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特許7199642非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/26 20060101AFI20221226BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20221226BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C01B33/26
B01J20/16
B01J20/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019035278
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138883
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】末益 匠
(72)【発明者】
【氏名】黒川 晴己
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113336(JP,A)
【文献】特開2009-183905(JP,A)
【文献】特開2018-172238(JP,A)
【文献】特開2008-179533(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
B01J
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の水熱反応による製造方法において、水熱反応時のスラリーの固形分濃度が50~300g/Lであって、水熱反応時のスラリーの固形分に対し無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を含む凝集剤を無機金属及びNH換算で0.1~20重量%添加した後水洗する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法であって、水熱反応後の水洗がろ過水洗、及びデカンテーション水洗の少なくとも1種の水洗を含む非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法であって、水熱反応後の水洗で得られる非晶質アルミノケイ酸塩のケーキの耐圧性が0.20MPa以上である非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法であって、水溶性ケイ素原料とアルカリ原料を含む混合溶液に調製される第一工程、得られた混合溶液に水溶性アルミニウム原料を添加してAl/OHのmol比が2.0~3.0、Si/Alのmol比が0.7~1.5、pHが6.0~8.0の混合スラリーに調製される第二工程、得られた混合スラリーを水洗と濃縮でpHを7.0~10.0の前駆体スラリーに調製される第三工程、その後、温度120~250℃での水熱反応工程を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた極性ガス吸着性能を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産効率の高い製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末は高い比表面積を有している。前記粒子粉末は、水溶性ケイ素原料と水溶性アルミニウム原料を撹拌混合した後pHを中性付近に調整して、得られた混合スラリーの加熱反応で得ることができる。中でも100℃以上の温度の水熱反応を利用することで、より高い比表面積の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末が比較的短時間で得られる。
【0003】
高比表面積の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を得るための100℃以上の水熱処理において、容器内圧上昇に耐えうる高圧用密閉容器を用いる必要がある。バッチ式のラボスケールの合成では、前記混合スラリー投入後の高圧用密閉容器の密封、昇温加熱、冷却等にかかる時間は比較的短い。しかしながら、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の工業的量産では、作業安全面を考慮すると、高圧用密閉容器の設備保全に長時間を要する。その結果、量産型の高圧用密閉容器の密封、昇温加熱、冷却等に時間がかかってしまう。従って、水熱反応の保持時間が短時間であっても生産プロセスの中で、水熱反応は律速となる。そのため、バッチ式の水熱反応工程において、混合スラリー中のケイ素とアルミニウムの濃度を上げることによって、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産効率を向上させることができる。
【0004】
前記高濃度水熱反応後の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末含有スラリーにおいて、SO 2-イオンやNaイオンを含んでいる。従って、水熱反応後、水洗により前記不純物イオンを除去する必要がある。該水洗の工程もまた、前述の高濃度水熱反応により、設備を小型化することが可能である。小型化された水洗工程によって、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産効率を更に高めることができる。
【0005】
一方、前記高濃度水熱反応後の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末含有スラリーにおいて、該粒子粉末は水溶媒中で非常に高い分散状態を保持する。そのため、前記スラリーの静置保持中の粒子沈降性は低く、また、前記スラリーの水洗中のろ過性は悪い。その結果、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末と水溶媒の分離、即ち、固液分離を伴う水洗は困難である。実際のところ、ラボスケールにおいて、非常に目の細かいろ紙を用いた減圧ろ過でも、前記スラリーのろ過残渣のケーキを得るのに長時間が必要であった。量産スケールにおいて、加圧ろ過器で前記スラリーに圧をかけて固液分離を試みたところ、得られるはずの脱水ケーキは液化した。即ち、加圧ろ過器からスラリー漏れを起こし、ほとんど脱水ケーキを得ることができなかった。最終的に、水洗後のケーキの乾燥によって、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末はほんの僅かしか得ることができなかった。
