求項1乃至
請求項5のいずれか一つに記載の成膜装置と、
前記角型表面実装部品を保持し、前記角型表面実装部品が有する本体よりも下方に飛び出た一対の電極を前記一対の凹部に上下方向で出し入れさせることによって前記一対の凹部内の粘性材料を前記角型表面実装部品が有する一対の電極の下面に転写し、前記角型表面実装部品を基板に装着させるヘッドとを備える実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘性材料の薄膜を形成する成膜装置と、薄膜が形成された粘性材料を実装部品に転写する実装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘性材料の薄膜を形成すること等に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、転写テーブルの上面に形成された成膜用凹面部に、フラックス、導体ペースト、導電性接着剤等(以下これらを「粘性材料」と総称する)を供給し、前記転写テーブル上に配置されたスキージ又は該転写テーブルを移動させることで、前記成膜用凹面部内のフラックスを前記スキージで均一に押し広げてフラックス膜を形成し、このフラックス膜にバンプ等の転写対象物を浸漬させることで、この転写対象物にフラックスを転写するフラックス転写装置において、前記成膜用凹面部の底面に当接した状態で該成膜用凹面部のいずれか一方側から他方側に相対的に移動されて該成膜用凹面部内の使用済みのフラックスを掻き出す掻出用スキージと、前記成膜用凹面部内に供給されたフラックスを該成膜用凹面部のいずれか一方側から他方側に均一に押し広げてフラックス膜を形成する成膜用スキージと、フラックス膜形成時には前記掻出用スキージを上方に退避させ、フラックス掻出時には前記成膜用スキージを上方に退避させるスキージ切換手段とを備えた構成としたものである。
【0003】
このフラックス転写装置を使用する場合は、成膜用凹面部内にフラックスを供給して成膜用スキージによって該フラックスを均一に押し広げてフラックス膜を形成する工程と、バンプ等の転写対象物を前記フラックス膜に浸漬させることで、この転写対象物にフラックスを転写する工程と、前記掻出用スキージを前記成膜用凹面部の底面に当接させた状態で該掻出用スキージによって該成膜用凹面部内の使用済みのフラックスを掻き出す工程とを繰り返すようにすると良い。このようにすれば、転写工程を何回繰り返しても、転写工程終了毎に転写テーブルの成膜用凹面部内に残った使用済みのフラックスを掻出用スキージによって成膜用凹面部から掻き出して、新たなフラックスと入れ替えてから、成膜用スキージのスキージング動作を行うことで、常に、新たなフラックスを使用して凹凸のない平坦な高品質のフラックス膜を形成することができ、バンプ等の転写対象物に均一にフラックスを転写できる。これにより、従来のフラックスの硬化の問題は勿論、フラックスの酸化、劣化、マイクロエアの混入によるフラックスの品質低下の問題も一挙に解消することができ、バンプ等の転写対象物へのフラックスの転写品質を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バンプ以外の転写対象物、例えば、角型表面実装部品が有する一対の電極について、更に好適に、粘性材料の転写品質を向上させることが望まれていた。
【0006】
本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、角型表面実装部品が有する一対の電極に粘性材料を転写するのに好適な成膜装置及び実装機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、粘性材料が載せられる供給面を有する成膜トレイと、成膜トレイの供給面に押し付けられるスキージと、成膜トレイの供給面において、角型表面実装部品が有する一対の電極間に対応したピッチで設けられ、角型表面実装部品が有する一対の電極が上下方向で出し入れされることで前記角型表面実装部品の本体より下方に飛び出た前記一対の電極の下面に前記粘性材料を転写することを可能とする開口形状を有し、成膜トレイとスキージとが相対的に動かされることによって、スキージで成膜トレイの供給面から取り除かれた粘性材料が入れられるように構成された一対の凹部とを備え、前記開口形状は、前記角型表面実装部品の前記電極に応じた大きさおよび形状であって、前記一対の凹部は、前記成膜トレイの前記供給面において複数設けられる成膜装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、成膜装置及び実装機は、角型表面実装部品が有する一対の電極に粘性材料を転写するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】成膜装置が
図4の線I-Iに相当する線で切断された断面を示す図である。
【
図5】成膜装置等が
図4の線I-Iで切断された断面を示す図である。
【
図6】成膜装置等が
図4の線I-Iで切断された断面を示す図である。
【
図7】成膜装置等が
