(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-22
(45)【発行日】2023-01-05
(54)【発明の名称】風力タービン翼を検査するための方法および装置、ならびにそれらの機器および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/46 20060101AFI20221223BHJP
【FI】
G01N29/46
(21)【出願番号】P 2022551545
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 SG2020050785
(87)【国際公開番号】W WO2021137760
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】201911420554.6
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522178636
【氏名又は名称】エンヴィジョン デジタル インターナショナル ピーティーイー.エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】ENVISION DIGITAL INTERNATIONAL PTE.LTD.
【住所又は居所原語表記】1 Harbourfront Avenue,#17-01 Keppel Bay Tower,Singapore 098632(SG)
(73)【特許権者】
【識別番号】522178647
【氏名又は名称】シャンハイ エンヴィジョン デジタル シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENVISION DIGITAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.15,Lane 55,Chuanhe Road China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone Shanghai(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】クイ,ウェイユー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シュー
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,チンシャン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ジョンジー
(72)【発明者】
【氏名】アイ,ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アオ,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジーメン
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519292(JP,A)
【文献】特開2020-172861(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051725(US,A1)
【文献】特開2017-110920(JP,A)
【文献】特開2019-159145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01H 3/00 - G01H 3/14
G01H 5/00
G01H 17/00
G01M 99/00
F03D 1/00 - F03D 80/80
G06N 20/00 - G06N 20/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン翼を検査するための方法であって、前記風力タービン翼は風力発電装置の翼であって、前記風力発電装置は
前記風力タービン翼から離れて取り付けられた収音装置を備えたタワーをさらに含んでおり、
前記方法は、
前記収音装置を用いて前記風力タービン翼への風の衝突に応じた音響信号を収集するステップであって、前記音響信号は風が前記風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号を含む前記ステップと;
前記音響信号に基づいて周波数スペクトログラムを生成するステップと;
損傷認識モデルに基づいて前記周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって前記風力タービン翼の損傷認識結果を取得するステップであって、前記損傷認識モデルはニューラルネットワークモデルを訓練することによって得られる前記ステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記音響信号に基づいて前記周波数スペクトログラムを生成する前記ステップは、
信号解析アルゴリズムを呼ぶことによって前記音響信号によって形成された時間領域信号図から信号エンベロープを抽出するステップと;
時間領域において前記信号エンベロープに波の谷が現れる点の位置を分割点として決定するステップと;
前記音響信号を前記周波数スペクトログラムに変換し、前記分割点に基づいて前記周波数スペクトログラムをセグメント化することによってセグメント化された周波数スペクトログラムを取得するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記損傷認識モデルに基づいて前記周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって前記風力タービン翼の前記損傷認識結果を取得する前記ステップは、
前記セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、前記風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因を計算するステップであって、前記音響スペクトル相違要因は前記風力タービン翼の損傷度を表す前記ステップと;
前記音響スペクトル相違要因が弁別閾値よりも大きい場合は、前記損傷認識モデルに基づいて前記セグメント化された周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって前記風力タービン翼の前記損傷認識結果を取得するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セグメント化された周波数スペクトログラムはセグメント化の後のn個の風力タービン翼の周波数スペクトル領域を含み(ただし、nは自然数とする);
前記セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、前記風力タービン翼への風の衝突に応じた前記音響スペクトル相違要因を計算する前記ステップは、
n個の周波数スペクトル領域の信号ピークを抽出するステップと;
