(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20221226BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221226BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20221226BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20221226BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20221226BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D119:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2019098830
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【氏名又は名称】古賀 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】増子 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 文就
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/151291(WO,A1)
【文献】特開2012-81905(JP,A)
【文献】国際公開第2018/161980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00-6/10
B62D 5/00-5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルに接続されたコラム軸を備え、車両の操舵系にアシスト力を付与するモータを制御すると共に、制御モードを切り替える機能を有する電動パワーステアリング装置において、
前記コラム軸の出力側に関連する出力側角度から、共振フィルタを用いて、手放し状態の推定ハンドル角度を求めるハンドル角度推定部と、
実ハンドル角度と前記推定ハンドル角度との偏差角度から求められる偏差変化量を累積して、変化量累積値を生成し出力する変化量情報生成部と、
ハンドONの状態において、前記偏差角度の大きさが第1所定角度より小さい状態が継続している時間である第1判定時間が第1所定時間より長く、且つ、前記変化量累積値が第1所定累積値より小さいとき、ハンドOFFを判定するハンドON/OFF判定部とを備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記変化量情報生成部が前記偏差変化量も出力し、
前記ハンドON/OFF判定部が、前記ハンドOFFの状態において、前記偏差角度の大きさが第2所定角度より大きい状態が継続している時間である第2判定時間が第2所定時間より長いとき、又は、前記変化量累積値が第2所定累積値より大きく、且つ、前記偏差変化量が第1所定変化量より大きいとき、前記ハンドONを判定する請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記ハンドON/OFF判定部が、前記第1判定時間を計測しているとき、前記変化量累積値が第3所定累積値より大きく、且つ、前記偏差変化量が第2所定変化量より大きくなったら、前記第1判定時間をリセットする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記変化量情報生成部が、
前記偏差角度の高周波成分を低減するフィルタ部と、
前記
フィルタ部の出力を微分して微分値を求める微分部と、
前記微分値の大きさを前記偏差変化量とする絶対値化部と、
前記偏差変化量の一定時間の累積値を前記変化量累積値とする累積部とを具備する請求項1乃至3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記フィルタ部が、急峻な遮断特性を有するローパスフィルタで構成される請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記コラム軸がトーションバーを備え、
前記トーションバーの捩れトルクに基づいて、前記トーションバーの捩れ角を求める捩れ角変換部と、
前記捩れ角及び前記出力側角度に基づいて、前記実ハンドル角度を求める実ハンドル角度算出部とを更に備える請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記コラム軸がトーションバーを備え、
前記コラム軸に関するコラム角度情報に基づいて、前記トーションバーの捩れ角を算出する捩れ角算出部と、
前記捩れ角及び前記出力側角度に基づいて、前記実ハンドル角度を求める実ハンドル角度算出部とを更に備える請求項1乃至5のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記モータの電気角に基づいて、前記出力側角度を算出する相対角度生成部を更に備える請求項1乃至7のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記共振フィルタが、
実機で前記コラム軸の出力側から前記コラム軸が回されたときの前記ハンドルの共振を再現し、前記出力側角度を入力して得られる前記推定ハンドル角度が前記実ハンドル角度と略同一となる特性を有する請求項1乃至8のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵系にアシスト力を付与するモータを制御するアシストモード、操舵系を自動操舵するために車両から随時与えられる目標操舵角に応じてモータを制御する自動モード等の制御モードを複数有する電動パワーステアリング装置に関し、特に制御モードを切り替えるために、運転者がハンドルを把持しているか否かの判定を自動的に行う電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置(EPS)の一般的な構成を
図1に示して説明すると、ハンドル1に接続されたコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は、減速機構としての減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクTrを検出するトルクセンサ10及び操舵角θsを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)100には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット100は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTrと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。なお、操舵角θsを検出する舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良い。
【0003】
コントロールユニット100には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット100には、CAN40以外の通信、アナログ/デジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
【0004】
