(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】検出装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20221226BHJP
【FI】
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2018103093
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592208806
【氏名又は名称】一般財団法人関東電気保安協会
(73)【特許権者】
【識別番号】591148602
【氏名又は名称】佐鳥電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517161142
【氏名又は名称】株式会社SoBrain
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正美
(72)【発明者】
【氏名】臼井 千春
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】茂木 達哉
(72)【発明者】
【氏名】頭本 頼数
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-317466(JP,A)
【文献】特開2011-058826(JP,A)
【文献】特開2009-058235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出装置において、
前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、
前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、
前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と前記電圧検出部により検出された
基準電圧
との位相差を
漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部により検出された
第1位相差
と前記漏洩電流検出部により検出された
第1漏洩電流
の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出部により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記被測定電線路の
地絡相又は対地静電容量の平衡状態を特定する特定部
と、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記第3ベクトルのなす角
が60度である場合は3相のうちの接地相に対して進んだ隣りの相が地絡相であると特定し、前記第3ベクトルのなす角が120度である場合は3相のうちの接地相に対して遅れた隣りの相が地絡相
であると特定する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記特定部は、
前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角
が180度である場合は、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が平衡状態である
と特定する請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記位相差検出部により検出された位相差と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流とに基づいて
以下の式(1)により、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する抵抗成分漏洩電流算出部とを備え、
I
0
r=I
0
×sinθ/cos(π/6) ・・・(1)
[但し、I
0
rは抵抗成分漏洩電流、θは前記位相差検出部により検出される位相差、I
0
は前記漏洩電流検出部により検出される漏洩電流]
前記特定部は、
前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角が150度又は210度である場合は、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であると特定
し、前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記抵抗成分漏洩電流算出部が算出した抵抗成分漏洩電流の値が実際の値よりも過大又は過小であるのかを判定する、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記第3ベクトルのなす角が180度よりも小さい場合は前記抵抗成分漏洩電流算出部により算出された抵抗成分漏洩電流が実際の値よりも過大な値であると判定し、前記第3ベクトルのなす角が180度よりも大きい場合は前記抵抗成分漏洩電流算出部により算出された抵抗成分漏洩電流が実際の値よりも過小な値であると判定する請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記特定部により、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であり、前記抵抗成分漏洩電流算出部により算出された抵抗成分漏洩電流が過大な値であると判定された場合、前記抵抗成分漏洩電流算出部により算出された抵抗成分漏洩電流から
、接地されていない二つの相の対地静電容量毎に予め実験により算出した過大な値を減算し、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であり、前記抵抗成分漏洩電流算出部により算出された抵抗成分漏洩電流が過小な値であると判定された場合、前記抵抗成分漏洩電流算出部により算出された抵抗成分漏洩電流に
から、接地されていない二つの相の対地静電容量毎に予め実験により算出した過小な値を加算する補正部を備える請求項4
又は請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出装置において、
前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、
前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、
前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と前記電圧検出部により検出された基準電圧との位相差を漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部により検出された位相差と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流とに基づいて以下の式(1)により、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する抵抗成分漏洩電流算出部と、
I
0
r=I
0
×sinθ/cos(π/6) ・・・(1)
[但し、I
0
rは抵抗成分漏洩電流、θは前記位相差検出部により検出される位相差、I
0
は前記漏洩電流検出部により検出される漏洩電流]
