(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】温室用のスライド式ドア
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20221226BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20221226BHJP
E05D 13/00 20060101ALI20221226BHJP
E05F 17/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
A01G9/14 Q
E06B3/46
E05D13/00 L
E05F17/00 C
(21)【出願番号】P 2019097896
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘伸
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3083521(JP,U)
【文献】特開2001-020607(JP,A)
【文献】特開2010-180659(JP,A)
【文献】特開平10-280809(JP,A)
【文献】特開2007-077779(JP,A)
【文献】特開2013-139688(JP,A)
【文献】特開平08-116799(JP,A)
【文献】実開平01-179983(JP,U)
【文献】実開平04-051592(JP,U)
【文献】特開2020-145934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
E06B 3/46
E05D 13/00
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室の出入口開口の上辺レール近傍に設置されるベース板に、エンドレス状のワイヤーが複数のローラーを介して設けられ、前記上辺レール又は下辺レール内で戸車を備えた左右のスライド式ドアの各上部が前記ワイヤーに接続され、左右いずれか一方の前記ドアの開閉に応じて他方のドアが同時に開閉される温室用のスライド式ドアであって、
前記ローラーは、前記ベース板の両端部に配置された左右一対の端部ローラーと、前記ベース板の中央部に配置された左右一対の中央ローラーとで成ると共に、
前記ワイヤーは、左側の端部ローラーに下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、左側の中央ローラーの上方に掛けられた後、隣接する右側の中央ローラーの下方に掛けられて外方に向かい、つづいて右側の端部ローラーに下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、前記右側の中央ローラーの上方に掛けられた後、隣接する前記左側の中央ローラーの下方に掛けられて外方に向かい、前記左側の端部ローラーに巻き掛けられる前の当該ワイヤーに接続されてエンドレス状に形成されて成り、
前記左側の端部ローラーと左側の中央ローラー間の下方
に位置するワイヤーに前記一方のドアの上部が接続されると共に、前記右側の端部ローラーと右側の中央ローラー間の下方
に位置するワイヤーに前記他方のドアの上部が接続され、前記左右いずれか一方のドアの開き動作に応じて他方のドアが同時に開き、前記左右いずれか一方のドアの閉じ動作に応じて他方のドアが同時に閉じる構成であることを特徴とする温室用のスライド式ドア。
【請求項2】
前記左側の端部ローラーと左側の中央ローラー間の
下方に位置するワイヤーの代わりの上方
に位置するワイヤー
に、前記一方のドアの上部が接続されると共に、前記右側の端部ローラーと右側の中央ローラー間の
下方に位置するワイヤーの代わりの上方
に位置するワイヤー
に、前記他方のドアの上部が接続され、前記左右いずれか一方のドアの開き動作に応じて他方のドアが同時に開き、前記左右いずれか一方のドアの閉じ動作に応じて他方のドアが同時に閉じる構成であることを特徴とする、請求項1に記載した温室用のスライド式ドア。
【請求項3】
前記左右いずれか一方の中央ローラーは、他方の中央ローラーより奥行方向に
離隔して配置され、前記左右の中央ローラー間で交差するワイヤーが互いに接触しない構成であることを特徴とする、請求項1又は2記載した温室用のスライド式ドア。
【請求項4】
前記左右いずれか一方の中央ローラーは、奥行が他方の中央ローラーより長く形成され、かつワイヤーを掛ける溝部が、他方の中央ローラーの溝部より奥行方向にも離間して設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドア。
【請求項5】
前記左右のスライド式ドアの各上部の内端部に、L字型のワイヤー固定金具が設置され、そのワイヤー固定金具に前記ワイヤーが接続固定されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドア。