前記n個の周波数スペクトル領域の前記信号ピークに基づいて、前記音響信号の時間領域因子および周波数領域因子を計算するステップと;
前記時間領域因子と前記周波数領域因子の加重平均を前記音響スペクトル相違要因として決定するステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
m個の風力タービン翼が前記風力発電装置に配置され(ただし、mは自然数とする);
前記n個の周波数スペクトル領域の前記信号ピークに基づいて、前記音響信号の前記時間領域因子を計算する前記ステップは、
前記風力タービン翼の各々に対応する前記周波数スペクトル領域の少なくとも2つの信号ピークの中央値を決定するステップと;
前記m個の風力タービン翼に対応するm個の中央値から最大ピークおよび最小ピークを決定するステップと;
前記最小ピークに対する前記最大ピークの比率を前記時間領域因子として決定するステップとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
m個の風力タービン翼が前記風力発電装置に配置され(ただし、mは自然数とする);
前記n個の周波数スペクトル領域の前記信号ピークに基づいて、前記音響信号の前記周波数領域因子を計算する前記ステップは、
m個の周波数スペクトル領域の各2つの隣接する周波数スペクトル領域の信号ピークから最大ピークを取得し、前記最大ピークを候補ピークとして決定する(ただし、mは自然数とする)ステップと;前記候補ピークの少なくとも2つの中央値を前記周波数領域因子として決定するステップ;または
前記セグメント化された周波数スペクトログラムの信号分布と理論分布との間の相対エントロピーを計算し、前記相対エントロピーを前記周波数領域因子として決定するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、前記風力タービン翼への風の衝突に応じた前記音響スペクトル相違要因を計算する前記ステップは、
前記セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、前記音響信号の信号対雑音比を計算するステップと;
前記信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも大きい場合、前記セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、前記風力タービン翼への風の衝突に応じた前記音響スペクトル相違要因を計算するステップと;
前記信号対雑音比が前記信号対雑音比閾値よりも小さい場合、前記収音装置は故障に遭っていると判断するステップとを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
風力タービン翼を検査するための装置であって、前記風力タービン翼は風力発電装置の翼であって、前記風力発電装置は
前記風力タービン翼から離れて取り付けられた収音装置を備えたタワーをさらに含んでおり;
前記装置は、
前記収音装置を用いて前記風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集するように構成された収集モジュールであって、前記音響信号は風が前記風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号を含む前記収集モジュールと;
前記音響信号に基づいて周波数スペクトログラムを生成するように構成された生成モジュールと;
損傷認識モデルに基づいて前記周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって前記風力タービン翼の損傷認識結果を取得するように構成された認識モジュールであって、前記損傷認識モデルはニューラルネットワークモデルを訓練することによって得られる前記認識モジュールとを含む、装置。
【請求項9】
風力発電装置であって、
収音装置と;
前記収音装置に通信可能に接続されたメモリと;
前記メモリに通信可能に接続されたプロセッサとを含み、
前記収音装置は、前記風力発電装置の前記風力タービン翼への風の衝突に応じた音響信号を収集し、前記メモリに前記音響信号を保存するように構成されており;
前記メモリは、実行可能命令と前記音響信号を保存するように構成されており;
前記プロセッサは、前記メモリに保存された前記実行可能命令をロードして実行するように構成されて、請求項1~7のいずれか一項に記載の前記風力タービン翼を検査するための前記方法を実行する、風力発電装置。
【請求項10】
少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット、または命令セットを保存する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット、または前記命令セットは、プロセッサによってロードされて実行されると、前記プロセッサに請求項1~7のいずれか一項に記載の前記風力タービン翼を検査するための前記方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は応用分野に関し、特に、風力タービン翼を検査するための方法および装置、ならびにそれらの機器および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の環境保護団体の要請に応じて、中国は、環境に優しいエネルギー、例えば技術の成熟した風力発電などの開発と使用に取り組んでいる。
【0003】
風力発電は風力タービン次第であり、風力タービン翼は風力タービンの風力捕捉能力および効率を決定する。したがって、風力タービン翼の状態監視は非常に重要である。風力タービン翼を検査するための従来の方法は手動の検査方法であり、風力タービン翼は技術者による目視観測や音識別によって定期的に検査される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この手動の検査方法は運転および維持費が高く、またリアルタイムで風力タービン翼の健全状態を監視することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、手動の検査方法の運転および維持費を削減すること、およびリアルタイムで風力タービン翼の健全状態を監視することができる、風力タービン翼を検査するための方法および装置、ならびにそれらの機器および記憶媒体を提供する。
【0006】
本発明の一態様によれば、風力タービン翼を検査するための方法が提供されており、風力タービン翼は風力発電装置の翼であって、風力発電装置は収音装置を備えたタワーをさらに含んでいる。前記方法は、
収音装置を用いて風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集するステップであって、音響信号は風が風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号を含むステップと;
