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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】搭載装置、及び作業機
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/00 20060101AFI20221223BHJP
   G06F 13/12 20060101ALI20221223BHJP
   G06F 13/14 20060101ALI20221223BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20221223BHJP
【FI】
G06F12/00 571A
G06F13/12 330A
G06F13/14 330B
H05K13/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021552056
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040835
(87)【国際公開番号】W WO2021075019
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 憲司
(72)【発明者】
【氏名】長坂 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】田中丸 重典
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/186635(WO,A1)
【文献】特開2018-106628(JP,A)
【文献】特開平08-335186(JP,A)
【文献】特開2002-041358(JP,A)
【文献】特開平03-250338(JP,A)
【文献】特開2008-198098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06F 12/00
G06F 13/10 - 13/14
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置を搭載する搭載装置であって、
前記通信装置は、
産業用ネットワークにおけるマスターと接続されるスレーブと、
前記スレーブの情報であるスレーブ情報と前記搭載装置を識別するための搭載装置識別情報又は前記搭載装置の稼動状況を記録した稼動ログを記憶するメモリと、
前記マスターから伝送される制御データに基づいた処理を実行し、前記メモリに対するアクセスを実行する処理回路と、
前記スレーブ、前記処理回路、及び前記メモリに接続され、前記メモリから前記スレーブ情報を読み出して記憶する記憶装置を備え、前記記憶装置へ読み出した前記スレーブ情報を、前記スレーブを介して前記マスターへ送信するアクセス制御回路と、
を備え
前記処理回路は、
前記スレーブ情報を前記記憶装置へ読み出す処理を、前記アクセス制御回路に実行させた後、前記搭載装置の搭載装置識別情報又は前記搭載装置の稼動状況を記録した稼動ログについて前記記憶装置を介さずに前記メモリへアクセスする処理を開始する、搭載装置。
【請求項2】
前記メモリは、
不揮発性メモリであり、
前記記憶装置は、
RAMである、請求項1に記載の搭載装置。
【請求項3】
前記アクセス制御回路は、
前記マスターから前記スレーブに対して前記スレーブ情報の読み出しを指示する要求が受信された場合に、前記記憶装置へ読み出した前記スレーブ情報を前記マスターへ送信する、請求項1又は請求項2に記載の搭載装置
【請求項4】
前記スレーブ情報は、
前記スレーブを識別するための固有値である、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の搭載装置
【請求項5】
前記メモリは、
前記搭載装置識別情報を記憶し、
前記処理回路は、
前記マスターから前記スレーブに対して前記搭載装置識別情報の読み出しを指示する前記制御データが受信された場合に、前記アクセス制御回路を介して前記メモリから前記搭載装置識別情報を読み出し、読み出した前記搭載装置識別情報を、前記スレーブを介して前記マスターへ送信する、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の搭載装置
【請求項6】
前記メモリは、
前記稼動ログを記憶し、
前記処理回路は、
前記稼動ログを、前記アクセス制御回路を介して前記メモリへ書き込む、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の搭載装置
【請求項7】
前記通信装置は、
電子部品を基板に装着する作業を行なう装着ヘッドに設けられる、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の搭載装置
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の前記搭載装置を備える作業機であって、
前記マスターと、
前記マスターが設けられる装置本体部と、
を備え、
前記搭載装置は、
前記通信装置が設けられ、前記装置本体部に対して相対的に移動する可動部である、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業用ネットワークにおけるマスターから伝送される制御データを処理する通信装置を搭載する搭載装置、及びその搭載装置を備える作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、共通バスの競合を抑制する技術がある(例えば、特許文献1など)。特許文献1のバス競合防止回路は、1つの共通バスに接続された複数の3ステートバッファの制御を行なっている。各3ステートバッファは、ANDゲートに接続され、ANDゲートから信号が供給されることに基づいて、共通バスへの信号出力を行なう。任意の3ステートバッファに対応するANDゲートには、そのANDゲートに対するイネイブル信号と、別のANDゲートの出力の反転信号が入力される。ANDゲートは、2つの信号の論理積をステータスバッファに出力することで、3ステートバッファの共通バスに対する競合を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-56874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インターネットに代表されるネットワーク通信の技術は、FA(Factory Automation)分野にも活用されており、FA分野を対象とした産業用ネットワークと呼ばれるものがある。例えば、産業用ネットワークでは、マスターと、そのマスターによって制御されるスレーブとを接続したネットワークを構成する。マスターから送信した制御データによって、制御対象の装置内に取り付けたスレーブを制御することで、その装置の作動を制御することが可能となる。
【0005】
