(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20221226BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221226BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20221226BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221226BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20221226BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/40
C09D11/322
C09J7/30
C09J7/22
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2020149700
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 和昌
(72)【発明者】
【氏名】砂押 和志
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203802(JP,A)
【文献】特開2008-208153(JP,A)
【文献】特開2016-216619(JP,A)
【文献】特開2006-342294(JP,A)
【文献】特開2013-189598(JP,A)
【文献】特表2016-532578(JP,A)
【文献】特開2020-146912(JP,A)
【文献】特開2020-180178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00 - 27/42
C09D 11/00 - 11/54
C09J 7/00 - 7/50
C09J 175/04
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材1と、インキ層(II)と、接着剤層(III)と、基材4を、この順で有する積層体
の製造方法であって、
下記工程(1)~(4)を含む、積層体の製造方法。
(1)透明基材1上に、水性インクジェットインキ(A)をインクジェット印刷方式で印刷したのち、乾燥して、厚さが0.2~20μmであるインキ層(II)を得る工程。
ただし、前記水性インクジェットインキ(A)は、バインダー樹脂(B)と、顔料
と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤とを含
み、
前記バインダー樹脂(B)
が、水酸基価が3
~50mgKOH/
g、酸価が10~60mgKOH/g、重量平均分子量が5,000~45,000、かつ、ガラス転移温度(Tg)が35~110℃であり、前記バインダー樹脂(B)が、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)由来とする構成単位、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)由来とする構成単位を含み、かつ、水性化された樹脂であり、
前記バインダー樹脂(B)の含有量が、不揮発分換算で、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して1~20質量%であり、
前記水性インクジェットインキ(A)がホワイトインキ以外である場合、前記顔料の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して2~20質量%であり、前記水性インクジェットインキ(A)がホワイトインキである場合、前記顔料の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して5~40質量%であり、
前記水溶性有機溶剤の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して3~40質量%であり、
前記界面活性剤の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して0.05~5.0質量%である。
(2)前記インキ層(II)上、及び/または、基材4上に、ラミネート接着剤組成物(J)からなる、接着剤層の前駆体を形成する工程。
ただし、前記ラミネート接着剤組成物(J)は、ポリオール成分(M)と、イソシアネート成分(K)とを含
み、前記イソシアネート成分(K)のイソシアネート基のモル数と前記ポリオール成分(M)の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比が、1.0~3.0の範囲であり、前記ポリオール成分(M)は、数平均分子量が500~3,200であり、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオールを含む
。
(3)前記接着剤層の前駆体を介し、インキ層(II)と基材4とを重ね合わせる工程。
(4)前記接着剤層の前駆体を硬化して、接着剤層(III)とする工程。
【請求項2】
バインダー樹脂(B)の水酸基価が、
10~45mgKOH/gである請求項1に記載の積層体
の製造方法。
【請求項3】
分子量500~3,200であるポリオールの、ポリオール成分(M)の全体に占める割合が、25質量%以上である請求項1
または2に記載の積層体
の製造方法。
【請求項4】
イソシアネート成分(K)が、芳香族イソシアネートとポリエーテルポリオールとを反応させたウレタンプレポリマー化合物を含む、請求項1~
3いずれかに記載の積層体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクジェットインキ、及び、ラミネート接着剤組成物を用いて製造される積層体、並びに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品のパッケージ等に用いられる軟包装材料は、プラスチックフィルム同士、及び/または、プラスチックフィルムと、金属蒸着フィルムや金属箔とを貼り合わせた積層体となっている。一般には、あらかじめ印刷層を形成したプラスチックフィルムに対し、別個準備した、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、金属箔等の材料を貼り合わせ、軟包装材料等として利用できる積層体を得る。この加工方法は「ラミネート加工」と呼ばれている。また、積層体中に印刷層を形成するため、従来より、プラスチックフィルム(以下、単に「フィルム基材」ともいう)に対してグラビア印刷またはフレキソ印刷が行われている。グラビア印刷、フレキソ印刷共に、あらかじめ用意した版にインキを転移させる印刷方式であり、高速印刷及び大量生産に適している方法といえる。
【0003】
その中で、近年、軟包装材料の市場では、消費者ニーズの変化や多様化に伴い、商品の多品種化、商品サイクルの短期化が進んでいる。また、環境問題及び労働安全に対する配慮から、インキの水性化も行われている(例えば特許文献1参照)が、上記印刷方式を採用する限り、印刷するための版が必要となるため、少量生産の場合は採算が合わないことが多い。また、版の作製にも時間を要するため、短い納期に対応するのは難しいというのが現状であった。
【0004】
上記印刷方式に対して、デジタル印刷は、版を必要としないため、コスト削減や短納期対応が実現可能であり、印刷の小ロット化やニーズの多様化に伴い、デジタル印刷方式の普及が急速に進んでいる。デジタル印刷方式の一種であるインクジェット印刷方式は、記録媒体に対してインクジェットヘッドからインキの微小液滴を飛翔及び着弾させて、前記記録媒体上に画像や文字(以下総称して「印刷物」ともいう)を形成する方式である。他のデジタル印刷方式と比べて、印刷装置のサイズ及びコスト、印刷時のランニングコスト、フルカラー化の容易性などの面で優れており、近年では産業印刷用途においても利用が進んでいる。
【0005】
インクジェット印刷方式に使用されるインキとしては、油系、溶剤系、活性エネルギー線硬化系、水系など多岐に渡る。これまで、産業印刷用途では、溶剤系や活性エネルギー線硬化系のインキが使用されてきた。しかし近年の、環境や人に対する有害性の配慮・対応といった点から、グラビア印刷及びフレキソ印刷の場合と同様、インキの水性化が望まれている。
【0006】
一方で、軟包装材料を製造するためにインクジェット印刷を利用する場合、上記のようにフィルム基材に対する画像形成が必須となる。これまでに存在するインクジェット印刷で用いる(以下、単に「インクジェット用」ともいう)水性インキは、普通紙や専用紙(例えば、写真光沢紙)のような浸透性の高い基材に対して画像形成するためのものであり、フィルム基材のような非浸透性の基材に対して印刷した場合、着弾した後のインキ液滴が、浸透吸収によって乾燥せず、印刷画質が損なわれる、十分な密着性が得られない、ブロッキングが発生してしまう、といった問題が発生する。
【0007】
例えば特許文献2には、特定の特性を有する樹脂と、特定の構造を有する有機溶剤とが併用された水性インクジェットインキが開示されており、ポリ塩化ビニルシート等の非浸透性基材に対するインクジェット印刷に好適に利用できるとの記載がある。しかしながら後述するように、本発明者らが、前記特許文献2の実施例に具体的に記載された樹脂を用いたインキを評価したところ、吐出安定性が劣ることが判明した。近年では、上述した用途展開に対する市場の要求に応えるため、インクジェットヘッドから吐出されるインキ液滴の微小化や、前記インクジェットヘッドの駆動周波数の増加によって、印刷物を高解像度化する検討も進められており、吐出安定性の向上は必須の課題といえる。
【0008】
また、フィルム基材に対する密着性が不足すると、インキ膜が擦れなどにより剥がれ、目的の印刷画像が得られない問題が発生する。更には、接着剤(ラミネート接着剤)を介して別のフィルムと貼り合わせた(ラミネート加工)際、積層体を構成する層間での接着力が得られず、積層間での剥離現象(デラミネーション)を起こしてしまう恐れもある。特に、軟包装材料においては、包材の形態にしたのち、ボイルまたはレトルト等の熱殺菌処理後の工程を経ることもあり、この熱殺菌処理により接着力が低下し、剥離現象を引き起こし、外観不良を発生してしまう。
【0009】
本出願人は以前、吐出安定性や、非浸透性基材に対する印刷画質に優れた、特定の構成を有する(スチレン)(メタ)アクリル樹脂を含む水性インクジェットインキを提案した(特許文献3参照)。しかしながら前記インキでは、印刷物のラミネート強度が不十分になってしまう恐れがあり、軟包装材料への展開を考えると、改善が必要な状況であった。
【0010】
ところで、ラミネート加工にあたっては、従来、水酸基/イソシアネート硬化系による接着方法である、溶剤型ラミネート接着剤組成物や無溶剤型ラミネート接着剤(以下、「ラミネート接着剤」、あるいは単に「接着剤」ともいう)を用いることが主流である。近年、軟包装材料の市場では、消費者ニーズの多様化や、商品の多品種化が広がっており、これらに対応するため、ラミネート加工された積層体を構成する層間での高い接着力に関する研究が行われている。例えば、特許文献4では、イソシアネートプレポリマー接着剤層と、超分岐ポリエステルを含む印刷層を用いた多層組成物が開示されている。しかしながら、特許文献4で開示されている印刷層はフレキソ印刷方式であり、インクジェット印刷方式ではない。
【0011】
また、特許文献5には、ポリオール成分と2種類のイソシアネート化合物からなるイソシアネート成分とを含有するラミネート接着剤が開示されている。また、特許文献6には、ポリオール成分と、イソホロンジイソシアネートを必須とするイソシアネート成分とを含有するラミネート接着剤が開示されている。しかしながら、特許文献5~6に開示されているラミネート接着剤は、プラスチックフィルム同士の貼り合わせに限って検討が行われており、フィルム基材上の印刷層(インキ層)との貼り合わせに関しては評価されていない。
【0012】
以上のように、水性インクジェットインキ印刷方式での非浸透基材への印刷において、吐出安定性に優れ、軟包装材料に適した後加工機能を有する積層体を得る方法は、これまでに見出されていない状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平5-171091号公報
【文献】特開2013-159619号公報
【文献】特開2018-203802号公報
【文献】特開2016-532578号公報
【文献】特開平8-60131号公報
【文献】特開2006-57089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルムなどの非浸透性基材への印刷においても、色ムラがなく印刷画質が良好であり、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性にも優れ、更にラミネート加工後であっても、良好な印刷画質や優れた接着力が維持される積層体を提供することにある。
【0015】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、特定のエチレン性不飽和単量体を構成単位として有するバインダー樹脂を含む水性インクジェットインキ、及び、特定の構造、特定範囲の数平均分子量を有するポリオール成分を含む接着剤組成物を用いて製造された積層体によって、前記課題が好適に解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち本発明は、透明基材1と、インキ層(II)と、接着剤層(III)と、基材4を、この順で有する積層体の製造方法であって、下記工程(1)~(4)を含む、積層体の製造方法に関する。
(1)透明基材1上に、水性インクジェットインキ(A)をインクジェット印刷方式で印刷したのち、乾燥して、厚さが0.2~20μmであるインキ層(II)を得る工程。
ただし、前記水性インクジェットインキ(A)は、バインダー樹脂(B)と、顔料と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤とを含み、
前記バインダー樹脂(B)が、水酸基価が3~50mgKOH/g、酸価が10~60mgKOH/g、重量平均分子量が5,000~45,000、かつ、ガラス転移温度(Tg)が35~110℃であり、前記バインダー樹脂(B)が、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)由来とする構成単位、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)由来とする構成単位を含み、かつ、水性化された樹脂であり、前記バインダー樹脂(B)の含有量が、不揮発分換算で、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して1~20質量%であり、