このような電動パワーステアリング装置において、コントロールユニット100は主としてCPU(MPUやMCU等を含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと、例えば
図2に示されるような構成となっている。
【0005】
図2を参照してコントロールユニット100の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10からの操舵トルクTr及び車速センサ12からの車速Vsは電流指令値演算部101に入力され、電流指令値演算部101は操舵トルクTr及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて電流指令値Iref1を演算する。演算された電流指令値Iref1は加算部102Aで、特性を改善するための補償部110からの補償信号CMと加算され、加算された電流指令値Iref2が電流制限部103で最大値を制限され、最大値を制限された電流指令値Irefmが減算部102Bに入力され、モータ電流値Imを減算される。
【0006】
減算部102Bでの減算結果である偏差ΔI(=Irefm-Im)はPI(比例積分)制御部105でPI制御等の電流制御をされ、電流制御された電圧制御指令値VrefがPWM(パルス幅変調)制御部106に入力されてDutyを演算され、Dutyに基づいたPWM信号でインバータ107を介してモータ20をPWM駆動する。モータ20のモータ電流値Imはモータ電流検出器108で検出され、減算部102Bに減算入力されてフィードバックされる。また、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転センサ20Aから、モータ20の電気角θeを取得する。
【0007】
補償部110は、検出若しくは推定されたセルフアライニングトルク(SAT)113を加算部114で慣性補償値112と加算し、その加算結果に更に加算部115で収れん性制御値111を加算し、その加算結果を補償信号CMとして加算部102Aに入力し、特性改善を実施する。
【0008】
このような電動パワーステアリング装置を応用したシステムのうち、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)は、車載向けアプリケーションの中で最も急速な成長を遂げている分野の一つである。ADASは車社会の将来を考えて、安全性と利便性を向上させるために開発されたシステムで、見通しの悪い状況や、わき見運転などによって事故が起こる危険性を検知し、事故を未然に防止又は軽減するためのものとなる。車両を運転するためには「認知」、「判断」、「操作」といった動作が必要になるが、その一連の動作に対して安全を確保するということに重点をおいて、ADASが運転者の支援を行う。将来の自動運転技術に繋がる技術として、運転者がハンドルを把持しているかの手入力の判断、つまりハンドON/OFFの検出技術があり、その検出精度の向上が益々重要になってきている。ここで、ハンドルを両手又は片手で把持した場合をハンドON(手入力有り)とし、ハンドルを把持していない場合をハンドOFF(手入力無し)としている。ハンドON/OFFの検出技術は、電動パワーステアリング装置が操舵系にアシスト力を付与するモータを制御するアシストモードと、自動運転等において操舵系を自動操舵するためにモータを制御する自動モードや駐車(バック駐車、縦列駐車等)時に操舵系を主導して操舵するためにモータを制御する駐車支援モードとの切り替え等において活用される。
【0009】
従来のハンドON/OFFの検出技術として、例えば特開平8-337181号公報(特許文献1)及び特開平11-208498号公報(特許文献2)に開示されたものがある。
【0010】
特許文献1に開示された自動操舵装置では、自動操舵入力点とハンドルとの間にかかる捩れトルクが所定値T0以上であるときに自動操舵を解除しようとする。しかし、捩れトルクは運転者の手入力だけではなく、ハンドルの慣性力によっても生じるので、それにより誤って自動操舵を解除しないように、慣性力による捩れトルクはハンドルの回転角加速度に応じて大きくなることに着目して、捩れトルクが所定値T0以上であっても、回転角加速度が所定値Aより大きいときには、自動操舵を解除しないようにしている。
【0011】
特許文献2に開示された自動操舵装置では、運転者の操舵により回転角加速度が大きくなる場合等では特許文献1に開示された自動操舵装置では自動操舵が解除されないので、自動操舵中の運転者による手動操舵を正確に検出して自動操舵を確実に解除するため、捩れトルクと、ハンドルの慣性モーメントを操舵角加速度(回転角加速度)まで回転加速するために要するトルクとの差に基づいて、自動操舵を解除するかを判定している。
【0012】
特許文献2に開示された自動操舵装置の原理を、
図3に示すモデル図を参照して説明する。
図3はハンドル1及びコラム軸2をモデル化して示した図である。ハンドル1が開放され、モータ20によりコラム軸2の入力側コラム軸(IS)2Aが減速ギア3側から角度θ
Oだけ回転駆動されたとき、ハンドル1が慣性力に打ち勝って角度θhだけ回転したとすると、入力側コラム軸2Aの捩れ剛性(バネ定数)をKh、ハンドル1の慣性モーメントをIhとすると、下記数1が成立する。
【0013】
【数1】
θh”は、ハンドル角度θhの二階微分値である回転角加速度である。また、この場合に、入力側コラム軸2Aにかかる捩れトルクTtは、下記数2で表わされる。
【0014】
【数2】
上記数1及び数2より、下記数3が成立する。
【0015】
【数3】
ハンドル1が解放状態にある場合は、自動操舵によってハンドル1を回転加速するために要するトルクTiは捩れトルクTtと等しいので、数3で表されるように、捩れトルクTtはハンドル1の回転角加速度θh”を検出することにより推定できることになる。一方、自動操舵が行われているときに、運転者が自動操舵力に抗してハンドル1を回転させた場合の捩れトルクTtは、ハンドル1の慣性モーメントIhを回転角加速度θh”まで加速するために要するトルクTi(=Ih×θh”)と、運転者による手動操舵トルクTdとの和になるので、下記数4が成立する。
【0016】
【数4】
上記数4から明らかなように、捩れトルクTtと、ハンドル1を回転加速するために要するトルクTiとの差(Tt-Ti)は、運転者による手動操舵トルクTdに等しいので、下記数5が成立する。
【0017】
【数5】
従って、上記トルク差(Tt-Ti)を求めることによって、自動操舵中における運転者の手動操舵(手入力)の有無を判断することができる。
【0018】
このように、特許文献2に開示された自動操舵装置では、入力側コラム軸2Aに発生する捩れトルクTtを検出し、回転角加速度θh”とハンドル1の慣性モーメントIhからトルクTiを求めて、比較(Tt-Ti)を実施する。その後、必要に応じてステアリングの自動操舵運転の解除又は設定を行う。従って、慣性モーメントIh及び回転角加速度θh”は、アシスト力を付加される側より上流側の情報であるから、バネ定数Kh等による自由振動系に絡むノイズの影響を受け易くなる問題が生じる。また、回転角加速度θh”を求めるためには2階微分が必要であり、非常にノイズが多くなる問題がある。操舵の変化点で微分すれば、特にノイズが大きくなる。これらの問題は、特許文献1に開示された自動操舵装置でも生じる。
【0019】
