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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】有機無機複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20221223BHJP
   C08L 85/02 20060101ALI20221223BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L85/02
C08K9/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021504872
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006628
(87)【国際公開番号】W WO2020184113
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019044722
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】今里 健太
(72)【発明者】
【氏名】中崎 智大
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
(72)【発明者】
【氏名】川口 正剛
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167316(JP,A)
【文献】特開2008-239921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散した無機微粒子を含
前記式1で表される構造単位が、下記式2又は下記式3で表される構造単位であり、
前記無機微粒子の表面が、酸性官能基を有する表面修飾剤により修飾されている、
有機無機複合材料:
【化1】
式1中、Xは、芳香環を有する基を表し、Qはジオール化合物残基を表し、
【化2】
式2中、R 、R 、R 、及びR は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のヘテロ環基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のチオアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアルキルカルボニル基、及び置換若しくは非置換のアミノカルボニル基からなる群より選ばれる基を表し、かつ、R ~R の少なくとも1つが芳香環を含み、Qはジオール化合物残基を表し、
【化3】
式3中、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のヘテロ環基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のチオアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアルキルカルボニル基、及び置換若しくは非置換のアミノカルボニル基からなる群より選ばれる基を表し、かつ、R 及びR の少なくとも1つが芳香環を含み、Qはジオール化合物残基を表す。
【請求項2】
~Rの少なくとも1つがリン原子を含む、請求項に記載の有機無機複合材料。
【請求項3】
前記酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である、請求項1又は2に記載の有機無機複合材料。
【請求項4】
前記無機微粒子の表面が、前記無機微粒子に対して1~30質量%の前記表面修飾剤により修飾されている、請求項のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項5】
前記無機微粒子の平均粒子径が、1~20nmである、請求項1~のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項6】
前記無機微粒子の含有量が、前記熱可塑性樹脂に対して1~95質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項7】
前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1~のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を用いて得られる成形品。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の有機無機複合材料の製造方法であって、前記式2又は式3で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂を得ること、及び前記無機微粒子を前記熱可塑性樹脂に分散させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む有機無機複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料の開発が盛んに行われている。例えば、光学レンズ材料の分野においては、高屈折率、高アッベ数、耐熱性、透明性に優れた光学材料が求められている。従来用いられていたガラスは、要求される様々な光学特性を実現することが可能であると共に、環境耐性に優れているが、加工性に劣るという問題があった。これに対し、ガラス材料に比べて安価であると共に加工性に優れる樹脂材料が、光学部品に用いられてきている。しかし、樹脂材料はガラスに比べて一般的に屈折率が低く、例えば、樹脂材料からなる光学部品を薄肉化するには、樹脂材料を高屈折率化することが求められている。
【0003】
樹脂材料を高屈折率化する方法としては、例えば、ポリマーの分子構造を設計して電子密度を向上させる方法が一般的に用いられている。他の方法として、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機酸化物の微粒子を樹脂に分散させる方法がある。
【0004】
しかしながら、このような微粒子は、粒子の表面エネルギーが大きく、マトリクスとなる樹脂に分散させることは困難であるため、これまで様々な検討がなされている。
【0005】
微粒子を樹脂に分散させる手法として、微粒子表面を表面修飾剤で化学修飾する手法がある。例えば、特許文献1には、特定の化学構造で修飾した粒子と樹脂等とを混合してマスターバッチを作製し、その後、かかるマスターバッチと熱可塑性樹脂とを溶融混練し、透明な樹脂組成物を得る方法が記載されている。
【0006】
別の方法として、特許文献2、並びに非特許文献1及び2に記載されているように、反応性の表面修飾剤で修飾された微粒子とモノマーとを混合した後重合することで、微粒子とマトリクス樹脂と一体化する手法がある。
【0007】
その他の方法として、特許文献3及び4、並びに非特許文献3に記載されているように、極性官能基を有するポリマーを用いる手法がある。
【0008】
特許文献5及び6には、マトリクスポリマーを高屈折率化する手法として、リン原子を高分子に導入したポリホスホネートが記載されている。
【0009】
特許文献7には、水素化ホスホン酸ジエステル(P-H化合物)に塩基存在下でアルケン又はアルキンを付加反応させる反応機構が記載されている。特許文献8及び9、並びに非特許文献4及び5には、水素化ホスホン酸ジエステル(P-H化合物)に遷移金属触媒下でアルケン又はアルキンを付加反応させる反応機構が記載されている。特許文献10及び11には、ポリカーボネート樹脂に使用されるジオール化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-38012号公報
【文献】特開2014-221866号公報
【文献】特開2002-177757号公報
【文献】特開2006-307199号公報
【文献】米国特許第6288210号公報
【文献】特開2003-268112号公報
【文献】特開2017-132731号公報
【文献】特開2005-232060号公報
【文献】特開2015-110617号公報
【文献】国際公開第2004/111106号
【文献】国際公開第2011/021720号
【非特許文献】
【0011】
【文献】“Macromolecules”,2017年,第50巻,p.9713~9725.
【文献】“ACS Appl. Mater. Interfaces”,2018年,第10巻,p.13985~13998.
【文献】“European Polymer Journal”, 2009年,第45巻,p.630~638.
【文献】“Org.Lett.”,2002年,第4巻,p.761~763.