前記水性インクジェットインキ(A)がホワイトインキ以外である場合、前記顔料の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して2~20質量%であり、前記水性インクジェットインキ(A)がホワイトインキである場合、前記顔料の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して5~40質量%であり、
前記水溶性有機溶剤の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して3~40質量%であり、
前記界面活性剤の含有量が、前記水性インクジェットインキ(A)全量に対して0.05~5.0質量%である。
(2)前記インキ層(II)上、及び/または、基材4上に、ラミネート接着剤組成物(J)からなる、接着剤層の前駆体を形成する工程。
ただし、前記ラミネート接着剤組成物(J)は、ポリオール成分(M)と、イソシアネート成分(K)とを含み、前記イソシアネート成分(K)のイソシアネート基のモル数と前記ポリオール成分(M)の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比が、1.0~3.0の範囲であり、前記ポリオール成分(M)は、数平均分子量が500~3,200であり、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオールを含む。
(3)前記接着剤層の前駆体を介し、インキ層(II)と基材4とを重ね合わせる工程。
(4)前記接着剤層の前駆体を硬化して、接着剤層(III)とする工程。
【0017】
また、本発明は、バインダー樹脂(B)の水酸基価が、10~45mgKOH/gである、上記積層体の製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、分子量500~3,200であるポリオールの、ポリオール成分(M)の全体に占める割合が、25質量%以上である、上記積層体の製造方法に関する。
【0021】
また、本発明は、イソシアネート成分(K)が、芳香族イソシアネートとポリエーテルポリオールとを反応させたウレタンプレポリマー化合物を含む、上記積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルムなどの非浸透性基材への印刷においても、色ムラがなく印刷画質が良好であり、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性にも優れ、更にラミネート加工、ボイルまたはレトルト等の熱殺菌処理後においても、良好な印刷画質や優れた接着力が維持される積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、色ムラ、インクジェット吐出性、接着力などの評価に使用した、完全ベタ印刷物の断面の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、好ましい形態を上げて、本発明の実施形態である(以下、単に「本実施形態の」ともいう)積層体について説明する。
【0026】
本実施形態の積層体が有するインキ層(II)は、バインダー樹脂(B)と、顔料とを含む、水性インクジェットインキ(A)の乾燥膜からなる層である。特許文献3、4で行われているように、インキ中にバインダー樹脂を添加することが一般的である。また、一般的に、バインダー樹脂の重量平均分子量を大きくすることで、ラミネート加工後の接着力が高くなる可能性がある。しかしながら重量平均分子量の大きな樹脂は、インキの吐出安定性を著しく悪化させる恐れがある。特に、非浸透性基材での乾燥性を高めるべく、低沸点の水溶性有機溶剤と一緒に使用した場合、ノズルの気液界面におけるインキ粘度の急激な上昇や、バインダー樹脂の析出によるノズル閉塞を引き起こし、吐出安定性を悪化させる可能性が高い。
【0027】
一方、本実施形態の積層体が有する接着剤層(III)は、ポリオール成分(M)と、イソシアネート成分(K)とを含むラミネート接着剤組成物(J)の硬化膜からなる層である。ポリオール成分(M)とイソシアネート成分(K)の分子量を大きくすることで、ラミネート加工後の接着力が高くなる可能性があるが、反応時、架橋密度が上がらず、硬化不良となり、インキ層(II)の印刷画質を劣化させる可能性がある。また、接着剤の粘度が高くなり、塗工ムラになりやすく、フィルム同士を貼り合わせた後の外観不良や、ムラ部分が起点となったデラミ現象、軟包装材料における内容物耐性の劣化が起こりやすい。
【0028】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、水性インクジェットインキ(A)のバインダー樹脂(B)の水酸基価が3mgKOH/g以上であり、酸基及び水酸基を有する水性化された樹脂を含み、ラミネート接着剤組成物(J)のイソシアネート成分(K)のイソシアネート基のモル数と前記ポリオール成分(M)の水酸基のモル数との比が特定の範囲にあり、特定の構造及び、特定の数平均分子量を有するポリオール成分を含むことで、良好なインクジェット吐出性、優れた印刷画質に加え、ラミネート加工後の優れた接着力を得ることを見出した。詳細は定かではないが、例えば以下のメカニズムを考えている。
【0029】
まず、本実施形態のインクジェットインキ(A)に含まれるバインダー樹脂(B)は、水性化された樹脂を含んでいる。バインダー樹脂を水性化することで、インクジェットインキの吐出安定性を確保できる。樹脂を水性化させるため、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)由来の構造を含んでいる。なお、樹脂を水性化させる方法としてエチレンオキサイド基の導入も知られているが、本発明では、酸基を用いることで、フィルム基材への接着性や、ラミネート加工後の接着力もまた向上できるという効果を得られたものである。
【0030】
加えて、バインダー樹脂(B)は、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)由来の構造を含んでいる。エチレン性不飽和単量体(b2)由来の水酸基と、接着剤層(III)中に存在するラミネート接着剤組成物(J)のイソシアネート成分(K)とが反応し、接着力が向上する。このように、インキ層(II)と接着剤層(III)の構成成分が反応することにより、層間の凝集力が増し、接着力の強い積層体が得られる。
【0031】
一方、ラミネート接着剤組成物(J)のイソシアネート成分(K)のイソシアネート基(以下、単に「NCO基」ともいう)のモル数とポリオール成分(M)の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比は、1.0~3.0の範囲である。NCO/OH比を、1.0以上にすることで、水性インクジェットインキ(A)のエチレン性不飽和単量体(b2)由来の水酸基との反応が起こりやすくなり、層間での架橋反応が促進される。また、3.0以下にすることで、過剰なNCO基を残さず、硬化不良を抑制し、高い接着力が得られると考えられる。
【0032】
また、前記ポリオール成分(M)の数平均分子量(Mn)は500~3,200である。数平均分子量が3,200より大きいと、イソシアネート成分(K)のNCO基との反応が遅く、イソシアネート成分(K)のインキ層(II)への浸透が過剰に進んでしまい、接着剤層(III)の硬化不良が発生し、ラミネート加工後の接着力が劣化する。数平均分子量が500より小さいと、イソシアネート成分(K)のNCO基との反応が積極的に進み、硬い接着剤層(III)となるが、柔軟性がなく、また、イソシアネート成分(K)がポリオール成分(M)との反応ばかりに消費され、水性インキ(A)のバインダー樹脂(B)に含まれるエチレン性不飽和単量体(b2)由来の水酸基との反応が乏しく、インキ層(II)と接着剤層(III)間の凝集力が得にくく、積層体としての接着力が低下してしまう。ポリオール成分(M)の数平均分子量を特定の範囲にすることで、イソシアネート成分(K)のNCO基との反応に偏りが生じることがなくなり、接着剤層(III)のラミネート接着剤組成物(J)は、架橋密度が高く、強固でありながらも柔軟性を兼ね備えた硬化膜となり、インキ層(II)と接着剤層(III)間の凝集力が得られ、積層体として強い接着力が得られる。
【0033】
また、前記ポリオール成分(M)は、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオール(ただしいずれも末端に水酸基を有する)を含む。ポリエステルポリオール、および、ポリエーテルポリオールは、その構造から、有機溶剤耐性に優れ、水性インキ(A)のバインダー樹脂(B)との親和性が高く、ラミネート接着剤組成物(J)のインキ層(II)への塗工適性が優れ、ムラのない均一な塗膜の形成が可能である。これにより、印刷画像を損ねず、より外観が良好な積層体が得られる。さらには、ムラのない均一であるとともに、柔軟な塗膜を形成するため、インキ層(II)と接着剤層(III)に高い凝集力が得られ、外部応力に対する歪が少なく、接着力が強い積層体を得ることができる。
【0034】
以上のように、色ムラがなく印刷画質が良好で、安定なインクジェット吐出性を有し、各層間の接着力にも優れ、更にラミネート加工後であっても、良好な印刷画質や優れた接着力が維持される積層体を得るには、本実施形態の積層体の構成が必須不可欠である。
【0035】
続いて以下に、本実施形態の積層体を構成する各成分について、詳細に説明する。
【0036】
<インキ層(II)、水性インクジェットインキ(A)>
次に、本実施形態の積層体を構成するインキ層(II)について説明する。前記インキ層(II)は、水性インクジェットインキ(A)(以下、単に「水性インキ」ともいう)の乾燥膜からなる層であり、水性インキ(A)は、水を含む液状媒体と、バインダー樹脂(B)と、顔料とを含み、前記バインダー樹脂(B)の水酸基価が3mgKOH/g以上であり、構成単位として、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)を含む、水性化された樹脂を含んでいる。
【0037】
<バインダー樹脂(B)>
本実施形態の水性インキ(A)に含まれるバインダー樹脂(B)は、水酸基価が3mgKOH/g以上であり、構成単位として、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)を含む、水性化された樹脂を含む。
【0038】
本発明における「バインダー樹脂」とは、インキ層(以下、印刷層ともいう)を構成する主成分であり、その主たる目的は基材、及び、ラミネート接着剤に接着させるために使用される樹脂である。後述するように、本発明に用いられる水性インキは顔料分散樹脂を含んでもよいが、顔料分散樹脂は、顔料の分散安定性を主たる目的として使用される樹脂である。よって、前記顔料分散樹脂とバインダー樹脂とは、顔料に対する吸着率によって区別される。すなわち、顔料と、樹脂と、水系媒体とを含む顔料分散液であって、顔料濃度を5質量%とし、水の量を前記水系媒体全量中98質量%以上とした顔料分散液において、前記顔料に対する前記樹脂の吸着率が35質量%以上である樹脂を顔料分散樹脂、35質量%未満である樹脂をバインダー樹脂と判断する。
【0039】
なお、上記吸着率の測定に使用する顔料分散液は、例えば、後述する顔料分散液Cの製造例に記載した方法により、顔料濃度20質量%の高濃度顔料分散液を製造したのち、前記顔料濃度が5質量%になるまで、水で希釈することで作製できる。また上記吸着率は、例えば、前記顔料分散液に対して超遠心分離処理(例えば、30,000rpmで4時間)を行ったのち、上澄み液中に含まれる樹脂量を測定し、下記式(1)を用いて算出することができる。
【0040】
式(1):吸着率(%)=(WR1-WR2)×100/WR1
【0041】
ただし上式(1)において、WR1は、超遠心処理前の顔料分散液中に含まれる樹脂量を表し、WR2は、上澄み液中に含まれる樹脂量を表す。
【0042】
一般に樹脂の形態として、水溶性樹脂、並びに、非水溶性樹脂であるハイドロゾル、及び、エマルジョンが知られている。ここで「水溶性樹脂」とは、対象となる樹脂の、25℃・1質量%水混合液が、肉眼で見て透明であるものを指す。また「ハイドロゾル」とは、樹脂中に存在する酸性及び/または塩基性の官能基を中和し、分散媒中に分散させた形態を指し、「エマルジョン」とは、乳化剤を樹脂微粒子表面に吸着させ、分散媒中に分散させた形態を指す。本実施形態では、バインダー樹脂(B)として、水性化された樹脂、すなわち、水溶性樹脂またはハイドロゾルを使用することを特徴とする。これらの樹脂は、その少なくとも一部がインキ中の水系媒体に対して膨潤及び/または溶解しており、ノズルの気液界面における析出を抑制し、吐出安定性を向上させる観点から好適に選択される。
【0043】
また、共重合体を構成するモノマーの配列として、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合等が知られているが、本実施形態のバインダー樹脂(B)は、上記のいずれの形態であっても使用することができる。
【0044】
本実施形態で用いられるバインダー樹脂(B)は、構成単位として、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)由来の構造を含む。酸基を含むことで、フィルム基材への接着性や、ラミネート加工後の接着力を向上させることができる。なお、前記「酸基」として、カルボン酸(カルボキシル)基、スルホン酸基、ホスホン酸基等があり、本発明ではいずれを選択してもよい。中でも、吐出安定性向上の観点から、カルボキシル基を選択することが好ましい。
【0045】
酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)としては、公知の物を使用することが出来る。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリロイルオキシイソ酪酸、メタクリロイルオキシイソ酪酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンカルボン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸等が挙げられる。これらの酸基を含むエチレン性不飽和単量体(a1)は、単独、あるいは複数使用可能である。なお本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0046】
本実施形態で用いられるバインダー樹脂(B)の酸価は、吐出安定性やラミネート加工後の接着力を向上させるという観点から、10~60mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは25~45mgKOH/gである。
【0047】
なお、本明細書において「酸価」とは、1gの試料中に含まれる酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を意味する。樹脂の酸価は、前記樹脂を構成する各構成単位(単量体)から算出してもよいし、実験的に測定してもよい。実験的に測定する方法を例示すると、京都電子工業社製の電位差自動滴定装置AT-710Sを用い、水酸化カリウムのエタノール溶液(0.1mol/L)で試料溶液を滴定する。滴定終了後、終点到達までに添加した前記エタノール溶液の量から、酸価を算出する。