【請求項6】
前記左右のスライド式ドアの戸車には、ベアリングが装填されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドア。
【請求項7】
前記ベース板は、前記上辺レールの内側面でUボルトを介して温室の支柱パイプに取り付けられていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドア。
【請求項8】
温室の出入口開口の上辺レール近傍に設置されるベース板に、エンドレス状のワイヤーが複数のローラーを介して設けられ、前記上辺レール又は下辺レール内で戸車を備えた左右のスライド式ドアの各上部が前記ワイヤーに接続され、左右いずれか一方の前記ドアの開閉に応じて他方のドアが同時に開閉される温室用のスライド式ドアであって、
前記ローラーは、前記ベース板の両端部に配置された左右一対の端部ローラーと、前記ベース板の中央部に配置された左右一対の中央ローラーとで成ると共に、
前記ワイヤーは、左側の端部ローラーに下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、左側の中央ローラーの上方に掛けられた後、隣接する右側の中央ローラーの下方に掛けられて外方に向かい、つづいて右側の端部ローラーに下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、前記右側の中央ローラーの上方に掛けられた後、隣接する前記左側の中央ローラーの下方に掛けられて外方に向かい、前記左側の端部ローラーに巻き掛けられる前の当該ワイヤーに接続されてエンドレス状に形成されて成り、
前記左側の端部ローラーと左側の中央ローラー間の下方に位置するワイヤーに前記一方のドアの上部が接続されると共に、前記右側の端部ローラーと右側の中央ローラー間の下方に位置するワイヤーに前記他方のドアの上部が接続され、前記左右いずれか一方のドアの開き動作に応じて他方のドアが同時に開き、前記左右いずれか一方のドアの閉じ動作に応じて他方のドアが同時に閉じる構成であること、及び、
前記左右いずれか一方又
は両方のドアの上部に、
引き込み式のぜんまいユニットが設置され、かつ
前記ぜんまいユニットにより引き込まれる第2ワイヤーの先端が上辺レール又はベース板に接続され、左右いずれか一方のドアが開かれた後の解除時に、前記ぜんまいユニットの第2ワイヤーが引き込まれて当該左右両方のドアが同時に自閉されること、
を特徴とす
る温室用のスライド式ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温室用のスライド式ドアに関し、さらに言えば、
図12に示したような温室の出入口開口の上辺レール近傍に設置するワイヤーとローラーの簡便構造により、出入口開口の左右のスライド式ドアの左右いずれか一方の開閉に応じて、他方のドアが同時に自動的に開閉される温室用のスライド式ドアの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室の出入口開口に実施されるスライド式ドアとして、例えば、本出願人が開発した下記特許文献1がある。この発明は、同文献1の符号を援用すると、上辺レール3は横断面形状の基本形が下向きに開口部9を有するリップ付溝形鋼状をなし、内向きの左右のリップ7の上面7aが戸車の走行面とされ、片側のリップ7の端縁はリップ下側へ折り返してリップ7との間にセルフタップビス8をねじ込み可能な間隙の溝部6が形成され、更に側板3aの延長線上で略垂直下向きに屈曲した垂下面部11が形成され、シート止め材5が溝部6へのねじ込みにより上辺レール3に取付けられ、ドア4のダブル車輪12はリップ7の上面7aに走行可能に載置したスライド式ドアである。
【0003】
また、下記特許文献2のように、小型リニアモータで左右一対のドアの開閉動作を同期させて開閉できるとともに、牽引ワイヤの弛み調整が容易な両開きドアの開閉装置も公知である。この両開きドア開閉装置は、同文献2の符号を援用すると、第1牽引ワイヤ31の一端をリニアモータ6の可動子11に連結して第1プーリ8に掛け、他端をドア2bに連結する。第2牽引ワイヤ32の一端を可動子6に連結して第2プーリ9に掛け、他端をドア2bに連結する。リニアモータ6によりドア2aを開閉駆動すると、ドア2bがドア2aと逆方向に牽引される。また、ドア2bと第1牽引ワイヤ31及び第2牽引ワイヤ32との連結部を同位置とし、ドア2bに対する固定位置を牽引ワイヤの伸長方向で変更可能な連結ピン16を設けて、第1牽引ワイヤ31及び第2牽引ワイヤ32を係止するようにし、さらに、第1プーリ8若しくは第2プーリ9をレール長手方向で位置調整自在とする構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2764698号公報