音響信号に基づいて周波数スペクトログラムを生成するステップと;
損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果を取得するステップであって、損傷認識モデルはニューラルネットワークモデルを訓練することによって得られるステップとを含む。
【0007】
本発明の別の態様によれば、風力タービン翼を検査するための装置が提供されており、風力タービン翼は風力発電装置の翼であって、風力発電装置は収音装置を備えたタワーをさらに含んでいる。前記装置は、
収音装置を用いて風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集するように構成された収集モジュールであって、音響信号は風が風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号を含む収集モジュールと;
音響信号に基づいて周波数スペクトログラムを生成するように構成された生成モジュールと;
損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果を取得するように構成された認識モジュールであって、損傷認識モデルはニューラルネットワークモデルを訓練することによって得られる認識モジュールとを含む。
【0008】
本発明の別の態様によれば、風力発電装置が提供される。風力発電装置は、
収音装置と;収音装置に通信可能に接続されたメモリと;メモリに通信可能に接続されたプロセッサとを含んでおり、
収音装置は、風力発電装置の風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集し、メモリに音響信号を保存するように構成されており;
メモリは、実行可能命令と音響信号を保存するように構成されており;
プロセッサは、メモリに保存された実行可能命令をロードして実行するように構成されて、上記のような風力タービン翼を検査するための方法を実行する。
【0009】
またさらなる態様では、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、そこに少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット、または命令セットを保存し、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット、または命令セットは、プロセッサによってロードされて実行されると、プロセッサに上記のような風力タービン翼を検査するための方法を実行させる。
【0010】
本発明の実施態様による技術的解決手段は、少なくとも以下の有益な効果をもたらす。
【0011】
前記方法では、風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号が収音装置を用いて収集され;音響信号に対応する周波数スペクトログラムが生成され;損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果が周波数スペクトログラムから得られる。それ故、手動の検査をせずに周波数スペクトログラムに基づいて風力タービン翼の損傷タイプが正確に認識される。したがって、人材が削減される。その上、風力タービン翼の健全状態をリアルタイムで監視することができる。さらに、この方法では、いかなる風力タービン運転データにも頼らずに音響信号に基づいて風力タービン翼の損傷が認識されるので、風力タービン翼の損傷の検出中の機械計算量が減少する。
【0012】
本発明の実施形態における技術的解決手段をより明確に説明するため、以下に、実施形態を説明するのに必要な添付図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における添付図面は単に本発明のいくつかの実施形態を示しているにすぎず、当業者であれば創意工夫なしにこれらの添付図面から他の図面をさらに引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一例示的実施形態による風力発電システムの構造図である。
【
図2】本発明の一例示的実施形態による風力タービン翼を検査するための方法の流れ図である。
【
図3】本発明の一例示的実施形態による音響信号の時間領域信号図である。
【
図4】本発明の一例示的実施形態による音響信号の周波数スペクトログラムである。
【
図5】本発明の一例示的実施形態による損傷タイプを認識するための方法の流れ図である。
【
図6】本発明の別の例示的実施形態による風力タービン翼を検査するための方法の流れ図である。
【
図7】本発明の一例示的実施形態による風力タービン翼を検査するための装置のブロック図である。
【
図8】本発明の一例示的実施形態によるサーバの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、技術的解決手段、および利点をより明確に説明するために、本発明の実施形態を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0015】
図1を参照すると、本発明の一例示的実施形態による風力発電システムの構造図が示されている。風力発電システムは、風力発電装置(すなわち、風力タービン)120および風力タービン翼検査装置140を含む。
【0016】
風力発電装置120は、風力タービン翼122およびタワー124を含む。風が風力タービン翼122に衝突して風力エネルギーを生成し、風力発電装置120が風力エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーをエネルギー蓄積装置に貯蔵する。タワー124は、風力発電装置の他のデバイス構造を支持するように構成される。例えば、風力タービン翼122はハブによってタワー124の上端部に接続される。
【0017】
風力タービン翼検査装置140は、収音装置142およびバックグラウンドサーバ群144を含む。収音装置142は、タワー124に配置される。例えば、収音装置142はタワー扉に配置される。任意で、収音装置142は音センサまたはマイクロホンを含む。
【0018】
収音装置142は、有線または無線ネットワークを介してバックグラウンドサーバ144に接続される。収音装置142は、風が風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号を収集するように構成され、音響信号をバックグラウンドサーバ群144に送信する。バックグラウンドサーバ群144は、音響信号を保存し、実行可能命令をロードして実行するように構成されて、本発明による風力タービン翼を検査するための方法を実行する。
【0019】
注目すべきは、収音装置142がプロセッシングボックスに接続されることである。プロセッサはプロセッシングボックス内に配置され、音響信号を圧縮することができる。収音装置142は、有線または無線ネットワークを介してバックグラウンドサーバ群にさらに接続される。収音装置142はプロセッシングボックスによって収集した音響信号を圧縮してから、処理した音響信号をバックグラウンドサーバ群144に送信する。