【0006】
このため、量産スケールにおいて、前記スラリーから非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を得るためには、水洗、及び乾燥できる設備は非常に限定される。非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末スラリーを精密ろ過装置で濃縮することは可能であった。しかしながら、該精密ろ過装置ではろ過効率は低く、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産効率は低下した。従って、量産設備として、該精密ろ過装置は不適切であった。また、一般に、スラリーはその流動性を保つために、スラリー中の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末は溶媒の水に比べると少ない。そのため、スラリー乾燥効率は脱水ケーキ乾燥効率と比べるとかなり低い。従って、水洗後のスラリーを蒸発乾固すると、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産効率は悪くなる。
【0007】
遠心分離機による前記水熱反応後のスラリーの固液分離は可能である。しかしながら、現存する量産設備として、遠心分離機は小型に限定される。そのため、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の大量生産において、遠心分離機を用いた場合、生産効率が高いとは言い難い。
【0008】
従来技術として高い比表面積を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子の合成方法は特許文献1~4で開示されている。しかしながら、これらに示されている合成方法では、水熱反応において混合溶液中のケイ素とアルミニウムの濃度を上げることが困難であった。また、特許文献1~4に開示される反応後の水洗方法は遠心分離のみであり、大量生産における生産効率向上に適切な手法を開示しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-179533号公報
【文献】国際公開第2010/026975号
【文献】国際公開第2009/084632号
【文献】特開2017-128499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高い比表面積を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の水熱反応による製造方法において、生産効率向上のために、律速工程である水熱反応時のケイ素とアルミニウムの高濃度化、並びにその後の水洗及び乾燥が可能な製造方法は未だ開示されていない。特に、水洗後の乾燥効率を向上させるために、押出成型等の簡便な手法での非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末のケーキが作製可能な製造方法は未だ開示されていない。
【0011】
即ち、前出特許文献1~2には、水蒸気を始めとした極性ガスを吸着するのに優れた非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法が記載されている。しかしながら、記載されている合成方法は反応温度が110℃以下と低いため律速である反応時間が1~2日間と長く1バッチ分の生産に時間がかかってしまう。また、開示されている水洗方法は遠心分離による方法であり、高効率な量産設備としては不適切である。更には、得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の比表面積が高いとは言えず、該粒子粉末の極性ガス吸着性能が高いとは言い難い。
【0012】
また、前出特許文献3~4には、反応温度が110℃以上での非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法が記載されている。しかしながら特許文献3~4の反応前駆体作製方法では水熱反応時の混合溶液中のケイ素とアルミニウムの高濃度化は難しい。従って、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産量は限定されてしまい、生産効率が高いとは言い難い。
【0013】
加えて、特許文献3~4に記載の技術で得られた水熱反応後のスラリーは遠心分離機での水洗、脱水が記載されている。しかしながら、量産を考慮して、大型ろ過設備であるフィルタープレス等の加圧式ろ過器を用いると、前記スラリーは液漏れを起こしてしまう。そのため、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の量産は困難である。
【0014】
さらに、特許文献3~4に記載の技術で得られた水熱反応後のスラリーはスラリー中の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の濃度、即ち、固形分濃度が非常に低い。そのため、前記スラリーに汎用の凝集剤を添加しても効果は非常に小さく、ろ過設備で脱水ケーキを作ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0016】
即ち、本発明は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の水熱反応による製造方法において、水熱反応時のスラリーの固形分濃度が50~300g/Lであって、水熱反応時のスラリーの固形分に対し無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を含む凝集剤を無機金属及びNH換算で0.1~20重量%添加した後水洗する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法である(本発明1)。