かかる問題を解決すべく、本出願人は、国際公開第2018/151291号(特許文献3)にて、ハンドON/OFFの判定を、トルク系ではなく、微分を用いない角度系で行う手法を提案している。具体的には、トルクセンサより下流にあるEPSのアシストモータの角度情報を利用し、手放し時の周波数応答に合わせて設計された共振フィルタによりハンドル角度を推定し、推定されたハンドル角度と、コラム軸に関する角度情報又は捩れトルク及びモータの電気角から算出される実ハンドル角度との偏差角度に基づき、角度閾値及び時間閾値との2段階の比較を行うことでハンドルON/OFFの判定、つまり手入力の判定を行う。偏差角度の大きさが角度閾値以上となる状態が時間閾値T1以上継続したときにハンドONを判定し、偏差角度の大きさが角度閾値より小さい状態が時間閾値T2以上継続したときにハンドOFFを判定している。これにより、ハンドルの共振を含めた自由振動系に絡むノイズの影響を受けることなく、精度の良い手入力の判定を行うことができると共に、二階微分を行わないので、判定が簡易であり、ノイズの影響も受け難いようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開平8-337181号公報
【文献】特開平11-208498号公報
【文献】国際公開第2018/151291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献3に開示されたEPSでは、車両が直進走行している場合、運転者がハンドルを把持していても手動操舵トルクが入力されにくいので、偏差角度の大きさが角度閾値以上となる程に大きくならず、ハンドルを把持しているにも関わらず、ハンドOFFと誤判定する可能性がある。誤判定の可能性を小さくすべく、角度閾値を調整しようとすると、背反が大きくなるおそれがある。時間閾値を調整して誤判定率を下げようとすると、検出速度が遅くなってしまうおそれがある。
【0022】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、運転者がハンドルを把持している状態において、直進走行時等のように運転者による手入力が小さい場合でも、検出速度に遅延が生じることなく、精度良くハンドON/OFFを判定することができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、ハンドルに接続されたコラム軸を備え、車両の操舵系にアシスト力を付与するモータを制御すると共に、制御モードを切り替える機能を有する電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、前記コラム軸の出力側に関連する出力側角度から、共振フィルタを用いて、手放し状態の推定ハンドル角度を求めるハンドル角度推定部と、実ハンドル角度と前記推定ハンドル角度との偏差角度から求められる偏差変化量を累積して、変化量累積値を生成し出力する変化量情報生成部と、ハンドONの状態において、前記偏差角度の大きさが第1所定角度より小さい状態が継続している時間である第1判定時間が第1所定時間より長く、且つ、前記変化量累積値が第1所定累積値より小さいとき、ハンドOFFを判定するハンドON/OFF判定部とを備えることにより達成される。
【0024】
また、本発明の上記目的は、前記変化量情報生成部が前記偏差変化量も出力し、前記ハンドON/OFF判定部が、前記ハンドOFFの状態において、前記偏差角度の大きさが第2所定角度より大きい状態が継続している時間である第2判定時間が第2所定時間より長いとき、又は、前記変化量累積値が第2所定累積値より大きく、且つ、前記偏差変化量が第1所定変化量より大きいとき、前記ハンドONを判定することにより、或いは、前記ハンドON/OFF判定部が、前記第1判定時間を計測しているとき、前記変化量累積値が第3所定累積値より大きく、且つ、前記偏差変化量が第2所定変化量より大きくなったら、前記第1判定時間をリセットすることにより、或いは、前記変化量情報生成部が、前記偏差角度の高周波成分を低減するフィルタ部と、前記フィルタ部の出力を微分して微分値を求める微分部と、前記微分値の大きさを前記偏差変化量とする絶対値化部と、前記偏差変化量の一定時間の累積値を前記変化量累積値とする累積部とを具備することにより、或いは、前記フィルタ部が、急峻な遮断特性を有するローパスフィルタで構成されることにより、或いは、前記コラム軸がトーションバーを備え、前記トーションバーの捩れトルクに基づいて、前記トーションバーの捩れ角を求める捩れ角変換部と、前記捩れ角及び前記出力側角度に基づいて、前記実ハンドル角度を求める実ハンドル角度算出部とを更に備えることにより、或いは、前記コラム軸がトーションバーを備え、前記コラム軸に関するコラム角度情報に基づいて、前記トーションバーの捩れ角を算出する捩れ角算出部と、前記捩れ角及び前記出力側角度に基づいて、前記実ハンドル角度を求める実ハンドル角度算出部とを更に備えることにより、或いは、前記モータの電気角に基づいて、前記出力側角度を算出する相対角度生成部を更に備えることにより、或いは、前記共振フィルタが、実機で前記コラム軸の出力側から前記コラム軸が回されたときの前記ハンドルの共振を再現し、前記出力側角度を入力して得られる前記推定ハンドル角度が前記実ハンドル角度と略同一となる特性を有することにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、手放し状態の推定ハンドル角度と実ハンドル角度との偏差角度に基づくハンドON/OFFの判定に対して、偏差角度の変化量を累積した判定を加えているので、ハンドルの共振を含めた自由振動系に絡むノイズの影響を受けることない精度の良い手入力の判定の効果に加えて、直進走行時等のように運転者による手入力が小さい場合でも、精度良くハンドOFFを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
【
図2】電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】ハンドル及びコラム軸をモデル化した模式図である。
【
図4】電動パワーステアリング装置に磁歪式トルクセンサを取り付けた構成例を示す図である。
【
図5】本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。
【
図6】共振フィルタの特性例を示すボード線図である。
【
図7】変化量情報生成部(第1実施形態)の構成例を示すブロック図である。
【
図8】フィルタ部を構成するローパスフィルタ(LPF)の特性例を示すボード線図である。
【
図9】ハンドON/OFF判定部の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。
【
図10】本発明の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。
【
図11】ハンドON/OFF判定部の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の効果を確認するシミュレーションにおいて、従来の方法でハンドON/OFFの判定を行った場合の結果を示すグラフである。
【
図13】本発明の効果を確認するシミュレーションにおいて、本発明の方法でハンドON/OFFの判定を行った場合の結果を示すグラフである。
【
図14】本発明の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。
【
図15】変化量情報生成部(第2実施形態)の構成例を示すブロック図である。
【
図16】ハンドON/OFF判定部の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。
【
図17】本発明の構成例(第3実施形態)を示すブロック図である。
【
図18】ハンドON/OFF判定部の構成例(第3実施形態)を示すブロック図である。
【