【0020】
いくつかの実施形態では、バックグラウンドサーバ群144は、風力タービン翼の損傷度および損傷タイプを表示するためのディスプレイ画面をさらに備えている。
【0021】
いくつかの実施形態では、バックグラウンドサーバ群144は警報装置をさらに備えている。風力タービン翼が損傷しているとバックグラウンドサーバ群144が判断すると、バックグラウンドサーバ群144は警報を発するように警報装置を制御する。いくつかの他の実施形態では、バックグラウンドサーバ群144は、風力タービン翼の損傷タイプに応じた対応する警報を発するように警報装置を制御してもよく、風力タービン翼の様々な損傷タイプが様々な警報に対応する。
【0022】
図2を参照すると、本発明の一例示的実施形態による風力タービン翼を検査するための方法の流れ図が示されている。この方法は
図1に示す風力発電システムに適用可能であり、以下のステップを含む。
【0023】
ステップ201では、風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号が収音装置を用いて収集される。
【0024】
音響信号には、風が風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号が含まれる。例えば、収音装置は風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集し、音響信号をプロセッシングボックスに送信する。音響信号はプロセッシングボックスによって圧縮されてから、プロセッシングボックスによってバックグラウンドサーバに送信される。
【0025】
バックグラウンドサーバは、音響信号をメモリに保存する。風力タービン翼を検査するための方法が実行されると、バックグラウンドサーバはメモリから風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集する。
【0026】
ステップ202では、周波数スペクトログラムが音響信号に基づいて生成される。
【0027】
バックグラウンドサーバは、音響信号に短時間フーリエ変換を実行することによって音響信号に対応する周波数スペクトログラムを取得する。例えば、周波数スペクトログラムの描画中、様々な音響振幅を表すために様々な色を用いてもよい。
【0028】
任意で、風力発電装置は、各々が対応する周波数スペクトル領域を有するm個の風力タービン翼を含んでもよく、バックグラウンドサーバは、風力タービン翼単位でセグメント化された周波数スペクトログラムを生成してもよい(ただし、mは自然数とする)。例示的なステップは以下の通りである。
【0029】
1)信号解析アルゴリズムを呼ぶことによって音響信号によって形成された時間領域信号図から信号エンベロープを抽出する。
【0030】
バックグラウンドサーバは、音響信号によって形成された時間領域信号図から信号エンベロープを抽出するが、この場合、信号エンベロープは時間領域信号図の曲線族の各々に接する少なくとも1つの点を有する曲線を指しており、時間領域において信号エンベロープに波の谷が現れる点の位置を分割点として決定する。
【0031】
信号解析アルゴリズムは、音響信号の時間領域信号図を解析して信号エンベロープを取得するように構成される。例えば、上記の信号解析アルゴリズムは、ヒルベルト変換関数等の伝達関数を含んでもよい。任意で、バックグラウンドサーバは、ヒルベルト変換関数に基づいて時間領域信号図から信号エンベロープを抽出する。
【0032】
2)時間領域において、信号エンベロープ上で波の谷が位置する点の位置を分割点として決定する。
【0033】
例えば、
図3に示すように、バックグラウンドサーバは音響信号に基づいて時間領域信号
図31を生成し、ヒルベルト変換関数に基づいて時間領域信号
図31から信号エンベロープ32を抽出し、信号エンベロープ32上で各々の波の谷が位置する点33を決定する。時間領域における点33の位置が分割点である。時間領域信号図において、2つの隣接する分割点の間の部分は、風が風力タービン翼に衝突する場合の時間領域信号図を示す。
【0034】
3)音響信号を周波数スペクトログラムに変換し、分割点に基づいて周波数スペクトログラムをセグメント化してセグメント化された周波数スペクトログラムを取得する。
【0035】
いくつかの実施形態では、バックグラウンドサーバは、短時間フーリエ変換またはラプラス変換に基づいて音響信号を周波数スペクトログラムに変換する。すなわち、バックグラウンドサーバは、短時間フーリエ変換またはラプラス変換に基づいて音響信号の時間領域信号を周波数領域信号に変換して周波数スペクトログラムを形成し、時間軸上の分割点に基づいて周波数スペクトログラムをセグメント化して風力タービン翼のn個の周波数スペクトル領域を取得する(ただし、nは自然数とする)。周波数スペクトログラムにおいて、2つの隣接する分割点の間の周波数スペクトル領域は、風が風力タービン翼に衝突する場合の周波数スペクトルを指す。
【0036】
例えば、
図4に示すように、周波数スペクトログラム41の8個の曲線はそれぞれ異なる周波数帯の風力タービン翼の音響信号曲線であり、周波数スペクトログラムは分割点に基づいて25個の周波数スペクトル領域にセグメント化される。風力タービン翼には3つの風力タービン翼が含まれるので、上記の25個の周波数スペクトル領域はそれぞれ3つの風力タービン翼に対応する。3つの連続した周波数スペクトル領域は、3つの異なる風力タービン翼に対応する。(3m-2)番目の周波数スペクトル領域は風力タービン翼Aの周波数スペクトル領域であり、(3m-1)番目の周波数スペクトル領域は風力タービン翼Bの周波数スペクトル領域であり、3m番目の周波数スペクトル領域は風力タービン翼Cの周波数スペクトル領域である(ただし、mは自然数とする)。
【0037】
ステップ203では、損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果を取得する。
【0038】
損傷認識モデルはバックグラウンドサーバ内で構成され、バックグラウンドサーバは、損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって、周波数スペクトログラムから風力タービン翼の損傷タイプを決定する。任意で、バックグラウンドサーバは、損傷認識モデルに基づいてセグメント化された周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって、セグメント化された周波数スペクトログラムから風力タービン翼の損傷タイプを決定する。
【0039】
いくつかの実施形態では、損傷認識結果には風力タービン翼の損傷タイプが含まれる。損傷タイプには、少なくとも、風力タービンの排水穴の閉塞、翼保護フィルムの亀裂、翼の先端の腐食、翼の根元の破砕、翼の笛吹音、および雷害が含まれる。
【0040】
例えば、