【文献】特開平11-166366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1のスライド式ドア構造によれば、上辺レール3のリップ7,7上に載置されたダブル車輪12はバランスよく走行するので、スライド式ドアの走行の安定化に寄与し、スライド式ドア4の利用価値が高められる上、上辺レール3に直接シート止め材5又は5’を固定でき、所望のシート19又は20を張設することができる自在性がある。しかし、温室用のスライド式ドアの左右いずれか一方の開閉に応じて、他方のドアが同時に自動的に開閉されるものではない。
【0006】
また、特許文献2の両開きドア開閉装置は、第1牽引ワイヤ31と第2牽引ワイヤ32は、リニアモータ6の可動子11を介して簡便構造のループ状に形成されるものの、ドア2aを開閉駆動するリニアモータ6が必要であって、それを実施するに当たりコスト高が余儀なくされる。しかも、他方のドア2bが第1牽引ワイヤ31に接続するための長いブラケット13が必要で、部品点数が増える上、ドアの開閉の安定性が悪い、といった問題がある。
【0007】
したがって、本発明は上記のような問題点を解決すべくなされたもので、その目的は、温室の出入口開口に適用される両開きタイプで開閉するスライド式ドアに、エンドレスワイヤーとローラーの必要最小限の構造で安価に実施でき、作業員は左右いずれか一方のドアを開閉するだけで、他方のドアが同時に自動的に安定して開閉する使い勝手に優れた温室用のスライド式ドアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明の温室用のスライド式ドアは、温室10の出入口開口11の上辺レール12近傍に設置されるベース板9に、エンドレス状のワイヤー8が複数のローラー1~4を介して設けられ、前記上辺レール12又は下辺レール13内で戸車40を備えた左右のスライド式ドア30A、30Bの各上部31が前記ワイヤー8に接続され、左右いずれか一方の前記ドア30A又は30Bの開閉に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開閉される温室用のスライド式ドアであって、
前記ローラー1~4は、前記ベース板9の両端部に配置された左右一対の端部ローラー1、2と、前記ベース板9の中央部に配置された左右一対の中央ローラー3、4とで成ると共に、
前記ワイヤー8は、左側の端部ローラー1に下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、左側の中央ローラー3の上方に掛けられた後、隣接する右側の中央ローラー4の下方に掛けられて外方に向かい、つづいて右側の端部ローラー2に下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、前記右側の中央ローラー4の上方に掛けられた後、隣接する前記左側の中央ローラー3の下方に掛けられて外方に向かい、前記左側の端部ローラー1に巻き掛けられる前の当該ワイヤー8に接続されてエンドレス状に形成されて成り、
前記左側の端部ローラー1と左側の中央ローラー3間の下方に位置するワイヤー8に前記一方のドア30Aの上部31が接続されると共に、前記右側の端部ローラー2と右側の中央ローラー4間の下方に位置するワイヤー8に前記他方のドア30Bの上部31が接続され、前記左右いずれか一方のドア30A又は30Bの開き動作に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開き、前記左右いずれか一方のドア30A又は30Bの閉じ動作に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に閉じる構成であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記請求項1に記載した温室用のスライド式ドアの前記左側の端部ローラー1と左側の中央ローラー3間の下方に位置するワイヤー8の代わりの上方に位置するワイヤー8に、前記一方のドア30Aの上部31が接続されると共に、前記右側の端部ローラー2と右側の中央ローラー4間の下方に位置するワイヤー8の代わりの上方に位置するワイヤー8に、前記他方のドア30Bの上部31が接続され、前記左右いずれか一方のドア30A又は30Bの開き動作に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開き、前記左右いずれか一方のドア30A又は30Bの閉じ動作に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に閉じる構成であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記請求項1又は2記載した温室用のスライド式ドアの前記左右いずれか一方の中央ローラー3又は4が、他方の中央ローラー4又は3より奥行方向に離隔して配置され、前記左右の中央ローラー3、4間で交差するワイヤー8が互いに接触しない構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