図19】ハンドON/OFF判定部の動作例(第3実施形態)を示すフローチャートである。
【
図21】本発明の構成例(第4実施形態)を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明では、運転者がハンドルを把持しているかを判定するハンドON/OFFの判定を、運転者がハンドルを手放した状態を推定したハンドル角度(推定ハンドル角度)と、実際に検出又は算出されるハンドル角度(実ハンドル角度)との偏差である偏差角度に基づく判定(以下、「偏差角度判定」とする)に対して、偏差角度の変化量の累積に基づく判定(以下、「累積値判定」とする)を加えて行う。ハンドON/OFFの判定は、電動パワーステアリング装置(EPS)が操舵系にアシスト力を付与するモータを制御するアシストモード、自動運転や前方車両への自動追尾等において操舵系を自動操舵するためにモータを制御する自動モード、バック駐車や縦列駐車等の駐車時に操舵系を主導して操舵するためにモータを制御する駐車支援モード等の制御モードの切り替え等において実施される。例えば、アシストモードと自動モードの切り替え、アシストモードと駐車支援モードの切り替えにおいて実施される。なお、運転者がハンドルを両手又は片手で把持した場合をハンドON(手入力有り)とし、ハンドルを把持していない場合をハンドOFF(手入力無し)とする。
【0028】
偏差角度判定では、特許文献3と同様に、トルクセンサより下流に位置する、コラム軸の出力側に関連する角度情報である出力側角度に基づいて、ハンドルを手放したときの周波数応答に合わせて設計された共振フィルタにより、推定ハンドル角度を求める。そして、推定ハンドル角度と実ハンドル角度との偏差である偏差角度を用いてハンドON/OFFの判定を行う。具体的には、ハンドONの状態において、偏差角度の大きさが所定角度(第1所定角度)Fa1より小さい状態が継続している時間(第1判定時間)が所定時間(第1所定時間)Ft1より長いときに、ハンドOFFを判定する(以下、ハンドOFFを判定することを「ハンドOFF検出」とする)。また、ハンドOFFの状態において、偏差角度の大きさが所定角度(第2所定角度)Fa2より大きい状態が継続している時間(第2判定時間)が所定時間(第2所定時間)Ft2より長いときに、ハンドONを判定する(以下、ハンドONを判定することを「ハンドON検出」とする)。これは、操舵系を
図1に示されるユニバーサルジョイント4aから切り離した状態でコラム軸を出力側から回す(角度を与える)と、ハンドルを把持している場合と把持していない場合とで、コラム軸の入力側に現れる振動特性が異なり、それによりハンドル角度に差が生じることを基にした判定である。
【0029】
累積値判定は、偏差角度の変化量の大きさ(偏差変化量)を一定時間累積した値(変化量累積値)を用いた判定であり、上記の偏差角度判定におけるハンドOFF検出又はハンドOFF検出及びハンドON検出両方に累積値判定を加える。ハンドOFF検出のみに累積値判定を加える場合は、ハンドON検出は偏差角度判定のみで行われることになる。累積値判定を加えたハンドOFF検出では、ハンドONの状態において、偏差角度の大きさが所定角度Fa1より小さい状態が継続している時間が所定時間Ft1より長く、且つ、変化量累積値が所定累積値(第1所定累積値)Fc1より小さいときに、ハンドOFFを判定する。累積値判定を加えたハンドON検出では、ハンドOFFの状態において、偏差角度の大きさが所定角度Fa2より大きい状態が継続している時間が所定時間Ft2より長いとき、又は、変化量累積値が所定累積値(第2所定累積値)Fc2より大きく且つ偏差変化量が所定変化量(第1所定変化量)Fv1より大きいときに、ハンドONを判定する。更に、累積値判定を加えたハンドOFF検出において、偏差角度の大きさが所定角度Fa1より小さい時間を計測しているときに、変化量累積値が所定累積値(第3所定累積値)Fc3より大きく且つ偏差変化量が所定変化量(第2所定変化量)Fv2より大きくなったら、計測していた時間をリセットすることも可能である。なお、偏差角度の変化量として、偏差角度の微分値や差分値等が使用可能である。
【0030】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
先ず、ハンドOFF検出に累積値判定を加えた実施形態(第1実施形態)について説明する。本実施形態では磁歪式のトルクセンサにて検出される捩れトルク及びモータの電気角を用いて実ハンドル角度を算出し、同電気角を用いて出力側角度を算出する。
【0032】
図4は、電動パワーステアリング装置に磁歪式トルクセンサを取り付けた構成例であり、コラム軸2に捩れトルクTtを検出するためのトルクセンサ部200が設けられている。トルクセンサ部200内にトーションバー201が配置されており、トーションバー201を介した入力側コラム軸(IS)2Aと出力側コラム軸(OS)2Bの捩れをスタブシャフト202及びアルミ製スリーブ203により検出する。トーションバー201が捩れるとスタブシャフト202も捩られ、アルミ製スリーブ203に設けられた穴(窓)とスタブシャフト202の表面に形成された山の位置関係にズレが生じ、アルミ製スリーブ203の表皮効果により磁束密度が変化し、アルミ製スリーブ203の外周面に巻回されているコイル204に誘起される電圧が変化するので、その変化を捩れトルクTtとして検出する。トーショッバー201に対してハンドル1側が入力側コラム軸(IS)2Aであり、ピニオン側が出力側コラム軸(OS)2Bであり、出力側コラム軸2Bにウォーム及びウォームホイールで成る減速ギア(減速比1/N(N>1.0))3が設けられている。出力側コラム軸2Bに取り付けられているウォームホイールは、モータ20の出力軸に連結されているウォームにより減速比1/Nで駆動回転され、モータ20はコントロールユニット(ECU)100で制御される。
【0033】
本実施形態ではハンドON/OFFの判定をECU100にて行う。その構成例を
図5に示す。なお、
図5に示される構成は、ECU100を構成するCPU(MPUやMCU等を含む)で実行されるプログラムで実現しても良いし、一部又は全部をハードウェアで実現しても良い。
【0034】
本実施形態は、ハンドON/OFFの判定を行うために、トルクセンサ部200にて検出される捩れトルクTtからトーションバー201の捩れ角θdを求める捩れ角変換部120と、回転センサ20Aからモータ20の電気角θeを入力して出力側角度θtを出力する相対角度生成部130と、捩れ角θd及び出力側角度θtを加算して実ハンドル角度θhrを出力する実ハンドル角度算出部としての加算部171と、出力側角度θtを入力して手放し状態の推定ハンドル角度θheを出力するハンドル角度推定部140と、実ハンドル角度θhrから推定ハンドル角度θheを減算して偏差角度θdeを求める減算部172と、偏差角度θdeから変化量累積値θsmを算出する変化量情報生成部150と、偏差角度θde及び変化量累積値θsmに基づいてハンドON/OFFの判定を行うハンドON/OFF判定部160を備える。
【0035】
捩れ角変換部120は、下記数6に基づいて、捩れトルクTtを捩れ角θdに変換する。
【0036】
【数6】
ここで、Khはトーションバー201のバネ定数である。
【0037】
相対角度生成部130は、アンチロールオーバー処理により電気角θeを相対電気角θeuにし、更に、下記数7に基づいて、相対電気角θeuから出力側角度θtを算出する。
【0038】
【数7】