前記位相差検出部により検出された第1位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第1漏洩電流の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出部により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさが150度又は210度である場合は、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であると特定し、前記第3ベクトルのなす角(の大きさに基づいて、前記抵抗成分漏洩電流算出部が算出した抵抗成分漏洩電流の値が実際の値よりも過大又は過小であるのかを判定する特定部と、
を備える検出装置。
【請求項8】
3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出方法において、
前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、
前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、
前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と前記電圧検出工程により検出された
基準電圧
との位相差を
漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出工程と、
前記位相差検出工程により検出された
第1位相差
と前記漏洩電流検出工程により検出された
第1漏洩電流
の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出工程により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記被測定電線路の
地絡相又は対地静電容量の平衡状態を特定する特定工程
と、
を備える検出方法。
【請求項9】
3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出プログラムにおいて、
前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、
前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、
前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と前記電圧検出工程により検出された
基準電圧
との位相差を
漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出工程と、
前記位相差検出工程により検出された
第1位相差
と前記漏洩電流検出工程により検出された
第1漏洩電流
の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出工程により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記被測定電線路の
地絡相又は対地静電容量の平衡状態を特定する特定工程と、
をコンピュータによって実現するための検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定電線路の状態を検出する検出装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気の利用は、便利な反面、適切な管理や使用を誤れば、大変危険な側面も併せ持っており、電気火災や感電事故等の重大な事故を引き起こす可能性も少なくない。
【0003】
例えば、その重大事故の原因の一つとして、電路や機器の絶縁不良に深く関係しているのが漏洩電流I0である。ここで、漏洩電流I0には、対地静電容量に起因する漏洩電流と、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とが含まれている。なお、対地静電容量に起因する漏洩電流は、「I0c」と称するが、「Igc」と称することもある。本実施例では、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流は、「I0c」と称する。また、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流は、「I0r」、「I0r」と称することもあるが、「Igr」と称することもある。本実施例では、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流は、「I0r」または「I0r」と称する。上述した電気火災等を引き起こす原因は、絶縁抵抗の存在である。よって、I0rのみを正確に検出することができれば、回路の絶縁状態をチェックすることができ、漏電火災等の大惨事を避けることができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、被測定電線路Aの全体にクランプし、被測定電線路Aに流れている漏洩電流I0を検出するCTセンサ部と、被測定電線路Aの電圧を検出する電圧検出部と、漏洩電流I0と被測定電線路Aの電圧とに基づいて、位相パルス幅を測定する位相パルス幅測定部と、被測定電線路Aの電圧に基づいて、電源周波数を測定する電源周波数測定部と、位相パルス幅測定部で測定された位相パルス幅と、電源周波数測定部で測定された電源周波数から被測定電線路Aに流れる漏洩電流I0の位相角度を算出する位相角度算出部と、位相角度算出部で算出された漏洩電流I0の位相角度と、漏洩電流I0に基づいて、I0rを算出する漏洩電流算出部と、I0rが所定の値を超えたかどうかを判断する判断部と、判断部の判断に基づいて、被測定電線路を遮断する遮断部を備える漏洩電流遮断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、漏洩電流I0を解析し、この解析結果から被測定電線路がどのような状態になっているかを知ることは、被測定電線路の状態を必要に応じて測定したり、または、日常的に監視したりする上で重要である。
【0007】
本発明では、漏洩電流I0を解析し、この解析結果から被測定電線路がどのような状態になっているかを特定することができる検出装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における検出装置は、 3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出装置において、前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と前記電圧検出部により検出された基準電圧との位相差を漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出部と、前記位相差検出部により検出された第1位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第1漏洩電流の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出部により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記被測定電線路の地絡相又は対地静電容量の平衡状態を特定する特定部と、を備える。