【0048】
また、本実施形態で用いられるバインダー樹脂(B)は、吐出安定性やラミネート加工度の接着力を向上させるため、構成成分として水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)由来の構造を含む。前述の通り、前記単量体(b2)中の水酸基は、フィルム基材上の極性基や、接着剤層(III)中に存在するイソシアネート成分(K)と化学結合を形成でき、ラミネート加工後の接着力が向上する。このように、フィルム基材とインキ層(II)、インキ層(II)と接着剤層(III)の構成成分が反応することにより、層間の凝集力が増し、接着力の強い積層体が得られる。また、後述するラミネート接着剤組成物(J)を用いることで、前記水酸基との架橋構造の形成が促進され、非常に強固な積層体を得ることが可能となる。
【0049】
水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)としては、公知の物を使用することが出来る。具体的にはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらの水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)は、単独、あるいは複数使用可能である。
【0050】
本発明で用いられる樹脂(B)の水酸基価は、3mgKOH/g以上であり、吐出安定性(初期吐出性及び待機吐出性)、乾燥性、ラミネート強度を向上させるという観点から、より好ましくは5~50mgKOH/gであり、更に好ましくは10~45mgKOH/gである。
【0051】
なお、本明細書において「水酸基価」とは、1gの試料をアセチル化するのに必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を意味する。上記水酸基価は、酸価と同様、前記樹脂を構成する各構成単位(単量体)から算出してもよいし、実験的に測定してもよい。実験的に測定する方法を例示すると、試料にアセチル化試薬(無水酢酸の25質量%ピリジン溶液)を加え、加熱してアセチル化したのち、放冷し、水を加えて前記無水酢酸を加水分解する。その後、溶剤としてエタノールを加え、酸価と同様の電位差自動滴定装置を用いて、水酸化カリウムのエタノール溶液(0.5mol/L)で試料溶液を滴定する。滴定終了後、終点到達までに添加した前記エタノール溶液の量から、水酸基価を算出する。
【0052】
本発明で用いられるバインダー樹脂(B)は、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)由来の構造、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)由来の構造以外の構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう)を、1種あるいは複数種含むことができる。バインダー樹脂(B)が(メタ)アクリル系、または、スチレン(メタ)アクリル系である場合、その他の構成単位を形成するエチレン性不飽和単量体として、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン等のスチレン系単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラトリアコンタノイル(メタ)アクリレート、ヘキサトリアコンタノイル(メタ)アクリレート等のアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;
(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノブチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノオクチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノベンジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノフェニルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノヘキサデシルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノオクタデシルエーテル等のアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル系単量体;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリル系単量体;等が挙げられる。なお「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0053】
上記に例示したその他の構成単位を形成するエチレン性不飽和単量体の中でも、吐出安定性に優れるインキが得られる観点から、芳香環構造を有する単量体が好適に選択される。また、重量平均分子量及びガラス転移温度を、上記範囲内に収めやすく、本発明の効果が好適に奏される点から、スチレン系単量体が特に好ましく選択される。
【0054】
上記の通り、バインダー樹脂(B)は構成単位として、エチレン性不飽和単量体を含む。従って、前記樹脂(B)として、(メタ)アクリル系、スチレン(メタ)アクリル系の樹脂が好適に使用される。特に、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性を確保するという観点から、スチレン(メタ)アクリル系の樹脂を用いることが好適である。
【0055】
本発明で用いられる水性インキは、バインダー樹脂(B)のみを含んでいてもよいし、前記バインダー樹脂(B)に相当しない樹脂を併用してもよい。その場合、バインダー樹脂(B)に相当しない樹脂として、ウレタン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系の樹脂等が使用できる。また、本発明の効果を阻害しない限り、前記バインダー樹脂(B)に相当しない樹脂が、エマルジョンであってもよい。
【0056】
本実施形態で用いられるバインダー樹脂(B)は、インクジェットヘッドのノズルでの析出や固着を抑制することで吐出安定性を向上させ、更に耐ブロッキングやラミネート加工後の接着力を高めることができるという観点から、重量平均分子量(Mw)が5,000~45,000が好ましく、より好ましくは10,000~30,000の範囲である。5,000以上であれば、耐ブロッキング性やラミネート加工後の接着力が十分に確保でき好ましく、45,000以下であれば、インクジェットヘッドからの吐出安定性を好適な状態で維持できるため好ましい。更に、上記の重量平均分子量を有するバインダー樹脂(B)は、ラミネート加工等の際に、印刷層中のバインダー樹脂(B)が分子運動を起こし、ラミネート接着剤と相互作用を形成することで、層間の接着力が一層の高くなると考えられる。
【0057】
本発明におけるバインダー樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)、及び後述する数平均分子量(Mn)は常法によって測定することができる。本発明においては、TSKgelカラム(東ソー社製)及びRI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)を用い、展開溶媒にTHFを用いて測定したものであり、いずれもポリスチレン換算値である。
【0058】
本発明で用いられるバインダー樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)としては、ラミネート加工後の接着力の観点から、35~110℃であることが好ましく、より好ましくは50~100℃である。35℃以上であれば、吐出安定性に優れ、110℃以下であれば、乾燥性やラミネート加工後の接着力の悪化を引き起こすことがない。
【0059】
なお、本発明のバインダー樹脂(B)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めた値である。具体的には、樹脂を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量したのち、DSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピーク温度を、本発明におけるガラス転移温度とする。
【0060】
上記効果を好適に発現させる観点から、本発明のバインダー樹脂(B)の水性インキ組成中における含有量は、不揮発分換算で、水性インキ全質量中の1質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上15質量%以下の範囲である。
【0061】
<顔料>
本実施形態で使用される水性インキ(A)の顔料として、無機顔料、及び有機顔料のいずれも使用できる。これらの顔料は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。無機顔料の一例として、白色顔料として酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、アルミナホワイト等が、黒色顔料として、カーボンブラックや酸化鉄等が挙げられる。
【0062】
白色顔料としては、酸化チタンが好適に用いられる。酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型のいずれも使用することができるが、印刷物の隠蔽性を上げるためにもルチル型を用いることが好ましい。また、塩素法、硫酸法等いずれの方法で製造したものでもよいが、塩素法にて製造された酸化チタンを使用した方が、白色度が高いことから好ましい。
【0063】
酸化チタンは、無機化合物及び/または有機化合物により顔料表面を処理したものであることがより好ましい。無機化合物の例として、シリコン(Si)、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、チタンの化合物、及びこれらの水和酸化物を挙げることができる。また有機化合物の例として、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、高級脂肪酸またはその金属塩、有機金属化合物などを挙げることができるが、中でも多価アルコール、またはその誘導体は酸化チタン表面を高度に疎水化し、分散安定性を向上させることが可能であり、より好ましく用いられる。
【0064】
なお、白色顔料として、中空樹脂粒子を使用することも好適である。中空樹脂粒子は、酸化チタン等と比較して比重(見かけ密度)が小さく、経時における沈降を抑制しやすいため、保存安定性に優れたインキが得られる。また、保存安定性と隠蔽性とが両立したホワイトインキを得るため、顔料として、中空樹脂粒子と酸化チタンとを併用してもよい。
【0065】
黒色顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)が好適に用いられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11~40nm、BET法による比表面積が50~400m2/g、揮発分が0.5~10質量%、pH値が2~10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品として、具体的には、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学社製);RAVEN1080、1255(以上、ビルラカーボン社製);REGAL330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット社製);Nipex90、150T、160IQ、170IQ、75、PrinteX85、95、90、35(以上、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)等があり、いずれも好ましく使用することができる。
【0066】
カーボンブラックのほかにも、黒色顔料として、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンアゾブラック等が使用できる。また、後述するシアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、ブラウン顔料、オレンジ顔料等の有彩色顔料を複数使用し、黒色顔料とすることもできる。
【0067】
有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0068】
具体的にカラーインデックスで例示すると、シアン顔料としてはC.I.Pigment Blue 1、2、3、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等が挙げられる。
【0069】
また、マゼンタ顔料としてはC.I.Pigment Red 5、7、12、31、48、49、52、53、57、112、120、122、146、147、149、150、168、170、184、185、188、202、209、238、242、254、255、264、269、282;C.I.Pigment Violet 19、23、29、30、37、40、50等が挙げられる。
【0070】
また、イエロー顔料としてはC.I.Pigment Yellow 10、11、12、13、14、16、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213等が挙げられる。
【0071】
また、上述以外にも、オレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの特色を使用することもできる。具体的には、C.I.Pigment Orange 16、36、38、40、43、62、63、64、71、C.I.Pigment Green 7、10、36、Pigment Brown 23、25、26などを挙げることができる。
【0072】
なお、本実施形態の積層体の製造に使用される水性インキ(A)では、印刷物の色相や発色性を好適な範囲に収めるため、上記の顔料を複数混合して用いることができる。例えば、カーボンブラックを使用したブラックインキに対し、低印字率における色味を改善するため、シアン顔料、マゼンタ顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料から選択される1種以上の顔料を少量添加することができる。
【0073】