図4の線I-Iで切断された断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。但し、図面では、構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0011】
図1に示されるように、成膜装置1は、成膜トレイ10、一対のスキージ30、スライド機構40、及び制御装置42を備えている。成膜トレイ10は、供給面12を有している。供給面12は、スキージ30が載せられるものであって、概して長方形状をなしている。尚、図面において、X軸方向は供給面12の長手方向を示し、Y軸方向は供給面12の短手方向を示している。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向であり、上下方向を示している。
【0012】
成膜トレイ10の供給面12には、一対の凹部14がマトリクス状に設けられている。一対の凹部14は、2個の凹部14が供給面12に対して垂直方向(下方向)へ窪んだものである。一対の凹部14において、各凹部14は、平面視で長方形状をなし、Y軸方向に平行な直線に関して線対称である。各凹部14の短手方向はX軸方向と一致し、各凹部14の長手方向はY軸方向と一致している。つまり、各凹部14では、Y軸方向の開口幅WYがX軸方向の開口幅WXよりも長い。尚、各一対の凹部14における2個の凹部14のピッチP等については、後述する。
【0013】
成膜トレイ10の供給面12には、2個のマーク16が設けられている。2個のマーク16は、一対の凹部14がマトリクス状に設けられている領域の外方において、供給面12の略対角線上に位置している。
【0014】
一対のスキージ30は、平面視で概して長方形状をなし、それらの長手方向がY軸方向に沿った状態で向かい合っている。一対のスキージ30は、成膜トレイ10の供給面12に対してY軸方向の全域に亘って接しており、供給面12のX軸方向の端縁側に位置する場合には、一対の凹部14がマトリクス状に設けられている領域の外方にあって、一対の凹部14及びマーク16とは重ならない状態にある。一対のスキージ30の間には、導電性ペースト3が成膜トレイ10に載せられている。
【0015】
スライド機構40は、成膜トレイ10の外方において、一対のスキージ30の長手方向側の端部に連結されており、成膜トレイ10の供給面12に接する一対のスキージ30をX軸方向でスライドさせるものである。これにより、成膜トレイ10と一対のスキージ30とが相対的に動かされる。よって、X軸方向は、成膜トレイ10と一対のスキージ30とが相対的に動かされる移動方向である。Y軸方向は、その移動方向と直交する方向である。更に、スライド機構40は、一対のスキージ30を成膜トレイ10の供給面12に押し付ける。尚、一対のスキージ30は、不図示の高さ調節機構等によって、供給面12に押し付けられてもよい。
【0016】
制御装置42は、スライド機構40に接続されている。これにより、制御装置42は、スライド機構40を制御することによって、成膜トレイ10の供給面12上で一対のスキージ30をX軸方向の任意の位置にスライドさせることができる。尚、スライド機構40及び制御装置42は、公知技術で構成されるため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
図2に示されるように、一対のスキージ30の間では、導電性ペースト3が盛り上がった状態で成膜トレイ10の供給面12に載せられている。一対のスキージ30の間隔は、成膜トレイ10の供給面12に向かうに連れて広がっている。そのため、制御装置42及びスライド機構40によって一対のスキージ30がX軸方向で往復しても、一対のスキージ30は、成膜トレイ10の供給面12から導電性ペースト3を掻き取りながら押し出すことが可能である。このようにして、成膜トレイ10の供給面12では、一対のスキージ30が凹部14まで移動すると、その凹部14に対して、導電性ペースト3の一部が入り込む。
【0018】
更に、
図3に示されるように、成膜トレイ10の供給面12では、一対のスキージ30が、一対の凹部14がマトリクス状に設けられている領域を通り越すと、各凹部14において、凹部14の深さを膜厚とする、導電性ペースト3の薄膜が形成される。従って、導電性ペースト3の膜厚は、凹部14の深さでコントロールされる。
【0019】
尚、成膜トレイ10の供給面12では、導電性ペースト3が一対のスキージ30で取り除かれるので、マーク16の撮像が可能である。
【0020】
図4乃至
図7に示されるように、成膜装置1は、成膜トレイ10の供給面12において、角型表面実装部品50の本体52に設けられた一対の電極54の下端部を、一対の凹部14に形成された導電性ペースト3の薄膜に対してディップさせることが可能である。
【0021】
そのために、各一対の凹部14における2個の凹部14のピッチPは、角型表面実装部品50に設けられた一対の電極54の間隔と略同一にされている。それに加えて、各一対の凹部14における2個の凹部14の開口は、各一対の凹部14の上方にある所定位置に角型表面実装部品50が移動した際、角型表面実装部品50に設けられた一対の電極54のZ軸方向(上下方向)における投影面が収まるような大きさ(形状)にされている。
【0022】