また、本発明の一態様における検出方法は、3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出装置において、前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と前記電圧検出部により検出された基準電圧との位相差を漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出部と、前記位相差検出部により検出された位相差と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流とに基づいて以下の式(1)により、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を算出する抵抗成分漏洩電流算出部と、
I
0
r=I
0
×sinθ/cos(π/6) ・・・(1)
[但し、I
0
rは抵抗成分漏洩電流、θは前記位相差検出部により検出される位相差、I
0
は前記漏洩電流検出部により検出される漏洩電流]
前記位相差検出部により検出された第1位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第1漏洩電流の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出部により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出部により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさが150度又は210度である場合は、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であると特定し、前記第3ベクトルのなす角(の大きさに基づいて、前記抵抗成分漏洩電流算出部が算出した抵抗成分漏洩電流の値が実際の値よりも過大又は過小であるのかを判定する特定部と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様における検出方法は、3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出方法において、前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と前記電圧検出工程により検出された基準電圧との位相差を漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出工程と、前記位相差検出工程により検出された第1位相差と前記漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出工程により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記被測定電線路の地絡相又は対地静電容量の平衡状態を特定する特定工程と、を備える。
【0010】
また、本発明の一態様における検出プログラムは、3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の状態を検出する検出プログラムにおいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、前記被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と前記電圧検出工程により検出された基準電圧との位相差を漏洩電流の波形の零クロスする点と前記基準電圧の波形の零クロスする点とに基づいて検出する位相差検出工程と、前記位相差検出工程により検出された第1位相差と前記漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流の実効値とから得られる前回検出された第1ベクトルと、前記位相差検出工程により検出された第2位相差と前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流の実効値とから得られる今回検出された第2ベクトルとの差である第3ベクトルを算出し、前記基準電圧に対する前記第3ベクトルのなす角の大きさに基づいて、前記被測定電線路の地絡相又は対地静電容量の平衡状態を特定する特定工程と、をコンピュータによって実現するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、漏洩電流I0を解析し、この解析結果から被測定電線路がどのような状態になっているかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】特定部の動作についての説明に供する図である。
【
図4】本発明にかかるΔ結線方式についての説明に供する図である。
【
図5】T相の1相地絡の場合における漏洩電流とI
0rとの関係についての説明に供する図である。
【
図6】R相の1相地絡の場合における漏洩電流とI
0rとの関係についての説明に供する図である。
【
図7】R相のみに静電容量が発生し、T相のみに地絡が発生した場合についての説明に供する図である。
【
図8】対地静電容量が不平衡状態の場合の第1実験の結果を示す図である。
【
図9】対地静電容量が不平衡状態の場合の第2実験の結果を示す図である。
【
図10】対地静電容量が不平衡状態の場合の第3実験の結果を示す図である。
【
図11】T相のみに静電容量と地絡が発生した場合についての説明に供する図である。
【
図12】対地静電容量が不平衡状態の場合の第4実験の結果を示す図である。
【
図13】対地静電容量が不平衡状態の場合の第5実験の結果を示す図である。
【
図14】対地静電容量が不平衡状態の場合の第6実験の結果を示す図である。
【
図15】I
0rを算出する演算式の導出についての説明に供する第1の図である。
【
図16】I
0rを算出する演算式の導出についての説明に供する第2の図である。
【
図17】検出装置の動作についての説明に供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
検出装置1は、3相をΔ結線し、3相のうち1相を接地する3相3線式の結線方式(いわゆる、Δ結線方式)に対応し、被測定電線路の状態を検出する装置である。とくに、検出装置1は、検出のために電路及び機械設備等を停電状態にすることなく、かつ、被測定電線路に接続されている機器の機能を破壊することなく、外部から簡単かつ安全に絶縁の良否に直接関係する対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流を正確に検出し、この抵抗成分漏洩電流が所定の値を超えていることを外部に通知する機能を有している。また、検出装置1は、被測定電線路の状態を日常的に監視する監視装置として機能してもよいし、または、必要に応じて、被測定電線路の状態を定期的または非定期的に測定する測定装置として機能してもよい。なお、対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流は、「I0r」、「I0r」と称することもあるが、「Igr」と称することもある。本実施例では、対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流は、「I0r」または「I0r」と称する。
【0015】
以下に、検出装置1の具体的な構成について説明する。検出装置1は、
図1に示すように、検出部10と、判定部20と、通知部30とを備える。
【0016】
検出部10は、3相(R相、S相、T相)をΔ結線し、いずれかの相を接地して接地線を引き出した3相3線式の被測定電線路の絶縁状態を検出する。
【0017】