これらの顔料は、ホワイトインキの場合を除き、インキ全量に対して2質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、2.5質量%以上15質量%以下の範囲で含まれることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることが特に好ましい。また、ホワイトインキの場合、顔料の含有量は、ホワイトインキ全量に対して5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、8質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有率を2質量%以上(ホワイトインキの場合は5質量%以上)にすることで、1パス印刷であっても十分な発色性(ホワイトインキの場合は隠蔽性)を得ることができる。また、顔料の含有率を20質量%以下(ホワイトインキの場合は40質量%以下)とすることで、インキの粘度をインクジェット印刷に適した範囲に収めることができるとともに、インキの保存安定性も良好なまま維持でき、結果として長期の吐出安定性を確保することができる。
【0074】
<顔料分散樹脂>
顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、(1)顔料表面の少なくとも一部を、水溶性、または非水溶性の顔料分散樹脂によって被覆する方法、(2)水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、(3)顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散樹脂や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法(自己分散顔料)、などを挙げることができる。
【0075】
本実施形態の積層体の製造に用いられる水性インキ(A)では、上記のうち(1)の補法、すなわち、顔料分散樹脂を用いる方法が好適に選択される。これは、樹脂を構成する重合性単量体組成や分子量を選定・検討することにより、顔料に対する顔料分散樹脂の被覆能や前記顔料分散樹脂の電荷を容易に調整できるため、微細な顔料に対しても分散安定性を付与することが可能となり、更には吐出安定性、発色性、及び色再現性に優れた印刷物が得られるためである。
【0076】
上記顔料分散樹脂の種類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系、スチレン(メタ)アクリル系、(無水)マレイン酸系、スチレン(無水)マレイン酸系、αオレフィン(無水)マレイン酸系、ウレタン系、エステル系の樹脂等が挙げられる。中でも、顔料の吸着を強固にし、顔料分散体を安定化させるという観点から、αオレフィン(無水)マレイン酸系、(メタ)アクリル系、スチレン(メタ)アクリル系から選択される1種以上の樹脂を使用することが好ましい。なお本明細書において「(無水)マレイン酸」とは、マレイン酸または無水マレイン酸を表す。
【0077】
また、顔料分散樹脂は芳香環構造を含有する単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。これは、顔料分散樹脂中に含まれる芳香環構造と、ラミネート接着剤組成物(J)に含まれるウレタン結合中の窒素原子とが形成するπ-カチオン相互作用を利用した接着力の向上、水性インキ(A)における顔料の分散安定性の確保・向上の効果が好適なものとなる。芳香環構造を含有する単量体に由来する構造単位の量は、顔料分散樹脂全量に対し、10~80質量%であることが好ましく、15~75質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。
【0078】
また、顔料分散樹脂の重量平均分子量は、5,000以上100,000以下であることが好ましい。より好ましくは10,000以上50,000以下の範囲であり、更に好ましくは15,000以上30,000以下の範囲である。重量平均分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、また水性インキ(A)に適用した際の粘度調整などが行いやすい。特に、重量平均分子量が5,000以上であると、水性インキ(A)中に添加されている水溶性有機溶剤に対して顔料分散樹脂が溶解しにくいために、顔料に対しての前記顔料分散樹脂の吸着が強く、分散安定性が優れる。また、重量平均分子量が100,000以下であると、分散時の粘度が低く抑えられるとともに、インクジェットヘッドからの吐出安定性が優れ、長期にわたって安定な印刷が可能になる。
【0079】
顔料分散樹脂として水溶性樹脂を用いる場合、その酸価は60~400mgKOH/gであることが好ましい。酸価を前述の範囲内とすることで顔料の分散安定性、及び、インキの保存安定性を好適なものとすることができる。また、前記酸価として、より好ましくは120~350mgKOH/gであり、更に好ましくは150~300mgKOH/gである。一方、顔料分散樹脂として非水溶性樹脂を用いる場合、その酸価は0~100mgKOH/gであることが好ましく、5~90mgKOH/gであることがより好ましく、10~80mgKOH/gであることが更に好ましい。なお、顔料分散樹脂の酸価は、上記のバインダー樹脂の場合と同様に測定することができる。
【0080】
本実施形態において、顔料分散樹脂の配合量は、顔料に対して1~50質量%であることが好ましい。顔料分散樹脂の配合量を、顔料に対して1~50質量%とすることで、顔料分散液の粘度を抑え、前記顔料分散液や水性インキ(A)の粘度安定性・分散安定性を良好なものにできる。顔料に対する顔料分散樹脂の配合量として、より好ましくは2~45質量%、更に好ましくは4~35質量%である。
【0081】
<水溶性有機溶剤>
本実施形態の積層体の製造に用いられる水性インキ(A)は、インクジェットヘッドのノズル上でのインキ固着を抑制することで吐出安定性を向上させ、更には非浸透性基材上での乾燥性が良化する観点から、水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。また、水性インキ(A)の分散安定性を好適なものとすることができ、結果として、優れた吐出性及び保存安定性を有するインキを得ることができる。
【0082】
水溶性有機溶媒は、特に限定されるものでなく、既知のものを任意に用いることができるが、顔料分散樹脂や、必要に応じて添加されるバインダー樹脂、界面活性剤等の材料成分との相溶性・親和性の観点から、グリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を含有することが好ましい。特に、分子構造中に水酸基を1個以上含むことが好ましい。これは、水溶性有機溶媒の水酸基が、ラミネート接着剤組成物(J)のイソシアネート成分(K)と反応することにより、ラミネート加工後の接着力が向上するためである。更に、水溶性有機溶剤の1気圧下の沸点が、100℃以上240℃未満であることが好ましい。100℃以上にすることで、水性インキ(A)の吐出性、分散安定性、保湿性が良好になるうえ、240℃未満にすることで、水性インキ(A)の乾燥性、混色滲み、印刷物の耐ブロッキング性、積層体の接着力が良好になる。
【0083】
なお、上記の1気圧下での沸点は、DSC(示差走査熱量分析)等の熱分析装置を用いることにより測定することができる。
【0084】
本実施形態の積層体の製造に用いられる水性インキ(A)における、水溶性有機溶剤(E)の総量は、水性インキ(A)全量に対し、3質量%以上40質量%以下であることが好ましい。更に、インクジェットヘッドからの吐出安定性、並びに、ラミネート接着剤組成物(J)と組み合わせた際に十分な接着力が確保できるという観点から、5質量%以上35質量%であることがより好ましく、8質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の総量を3質量%以上にすることでインキの保湿性、吐出安定性が優れたインキとなり、ラミネート加工後の接着力が良好となる。また水溶性有機溶剤の含有量の合計を40質量%以下にすることで、乾燥性及び混色滲みが良好となり、かつ、耐ブロッキング性が良好な印刷物が得られる。
【0085】
好適に用いられるアルキルポリオール系溶剤としては、例えば1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0086】
好適に用いられるグリコールエーテル系溶剤として、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、などのグリコールジアルキルエーテル類などを挙げることができる。
【0087】
中でも、優れた吐出安定性、保湿性、乾燥性と、ラミネート加工後の接着性を両立することができる点で、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及び、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を選択することが好ましい。
【0088】
<界面活性剤>
本実施形態の水性インキ(A)は、その表面張力を調整し、透明基材1上の濡れ性を確保し、印刷画質を向上させる目的で、界面活性剤を使用することが好ましい。一方で、表面張力が低すぎると、インクジェットヘッドのノズル面が水性インキ(A)で濡れてしまい、吐出安定性を損なうことから、界面活性剤の種類と量の選択は重要である。最適な濡れ性の確保と、インクジェットヘッドからの安定吐出の実現という観点から、シロキサン系、アセチレン系、アクリル系、フッ素系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系等の界面活性剤を使用することが好ましく、シロキサン系及び/またはアセチレン系界面活性剤を使用することが特に好ましい。界面活性剤の添加量としては、水性インキ(A)全量に対して、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。0.05質量%以上とすることで界面活性剤の機能を十分に発揮することができ、また、5.0質量%以下とすることで、水性インキ(A)の保存安定性及び吐出安定性を好適なレベルに維持できる。
【0089】
<その他の成分>
また本実施形態の積層体の製造に用いられる水性インキ(A)は、上記の成分の他に、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、増粘剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、水性インキ(A)の全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好適である。
【0090】
<接着剤層(III)、ラミネート接着剤組成物(J)>
次に、本実施形態の積層体を構成する接着剤層(III)について説明する。前記接着剤層(III)は、イソシアネート成分(K)と、ポリオール成分(M)とを含むラミネート接着剤組成物(J)の硬化膜からなる層であり、前記イソシアネート成分(K)のイソシアネート基のモル数と前記ポリオール成分(M)の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比が、1.0~3.0の範囲であり、前記ポリオール成分(M)の数平均分子量が500~3,200であり、ポリエステルポリオール、あるいは、ポリエーテルポリオールを含む。
【0091】
<イソシアネート成分(K)>
イソシアネート成分(K)は、イソシアネート化合物をそのまま使用してもよいし、イソシアネート化合物から得られるアダクト体、イソシアヌレート体等を使用してもよい。なお「アダクト体」とは、イソシアネート化合物とトリメチロールプロパンとの付加体であり、「イソシアヌレート体」とは、イソシアネート化合物の三量体である。また、本実施形態の積層体に使用する場合、イソシアネート化合物と、ポリオール(後述するポリオール成分(M)とは異なる)の反応生成物であって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含むイソシアネート化合物の形態であることが好ましい。ウレタンプレポリマーを含むことで、イソシアネート成分の分子量を調整することが可能になり、これにより、強く柔軟な膜を得ることができ、積層体としての接着力が良好になる。更には、ポリオールは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールが好ましく、特にポリエーテルポリオールが好ましい。これにより、後述するポリオール成分(M)との相溶性が良好になり、接着剤層(III)の凝集力を高めることができる。また、ラミネート加工時のラミネート接着剤組成物(J)の塗工性が良好になり、積層体としての高い接着力が得られる。好ましいウレタンプレポリマーの具体例として、後述する芳香族イソシアネートとポリエーテルポリオールとを反応させたウレタンプレポリマー化合物が挙げられる。
【0092】
イソシアネート化合物は、特に限定されるものでなく、既知のものを任意に用いることができるが、ラミネート加工後の接着力を高める観点から、芳香族イソシアネート化合物を含むことが好ましい。芳香族イソシアネート化合物の反応性は、脂肪族や脂環式のイソシアネート化合部に比べて高く、その結果として、ラミネート接着剤組成物(J)において良好な接着力が得られ、強靭性のある接着剤層(III)となる。また、前記芳香族イソシアネート化合物の芳香環構造が有するπ電子が、前記インキ層(II)と分子間相互作用を形成すると考えられるために、積層体全体の接着力も向上する。
【0093】
イソシアネート成分(K)に含まれる芳香族イソシアネート化合物の割合は、10質量%以上70質量%以下が好ましい。芳香族イソシアネート化合物が前記範囲にあることで、積層体におけるインキ層の塗工外観が良化し、ラミネート加工後の接着力も高くなる。より好ましくは、20質量%以上60質量%以下である。
【0094】
前記芳香族イソシアネート化合物として、好適には、イソシアネート基を複数有する化合物が使用される。前記芳香族イソシアネート化合物の具体的な例として、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、テトラヒドロナフチレン-1,5-ジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0095】
前記芳香族イソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物として、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイシシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
【0096】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等を開始剤として重合して得られる化合物等が挙げられる。また、官能基数の異なるオキシラン化合物を複数組み合わせて用いることもできる。
【0097】