極対数はモータ20の極対数、減速比は減速ギア3の減速比(1/N)である。アンチロールオーバー処理は、電気角θeと前回(1サンプル前)の電気角θeとの差分(以下、「角度差分」とする)に基づいて加算する角度(以下、「加算角度」とする)を決め、加算開始時点から累積された加算角度を電気角θeに加算することにより行われる。具体的には、電気角θeが電気角の範囲の最大値(以下、「角度最大値」とする)の1/2より減少した場合、即ち、角度差分が角度最大値の-1/2倍より小さい場合、加算角度は角度最大値とし、電気角θeが角度最大値の1/2より増加した場合、即ち、角度差分が角度最大値の1/2倍より大きい場合、加算角度は角度最大値×(-1)とし、それ以外の場合、加算角度は0とする。なお、アンチロールオーバー処理については、上記以外の方法で行っても良い。
【0039】
捩れ角変換部120からの捩れ角θdと相対角度生成部130からの出力側角度θtとを加算部171で加算した結果が、実ハンドル角度θhrとなる。
【0040】
ハンドル角度推定部140は、共振フィルタを使用して、出力側角度θtから推定ハンドル角度θheを求める。共振フィルタは、実機又は実車を模擬した装置等で、ユニバーサルジョイント4aを切り離し、ハンドル1には触れずに、出力側コラム軸2Bを回して、ハンドル1の共振を再現し、実ハンドル角度θhrと出力側角度θtから周波数応答を求め、それに合わせて設計されている。手放し状態のため、出力側角度θtを入力としたフィルタ結果である推定ハンドル角度θheは、理想的には実ハンドル角度θhrと一致するべきなので、共振を再現させるためには、2次のフィルタが必要になる。設計した共振フィルタは、推定ハンドル角度θheを実機での実ハンドル角度θhrに合わせるように調整されており、その特性例を
図6に示す。
図6は共振フィルタの特性例を示すボード線図であり、実線で示される特性Bが共振フィルタの特性である。破線で示される特性Aは一般的な2次のローパスフィルタ(LPF)の特性である。共振フィルタの振幅(ゲイン)は3Hz近辺まで平坦で、10Hz近辺で特性Aよりも凸状に大きくなっており、約20Hz以上で特性Aより少し低下している。また、共振フィルタの位相は、約10Hz以下で特性Aよりも遅れが小さく、約10Hz以上で特性Aよりも遅れが大きくなっている。このように、推定ハンドル角度θheにはハンドル1の共振が含まれることになる。なお、共振フィルタとして、2次のLPF以外のフィルタを使用しても良い。
【0041】
減算部172では、実ハンドル角度θhrから推定ハンドル角度θheを減算することにより、両角度の偏差である偏差角度θdeが算出される。偏差角度θdeは、ハンドON/OFF判定部160で行われるハンドON/OFFの判定に使用される。上記のように、推定ハンドル角度θheにはハンドル1の共振が含まれており、実ハンドル角度θhrはハンドル1の共振の影響を受けているので、減算部172での減算により、ハンドル1の手放し状態での共振分は相殺されることになる。そして、このようにハンドル1の手放し状態での共振の影響が低減された偏差角度θdeを用いてハンドON/OFFの判定を行うので、ハンドON/OFF判定部160は、ハンドルの共振を含めた捩れ剛性等による自由振動系に絡むノイズの影響を受けずに判定を行うことができる。
【0042】
変化量情報生成部150は、偏差角度θdeを用いて、ハンドON/OFFの判定での累積値判定に使用する変化量累積値θsmを算出する。変化量情報生成部150の構成例を
図7に示す。変化量情報生成部150は、偏差角度θdeをフィルタリングして偏差角度θdfを出力するフィルタ部151と、偏差角度θdfを微分して微分値θddを出力する微分部152と、微分値θddの絶対値|θdd|を偏差変化量として出力する絶対値化部153と、偏差変化量|θdd|を累積して、変化量累積値θsmを出力する累積部154を備える。
【0043】
フィルタ部151はLPFで構成され、偏差角度θdeに含まれる高周波ノイズを除去する。偏差角度θdeには、実ハンドル角度θhrと推定ハンドル角度θheの減算では 除去しきれない、ブレーキジャダーや凸凹な路面の走行等により発生する高周波なノイズが重畳することがあるので、そのノイズをLPFで除去する。高周波ノイズを除去された偏差角度θdfは、後段の微分部152で微分されるので、ノイズが残存していると、その影響が大きく出てしまうので、急峻な遮断特性を持つLPFを使用する。一方、偏差角度θdfの微分値θddは、その絶対値|θdd|が累積部154で累積されて使用されることになるので、LPFの位相特性には多少の遅れがあっても許容される。これらのことより、LPFとして、例えば
図8に示されるような周波数特性を有するものを使用する。
図8(A)は振幅特性、
図8(B)は位相特性を示しており、2~3Hzを遮断周波数とする
2次の位相遅れ特性となっている。
【0044】
累積部154は、一定時間の偏差変化量|θdd|を累積し、累積した偏差変化量|θdd|の総和を変化量累積値θsmとして出力する。過去一定時間の偏差変化量|θdd|を累積するように、偏差変化量|θdd|を、例えばリングバッファに累積し、リングバッファのデータ量や累積時間等が所定の閾値に到達したら、最も古いデータを捨て、新しいデータに置き換えるようにする。例えば、一定時間を1secとし、データのサンプル間隔を4msecとした場合、過去1秒間のデータとして250個のデータが累積されることになる。累積部154は、偏差変化量|θdd|が250個累積されるまで何も出力せず、250個累積されたら、累積された偏差変化量|θdd|全てを加算し、加算結果を変化量累積値θsmとして出力する。その後、新しい偏差変化量|θdd|が入力されたら、最も古い偏差変化量|θdd|を破棄し、新しい偏差変化量|θdd|を含めた250個の偏差変化量|θdd|から変化量累積値θsmを算出する。累積された偏差変化量|θdd|は、ハンドON/OFF判定部160でのハンドON/OFFの判定にてハンドON又はハンドOFFが判定されたら(ハンドON/OFFの判定に変化があったら)、全て破棄(リセット)される。ハンドON又はハンドOFFが判定されたこと(ハンドON/OFFの判定に変化があったこと)は、ハンドON/OFF判定部160からの判定結果DSより検知する。なお、累積する偏差変化量|θdd|の数は調整可能であり、一定時間は変えずに、リソース(主にメモリ領域)を削減するために累積するデータの数を減らしたい場合は、偏差変化量|θdd|をダウンサンプリング、つまり間引いて累積する。また、リングバッファではなく、FIFO(First in First Out)バッファを使用し、FIFOバッファのデータ量や累積時間等が所定の閾値に到達したら、FIFOバッファからデータを1つ取り出し、新しいデータを格納するようにしても良い。
【0045】
なお、偏差変化量として微分値θddの絶対値ではなく、微分値θddの二乗値等、微分値θddの符号に依存しない値を使用しても良い。また、変化量累積値として、偏差変化量の総和ではなく、平均値等を使用しても良い。
【0046】
ハンドON/OFF判定部160は、偏差角度θde及び変化量累積値θsmを用いて、ハンドON/OFFの判定を行う。ハンドON/OFF判定部160の構成例を
図9に示す。ハンドON/OFF判定部160は、偏差角度θdeの大きさ(絶対値)|θde|を求める絶対値化部161と、ハンドON/OFFの判定での偏差角度判定に使用する判定時間Tjを計測する判定時間計測部162と、判定時間Tj及び変化量累積値θsmからハンドOFF検出及びハンドON検出を行う判定部163を備える。
【0047】