【文献】“J.Am.Chem.Soc.”,2000年,第122巻,p.5407.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載される方法によって得られる樹脂組成物は、無機微粒子の含有割合が少ないため、樹脂材料を十分に高屈折率化させることは困難であった。
【0013】
特許文献2、並びに非特許文献1及び2に記載の手法では、マトリクス樹脂に応じて、適切な表面修飾剤を選択する必要がある。
【0014】
特許文献3及び4、並びに非特許文献3に記載の手法は、重合したポリマーを後工程にて変性させる必要があり、製造に手間がかかる。
【0015】
特許文献5及び6では、高屈折率化したポリホスホネートを用いて有機無機複合材料とすることは検討されていない。
【0016】
例えば、樹脂材料を高屈折率化するために、ポリマーの分子構造を設計して電子密度を向上させる方法は一般的に用いられているのに対して、微粒子を樹脂に分散させて高屈折率化する方法は、実用上ほぼ用いられていない。これは、上述のように微粒子が分散した樹脂組成物を得ることが難しいことに加えて、そのような樹脂組成物が得られたとしても、その樹脂組成物を成形したときに微粒子の分散状態が変化して、微粒子が凝集する場合があるためである。また、マトリクス樹脂の高屈折率化と無機微粒子の分散性を両立した複合材料についての報告例はこれまでにない。
【0017】
本開示の目的は、成形後に光学樹脂として実用上利用可能な、高屈折率の熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散した有機無機複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造単位を有する熱可塑性樹脂は、無機微粒子の分散性を大幅に向上させることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明は、以下の態様を含む。
【0020】
〈態様1〉
下記式1で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散した無機微粒子を含む、有機無機複合材料:
【化1】
式1中、Xは、芳香環を有する基を表し、Qはジオール化合物残基を表す。
〈態様2〉
前記式1で表される構造単位が、下記式2又は下記式3で表される構造単位である、態様1に記載の有機無機複合材料:
【化2】
式2中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のヘテロ環基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のチオアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアルキルカルボニル基、及び置換若しくは非置換のアミノカルボニル基からなる群より選ばれる基を表し、かつ、R~Rの少なくとも1つが芳香環を含み、Qはジオール化合物残基を表し、
【化3】
式3中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のヘテロ環基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のチオアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアルキルカルボニル基、及び置換若しくは非置換のアミノカルボニル基からなる群より選ばれる基を表し、かつ、R及びRの少なくとも1つが芳香環を含み、Qはジオール化合物残基を表す。
〈態様3〉
~Rの少なくとも1つがリン原子を含む、態様2に記載の有機無機複合材料。
〈態様4〉
前記無機微粒子の表面が、表面修飾剤により修飾されている、態様1~3のいずれかに記載の有機無機複合材料。
〈態様5〉
前記表面修飾剤が、酸性官能基を有する、態様4に記載の有機無機複合材料。
〈態様6〉
前記酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である、態様5に記載の有機無機複合材料。
〈態様7〉
前記無機微粒子の表面が、前記無機微粒子に対して1~30質量%の前記表面修飾剤により修飾されている、態様4~6のいずれかに記載の有機無機複合材料。
〈態様8〉
前記無機微粒子の平均粒子径が、1~20nmである、態様1~7のいずれかに記載の有機無機複合材料。
〈態様9〉
前記無機微粒子の含有量が、前記熱可塑性樹脂に対して1~95質量%である、態様1~8のいずれかに記載の有機無機複合材料。
〈態様10〉
前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、態様1~9のいずれかに記載の有機無機複合材料。
〈態様11〉
態様1~10のいずれかに記載の有機無機複合材料を用いて得られる成形品。
〈態様12〉
態様1~10のいずれかに記載の有機無機複合材料の製造方法であって、前記式1で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂を得ること、及び前記無機微粒子を前記熱可塑性樹脂に分散させることを含む、方法。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、特定の構造単位を有する熱可塑性樹脂を用いることで、高屈折率の熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散した有機無機複合材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0023】
一実施態様の有機無機複合材料は、下記式1で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散した無機微粒子を含む、有機無機複合材料である:
【化4】
式1中、Xは、芳香環を有する基を表し、Qはジオール化合物残基を表す。
【0024】
本開示の有機無機複合材料は、熱可塑性樹脂に対する無機微粒子の分散性に優れている。原理によって限定されるものではないが、本開示の有機無機複合材料の作用原理は、以下のとおりであると考えている。
【0025】
本開示の有機無機複合材料中の熱可塑性樹脂は、上述した式1で表される特定の構造単位を有している。この構造単位が、無機微粒子の分散性に寄与しているため、かかる構造単位を有さない樹脂に比べ、無機微粒子の分散性を向上させ得ると考えている。
【0026】
《有機無機複合材料》
本開示の有機無機複合材料は、無機微粒子の分散性に優れるため、例えば、以下に示す性能を呈することができる。
【0027】
〈透過率〉
本開示の有機無機複合材料は、優れた透明性を呈することができる。本開示の有機無機複合材料は、透過率が高いことが好ましい。例えば、100μm厚の成形体のD線(波長589nm)の25℃における透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。透過率が70%以上であることにより、有機無機複合材料を光学レンズ用途又は光学フィルム用途に好適に用いることができる。透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、99%以下、97%以下、又は95%以下とすることができる。
【0028】
〈屈折率〉
本開示の有機無機複合材料は、高い屈折率を呈することができる。本開示の有機無機複合材料の25℃で測定した波長589nmの屈折率(以下nDと略すことがある)は、1.500以上、1.800以下であることが好ましく、1.550以上、1.800以下であることがより好ましく、1.600以上、1.800以下であることが更に好ましい。屈折率が1.500以上であることにより、レンズの球面収差を低減することができ、更にレンズの焦点距離を短くすることができる。
【0029】
〈熱可塑性樹脂〉
本開示の有機無機複合材料に使用される熱可塑性樹脂は、下記式1で表される構造単位を含む:
【化5】
【0030】
(式1のX)
式1中のXは、芳香環を有する基であれば特に制限はない。
【0031】
例えば、式1で表される構造単位は、下記式2又は下記式3で表される構造単位であることが好ましい。
【化6】
【化7】
【0032】
(式2のR~R
