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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】鳥獣忌避装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/26 20110101AFI20221226BHJP
【FI】
A01M29/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018231881
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020092629
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 泰啓
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-099876(JP,A)
【文献】特開2002-034433(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215193(JP,U)
【文献】特開平08-256665(JP,A)
【文献】特開2015-100300(JP,A)
【文献】特開2002-312862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電素材の薄膜片が複数配設され全域方向もしくは一定方向に放電可能な放電体と、
定期もしくは不定期のタイミングで前記放電体を放電させる放電制御手段と、
を備え、前記放電体を放電させることで、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする鳥獣忌避装置。
【請求項2】
前記鳥獣を検知する検知手段を備え、
前記放電制御手段は、前記検知手段で前記鳥獣が検知されると前記放電体を放電させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の鳥獣忌避装置。
【請求項3】
前記放電制御手段は、前記薄膜片に電荷を付与することで前記放電体を放電させる、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鳥獣忌避装置。
【請求項4】
前記放電制御手段は、前記放電体が揺れることによって、前記薄膜片が擦れあうことで、前記薄膜片に帯電した電荷を放電させる、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鳥獣忌避装置。
【請求項5】
導電素材の薄膜片が複数配設され放電可能な放電体と、
犬を含む動物に前記放電体を取り付けるための取付体と、
を備え、前記動物が動くことに伴って前記放電体が揺れることで、前記薄膜片に帯電した電荷を放電させて、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする鳥獣忌避装置。
【請求項6】
前記放電体は、
プラス帯電しやすい素材からなるプラス帯電部材と、
マイナス帯電しやすい素材からなるマイナス帯電部材、
を備え、
前記プラス帯電部材と前記マイナス帯電部材とが摺動可能な状態で取付けられており、
前記プラス帯電部材と前記マイナス帯電部材とが摺動することで、
前記プラス帯電部材または前記マイナス帯電部材のいずれかに複数配設された前記導電素材の薄膜片から電荷を放電させて、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする請求項5に記載の鳥獣忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラスなどの帯電感覚を有する鳥獣による有害行動を防止するための鳥獣忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラス等の鳥獣による、ゴミ集積所のゴミあさりや、農作物への食害など、被害への対策は永年の課題となっている。特に電力事業者等にあっては、カラスによって電柱等に営巣されると、巣が電線に触れて停電を引き起こす恐れがあるため、巣を撤去しなければならず、多大な労力を要している。
【0003】
従来、カラスの電柱等への営巣や農地の食害、ごみ集積所のごみをあさるなどの行動を防ぐため、様々な忌避手段が施されている。例えば、従来の忌避手段には、光が反射するテープ等が揺れ動いてカラスを忌避する鳥害防止具や、透明か半透明の線体がテープ状の支持体に多数取り付けられていて、それらが揺れ動くことでカラスを忌避する装置がある(特許文献1参照)。カラスに似せたものを設置して他のカラスがいると錯覚させ、カラス等の鳥獣を近づけさせない方法などもある(特許文献2参照)。また、音を発して驚かせて鳥獣を忌避する装置も一般に知られている。あるいは、カラスが嫌うとされる磁気を発する磁石を使ったものや(特許文献3参照)、カプサイシンなどの忌避剤を用いた忌避装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3540270号公報