通知部30は、検出部10による検出情報を外部に通知する。例えば、通知部30は、I0rを含む絶縁情報をディスプレイに出力する。
【0018】
検出情報には、漏洩電流I0や、漏洩電流I0に含まれているI0rや、位相差(位相角度)や、基準電圧や、絶縁抵抗値(Gr)や、温度などが含まれている。また、検出情報には、対地静電容量に起因する静電容量成分漏洩電流なども含まれてよい。なお、対地静電容量に起因する静電容量成分漏洩電流は、「I0c」と称するが、「Igc」と称することもある。本実施例では、対地絶縁抵抗に起因する静電容量成分漏洩電流は、「I0c」と称する。
【0019】
I0cは、被測定電線路の長さに応じて容量が増大するだけでなく、電気機器に使用されているインバータやノイズフィルター等に起因する高調波歪み電流によっても容量が増大する成分である。また、検出装置1は、所定時間間隔(例えば、250msec)で検出を行う。
【0020】
漏洩電流I0は、I0rとI0cとの和(ベクトル和)である。I0cは、被測定電線路の長さに応じて容量が増大するだけでなく、電気機器に使用されているインバータやノイズフィルター等に起因する高調波歪み電流によっても容量が増大する成分である。検出装置1は、電気火災等を引き起こす原因となるI0rを漏洩電流I0から正確に算出することができる。
【0021】
判定部20は、検出部10による検出情報に含まれているI0rが所定の値を超えているかどうかを判定する。所定の値とは、例えば、10mAである。
【0022】
通知部30は、判定部20によりI0rが所定の値を超えていると判定された場合、I0rが所定の値を超えていることを外部に通知する。
【0023】
<通知部30の構成と動作について>
通知部30は、シリアル通信(例えば、RS-485)用の端子やLAN接続用の端子を備えている。シリアル通信用の端子にシーケンサーが接続されており、I0rが所定の値を超えている場合、シーケンサーのパトライト(登録商標)が点灯する。作業者は、パトライトの点灯により、I0rが所定の値を超えていることを認識し、必要な手段を講ずることができる。
【0024】
また、通知部30は、LAN接続端子を介して、ネットワークに接続されている端末装置(スマートフォンやパーソナルコンピュータなど)にデータを送信することができる。なお、端末装置には、検出装置1から送信されてきた検出情報を受信し、所定のフォームで表示可能なアプリケーションがインストールされているものとする。
【0025】
通常時には、検出装置1は、定期的に通知部30を介して端末装置に検出情報を送信する。なお、端末装置のアプリケーションを操作して検出装置1にアクセスして、検出情報を取得するプル型の構成でもよい。
【0026】
よって、端末装置の操作者は、検出装置1が設置されている場所(工場など)の電路および負荷機器の状態を常に把握することができる。
【0027】
また、異常時(I0rが所定の値を超えている時)には、検出装置1は、通知部30を介して端末装置にI0rが所定の値を超えていることを示す情報を送信する。
【0028】
例えば、地方の工場などで電気設備管理者が工場にいない場合(特に、深夜など)、ネットワークを介して遠隔地に配置されている端末装置の操作者がI0rの異常値を認識し、必要な手段を講ずることができる。
【0029】
さらに、検出装置1は、どの負荷にどのくらいの値のI0rが発生しているのかを検知し、外部に通知することもできる。
【0030】
また、判定部20は、検出部10による検出情報を経時的に収集し、例えば、I0rが設定値を超えることを予測する機能を有していてもよい。当該構成によれば、検出装置1は、実際にI0rが設定値を超えていなくても、近い将来I0rが設定値を超えるかもしれないことを予測でき、サービスの向上を図ることができる。
【0031】
<検出部10の構成と動作について>
つぎに、検出部10の具体的な構成について説明する。検出部10は、Δ結線方式に対応し、
図2に示すように、漏洩電流検出部11と、電圧検出部12と、位相差検出部13と、特定部14と、抵抗成分漏洩電流算出部15と、補正部16とを備える。
【0032】
漏洩電流検出部11は、被測定電線路に流れている漏洩電流I
0を検出する。具体的には、漏洩電流検出部11は、クランプ部100を利用して被測定電線路をクランプし、被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する。なお、クランプ部100は、
図2においては、被測定電線路全体を一括して挟み込む形態を示しているが、これに限られず、被測定電線路を構成する電線路を選択的に挟み込む構成であってもよいし、被測定電線路を構成する電線路を一本ずつ選択的に挟み込む構成であってもよい。
【0033】
また、漏洩電流検出部11は、検出した漏洩電流の実効値を算出する。漏洩電流検出部11は、算出した漏洩電流の実効値を位相差検出部13と、特定部14と、抵抗成分漏洩電流算出部15と、補正部16とに出力する。
【0034】
電圧検出部12は、被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する。
図2に示す例では、S相を接地しているため、電圧検出部12は、R相とT相の間に印加されている電圧を検出する。なお、接地する相は、S相に限られない。
【0035】
位相差検出部13は、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流と電圧検出部12により検出された電圧(以下、「基準電圧」という。)とに基づいて、位相差θを検出する。具体的には、位相差検出部13は、基準電圧の零クロスする点と漏洩電流の零クロスする点とに基づいて、基準電圧と漏洩電流の位相差θを検出する。
【0036】
特定部14は、位相差検出部13により検出された位相差により既定される座標上の位置に漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流を配置することにより当該漏洩電流をベクトルで示し、少なくとも二つの漏洩電流のベクトルの変化分を解析し、解析結果に基づいて、被測定電線路の状態を特定する。
【0037】
抵抗成分漏洩電流算出部15は、位相差検出部13により検出された位相差と、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流の実効値とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれているI0rを算出する。
【0038】
抵抗成分漏洩電流算出部15は、位相差検出部13により検出された位相差θと、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流の実効値(I0)に基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれているI0rを(1)式により算出する。なお、(1)式の導出方法については、後述する。
I0r=I0×sinθ/cos(π/6) ・・・(1)
【0039】
また、抵抗成分漏洩電流算出部15は、基準電圧とI0rに基づいて、(2)式により絶縁抵抗値(Gr)を算出する。
Gr=V/I0r ・・・(2)
【0040】
また、判定部20は、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rが所定の値を超えているかどうかを判定する。
【0041】
<特定部14の動作について(1)>
ここで、特定部14の動作について説明する。特定部14は、
図3に示すように、位相差検出部13により前回検出された第1位相差θ