明は、前記請求項1~3のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドアの前記左右いずれか一方の中央ローラー3又は4は、奥行が他方の中央ローラー4又は3より長く形成され、かつワイヤー8を掛ける溝部16aが、他方の中央ローラー4又は3の溝部16aより奥行方向にも離間して設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載した発明は、前記請求項1~4のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドアの前記左右のスライド式ドア30(30A、30B)の各上部31の内端部に、L字型のワイヤー固定金具80が設置され、そのワイヤー固定金具80に前記ワイヤー8が接続固定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載した発明は、前記請求項1~5のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドアの前記左右のスライド式ドア30(30A、30B)の戸車40には、ベアリングが装填されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載した発明は、前記請求項1~6のいずれか一に記載した温室用のスライド式ドアの前記ベース板9が、前記上辺レール12の内側面でUボルト91を介して温室10の支柱パイプ14に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載した発明の温室用のスライド式ドアは、温室10の出入口開口11の上辺レール12近傍に設置されるベース板9に、エンドレス状のワイヤー8が複数のローラー1~4を介して設けられ、前記上辺レール12又は下辺レール13内で戸車40を備えた左右のスライド式ドア30A、30Bの各上部31が前記ワイヤー8に接続され、左右いずれか一方の前記ドア30A又は30Bの開閉に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開閉される温室用のスライド式ドアであって、
前記ローラー1~4は、前記ベース板9の両端部に配置された左右一対の端部ローラー1、2と、前記ベース板9の中央部に配置された左右一対の中央ローラー3、4とで成ると共に、
前記ワイヤー8は、左側の端部ローラー1に下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、左側の中央ローラー3の上方に掛けられた後、隣接する右側の中央ローラー4の下方に掛けられて外方に向かい、つづいて右側の端部ローラー2に下方から上方に巻き掛けられて内方に向かい、前記右側の中央ローラー4の上方に掛けられた後、隣接する前記左側の中央ローラー3の下方に掛けられて外方に向かい、前記左側の端部ローラー1に巻き掛けられる前の当該ワイヤー8に接続されてエンドレス状に形成されて成り、
前記左側の端部ローラー1と左側の中央ローラー3間の下方に位置するワイヤー8に前記一方のドア30Aの上部31が接続されると共に、前記右側の端部ローラー2と右側の中央ローラー4間の下方に位置するワイヤー8に前記他方のドア30Bの上部31が接続され、前記左右いずれか一方のドア30A又は30Bの開き動作に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開き、前記左右いずれか一方のドア30A又は30Bの閉じ動作に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に閉じる構成であること、及び、
前記左右いずれか一方は両方のドア30A又は30Bの上部31に、引き込み式のぜんまいユニット50が設置され、かつ前記ぜんまいユニット50により引き込まれる第2ワイヤー51の先端51aが前記上辺レール12又はベース板9に接続され、左右いずれか一方のドア30A又は30Bが開かれた後の解除時に、前記ぜんまいユニット50の第2ワイヤー51が引き込まれて当該左右両方のドア30A、30Bが同時に自閉されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の温室用のスライド式ドアは、温室の出入口開口の上辺レール近傍で、エンドレス状ワイヤーと必要最小限のローラーの簡便構造で安価に実施でき、作業員は左右いずれか一方のドアを開閉するだけで、他方のドアが同時に自動的に安定して開閉して使い勝手がよく、温室の内外を必要に応じて自由に通過でき、作業効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は(B)の符号A部分の拡大平面図と拡大正面図、(B)はローラーとワイヤーの設置要領を正面から示した説明図、(C)は(B)のワイヤーと固定金具の動きを示した説明図である。
【