【0017】
また、本発明は、本発明1の製造方法であって、水熱反応後の水洗がろ過水洗、及びデカンテーション水洗の少なくとも1種の水洗を含む非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法である(本発明2)。
【0018】
また、本発明は、本発明1又は2記載の製造方法であって、水熱反応後の水洗で得られる非晶質アルミノケイ酸塩のケーキの耐圧性が0.20MPa以上である非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法である(本発明3)。
【0019】
また、本発明は、本発明1から3のいずれかに記載の製造方法であって、水溶性ケイ素原料とアルカリ原料を含む混合溶液に調製される第一工程、得られた混合溶液に水溶性アルミニウム原料を添加してAl/OHのmol比が2.0~3.0、Si/Alのmol比が0.7~1.5、pHが6.0~8.0の混合スラリーに調製される第二工程、得られた混合スラリーを水洗と濃縮でpHを7.0~10.0の前駆体スラリーに調製される第三工程、その後、温度120~250℃での水熱反応工程を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法である(本発明4)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法は、高い比表面積を有し水蒸気を始めとした極性溶媒のガスの吸着性能の優れた非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を効率的に生産することができる。具体的には、律速工程であった水熱反応工程の固形分濃度を50~300g/Lとすることができる。また、水熱反応時のスラリーの固形分に対し無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を含む凝集剤を無機金属及びNH換算で0.1~20重量%添加することで脱水ケーキを得ることができる。即ち、高効率な製造方法で非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を得ることができる。更には、前記脱水ケーキを得る際、加圧ろ過のケーキに0.2MPa以上の圧力がかかった場合でもケーキは液化しない。従って、高い生産効率のろ過による固液分離をすることができる。更には、得られた脱水ケーキを用いて押出成型等で容易に成型体を作製することもでき、乾燥工程の負荷も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造フローチャート図である。
図2】実施例1で得られた非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末のX線回折(XRD)プロファイルである。
図3】実施例1と比較例1で得られた非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の水蒸気吸着等温線である。
図4】実施例1で得られた非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の透過型電子顕微鏡の明視野像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0023】
先ず、本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法について述べる。
【0024】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法は、優れた極性ガス吸着性能を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を得るために水熱反応を用いる。
【0025】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応時のスラリーの固形分濃度が50~300g/Lである。ここで、スラリーの固形分濃度の固形分とは水熱反応後に生成する非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を意味する。また、スラリーの固形分濃度とは、水熱反応後のスラリーを蒸発乾固し、得られる固形分重量を前記乾燥前のスラリーの体積で割った値である。後述する第二工程から第三工程のスラリーの固形分濃度も同様の手法で計算され、各工程後のスラリーを蒸発乾固している。水熱反応時のスラリーの固形分濃度が50g/L未満の場合、高濃度反応とは言い難く、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産効率が高いとは言い難い。また、水熱反応時のスラリーの固形分濃度が300g/Lを超える場合、水熱反応時のスラリーの流動性が失われ、スラリーの攪拌が困難となる。そのため、水熱反応が不均一となり、また、水熱反応用の密閉容器からのスラリーの移動が困難となる。好ましい固形分濃度は、70~280g/Lであり、より好ましくは、90~260g/Lである。
【0026】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応時のスラリーの固形分に対し無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を含む凝集剤を無機金属及びNH換算で0.1~20重量%添加した後水洗する。0.1重量%未満の添加では水洗時に通水性を改善する効果が得られず、脱水ケーキを作ることは困難である。また、20重量%を超える添加では、効果が飽和し、スラリーの固形分の凝集性に与える影響は変わらない。また、添加された水溶性塩はそのまま系外へ流れ出てしまうため粒子粉末の生産効率を低下させる。凝集剤の添加量は、前記凝集剤に含まれる無機金属及びNH換算で0.3~18重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~15重量%である。