図5に示すように、損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムを認識するための流れ図が示されている。バックグラウンドサーバは、周波数スペクトログラム51をモデルの畳み込みおよびプーリング層52に入力し、畳み込みおよびプーリングによって周波数スペクトログラムを特徴空間にマップして周波数スペクトログラムの画像特徴を取得し;上記の画像特徴を特徴変換用の特徴変換層に入力して変換された画像特徴を取得し;その後、変換された画像特徴を完全接続層54に入力し、完全接続層54によって変換された画像特徴を認識および分類することによって特徴分類結果を取得し;最後に、出力層55に基づいて特徴分類結果を正規化することによって損傷認識結果を取得する。損傷認識結果には、風力タービン翼の損傷タイプが含まれる。
【0041】
注目すべきは、上記の損傷認識モデルはニューラルネットワークモデルを訓練することによって得られることである。例えば、上記の損傷認識モデルの訓練プロセスは以下の通りである。
【0042】
1)周波数スペクトログラムサンプルを収集する。
【0043】
周波数スペクトログラムサンプルは過去の周波数スペクトログラムを収集することによって得られた周波数スペクトログラム集合であり、周波数スペクトログラムサンプル集合には様々な過去の周波数スペクトログラムの様々な損傷タイプに対応する画像が含まれる。損傷位置およびサンプル損傷タイプは、上記の周波数スペクトログラムサンプルにおいて対応してマークされる。
【0044】
2)周波数スペクトログラムサンプルを画像認識用のニューラルネットワークモデルに入力して損傷位置の認識された損傷タイプを取得する。
【0045】
バックグラウンドサーバは、収集された周波数スペクトログラムサンプルをニューラルネットワークモデルに入力し、ニューラルネットワークモデルに基づいて周波数スペクトログラムサンプルの画像認識を実行することによって各損傷位置に対応して決定された損傷タイプを取得する。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記のニューラルネットワークモデルは、長短期記憶モデル、畳み込みニューラルネットワークモデル、フィードフォワードニューラルネットワークモデル等であってもよい。ニューラルネットワークモデルのタイプは、本実施形態では限定されない。
【0047】
3)認識された損傷タイプとサンプル損傷タイプに基づいて誤差逆伝播学習を行って、風力タービン翼の損傷タイプに対するニューラルネットワークモデルの認識能力を訓練することで、損傷認識モデルを取得する。
【0048】
ニューラルネットワークモデルは認識された損傷タイプとサンプル損傷タイプとの間の誤差を計算し、誤差逆伝播を行い、それ自身のモデルパラメータを調整する。それ故、風力タービン翼の損傷タイプに対するニューラルネットワークモデルの認識能力が訓練され、最終的に損傷認識モデルが得られる。
【0049】
要約すると、本発明による風力タービン翼を検査するための方法では、風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号が収音装置を用いて収集され;音響信号に対応する周波数スペクトログラムが生成され;損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果が周波数スペクトログラムから得られる。それ故、手動の検査をせずに周波数スペクトログラムに基づいて風力タービン翼の損傷タイプが正確に認識される。したがって、人材が削減される。その上、風力タービン翼の健全状態をリアルタイムで監視することができる。さらに、この方法では、いかなる風力タービン運転データにも頼らずに音響信号に基づいて風力タービン翼の損傷が認識されるので、風力タービン翼の損傷の検出中の機械計算量が減少する。
【0050】
注目すべきは、本発明による風力タービン翼を検査するための方法は、風力タービン翼が回転する過程で直ちに風力タービン翼の損傷を発見し、損傷タイプを確認するためにあることである。したがって、風力タービン翼の損傷タイプを認識する前に、風力タービン翼が損傷しているかどうかをまず判断することが可能である。例えば、
図2に基づいて、ステップ203はサブステップ2031および2032を含んでもよい。
図6に示すように、ステップは以下の通りである。
【0051】
サブステップ2031では、セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因が計算される。
【0052】
上記の音響スペクトル相違要因は、風力タービン翼の損傷度を表す。いくつかの実施形態では、風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因は、セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて計算される。
【0053】
いくつかの実施形態では、セグメント化された周波数スペクトログラムにはセグメント化の後のn個の風力タービン翼の周波数スペクトル領域が含まれる(ただし、nは自然数とする)。例えば、n個の風力タービン翼の周波数スペクトル領域に基づいて、バックグラウンドサーバが風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因を計算する例示的なステップは、以下の通りである。
【0054】
1)n個の周波数スペクトル領域の信号ピークを抽出する。
【0055】
2)n個の周波数スペクトル領域の信号ピークに基づいて、音響信号の時間領域因子および周波数領域因子を計算する。
【0056】
具体的には、m個の風力タービン翼が風力発電装置に配置される。いくつかの実施形態では、バックグラウンドサーバが音響信号の時間領域因子を計算する。バックグラウンドサーバは、最初に、風力タービン翼の各々に対応する周波数スペクトル領域の少なくとも2つの信号ピークの中央値を決定し;次に、m個の風力タービン翼に対応するm個の中央値から最大ピークおよび最小ピークを決定し;最後に、最小ピークに対する最大ピークの比率を時間領域因子として決定する。
【0057】
例えば、mが3である場合、バックグラウンドサーバは周波数スペクトログラムの特定の周波数帯の曲線を選択して時間領域因子を計算する。例えば、バックグラウンドサーバは、
図4に示す周波数スペクトログラム41の(-0.008)-(-0.006)の周波数帯の曲線を選択して時間領域因子を計算するか、または全周波数帯(図示せず)の音響信号の曲線を選択して時間領域因子を計算する。風力タービン翼には3つの風力タービン翼が含まれる。25個の周波数スペクトル領域が選択された曲線に含まれる場合、バックグラウンドサーバは、各周波数スペクトル領域の信号ピーク、合計25個の信号ピークを決定するが、その場合、9個の信号ピークは対応する(3m-2)番目の周波数スペクトル領域の風力タービン翼Aの信号ピークであり、8個の信号ピークは対応する(3m-1)番目の周波数スペクトル領域の風力タービン翼Bの信号ピークであり、8個の信号ピークは対応する3m番目の周波数スペクトル領域の風力タービン翼Cの信号ピークである。バックグラウンドサーバは、風力タービン翼A,BおよびCの信号ピークから対応する中央値a,bおよびcを決定し、中央値a,bおよびcから最大ピークおよび最小ピークを決定し、最終的に最小ピークに対する最大ピークの比率を時間領域因子として決定する。例えば、最大ピークがaであり最小ピークがcである場合、時間領域因子はa/cである。