図2】スライド式ドアを示した一部切欠正面図である。
【
図3】(A)はスライド式ドアを示した側面図、(B)は(A)の符号B部分の拡大図である。
【
図4】ベース板の上辺レールへの取付け状態を示した一部切欠平面図である。
【
図5】ローラーを示した斜視図(A)、側面図(B)、正面図(C)である。
【
図6】異なるローラーの組立て要領を示した斜視図である。
【
図7】(A)はエンドレス状のワイヤーを簡略して示した正面図、(B)は(A)におけるA部分のカシメ状態の拡大正面図、(C)は(B)の裏面図である。
【
図8】スライド式ドアのワイヤーへの接続状態を下方から示した一部切欠斜視図である。
【
図10】ワイヤー固定金具とワイヤーの接続状態を下方から示した斜視図である。
【
図12】温室に設置されたスライド式ドアのワイヤーとローラーの内部構造を示した正面図である。
【
図13】本スライド式ドアにおいて、ぜんまいユニットの実施状況を示した正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態の温室用のスライド式ドアについて、以下図面にしたがって説明する。
このスライド式ドアは、
図12に示したような温室10の出入口開口11の上辺レール12近傍に設置されるベース板9に、エンドレス状のワイヤー8が複数のローラー1~4を介して設置され(
図1)、下辺レール13内で戸車40を備えた左右の当該スライド式ドア30(30A、30B)の各上部31が前記ワイヤー8に接続されている(
図8)。そして、左右いずれか一方の前記ドア30A又は30Bの開閉に応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開閉され、温室10の内外を通過して作業しやすくさせるために実施される。以下、左側のドアを符号30A、右側のドアを符号30Bで示す。
【0020】
ワイヤー8に接続されるスライド式ドア30(30A、30B)の戸車40には、ベアリングを装填する形態で実施するのが好ましい。当該スライド式ドア30(30A、30B)の開閉をスムーズに行うためである。
なお、本実施形態における左右のスライド式ドア30(30A、30B)は、下辺レール13内で戸車40を備え、上辺レール13内で当該ドア30(30A、30B)の抜け落ちを防ぐ突出金具31a(
図3B)を備えた例について説明するが、図示を省略した上辺レール12内で戸車40を備えた形態でも同様に実施される。また、
図1A中、符号33は、このスライド式ドア30(30A、30B)の各内端に設けられた取っ手を示している。
【0021】
ベース板9について説明する。このベース板9は、
図2に示したように横長のプレート体で、アルミ製品によって横幅の全長が2700mm程度、高さが130mm程度、板厚が3mm程度とされている。後述するローラー1~4が、このベース板9の所定位置に取り付けられる。
当該ベース板9には、小さな長円形状で横長に穿設されて隣接する一対の小孔90、90が略等間隔で4ケ所穿設されている(
図13)。この小孔90は、主に左右両端の位置で、後述する妻面15のハウス骨組を構成する支柱パイプ14にUボルト91で固定するために設けられている(
図2、
図12参照)。或いは、上辺レール12に固定する際にも使用される。なお、図示を省略する2本の上辺レール2、2が中央で接続した際の接続ボルトの逃がし窓として、中央部に若干大きな長円形状で横長に穿設された小孔90’が一つ穿設されている。
【0022】
ローラー1~4について説明する。前記前記ベース板9の正面のプレート上に、4個のローラー1~4が取り付けられている。ローラー1~4のうち、後述する中央ローラー3、4のいずれか1つ(本実施形態では中央ローラー3)を除く3つのローラーは、同じ製品である。
図5に示したように、合成樹脂製でφ=26mm程度の円柱状の回転自在な滑車16に支軸17が備わっている。溝部16aを有する前記滑車16の厚さは7mm程度で、支軸17は前記滑車16の裏面の中心から8mm程度突き出て、前記ベース板9の所定位置に挿し込まれ、ナット17aで固定されている(
図1、
図3B、
図8参照)。
一方、後述する中央ローラー3は、
図6に示したように、前記
図5のローラー(1、2、4)の滑車16を2つ重ね、共通する1本の支軸17で固着された二重ローラーに形成されている。他の中央ローラー4の溝部16aより奥行方向にも離間した溝部16aが設けられた構成となっている。つまり、奥行方向の長さが他のローラー(1、2、4)より厚く14mm程度に形成されている。中央の左右のローラー3、4間で交差するワイヤー8が接触しないように、奥行方向に離間した溝部16aに当該ワイヤー8が掛けられるようにしたためである。
これらのローラー1~4は、設置される位置と機能の相違から、端部ローラー1、2と、中央ローラー3、4の2種類に大別される。
【0023】