この種の産業用ネットワークでは、例えば、マスターは、装置の電源オン時に、スレーブのメモリからスレーブに関する情報を取得する。マスターは、メモリから取得した情報に基づいて、産業用ネットワークに接続されたスレーブの種類などを検出する。また、スレーブ情報を記憶するメモリを、他の用途にも使用することで、スレーブを備える通信装置内のメモリ数を減らすことができる。一方で、メモリを共用化する場合、メモリに対する複数のアクセスが同時に発生し、競合が発生することが問題となる。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、産業用ネットワークにおける通信装置が備えるメモリにスレーブに係わるスレーブ情報が記憶されている場合に、メモリに対するアクセスの競合を抑制し、スレーブ情報を記憶する用途以外にもメモリを使用できる搭載装置、及び作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、通信装置を搭載する搭載装置であって、前記通信装置は、産業用ネットワークにおけるマスターと接続されるスレーブと、前記スレーブの情報であるスレーブ情報と前記搭載装置を識別するための搭載装置識別情報又は前記搭載装置の稼動状況を記録した稼動ログを記憶するメモリと、前記マスターから伝送される制御データに基づいた処理を実行し、前記メモリに対するアクセスを実行する処理回路と、前記スレーブ、前記処理回路、及び前記メモリに接続され、前記メモリから前記スレーブ情報を読み出して記憶する記憶装置を備え、前記記憶装置へ読み出した前記スレーブ情報を、前記スレーブを介して前記マスターへ送信するアクセス制御回路と、を備え、前記処理回路は、前記スレーブ情報を前記記憶装置へ読み出す処理を、前記アクセス制御回路に実行させた後、前記搭載装置の搭載装置識別情報又は前記搭載装置の稼動状況を記録した稼動ログについて前記記憶装置を介さずに前記メモリへアクセスする処理を開始する、搭載装置を開示する。
また、本開示の内容は、搭載装置としての実施だけでなく、搭載装置を備える作業機としても実施し得るものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の搭載装置、作業機によれば、アクセス制御回路は、メモリから記憶装置へスレーブ情報を予め読み出しておく。アクセス制御回路は、記憶装置へ読み出しておいたスレーブ情報を適宜マスターへ送信する。これにより、スレーブ情報の読み出しと、処理回路からメモリへのアクセスが同時に発生したとしても、スレーブ情報をメモリから予め読み出しておくことでアクセスの競合が発生せず、処理回路によるメモリのアクセスを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の部品装着システムの概略構成を示す平面図である。
図2】部品装着機及びローダの概略構成を示す斜視図である。
図3】多重通信システムのブロック図である。
図4】第2スレーブのブロック図である。
図5】第2スレーブの処理内容を説明するためのフローチャートである。
図6図5における処理を実行した場合のデータの流れを示す図である。
図7】比較例の第2スレーブにおけるデータの流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の部品装着システム10の概略構成を示す平面図である。図2は、部品装着機20及びローダ13の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、図1の左右方向をX方向と称し、上下方向(前後方向)をY方向と称し、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向と称して説明する。
【0011】
図1に示すように、部品装着システム10は、生産ライン11と、ローダ13と、管理コンピュータ15とを備えている。生産ライン11は、X方向に並べられた複数の部品装着機20を有し、基板17に対する電子部品の装着等を行う。基板17は、例えば、図1に示す左側の部品装着機20から右側の部品装着機20へと搬出され、搬送中に電子部品の装着等を実行される。
【0012】
図2に示すように、部品装着機20は、装置本体部21と、基板搬送装置22と、フィーダ台23と、ヘッド部25と、ヘッド移動機構27とを備える。基板搬送装置22は、装置本体部21の上部に設けられ、基板17をX方向に搬送する。フィーダ台23は、装置本体部21の前面に設けられ、側面視がL字状の台である。フィーダ台23は、X方向に複数配列されたスロット(図示略)を備える。フィーダ台23の各スロットには、電子部品を供給するフィーダ29が装着される。フィーダ29は、例えば、電子部品を所定のピッチで収容するテープから電子部品を供給するテープフィーダである。
【0013】
ヘッド部25は、フィーダ29から供給された電子部品を吸着する吸着ノズル(図示略)を備え、吸着ノズルで吸着した電子部品を基板17に装着する。ヘッド移動機構27は、装置本体部21上において、X方向及びY方向の任意の位置にヘッド部25を移動させる。詳述すると、ヘッド移動機構27は、ヘッド部25をX方向に移動させるX軸スライド機構27Aと、ヘッド部25をY方向に移動させるY軸スライド機構27Bとを備える。X軸スライド機構27Aは、Y軸スライド機構27Bに取り付けられている。Y軸スライド機構27Bは、駆動源としてリニアモータ(図示略)を有している。X軸スライド機構27Aは、Y軸スライド機構27Bのリニアモータの駆動に基づいてY方向の任意の位置に移動する。また、X軸スライド機構27Aは、駆動源としてリニアモータ(図示略)を有している。ヘッド部25は、X軸スライド機構27Aに取り付けられ、X軸スライド機構27Aのリニアモータの駆動に基づいてX方向の任意の位置に移動する。従って、ヘッド部25は、X軸スライド機構27A及びY軸スライド機構27Bの駆動にともなって装置本体部21上の任意の位置に移動する。また、X軸スライド機構27Aは、後述する産業用ネットワークに接続される第1スレーブ51(図3参照)を備える。
【0014】
また、ヘッド部25は、X軸スライド機構27Aにコネクタを介して取り付けられ、ワンタッチで着脱可能であり、種類の異なるヘッド部25、例えば、ディスペンサヘッド等に変更できる。従って、本実施形態のヘッド部25は、装置本体部21に対して着脱可能となっている。また、ヘッド部25には、基板17を撮影するためのマークカメラ66(図3参照)が下方を向いた状態で固定されている。マークカメラ66は、ヘッド部25の移動に伴って、基板17の任意の位置を上方から撮像可能となっている。マークカメラ66が撮像した画像データGDは、装置本体部21の本体制御装置41(図3参照)において画像処理される。本体制御装置41は、画像処理によって、基板17に関する情報、装着位置の誤差等を取得する。
【0015】
また、ヘッド部25は、産業用ネットワークに接続される第2スレーブ61(図3参照)を備える。第2スレーブ61は、各種のセンサなどの素子が接続され、素子に入出力される信号を処理する。また、ヘッド部25には、吸着ノズルに吸着保持した電子部品を撮像するパーツカメラ67が設けられている。パーツカメラ67が撮像した画像データGDは、装置本体部21の本体制御装置41(図3参照)において画像処理される。本体制御装置41は、画像処理によって、吸着ノズルにおける電子部品の保持位置の誤差等を取得する。