【0058】
いくつかの実施形態では、バックグラウンドサーバは音響信号の周波数領域因子を計算する。バックグラウンドサーバは、m個の周波数スペクトル領域の各2つの隣接する周波数スペクトル領域の信号ピークから最大ピークを取得し、最大ピークを候補ピークとして決定し;その後、候補ピークの少なくとも2つの中央値を周波数領域因子として決定するか;または、バックグラウンドサーバは、セグメント化された周波数スペクトログラムの信号分布と理論分布との間の相対エントロピー、すなわち、カルバック・ライブラー(KL)発散を計算し、KL発散を周波数領域因子として決定する。
【0059】
例えば、
図4に示すように、バックグラウンドサーバは、25個の周波数スペクトル領域を左から右に1から25とマークし、隣接する周波数スペクトル領域1-3,2-4,3-5,・・・,23-25の対応する信号ピーク、合計23個の信号ピークから最大ピークを取得し、上記の23個の信号ピークから中央値を決定する。この中央値は1つの周波数領域因子である。
【0060】
バックグラウンドサーバは、セグメント化された周波数スペクトログラムの信号分布と理論信号分布との間のKL発散を計算し、KL発散を別の周波数領域因子として決定する。
【0061】
注目すべきは、上記の周波数領域因子が周波数領域の音響信号の分布特徴を表すことである。本発明は周波数領域の音響信号の分布特徴を計算するための2つの方法を提示するが、本発明では、周波数領域の音響信号の分布特徴を計算するための方法は上記に示した2つの方法に限定されない。
【0062】
3)時間領域因子と周波数領域因子の加重平均を音響スペクトル相違要因として決定する。
【0063】
例えば、バックグラウンドサーバは、計算によって1つの時間領域因子と2つの周波数領域因子を取得してから、1つの時間領域因子と2つの周波数領域因子の加重平均を計算し、上記の加重平均を音響スペクトル相違要因として決定する。
【0064】
また、注目すべきは、バックグラウンドサーバはさらにフィルターによって音響信号をフィルター処理してフィルター処理された音響信号を取得し、フィルター処理された音響信号に基づいて周波数スペクトログラムを生成してから、周波数スペクトル相違要因を生成することである。
【0065】
サブステップ2032では、音響スペクトル相違要因が弁別閾値よりも大きいかどうかを判断する。
【0066】
弁別閾値はバックグラウンドサーバ内に設けられ、風力タービン翼が損傷しているかどうかを判断するように構成される。音響スペクトル相違要因が弁別閾値よりも大きい場合は、風力タービン翼は損傷しており、サブステップ2033が実行され;音響スペクトル相違要因が弁別閾値以下である場合は、風力タービン翼は損傷しておらず、プロセスがステップ201に戻る。
【0067】
サブステップ2033では、損傷認識モデルに基づいてセグメント化された周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって、風力タービン翼の損傷認識結果を取得する。
【0068】
要約すると、本実施形態による風力タービン翼を検査するための方法では、風力タービン翼の損傷タイプを認識する前に、まず、風力タービン翼が損傷しているかどうかを音響スペクトル相違要因に基づいて判断し;風力タービン翼が損傷していると判断された場合、損傷タイプが認識される。それ故、損傷認識モデルに基づいて損傷タイプを認識する確率が増加し、損傷認識モデルによる風力タービン翼の損傷タイプの無効な認識が回避される。
【0069】
また、注目すべきは、バックグラウンドサーバには範囲閾値も設定してもよく、様々な範囲閾値が様々な損傷度に対応することである。音響スペクトル相違要因が弁別閾値よりも大きい場合、バックグラウンドサーバは、音響スペクトル相違要因が属する範囲閾値に基づいて風力タービン翼の損傷度を決定する。
【0070】
例えば、第1の範囲閾値、第2の範囲閾値および第3の範囲閾値がバックグラウンドサーバに設定される。音響スペクトル相違要因が第1の範囲閾値に属する場合、バックグラウンドサーバは風力タービン翼の損傷度が軽度であると判断し;音響スペクトル相違要因が第2の範囲閾値に属する場合、バックグラウンドサーバは風力タービン翼の損傷度が中程度であると判断し;音響スペクトル相違要因が第3の範囲閾値に属する場合、バックグラウンドサーバは風力タービン翼の損傷度が重度であると判断する。範囲閾値内の値は弁別閾値よりも大きい。
【0071】
バックグラウンドサーバは、風力タービン翼の損傷タイプを出力すると共に、風力タービン翼の損傷度を出力する。任意で、出力される損傷度は、設定された損傷度レベルに基づいてバックグラウンドサーバによって決定してもよく、または直接音響スペクトル相違要因であってもよい。
【0072】
この方法によって、ユーザは、出力結果から風力タービン翼の損傷度および損傷タイプを明確に理解することができる。
【0073】
また、注目すべきは、バックグラウンドサーバが風力タービン翼を検査するための方法を実行する過程で、収音装置は毎回プリセット継続時間を有する音響信号を収集し、それに応じてプリセット継続時間を有する上記の音響信号を保存するためのファイルを生成することである。例えば、各ファイルには43秒の継続時間を有する音響信号が含まれる。音響スペクトル相違要因を計算する際、バックグラウンドサーバは1つのファイルから43秒の継続時間を有する音響信号を取得する。しかしながら、上記の様々なファイルに保存された音響信号の信号品質は異なり、全部の信号品質が劣っているファイルも一部ある。これは、音響スペクトル相違要因の結果に影響を及ぼす。したがって、音響スペクトル相違要因を計算する過程では、バックグラウンドサーバはまず音響信号の信号品質を決定する。
【0074】
例えば、セグメント化された周波数スペクトログラムを取得した後、バックグラウンドサーバは、以下のように、セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて音響信号の信号品質を決定する。
【0075】
(1)セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、音響信号の信号対雑音比を計算する。
【0076】
収音装置は、風力タービン翼への風の衝突によって生じた元の音響信号を収集する。収集プロセスでは、付加信号、すなわち元の音響信号に存在しない雑音が元の音響信号にミックスされる。信号対雑音比は、雑音に対する収集された元の音響信号の比率を指す。周波数スペクトログラムのセグメント化が完了した後、バックグラウンドサーバはセグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて音響信号の信号対雑音比を計算する。