【0027】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応後のスラリーに対して添加する凝集剤の無機金属塩として、Mg、Al、Ca、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Baを含む塩が好ましい。中でも、二価の金属塩が好ましく、Mg2+、Ca2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Sr2+、Ba2+を含む塩が好ましい。それぞれの元素の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等のどれでも良いが、水溶性の塩であることが好ましい。
【0028】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応後のスラリーに対して添加する凝集剤のアンモニウム塩として、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ギ酸アンモニウムが好ましく、水溶性の塩であることが好ましい。
【0029】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応後の水洗がろ過水洗、及びデカンテーション水洗の少なくとも1種の水洗を含むことが好ましい。前記水洗により、得られるのは脱水ケーキ、又は高濃度の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を含むスラリーである。その場合、後の乾燥工程として、生産効率の高い手法を選択することができる。或いは前記水洗の組み合わせにより、生産効率の高い水洗ができる。
【0030】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応後のスラリーのろ過水洗として、自然ろ過設備、減圧ろ過設備、加圧ろ過設備、遠心ろ過設備を用いることができる。中でも工業的に大規模生産が可能である加圧ろ過設備が好ましい。
【0031】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応後の水洗で得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末のケーキの耐圧性が0.20MPa以上であることが好ましい。ケーキの耐圧性が0.20MPa未満の場合、加圧ろ過設備で使用した際に、得られるはずのケーキは液化し、僅かなケーキしか得ることができず、好ましくない。より好ましくは0.25MPa以上、更により好ましくは0.30MPa以上である。
【0032】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法では、水溶性ケイ素原料とアルカリ原料を含む混合溶液に調製される第一工程、得られた混合溶液に水溶性アルミニウム原料を添加してAl/OHのmol比が2.0~3.0、Si/Alのmol比が0.7~1.5、pHが6.0~8.0の混合スラリーに調製される第二工程、得られた混合スラリーを水洗と濃縮でpHを7.0~10.0の前駆体スラリーに調製される第三工程、その後、温度120~250℃での水熱反応工程を有することが好ましい。前記水熱工程を経たスラリーに対し、凝集剤を添加し、水洗する。
【0033】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、第一工程で用いる水溶性ケイ素原料はオルトケイ酸ナトリウム、水ガラス、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等を使用することができる。アルカリ原料は炭酸アルカリ水溶液としては炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液等であり、水酸化アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0034】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、第二工程で用いる水溶性アルミニウム原料は硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を使用することができる。第一工程で得られた水溶液に前記アルミニウム原料を混ぜることで、反応は開始し、混合スラリーを得ることができる。
【0035】
水溶性アルミニウム原料添加後の混合スラリーにおいて、Al/OHのmol比は2.0~3.0であることが好ましい。ここで、Si、Al、及びOHの量は原料仕込み量で決定している。また、OHのmol量は前述の第一工程アルカリ原料中のOHのmol量である。即ち、アルカリ原料がNaOH水溶液の場合、そのOHのmol量が計算で用いられる。但し、炭酸アルカリ水溶液の場合、そのCO1molをOH1molと見積もっている。Al/OHのmol比が2.0未満の場合、混合スラリー形成時に増粘やゲル化を引き起こすので、均一な反応を完結させることが困難であり好ましくない。Al/OHのmol比が3.0を越える場合、後段の工程を経て得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の吸着性能が下がってしまうため好ましくない。より好ましいAl/OHのmol比は2.1~2.9、更に好ましくは2.2~2.8である。
【0036】
水溶性アルミニウム原料添加後の混合スラリーにおいて、Si/Alのmol比は0.7~1.5であることが好ましい。Si/Alのmol比が0.7未満であると、水熱反応中に結晶性のアルミノシリケートが生じて、得られる粒子粉末の比表面積及び吸着性能が下がるため好ましくない。Si/Alのmol比が1.5を超えると、得られる粒子粉末の非晶質性が高すぎて、比表面積の低い非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末が得られるため好ましくない。より好ましくはSi/Alのmol比が0.8~1.4、さらに好ましくはSi/Alのmol比が0.9~1.3である。
【0037】