判定時間計測部162は、ハンドONの状態では、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa1より小さい状態が継続している時間を計測し、ハンドOFFの状態では、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa2より大きい状態が継続している時間を計測し、計測した時間を判定時間Tjとして出力する。具体的には、例えばカウンタを使用し、入力した偏差角度の絶対値|θde|が条件を満たす場合はカウンタの値を1つ増やし、条件を満たさない場合はカウンタをリセット(値ゼロ)し、カウンタの値を判定時間Tjとして出力する。ハンドON/OFFの判定にてハンドON又はハンドOFFを判定された場合(ハンドON/OFFの判定が変化した場合)、カウンタはリセットされる。ハンドON又はハンドOFFが判定されたこと(ハンドON/OFFの判定が変化したこと)は、判定部163からの判定結果DSより検知する。また、ハンドルの状態がハンドONであるかハンドOFFであるかは、例えば、ハンドルの状態を示すフラグ等を用意し、状態が変わる度にフラグの内容を変え、フラグの内容を確認することにより判断する。なお、所定角度Fa1及び所定角度Fa2は、同じ値でも、違う値でも良い。また、上記では、偏差角度θdeの絶対値を所定角度Fa1及びFa2と比較しているが、正負の所定角度±Fa1及び±Fa2を設定し、これらと偏差角度θde自体を比較するようにしても良い。この場合、正負の所定角度の大きさを変えても良い。
【0048】
判定部163は、判定時間Tj及び変化量累積値θsmを用いて、偏差角度判定及び累積値判定によりハンドOFF検出を行い、偏差角度判定によりハンドON検出を行う。即ち、ハンドONの状態において、判定時間Tjが所定時間Ft1より長く、且つ、変化量累積値θsmが所定累積値Fc1より小さい場合、ハンドOFFを判定し、ハンドOFFの状態において、判定時間Tjが所定時間Ft2より長い場合、ハンドONを判定する。ハンドOFF検出において、偏差角度判定だけでは、運転者がハンドルを把持していても、直進走行時等のように運転者による手入力が殆どない場合、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa1より小さい時間が所定時間Ft1より長く継続してしまうことがあり、その場合、ハンドOFFと誤判定してしまう。しかし、「運転者がハンドルを把持していれば、ハンドルに微量な変動が生じるはずである」との観点から、微量な変動を累積した量に相当する変化量累積値θsmを用いた累積値判定を加え、偏差角度判定でハンドOFFと判定しても、変化量累積値θsmが所定累積値Fc1より小さくなければ、運転者がハンドルを把持していると判断して、ハンドOFFを判定しない。これにより、ハンドOFFとの誤判定を軽減することができる。ハンドON又はハンドOFFを判定した場合、判定結果DSを出力する。なお、所定時間Ft1及び所定時間Ft2は、同じ値でも、違う値でも良い。
【0049】
このような構成において、その動作例を
図10及び
図11のフローチャートを参照して説明する。なお、動作開始時、ハンドルの状態(ハンドON及びハンドOFF)には予め初期値が設定されているとする。
【0050】
先ず、トルクセンサ部200で検出された捩れトルクTtが捩れ角変換部120に入力され(ステップS10)、捩れ角変換部120は、数6に基づいて、捩れ角θdを算出する(ステップS20)。捩れ角θdは加算部171に入力される。
【0051】
また、回転センサ20Aで検出されたモータ20の電気角θeは相対角度生成部130に入力され(ステップS30)、相対角度生成部130は、アンチロールオーバー処理及び数7に基づく演算により、出力側角度θtを算出する(ステップS40)。出力側角度θtは加算部171及びハンドル角度推定部140に入力される。
【0052】
加算部171は、捩れ角θd及び出力側角度θtを加算して、実ハンドル角度θhrを算出する(ステップS50)。ハンドル角度推定部140は、共振フィルタを使用して、出力側角度θtから推定ハンドル角度θheを求める(ステップS60)。実ハンドル角度θhr及び推定ハンドル角度θheは減算部172に入力され、実ハンドル角度θhrから推定ハンドル角度θheを減算して、偏差角度θdeを算出する(ステップS70)。偏差角度θdeは変化量情報生成部150及びハンドON/OFF判定部160に入力される。
【0053】
変化量情報生成部150では、フィルタ部151が偏差角度θdeを入力し、
図8に示されるような特性のLPFにより偏差角度θdeをフィルタリングして、偏差角度θdfを求める(ステップS80)。偏差角度θdfは微分部152にて微分され(ステップS90)、微分値θddの絶対値|θdd|が絶対値化部153にて求められ(ステップS100)、偏差変化量|θdd|として累積部154に入力される。累積部154は、ハンドON/OFF判定部160からの判定結果DSに変化があるときは(ステップS110
にてYes)、リングバッファをリセットした(ステップS120)後に、
偏差変化量|θdd|をリングバッファに格納する(ステップS130)。判定結果DSに変化がないときは(ステップS110
にてNo)、リセットせずに、偏差変化量|θdd|をリングバッファに格納する(ステップS130)。そして、リングバッファのデータ量や累積時間等が所定の閾値に到達したら(ステップS140)、リングバッファに累積された偏差変化量|θdd|全てを加算し、加算結果を変化量累積値θsmとして、ハンドON/OFF判定部160に出力する(ステップS150)。リングバッファのデータ量や累積時間等が所定の閾値に未到達ならば、変化量累積値θsmは出力せず、ステップS10に戻る。
【0054】
偏差角度θde及び変化量累積値θsmを入力したハンドON/OFF判定部160は、それらを用いてハンドON/OFFの判定を行う(ステップS160)。ハンドON/OFF判定部160の動作例については、
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
入力された偏差角度θdeの絶対値|θde|が絶対値化部161で求められ(ステップS161)、判定時間計測部162に出力される。入力された変化量累積値θsmは判定部163に入力される。
【0056】
判定時間計測部162は、先ず、ハンドON/OFF判定部160から判定結果DSが変化しているかを確認する(ステップS162)。判定結果DSが変化していたら、カウンタをリセットし(ステップS163)、変化していなかったら、カウンタはそのままとする。そして、ハンドルの状態がハンドONの場合(ステップS164)、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa1より小さいならば(ステップS165)、カウンタの値を1つ増やし(ステップS166)、そうでなければ(ステップS165)、カウンタをリセットする(ステップS167)。ハンドルの状態がハンドOFFの場合(ステップS164)、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa2より大きいならば(ステップS168)、カウンタの値を1つ増やし(ステップS169)、そうでなければ(ステップS168)、カウンタをリセットする(ステップS170)。判定時間計測部162は、カウンタの値を判定時間Tjとして判定部163に出力する(ステップS171)。
【0057】