【0077】
(2)信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも大きいかどうかを判断する。
【0078】
信号対雑音比閾値がバックグラウンドサーバに設定され、バックグラウンドサーバは信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも大きいかどうかを判断する。信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも大きい場合、ステップ(3)が実行され;信号対雑音比が信号対雑音比閾値以下である場合、ステップ(4)が実行されてプロセスはステップ201に戻る。
【0079】
(3)セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因を計算する。
【0080】
(4)収音装置が故障に遭っていると判断する。
【0081】
風力発電システムでは、収音装置を用いて風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号が収集され、収音装置の通信状態が直接収集された音響信号の品質に影響を及ぼす。したがって、バックグラウンドサーバは収音装置の通信状態を検出する。例えば、バックグラウンドサーバは、収集された音響信号の信号品質に基づいてリアルタイムで収音装置の通信状態を検出する。例えば、バックグラウンドサーバは、収集された音響信号の信号対雑音比、または音響信号の有無に基づいて収音装置の通信状態を決定する。音響信号が存在し、音響信号が高品質である場合、それは収音装置が健全状態にあることを示す。音響信号が存在しないかまたは音響信号が劣っている場合、それは収音装置が不健全状態であって収集された音響信号の品質を保証すべく保守する必要があることを示す。したがって、風力タービン翼の損傷状態を正確に決定することができる。
【0082】
収音装置の健全状態を信号対雑音比に基づいて検出する例では、信号対雑音比が信号対雑音比閾値以下である場合、収音装置を用いて収集された音響信号には大量の雑音が存在し、音響信号が低品質であるため、収音装置は故障に遭っていると判断され;信号対雑音比が信号対雑音比閾値を超える場合、収音装置は健全状態にある。また、注目すべきは、一度信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも小さくなる時には偶然性があることである。したがって、音響信号をi回連続で再収集した後に計算された信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも小さいと判断された場合、収音装置は故障に遭っていると判断される(ただし、iは自然数とする)。
【0083】
要約すると、本実施形態による風力タービン翼を検査するための方法では、音響スペクトル相違要因を計算するための音響信号が高品質であることが音響信号の品質検出に基づいて保証される。それ故、計算された音響スペクトル相違要因の正確性が保証される。その上、この方法では、収音装置の健全状態がリアルタイムで監視されるので、ユーザは収音装置が異常である時を即時に知ることができ、その時点で保守を実行する。
【0084】
また、注目すべきは、バックグラウンドサーバには警報装置がさらに配置されることである。風力タービン翼が損傷しているとバックグラウンドサーバが認識すると、バックグラウンドサーバは警報を発する。収音装置が異常であるとバックグラウンドサーバが判断すると、バックグラウンドサーバは警報を発する。
【0085】
いくつかの実施形態では、風力タービン翼の様々な損傷タイプが様々な警報に対応し、バックグラウンドサーバは風力タービン翼の損傷タイプに基づいて対応する警報を発する。
【0086】
この方法では、風力タービン翼または収音装置の損傷が認識されると、ユーザに保守について警告するために時間通りに即時に警報が発せられる。そのため、装置を時間通りに修理することができ、大きな損失が避けられる。
【0087】
図7を参照すると、本発明の一例示的実施形態による風力タービン翼を検査するための装置のブロック図が示されている。風力タービン翼は風力発電装置の翼であって、風力発電装置は収音装置を備えたタワーをさらに含んでいる。装置は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせによってサーバの全体または一部として実装される。
【0088】
装置は、収音装置を用いて風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号を収集するように構成された収集モジュール301であって、音響信号は風が風力タービン翼に衝突する場合の翼間の空気の摺動によって生じた音響信号を含む収集モジュール301と;音響信号に基づいて周波数スペクトログラムを生成するように構成された生成モジュール302と;損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果を取得するように構成された認識モジュール303であって、損傷認識モデルはニューラルネットワークモデルを訓練することによって得られる認識モジュール303とを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、生成モジュール302は、信号解析アルゴリズムを呼ぶことによって音響信号によって形成された時間領域信号から信号エンベロープを抽出するように構成された抽出サブモジュール3021と;時間領域において信号エンベロープに波の谷が現れる点の位置を分割点として決定するように構成された決定サブモジュール3022と;音響信号を周波数スペクトログラムに変換し、分割点に基づいて周波数スペクトログラムをセグメント化してセグメント化された周波数スペクトログラムを取得するように構成された生成サブモジュール3023とを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、認識モジュール303は、セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因を計算するように構成された計算サブモジュール3031であって、音響スペクトル相違要因は風力タービン翼の損傷度を表す計算サブモジュール3031と;音響スペクトル相違要因が弁別閾値よりも大きい場合には、損傷認識モデルに基づいてセグメント化された周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果を取得するように構成された認識サブモジュール3032とを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、セグメント化された周波数スペクトログラムはセグメント後にn個の風力タービン翼の周波数スペクトル領域を含む(ただし、nは自然数とする)。
【0092】