第二工程で行うpH調整は前述の全原料添加後に行う必要がある。pH調整用の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、酢酸等を使用することができる。pH調整用のアルカリとしては、炭酸アルカリ水溶液の場合、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液等であり、水酸化アルカリ水溶液の場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。ここで、pH調整用のアルカリのOHは、pH調整前に行われるAl/OHのmol比の計算には利用しない。調整後のpHの範囲は6.0~8.0であることが好ましい。調整するpHが6.0未満、或いは8.0を超える場合、水熱反応を経て得られる粒子粉末の比表面積は低下し、ガス吸着性能も低下する。より好ましいpHは6.2~7.9、更により好ましくは6.5~7.8である。pH調整後、その状態を保持する時間は10分~3時間が好ましい。前記時間の目安はpHが安定する時間であり、長時間放置しても、得られる粒子粉末の性能に大きな影響は及ぼさない。より好ましくは、15分~2時間30分である。
【0038】
第一工程、及び第二工程で言及した通りの原料の添加順や添加量を調整することによって、第二工程で得られる混合スラリーの増粘やゲル化を防ぐことができる。固形分濃度が50g/L未満のときは混合スラリーの増粘も低く、生産上問題は無い。しかしながら、生産効率を高めるために、それ以上の固形分濃度を採用すると、第二工程において、混合スラリーはゲル化を引き起こし、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の生産が不可能となっていた。一方、本発明の第二工程において、原料の混合スラリーの固形分濃度は50~150g/Lとすることができる。本発明では、この範囲であれば、混合スラリーの増粘やゲル化を引き起こすことなく、第三工程の水洗と濃縮のための混合スラリーのタンクへの移送も可能である。
【0039】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、第三工程における前駆体スラリー水洗の終点はろ液の電気伝導度で計測するのが好ましい。該終点時の電気伝導度の値は50μS/cm~800μS/cmが好ましい。50μS/cm未満は到達するまでに水洗時間が長くかかるため好ましくない。800μS/cmより大きい場合は後段の水熱反応、凝集剤添加、水洗、及び乾燥工程を経て得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の吸着性能が下がってしまうため好ましくない。
【0040】
混合スラリー水洗及び濃縮によって得られる前駆体スラリーのpHを7.0~10.0に調整することが好ましい。7.0未満の場合、または10.0より大きい場合は後段の水熱反応、凝集剤添加、水洗、及び乾燥工程を経て得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の吸着性能が下がってしまうため好ましくない。より好ましくはpH7.2~9.8、さらにより好ましくはpH7.5~9.5である。
【0041】
また、第三工程で得られる前駆体スラリーの粘度は1~400mPa・sの範囲であることが好ましい。1mPa・s未満の場合、低濃度の前駆体スラリーとなり、1バッチ当り得られる粒子粉末の量は少なく、生産効率の観点から好ましくない。400mPa・sを超える場合、流動性が低いので、ハンドリング性の高い前駆体スラリーとは言い難い。より好ましくは10~350mPa・sの範囲である。
【0042】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応の温度は120~250℃であることが好ましい。120℃未満の場合、得られる粒子粉末が諸特性を満たすために、水熱反応の保持時間が、水熱反応までの昇温時間と室温までの冷却時間を足し合わせた時間より長くなってしまう。結果として、粒子粉末の単位時間当りの生産効率が落ちてしまうため好ましくない。250℃より高いと結晶性カオリナイトが生じてしまい、BET比表面積も低く、吸着性能が低下するため好ましくない。より好ましい水熱反応温度は130~240℃、更により好ましい水熱反応温度は140~230℃である。
【0043】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応の時間は1~8時間が好ましい。水熱反応の時間が1時間未満の場合、得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の吸着性能が下がってしまうため好ましくない。水熱反応の時間が8時間より長い場合、第一工程から水熱反応までの処理を24時間サイクルで繰り返すのが困難となり、生産レート低下につながるため好ましくない。より好ましい水熱反応時間は2~6時間である。
【0044】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法において、水熱反応時のスラリーの固形分に対し無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を含む凝集剤を無機金属及びNH換算で0.1~20重量%添加した後水洗で得られるものを乾燥することができる。前記乾燥のための工程の設備として、箱型乾燥機、バンド式乾燥機、真空乾燥機、気流式乾燥機、間接加熱型撹拌乾燥機、振動乾燥機、噴霧乾燥機、真空凍結乾燥機等を用いるのが好ましい。
【0045】
前記乾燥工程を経た乾燥物の粉砕設備として、ピンミル、ジェットミル、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、ディスクミル、サンドミルやミックスマーラー等の混練粉砕機等が好ましい。
【0046】
次に、本発明における製造方法で得られた非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末について述べる。
【0047】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末は、非晶質であり、元素の並びにほとんど周期性はない。化学構造は一般式a MO・b(NHO・c SiO・d Al・n HO、若しくはa MO・b LO・c SiO・d Al・n HO(Mは1価の金属、Lは2価の金属)で表わされる。ここで、dを1molとすると、a+bは0.05~0.