式2中のR、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のヘテロ環基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のチオアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアルキルカルボニル基、及び置換若しくは非置換のアミノカルボニル基からなる群より選ばれる基を表し、かつ、R~Rの少なくとも1つが芳香環を含む。また、R~Rの少なくとも1つは、置換若しくは非置換のヘテロ環基であることが好ましく、ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子としては、P及びOから選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0033】
(式3のR及びR
式3中のR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のヘテロ環基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のチオアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアルキルカルボニル基、及び置換若しくは非置換のアミノカルボニル基からなる群より選ばれる基を表し、かつ、R及びRの少なくとも1つが芳香環を含む。また、R及びRの少なくとも1つは、置換若しくは非置換のアリール基であることが好ましい。
【0034】
本開示において「ハロゲン基」とは、周期表17族に属する、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の1価の基をいう。
【0035】
本開示において「アルキル基」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n+1-で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖又は分枝鎖であり得る。本開示において「置換アルキル基」とは、アルキルの水素原子が置換されたものをいう。これらの具体例は、C1~C2アルキル、C1~C3アルキル、C1~C4アルキル、C1~C5アルキル、C1~C6アルキル、C1~C7アルキル、C1~C8アルキル、C1~C9アルキル、C1~C10アルキル、C1~C11アルキル又はC1~C20アルキル、C1~C2置換アルキル、C1~C3置換アルキル、C1~C4置換アルキル、C1~C5置換アルキル、C1~C6置換アルキル、C1~C7置換アルキル、C1~C8置換アルキル、C1~C9置換アルキル、C1~C10置換アルキル、C1~C11置換アルキル又はC1~C20置換アルキルであり得る。例えば、C1~C10アルキルとは、炭素原子を1~10個有する直鎖又は分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH-)、エチル(C-)、n-プロピル(CHCHCH-)、イソプロピル((CHCH-)、n-ブチル(CHCHCHCH-)、n-ペンチル(CHCHCHCHCH-)、n-ヘキシル(CHCHCHCHCHCH-)、n-ヘプチル(CHCHCHCHCHCHCH-)、n-オクチル(CHCHCHCHCHCHCHCH-)、n-ノニル(CHCHCHCHCHCHCHCHCH-)、n-デシル(CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH-)、-C(CHCHCHCH(CH、-CHCH(CHなどが例示される。例えば、C1~C10置換アルキルとは、C1~C10アルキルであって、そのうち1又は複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0036】
本開示において「アルケニル基」とは、エテン、プロペンのような不飽和脂肪族炭化水素(アルケン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n-1-で表される(ここで、nは正の整数である)。アルケニルは、直鎖又は分枝鎖であり得る。本開示において「置換アルケニル基」とは、アルケニルの水素原子が置換されたものをいう。これらの具体例は、C2~C3アルケニル、C2~C4アルケニル、C2~C5アルケニル、C2~C6アルケニル、C2~C7アルケニル、C2~C8アルケニル、C2~C9アルケニル、C2~C10アルケニル、C2~C11アルケニル又はC2~C20アルケニル、C2~C3置換アルケニル、C2~C4置換アルケニル、C2~C5置換アルケニル、C2~C6置換アルケニル、C2~C7置換アルケニル、C2~C8置換アルケニル、C2~C9置換アルケニル、C2~C10置換アルケニル、C2~C11置換アルケニル又はC2~C20置換アルケニルであり得る。例えば、C2~C10アルケニルとは、炭素原子を2~10個有する直鎖又は分枝状のアルケニルを意味し、ビニル(CH=CH-)、アリル(CH=CH-CH-)、1-ブテニル(CH=CH-CH-CH-)などが例示される。例えば、C2~C10置換アルケニルとは、C2~C10アルケニルであって、そのうち1又は複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0037】
本開示において「シクロアルキル基」とは、環式構造を有するアルキルをいう。具体例としては、C3~C4シクロアルキル、C3~C5シクロアルキル、C3~C6シクロアルキル、C3~C7シクロアルキル、C3~C8シクロアルキル、C3~C9シクロアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C11シクロアルキル、C3~C20シクロアルキル、C3~C4置換シクロアルキル、C3~C5置換シクロアルキル、C3~C6置換シクロアルキル、C3~C7置換シクロアルキル、C3~C8置換シクロアルキル、C3~C9置換シクロアルキル、C3~C10置換シクロアルキル、C3~C11置換シクロアルキル又はC3~C20置換シクロアルキルであり得る。例えば、シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロヘキシルなどが例示される。「置換シクロアルキル基」とは、シクロアルキルの水素原子が置換されたものをいう。
【0038】
本開示において「アルコキシ基」とは、アルコールのヒドロキシ基の水素原子が失われて生ずる1価の基をいい、一般にC2n+1O-で表される(ここで、nは1以上の整数である)。具体例としては、C1~C2アルコキシ、C1~C3アルコキシ、C1~C4アルコキシ、C1~C5アルコキシ、C1~C6アルコキシ、C1~C7アルコキシ、C1~C8アルコキシ、C1~C9アルコキシ、C1~C10アルコキシ、C1~C11アルコキシ、C1~C20アルコキシ、C1~C2置換アルコキシ、C1~C3置換アルコキシ、C1~C4置換アルコキシ、C1~C5置換アルコキシ、C1~C6置換アルコキシ、C1~C7置換アルコキシ、C1~C8置換アルコキシ、C1~C9置換アルコキシ、C1~C10置換アルコキシ、C1~C11置換アルコキシ又はC1~C20置換アルコキシであり得る。例えば、C1~C10アルコキシとは、炭素原子を1~10個含む直鎖又は分枝状のアルコキシを意味し、メトキシ(CHO-)、エトキシ(CO-)、n-プロポキシ(CHCHCHO-)などが例示される。「置換アルコキシ基」とは、アルコキシ基の水素原子が置換されたものをいう。
【0039】
本開示において「ヘテロ環基」とは、炭素原子及びヘテロ原子を含む環状構造を有する基をいう。ヘテロ原子は、P、O、S及びNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系又は非芳香族系であり得、単環式又は多環式であり得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。「置換ヘテロ環基」とは、ヘテロ環基の水素原子が置換されたものをいう。
【0040】
本開示において「アリール基」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個脱離して生ずる基をいう。ベンゼンからはフェニル基(C-)、トルエンからはトリル基(CH-)、キシレンからはキシリル基((CH-)、ナフタレンからはナフチル基(C10-)、フェナントレンからはフェナントリル基(C14-)、アントラセンからはアントラセニル基(C14-)、テトラセンからはテトラセニル基(C1811-)、クリセンからはクリセニル基(C1811-)、ピレンからはピレニル基(C1811-)、ベンゾピレンからはベンゾピレニル基(C2011-)、ペンタセンからはペンタセニル基(C2213-)が誘導される。