01により既定される座標上の位置に漏洩電流検出部11により前回検出された第1漏洩電流を配置して得られる第1ベクトルI
01と、位相差検出部13により今回検出された第2位相差θ
02により既定される座標上の位置に漏洩電流検出部11により今回検出された第2漏洩電流を配置して得られる第2ベクトルI
02との差である第3ベクトルI
03(第2ベクトルI
02-第1ベクトルI
01)を算出し、第3ベクトルI
03のなす角θ
03に基づいて、地絡相を特定する。
【0042】
図3に示す例では、第1ベクトルI
01の終点の座標は、(x1、y1)であり、第2ベクトルI
02の終点の座標は、(x2、y2)である。第3ベクトルI
03の始点の座標は、第1ベクトルI
01の終点の座標(x1、y1)である。
【0043】
詳細は、特許第4159590号公報に記載されているが、R相のI0rは、基準点から60度の位置に発生し、T相のI0rは、基準点から120度の位置に発生する。
【0044】
特定部14は、第3ベクトルI03のなす角θ03が60度の場合には、R相に地絡が発生していると特定する。また、特定部14は、第3ベクトルI03のなす角θ03が120度の場合には、T相に地絡が発生していると特定する。
【0045】
特定部14により特定された情報は、通知部30を介して端末装置に通知される。端末装置の操作者は、地絡相の情報により地絡している相を確認し、メンテナンスなどの必要な手段を講ずることができる。
【0046】
<対地静電容量が平衡状態(バランス)の場合について>
ここで、本発明にかかるΔ結線方式(以下では、「I0r方式」という。)について説明する。Y結線方式では、各相のI0c成分が平衡(バランス)していれば、I0cは打ち消され零になる。しかし、Δ結線方式では、S相を接地した場合、S相は零電位となり、S相にI0cは発生しない。すなわち、対地電位のあるR相とT相にI0cが発生すし、打ち消されない。
【0047】
R相とT相で大きさの等しいI
0cが発生している場合、R相のI
0cをI
0c(r)とし、T相のI
0cをI
0c(t)とすると、ベクトル合成により、
図4に示すように、R相とT相の相間電圧V
R-T(R→T)を基準とした180度の位置に合成されたI
0c(rt)が発生する。
【0048】
また、I0c(rt)と、R相に生じるI0r(r)または/およびT相に生じるI0r(t)のベクトル合成が漏洩電流I0になる。
【0049】
例えば、T相の1相地絡の場合には、
図5に示すように、I
0r(t)とI
0c(rt)のベクトル合成が漏洩電流I
0になる。漏洩電流I
0は、I
0c(rt)の変動に伴って変動する。一例として、約107mAのI
0c(rt)が発生している状況で、T相に約100mAのI
0r(t)が発生した場合、ベクトル和として漏洩電流I
0は、約180mAとなる。このようなケースにおいては、漏洩電流I
0が増加傾向にあり、I0方式と呼ばれる従来方式でも検出は可能である。しかし、R相においては、その関係が大きく異なる。
【0050】
ここで、R相の1相地絡の場合には、
図6に示すように、I
0r(r)とI
0c(rt)のベクトル合成が漏洩電流I
0になる。つまり、T相の1相地絡の場合と異なり、R相の1相地絡の場合には、漏洩電流I
0は、I
0c(rt)より小さくなる。例えば、約107mAのI
0c(rt)が発生している状況で、R相に約100mAのI
0r(r)が発生した場合、ベクトル和として漏洩電流I
0は、約104mAとなり、I
0c(rt)よりも小さくなる。つまり、Δ結線方式においては、T相では「I
0>I
0r(t)」となり、R相では、「I
0<I
0r(r)」になる。
【0051】
例えば、I0方式において、30mA以上の漏洩電流が生じている場合に通知を行うような設定の場合、10mAのI0c(rt)が発生しており、かつ、30mAのI0r(r)が発生していても、漏洩電流I0は、26mA程度を示すため、設定以上の漏洩電流が生じていないとして、通知しないことがあり得る。I0方式では、R相における危険な状態を見逃していることも考えられる。
【0052】
一方、I0r方式を採用する検出部10は、R相の1相地絡の場合においても正確にI0r(r)を検出することができるので、R相における危険な状態を見過ごさない利点がある。
【0053】
なお、I0r方式における対地静電容量が平衡状態(バランス)の場合には、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、対地静電容量が不平衡状態(アンバランス)による誤差(後述する、仮想I0r)を含まない。
【0054】
<対地静電容量が不平衡状態(アンバランス)の場合について>
静電容量(I0c)が不平衡(アンバランス)の場合、(1)式に基づいて算出したI0rには、誤差が含まれる。つまり、I0rは、実際に生じている値よりも過大または過小になる。とくに、I0rが実際に生じている値よりも過小の場合、本来事故除去されるべき状況であるにもかかわらず、その事実が電気主任技術者等に通知されず、保安上の懸念が生じる可能性がある。
【0055】
<特定部14の動作について(2)>
特定部14は、位相差検出部13により検出された第1位相差θ01により既定される座標上の位置に漏洩電流検出部11により検出された第1漏洩電流を配置して得られる第1ベクトルI01と、位相差検出部13により検出された第2位相差θ02により既定される座標上の位置に漏洩電流検出部11により検出された第2漏洩電流を配置して得られる第2ベクトルI02との差である第3ベクトルI03(第2ベクトルI02-第1ベクトルI01)を算出し、第3ベクトルI03のなす角θ03に基づいて、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が平衡状態であるか、不平衡状態であるのかを特定する。
【0056】
詳細は後述するが、R相の対地静電容量(I0c(r))は、I0r(r)から90度の位置、すなわち、基準点から150度の位置に発生する。また、T相の対地静電容量(I0c(t))は、I0r(t)から90度の位置、すなわち、基準点から210度の位置に発生する。また、R相とT相に対地静電容量が発生し、この対地静電容量が平衡状態の場合には、R相の対地静電容量(I0c(r))とT相の対地静電容量(I0c(t))とにより合成された対地静電容量(I0c(rt))は、基準点から180度の位置に発生する。
【0057】
例えば、特定部14は、第3ベクトルI03のなす角θ03が180度の場合には、対地静電容量が平衡状態であると判定する。特定部14は、第3ベクトルI03のなす角θ03が150度または210度の場合には、対地静電容量が不平衡状態であると判定する。
【0058】
特定部14により特定された情報は、通知部30を介して端末装置に通知される。端末装置の操作者は、対地静電容量が平衡状態であれば、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、正確な値であると判断でき、また、対地静電容量が不平衡状態であれば、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、正確な値でないと判断でき、必要な手段を講じることができる。
【0059】
<特定部14の動作について(3)>
特定部14は、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であると特定した場合、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出された抵抗成分漏洩電流が過大な値であるのか、過小な値であるのかを特定する。