【文献】特開2005-058092号公報
【文献】特許第5767767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の対策では、カラスが嫌がる光の乱反射を利用したものだと、反射材がキラキラ、ピカピカしたものが景観を損なうという問題があった。また、音を発して驚かせる手段だと、発する音が騒音となってしまう問題があった。磁力を利用したものや、忌避剤を用いたもの等によるカラス撃退対策では、近年特に問題となっている、カラスがペットや家畜などと襲う被害の対策としては、ペット等にも悪影響が及ぶことが懸念されるという問題があった。
【0006】
とりわけ、カラスは知能が高いことが知られており、従来の忌避装置および方法のうち、見えるもの、聞こえるもの、臭うものおよび触るものは、カラスが装置および方法を特定できるため、時間の経過とともに徐々に近づき、設置してしばらくすると、カラスが危害を受けないと認識するため、忌避効果が低減し、効果が長続きしないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記カラスの習性を利用し、上記課題を解決するために、設置コストやランニングコストが低廉でありながら、広範囲に効果を有し、忌避効果が持続する鳥獣忌避装置を提供することを目的とする。
【0008】
一方、授産施設においては障がいを抱える方々にとって実施可能な作業が限られること等から、作業所の健全な経営に必要な作業が確保できず、経営破たんする作業所が発生する等の社会問題が発生している。当技術のうち障がいを抱える方々にとって実施可能な作業を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題に取り組むべく、発明者は、カラスの生態について調査したところ、カラスの鼻毛の毛根周囲には規則的に並んだ感覚受容体があり、その受容体が帯電等による感覚を受容していることが専門家により指摘されていることを知った。そこで、発明者らがカラスに対して放電照射を与える実験を行ったところ、水浴び等により鼻毛が濡れ帯電しにくくなっているカラスを除き、通常の状態のカラスが放電を嫌がり、逃飛行動をとることが確認された。また、実験結果の考察により、カラスが嫌うのは電位の立ち上がり速度の速いスパイク状の放電であることがわかった。また、子ども連れのカラスのつがいは、子どもを置き去りにしてまで逃飛行動はとらないことも確認された。このことから、この方法が鳥獣保護法に抵触する鳥獣の損傷にはならないことがわかった。
【0010】
一方、導電素材の薄膜片は電気抵抗が低下する等の特性を有し、電気抵抗が少なく、電子の動きが抑制されにくい導電素材の薄膜片の端部からは電子の放出(放電)がなされやすいという特性を有する。これは、導電素材の薄膜片の光沢を有する表面の原子配列が一様となっていることにより生じると考えられるが、その特性から導電素材の薄膜片を用いることでカラスが嫌う放電をおこなえることがわかった。
【0011】
このようなカラスの習性と導電素材の薄膜片の特性を利用し、上記課題を解決するために、請求項1の発明は、導電素材の薄膜片が複数配設され、全域方向もしくは一定方向に放電可能な放電体により、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激する、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、鳥獣忌避装置の放電体から、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣が嫌がる放電がなされる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鳥獣忌避装置において、前記鳥獣を検知する検知手段を備え、前記放電制御手段は、前記検知手段で前記鳥獣が検知されると前記放電体を放電させる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の鳥獣忌避装置において、前記放電制御手段は、前記薄膜片にマイナスの電位を付与することで前記放電体を放電させる、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の鳥獣忌避装置において、前記放電制御手段は、前記放電体が揺れることに伴って、前記薄膜片が擦れあうことで、前記薄膜片に帯電した電荷を放電させる、ことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、導電素材の薄膜片が複数配設され放電可能な放電体と、犬を含む動物に放電体を取り付けるための取付体と、を備え、前記動物が動くことに伴って前記放電体が揺れることで、前記薄膜片に帯電した電荷を放電させてカラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5に記載の鳥獣忌避装置において、前記放電体は、プラス帯電しやすい素材からなるプラス帯電部材と、マイナス帯電しやすい素材からなるマイナス帯電部材と、を備え、前記プラス帯電部材と前記マイナス帯電部材とが摺動可能な状態で取付けられており、前記プラス帯電部材と前記マイナス帯電部材とが摺動することで、前記プラス帯電部材または前記マイナス帯電部材のいずれかに配設された前記導電素材の薄膜片から電荷を放電させて、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、カラスが、電位の立ち上がり速度が速いスパイク状の放電を嫌がる習性を利用し、放電体を放電させることにより、当該鳥獣忌避装置の近傍にいるカラスを含む帯電感覚を有する鳥獣を刺激し、放電区域から排除し、もしくは放電区域に留まることを防ぐことができる。そのため、被害が予想される場所もしくはその周辺に当該鳥獣忌避装置からの放電を行うことで、前記鳥獣の被害を効果的に防止することができる。また、放電はカラスの帯電感覚を刺激するものの、その気中伝達速度の速さからカラスは当該装置および方法を特定することができないことから、忌避効果が持続する。
【0019】
また、全域方向もしくは一定方向に放電可能な放電体は、導電素材の薄膜片を複数配設するだけであるため、構成が簡易となり、授産施設で制作することが可能となるとともに、製作費や保守費などを低減することが可能である。
【0020】
請求項2の発明によれば、鳥獣を検知したときだけ適時に放電させることができる。それによって、忌避効果を向上できるとともに、前記鳥獣が刺激に慣れることを防ぎ、忌避効果を維持することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、前記薄膜片に積極的にマイナスの電位を付与するため、忌避効果に適した電荷を付与して放電させることができる。そのことによって、効率的に忌避効果を発揮することが可能となる。
【0022】
請求項4の発明によれば、風等の作用により前記放電体が揺れることで、前記薄膜片に静電気が発生し、前記薄膜片から放電させることができるので、電荷を積極的に付与する装置を実装しなくても、放電させることができ、省コストや設置の手間の軽減が期待できる。
【0023】
請求項5の発明によれば、犬などの動物に鳥獣忌避装置を取り付け、当該動物の動きによって放電させて、カラスを含む帯電感覚を有する鳥獣に刺激を与えるので、当該鳥獣忌避装置を取り付けた当該動物に、前記鳥獣が近づくことがなく、当該動物が、前記鳥獣から襲われることを防ぐことができる。
【0024】
また、犬を含む動物に放電可能な放電体を取り付けるための取付体の構成は簡易であるため、授産施設で制作することが可能となるとともに、製作費や保守費などを低減することが可能である。
【0025】
請求項6の発明によれば、犬などの動物に鳥獣忌避装置を取り付け、当該動物の動きに伴い、プラス帯電部材とマイナス帯電部材とが摺動することによって放電体を放電させるので、より効率よく放電させることができ、確実にカラスを含む帯電感覚を有する鳥獣に刺激を与えるので、当該鳥獣忌避装置を取り付けた当該動物に、前記鳥獣が近づくことがなく、当該動物が、前記鳥獣から襲われることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施の形態1に係わる鳥獣忌避装置を概略的に示す斜視図である。
図2】この発明の実施の形態2に係わる鳥獣忌避装置を概略的に示す斜視図である。
図3】この発明の実施の形態1、2における放電体の態様例(a)~(e)を概略的に示す斜視図である。なお、(e)において放電シールド部材23は一部を切り欠いて示している。
図4】この発明の実施の形態3に係わる鳥獣忌避装置の斜視図である。
図5図4の鳥獣忌避装置の薄膜片取り付け部分の拡大斜視図である。
図6図4の鳥獣忌避装置を犬に使用した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
以下、この発明を図示の実施の形態1に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態1において、忌避する対象の鳥獣としてカラスを想定したものである。