【0041】
本開示において「ヘテロアリール基」とは、アリール基の芳香族炭化水素の環を構成する炭素原子の1個以上がヘテロ原子で置換された基をいい、例えば、これに限定されるわけではないがホスファフェナントレン、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピラジン、及びベンゾイミダゾールの芳香環に結合する水素原子が1個脱離して生ずる基が挙げられる。
【0042】
本開示において「アリールオキシ基」とは、ヒドロキシ基により置換されたアリール基のヒドロキシ基の水素原子が失われて生ずる1価の基をいい、例えば、これに限定されるわけではないが、CO-、CHO-、(CHO-、及びC10O-が挙げられる。
【0043】
本開示において「チオアルコキシ基」とは、「アルコキシ基」の酸素原子を硫黄原子で置換した基であり、一般に-SR(ここでRはアルキル基であり、好ましくはC1~C10アルキルである。)で表される。
【0044】
本開示において「アルコキシカルボニル基」とは、-C(O)OR(ここでRはアルキル基であり、好ましくはC1~C10アルキルである。)で表される基をいう。「置換されたアルコキシカルボニル基」とは、アルコキシカルボニル基の水素原子が置換されたものをいう。
【0045】
本開示において「アルキルカルボニル基」とは、カルボン酸からOHを除いてできる1価の基をいう。アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル(CHCO-)、及びベンゾイル(CCO-)が挙げられる。「置換アルキルカルボニル基」とは、アルキル基の水素原子が置換されたものをいう。
【0046】
本開示において「アミノカルボニル基」とは、アンモニア又はアミンの水素原子をカルボニル基で置換してできる1価の基をいう。「置換アミノカルボニル基」とは、窒素上の水素原子が置換されたものをいう。アミノカルボニル基は、アミドともいう。
【0047】
本開示において「置換」とは、上記のとおり、対象となる基の水素原子が他の基によって置換されていることを意味しており、この場合の置換は、例えば、ハロゲン基、チオール基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アミノ基、チオアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、及びアミノカルボニル基によってされていてもよい。
【0048】
式2又は式3で表される構造単位は、置換基R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つがリン原子を含むことが好ましい。特に、下記式2aで表される構造単位が好ましい。かかる構造単位を含むことによって、更に高い屈折率を有する熱可塑性樹脂を得ることができる。
【化8】
【0049】
式1で表される構造単位の割合、又は式2及び式3で表される構造単位の合計の割合は、熱可塑性樹脂の全構造単位を基準として、好ましくは1~100モル%であり、より好ましくは3~100モル%であり、更に好ましくは5~100モル%である。これらの構造単位が1モル%以上であると、熱可塑性樹脂の屈折率が向上し、かつ透明性を維持しながら無機微粒子との複合化が可能となる。
【0050】
(ホスホネートモノマーの合成法)
式2で表される構造単位及び式3で表される構造単位を誘導するホスホネートモノマーの合成法について説明する。ホスホネートモノマーは以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。例えば出発原料として、水素化ホスホン酸ジエステル(P-H化合物)に塩基存在下でアルケン又はアルキンを付加反応させることでホスホネートモノマーを得ることができる。本反応の反応機構は、例えば特許文献7に記載されている。ホスホネートモノマーは、水素化ホスホン酸ジエステル(P-H化合物)に遷移金属触媒下でアルケン又はアルキンを付加反応させることによっても得ることができる。後者の反応は、例えば、特許文献8及び9、並びに非特許文献4及び5に同様の反応が記載されている。
【0051】
ホスホネートモノマーの酸価は、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。酸価がこの範囲のホスホネートモノマーを使用することにより、反応性に優れ、分子量が十分に大きい熱可塑性樹脂の製造が可能となる。ここで酸価とは、サンプル1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0052】
酸価を低減する方法としては、特に限定されるものではないが、溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法、及び蒸留、再結晶等の手法が挙げられる。
【0053】
ホスホネートモノマーは、ホスホン酸ジクロライド及びその誘導体、並びにジアリールホスホネート及びその誘導体が好ましく、ジフェニルホスホネート及びその誘導体がより好ましい。ホスホネートモノマーとして、例えば、[2-(9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-イル)-エチル]-ホスホン酸ジフェニル、スチリルホスホン酸ジフェニル、及びメチルホスホン酸ジフェニルが挙げられる。
【0054】
(式1~式3のQ)
式1~式3に含まれるQは、ジオール化合物から誘導されるジオール化合物残基である。かかるジオール化合物(ジオールモノマー)としては、例えば、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物、及び芳香族ジオール化合物を挙げることができる。具体的には、例えば、特許文献10及び11に記載のジオール化合物、及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。以下にかかるジオール化合物の代表的な具体例を示すが、それらによって限定されるものではない。
【0055】
脂肪族ジオール化合物としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクタングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0056】
脂環式ジオール化合物としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、イソソルビド(1,4;3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール)、イソマンニド(1,4;3,6-ジアンヒドロ-マンニトール)、イソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-イジトール)などが挙げられる。
【0057】
芳香族ジオール化合物としては、例えば、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、及び1,1’-スピロビインダン-6,6’-ジオールが挙げられる。
【0058】
(ジオール化合物の含水率)
ジオール化合物の含水率は2,000ppm以下が好ましく、1,500ppm以下がより好ましく、1,000ppm以下が最も好ましい。ジオール化合物の含水率が2,000ppm以下であると、副反応を抑制して重合反応を進行させることができ、機械的強度が高い熱可塑性樹脂を得ることができる。含水率を低減する方法としては、特に限定されないが、真空乾燥等の手法が挙げられる。
【0059】
(カーボネート残基)
熱可塑性樹脂は、カーボネート残基を含むことができる。カーボネート残基とは、重合時に炭酸エステル、炭酸ハライドなどのカーボネート前駆体から生成する構造単位である。カーボネート前駆体として、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどの炭酸エステル、及びホスゲン、トリホスゲンなどの炭酸ハライドが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂は、以下のような特性を有することができる。