判定時間Tj及び変化量累積値θsmを入力した判定部163は、ハンドルの状態がハンドONの場合(ステップS172)、判定時間Tjが所定時間Ft1より長く、且つ、変化量累積値θsmが所定累積値Fc1より小さいならば(ステップS173にてYes)、ハンドOFFを判定し(ステップS174)、判定結果DSに「ハンドOFF」を設定し、出力する(ステップS175)。そうでなければ(ステップS173にてNo)、判定結果DSは変化させない。ハンドルの状態がハンドOFFの場合(ステップS172)、判定時間Tjが所定時間Ft2より長いならば(ステップS176にてYes)、ハンドONを判定し(ステップS177)、判定結果DSに「ハンドON」を設定し、出力する(ステップS178)。そうでなければ(ステップS176にてNo)、判定結果DSは変化させない。出力された判定結果DSは、電動パワーステアリング装置での制御モードの切り替え等のために使用されると共に、変化量情報生成部150の累積部154及び判定時間計測部162に入力される。
【0058】
以上の動作(ステップS10~S178)が、一定の時間間隔で繰り返される。
【0059】
なお、
図10及び
図11におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。また、いくつかの構成要素を適宜統合し、それらの構成要素の動作を統合しても良い。例えば、判定時間計測部162及び判定部163を統合し、ハンドルの状態(ハンドON及びハンドOFF)毎の動作を統合して実行しても良い。更に、上記では、ハンドルの状態に応じて、ハンドON検出及びハンドOFF検出のどちらかを行っているが、ハンドルの状態に関わらず、両方の検出を同時に行っても良い。この場合、判定時間Tj及びカウンタは、ハンドON検出用及びハンドOFF検出用として別々に用意する。ステップS140において、リングバッファのデータ量や累積時間等が所定の閾値に未到達の場合、ステップS10に戻っているが、変化量累積値θsmがなくてもハンドON検出は可能なので、ステップS10に戻らずに、ハンドON検出のみを行うようにしても良い。
【0060】
ハンドOFF検出に累積値判定を加えた効果について、シミュレーション結果を基に説明する。
【0061】
シミュレーションでは、ハンドルの状態(ハンドON及びハンドOFF)の正解を与えるために、運転者がハンドルを把持せずに手放しているときに押すスイッチを用意し、スイッチがONのときをハンドOFF、スイッチがOFFのときをハンドONとしている。
【0062】
図12は、ハンドOFF検出に累積値判定を加えず、偏差角度判定のみでハンドOFF検出を行った場合のシミュレーション結果である。所定角度Fa1を0.26[deg]、Fa2を0.13[deg]に設定し、約300秒間のシミュレーション結果である。
図12(A)は判定結果DSの時間変化、
図12(B)は偏差角度θdeの時間変化、
図12(C)は運転者の手入力によるトルク(手入力トルク)の時間変化を示している。また、
図12(A)において、実線がスイッチのシミュレーション結果(即ち、ハンドルの状態の正解)を示し、破線がハンドON/OFFの判定結果を示しており、値0がハンドON、値1がハンドOFFである。
図12(A)から、丸で囲った箇所において、ハンドルを把持している状態でハンドOFFと誤判定していることがわかる。これは、運転者がハンドルを把持しているが、
図12(C)に示されるように、手入力トルクが小さく、その結果、偏差角度θdeが、
図12(B)に示されるように、所定角度Fa1より小さい状態が継続したために、ハンドOFFと誤判定してしまったのである。
【0063】
これに対して、ハンドOFF検出に累積値判定を加えた本実施形態によるシミュレーション結果を
図13に示す。
図13(A)、(B)及び(C)は、
図12(A)、(B)及び(C)と同じデータの時間変化をそれぞれ示しており、
図13(D)は判定時間Tjの時間変化、
図13(E)は変化量累積値θsmの時間変化を示している。
図12(A)の丸で囲った箇所に対応する判定結果を見ると(
図13(A)の丸で囲った箇所参照)、ハンドOFFと誤判定していないことがわかる。これは、偏差角度θdeが所定角度Fa1より小さい状態が継続したために、
図13(D)に示されるように、判定時間Tjが所定時間Ft1より長くなったが、変化量累積値θsmは、
図13(E)に示されるように、所定累積値Fc1より大きいために、ハンドOFFを判定されなかったのである。このように、ハンドOFF検出に累積値判定を加えることにより、ハンドOFFの誤判定を軽減することができる。
【0064】
次に、ハンドOFF検出だけではなく、ハンドON検出にも累積値判定を加えた実施形態(第2実施形態)について説明する。
【0065】
偏差角度判定のみでハンドON検出を行う場合、運転者がハンドルを把持し、大きな手入力トルクが入力されても、その入力が継続(所定時間Ft2より長い時間)しなければ、ハンドONを判定されない。よって、例えば、直進→操舵→直進のような状況において、誤判定が起こる可能性がある。そこで、ハンドON検出に累積値判定を加え、ハンドOFFの状態において、変化量累積値が所定累積値Fc2より大きく、且つ、偏差変化量が所定変化量Fv1より大きいときは、「明確にハンドONである」として、偏差角度の大きさが所定角度Fa2より大きい時間が所定時間Ft2より長く継続していなくても、ハンドONを判定するようにする。変化量累積値が所定累積値Fc2より大きいという条件を付けているのは、偏差変化量が所定変化量Fv1より大きいという条件だけでは、例えば、ハンドOFFの状態において、車両が縁石等に乗り上げたときに、偏差変化量が所定変化量Fv1より大きくなり、ハンドONと誤判定することが起こり得るためである。
【0066】
第2実施形態の構成例を
図14に示す。
図5に示される第1実施形態の構成例と比べると、第2実施形態では、変化量情報生成部250から変化量累積値θsmに加えて、偏差変化量|θdd|も出力され、ハンドON/OFF判定部260に入力されている。他の構成は第1実施形態と同じである。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付して、説明は省略する。以降の実施形態でも同様である。
【0067】
変化量情報生成部250の構成例を
図15に示す。
図7に示される第1実施形態での変化量情報生成部150の構成例と比べると、絶対値化部153から出力される偏差変化量|θdd|が、累積部154の他に、外部、具体的にはハンドON/OFF判定部260にも出力されている。
【0068】
ハンドON/OFF判定部260の構成例を
図16に示す。
図9に示される第1実施形態でのハンドON/OFF判定部160の構成例と比べると、判定部163が判定部263に置き換わっており、判定部263には、判定時間Tj及び変化量累積値θsmに加えて、偏差変化量|θdd|が入力されている。
【0069】
判定部263では、ハンドOFF検出は第1実施形態での判定部163と同様に、偏差角度判定及び累積値判定により行うが、ハンドON検出も偏差角度判定及び累積値判定により行う。具体的には、ハンドOFFの状態において、判定時間Tjが所定時間Ft2より長い場合、又は、変化量累積値θsmが所定累積値Fc2より大きく、且つ、偏差変化量|θdd|が所定変化量Fv1より大きい場合、ハンドONを判定する。なお、所定累積値Fc2の値は、所定累積値Fc1と同じ値でも違う値でも良い。また、偏差変化量|θdd|ではなく、微分値θddに対して正負の所定変化量±Fv1を設定し、これらと微分値θddを比較するようにしても良い。この場合、正負の所定変化量の大きさを変えても良い。
【0070】
第2実施形態の動作例は、第1実施形態の動作例と比べると、上述のように、変化量情報生成部250の絶対値化部153から出力された偏差変化量|θdd|がハンドON/OFF判定部260の判定部263にも入力される動作と、判定部263でのハンドON検出の動作が異なるのみで、他は第1実施形態の動作例と同じである。