一方、前記ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを反応させて得られる化合物が挙げられる。多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸等の多価カルボン酸、若しくはそれらのジアルキルエステル、またはそれらの混合物が挙げられる。またグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類、若しくはそれらの混合物が挙げられる。
【0098】
本実施形態の積層体に使用する場合、前記イソシアネート成分(K)全体におけるイソシアネート基の含有率は10質量%以上20質量%未満であることが好ましい。イソシアネート成分(K)中のイソシアネート基の含有率が上記範囲内にあることで、印刷画質を損なうことなく、より外観の良好な積層体を形成することができる。なおイソシアネート基の含有率(質量%)は塩酸による滴定で求められる。
【0099】
<ポリオール成分(M)>
次に、ラミネート接着剤組成物(J)に含まれるポリオール成分(M)について説明する。
【0100】
本実施形態のポリオール成分(M)は、数平均分子量が500~3,200であり、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオール(ただしいずれも末端に水酸基を有する)を含む。ポリエステルポリオール、および、ポリエーテルポリオールは、その構造から、有機溶剤耐性に優れ、水性インキ(A)のバインダー樹脂(B)との親和性が高く、ラミネート接着剤組成物(J)のインキ層(II)への塗工適性が優れ、ムラのない均一な塗膜の形成が可能である。これにより、印刷画像を損ねず、よい外観が良好で、積層体としての接着力を高めることができる。さらに、柔軟な塗膜を形成するため、インキ層(II)と接着剤層(III)間の高い凝集力が得られる。
【0101】
また、数平均分子量が大きいと、イソシアネート成分(K)のNCO基との反応が遅く、イソシアネート成分(K)がインキ層(II)へ過剰に浸透してしまい、接着剤層(III)の接着力が低下する。数平均分子量が小さいと、ポリオール成分(M)と、イソシアネート成分(K)のNCO基との反応が積極的に進んでしまい、水性インキ(A)のバインダー樹脂(B)に含まれるエチレン性不飽和単量体(b2)由来の水酸基との反応が乏しく、インキ層(II)と接着剤層(III)間の凝集力が得にくくなる。ポリオール成分(M)の数平均分子量を特定の範囲にすることで、イソシアネート成分(K)のNCO基との反応に偏りが生じることがなくなり、接着剤層(III)のラミネート接着剤組成物(J)は、架橋密度が高く、強固でありながらも柔軟性を兼ね備えた硬化膜となり、インキ層(II)と接着剤層(III)間の凝集力が得られ、積層体として強い接着力が得られる。
【0102】
また、ポリオール成分(M)のより好ましい実施形態としては、分子量が500~3,200であるポリオールが、ポリオール成分(M)全体に対して25質量%以上、好ましくは55質量%以上である。例えば、GPCを用いて、標準サンプルで検量後、分子量分布を測定することで、ポリオール成分(M)中の、分子量が500~3,200の分量が求められる。また、ポリオール(M)中に含まれる、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの合計量は、40質量%以上が好ましく、よりこのましくは、55質量%以上である。
前述したポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオールが持つ構造特性、特定の数平均分子量範囲に収めることの効果が、より効果的に得られ、接着力の高い積層体が得られる。
【0103】
前記ポリエステルポリオール(ただし末端に水酸基を有する)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の多価カルボン酸、若しくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類、若しくはそれらの混合物との反応生成物;あるいは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類の開環重合反応物;等が挙げられる。また、ポリエステルポリオールとして、ヒマシ油等の植物油、並びに、前記植物油由来の水酸基を有するポリエステル化合物を使用することもできる。
【0104】
更に、上記例示したポリエステルポリオール中の水酸基の一部に、無水トリメリット酸などの酸無水物を反応させたものを用いることもできる。酸無水物を付加したポリエステルポリオールを用いることにより、フィルム基材に対する密着性及び積層体全体の接着力を向上できる。なお無水トリメリット酸を付加させる場合、その使用量は、反応前のポリエステルポリオール100質量%中、0.1~5質量%であることが好ましい。
【0105】
また、前記ポリエーテルポリオール(ただし末端に水酸基を有する)としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られる化合物が挙げられる。
【0106】
また、前記ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、ポリエーテルジオールを反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0107】
本実施形態のポリオール成分(M)は、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオール(ただしいずれも末端に水酸基を有する)の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、その他のポリオールを含むことができる。
【0108】
その他のポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール等の高分子ポリオール(ただしいずれも末端に水酸基を有する)や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の低分子ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子トリオールが使用できる。
【0109】
また、ポリオール成分(M)としては、上記に例示したポリオールを1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。特に、本実施形態の積層体の形成に使用されるラミネート接着剤組成物(J)の場合、前記ポリオール成分(M)として、数平均分子量が異なる2種以上のポリオールを含むことが好ましい。具体的には、数平均分子量が100以上500未満であるポリオールと、前記数平均分子量が500以上2,000未満であるポリオールと、前記数平均分子量が2,000以上5,000以下であるポリオールとを含む場合、あるいは、前記数平均分子量が100以上1,000未満であるポリオールと、前記数平均分子量が1,000以上5,000以下であるポリオールとを含む場合、等が好適である。上記のうち、数平均分子量が1,000未満であるポリオールは、インキ層(II)に対する浸透性に優れるうえ、イソシアネート成分(K)との反応性も良好であるため、前記インキ層(II)や透明基材1に対する接着力の向上に寄与する。また、数平均分子量が1,000以上であるポリオールは、ラミネート接着剤組成物(J)の硬化膜の凝集力を高めるのに有効であり、結果として接着剤層(III)の強度向上に寄与する。
【0110】
本実施形態のラミネート接着剤組成物(J)において、イソシアネート成分(K)中のイソシアネート基のモル数と、併用する前記ポリオール成分(M)中の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比は、1.0~3.0の範囲である。より好ましくは、1.2~2.6の範囲であり、さらに好ましくは、1.4~2.2の範囲である。イソシアネート成分(K)中のイソシアネート基のモル数と、併用する前記ポリオール成分(M)中の水酸基のモル数の比(NCO/OH比)を1.0以上にすることで、ポリオール成分(M)の水酸基と反応する十分なNCO基を提供でき、接着力の高いラミネート接着剤組成物の効果膜が得られる。また、ラミネート加工後の接着力が良好なまま維持される積層体を得ることができ、例えば、ラミネート加工後に高湿度環境下でエージング処理を実施したとしても、接着力が低下することがない。NCO/OH比を3.0以下にすることで、未反応のNCO基を持つイソシアネート成分を低減し、ラミネート接着剤組成物の硬化不良を抑制することができる。
【0111】
<その他の成分>
本実施形態の積層体の形成に使用されるラミネート接着剤組成物(J)には、平均粒子径が1×10-4mm以上4×10-4mm以下である粒子成分を更に含有させることができる。上記範囲内の平均粒子径を有する粒子成分を含有したラミネート接着剤組成物(J)を使用した場合、透明基材1のガスバリア性が高く、また高速で塗工・貼り合わせを行った場合であっても、より外観及び接着力に優れた積層体を得ることができる。なお、上記「平均粒子径」とは体積基準での累積50%径であり、例えば、日機装社製ナノトラックUPA-EX150により求めることができる。
【0112】
かかる粒子成分として、無機化合物または有機化合物のいずれも用いることができ、単独で用いても二種以上を併用しても良い。
【0113】
無機化合物からなる粒子成分としては、例えば、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナホワイト、酸化亜鉛、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、活性炭、カオリン、タルク、マイカ、グラファイト、モンモリロナイト、セリサイト、ベントナイト、パーライト、ゼオライト、蛍石、などの粉体が挙げられる。これらのなかでもシリカやタルクが好ましい。
【0114】
また有機化合物からなる粒子成分として、上述の水性インキ(A)に使用できる樹脂微粒子が好適に使用できるほか、例えば、ベンゾグアナミン系樹脂、シロキサン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、セルロースなどの樹脂微粒子を使用してもよい。上記のなかでも、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子が好適に使用できる。
【0115】
粒子成分の添加量は、ラミネート接着剤組成物(J)全量に対して0.01~10質量%とすることが好ましい。上記範囲とすることによって、外観及び接着力をともに向上できる。
【0116】
また、本実施形態の積層体の形成に使用されるラミネート接着剤組成物(J)には、シランカップリング剤を添加してもよい。前記シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等の官能基と、メトキシ基、エトキシ基等の官能基を有するものを好適に使用することができる。例えば、ビニルトリクロルシラン等のクロロシラン、N-(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、ラミネート接着剤組成物(J)全量に対して0.1~5質量%であることが好ましい。
【0117】
その他、本実施形態の積層体の形成に使用されるラミネート接着剤組成物(J)には、更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。また、接着性能を更に高めるために、チタネート系カップリング剤、リン酸、リン酸誘導体、酸無水物、粘着性樹脂等の助剤を使用することができる。更に、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を使用することができる。
【0118】
本実施形態の積層体を構成する接着剤層(III)は、少なくともイソシアネート成分(K)を含む組成物と、少なくともポリオール成分(M)を含む組成物とを使用前に混合して、ラミネート接着剤組成物(J)を調製したのち、インキ層(II)上、及び/または、基材4上に塗工することで、接着剤層の前駆体を得た後に形成されることが好ましい。また、ラミネート接着剤組成物(J)として、上述した粒子成分を含む場合、前記粒子成分は、少なくともポリオール成分(M)を含む組成物の側にあらかじめ混合しておくことが好ましい。
【0119】
また、上記少なくともイソシアネート成分(K)を含む組成物と、少なくともポリオール成分(M)を含む組成物との混合は、流動性が確保できる範囲で、できるだけ低温で行うことが好ましく、具体的には25℃以上、80℃以下で行うことが好ましい。更に、前記ラミネート接着剤組成物(J)を調製した直後の60℃での粘度は、好ましくは50mPa・s以上、5000mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以上、3000mPa・s以下である。なお、本発明において、「調製した直後」とは、均一になるように混合した後1分以内であることを意味し、また上記の粘度はB型粘度計により測定した値を示す。60℃における粘度が5,000mPa・s以下であれば、インキ層(II)上、及び/または、基材4上への塗工を容易に行うことができ、良好な作業性を確保できるうえ、塗装外観も良化する。また、60℃における粘度が50mPa・s以上であれば、初期凝集力が十分高いために積層体全体の接着力が向上し、更には塗工時の厚みが均一になるため外観不良を生じることもなく、また反りが発生することもない。
【0120】
続いて、本実施形態の積層体及びその製造方法について説明する。本発明の積層体は、上記の通り、透明基材1と、インキ層(II)と、接着剤層(III)と、基材4とを、この順で有する。
【0121】
<透明基材1>
本明細書において「透明基材」とは、当該基材が可視光を透過することを表し、具体的には、前記基材越しに、黒色の文字(8ポイントのMS明朝体からなる文字)が視認できることを表す。本実施形態の積層体を構成する透明基材1として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの含塩素系樹脂;セロハン;もしくは、これらの複合材料からなるフィルム状またはシート状のものが利用できる。なお、これらの透明基材1に用いる基材は、ポリビニルアルコールなどによりコート処理が施されていても良く、また、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理が施されていても良い。
【0122】
<インキ層(II)>
本実施形態の積層体を構成するインキ層(II)は、バインダー樹脂(B)と、顔料とを含む水性インクジェットインキ(A)の乾燥膜からなる層であり、前記バインダー樹脂(B)の水酸基価が3mgKOH/g以上であり、構成単位として、酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b1)、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)を含む水性化された樹脂を含んでいる。
【0123】