【0060】
詳細は後述するが、T相の対地静電容量(I0c(t))よりもR相の対地静電容量(I0c(r))が多い場合には、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、実際の値よりも過大な値になる。また、R相の対地静電容量(I0c(r))よりもT相の対地静電容量(I0c(t))が多い場合には、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、実際の値よりも過小な値になる。
【0061】
例えば、特定部14は、第3ベクトルI03のなす角θ03が180度よりも小さい場合には、T相の対地静電容量(I0c(t))よりもR相の対地静電容量(I0c(r))が多いので、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、実際の値よりも過大な値であると判定する。また、特定部14は、第3ベクトルI03のなす角θ03が180度よりも大きい場合には、R相の対地静電容量(I0c(r))よりもT相の対地静電容量(I0c(t))が多いので、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rは、実際の値よりも過小な値であると判定する。
【0062】
特定部14により特定された情報は、通知部30を介して端末装置に通知される。端末装置の操作者は、通知部30により通知されたI0rが実際の値よりも過大な値であることが分かれば、必要な手段(例えば、負荷の動作を停止しないなど)を講ずることができる。
【0063】
また、端末装置の操作者は、通知部30により通知されたI0rが実際の値よりも過小な値であることが分かれば、必要な手段(例えば、負荷の動作を停止するなど)を講ずることができる。
【0064】
<補正部16の動作について>
補正部16は、特定部14により、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であり、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出された抵抗成分漏洩電流が過大な値であると判定された場合、この過大な値を算出し、算出した過大な値を抵抗成分漏洩電流算出部15により算出された抵抗成分漏洩電流から減算する。補正部16は、過大な値を減算した補正後のI0rを判定部20に出力する。
【0065】
また、補正部16は、特定部14により、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であり、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出された抵抗成分漏洩電流が過小な値であると判定された場合、この過小な値を算出し、算出した過小な値を抵抗成分漏洩電流算出部15により算出された抵抗成分漏洩電流に加算する。補正部16は、過小な値を加算した補正後のI0rを判定部20に出力する。
【0066】
よって、検出装置1は、補正後のI0rに基づいて判定を行うことができ、対地静電容量が不平衡状態であっても正しく判定することができる。
【0067】
<T相の対地静電容量(I0c(t))よりもR相の対地静電容量(I0c(r))が多い場合について>
ここで、I0c(t)よりもI0c(r)が多い場合には、I0c(t)とI0c(r)とのベクトル合成I0c(rt)は、180度よりも小さな角度の位置に発生する。この場合、演算により算出したI0rは、実際の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流に静電容量のアンバランスにより生じる成分が加算されて、実際の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流よりも過大な値になる。以下では、静電容量のアンバランスにより生じる成分を「仮想I0r」と称する。なお、仮想I0rは、(1)式から算出することができる。
【0068】
ここで、R相のみに静電容量が発生し、T相のみに地絡が発生した場合について、
図7を参照して考察する。
【0069】
なお、R相とT相に発生する静電容量が等しく、静電容量が平衡している場合のI
0cをI
0c(1)とする。I
0c(1)は、
図7に示すように、π(180度)の角度に発生する。
【0070】
また、R相のみに静電容量が発生し、静電容量が不平衡の場合のI
0cをI
0c(2)とする。I
0c(2)は、
図7に示すように、5π/6(150度)の角度に発生する。
【0071】
また、T相のみに地絡が発生しているため、I
0rをI
0r(1)とする。I
0r(1)は、
図7に示すように、2π/3(120度)の角度に発生する。
【0072】
静電容量が平衡している場合において、I0c(1)とI0r(1)とを合成したI0をI0(T1)という。静電容量が平衡している状態において、(1)式により算出されるI0rには、仮想I0rは含まれない。
【0073】
一方、静電容量が不平衡の場合において、I0c(2)とI0r(1)とを合成したI0をI0(T2)という。静電容量が不平衡の状態において、(1)式により算出されるI0rには、仮想I0rが含まれている。
【0074】
よって、I0cの大きさとI0の大きさとが同じでも、静電容量が不平衡状態であると、(1)式により算出されるI0rは、仮想I0rが加算された値になっており、実際に生じている値よりも過大になる。
【0075】
なお、R相のみに静電容量が発生し、R相のみに地絡が発生した場合についても同様である。
【0076】
ここで、
図8~
図10に対地静電容量が不平衡状態の場合の実験結果を示す。
図8は、第1実験の結果を示す。
図9は、第2実験の結果を示す。
図10は、第3実験の結果を示す。
【0077】
第1実験の条件は、以下の通りである。
・実験日:平成19年8月6日
・実験場所:東京都立産業技術センター
・実験条件1:三相3線式の結線方式(Δ結線)、AC200(V)、50(Hz)
・実験条件2:R相_対地静電容量;0.47(μF)、31.1(mA)
:T相_対地静電容量;0(μF)、0(mA)
【0078】
第1実験では、R相に対地静電容量が発生し、T相には対地静電容量が発生しない不平衡状態において、R相やT相に対地絶縁抵抗が発生した場合を想定した実験を行った。
【0079】
図8中の「I
0」(漏洩電流)、「I
0r」(対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流)、「θ」(位相差)は、検出装置1により検出した値である。また、
図8中の「フリーク」とは、電流計により計測した電流値である。検出装置1により検出した「I
0」は、「フリーク」の値とほぼ同じ値になっていることが分かる。
【0080】
ここで、実験No.1では、I0rが「16.3(mA)」になっている。しかしながら、実験No.1では、R相およびT相に対地絶縁抵抗が発生していないため、実際には、I0rは、「0(mA)」になるはずである。
【0081】
第1実験では、T相の対地静電容量よりもR相の対地静電容量が多いため、I0rには仮想I0rが含まれており、過大な値になっている。第1実験では、「16.3(mA)」が仮想I0rである。
【0082】
つまり、実験No.1から実験No.13までのI0rには、仮想I0rが含まれている。補正部16は、I0rから仮想I0rを減算することにより、実際のI0rを算出することができる。
【0083】