29のmol範囲が好ましく、cは1.40~2.60のmol範囲が好ましく、nは0.50~1.25のmol範囲が好ましい。また、一般式のHOは結晶水であり、吸着水とは異なる。Si4+とAl3+は互いに共有するO2-が存在するため、Si4+周辺は電気的に中性であっても、Al3+周辺はマイナス1価として帯電している。そのため、Al3+周辺は電気的中性になるようMとL2+又はMとNH で補われる。該Mイオン、L2+イオン又はNH イオンは溶媒中の雰囲気によりイオン交換され、前記粒子粉末の系外へ出されることもある。
【0048】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末はX線回折プロファイルにおいて、結晶由来のピークがほとんど観測されない程度の非晶質性を示す、或いは、低結晶性であることが好ましい。また、本発明における粒子粉末は、下記参考文献1に示すように、高分解能透過型電子顕微鏡観察、フーリエ変換赤外分光光度計のスペクトル解析、及び核磁気共鳴のスペクトル解析により、アロフェンに属することが好ましい。更に好ましくは、前記低結晶性を示すカオリナイト又はハロイサイトの単位胞を1~30個並べた元素配列の周期性を示す程度の低結晶性であることが好ましい。
【0049】
参考文献1 須藤談話会編「粘土科学への招待~粘土の素顔と魅力~」三共出版、2000年6月26日
【0050】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の比表面積は600~900m/gであることが好ましい。ここで、比表面積とはBET法で測定された値であり、以下BET比表面積は比表面積と同じ意味とする。BET比表面積が600m/g未満の場合には、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の水蒸気吸着量が低下するため好ましくない。BET比表面積が900m/gを越えるとガス吸着性能は問題ないが、粒子粉末のハンドリング性が悪くなるため好ましくない。より好ましいBET比表面積は650~850m/gであり、更により好ましいBET比表面積は700~800m/gである。
【0051】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末のSi/Almol比が0.7~1.5であることが好ましい。Si/Almol比が0.7未満の場合、得られる粒子粉末において、規則的なギブサイト結晶構造を有するγ-Al(OH)が主体的になる。そのため、アルミノケイ酸塩粒子の非晶質構造に由来していた細孔が少なくなり、BET比表面積が下がってしまうため好ましくない。Si/Almol比が1.5を超える場合、得られる粒子粉末において、非晶質シリカが主体的となる。その場合、非晶質シリカに近いBET比表面積が得られ、比表面積が600m/g未満となってしまうため好ましくない。
【0052】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の凝集剤添加に起因する残存無機金属及びNHの残存量は5.0重量%以下であることが好ましい。前記残存量が5重量%を超えると、BET比表面積の低下や水蒸気吸着量も低下するため好ましくない。より好ましくは残存量が4.5重量%以下、更により好ましくは残存量が4.0重量%以下である。
【0053】
<作用>
本発明において重要な点は、本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法では、水熱反応時の固形分濃度を50~300g/Lと高濃度にすることができる。更には、前記水熱反応後のスラリーに無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を含む凝集剤を加えることで、水洗時のろ過性を向上させることができ、前記粒子粉末の生産効率を高めることができるという事実である。環境負荷の高い高分子系の凝集剤を用いないため、水洗に伴う排水処理が簡易であり、生産効率が高い製造方法を提供することができる。
【0054】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法の水熱反応濃度を高濃度にすることができる理由は明らかではない。しかしながら、第一工程で得られるケイ素原料と苛性ソーダの混合溶液に対して、第二工程のアルミニウム原料を添加時の水酸化物イオンOH-の存在量比のAl/OHを調整することにより、得られる混合スラリーの状態が好ましいためと推測している。前記混合スラリー中の固形分である粒子粉末は、生成した際に水に対して規則的で、かつ流動性の良い粒子クラスターを形成していると予想される。更には、第三工程の前駆体スラリー固形分濃度が高い状態でも低粘度のスラリー状態を保つことが可能となっており、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の高効率な製造方法を提供できたと推測している。
【0055】
本発明における製造方法の水熱反応後のスラリーのろ過通水性を向上させられる理由は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を凝集させる能力のある無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を適量添加することによって、沈降性の高い粒子クラスターを形成して前記スラリーの固液分離を容易にすることによって達成できたと推測している。
【実施例