本実施形態の積層体を構成するインキ層(II)の厚さは、0.2~20μmであることが好ましい。塗布量を上記範囲に収めることで、混色滲みを抑えた良好な印刷画質が得られ、積層体として高い接着力が得られる。また、水性インキ(A)の乾燥性が良好になり、印刷物を重ねた際のブロッキングを防止し、ラミネート加工等の後加工に支障をきたすことがない。なお、上記インキ層(II)の厚さは、水性インキ(A)を乾燥させた後の膜の厚さであり、より好ましいインキ層(II)の厚さは、0.3~15μm、特に好ましくは0.4~10μmである。
【0124】
上記水性インキ(A)は単色で使用してもよいし、用途に合わせて複数の色を組み合わせた複数の水性インキ(A)のセットとして使用することもできる。その組み合わせは特に限定されないが、例えばシアン、イエロー、マゼンタの3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を向上させ、文字などの視認性を上げることができる。更にオレンジ、グリーン、バイオレット等の色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。また、ホワイトインキの印刷を行うことで、鮮明な画像を得ることができるとともに、軟包装材料用の積層体として、内容物に対する隠蔽性を上げることができる。更には、本発明の水性インキ(A)から顔料を除外した、実質的に着色剤成分を含まないインキ(クリアインキ)を構成要素として含むインキセットを用い、顔料を含まないインキ層が存在してもよい。
【0125】
水性インキ(A)は、インクジェット印刷方式によって、透明基材1上に印刷される。その際、1パス印刷インクジェット印刷方式(以下、「1パス印刷方式」ともいう)により印刷されることが好適である。「1パス印刷方式」とは、停止している基材に対しインクジェットヘッドを一度だけ走査させる、または固定されたインクジェットヘッドの下部に基材を一度だけ通過させる印刷方式であり、透明基材1上に印刷された水性インキ(A)の上に、再度同じインキが印刷されることがない。1パス印刷方式は、インクジェットヘッドを複数回走査するインクジェット印刷(マルチパス印刷方式)に比べて走査回数が少なく、印刷速度を上げることができることから、印刷速度が要求される産業用途に好適とされる。また、600dpi以上の高い記録解像度において印刷画質の高い印刷物が得られることからも、好適である。なお「記録解像度」はdpi(DotsPerInch)の単位で表されるものであり、1インチあたりに印刷される水性インクジェットインキ液滴の数を表す。また本明細書中における「記録解像度」は、基材の搬送方向における記録解像度、及び前記基材面内で搬送方向に対し垂直方向(以下、記録幅方向とする)における記録解像度の両方を指すものとする。
【0126】
水性インキ(A)を1パス印刷方式で印刷する際、前記水性インキ(A)のドロップボリュームは、前記インクジェットヘッドの性能によるところが大きいが、インキ層(II)の厚さを制御し、印刷画質に優れ接着力に優れた印刷物を得るため、0.6~60pLの範囲であることが好ましい。より好ましくは1~50pLであり、特に好ましくは1.4~40pLである。また、高品質の画像を得るために、ドロップボリュームを変化させることができる階調仕様のインクジェットヘッドを使用することが特に好ましい。
【0127】
本実施形態の積層体の製造方法では、透明基材1上に水性インキ(A)を印刷した後、前記水性インキ(A)を乾燥及び/または硬化させるために、前記水性インキ(A)を加熱してもよく、その際に用いられる加熱方法に関しても、特に制限はない。例えば、加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線(例えば波長700~2500nmの赤外線)乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法などが挙げられる。また上記乾燥方法を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。その際、混色滲みや色ムラを防止するため、前記加熱は、水性インキ(A)の印刷後20秒以内に付与することが好ましく、10秒以内に付与することがより好ましい。
【0128】
本発明の水性インキ(A)は、凝集剤を含む前処理液と組み合わせ、インキ-前処理液セットの形態で使用することもできる。凝集剤を含む前処理液は、記録媒体上にインキ中に含まれる固体成分を意図的に凝集させる層(インキ凝集層)を形成することができる。そして、前記インキ凝集層上に本発明の水性インキ(A)を着弾させることで、インキ液滴間の滲みや色ムラを防止し、印刷画質を著しく向上させることができる。更に、前処理液に使用する材料によっては、印刷物の密着性、耐ブロッキング性、ラミネート適性もまた向上できる。
【0129】
本発明における「凝集剤」とは、水性インキに含まれる、顔料の分散状態を破壊し凝集させる、及び/または、バインダー樹脂(B)を不溶化し前記水性インキを増粘させることができる成分を意味する。本発明の水性インキと組み合わせる前処理液に使用する凝集剤としては、印刷画質を向上できる観点から、金属塩及びカチオン性高分子化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。中でも、金属塩を使用することが好ましく、Ca2+、Mg2+、Zn2+、および、Al3+からなる群から選択される1種以上の多価金属イオンの塩を含むことが特に好ましい。なお、凝集剤として金属塩を使用する場合、その含有量は、前処理液全量に対し、2~25質量%であることが好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。
【0130】
その他前処理液には、水溶性有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、防
腐剤などを適宜に添加することができる。
【0131】
<接着剤層(III)>
本実施形態の積層体を構成する接着剤層(III)は、ポリオール成分(M)とイソシアネート成分(K)とを含むラミネート接着剤組成物(J)の硬化膜からなる層であり、前記イソシアネート成分(K)のイソシアネート基のモル数と前記ポリオール成分(M)の水酸基のモル数の比であるNCO/OH比が、1.0~3.0の範囲であり、前記ポリオール成分(M)の数平均分子量が500~3,200であり、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオールを含む。前記ラミネート接着剤組成物(J)が、インキ層(II)上、及び/または、基材4上に積層され、接着剤層の前駆体が作製されたのち、前記接着剤層の前駆体を介して、インキ層(II)と基材4とを重ね合わせ、更に前記接着剤層の前駆体を硬化させて接着剤層(III)とすることで、本実施形態の積層体となる。
【0132】
前記接着剤層の前駆体を介して、インキ層(II)と基材4を積層し、積層体を作製する方法として、ラミネート加工などがある。
ラミネート加工の方法は、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出しラミネート、ホットメルトラミネート等公知のラミネート方法を用いることができる。ラミネート接着剤組成物(J)をムラなく均一に塗工でき、積層量を制御しやすいことから、ローラ形式で付与されるドライラミネート、ノンソルベントラミネート方法が好ましい。すなわち、ドライラミネート方法は、酢酸エチルなど揮発性有機溶剤を用い、ラミネート接着剤組成物(J)を希釈し、グラビアロールコーター、リバースロールコーター等を用いて、ラミネート接着剤組成物(J)を対象物の表面に塗布する。その後、乾燥により有機溶剤を揮発させることで、接着剤層の前駆体を作製、インキ層(II)と基材4を重ね合わせる。ノンソルベントラミネート方法は、25~120℃程度に加熱したロールコーター等のローラを用いて、ラミネート接着剤組成物(J)を対象物の表面に積層し、接着剤層の前駆体を作製、インキ層(II)と基材4を重ね合わせる。
【0133】
ラミネート接着剤組成物(J)の積層量は、対象物の種類や積層条件等に応じて適宜選択されるが、通常、1.0g/m2以上、5.0g/m2以下であり、好ましくは1.5g/m2以上、4.5g/m2以下である。インキ層(II)と基材4とを重ね合わせ、1日程度静置(エージング)することで、前記ラミネート接着剤組成物(J)が硬化し、本実施形態の積層体となる。なお、本実施形態の積層体で使用されるラミネート接着剤組成物(J)であれば、例えば、積層時及びエージング時の環境湿度が高い状態であっても、充分な接着力を有する積層体が得られる。
【0134】
<基材4>
本実施形態の積層体を構成する基材4として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン12等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの含塩素系樹脂;エチレン-ビニルアルコール共重合物系樹脂;セロハン;紙;アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属箔;もしくは、これらの複合材料からなるフィルム状またはシート状のものが利用できる。また、積層体としての耐久性、耐熱性、耐水性、耐光性、ガスバリア性を高めるために、複合材料を用いてもよく、例えば、アルミニウム蒸着層、アルミナ蒸着層、シリカ蒸着層等を有する、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム等がある。その際、積層体中では、蒸着層が接着剤層(III)と接していることが好ましい。更に、基材4として、上記に例示した基材を複数重ね、積層体としたものを用いてもよい。これにより、積層体としての耐熱性、ガスバリア性等が更に高くなり、より好適な食品パッケージ用の軟包装材料を得ることができる。
【0135】
なお、用いる基材4は、ポリビニルアルコールなどによりコート処理が施されていても良く、また、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理が施されていても良い。
【0136】
本実施形態の積層体を構成する基材4は、25℃における酸素透過度が100cm3/m2・24hrs・atm以下であることが好ましい。上記例示した基材のうち、1μmあたりの酸素透過度が高いもの(例えばポリアミド系樹脂)に関しては、使用時の基材の厚さを大きくすることにより、上記酸素透過度範囲に収めることが可能となる。また蒸着層を有する複合材料は、基材の厚さによらず酸素を透過しにくいため、本実施形態の積層体では好適に使用できる。
【0137】
なお、酸素透過度は、酸素透過率測定装置(例えば、日立ハイテクエンス社製MОCОN酸素透過率測定装置)を用い、JIS K 7126の方法に従い、測定することができる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態である積層体について、更に具体的に説明する。なお、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0139】
<バインダー樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、2-ブタノン72.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱し、酸基を有するエチレン性不飽和単量体としてメタクリル酸4.5部、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体として2-ヒドロキシエチルメタクリレート5.0部、その他のエチレン性不飽和単量体としてメチルメタクリレート90.5部、および重合開始剤であるV-601(和光純薬社製)12部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、V-601(和光純薬社製)0.6部を添加し、さらに80℃で2時間反応を続けて、バインダー樹脂1の溶液を得た。TSKgelカラム(東ソー社製)及びRI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)を用い、展開溶媒にTHFを用いて測定した上記バインダー樹脂1の重量平均分子量(Mw)は約7,000であった。上記バインダー樹脂1の溶液を50℃まで冷却した後、ジメチルアミノエタノールを4.7部添加し中和したのち、水を140部添加した。その後、78℃以上に加熱し、2-ブタノンを水と共沸させて留去したのち、固形分が30%になるように調整することで、バインダー樹脂1の固形分30%の水性化溶液を得た。得られたバインダー樹脂1の酸価、水酸基価はバインダー樹脂の構成単位から算出し、それぞれ29.3(mgKOH/g)、21.6(mgKOH/g)であった。また、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(PerkinElmer社製、DSC6000)を用いて測定し、103℃であった。
【0140】
<バインダー樹脂2、3、21の製造例>
重量平均分子量を調整するために、滴下した重合開始剤V-601の量をそれぞれ、4部、2部、1.1部とした以外は、バインダー樹脂1と同様の操作にて、バインダー樹脂2、3、21の固形分30%の水性化溶液を得た。
【0141】
<バインダー樹脂20の製造例>
重量平均分子量を調整するために、反応溶剤を2-ブタノンからブタノールへ変更し、反応温度を110℃とした。更に滴下した重合開始剤V-601の量を12部とした以外はバインダー樹脂1と同様の操作にて、バインダー樹脂20の固形分30%の水性化溶液を得た。
【0142】
<バインダー樹脂4~19、22、23、40~43の製造例>
重合性単量体として表1記載の単量体を使用した以外は、バインダー樹脂2と同様の操作にて、バインダー樹脂4~19、22、23、40~43の固形分30%の水性化溶液を得た。なお、中和に際しては、バインダー樹脂中のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体のカルボキシル基のモル数に対し、ジメチルアミノエタノールのアミノ基のモル数が等モル量になるように添加した。また、酸基、エチレンオキサイド基を有するエチレン性不飽和単量体を使用していないバインダー樹脂41は水性化出来なかったため、以降の評価は行わなかった
【0143】
<バインダー樹脂24(A-Bブロック重合体)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌器を備えた反応容器に、トルエンを20部、重合性モノマーとして、酸基を有するエチレン性不飽和単量体としてメタクリル酸を5.0部とその他のエチレン性不飽和単量体としてメチルメタクリレートを5.0部、重合開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを0.9部、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-イソ酪酸を3.6部、それぞれ投入した。反応容器内を窒素ガスで置換したのち、75℃に昇温し、3時間にわたって重合反応を行うことで、メタクリル酸とメチルメタクリレートとからなる共重合体(Aブロック)を得た。