【0071】
ハンドOFF検出に使用する判定時間Tjの計測において、第2実施形態でのハンドON検出に付加した累積値判定を利用する実施形態(第3実施形態)について説明する。
【0072】
第1及び第2実施形態では、ハンドONの状態において、1サンプルでも偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa1より小さくなると、ハンドOFF検出に使用する判定時間Tjを計測するためのカウンタが動作し始める。よって、例えば、運転者がハンドルを大きく操舵した場合でも、ハンドルがセンター(中立位置)を跨ぐことにより手入力トルクがゼロに近づき、カウンタが動作してしまうことがある。そこで、ハンドONの状態において判定時間Tjを計測する際に、第2実施形態のハンドON検出での累積値判定と同様に、変化量累積値が所定累積値Fc3より大きく、且つ、偏差変化量が所定変化量Fv2より大きいときは、「明確にハンドONである」として、ハンドONを判定した状態に戻すべく、カウンタをリセットする。
【0073】
第3実施形態の構成例を
図17に示す。
図5に示される第1実施形態の構成例と比べると、第3実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、変化量情報生成部250から偏差変化量|θdd|が出力され、ハンドON/OFF判定部360に入力されている。他の構成は第1実施形態と同じである。
【0074】
ハンドON/OFF判定部360の構成例を
図18に示す。
図9に示される第1実施形態でのハンドON/OFF判定部160の構成例と比べると、判定時間計測部162が判定時間計測部362に置き換わっており、判定時間計測部362には、偏差角度の絶対値|θde|及び判定結果DSに加えて、変化量累積値θsm及び偏差変化量|θdd|が入力されている。
【0075】
判定時間計測部362は、ハンドOFFの状態では、第1実施形態の判定時間計測部162と同様の動作により、判定時間Tjを計測するが、ハンドONの状態では、判定時間計測部162での動作に加えて、ハンドON検出での累積値判定を利用して、判定時間Tjを計測する。具体的には、ハンドONの状態において、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa1より小さくても、変化量累積値θsmが所定累積値Fc3より大きく、且つ、偏差変化量|θdd|が所定変化量Fv2より大きい場合は、カウンタをリセットする。なお、所定累積値Fc3の値は、所定累積値Fc1又はFc2と同じ値でも違う値でも良く、所定変化量Fv2は、所定変化量Fv1と同じ値でも違う値でも良い。
【0076】
第3実施形態の動作例は、第1実施形態の動作例と比べると、上述のように、変化量情報生成部250の絶対値化部153から出力された偏差変化量|θdd|がハンドON/OFF判定部360の判定時間計測部362にも入力される動作と、判定時間計測部362でのハンドONの状態における判定時間Tjの計測の動作が異なるのみで、他は第1実施形態の動作例と同じである。
【0077】
ハンドON/OFF判定部360の動作例のフローチャートを
図19に示す。
図11に示される第1実施形態でのハンドON/OFF判定部160の動作例と比べると、ハンドルの状態がハンドONの場合に(ステップS164)、偏差角度の絶対値|θde|が所定角度Fa1より小さいならば(ステップS165)、カウンタをアップするが(ステップS166)、変化量累積値θsmが所定累積値Fc3より大きく、且つ、偏差変化量|θdd|が所定変化量Fv2より大きい場合(ステップS166A)、カウンタをリセットする(ステップS166B)。そうでなければ(ステップS166A)、カウンタはリセットしない。他は、第1実施形態でのハンドON/OFF判定部160の動作例と同じである。なお、
図19におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。
【0078】
第3実施形態での判定時間Tjの計測方法を、第2実施形態での判定時間Tjの計測に適用しても良い。
【0079】
上述の実施形態では、磁歪式のトルクセンサを使用しているが、角度センサを用いたトルクセンサを使用して本発明を実施することも可能である。この場合の実施形態(第4実施形態)について説明する。
【0080】
【0081】
トーションバー23を備えたコラム軸2のハンドル1側の入力側コラム軸2Aには、角度センサとしてのホールICセンサ21及びトルクセンサ入力側ロータの20°ロータセンサ22が装着されている。ホールICセンサ21は296°周期のAS_IS角度θnを出力する。トーションバー23よりもハンドル1側に装着された20°ロータセンサ22は、20°周期のTS_IS角度θh1を出力し、TS_IS角度θh1は角度演算部50に入力される。また、コラム軸2の出力側コラム軸2Bには、トルクセンサ出力側ロータの40°ロータセンサ24が装着されており、40°ロータセンサ24からTS_OS角度θc1が出力され、TS_OS角度θc1は角度演算部50に入力される。TS_IS角度θh1及びTS_OS角度θc1は共に角度演算部50で絶対角度に変換され、コラム角度情報である入力側コラム角度θth及び出力側コラム角度θtcが出力される。
【0082】
捩れトルクTtは、トーションバー23のバネ定数をKhとすると、入力側コラム角度θth及び出力側コラム角度θtcから下記数8より求めることができる。
【0083】
【数8】
数8で求められる捩れトルクTtを、
図5で示される第1実施形態等での捩れ角変換部120に入力しても良いが、捩れ角変換部120はバネ定数Khを使用して捩れトルクTtから捩れ角θdを求めているので、入力側コラム角度θth及び出力側コラム角度θtcから捩れ角θdを求めても良い。即ち、下記数9より捩れ角θdを求める。
【0084】
【数9】
第4実施形態の構成例を
図21に示す。
図5に示される第1実施形態の構成例と比べると、第4実施形態では、捩れ角変換部120が捩れ角算出部420に置き換わっている。他の構成は第1実施形態と同じである。
【0085】
捩れ角算出部420は、角度演算部50から出力される入力側コラム角度θth及び出力側コラム角度θtcを入力し、上記数9に基づいて、捩れ角θdを求める。
【0086】
第4実施形態の動作例は、第1実施形態の動作例と比べると、上述のように、捩れ角変換部120に代わって、捩れ角算出部420が捩れ角θdを算出することになるだけで、他は第1実施形態の動作例と同じである。
【0087】
なお、第4実施形態において、出力側角度θtを、相対角度生成部130にて電気角θeから求めるのではなく、出力側コラム角度θtcを用いて求めるようにしても良い。また、実ハンドル角度θhrを、捩れ角θdと出力側角度θtの加算で求めるのではなく、入力側コラム角度θthを用いて求めるようにしても良い。
【0088】
上述で使用した図は、本発明に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
2A 入力側コラム軸(IS)
2B 出力側コラム軸(OS)
20 モータ
20A 回転センサ
23、201 トーションバー
50 角度演算部
100 コントロールユニット(ECU)
120 捩れ角変換部
130 相対角度生成部
140 ハンドル角度推定部
150、250 変化量情報生成部
151 フィルタ部
152 微分部
153、161 絶対値化部
154 累積部
160、260、360 ハンドON/OFF判定部
162、362 判定時間計測部
163、263 判定部
200 トルクセンサ部
420 捩れ角算出部