【0061】
(比粘度:ηSP
熱可塑性樹脂の比粘度(ηSP)は、0.2~1.5が好ましい。比粘度が下限以上では強度が向上し、上限以下では成形加工特性が優れる。熱可塑性樹脂の比粘度は、より好ましくは0.2以上1.2以下、更に好ましくは、0.2以上1.0以下、特に好ましくは0.2以上0.5以下である。本開示の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してもよい。
【0062】
本開示において、比粘度は、20℃で塩化メチレン100mLに熱可塑性樹脂0.7gを溶解した溶液を試料溶液とし、オストワルド粘度計を使用して以下の式4から算出することができる:
比粘度(ηSP)=(t-t)/t …式4
ここで、tは、塩化メチレンの落下秒数であり、tは、試料溶液の落下秒数である。
【0063】
比粘度の測定は、例えば次の要領で行うことができる。まず、熱可塑性樹脂をその20~30倍質量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。得られた固体0.7gを塩化メチレン100mLに溶解した溶液を試料溶液として、20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求める。
【0064】
(分子量)
熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)は、5,000以上、8,000以上、10,000以上、15,000以上、又は20,000以上であってよく、100,000以下、80,000以下、50,000以下、30,000以下、又は20,000以下であってよい。例えば、熱可塑性樹脂のMnの範囲は、5,000以上100,000以下、又は10,000以上30,000以下である。
【0065】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8,000以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、又は30,000以上であってよく、200,000以下、150,000以下、100,000以下、80,000以下、50,000以下、又は30,000以下であってよい。例えば、熱可塑性樹脂のMwの範囲は、8,000以上200,000以下、又は10,000以上50,000以下である。
【0066】
本開示において、数平均分子量及び重量平均分子量は、標準ポリスチレンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で決定される値である。
【0067】
熱可塑性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0以上、2.25以上、2.5以上、3.0以上、4.0以上、又は5.0以上であってよく、10.0以下、8.0以下、6.0以下、又は5.0以下であってよい。例えば、Mw/Mnの範囲は、2.0以上10.0以下、又は3.0以上6.0以下である。
【0068】
(ガラス転移温度:Tg)
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90~170℃、より好ましくは100~160℃である。Tgが上記範囲内であると、有機無機複合材料の成形性を高め、耐熱安定性に優れた成形体を形成することができる。ガラス転移温度は、JIS K 7121:2012に準拠して、窒素雰囲気下(窒素流量:40mL/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で、示差走査熱量測定(DSC)装置を使用して決定することができる。
【0069】
(5%質量減少温度)
熱可塑性樹脂の5%質量減少温度は、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは330℃以上であり、更に好ましくは350℃以上である。5%質量減少温度が上記温度以上であると、有機無機複合材料及びその成形体の耐熱安定性が良好であり好ましい。5%質量減少温度の上限値については特に制限はないが、例えば、450℃以下又は400℃以下とすることができる。
【0070】
〈熱可塑性樹脂の製造方法〉
ホスホン酸ジクロライド又はその誘導体と、ホスゲンと、ジオール化合物との反応では、通常非水系で酸結合剤及び溶媒の存在下で反応を行う。酸結合剤としては、例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として、例えば、フェノール、p-tert-ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は、通常0~40℃であり、反応時間は、通常1分~5時間である。
【0071】
エステル交換反応では、不活性ガス雰囲気下、ジアリールホスホネート又はその誘導体と、ジアリールカーボネートと、ジオール化合物とを混合し、アルカリ金属化合物触媒、アルカリ土類金属化合物触媒、又はその両方を含む混合触媒の存在下にて、減圧下通常120~350℃、好ましくは150~300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したアルコールを系外に留去させる。反応時間は通常1~4時間程度である。
【0072】
触媒としては、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を主成分として用い、必要に応じて含窒素塩基性化合物を助触媒として用いてもよい。
【0073】
触媒として使用されるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、並びに安息香酸リチウムが挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸ストロンチウムが挙げられる。
【0074】
助触媒として使用される含窒素塩基性化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、及びジメチルアミノピリジンが挙げられる。
【0075】
これらの触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対して、好ましくは1×10-9~1×10-2当量、好ましくは1×10-8~1×10-2当量、より好ましくは1×10-7~1×10-2当量である。
【0076】
反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤を有効に使用することができ、スルホン酸のアンモニウム塩及びホスホニウム塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸塩、及びパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸塩がより好ましい。
【0077】
触媒失活剤として、スルホン酸エステルを使用することもできる。スルホン酸エステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、及びパラトルエンスルホン酸フェニルが好ましく用いられる。
【0078】
触媒失活剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましい。
【0079】
これらの触媒失活剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。触媒失活剤の使用量は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒を用いた場合、その触媒1モルに対して、好ましくは0.5~50モル、より好ましくは0.5~10モル、更に好ましくは0.8~5モルである。
【0080】
〈無機微粒子〉
本開示の有機無機複合材料で使用される無機微粒子としては特に制限はなく、例えば、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SnO(酸化スズ)、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)等を挙げることができる。中でも、光学部材又は光学部品としての利用の観点から、屈折率が1.80以上又は2.00以上の無機微粒子が好ましく、ZrO及びTiOがより好ましく、ZrOが特に好ましい。無機微粒子は単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0081】