【0144】
上記重合反応の終了後、反応系を常温まで冷却したのち、反応容器に、トルエンを60部、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体として2-ヒドロキシエチルメタクリレート5.0部、その他の重合性単量体として、メチルメタクリレート60部、ステアリルメタクリレート15部、スチレン10部をそれぞれ投入した。反応容器内を窒素ガスで置換したのち、75℃に昇温し、3時間にわたって重合反応を行うことで、前記Aブロックに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、スチレンからなる共重合体(ブロックB)が付加したA-Bブロック構造を有する、バインダー樹脂24を得た。
【0145】
その後、反応系を常温まで冷却したのち、反応容器に、ジメチルアミノエタノールを6.2部添加して中和した後、水を200部添加した。次いで、得られた溶液を加熱し、トルエンを水と共沸させてトルエンを留去したのち、固形分が30%になるように水で調整することで、バインダー樹脂24の水性化溶液を得た。
【0146】
<バインダー樹脂44の製造例>
重合性単量体として表2記載の単量体を使用した以外は、バインダー樹脂24と同様にして、バインダー樹脂44の水性化溶液(固形分30%)を得た。
【0147】
<バインダー樹脂45の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌器を備えた反応容器に、イオン交換水50部と乳化剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬社製)0.2部とを仕込んだ。一方、ブチルアクリレート70.5部、スチレン20部、メタクリル酸4.5部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5部、イオン交換水68部および乳化剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬社製)1.8部を、別途ホモミキサーで攪拌混合し、乳化液とした。
【0148】
前記乳化液を5部分取し、上記の反応容器に加えた。添加後、内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液3部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液4部を添加し重合を開始した。反応開始後、内温を60℃に保ちながら上記の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液2部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の6部を1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。反応終了後、温度を30℃まで冷却し、ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とした。さらにイオン交換水で固形分を30%に調整することで、バインダー樹脂45の水分散液(固形分30%)を得た。
【0149】
<バインダー樹脂46の製造例>
重合性単量体として表3記載の単量体を使用した以外はバインダー樹脂45と同様の操作にて、バインダー樹脂46の固形分30%の水分散液を得た。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
なお、表1~3に記載された略語は、以下の通りである。
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
MOEPh:メタクリロイルオキシエチルホスホン酸
VSA:ビニルスルホン酸
2HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
2HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
StMA:ステアリルメタクリレート
2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
α‐MeSt:α‐メチルスチレン
【0154】
<顔料分散樹脂1の合成例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール95部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてスチレン35部、アクリル酸35部、ベへニルアクリレート30部、および重合開始剤であるV-601(富士フイルム和光純薬社製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、更に110℃で3時間反応させた後、V-601を0.6部添加し、更に110℃で1時間反応を続けて、顔料分散樹脂1の溶液を得た。更に、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノールを添加して完全に中和したのち、水を100部添加し、水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分濃度が30%になるように調整した。これより、顔料分散樹脂1の固形分濃度30%の水性化溶液を得た。顔料分散樹脂1の重量平均分子量は28,000、酸価は、273mgKOH/gであった。
【0155】
<顔料分散液Wの製造例>
石原産業社製CR-90-2(酸化チタン)を40部、顔料分散樹脂1の水性化溶液(固形分濃度30%)を30部、水30部を混合し、顔料分散液Cと同様の方法にて分散を行い、顔料分散液W(ホワイト)を得た。
【0156】
<顔料分散液Cの製造例>
トーヨーカラー社製Lionol Blue 7358G(C.I.Pigment Blue 15:3)を20部、顔料分散樹脂1の水性化溶液(固形分濃度30%)を15部、水65部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1,800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行い、顔料分散液C(シアン)を得た。
【0157】
<インキ1Wの製造例>
顔料分散液W(ホワイト)を40部、バインダー樹脂1を20部(固形分濃度30%)、1,2-プロパンジオールを23部、アジピン酸ジヒドラジドを1部、TEGO WET 280を1.5部、サーフィノール465を1部、及び、プロキセルGXLを0.05をを、混合容器に順次投入したのち、インキ全体で100部になるように水を加えて調整し、ディスパーで十分に均一になるまで攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し、インキ1Wを作製した。
【0158】
<インキ2W~32W、41W~46W、4C、42Cの製造例>
表4に記載の材料を使用する以外は、インキ1Wと同様の方法によりインキ2W~32W、41W~46W、4C及び42Cを得た。
【0159】
【0160】
なお、表4に記載された略語は、以下の通りである。
PD:1,2-プロパンジオール
BD:1,2-ブタンジオール
HD:1,2-ヘキサンジオール
MB:3-メトキシブタノール
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
TEGO WET 280:エボニック社製シロキサン系界面活性剤
TEGO WET 500:エボニック社製アルコキシアルコール系界面活性剤
サーフィノール465:信越化学工業社製アセチレンジオール系界面活性剤
BYK3400:ビッグケミー社製アニオン系界面活性剤
サーフロンS243:AGCセイミケミカル社製フッ素系界面活性剤
エマルゲン707:花王社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
プロキセルGXL:Lonza社製防腐剤
【0161】
<ラミネート接着剤組成物の製造例>
以下の手順に従い、ラミネート接着剤組成物を製造した。
(1)ポリオール(ポリオール成分(M)とは異なる)とイソシアネート化合物を混合したのち、ウレタン化反応させ、末端にイソシアネート基を有するイソシアネート成分(K)を製造。
(2)ポリオール成分(M)を製造。
(3)ウレタンプレポリマーを含むイソシアネート成分(K)と、ポリオール成分(M)とを混合し、ラミネート接着剤(J)を製造。
(4)(3)において、ラミネート接着剤組成物の塗工適性を付与するべく、必要に応じて酢酸エチルを混合した。
【0162】
<イソシアネートK1の合成例>
下記材料を、攪拌機を備えた反応容器内に投入し、窒素ガス気流下、攪拌しながら70℃~80℃に加温し、容器内温度を維持しながら、3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基を有するポリエーテルポリイソシアネート化合物(イソシアネートK1とする)を得た。なお、前記イソシアネートK1のイソシアネート基含有率は10.2%、芳香族イソシアネートモノマー含有率は30%であった。
ポリプロピレングリコール(数平均分子量約400) 300部
ポリプロピレングリコール(数平均分子量約2,000) 400部
グリセリンにポリプロピレングリコールを付加したトリオール
(数平均分子量約400) 200部
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート 400部
2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート 600部
【0163】
<イソシアネートK2の合成例>
イソフタル酸80部、アジピン酸460部、1,6-ヘキサンジオール60部、ジエチレングリコール400部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下、攪拌しながら150℃~240℃に加温し、容器内温度を維持しながらエステル化反応を行った。内容物の酸価が1.3(mgKOH/g)になったところで容器内温度を200℃にし、次いで反応容器内部の圧力が1.3kPa以下となるまで徐々に減圧した。そして、前記温度及び圧力を維持しながら30分間反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価80mgKOH/g、数平均分子量約1,400で、末端に水酸基を有するポリエステルジオールLを得た。
【0164】
得られたポリエステルジオールLを160部と、PPG-400を200部と、4,4’-MDIを310部と、2,4-MDIを350部とを、上記とは別の反応容器に仕込み、窒素ガス気流下、攪拌しながら70℃~80℃に加温し、容器内温度を維持しながら、3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が16.7%、芳香族イソシアネートモノマー含有率が50%である、イソシアネート基を有するポリエーテルポリイソシアネート化合物(イソシアネートK2とする)を得た。
【0165】
<イソシアネートK3~K7の合成例>
表5に示した原料を使用した以外は、イソシアネートK1と同様の方法を用いることで、ポリエーテルポリイソシアネート化合物である、イソシアネートK3~K7を得た。
【0166】
<イソシアネートK8の合成例>
表5に示した原料を使用した以外は、イソシアネートK2と同様の方法を用いることで、ポリエーテルポリイソシアネート化合物である、イソシアネートK8を得た。
【0167】
【0168】
なお、表5に記載された略語は、以下の通りである。
PPG-400:ポリプロピレングリコール(数平均分子量約400)
PPG-2000:ポリプロピレングリコール(数平均分子量約2,000)
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加したトリオール(数平均分子量約400)
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
2,4’-MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI:2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの混合物
XDI:キシレンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0169】
なお、表5には、イソシアネートK1~K8に関して、各イソシアネート化合物の配合モル比率、イソシアネート基(NCO基)の含有率、イソシアネートモノマーの含有率、及び、芳香族イソシアネートモノマーの含有率についても、併せて記載した。
【0170】
<ポリオールM1~M9、M21~M23の製造例>
特開2017-177800号公報に記載の、合成例201、203、205~207と同様の方法にて、ポリエステルジオール(それぞれN1~N5とする)を合成した。得られたポリエステルジオールN1~N5の物性は表6に示した通りであった。
【0171】
そして、上記で得られたポリステルジオールN1~N5を用い、表6記載の材料及び配合量で混合することで、ポリオールM1~M9、M21~M23を得た。なお表6には、ポリオールM1~M9、M21~M23の水酸基価、ポリオール成分(M)全体の数平均分子量(Mn)も併せて記載した。
【0172】
また、表6には、数平均分子量が500~3,200である、ポリエステルポリオール、または、ポリエーテルポリオールが、ポリオール成分(M)全体に占める割合(%)を記載した。まず、得られた数平均分子量、および重量平均分子量の値から、以下式(2)を用い、標準偏差σを算出した。
式(2):標準偏差σ=[Mn(Mw-Mn)]1/2
この標準偏差σと標準正規分布表を用いて、数平均分子量500~3,200が全体に占める割合を算出した。
【0173】
【0174】
なお、表6に記載されたEXCENOL400、1030、230、4030は、AGC社製ポリエーテルポリオールである。また、ETERNACOLL-PH100は、宇部興産社製ポリカーボネートジオールである。
【0175】
<ラミネート接着剤組成物J1の製造例>
上記で得られたイソシアネート成分K1を100部と、上記で得られたポリオール成分M1を50部とを60℃で混合し、ラミネート接着剤組成物J1を得た。なお、前記ラミネート接着剤組成物J1のイソシアネート成分中のイソシアネート基のモル数と、併用する前記ポリオール成分中の水酸基のモル数との比(NCO/OH比)は1.3である。
【0176】
ここで、イソシアネート基のモル数と、ポリオール成分中の水酸基のモル数との比(NCO/OH比)は、以下式(3)のようにして求めた。
式(3):水酸基100モルに対するイソシアネート基の量
=[イソシアネート基(eq.)/水酸基(eq.)]