【0028】
実施の形態1の特徴は、放電制御手段が、高電圧を発生させる回路を有すること、および、定期もしくは不定期のタイミングを、カラスを検知するタイミングとすることである。
【0029】
図1に示すように鳥獣忌避装置10は、導電素材からなる薄膜片21、21、・・・が複数配設された放電体20と、定期もしくは不定期のタイミングで前記放電体20を放電させる放電制御手段30と、を備え、前記放電制御手段30は筐体40に収納され、該筐体40には2本の支持柱41、41が離間した状態で立設されている。
【0030】
放電体20は、導線22と多数の前記薄膜片21、21、・・・と、からなり、該薄膜片21は、例えば、アルミ箔を細長いテープ状にした小片からなる。各薄膜片21は、その中央部が導線22に取り付けられ、導線22の線方向から見て放射状になっており、導線22と電気的導通が図られている。そして、このような薄膜片21が多数、導線22のほぼ全長にわたって取り付けられている。
【0031】
放電体20は、その導線22の両端が、前記2本の支持柱41、41の上部にそれぞれ取り付けられ、導線22に若干の弛みをもたせた状態で渡されている。このときに薄膜片21、21、・・・が地面や、他の設備に接することがないように設置される。
【0032】
放電制御手段30は、圧力を加えることで高電圧を発生させる圧電素子31を備え、該圧電素子31の電極32、32が、放電体20の導線22の両端にそれぞれ接続され、該圧電素子31が発生した高電圧が放電体20に付与されるようになっている。
【0033】
集音マイク33は検知手段としての鳴き声センサの一部であり、カラスの鳴き声を集音することで前記圧電素子31が作動するようになっている。
【0034】
なお、図示は省略したが、集音マイク33がカラスの鳴き声を検知すると前記圧電素子31に加圧する手段があり、この加圧により前記圧電素子31から高電圧が発生するようになっている。
【0035】
圧電素子31から発生した高電圧の電荷が、電極32、32から導線22に付与されると、電荷が薄膜片21、21、・・・に移動し、薄膜片21、21、・・・から放電してカラスを刺激することになる。
【0036】
このように、この鳥獣忌避装置10によれば、カラスの鳴き声が検知されると、放電体20からカラスの嫌う放電がされるので、前記鳥獣忌避装置10の周辺にカラスが近づかない。すなわち、カラスを忌避することができ、カラスからの被害を防止することができる。そして、カラスを検知したときだけ放電させるので、カラスが放電による刺激に慣れにくく、忌避効果が持続する。さらには、カラス同士のコミュニケーション手段である鳴き声を検知することによって放電することで、カラス間のコミュニケーションを阻害することになり、カラスの不快感は増すと考えられ、一層の忌避効果が期待できる。
【0037】
なお、圧電素子31は、放電体20に電荷を付与するためのものであって、これに代えて、例えば電撃銃の回路に用いられるような高電圧発生装置を備えてもよいし、検知手段は集音マイク33に限らず、近接センサやカメラによる画像認識などを採用してもよい。
【0038】
(実施の形態2)
図2は、この発明の実施の形態2を示している。図2に示すように、鳥獣忌避装置60は、放電体20と放電体20を帯電させ電荷を放射させる放電制御手段70とからなる。
【0039】
放電体20は、上記実施の形態1で説明したものと同一なので、同一符号を付することによりその詳細な説明は省略する。
【0040】
放電制御手段70は、放電体20に振動を加え、薄膜片21が互いに擦れ合い帯電することで放電するようにしたもので、筐体73に配設された振動モータ71と、筐体73に立設され前記放電体20を支持する2本の支持柱74、74と、からなる。
【0041】
振動モータ71にはモータ軸に偏心した錘が固定されていて、モータの回転で偏芯錘が回転して振動が発生するようになっている。
【0042】
筐体73は、上筐体73aと下筐体73bとに分割され上筐体73aと下筐体73bとがコイル73cにより結合されていて、直方体の筐体73を成し、下筐体73bに対して上筐体73aが振動しやすくなっていて、放電体20の振動をより促進することができる。なお、前記振動モータ71は上筐体73aの上板下面に配設されている。
【0043】
2本の支持柱74、74は前記上筐体73aに適宜離間して立設されており、2本の支持柱74、74の先端間に前記放電体20の導線22が取り付けられている。
【0044】
定期もしくは不定期のタイミングを取る手段は、予め設定した時刻または定時に信号を発するタイマ72であり、設定時刻または定時に発する信号が前記放電制御手段70に入力され、前記振動モータ71が回転するようになっている。このようなタイマ72は前記筐体73内に配設されているが、上筐体73aまたは下筐体73bのどちらに配設しても構わない。