【0016】
また、図2に示すように、部品装着機20の前面には、上部ガイドレール31と、下部ガイドレール33と、ラックギヤ35と、非接触給電コイル37とが設けられている。上部ガイドレール31は、X方向に延びる断面U字状のレールであり、開口部が下を向いている。下部ガイドレール33は、X方向に延びる断面L字状のレールであり、垂直面が部品装着機20の前面に取り付けられ、水平面が前方に伸び出している。ラックギヤ35は、下部ガイドレール33の下部に設けられ、X方向に延び、前面に複数の縦溝が刻まれたギヤである。部品装着機20の上部ガイドレール31、下部ガイドレール33及びラックギヤ35は、隣接する部品装着機20の上部ガイドレール31、下部ガイドレール33及びラックギヤ35と着脱可能に連結することができる。このため、部品装着機20は、生産ライン11に並んだ部品装着機20の数を増減することができる。非接触給電コイル37は、上部ガイドレール31の上部に設けられ、X方向に沿って配置されたコイルであり、ローダ13への電力の供給を行う。
【0017】
ローダ13は、部品装着機20に対するフィーダ29の補充及び回収を自動で行う装置であり、フィーダ29をクランプする把持部(図示略)を備える。ローダ13には、上部ガイドレール31に挿入される上部ローラ(図示略)と、下部ガイドレール33に挿入される下部ローラ(図示略)とが設けられている。また、ローダ13には、駆動源としてモータが設けられている。モータの出力軸には、ラックギヤ35と噛み合うギヤが取り付けられている。ローダ13は、部品装着機20の非接触給電コイル37から電力の供給を受ける受電コイルを備えている。ローダ13は、非接触給電コイル37から受電した電力をモータに供給する。これにより、ローダ13は、モータによってギヤを回転させることで、X方向(左右方向)へ移動することができる。また、ローダ13は、上部ガイドレール31及び下部ガイドレール33内でローラを回転させ、上下方向や前後方向の位置を保持しながらX方向へ移動することができる。
【0018】
管理コンピュータ15は、部品装着システム10を統括的に管理する装置である。例えば、生産ライン11の部品装着機20は、管理コンピュータ15の管理に基づいて、電子部品の装着作業を開始する。部品装着機20は、基板17を搬送しながらヘッド部25によって電子部品の装着作業を行う。また、管理コンピュータ15は、フィーダ29の残りの電子部品の数を監視する。管理コンピュータ15は、例えば、フィーダ29の補給が必要であると判断すると、補給が必要な部品種を収容したフィーダ29をローダ13にセットする指示を画面に表示する。ユーザは、画面を確認して、フィーダ29をローダ13にセットする。管理コンピュータ15は、所望のフィーダ29がローダ13にセットされたことを検出すると、ローダ13に対して補給作業の開始を指示する。ローダ13は、指示を受けた部品装着機20の前方まで移動し、ユーザによってセットされたフィーダ29を把持部で挟持してフィーダ台23のスロットに装着する。これにより、新たなフィーダ29が部品装着機20に補給される。また、ローダ13は、部品切れになったフィーダ29を把持部で挟持してフィーダ台23から引き出して回収する。このようにして、新たなフィーダ29の補給及び部品切れとなったフィーダ29の回収を、ローダ13によって自動的行うことができる。
【0019】
次に、部品装着機20が備える多重通信システムについて説明する。図3は、部品装着機20に適用される多重通信システムの構成を示すブロック図である。図3に示すように、部品装着機20は、当該装置を設置する場所に固定的に設けられる装置本体部21と、装置本体部21に対して相対的に移動する可動部(X軸スライド機構27A及びヘッド部25)との間のデータ伝送が多重通信システムによって行われる。尚、図3に示す多重通信システムの構成は、一例であり適宜変更可能である。例えば、Y軸スライド機構27Bやローダ13に設けられた各装置のデータを、多重通信システムにより伝送しても良い。
【0020】
装置本体部21は、本体制御装置41と、マスター43と、第1多重処理装置45等を有している。X軸スライド機構27Aには、装置本体部21のマスター43によって制御される第1スレーブ51が設けられている。また、ヘッド部25には、マスター43によって制御される第2スレーブ61が設けられている。マスター43は、産業用ネットワークに接続される第1スレーブ51及び第2スレーブ61を制御する制御データCDの伝送を統括的に制御する。産業用ネットワークは、例えば、EtherCAT(登録商標)である。なお、本開示の産業用ネットワークとしては、EtherCAT(登録商標)に限らず、例えば、MECHATROLINK(登録商標)-IIIやProfinet(登録商標)等の他のネットワーク(通信規格)を採用できる。
【0021】
本体制御装置41は、例えば、CPUを主体として構成される処理回路であり、マスター43によって収集した制御データCDや、第1多重処理装置45で受信した画像データGD等を入力し、次の制御内容(装着する電子部品の種類や装着位置など)を決定する。また、本体制御装置41は、決定した制御内容に応じた制御データCDをマスター43から送信させる。マスター43は、産業用ネットワークを介して第1スレーブ51及び第2スレーブ61へ制御データCDを送信する。
【0022】
X軸スライド機構27Aは、上記した第1スレーブ51の他に、リレー53やセンサ55を有している。第1スレーブ51は、リレー53やセンサ55などの各装置で入出力される信号を処理する。リレー53は、例えば、X軸スライド機構27Aのリニアモータのブレーキを駆動する駆動信号を出力するリミットスイッチである。リレー53は、駆動信号を出力してブレーキを駆動することで、例えば、X軸スライド機構27Aのオーバーランを抑制する。センサ55は、例えば、装置本体部21に設定された基準高さの位置に基づいて、基板17の上面の高さを計測する基板高さセンサである。第1スレーブ51は、装置本体部21のマスター43から受信した制御データCDに基づいてリレー53等を制御する。また、第1スレーブ51は、センサ55等の出力信号を処理して制御データCDとしてマスター43に向けて送信する。
【0023】
ヘッド部25は、上記した第2スレーブ61、パーツカメラ67、マークカメラ66の他に、リレー63、センサ65等を有している。第2スレーブ61は、ヘッド部25に設けられたリレー63やセンサ65等の各装置で入出力される信号を処理する。第2スレーブ61は、装置本体部21のマスター43から受信した制御データCDに基づいてリレー63等を制御する。また、第2スレーブ61は、センサ65等の出力信号を、制御データCDとしてマスター43に向けて送信する。
【0024】