無機微粒子の平均粒子径としては特に制限はなく、例えば、屈折率、透明性等の観点から、1~20nmの範囲が好ましく、1~10nmの範囲がより好ましい。無機微粒子の平均粒子径が1nm以上であれば、屈折率などの特性を得るための無機微粒子の結晶性を維持することができ、20nm以下であれば、高い透明性を有する分散液及び複合材料を提供することができる。無機微粒子の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法(DLS)によって測定することができる。
【0082】
本開示の有機無機複合材料における無機微粒子の含有量は、使用用途などに応じて適宜調整すればよく特に制限はないが、例えば、無機微粒子の添加効果、機械物性の低下などを考慮し、熱可塑性樹脂に対して、好ましくは1~95質量%であり、より好ましくは1~65質量%であり、更に好ましくは1~40質量%であり、特に好ましくは1~35質量%であり、最も好ましくは1~30質量%である。
【0083】
(表面修飾剤)
無機微粒子は、分散性をより向上させるために、その表面が表面修飾剤によって修飾されていてもよい。表面修飾剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。表面修飾剤は、使用する熱可塑性樹脂との親和性を向上させやすい表面修飾剤を適宜選択して用いることが望ましい。
【0084】
表面修飾剤としては、複合化する熱可塑性樹脂に対する無機微粒子の分散性を確保できるものであれば特に制限はなく、例えば、酸性官能基を有する表面修飾剤を使用することができる。中でも、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基を有する表面修飾剤が好ましい。このような表面修飾剤は、無機微粒子の分散性又は屈折率をより向上させることができる。
【0085】
スルホン酸基を有する表面修飾剤としては、例えば、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂に対する分散性、及び屈折率の向上効果の観点から、アリールスルホン酸が好ましい。
【0086】
ホスホン酸基を有する表面修飾剤としては、例えば、プロパンホスホン酸等のアルキルホスホン酸、及びベンゼンホスホン酸等のアリールホスホン酸が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂に対する分散性、及び屈折率の向上効果の観点から、アリールホスホン酸が好ましい。
【0087】
ホスフィン酸基を有する表面修飾剤としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジ(2-エチルへキシル)ホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、及びフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸が挙げられる。ホスフィン酸基を構成する酸素原子を硫黄原子で置換したチオホスフィン酸、又はジチオホスフィン酸を用いることで、より屈折率の高い無機微粒子を得ることができる。中でも、熱可塑性樹脂に対する分散性、及び屈折率向上効果の観点から、アリールホスフィン酸が好ましく、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸が更に好ましく、ジフェニルホスフィン酸が特に好ましい。
【0088】
カルボン酸基を有する表面修飾剤としては、例えば、ブタン酸、イソブタン酸、メタクリル酸、ヘキサン酸、オクタン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリル酸等のアルキルカルボン酸、及び安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェノキシ安息香酸等のアリールカルボン酸が挙げられる。カルボキシル基を構成する酸素原子を硫黄原子で置換したチオカルボン酸、又はジチオカルボン酸を用いることで、より屈折率の高い無機微粒子を得ることができる。中でも、熱可塑性樹脂に対する分散性、及び屈折率の向上効果の観点から、アリールカルボン酸が好ましく、オルト、メタ又はパラ位にフェノキシ基を有するフェノキシ安息香酸が更に好ましく、パラフェノキシ安息香酸が特に好ましい。
【0089】
無機微粒子の表面修飾の方法としては特に制限はないが、例えば、以下のような方法により行われる。
【0090】
親水性の無機微粒子を分散させた水分散液にメタノールを混合した混合液に、表面修飾剤を添加し、その後、水とメタノールを共沸操作によって除去し、トルエン又は塩化メチレンに溶媒置換することによって、表面修飾された無機微粒子が分散した分散液を調製することができる。任意に、その後更に溶媒留去することによって、表面修飾された無機微粒子を得ることができる。
【0091】
表面修飾剤の使用量としては、特に制限はないが、例えば、熱可塑性樹脂への分散性、及び屈折率の向上効果の観点から、無機微粒子に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることが特に好ましい。
【0092】
〈任意成分〉
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、本開示の効果を損なわない範囲で、例えば、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、充填剤などの添加剤を含有することができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。以下に、いくつかの任意成分について詳細に記載するが、添加し得る任意成分はこれらに限定されない。
【0093】
(離型剤)
離型剤としては、その90質量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、一価アルコールと脂肪酸のエステル、及び多価アルコールと脂肪酸の部分エステル又は全エステルが挙げられる。一価アルコールと脂肪酸のエステルは、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。多価アルコールと脂肪酸の部分エステル又は全エステルは、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。
【0094】
一価アルコールと飽和脂肪酸のエステルとしては、例えば、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、及びイソプロピルパルミテートが挙げられ、ステアリルステアレートが好ましい。
【0095】
多価アルコールと飽和脂肪酸の部分エステル又は全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネート、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、及びジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステル又は部分エステルが挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、及びステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートとの混合物が好ましく用いられる。
【0096】
離型剤中のエステルの量は、離型剤を100質量%としたときに、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0097】
離型剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005~2.0質量部、より好ましくは0.01~0.6質量部、更に好ましくは0.02~0.5質量部である。
【0098】
(熱安定剤)
熱安定剤としては、例えば、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