【0177】
ただし式(3)中、
イソシアネート基(eq.)=NCO基含有率(質量%)/4200
であり、
水酸基(eq.)=水酸基価/56100
である。
【0178】
また、前記ラミネート接着剤組成物J1全量中に含まれる、芳香族イソシアネート化合物は、4,4’-MDI及び2,4’-MDIであり、その合計率は20%であった。ここで前記芳香族イソシアネートモノマー含有率は、GPCチャート上で観察される、4,4’-MDIモノマー由来のピーク(Mn=200~300付近に出現)の面積と、2,4’-XDIモノマー由来のピーク(Mn=150~250付近に出現)の面積との合計を、前記GPCチャート上で観察される全てのピークの合計面積で除したものである。
【0179】
<ラミネート接着剤組成物J2~J14、J21~J26の製造例>
表7に示した組成とした以外は、ラミネート接着剤組成物J1と同様にして、ラミネート接着剤組成物J2~J14、及びJ21~J26を得た。なお表7には、各ラミネート接着剤組成物について、イソシアネート成分中のイソシアネート基のモル数と、併用する前記ポリオール成分中の水酸基のモル数の比(NCO/OH比)についても記載した。
【0180】
【0181】
[実施例1~47、比較例51~66]
<水性インクジェットインキの印刷例>
印刷基材を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B-1200(京セラ社製、解像度1200dpi、最大駆動周波数64kHz)を設置し、上記で作製した水性インクジェットインキを充填した。次いで、前記コンベア上に、透明基材1を固定したのち、前記コンベヤを50m/分で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、水性インクジェットインキを吐出し、以下に示した画像2種類の印刷を行った。なお印刷時のドロップボリュームは2.5pLとし、印刷物は70℃のエアオーブンに投入し3分間乾燥させた。
【0182】
<印刷画像1>
ノズルチェックパターンを印刷し、全てのノズルから正常にインキが吐出されていることを確認してから、25℃の環境下で1分間放置した後、周波数40kHz、1200×1200dpiの印字条件で印字率100%のベタ印刷を行った。その際、100%ベタの打ち始めの部分が印刷されているか、目視及びルーペで確認を行うことで、初期吐出性の評価を行った。評価基準は下記のとおりであり、◎、〇評価を実使用上可能領域とした。なお、透明基材1としてフタムラ化学社製のPETフィルム(FE2001、厚さ12μm)を用いた。
◎:目視及びルーペで確認しても、打ち始めの部分に、欠けが確認されなかった
〇:目視では欠けが見られないが、ルーペで確認すると1mm未満の欠けが確認された △:目視で打ち始めに1mm~5mm未満の欠けが確認された
×:目視で打ち始めに5mm以上に欠けが確認された
【0183】
<印刷画像2>
印刷画像1と同様の印刷条件、同様の基材を用いて、まず印字率100%のベタ印刷を行った。ベタ印刷後に25℃の環境下で一定時間インクジェット吐出装置を待機させ、その後にノズルチェックパターンの印刷を行い、ノズル抜けが起こっているのか目視確認することで、間欠吐出性の評価を行った。評価基準は下記のとおりであり、◎、〇評価を実使用上可能領域とした。
◎:2時間待機させた後に印刷してもノズル抜けが全くなかった
〇:1時間待機させた後に印刷してもノズル抜けが全くなかったが、2時間待機させた後に印刷するとノズル抜けが発生した
△:1時間待機させた後に印刷するとノズル抜けが1~9本発生していた
×:1時間待機させた後に印刷するとノズル抜けが10本以上発生していた
【0184】
<積層体の製造例>
印刷画像1と同様の印刷条件を用いて、以下に示した透明基材1に印字率100%のベタ印刷を行った。テストコーターを用い、上記印刷物上のインキ層(II)の表面に、前記ラミネート接着剤組成物を、温度60℃、塗工速度50m/分の条件にて塗布し(塗布量:2g/m2)、接着剤層の前駆体を作製した。この接着剤層の前駆体に、表8に示す層構成になるように、基材4を重ね合わせたのち、25℃、80%RHの環境下にて、1日間エージングすることで、前記ラミネート接着剤組成物を硬化させ、積層体を作製した。
透明基材1
・フタムラ化学社製のPETフィルム「FE2001」
(厚さ12μm、以下及び後述する表8では「PET」と記載)
・ユニチカ社製ナイロンフィルム「エンブレムON」
(厚さ15μm、以下及び後述する表8では「NY」と記載)
基材4
・フタムラ化学社製無延伸ポリプロピレンフィルム「FHK2」
(厚さ25μm、以下及び後述する表8では「CPP」と記載)
・三井化学東セロ社製直鎖状低密度ポリエチレンフィルム「TUX-FC-D」
(厚さ40μm、以下及び後述する表8では「LLDPE」と記載)
【0185】
また、ラミネート接着剤に溶剤成分を含むものについては、塗布量を3g/m2とし、塗布後に溶剤成分を乾燥させ、接着剤層の前駆体を作製した。
【0186】
各積層体の作製に用いた、透明基材1、水性インキ、ラミネート接着剤組成物、基材4の組合せは、表8に示した通りである。
【0187】
また、実施例47、比較例65、および66は、シアンインキを印字率100%で印刷した後、乾燥工程を経ることなる、次いでホワイトインキを印字率100%で重ね刷りした印刷物から、積層体を作製した。
図1は、重ね刷り印刷物から作製した積層体を示す模式図である。これに用いた、透明基材1、水性インキ、ラミネート接着剤組成物、基材4の組合せは、表9に示した通りである。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
上記で製造した各積層体について、以下に示す評価行った。なお、その評価結果は、前記初期吐出性評価、及び間欠吐出性評価の結果と共に、表8、及び表9に示した通りであった。
【0192】
<色ムラの評価>
印刷画像1を用いて作製した積層体について、色ムラの程度を、透明基材1側から目視で観察することで、色ムラの評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、○を実使用上可能領域とした。
◎:ベタ部の色ムラが見られなかった
〇:目視で僅かな色ムラが見られた
×:目視で明らかな色ムラが見られた
【0193】
<ベタ部の抜けの評価>
印刷画像1を用いて作製した積層体について、抜け度合を、透明基材1側からルーペ及び目視で確認することで、抜けの評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、○を実用可能領域とした。
◎:ルーペ及び目視で抜けが見られなかった
○:ルーペでは僅かに抜けが見られたが、目視で抜けが見られなかった
×:目視で抜けが見られた
【0194】
<接着力の評価1>
印刷画像1を用いて作製した積層体を、長さ300mm、幅15mmに切り取り、テストピースとした。インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて、300mm/分の剥離速度で引張り、透明基材1/基材4間のT型剥離強度(N)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求めることで、接着力の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用上可能領域とした。
◎:接着力1.5N以上
〇:接着力0.6N以上、1.5N未満
△:接着力0.3N以上0.6N未満
×:接着力0.3N未満
【0195】
<接着力の評価2>
印刷画像1を用いて作製した積層体2枚を、透明基材1が外側になるように、基材4側を重ね合わせ、ヒートシーラーを用い、150℃、2kg/cm2、1秒の条件にてシールして風袋を作製した。これを、日坂製作所製「RCS-40RTGN」高温高圧調理殺菌試験機により95℃、30分間の条件で熱水殺菌を行った。試験後、前記接着力の評価1と同様の方法にて行った。
【0196】
<外観の評価>
接着力の評価2で用いた積層体について、透明基材1側から目視で観察することで、外観の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用上可能領域とした。
◎:ゆず肌状の模様や小さな斑点状の模様は確認されない
〇:小さな斑点状の模様は確認されないが、ゆず肌状の模様が多少確認される
△:小さな斑点状の模様、ゆず肌状の模様共に多少確認される
×:小さな斑点状の模様、ゆず肌状の模様共に多数確認される
【0197】
比較例51は、バインダー樹脂(B)の水酸基価が3mgKOH/g未満であり、比較例52~54、57、64、及び65は、構成単位として、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体(b2)を含んでいないため、ラミネート接着剤組成物(J)との架橋反応や、水素結合力が劣り、積層体の接着力が劣る結果となった。特に、熱水処理後の接着力劣化や外観不良が劣る結果となった。比較例55、及び56は、バインダー樹脂(B)が本発明における水性化された樹脂に属さず、重量平均分子量が測定不可能な程に高く、インクジェットヘッドのノズルらかの吐出性が劣り、色ムラやベタ部の抜けが発生する結果となった。比較例58~60、64、及び66は、ラミネート接着剤組成物のイソシアネート成分(K)のイソシアネート基のモル数とポリオール成分(M)の水酸基のモル数の比であるNCO/OH比が、1.0~3.0の範囲から外れており、熱水殺菌後の積層体の接着力が劣る結果となった。比較例61、及び62、ポリオール成分(M)の数平均分子量が500~3,200の範囲から外れており、積層体の接着力が劣る結果となった。比較例63は、ポリオール成分(M)が、ポリエステルポリオール、あるいは、ポリエーテルポリオールを含んでいないため、積層体の接着力が劣る結果とった。
【0198】
一方、実施例1~47は、好適な水性インキ、ラミネート接着剤を用いた系であり、透明基材1、インキ層(II)、接着剤層(III)、基材4が好適な層構成となっており、インクジェットヘッドのノズルからの吐出性に優れ、色ムラやベタ部の抜けのない印刷画質を有する印刷物が得られ、積層体としての接着力も優れており、熱水細菌処理後においても良好な状態を維持し、全てが実用可能領域であった。
【符号の説明】
【0199】
1:透明基材1
2a:シアンインキ層
2b:ホワイトインキ層
3:接着剤層
4:基材4