【0056】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0057】
試料の比表面積値はBET法により測定した。測定装置はマルチソーブ(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン製)を使用して測定した。前処理条件は窒素ガスを通気しつつ120℃、2hの条件で脱気をした。
【0058】
試料主成分のNa、Si、Al及び凝集剤添加に起因する残存無機金属元素の測定に、蛍光X線分析装置Rigaku RIX2100を用いた。
【0059】
凝集剤添加に起因する試料のNの残存量測定に、酸素・窒素・水素分析装置TCH600型(LECO社製)を用いた。得られたN残存量の値を用いてNH残存量を算出した。
【0060】
試料の結晶相の同定にXRD装置D8 ADVANCE(BRUKER製)(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:40mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.010°、走査速度:6°/min、発散スリット:0.2°、受光スリット:0.03mm)を使用した。
【0061】
試料製造時のスラリーの粘度はE型粘度計(東機産業(株)製TVE-35H)を用いて、回転数50rpmで測定した。
【0062】
試料の粒子形状の観察に透過型電子顕微鏡JEM-F200(日本電子(株)製)を用いた。
【0063】
試料の水蒸気吸着量はマイクロトラック・ベル(株)製ベルソープaqua3を用いて測定した。測定サンプルは試料フォルダーに充填後、予め真空ポンプで減圧した。同時に、該フォルダーを温度120℃で2.5時間加熱をし、試料フォルダー内圧が10-2kPaまで減圧したことを確認した。その後、窒素置換を行い、相対湿度をパラメータとして、温度25℃にて水蒸気吸着量を測定した。
【0064】
試料作製におけるろ過時の通水時間測定のため、水熱反応後のスラリーを100mlサンプリングした。前記スラリー中の固形分である非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末に対し、凝集剤として、無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を用いた。凝集剤に含まれる無機金属及びNH換算で所定の重量%になるように添加して、30分間撹拌を続けた。その後、得られたスラリーに対し、内径φ125mmのビフネルロートにて減圧ろ過した。ろ紙はADVANTEC製、型式No.2の定性ろ紙を用い、ビフネルロートに添加した時間を始点、ビフネルロートに液体成分がなくなった時間を終点として通水時間を測定した。
【0065】
ケーキの成型性評価のため、ケーキ層作製試験を行った。水熱反応後のスラリーを30Lサンプリングした。前記スラリー中の固形分である非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末に対し、凝集剤として、無機金属塩、アンモニウム塩又はこれらの混合物を用いた。凝集剤に含まれる無機金属及びNH換算で所定の重量%になるように、スラリーを撹拌しつつ添加した後、続けて30分間撹拌し調製した。その後、フィルタープレス(ケーキ室サイズ260mm×260mm×30mm)に導入圧0.2MPaで加圧ろ過をして濾板の間からの液漏れの有無を確認した。導入圧0.2MPaでろ液が出なくなった時点を終了とし、ケーキ室に残存するケーキの量を評価し、ケーキの回収量を得た。
【0066】
実施例1:非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造
図1に示す製造フローチャート図に従って非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を製造した。まず、内容積800Lの反応容器中に、Siとして5.0mol/Lの3号ケイ酸ナトリウム溶液120Lを投入した。その後、10NのNaOH溶液を25L追加して撹拌して第一工程を終了し、混合溶液を得た。
【0067】
次に、400Lの供給用タンクにAlとして2.0mol/Lの塩化アルミニウム溶液295Lを準備した。該塩化アルミニウム溶液を前述の混合溶液が入った反応容器に撹拌しながら添加し、295Lすべて添加し、混合した。原料混合後のSi/Alのmol比は1.02(ケイバン比SiO/Alモル比は2.04)、Al/OHのmol比は2.36であった。ここで、OHは第一工程で添加したNaOHの仕込み値である。その後、混合液を40℃に昇温して、pHを測定した。pHが4.31であったので、6NのNaOH溶液をpH7.1になるまで添加して、反応を進行させた。pH値が7.1±0.1の範囲で30分安定した時点で第二工程を終了し、混合スラリーを得た。
【0068】
得られた混合スラリーを温度40℃でシックナーとフィルタープレスを組み合わせて水洗した。ここで、水洗方法の分類として、シックナーはデカンテーションの水洗に含まれ、フィルタープレスはろ過水洗に含まれる。フィルタープレスからのろ液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまで混合スラリーを水洗した。前記スラリーを530Lまで濃縮した時点で第三工程を終了し、前駆体スラリーを得た。該前駆体スラリーのpHは8.5、スラリーの固形分濃度は150g/L、粘度は57mPa・sであった。
【0069】