次に、上記した産業用ネットワークの制御データCDやパーツカメラ67等の画像データGDを伝送する多重通信について説明する。本実施形態の部品装着機20は、装置本体部21、X軸スライド機構27A及びヘッド部25の間のデータ伝送を多重通信によって実行する。図3に示すように、装置本体部21は、上記した本体制御装置41などの他に、第1多重処理装置45と、GbE-PHY47,48とを有する。GbE-PHY47,48は、例えば、論理層と物理層のインタフェースとして機能するICである。GbE-PHY47は、X軸スライド機構27Aが有するGbE-PHY59と、LANケーブル71を介して接続されている。同様に、GbE-PHY48は、ヘッド部25が有するGbE-PHY69と、LANケーブル72を介して接続されている。LANケーブル71,72は、例えば、Gigabit Ethernet(登録商標)の通信規格に準拠したLANケーブルである。
【0025】
装置本体部21の第1多重処理装置45は、LANケーブル71を通じて、X軸スライド機構27Aの第2多重処理装置57との間で多重化データを送受信する。また、装置本体部21の第1多重処理装置45は、LANケーブル72を通じて、ヘッド部25の第3多重処理装置68との間で多重化データを送受信する。第1~第3多重処理装置45,57,68は、産業用ネットワークの制御データCDや、パーツカメラ67の画像データGD等を、例えば、時分割多重化方式(TDM:Time Division Multiplexing)で多重化して伝送する。第1多重処理装置45等は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの論理回路で構成されている。
【0026】
X軸スライド機構27Aの第2多重処理装置57は、GbE-PHY59に接続されている。また、第2多重処理装置57は、第1スレーブ51に接続されており、第1スレーブ51との間で制御データCDを入出力する。第2多重処理装置57は、制御データCDと他のデータを多重化し、LANケーブル71を通じて第1多重処理装置45(装置本体部21)へ送信する。
【0027】
また、ヘッド部25の第3多重処理装置68は、GbE-PHY69に接続されている。また、第3多重処理装置68は、マークカメラ66及びパーツカメラ67に接続されている。マークカメラ66及びパーツカメラ67は、例えば、GigE-vision(登録商標)等の画像伝送規格により、撮像した画像データGDを第3多重処理装置68に出力する。マークカメラ66及びパーツカメラ67は、例えば、装置本体部21の本体制御装置41から多重通信を介してトリガ信号を受信するのに応じて撮像を行い、撮像した画像データGDを第3多重処理装置68に出力する。また、第3多重処理装置68は、第2スレーブ61に接続されており、第2スレーブ61との間で制御データCDを入出力する。第3多重処理装置68は、画像データGDや制御データCD等の各種データを多重化し、LANケーブル72を通じて第1多重処理装置45へ送信する。
【0028】
第1多重処理装置45は、GbE-PHY47,48に接続されている。また、第1多重処理装置45は、本体制御装置41と接続されている。第1多重処理装置45は、多重通信を介して第2多重処理装置57や第3多重処理装置68から受信した多重化データを非多重化する。例えば、第1多重処理装置45は、第3多重処理装置68から受信した多重化データを非多重化し、パーツカメラ67の画像データGDを分離する。第1多重処理装置45は、分離した画像データGDを、GigE-vision(登録商標)の規格に準拠したデータ形式で本体制御装置41に出力する。
【0029】
また、第1多重処理装置45は、マスター43と接続されている。マスター43は、リレー53等の装置を制御する制御データCDの送受信を行う産業用ネットワークを構築し、配線の統合(削減)等を実現する。より具体的には、本実施形態の産業用ネットワークにおいて、マスター43から送信された制御データCDは、例えば、第1多重処理装置45、第2多重処理装置57、第1スレーブ51、第2多重処理装置57、第1多重処理装置45、第3多重処理装置68、第2スレーブ61、第3多重処理装置68、第1多重処理装置45、マスター43の各々を循環するように伝送される。例えば、第1スレーブ51は、マスター43から受信した制御データCDに読み取り及び書き込み処理を行い、ヘッド部25の第2スレーブ61に転送する。第1スレーブ51は、制御データCDに予め設定された第1スレーブ51用の読み取りのデータ位置からデータをコピーし、コピーしたデータの内容に応じてリレー53の駆動などを行う。また、第1スレーブ51は、制御データCDに予め設定された第1スレーブ51用の書き込みのデータ位置にリレー53の駆動の完了を示す情報やセンサ55の検出情報などを書き込んでヘッド部25に転送する。このように、第1スレーブ51及び第2スレーブ61は、制御データCDに読み取り及び書き込み処理を行いつつ、制御データCDを高速に交換して伝送する。尚、図3に示す産業用ネットワークの構成は、一例であり適宜変更可能である。例えば、第2スレーブ61は、第1スレーブ51を介してマスター43と接続される構成でも良い。また、マスター43により制御されるスレーブは、1つ又は3つ以上でも良い。
【0030】
次に、ヘッド部25が備える第2スレーブ61の構成について説明する。なお、X軸スライド機構27Aの第1スレーブ51は、第2スレーブ61と同様の構成となっている。しかしながら、ヘッド部25は、X軸スライド機構27Aに比べて小型化が要求される装置であり、本願に係わる技術を採用することがより効果的である。このため、以下の説明では、第2スレーブ61の構成を説明し、第1スレーブ51の構成についての説明を適宜省略する。
【0031】
図4は、第2スレーブ61のブロック図を示している。図4に示すように、第2スレーブ61は、スレーブコントローラ81と、CPU83と、不揮発性メモリ85と、アクセス制御回路87等を有している。スレーブコントローラ81は、例えば、論理層と物理層のインタフェースとして機能するPHYなど(外部IF)を介して第3多重処理装置68(図3参照)と接続されている。また、スレーブコントローラ81は、第3多重処理装置68、LANケーブル72、第1多重処理装置45などの多重通信を介してマスター43との間で制御データCDの送受信が可能となっている。
【0032】
スレーブコントローラ81は、例えば、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)といった論理回路の構築に使用されるIPコアである。スレーブコントローラ81は、例えば、マスター43から第1スレーブ51を介して(マスター43、第1スレーブ51の順に転送された後の)制御データCDを受信する。スレーブコントローラ81は、受信した制御データCDに対し読み取り及び書き込み処理を行う。スレーブコントローラ81は、例えば、制御データCDに予め設定された第2スレーブ61用の読み取りのデータ位置からデータをコピーし、コピーしたデータをCPU83へ出力する。
【0033】
CPU83は、デジタルIF89及びADコンバータ91に接続されている。デジタルIF89は、デジタル信号を入出力するためのインタフェースである。ADコンバータ91は、アナログ信号とデジタル信号との変換を行うインタフェースである。CPU83は、デジタルIF89やADコンバータ91等を介してリレー63やセンサ65(図3参照)に接続されている。CPU83は、スレーブコントローラ81から入力されたデータに基づいてリレー63等を制御する。また、CPU83は、センサ65の出力信号等をスレーブコントローラ81に出力する。スレーブコントローラ81は、制御データCDに予め設定された第2スレーブ61用の書き込みのデータ位置に、CPU83から入力したデータを書き込んでマスター43に転送する。