また、第2実験の条件は、以下の通りである。
・実験日:平成19年8月6日
・実験場所:東京都立産業技術センター
・実験条件1:三相3線式の結線方式(Δ結線)、AC200(V)、50(Hz)
・実験条件2:R相_対地静電容量;1.0(μF)、65.6(mA)
:T相_対地静電容量;0(μF)、0(mA)
【0084】
第2実験では、第1実験と同様に、R相に対地静電容量が発生し、T相には対地静電容量が発生しない不平衡状態において、R相やT相に対地絶縁抵抗が発生した場合を想定した実験を行った。
【0085】
ここで、実験No.14では、I0rが「35.4(mA)」になっている。しかしながら、実験No.14では、R相およびT相に対地絶縁抵抗が発生していないため、実際には、I0rは、「0(mA)」になるはずである。
【0086】
第2実験では、T相の対地静電容量よりもR相の対地静電容量が多いため、I0rには仮想I0rが含まれており、過大な値になっている。第2実験では、「35.4(mA)」が仮想I0rである。
【0087】
つまり、実験No.14から実験No.26までのI0rには、仮想I0rが含まれている。補正部16は、I0rから仮想I0rを減算することにより、実際のI0rを算出することができる。
【0088】
また、第3実験の条件は、以下の通りである。
・実験日:平成19年8月6日
・実験場所:東京都立産業技術センター
・実験条件1:三相3線式の結線方式(Δ結線)、AC200(V)、50(Hz)
・実験条件2:R相_対地静電容量;1.0(μF)、65.6(mA)
:T相_対地静電容量;0.47(μF)、31.1(mA)
【0089】
第3実験では、R相およびT相にそれぞれ異なる対地静電容量が発生した不平衡状態において、R相やT相に対地絶縁抵抗が発生した場合を想定した実験を行った。なお、第3実験では、T相の対地静電容量よりもR相の対地静電容量が多い場合を想定している。
【0090】
ここで、実験No.1では、I0rが「17.9(mA)」になっている。しかしながら、実験No.1では、R相およびT相に対地絶縁抵抗が発生していないため、実際には、I0rは、「0(mA)」になるはずである。
【0091】
第3実験では、T相の対地静電容量よりもR相の対地静電容量が多いため、I0rには仮想I0rが含まれており、過大な値になっている。第3実験では、「17.9(mA)」が仮想I0rである。
【0092】
つまり、実験No.1から実験No.13までのI0rには、仮想I0rが含まれている。補正部16は、I0rから仮想I0rを減算することにより、実際のI0rを算出することができる。
【0093】
<R相の対地静電容量(I0c(r))よりもT相の対地静電容量(I0c(t))が多い場合について>
つぎに、I0c(r)よりもI0c(t)が多い場合には、I0c(t)とI0c(r)とのベクトル合成I0c(rt)は、180度よりも大きな角度方向になる。この場合、演算により算出したI0rは、実際の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流から仮想I0rが減算されて、実際の対地絶縁抵抗に起因する抵抗成分漏洩電流よりも過小な値になる。
【0094】
ここで、T相のみに静電容量と地絡が発生した場合について、
図11を参照して考察する。
【0095】
なお、R相とT相に発生する静電容量が等しく、静電容量が平衡している場合のI
0cをI
0c(3)とする。I
0c(3)は、
図11に示すように、π(180度)の角度に発生する。
【0096】
また、T相のみに静電容量が発生し、静電容量が不平衡の場合のI
0cをI
0c(4)とする。I
0c(4)は、
図11に示すように、7π/6(210度)の角度に発生する。
【0097】
また、T相のみに地絡が発生しているため、I
0rをI
0r(3)とする。I
0r(3)は、
図11に示すように、2π/3(120度)の角度に発生する。
【0098】
静電容量が平衡している場合において、I0c(3)とI0r(3)とを合成したI0をI0(T3)という。静電容量が平衡している状態において、(1)式により算出されるI0rには、仮想I0rは含まれない。
【0099】
一方、静電容量が不平衡の場合において、I0c(4)とI0r(3)とを合成したI0をI0(T4)という。静電容量が不平衡の状態において、(1)式により算出されるI0rには、仮想I0rが含まれている。
【0100】
よって、I0cの大きさとI0の大きさとが同じでも、静電容量が不平衡状態であると、(1)式により算出されるI0rは、仮想I0rが減算された値になっており、実際に生じている値よりも過大になる。
【0101】
なお、R相のみに静電容量が発生し、R相のみに地絡が発生した場合についても同様である。
【0102】
ここで、
図12~
図14に対地静電容量が不平衡状態の場合の実験結果を示す。
図12は、第4実験の結果を示す。
図13は、第5実験の結果を示す。
図14は、第6実験の結果を示す。
【0103】
第4実験の条件は、以下の通りである。
・実験日:平成19年8月6日
・実験場所:東京都立産業技術センター
・実験条件1:三相3線式の結線方式(Δ結線)、AC200(V)、50(Hz)
・実験条件2:R相_対地静電容量;0(μF)、0(mA)
:T相_対地静電容量;0.47(μF)、31.1(mA)
【0104】
第4実験では、T相に対地静電容量が発生し、R相には対地静電容量が発生しない不平衡状態において、R相やT相に対地絶縁抵抗が発生した場合を想定した実験を行った。
【0105】
ここで、実験No.1では、I0rが「18.3(mA)」になっている。しかしながら、実験No.1では、R相およびT相に対地絶縁抵抗が発生していないため、実際には、I0rは、「0(mA)」になるはずである。
【0106】
第4実験では、R相の対地静電容量よりもT相の対地静電容量が多いため、I0rは実際の値から仮想I0r分だけ減算されて、過小な値になっている。第4実験では、「18.3(mA)」が仮想I0rである。
【0107】
つまり、実験No.1から実験No.13までのI0rは、仮想I0r分だけ減算されている。補正部16は、I0rに仮想I0rを加算することにより、実際のI0rを算出することができる。
【0108】
また、第5実験の条件は、以下の通りである。
・実験日:平成19年8月6日
・実験場所:東京都立産業技術センター
・実験条件1:三相3線式の結線方式(Δ結線)、AC200(V)、50(Hz)
・実験条件2:R相_対地静電容量;0(μF)、0(mA)
:T相_対地静電容量;1.0(μF)、65.6(mA)
【0109】
第5実験では、第4実験と同様に、T相に対地静電容量が発生し、R相には対地静電容量が発生しない不平衡状態において、R相やT相に対地絶縁抵抗が発生した場合を想定した実験を行った。
【0110】
ここで、実験No.14では、I0rが「38.1(mA)」になっている。しかしながら、実験No.14では、R相およびT相に対地絶縁抵抗が発生していないため、実際には、I0rは、「0(mA)」になるはずである。
【0111】
第5実験では、R相の対地静電容量よりもT相の対地静電容量が多いため、I0rは実際の値から仮想I0r分だけ減算されて、過小な値になっている。第5実験では、「38.1(mA)」が仮想I0rである。
【0112】
つまり、実験No.14から実験No.26までのI0rは、仮想I0r分だけ減算されている。補正部16は、I0rに仮想I0rを加算することにより、実際のI0rを算出することができる。
【0113】
また、第6実験の条件は、以下の通りである。
・実験日:平成19年8月6日