計算サブモジュール3031は、n個の周波数スペクトル領域の信号ピークを抽出し;n個の周波数スペクトル領域の信号ピークに基づいて、音響信号の時間領域因子および周波数領域因子を計算し;時間領域因子と周波数領域因子の加重平均を音響スペクトル相違要因として決定するように構成される。
【0093】
いくつかの実施形態では、m個の風力タービン翼が風力発電装置に配置される(ただし、mは自然数とする)。
【0094】
計算サブモジュール3031は、風力タービン翼の各々に対応する周波数スペクトル領域の少なくとも2つの信号ピークの中央値を決定し;m個の風力タービン翼に対応するm個の中央値から最大ピークおよび最小ピークを決定し;最小ピークに対する最大ピークの比率を時間領域因子として決定するように構成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、m個の風力タービン翼が風力発電装置に配置される(ただし、mは自然数とする)。
【0096】
計算サブモジュール3031は、各m個の隣接する周波数スペクトル領域の信号ピークから最大ピークを取得し、最大ピークを候補ピークとして決定し(ただし、mは自然数とする);候補ピークの少なくとも2つの中央値を周波数領域因子として決定するか;または、セグメント化された周波数スペクトログラムの信号分布と理論分布との間の相対エントロピーを計算し、相対エントロピーを周波数領域因子として決定する。
【0097】
いくつかの実施形態では、計算サブモジュール3031は、セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、音響信号の信号対雑音比を計算し;信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも大きい場合には、セグメント化された周波数スペクトログラムに基づいて、風力タービン翼への風の衝突に応じた音響スペクトル相違要因を計算し;信号対雑音比が信号対雑音比閾値よりも小さい場合には、収音装置が故障に遭っていると判断する。
【0098】
要約すると、本実施形態による風力タービン翼を検査するための装置では、風力タービン翼への風の衝突によって生じた音響信号が収音装置を用いて収集され;音響信号に対応する周波数スペクトログラムが生成され;損傷認識モデルに基づいて周波数スペクトログラムの画像認識を実行することによって風力タービン翼の損傷認識結果が周波数スペクトログラムから得られる。それ故、手動の検査をせずに周波数スペクトログラムに基づいて風力タービン翼の損傷タイプが正確に決定される。したがって、人材が削減される。その上、風力タービン翼の健全状態をリアルタイムで監視することができる。さらに、この装置では、いかなる風力タービン運転データにも頼らずに音響信号に基づいて風力タービン翼の損傷が認識される。それ故、風力タービン翼の損傷の検出中の機械計算量が減少する。
【0099】
図8を参照すると、本発明の一例示的実施形態によるサーバの構造図が示されている。サーバは、上記の実施形態による風力タービン翼を検査するための方法を実行するように構成される。
【0100】
具体的には、サーバ400は、中央処理装置(CPU)401と、ランダムアクセスメモリ(RAM)402およびリードオンリメモリ(ROM)403を含むシステムメモリ404と、システムメモリ404と中央処理装置401を接続するシステムバス405とを含む。サーバ400は、コンピュータ内の各種構成要素間の情報伝達を支援する基本入出力システム(I/Oシステム)406と、オペレーティングシステム413、アプリケーション414、およびその他のプログラムモジュール415を記憶するための大容量記憶装置407とをさらに含む。
【0101】
基本入出力システム406は、情報を表示するためのディスプレイ408と、ユーザによって情報を入力するためのマウスおよびキーボード等の入力装置409とを含む。ディスプレイ408および入力装置409は両方とも、システムバス405に接続された入出力制御装置410によって中央処理装置401に接続される。基本入出力システム406は、キーボード、マウス、または電子ペン等の複数のその他の機器からの入力を受信して処理するための入出力制御装置410をさらに含んでもよい。同様に、入出力制御装置410はさらに、ディスプレイ、プリンタ、または他の種類の出力装置に出力を行う。
【0102】
大容量記憶装置407は、システムバス405に接続された大容量記憶制御装置(図示せず)によって中央処理装置401に接続される。大容量記憶装置407とそれに関連するコンピュータ可読媒体とは、サーバ400に不揮発性記憶装置を提供する。すなわち、大容量記憶装置407は、ハードディスクまたはコンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)ドライバ等のコンピュータ可読媒体(図示せず)を含んでもよい。
【0103】
一般性を失うことなく、コンピュータ可読媒体はコンピュータ記憶媒体および通信媒体を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたはその他のデータ等の情報の記憶のための任意の方法または技術において実装される揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブル媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリまたはその他の固体記憶装置;CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)またはその他の光学式記憶装置;およびテープカートリッジ、磁気テープ、ディスク記憶装置またはその他の磁気記憶装置を含む。当業者であれば、コンピュータ記憶媒体が上記のものに限定されないことがわかるであろう。上記のシステムメモリ404および大容量記憶装置407は、まとめてメモリと呼んでもよい。
【0104】
本発明の各種実施形態によれば、サーバ400は、操作のため、インターネット等のネットワークを介してネットワーク上のリモートコンピュータに接続することもできる。すなわち、サーバ400は、システムバス405に接続されたネットワークインターフェースユニット411によってネットワーク412に接続するか、またはネットワークインターフェースユニット411を有するその他の形式のネットワークまたはリモートコンピュータシステム(図示せず)に接続することができる。
【0105】
本発明の上記の実施形態の通し番号は説明のために過ぎず、実施形態の本質を表すものではない。
【0106】
当業者であれば、上記の実施形態におけるステップの全部または一部を、ハードウェアによって、あるいはリードオンリメモリ、ディスク、または光ディスク等のコンピュータ可読記憶媒体に保存されたプログラムによって指示された関連するハードウェアによって達成することができることが理解されるであろう。
【0107】
以上は本発明の例示的実施形態であり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の精神および原則の範囲で行われたいかなる変更、同等の置換、改良等も本発明の保護の範囲内に含まれるべきである。