第三工程で得られた前駆体スラリーを容積800Lのオートクレーブに移送した。その後、昇温速度1℃/分で加熱して、180℃に保持したスラリーを6時間かけて水熱反応を行った。その後、オートクレーブを放冷して水熱反応を終了した。
【0070】
水熱反応で得られたスラリーを別の反応容器に移送した後、24.2kgの硫酸マグネシウム7水和物を撹拌しつつ添加した。スラリー中に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末に対して硫酸マグネシウム七水和物中のマグネシウムの重量が2.0重量%となるように添加している。その後、シックナーとフィルタープレスを組み合わせた水洗を行い、フィルタープレスのろ液電導度が300μS/cm以下まで水洗した。その後、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末含有の脱水ケーキとして取り出した。
【0071】
水洗工程で得られた脱水ケーキを押し出し成型機で成型し、乾燥効率を高める状態にした。その後、バンド乾燥機を用いて120℃で6時間乾燥させ、ピンミルを用いて粉砕し、非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を得た。
【0072】
得られた試料のBET比表面積が724m/gであった。蛍光エックス線分析での元素含有量からSi/Alのmol比は0.99であった。残存するMgは1.1重量%であった。図2のXRDパターンが示すように、試料は非晶質であり、低結晶性ともみなせる程であり、数本のブロードなピークが検出された。図3の水蒸気吸着等温線から温度25℃、相対湿度60%における試料重量に対する水蒸気吸着量は49wt%であった。後述するように、凝集剤の無機塩を添加していない比較例1と比べても、得られた試料の吸着性能は劣らないことが分かる。即ち、残存するMgは水蒸気吸着に悪影響を及ぼさなかった。図4の電子顕微鏡写真から得られた試料において、5~15nm程度の一次粒子が強く凝集して、二次粒子を形成していた。これらの結果、得られた試料はアロフェンであり、結晶性成分も含む低結晶性粒子粉末であった。
【0073】
実施例2~10、比較例1~5
第一工程における水溶性ケイ素原料の種類、混合するアルカリ原料の種類、第二工程における水溶性アルミニウムの種類、混合時のAl/OHのmol比、原料仕込みSi/Alのmol比、調整されたpH、第三工程における調整されたpH、粘度、水熱反応工程の固形分濃度、水熱処理温度、水熱処理時間、凝集剤添加工程の無機塩の種類、添加量を種々変化させた以外は、実施例1と同様にして非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を作製した。ここで、凝集剤添加工程の無機塩の添加量は、スラリー中の固形分の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の重量に対し、凝集剤に含まれる無機金属及びNHの重量から算出した。
【0074】
実施例11~24、比較例6~8
実施例1の水熱反応後のスラリーを100mlずつ17つのビーカーに分取して、14つのビーカーには無機金属及びNH換算で0.1~20重量%の二価の金属塩又はアンモニウム塩を加えて30分撹拌した後、ビフネルロートにて減圧ろ過をした(実施例11~24)。3つのビーカーには無機金属及びNH換算で0.1重量%未満の金属塩を加えて30分撹拌した後、ビフネルロートにて減圧ろ過をした(比較例6~8)。それぞれの脱水にかかる時間を測定し、通水試験における通水時間とした。ここで、脱水にかかる時間、即ち、通水時間とは、減圧ろ過を開始した時間から減圧ろ過でろ液が目視できなくなるまでの時間である。
【0075】
また、実施例1の水熱反応後のスラリーを30Lずつ17つのタンクに分取して、14つのタンクには0.1~20重量%の無機金属塩を加えて30分撹拌した。その後、フィルタープレスを用いて導入圧0.2MPaでケーキ層を作製しながら加圧ろ過した(実施例11~24)。3つのタンクには0.1重量%未満の無機金属塩を加えて30分撹拌した後、フィルタープレスを用いて導入圧0.2MPaでケーキ層を作製しながら加圧ろ過した(比較例6~8)。加圧ろ過した前記スラリー30Lがなくなるまで行い、ケーキ層を確認することでケーキ層作製試験とした。
【0076】
表1に第一工程から凝集剤添加工程までの試料の製造条件を、表2に得られた試料の比表面積とSi/Al組成比と添加金属元素の固形分濃度を示す。また、表3に実施例1の水熱反応後のスラリーに添加する無機金属塩の種類と量、通水試験、及びケーキ層作製試験の結果を示す。ここで、通水試験結果として前記通水時間を示し、ケーキ層作製試験結果として、試験後のケーキ室内のケーキ回収量を示す。即ち、水熱反応後のスラリー30Lに含まれる固形分の80%がケーキとして回収された場合を○とし、80%未満の場合を×とした。表3に示す通り、実施例のものはフィルタープレスの導入圧0.2MPaでケーキが80%以上回収できており、ケーキの耐圧性が0.2MPaであることを確認できた。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末の製造方法は、律速工程である水熱反応工程とその後のろ過工程の処理レートを向上させることにより、従来の製造プロセスよりも効率的に粒子粉末を生産することが可能である。即ち、工業生産において短時間で多量の非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を製造が可能となり、該粒子粉末の生産効率の向上させることができる。
図1
図2
図3
図4