【0034】
CPU83は、所定のプログラムを実行することで、スレーブコントローラ81と入出力するデータに係わる処理を実行する。この所定のプログラムを記憶する記憶装置は特に限定されないが、例えば、不揮発性メモリ85でも良い。なお、以下の説明では、CPU83による制御を、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「CPU83がアクセス制御回路87を制御する」という記載は、「CPU83が、所定のプログラムを実行することで、アクセス制御回路87に対する指令を出力し、アクセス制御回路87を制御するということを意味する場合がある。
【0035】
不揮発性メモリ85(本願のメモリの一例)は、アクセス制御回路87に接続されている。不揮発性メモリ85は、例えば、EEPROMである。なお、本願のメモリは、EEPROMに限らず、FLASHメモリ、FRAM(登録商標)、MRAM等でも良い。不揮発性メモリ85には、スレーブ情報93、稼動ログ95、ヘッド固有値96等の各種のデータが記憶されている。
【0036】
スレーブ情報93は、例えば、スレーブコントローラ81がどのようなスレーブであるのかを示す情報であり、EtherCAT(登録商標)スレーブ情報(ESI)である。スレーブ情報93は、スレーブコントローラ81を識別するための固有値や、スレーブコントローラ81の機能を検出するための情報である。尚、スレーブ情報93の内容は、特に限定されない。スレーブ情報93は、例えば、制御データCDの伝送に用いるアドレス情報でも良く、スレーブコントローラ81以外の第2スレーブ61が備える装置の情報でも良い。また、スレーブ情報93は、例えば、産業用ネットワークの通信規格で定められた情報を含み、通信規格の種類によって変更される。
【0037】
稼動ログ95は、第2スレーブ61を搭載する搭載装置、即ち、ヘッド部25の稼動状況を記憶したものである。CPU83は、例えば、制御データCDに基づいた制御の結果情報、ヘッド部25の動作情報などを、稼動ログ95として記憶する。具体的には、CPU83は、例えば、ヘッド部25の吸着ノズルをZ方向へ移動させたストローク回数(吸着、装着回数)、パーツカメラ67やマークカメラ66で撮像した撮像回数、リレー63の稼動回数、センサ65の検出値などを、稼動ログ95に記憶する。CPU83は、ヘッド部25の動作等を常時監視し、後述するアクセス制御回路87を介して稼動ログ95を不揮発性メモリ85に書き込む。
【0038】
尚、本願における通信装置を備える搭載装置は、ヘッド部25に限らない。例えば、搭載装置としてX軸スライド機構27Aを採用しても良い。この場合、第1スレーブ51のCPU83は、X軸スライド機構27Aのスライド移動の回数、加速の回数などを稼動ログ95として記憶しても良い。また、例えば、搭載装置として基板搬送装置22を採用した場合、基板搬送装置22に搭載されたスレーブのCPU83は、基板搬送装置22が基板17を搬送した回数を稼動ログ95として記憶しても良い。また、例えば、搭載装置としてローダ13を採用した場合、ローダ13に搭載されたスレーブのCPU83は、ローダ13によるフィーダ29の交換回数、各部品装着機20への移動回数を稼動ログ95として記憶しても良い。
【0039】
ヘッド固有値96(本開示の搭載装置識別情報の一例)は、例えば、第2スレーブ61を搭載する搭載装置、即ち、ヘッド部25を識別するための情報である。具体的には、ヘッド部25のシリアル番号、型番、製品名等である。ヘッド固有値96は、例えば、ヘッド部25の製造時に、設定用のPCを第2スレーブ61に接続し、不揮発性メモリ85に書き込まれる。
【0040】
また、アクセス制御回路87は、スレーブIF101と、メモリIF102と、バス105と、RAM107(本願の記憶装置の一例)とを備えている。スレーブIF101は、RAM107をスレーブコントローラ81に接続するインタフェースである。また、メモリIF102は、RAM107を不揮発性メモリ85に接続するインタフェースである。スレーブIF101及びメモリIF102は、例えば、アイ・スクエアド・シー(Inter-Integrated Circuit、I2C)とも称されるシリアルバス通信方式により、通信を行なう。
【0041】
バス105は、メモリIF102と、CPU83を接続するインタフェースである。バス105は、例えば、Avalon(登録商標)バスである。CPU83は、バス105を介して不揮発性メモリ85からRAM107へのデータの読み出しが可能となっている。CPU83は、例えば、不揮発性メモリ85のアドレス値やデータサイズを指定した指令を、バス105を介してアクセス制御回路87へ出力する。アクセス制御回路87は、CPU83からの指令に基づいて、例えば、不揮発性メモリ85からスレーブ情報93を読み出してRAM107に記憶する。そして、後述するように、アクセス制御回路87は、マスター43からスレーブコントローラ81へスレーブ情報93を要求する指令が受信された場合に、RAM107に記憶したスレーブ情報93をマスター43へ送信する。尚、スレーブ情報93を記憶する記憶装置は、RAM107のような揮発性メモリに限らず、EEPROMのような不揮発性メモリでも良い。
【0042】
次に、上記した構成の第2スレーブ61における処理について説明する。図5は、第2スレーブ61における処理の一例を示している。また、図6は、図5における処理を実行した場合のデータの流れを示している。
【0043】
まず、図5のステップ(以下、単に「S」と記載する)11において、第2スレーブ61は、起動処理を行う。部品装着機20は、例えば、部品装着システム10の起動にともなって電源を投入されると、装置本体部21、X軸スライド機構27A、ヘッド部25等へ電力を供給しシステムを起動する。本体制御装置41は、システムの起動時に、図3に示す多重通信回線の確立などを実行する。第2スレーブ61は、ヘッド部25に電力を供給されると、スレーブコントローラ81の論理回路の構築などの起動処理を実行する。第2スレーブ61のCPU83は、電力を供給されると、不揮発性メモリ85等から所定のプログラムを読み出して実行し、初期設定を行なう。
【0044】
次に、CPU83は、アクセス制御回路87に対し、不揮発性メモリ85からスレーブ情報93を読み出す処理を実行させる。CPU83は、不揮発性メモリ85のアドレス値等を指定した指令をアクセス制御回路87へ出力する。アクセス制御回路87は、CPU83からの指令に基づいて、不揮発性メモリ85からスレーブ情報93を読み出し、読み出したスレーブ情報93をRAM107に記憶する。
【0045】
第2スレーブ61は、S13を実行した後、S15と、S17を並列的に処理する。S15において、第2スレーブ61は、マスター43からの要求に応じて、S13でRAM107に記憶したスレーブ情報93をマスター43へ送信する。例えば、本体制御装置41は、多重通信回線の確立を検出すると、マスター43による処理を開始させる。マスター43は、確立した多重通信回線を介して各スレーブのスレーブ情報93を取得し、産業用ネットワークの構築を開始する。