更に、各凹部14に導電性ペースト3の薄膜が形成されると、例えば、ヘッド60のフランジ62に設けられた吸着ノズル64によって、角型表面実装部品50が保持される。その保持された角型表面実装部品50は、ヘッド60の動きによって、一対の凹部14の上方にある所定位置にまで移動させられた後、下降及び上昇させられる。これにより、角型表面実装部品50が有する一対の電極54の下端部は、上下方向(Z軸方向)において一対の凹部14に挿脱される。
【0023】
その際、成膜トレイ10のマーク16は、ヘッド60のフランジ62に設けられたカメラ66で事前に撮像され、その撮像で取得された画像が画像処理されることによって、ヘッド60の動きの基準とされる。
【0024】
このようにして、角型表面実装部品50が有する一対の電極54の下端部は、一対の凹部14に形成された導電性ペースト3の薄膜にディップされることによって、導電性ペースト3が転写される。
【0025】
尚、成膜トレイ10の供給面12では、導電性ペースト3の転写が一旦終了した場合、一対のスキージ30が、
図3及び
図4に示された状態から、一対の凹部14がマトリクス状に設けられている領域を通り越して、
図8に示された状態になると、各凹部14において、凹部14の深さを膜厚とする、導電性ペースト3の薄膜が再び形成される。
【0026】
成膜装置1は、
図9に示されるように、上述したヘッド60、フランジ62、吸着ノズル64、及びカメラ66等が設けられた実装機58に備えられてもよい。そのような場合、実装機58は、ヘッド60を動かすことによって、吸着ノズル64で保持した角型表面実装部品50を基板68の装着位置まで移動し、吸着ノズル64から角型表面実装部品50を離脱させることによって、角型表面実装部品50を基板68に装着する。
【0027】
以上詳細に説明したように、本実施形態の成膜装置1及び実装機58は、角型表面実装部品50が有する一対の電極54に導電性ペースト3を転写するのに好適である。
【0028】
また、本実施形態の実装機58において、導電性ペースト3が転写される際の角型表面実装部品50は、吸着ノズル64に保持されている。このとき、本実施形態とは異なり、角型表面実装部品50の本体52および一対の電極54が導電性ペースト3の薄膜にディップされると、角型表面実装部品50を導電性ペースト3の薄膜から引き離すための力が大きくなり、角型表面実装部品50は、吸着ノズル64から離脱して、導電性ペースト3の薄膜に取り残されてしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態の実装機58では、角型表面実装部品50の本体52が導電性ペースト3の薄膜にディップされることはなく、角型表面実装部品50が有する一対の電極54の下端部が、導電性ペースト3の薄膜にディップされるので、角型表面実装部品50が導電性ペースト3の薄膜に取り残されてしまうような、上述した事態を防止することが可能である。
【0029】
ちなみに、本実施形態において、導電性ペースト3は、粘性材料の一例である。スライド機構40は、駆動部の一例である。制御装置42は、制御部の一例である。X軸方向は、移動方向の一例である。Y軸方向は、移動方向と直交する方向の一例である。Z軸方向は、上下方向の一例である。
【0030】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0031】
例えば、
図10に示されるように、成膜トレイ10の供給面12において、各凹部14がY軸方向で連なってもよい。そのような場合、各一対の凹部14では、2個の凹部14の開口形状が、所謂レールのような長尺形状である。
【0032】
各凹部14は、短手方向がY軸方向と一致し、長手方向がX軸方向と一致してもよい。また、各凹部14は、短手方向及び長手方向がX軸方向及びY軸方向と一致しなくてもよい。
【0033】
一対の凹部14において、2個の凹部14は、角型表面実装部品(導電性ペースト3の転写対象物)に設けられた一対の電極が上下方向(Z軸方向)で挿脱可能なものであれば、平面視で円形、三角形、正方形、又はその他の多角形の形状をなしていてもよい。
【0034】
導電性ペースト3に代えて、粘性材料として、はんだ又はフラックス等が成膜トレイ10の供給面12に載せられてもよい。
【0035】
一対のスキージ30は、Y軸方向で往復させてもよい。一対のスキージ30のうち、いずれかのスキージ30が省かれてもよい。
【0036】
成膜トレイ10をスライドさせることによって、成膜トレイ10と一対のスキージ30を相対的に動かしてもよい。また、成膜トレイ10及び一対のスキージ30を同時にスライドさせることによって、成膜トレイ10と一対のスキージ30を相対的に動かしてもよい。
【0037】
成膜装置1は、成膜トレイ10又は一対のスキージ30が回転運動する、所謂ロータリー式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 成膜装置
3 導電性ペースト
10 成膜トレイ
12 供給面
14 凹部
16 マーク
30 スキージ
40 スライド機構
42 制御装置
50 角型表面実装部品
54 電極
58 実装機
60 ヘッド
68 基板
P ピッチ
WX 開口幅
WY 開口幅