【0045】
また、上記定期もしくは不定期のタイミングのうち、「設定した時刻」とは例えば、カラスの行動が活発になる早朝や帰巣時刻などが考えられ、場所、時刻などを考慮すれば、効果的にカラスを忌避することができる。さらに、「定時」とは、例えば、1時間毎とか2時間毎とかで、カラスに近付いてもらいたくない場所で定期的に放電することができる。
【0046】
この実施の形態2に係る鳥獣忌避装置60によれば、定期もしくは不定期のタイミング、すなわちタイマ72により予め設定された時刻または定時に振動モータ71を回転させることで振動を発生させ、この振動が放電体20に伝播され、薄膜片21から放電される。
【0047】
すなわち、振動モータ71が回転されて振動が発生すると、この振動が上筐体73a、支持柱74を介して放電体20に伝播され、放電体20が振動されると薄膜片21を揺らし、薄膜片21が互いに擦れ合って帯電し、この帯電により薄膜片21から放電がなされることになる。
【0048】
しかもこの実施の形態2に係る鳥獣忌避装置60にあっては、放電体20を振動させることで放電させているため、実施の形態1のように高電圧を発生させる回路などは不要であり、比較的簡単な構造にすることができる。
【0049】
また、この鳥獣忌避装置60は定期もしくは不定期のタイミングで放電を行うようにしたので、カラスが放電による刺激に対して慣れることは少なく忌避効果を持続することができる。
【0050】
このような鳥獣忌避装置60は、放電体20、放電制御手段70、タイマ72等の構成要素を前記筐体73に取り付けているため、持ち運びが容易であり、カラスを近寄らせたくない場所、例えば、ゴミ集積所、作物耕作地、営巣が懸念される電柱或いはこれらの近傍に容易に設置することができる。
【0051】
なお、この実施の形態2においては前記筐体73を上下に分割しコイル73cにより結合したものを示したが、本発明はこれに限らず、一体的な筐体にしても、振動モータ71の振動を筐体、支持柱74、74、放電体20を介して薄膜片21に伝播することができ、薄膜片21から放電することは可能である。
【0052】
ところで、放電体20は、その形状や導電素材の薄膜片21の取り付け箇所によって、放電の方向性をもたせることができる。図3(a)~(e)は、放電の方向性を変えた態様の放電体20を例示したものである。この図の鳥獣忌避装置は、導電素材の薄膜片21、21、・・・を複数配設した放電体20と、放電体20に電荷を付与する放電制御手段80と、放電制御手段80に給電する電源81とからなり、アース82に接続されている。
【0053】
図3(a)は、球状体の全表面に薄膜片21、21、・・・を取り付けて構成された放電体20を示す。この放電体20によれば、全方向に放射状の放電をすることができる。
【0054】
図3(b)は、環状体の外周面に薄膜片21、21、・・・を取り付けて構成された放電体20を水平に設置したものを示す。この放電体20によれば、水平方向に放射状の放電をすることができる。
【0055】
図3(c)は、球状体の上側半分に薄膜片21、21、・・・を取り付けて構成された放電体20を示す。この放電体20によれば、上方向に放射状の放電をすることができる。
【0056】
図3(d)は、球状体の下側半分に薄膜片21、21、・・・を取り付けて構成された放電体20を示す。この放電体20によれば、下方向に放射状の放電をすることができる。
【0057】
これらを応用して、球状体に薄膜片21、21、・・・を密に取り付けた箇所と、疎に取り付けた箇所とを設けた放電体20によれば、密に取り付けた箇所にあたる方向には多くの放射状の放電をすることができる。
【0058】
また、図3(e)は、円柱状体の端部に薄膜片21、21、・・・を取り付けて、薄膜片21、21、・・・の周囲を囲うように、円筒状の放電シールド性部材23を設置した放電体20を示す。この放電体20によれば、放射状に広がる放電を薄膜片21、21、・・・の周囲に設置した放電シールド性部材23が遮ることで、一方向に放電することができる。
【0059】
このように、放電体20の形状や薄膜片21の取り付け箇所は、設置場所や設置形態によって最適な形状を選択することができる。例えば、ある限られた1カ所だけカラスを近づけたくないといった場合には、図3(e)に示す放電体20の薄膜片取り付け箇所(放電シールド性部材23の開口部分)を対象の場所に向けて設置すればよい。
【0060】
(実施の形態3)
図4ないし図6は、この発明の実施の形態3を示している。図6に示すように、実施の形態3に係る鳥獣忌避装置90は、カラスCに襲われやすい小動物、例えば小型犬Dに取り付けたものである。
【0061】