【0046】
マスター43は、ネットワーク上で検出した第1スレーブ51や第2スレーブ61に対して、スレーブ情報93の送信を要求する。マスター43から第1スレーブ51等へスレーブ情報93を要求する方法は、特に限定されない。例えば、マスター43は、産業用ネットワークの通信規格で定められた制御コマンドを第1スレーブ51等へ送信することで、スレーブ情報93を要求しても良い。第2スレーブ61のスレーブコントローラ81は、マスター43からスレーブ情報93の要求を受信すると、スレーブIF101を介してRAM107からスレーブ情報93を読み出しマスター43へ送信する(S15)。マスター43は、第1スレーブ51及び第2スレーブ61から受信したスレーブ情報93に基づいて、産業用ネットワークに接続されているスレーブコントローラ81の種類、サポートしている通信プロトコルなどを検出し、制御データCDの送信先アドレスの設定などを行う。
【0047】
従って、本実施形態のアクセス制御回路87は、マスター43から第2スレーブ61に対してスレーブ情報93の読み出しを指示する要求が受信された場合に、RAM107へ読み出したスレーブ情報93を、第2スレーブ61を介してマスター43へ送信する(S15)。これによれば、マスター43からの要求に応じて、即ち、マスター43が必要となったタイミングで、予め不揮発性メモリ85からRAM107へ読み出しておいたスレーブ情報93をマスター43へ送信できる。
【0048】
一方、第2スレーブ61は、S17において、ヘッド固有値96の読み出しを実行する。例えば、マスター43は、スレーブ情報93に基づいて、産業用ネットワークの設定(各スレーブコントローラ81の送信先アドレスの設定など)を完了すると、第1スレーブ51や第2スレーブ61を搭載している搭載装置を識別する搭載装置識別情報を取得する。マスター43は、産業用ネットワークの制御データCDにより、第1スレーブ51や第2スレーブ61に対して搭載装置識別情報の送信を要求する。第2スレーブ61の場合、マスター43は、ヘッド固有値96の送信を第2スレーブ61に要求する。スレーブコントローラ81は、ヘッド固有値96を要求する制御データCDを受信すると、ヘッド固有値96の読み出しをCPU83に指令する(S17)。
【0049】
CPU83は、不揮発性メモリ85におけるヘッド固有値96が記憶されたアドレス値や、ヘッド固有値96のデータサイズを指定した指令を、バス105を介してアクセス制御回路87へ出力する(S17)。アクセス制御回路87は、指令を受信すると、不揮発性メモリ85からヘッド固有値96を読み出してCPU83へ出力する。CPU83は、アクセス制御回路87から受信したヘッド固有値96をスレーブコントローラ81へ出力する。スレーブコントローラ81は、例えば、制御データCDの書き込み用のデータ位置に、ヘッド固有値96を設定してマスター43へ送信する(S17)。これにより、マスター43は、例えば、第2スレーブ61から受信したヘッド固有値96に基づいて、ヘッド部25の種類、型名、ヘッド部25に指令を送信する場合の通信プロトコルなどを検出し、ヘッド部25を適切に制御して装着作業を行なうことができる。
【0050】
部品装着機20は、第2スレーブ61を搭載するヘッド部25や、第1スレーブ51を搭載するX軸スライド機構27Aから搭載装置識別情報(ヘッド固有値96など)を取得した後、電子部品を基板17に装着する装着作業を開始する。例えば、部品装着機20は、ヘッド固有値96の取得を完了させ、装着作業を開始できる状態になると、準備が完了した旨を部品装着システム10の管理コンピュータ15へ通知する。管理コンピュータ15は、生産ライン11の各部品装着機20から準備完了通知を受信すると、装着作業に必要な制御情報を部品装着機20へ送信し、装着作業を開始させる。ここでいう制御情報とは、生産する基板の種類の情報、電子部品の種類の情報、電子部品を装着する装着位置の情報などである。
【0051】
第2スレーブ61は、S17を実行した後、S19を実行する。例えば、各部品装着機20の第1スレーブ51や第2スレーブ61のCPU83は、産業用ネットワークの構築が完了すると、稼動ログ95を不揮発性メモリ85へ記憶する処理を開始する(S19)。CPU83は、例えば、電子部品の装着作業において吸着ノズルをストロークさせた回数、マークカメラ66で撮像した回数などを稼動ログ95として記憶する。あるいは、第1スレーブ51のCPU83は、X軸スライド機構27Aの移動回数を稼動ログ95として第1スレーブ51の不揮発性メモリ85に記憶する。
【0052】
尚、第1スレーブ51や第2スレーブ61などの全てのスレーブが、稼動ログ95の記憶を実行しなくとも良い。また、稼動ログ95に記憶する情報は、上記した情報に限らない。例えば、第2スレーブ61のCPU83は、制御データCDを用いてマスター43から第2スレーブ61に指示した制御内容を稼動ログ95に記憶しても良い。より具体的には、CPU83は、リレー63を駆動するコマンドの内容、コマンドを受信した時間、実行結果を稼動ログ95に記憶しても良い。また、CPU83は、センサ65の検出内容や検出時間を稼動ログ95に記憶しても良い。
【0053】
第2スレーブ61は、S19を実行した後、S21を実行する。第2スレーブ61は、処理を終了するか否かを判定する(S21)。例えば、部品装着機20の電源が切られるまで処理を継続する設定の場合、第2スレーブ61は、部品装着機20の電源が切られるまでS21で否定判定し(S21:NO)、S19の処理を繰り返し実行する。これにより、第2スレーブ61は、部品装着機20が電源ON状態において、稼動ログ95の記憶を継続する。第2スレーブ61は、部品装着機20の電源が切られたと判定すると(S21:YES)、S19の処理を終了する。
【0054】
ここで、上記したように、本実施形態のCPU83は、スレーブ情報93をRAM107へ読み出す処理(S13)を、アクセス制御回路87に実行させた後、スレーブ情報93以外のデータ(稼動ログ95、ヘッド固有値96)についてRAM107へアクセスする処理(S17やS19)を開始する。これによれば、CPU83は、スレーブ情報93以外のデータについて不揮発性メモリ85からのデータの読み出しや、不揮発性メモリ85へのデータの書き込みを実行する前に、スレーブ情報93の読み出しをアクセス制御回路87に実行させる。これにより、アクセスを開始する前にスレーブ情報93をRAM107へ読み出しておき、不揮発性メモリ85のアクセスの競合をより確実に抑制することができる。
【0055】
一方、第2スレーブ61は、上記したS17やS19の処理と並列的に、S15を実行した後にS23を実行する。S23において、第2スレーブ61は、スレーブ情報93の再送を要求されたか否かを判定する。ここで、EtherCAT(登録商標)などの産業用ネットワークにおいては、スレーブコントローラ81のホットコネクトが可能となっている。ここでいうホットコネクトとは、例えば、部品装着機20のシステムが稼働中である状態において、スレーブコントローラ81を搭載した装置(例えば、ヘッド部25)の脱着を可能にする機能である。ホットコネクトが行なわれた場合、スレーブコントローラ81の着脱によって産業用ネットワークのトポロジが変更される。マスター43は、産業用ネットワークのトポロジの変更を検出すると、スレーブ情報93の再取得を実行し、産業用ネットワークの再構築を実行する。