【0099】
リン系熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステルが挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトが挙げられる。
【0100】
リン系熱安定剤としては、例えば、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく使用され、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが特に好ましく使用される。
【0101】
リン系熱安定剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部が好ましい。
【0102】
硫黄系熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネート、及びジステアリル-3、3’-チオジプロピオネートが挙げられる。硫黄系熱安定剤は、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、及びジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネートが好ましく、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)がより好ましい。
【0103】
硫黄系熱安定剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~0.2質量部が好ましい。
【0104】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及び3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが挙げられる。ヒンダードフェノール系熱安定剤は、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、及びペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0105】
ヒンダードフェノール系熱安定剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~0.3質量部が好ましい。
【0106】
リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
【0107】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0108】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が挙げられる。
【0109】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、及び2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0110】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、及び2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-オクチルオキシフェノールが挙げられる。
【0111】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)が好ましい。
【0112】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、及び1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンが挙げられる。
【0113】
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~3.0質量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、成形品に十分な耐候性を付与することができる。
【0114】
(ブルーイング剤)
ブルーイング剤としては、例えば、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブル-RLSが挙げられる。ブルーイング剤は、熱可塑性樹脂の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した有機無機複合材料の場合は、配合された紫外線吸収剤の作用又は色によって有機無機複合材料が黄色味を帯びやすい。そのため、ブルーイング剤の配合は、レンズなどの光学部品に自然な透明感を付与する目的に非常に有効である。
【0115】
ブルーイング剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05~1.5ppmであり、より好ましくは0.1~1.2ppmである。
【0116】
〈有機無機複合材料の製造方法〉
本開示の有機無機複合材料の製造方法は、式1で表される構造単位を含む熱可塑性樹脂を得ること、及び無機微粒子をその熱可塑性樹脂に分散させることを含む。熱可塑性樹脂を得る工程については、熱可塑性樹脂の製造方法に関して上述したとおりである。
【0117】
無機微粒子を熱可塑性樹脂に分散させる工程については、特に限定されるものではない。具体的には、熱可塑性樹脂溶液と、無機微粒子分散液を混合する方法、熱可塑性樹脂粉体と無機微粒子粉体を溶融混合する方法等を挙げることができる。
【0118】
例えば、熱可塑性樹脂溶液と無機微粒子分散液を混合する方法では、熱可塑性樹脂溶液と、無機微粒子分散液とを一回で混合してもよいし、熱可塑性樹脂溶液を、無機微粒子分散液に徐々に滴下し混合してもよい。分散工程で可塑剤を使用してもよい。可塑剤は熱可塑性樹脂溶液又は無機微粒子分散液に予め添加しておいてもよく、熱可塑性樹脂溶液と無機微粒子分散液の混合時に添加してもよい。
【0119】
〈有機無機複合材料の成形方法〉
本開示の有機無機複合材料の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、キャスト成形等、一般の熱可塑性樹脂の成形法を採用することができる。有機無機複合材料の流動性の観点から、圧縮成形及びキャスト成形が好ましい。
【0120】
本開示の有機無機複合材料は、種々の成形体として利用することができ、特に透明性又は高屈折率が要求される成形体として好適に利用することができる。本開示の有機無機複合材料は、例えば、光学レンズ、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料、パソコン又は携帯電話の外装又は前面板などの電気電子部品、自動車のヘッドランプ又は窓などの自動車用途、及び機能材料用途の成形体として有利に使用することができ、特に光学レンズ及び光学フィルムに好適である。
【実施例
【0121】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「質量部」を意味する。実施例において使用した熱可塑性樹脂、無機微粒子及び各評価方法は以下のとおりである。
【0122】
〈評価方法〉
(比粘度)
20℃で塩化メチレン100mLに熱可塑性樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた:
比粘度(ηSP)=(t-t)/t …式5
ここで、tは塩化メチレンの落下秒数であり、tは試料溶液の落下秒数である。
【0123】
(透過率)
有機無機複合材料を用いて形成したフィルムの25℃における透過率(波長:589nm)を、日立製作所株式会社製分光光度計U-3310を用いて測定した。
【0124】
(ガラス転移温度(Tg))
有機無機複合材料の試料8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント株式会社製の熱分析システムDSC-2910を使用して、JIS K 7121:2012に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40mL/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0125】