鳥獣忌避装置90は、放電体100と、取付体110とからなる。
【0062】
放電体100は、筒状のプラス帯電部材103と、丸棒状のマイナス帯電部材104と、マイナス帯電部材104の両端部に取り付けられた多数の薄膜片101、101、・・・からなる薄膜片束102、102とからなる。
【0063】
プラス帯電部材103は摩擦帯電列で比較的プラスに帯電しやすいガラス製の筒部材で、マイナス帯電部材104は摩擦帯電列で比較的マイナスに帯電しやすい塩化ビニル棒材で構成される。プラス帯電部材103のガラス製の筒部材はその内径が前記マイナス帯電部材104の塩ビ棒の外形より僅かに大きく、また、プラス帯電部材103の長さはマイナス帯電部材104よりも短く形成されている。そして、プラス帯電部材103の筒内にマイナス帯電部材104が摺動自在に挿入されている。マイナス帯電部材104の両端近くの側面には、それぞれ1つ抜け止めピン105、105が取り付けられ、摺動したときにマイナス帯電部材104が抜け落ちることを防いでいる。
【0064】
そして、プラス帯電部材103に対して、マイナス帯電部材104を摺動させると、静電気が発生し、プラス帯電部材103はプラス電荷が、マイナス帯電部材104はマイナス電荷がそれぞれ帯電することになる。
【0065】
薄膜片束102は、上記実施の形態1および2と同様にアルミ箔を細長いテープ状にした薄膜片101をそれぞれの中央部で結束し、玉房状に形成して構成されている。
【0066】
このような薄膜片束102、102はマイナス帯電部材104の両端に電気的導通が図られた状態で取り付けられており、プラス帯電部材103がマイナス帯電部材104に対して摺動して帯電すると、薄膜片束102、102もマイナスに帯電することになる。
【0067】
取付体110は、放電体100を小型犬Dに取付けるためのもので、この実施の形態3においては犬用の首輪110が用いられる。
【0068】
首輪110は、ベルト111と該ベルトの両端を接続するバックル112とからなり、上記放電体100はそのプラス帯電部材103が首輪110のベルト111に取り付けられている。このプラス帯電部材103の首輪110への取り付け方法としては、例えば、接着材が考えられる。
【0069】
なお、この実施の形態3において、小型犬Dに放電体100を取り付ける取付体として首輪110を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、小型犬Dに取り付ける既存の首輪に放電体100をひっかけて取り付けるフックなどであってもよい。
【0070】
実施の形態3に係る鳥獣忌避装置90によれば、小型犬Dの歩行に伴い、首輪110が揺れることで、マイナス帯電部材104がプラス帯電部材103に対して摺動し、これにより両部材103、104間に摩擦が生じて、静電気が発生する。この静電気により上述のように、マイナス帯電部材104の両端に取り付けられている薄膜片束102、102から電荷が放射されることになる。
【0071】
そのため、小型犬Dが歩けば、小型犬Dの周囲に放電作用が働き、カラスCが近寄ってくることはなく、小型犬DがカラスCからの襲撃を受けることを防止することになる。
【0072】
このような鳥獣忌避装置90は、筒状部材に棒状部材を挿入し、棒状部材の両端に薄膜片束102を取り付けた簡易な構造のため、軽量にすることができ、小型犬Dへの負担が少なく、また、静電気による放電なので、小型犬Dへの影響も無い。
【0073】
以上、この発明の実施の形態1、2、3について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、導電素材の薄膜片21、101としてアルミ箔を用いたが、アルミ箔による光の乱反射が起こることが好ましくない環境下に設置する場合では、アルミ箔の表面に低反射材のコーティングを施してもよい。あるいは、アルミ箔に代えて、例えば導電素材の炭素繊維シート等でも同様の効果が期待できる。実施の形態3では、小型犬Dに鳥獣忌避装置90を取り付けたが、首輪110の設計を変更し、カラスから突かれる被害がある牛などの家畜や、ジョギングする際などのヒトの体に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 鳥獣忌避装置
20 放電体
21 薄膜片
30 放電制御手段
31 圧電素子
33 集音マイク(検知手段)
60 鳥獣忌避装置
70 放電制御手段
71 振動モータ
72 タイマ
80 放電制御手段
81 電源
82 アース
90 鳥獣忌避装置
100 放電体
101 薄膜片
102 プラス帯電部材
103 マイナス帯電部材
110 首輪(取付体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6