【0056】
そこで、第2スレーブ61は、S23において、マスター43からスレーブ情報93を要求されたか否かを判定する。本実施形態の部品装着機20では、ヘッド部25がX軸スライド機構27Aに対して着脱可能となっている。このため、部品装着機20の電源を投入したままヘッド部25を着脱すると、スレーブ情報93の再取得が実行される。また、仮に、X軸スライド機構27Aや第1スレーブ51が着脱されると、その着脱によってスレーブ情報93の再取得が実行される。また、例えば、1台の部品装着機20が2台のヘッド部25を備える構成(ツーヘッドの構成)であれば、2つのヘッド部25の一方を着脱した際にスレーブ情報93の再取得が実行される。また、例えば、ローダ13自体やローダ13の一部を、種類の異なるもの(トレイ型のローダ13など)に交換する場合にもスレーブ情報93の再取得が実行される。
【0057】
この場合、例えば、着脱によって交換された後のデバイス(ヘッド部25など)は、部品装着機20に装着され電源を供給された後に図5の処理を開始し、上記したS11~S15の処理を実行してスレーブ情報93をマスター43に送信し起動できる。一方で、着脱されない(交換されない)デバイスは、産業用ネットワークに接続されたままの状態であっても、他のデバイスが産業用ネットワークから切断され再度接続されることで、マスター43からスレーブ情報93を要求される。このような着脱されないデバイスでは、S17のヘッド固有値の読み出しや、S19の稼動ログ95の書き込み、即ち、不揮発性メモリ85へのアクセスを実行している際に、スレーブ情報93を要求される可能性がある。
【0058】
図7は、比較例の第2スレーブ121の構成におけるデータの流れを示している。図7に示すように、比較例の第2スレーブ121は、アクセス制御回路87を備えていない。CPU83は、スレーブコントローラ81を介して不揮発性メモリ85へのアクセスを実行する。例えば、図7に示すS31において、マスター43からスレーブコントローラ81へスレーブ情報93を要求する処理が発生する。それと同時に、S33に示すように、ヘッド固有値96の読み出し処理が発生する。あるいは、S35に示すように、稼動ログ95の書き込み処理が発生する。
【0059】
S33の処理と、S35の処理は、CPU83が主体となって実行する処理である。このため、例えば、CPU83は、S33の処理とS35の処理を排他的に制御できる。一方で、S31の処理は、マスター43からの要求に基づいて、スレーブコントローラ81が、不揮発性メモリ85へ直接行なう処理である。このため、S33やS35の処理とは関係なくS31の処理が発生し、スレーブコントローラ81が、CPU83の処理状態とは関係なく実行する。特に、上記したように、ホットコネクトによってスレーブコントローラ81の着脱が発生すると、マスター43が、各スレーブコントローラ81へスレーブ情報93を要求する場合がある。その結果、不揮発性メモリ85への同時アクセスが発生し、アクセスの競合が発生する。スレーブ情報93の読み出しの失敗、ヘッド固有値96の読み出しの失敗、稼動ログ95の書き込みの失敗などが発生する。
【0060】
一方で、上記したように、本実施形態の第2スレーブ61では、予め起動時にスレーブ情報93をRAM107にコピーする(S13)。そして、図5のS23において、マスター43からスレーブ情報93を要求されると、第2スレーブ61は、S15を再度実行する。スレーブコントローラ81は、アクセス制御回路87のRAM107からスレーブ情報93を読み出してマスター43へ送信する(S15)。即ち、スレーブ情報93の送信において、不揮発性メモリ85のアクセスが発生しない。従って、CPU83は、S17やS19の処理を実行してもアクセスの競合が発生せずに、不揮発性メモリ85へ適切にアクセスすることができる。
【0061】
上記したように、本実施形態では、スレーブ情報93として、スレーブコントローラ81を識別するための固有値を採用している。これによれば、マスター43は、産業用ネットワークの接続時などに、アクセス制御回路87のRAM107からスレーブコントローラ81の固有値(スレーブ情報93)を安定して読み出すことができる。マスター43は、固有値に基づいて、産業用ネットワークに接続されたスレーブコントローラ81の種類や機能を判定することができ、スレーブコントローラ81との接続やスレーブコントローラ81に対する制御を適切に行なうことができる。
【0062】
また、本実施形態の不揮発性メモリ85は、第2スレーブ61を搭載するヘッド部25を識別するためのヘッド固有値96を記憶する。CPU83は、マスター43からスレーブコントローラ81に対してヘッド固有値96の読み出しを指示する制御データCDが受信された場合に、アクセス制御回路87を介して不揮発性メモリ85からヘッド固有値96を読み出す。CPU83は、読み出したヘッド固有値96を、スレーブコントローラ81を介してマスター43へ送信する。
【0063】
これによれば、不揮発性メモリ85は、スレーブ情報93の他に、第2スレーブ61を搭載するヘッド部25を識別するヘッド固有値96の記憶にも共用できる。スレーブ情報93を予めアクセス制御回路87のRAM107へ記憶させておくことで、CPU83は、アクセス制御回路87を介して不揮発性メモリ85からヘッド固有値96をいつでも読み出すことができ、読み出したヘッド固有値96をマスター43へ送信できる。マスター43側では、ヘッド固有値96に基づいて、ヘッド部25の種類、機能、制御コマンドの種類などを判定でき、ヘッド部25に対する制御を適切に行なうことができる。
【0064】
また、本実施形態のCPU83は、第2スレーブ61を搭載するヘッド部25の稼動に係わる稼動ログ95を、アクセス制御回路87を介して不揮発性メモリ85へ書き込む(S19)。これによれば、CPU83は、ヘッド部25の稼動ログ95の記憶に不揮発性メモリ85を用いる。スレーブ情報93を予めアクセス制御回路87のRAM107へ記憶させておくことで、CPU83は、稼動ログ95を安定的に不揮発性メモリ85に書き込むことができる。即ち、稼動ログ95の書き込み処理の失敗などを抑制できる。これにより、ヘッド部25の稼動状況を、稼動ログ95に適切に残すことができる。
【0065】
また、本実施形態の第2スレーブ61は、電子部品を基板17に装着する作業を行なうヘッド部25に設けられる。電子部品の小型化、部品装着機20の小型化、ヘッド部25の作業スピードの高速化などの要求から、電子部品を基板17に装着するヘッド部25は、より小型化が要求されている。ここで、スレーブ情報93と、その他の情報(稼動ログ95やヘッド固有値96)を別々のメモリに記憶すれば、予めスレーブ情報93を読み出す必要がなく、アクセスの競合も発生しない。しかしながら、メモリの増加は、メモリ自体の個数の増加、メモリと接続するインタフェースの増加を招く。結果として第2スレーブ61の大型化を招く。これに対し、小型化が特に要求されるヘッド部25が備える第2スレーブ61において、スレーブ情報93を予め読み出すアクセス制御回路87を設けることで、メモリ数の低減を図り、ヘッド部25の小型化をより確実に実現できる。