(屈折率)
有機無機複合材料を用いて形成したフィルムの25℃における屈折率(波長:589nm)を、ATAGO製DR-M2アッベ屈折計を用いて測定した。
【0126】
(透明性)
目視により、白濁がない場合を優良、白濁は認められるが透過性がある場合を可、白濁が認められ透過性がない場合を不良として評価した。
【0127】
(平均粒子径)
無機微粒子の塩化メチレン分散液を用いて、無機微粒子の平均粒子径を動的光散乱法(DLS)により測定した。
【0128】
(モノマーの含水率)
電量滴定式水分測定装置(三菱化学株式会社製CA-200)、及び自動水分気化装置(三菱化学株式会社製VA124S)を用い、JIS K 0068:2001に準拠して測定した。
【0129】
(酸価)
JIS K 0070に準拠して測定した。
【0130】
〈ホスホネートモノマー〉
以下、使用したホスホネートモノマーの名称及び構造式を示す。
【0131】
[2-(9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-イル)-エチル]-ホスホン酸ジフェニル:DPP-HCA(酸価 8mgKOH/g)
【化9】
【0132】
スチリルホスホン酸ジフェニル:DPP-Ac(酸価 8mgKOH/g)
【化10】
【0133】
メチルホスホン酸ジフェニル:DPP-M(酸価 21mgKOH/g)
【化11】
【0134】
〈熱可塑性樹脂〉
(ポリマー1の製造方法)
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(含水率50ppm、以下BPAと略す。)799.1部、[2-(9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-イル)-エチル]-ホスホン酸ジフェニル(以下DPP-HCAと略す。)249.9部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す。)637.3部、及び触媒として酢酸リチウム0.2部を窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。その後、20分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計3時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、熱可塑性樹脂(ポリマー1)を得た。
【0135】
得られた熱可塑性樹脂3gを塩化メチレン50mLに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストした。室温にて十分に乾燥させた後、100℃以下の温度にて12時間乾燥して、厚さ約100μmのフィルムを作成した。各種評価を行った結果を表1に記載する。
【0136】
(ポリマー2の製造方法)
BPA 799.1部、DPP-HCA 499.8部、DPC 524.8部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0137】
(ポリマー3の製造方法)
カールフィッシャー法にて測定された含水率が2,050ppmであるイソソルビド(以下ISSと略す。)を40℃、0.05atmの条件下にて8時間真空乾燥した。乾燥後のISSの含水率は780ppmであった。乾燥後のISS 511.5部、DPP-HCA 166.6部、DPC 674.8部を原料として用い、最終内温を240℃とした他は、実施例1と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0138】
(ポリマー4の製造方法)
ISS 511.5部、スチリルホスホン酸ジフェニル(以下とDPP-Acと略す。)225.4部、DPC 599.8部を原料として用いた他は、実施例5と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0139】
(ポリマー5の製造方法)
BPA 799.1部、メチルホスホン酸ジフェニル(以下DPP-Mと略す。)491.8部、DPC 299.9部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0140】
(ポリマー6の製造方法)
BPA 799.1部、DPP-M 819.7部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0141】
(ポリマー7の製造方法)
BPA 799.1部、DPC 749.8部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0142】
(ポリマー8の製造方法)
ISS 511.5部、DPC 749.8部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、熱可塑性樹脂及びフィルムを得た。同様の評価を行った結果を表1に記載する。
【0143】
〈ジルコニア微粒子の表面修飾〉
スターラーチップをセットした100mLナスフラスコに、ZrOに対し10~30質量%に相当する量の表面修飾剤をとり、メタノール10g及びトルエン15gに溶解させた溶液に、ZrO水分散液(堺化学工業株式会社製:SZR-W)を滴下し混合した。混合液を1時間室温で撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより3~5mL程度になるまで溶媒を留去した。留去は液相内で突沸が生じない程度の圧力に減圧することにより行った。
【0144】
その混合液に、更にメタノール10g、トルエン15gを加えて再び界面がない透明な分散液とし、再度3~5mL程度になるまで溶媒を留去した。この操作を数回重ねることにより、水/メタノール/トルエン混合溶媒から塩化メチレンのみの溶媒に置換してZrO微粒子の塩化メチレン分散液を得た。更に、この塩化メチレン分散液を室温で24時間真空乾燥させて、塩化メチレンを除去し、表面修飾ZrOの粉末を得た。結果を表2に示す。
【0145】
〈有機無機複合材料〉
表面修飾ZrO微粒子の塩化メチレン分散液に、熱可塑性樹脂(ポリマー1~8)の塩化メチレン溶液を5分かけて滴下し、その後30分撹拌した。この分散液をガラスシャーレ上にキャストし、室温で十分に乾燥させた後、100℃以下の温度にて12時間乾燥して、厚さ約100μmのフィルムを作製した。作製したフィルムの各種評価を行った。その結果を表3に記載する。使用した表面修飾剤の種類と無機成分としての添加量は、表3に示すとおりとした。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
〈結果〉
表3から明らかなように、実施例1~11では屈折率が向上し、透明性を有する有機無機複合材料を提供することができた。比較例1~6のように式1で表される構造単位を有しない熱可塑性樹脂を用いた場合には、透明性、透過率(D線)、屈折率の少なくともいずれかの性能が劣っていた。ここで、比較例1及び2では、ヘイズが高かったため、アッベ屈折率計での屈折率測定が行えなかった。また、比較例3~6では、無機微粒子を均一に分散することができず、微粒子の凝集により透過率が低くヘイズが高かったため、比較例1及び2と同様に屈折率測定が行えなかった。
【0150】
〈実施例12〉
実施例3と同様に作製した、表面修飾ZrO微粒子及びポリマー1を含む塩化メチレン分散液を、80℃で4時間乾燥して塩化メチレンを除去し、有機無機複合材料のフレークを得た。このフレークを、真空熱プレス装置(神藤金属工業所株式会社製圧縮成形機:SFV-10、真空ポンプユニット:GXD-360)でプレス成形し、厚さ約1mmの成形板を得た。プレス成形条件は、金型温度220℃、1次圧:1MPa(30秒)、2次圧:1.5MPa(5分)とした。得られた成形板は透明であった。
【0151】
〈比較例7〉
熱可塑性樹脂としてポリマー7を用いた以外は、実施例12と同様の方法で、厚さ約1mmの成形板を得た。得られた成形板は白濁し不透明であった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の有機無機複合材料は、高屈折率で透明性に優れており、無機微粒子の含有量を調整することにより屈折率等の所望の特性を得ることができる。本開示の有機無機複合材料を用いて得られる成形品(例えばフィルム、及びシート)は各種分野に利用可能である。