・実験場所:東京都立産業技術センター
・実験条件1:三相3線式の結線方式(Δ結線)、AC200(V)、50(Hz)
・実験条件2:R相_対地静電容量;0.47(μF)、31.1(mA)
:T相_対地静電容量;1.0(μF)、65.6(mA)
【0114】
第6実験では、R相およびT相にそれぞれ異なる対地静電容量が発生した不平衡状態において、R相やT相に対地絶縁抵抗が発生した場合を想定した実験を行った。なお、第6実験では、R相の対地静電容量よりもT相の対地静電容量が多い場合を想定している。
【0115】
ここで、実験No.1では、I0rが「21.6(mA)」になっている。しかしながら、実験No.1では、R相およびT相に対地絶縁抵抗が発生していないため、実際には、I0rは、「0(mA)」になるはずである。
【0116】
第6実験では、R相の対地静電容量よりもT相の対地静電容量が多いため、I0rは実際の値から仮想I0r分だけ減算されて、過小な値になっている。第6実験では、「21.6(mA)」が仮想I0rである。
【0117】
つまり、実験No.1から実験No.13までのI0rは、仮想I0r分だけ減算されている。補正部16は、I0rに仮想I0rを加算することにより、実際のI0rを算出することができる。
【0118】
<I0rを算出する演算式の導出方法について>
つぎに、ベクトル理論I0r方式におけるI0rを算出するための(1)式の導出方法について説明する。R相とT相の相間電圧Vを基準とし、接地線に流れる漏洩電流I0と相間電圧V(T→R)の位相差θからI0rを求めることができる。
【0119】
図4に示すベクトル図より、R→T及びT→Sを反転させ、T→Rを基準としてベクトル図を整理すると、
図15に示すベクトル図になる。T→Rを基準とし、S→Rはそれよりπ/3、S→Tは2π/3進む。また、S→R、S→Tよりπ/2進みのI
0c(r)、I
0c(t)のベクトル合成であるI
0c(rt)は、πになる。よって、漏洩電流I
0は、π/3から2π/3の領域に発生する。
【0120】
位相差検出部13は、漏洩電流検出部11から送られてくる漏洩電流I0の波形と、電圧検出部12から送られてくるV(T→R)の波形に基づいて、位相差θを検出する。
【0121】
また、I0r(r)とI0r(t)の位相を合わせる手順について説明する。π/2を挟んで、π/3の位相差のあるI0r(r)とI0r(t)の位相角を一致させて、I0rを求める。
【0122】
つまり、
図16に示すように、位相差θは、「π/2<θ」であり、「sinθ=sin(π-θ)」であるので、I
0c(rt)は、T→Rに平行になり、2π/3のS→Tは、「Sin2π/3=Sin(π-2π/3)=Sinπ/3」となりπ/3のS→Rに重なる。また、漏洩電流I
0からT→Rに垂線を下し、三角関数より、(3)式を得ることができる。
Cos(π/6)=I
0×sinθ/I
0r ・・・(3)
(3)式を展開することにより、(1)式を導出することができる。
【0123】
また、ベクトル理論I0r方式では、V(T→R)を基準電圧としてI0rを算出しているため、S相の漏洩電流も検出可能となり、I0c(s)の影響を受けないため、より安定した測定精度を実現できる。
【0124】
<電圧の測定について>
被測定電線路に高電圧(例えば、6600Vなど)が印加されている場合には、接地形計器用変圧器(EVT)を用いて、高電圧を所定の電圧(例えば、200Vや110Vなど)に降圧し、降圧後の電圧が電圧検出部12に入力される構成でもよい。さらに、接地形計器用変圧器(EVT)により電圧を降圧する際に位相ずれが生じる場合がある。位相差検出部13は、接地形計器用変圧器(EVT)による位相ずれを補正する機能を有する。
【0125】
<方法>
つぎに、検出装置1による検出情報の通知手順について、
図17に示すフローチャートを用いて説明する。
【0126】
ステップS1において、漏洩電流検出部11は、被測定電線路に流れている漏洩電流I0を検出する。
【0127】
ステップS2において、電圧検出部12は、被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する。
【0128】
ステップS3において、位相差検出部13は、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流と電圧検出部12により検出された電圧とに基づいて、位相差θを検出する。
【0129】
ステップS4において、特定部14は、位相差検出部13により検出された位相差により既定される座標上の位置に漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流を配置することにより当該漏洩電流をベクトルで示し、少なくとも二つの漏洩電流のベクトルの変化分を解析し、解析結果に基づいて、被測定電線路の状態を特定する。被測定電線路の状態を特定するとは、地絡が発生している相を特定したり、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が平衡状態であるか、不平衡状態であるのかを特定することである。また、被測定電線路の状態を特定するとは、接地されていない二つの相にそれぞれ流れる対地静電容量が不平衡状態であると特定した場合、抵抗成分漏洩電流算出部15により算出されたI0rが過大な値であるのか、過小な値であるのかを特定することなどである。
【0130】
よって、検出装置1は、漏洩電流I0を解析し、この解析結果から被測定電線路がどのような状態になっているかを特定することができる。
【0131】
<プログラム>
また、本実施例では、主に、漏洩電流I0を解析し、この解析結果から被測定電線路がどのような状態になっているかを特定する検出装置1の構成と動作について説明したが、これに限られず、各構成要素を備え、漏洩電流I0を解析し、この解析結果から被測定電線路がどのような状態になっているかを特定するための方法、およびプログラムとして構成されてもよい。
【0132】
また、検出装置1を構成する各機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0133】
具体的には、当該プログラムは、被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、被測定電線路のいずれか2相の間に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相差を検出する位相差検出工程と、位相差検出工程により検出された位相差により既定される座標上の位置に漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流を配置することにより当該漏洩電流をベクトルで示し、少なくとも二つの漏洩電流のベクトルの変化分を解析し、解析結果に基づいて、被測定電線路の状態を特定する特定工程と、をコンピュータによって実現するための検出プログラムである。
【0134】
さらに、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0135】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短期間で動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 検出装置、10 検出部、11 漏洩電流検出部、12 電圧検出部、13 位相差検出部、14 特定部、15 抵抗成分漏洩電流算出部、16 補正部、20 判定部、30 通知部、100 クランプ部