【0066】
そして、第2スレーブ61は、S23において、マスター43からスレーブ情報93が要求されていないと判定すると(S23:NO)、S24を実行する。第2スレーブ61は、S21と同様に、処理を終了するか否かを判定する(S24)。例えば、第2スレーブ61は、部品装着機20の電源が切られるまでの間、S21で否定判定し(S24:NO)、S23の処理を繰り返し実行する。これにより、第2スレーブ61は、稼動ログ95の書き込み処理と、スレーブ情報93の再送処理とを並列的に実行することができる。第2スレーブ61は、部品装着機20の電源が切られたと判定すると(S24:YES)、処理を終了する。第2スレーブ61は、S24及びS21の両方で肯定判定すると、図5に示す処理を終了する。これにより、部品装着機20の稼働時において、不揮発性メモリ85に対するアクセスの競合を抑制することができる。
【0067】
因みに、部品装着機20は、作業機の一例である。ヘッド部25は、搭載装置、装着ヘッド、及び可動部の一例である。第2スレーブ61は、通信装置の一例である。スレーブコントローラ81は、スレーブの一例である。CPU83は、処理回路の一例である。不揮発性メモリ85は、メモリの一例である。ヘッド固有値96は、搭載装置識別情報の一例である。RAM107は、記憶装置の一例である。
【0068】
以上、上記した本実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、アクセス制御回路87は、第2スレーブ61の起動時において、スレーブ情報93を不揮発性メモリ85から読み出してRAM107へ記憶する(S13)。アクセス制御回路87は、RAM107へ読み出したスレーブ情報93を、第2スレーブ61を介してマスター43へ送信する(S15)。
【0069】
これによれば、不揮発性メモリ85は、第2スレーブ61(スレーブコントローラ81)に係わるスレーブ情報93を記憶しており、マスター43からスレーブ情報93をアクセスされる。また、不揮発性メモリ85は、CPU83からもアクセスされる。即ち、マスター43とCPU83とで共用して不揮発性メモリ85を使用する。これに対し、アクセス制御回路87は、不揮発性メモリ85からRAM107へスレーブ情報93を予め読み出しておく。そして、アクセス制御回路87は、RAM107へ読み出しておいたスレーブ情報93をマスター43へ送信する。これにより、スレーブ情報93の読み出しと、CPU83から不揮発性メモリ85へのアクセスが同時に発生したとしても、スレーブ情報93を不揮発性メモリ85から予め読み出しておくことでアクセスの競合が発生せず、CPU83による不揮発性メモリ85のアクセスを行なうことができる。従って、不揮発性メモリ85に対するアクセスの競合を抑制し、スレーブ情報93を記憶する用途以外にも不揮発性メモリ85を使用できる。
【0070】
尚、本開示は上記の実施例に限定されるものではなく、本願の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、本開示における搭載装置とは、ヘッド部25に限らず、X軸スライド機構27A、基板搬送装置22、フィーダ29等を採用できる。フィーダ29を採用した場合、CPU83は、フィーダ29から電子部品を供給した回数を稼動ログ95として記憶しても良い。
また、スレーブコントローラ81及びアクセス制御回路87は、マスター43から第2スレーブ61に対してスレーブ情報93の読み出しを指示する要求が受信された場合に、スレーブ情報93をマスター43へ送信したが(S15)、これに限らない。スレーブコントローラ81やアクセス制御回路87は、例えば、S13のスレーブ情報93の読み出しが完了したことを条件として、マスター43へスレーブ情報93を送信しても良い。即ち、マスター43からの要求を必要とせず、所定の処理のタイミングでスレーブ情報93をマスター43へ自発的に送信しても良い。この場合にも、予めスレーブ情報93をRAM107へ読み出しておくことで不揮発性メモリ85に対するアクセスの競合が発生せず、CPU83による不揮発性メモリ85のアクセスを行なうことができる。。
また、スレーブ装置をローダ13に設けてローダ13の動作を制御しても良い。即ち、ローダ13を産業用ネットワークに接続しても良い。この場合、CPU83は、ローダ13の移動回数、フィーダ29の交換回数などを稼動ログ95に記憶しても良い。
また、部品装着機20は、ローダ13を備えない構成でも良い。この場合、作業員が手作業でフィーダ29を交換する構成でも良い。
また、CPU83は、ヘッド固有値96の読み出しと、稼動ログ95の書き込みの少なくとも一方を実行する構成でも良い。また、CPU83は、ヘッド固有値96の読み出し、及び稼動ログ95の書き込み以外の用途で不揮発性メモリ85を使用しても良い。例えば、CPU83は、エラーや警告の履歴を不揮発性メモリ85に書き込んでも良い。
【0071】
また、CPU83は、スレーブ情報93を読み出す処理(S13)を、S17やS19の処理前に実行したが、これに限らない。例えば、CPU83が、ヘッド固有値96を読み出した後、スレーブ情報93をRAM107に読み出す処理を実行しても良い。
また、ヘッド部25は、装置本体部21に対して脱できない構成でも良い。
また、稼動ログ95の書き込みやヘッド固有値96の読み出しは、CPU83以外の装置、例えば、スレーブコントローラ81が実行しても良い。
また、多重通信回線は、Gigabit Ethernet(登録商標)に限らず、例えば、光ファイバーケーブルを用いた光通信でも良い。また、多重通信回線は、有線通信に限らず無線通信でも良い。
また、部品装着機20は、多重通信システムを備えなくとも良い。この場合、マスター43は、多重通信回線を介さずに、第1スレーブ51等の間で制御データCDを送受信しても良い。
【0072】
また、上記実施例では本開示における作業機として、電子部品を基板17に装着する部品装着機20を採用した例について説明した。しかしながら、本開示における作業機は、部品装着機20に限定されるものではなく、基板17にはんだを塗布するはんだ印刷装置などの他の作業機を採用することができる。また、作業機は、例えば、工作機械や組立て作業を実施するロボットでも良い。
【符号の説明】
【0073】
17 基板、20 部品装着機(作業機)、21 装置本体部、25 ヘッド部(搭載装置、装着ヘッド、可動部)、43 マスター、51 第1スレーブ(通信装置)、61 第2スレーブ(通信装置)、81 スレーブコントローラ(スレーブ)、83 CPU(処理回路)、85 不揮発性メモリ(メモリ)、93 スレーブ情報、96 ヘッド固有値(搭載装置識別情報)、107 RAM(記憶装置)、CD 制御データ。
図1
図2
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図4
図5
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図7