端部ローラー1、2は、前記ベース板9の両端部にそれぞれ配置して設置された左右一対の左側の端部ローラー1と右側の端部ローラー2である。詳しくは、ベース板9の左右両端部から各15mm程度内側で、かつベース板9の下端から各7.5mm程度上方の位置に、左右の端部ローラー1、2はそれぞれ設置されている。
【0024】
中央ローラー3、4は、前記ベース板9の中央部で、互いに近い位置で設置された左右一対の左側の中央ローラー3と右側の中央ローラー4である。詳しくは、左側の中央ローラー3は、ベース板9(全長2700mm程度)の左端部から1325mm程度センターに寄った位置の下端(ベース板9の下端から7.5mm程度上方の位置)に設置され、同様に、右側の中央ローラー4は、ベース板9の右端部から1325mm程度センターに寄った位置の下端(ベース板9の下端から7.5mm程度上方の位置)に設置されている。別言すれば、ベース板9の中央(センターライン)から、25mm程度ずつそれぞれ左右に離れた位置に、左右の中央ローラー3、4は設置されている。すなわち、この左右の中央ローラー3、4と前記左右の端部ローラー1、2とは、ベース板9の下端の同一レベル(ライン上)に設置される。
そして、前記左側の中央ローラー3は、上述したように本実施形態の場合、二重ローラー(
図6)で実施され、他方の右側の中央ローラー4と比べて、奥行方向にも離間する溝部16aが位置するように設けられている(
図1A)。但し、左右いずれか一方の中央ローラー3又は4が、奥行方向に離隔して設けられればよいため、本実施形態のように左側の中央ローラー3ではなく、右側の中央ローラー4を、奥行方向にも離間した溝部16aを備えた二重ローラーで実施することも可能である(図示は省略)。
【0025】
ワイヤー8について説明する。ステンレス製のこのワイヤー8は、φ=1.2mm程度で、全長が6.5m程度である。
図7A中の符号Aで示した端部接続箇所において、
図7B、Cに示したように、同ワイヤー8は、その端部8a、8bが工具を使用してスリーブ85でカシメて接続され、エンドレス状に形成されている。
当該ワイヤー8の前記ローラー1~4への巻き掛け方を説明する。
図1に示したように、本実施形態では、左側の端部ローラー1への巻き掛けからスタートする。まず、ワイヤー8は、左側の端部ローラー1に下方から上方に巻き掛けられて内方に向った後(
図1Cの符号K2参照)、左側の二重ローラーの中央ローラー3の奥側に位置する溝部16aの上方に掛けられた後(
図1A上図、
図3B)、隣接する右側の中央ローラー4の下方に掛けられて外方に向い(
図1Cの符号S1参照)、つづいて右側の介在ローラー6に下方から上方に巻き掛けられて内方に向い、前記右側の中央ローラー4の上方に掛けられた後、隣接する前記左側の中央ローラー3の手前に位置する溝部16aの下方に掛けられて外方に向かい(
図1Cの符号K1参照)、前記左側の端部ローラー1に巻き掛けられる前の当該ワイヤー8に接続されて、エンドレス状に形成されている。
但し、このワイヤー8のローラー1~4への巻き掛けは、上述した反時計回りの巻き掛けのほか、時計回りで巻き掛けてもよく、巻き掛けスタートと終端の位置(ワイヤー8の端部8a、8bの接続位置)はエンドレス状になればどこであってもよい。
かように、ワイヤー8は、正面からみて中央部でX状にクロスするが、接触しないように構成されているので、上下に位置する当該ワイヤー8が中央部からそれぞれ左右逆方向に動くとき、互いに擦れたり干渉することなく、スライド式ドア30(30A、30B)のスムーズな開閉が実現される。
【0026】
したがって、前記ローラー1~4へ巻き掛けられた当該ワイヤー8は、
図1Cに示した動きをする仕組みになっている。すなわち、右側の中央ローラー4と右側の端部ローラー2間の下方に位置するワイヤー8において、符号S1で示した矢印位置から、ワイヤー8が右の方へ移動されると、上方に位置するワイヤー8は逆方向の矢印S3で示したように移動する。そのとき、左側の中央ローラー3と左側の端部ローラー1間の下方に位置する当該ワイヤー8は、符号K1の矢印位置から左の方に移動し、上方に位置する当該ワイヤー8は逆方向の符号K3で示したように移動する。つまり、ワイヤー8は、中央から右サイドにおいて符号S2で示した右方の矢印で示した右端位置まで移動されると同時に、中央から左サイドにおいてK2の矢印で示した左端位置まで動く仕組みである。
要するに、上述したローラー1~4へのワイヤー8の巻き掛けにより、右側のドア(30B)が符号S1→S2のように右方へ移動すると、左側のドア(30A)が符号K1→K2のように反対方向の左方へ移動し、左右のドア30A、30Bの互いに反対方向への動きが実現されている(
図12、
図13参照)。
【0027】
かくして、上述した各ローラー1~4に巻き掛けられるワイヤー8を備えたベース板9は、
図3Bに示したように、ハウス骨組の妻面15(
図12)の上辺レール12の内側面、詳しくは、上辺レール12を抱持する上辺レール固定金具18の内側面に設置されている。すなわち、ベース板9は、上辺レール12の外側面の温室10の支柱パイプ14に引っ掛けたUボルト91を、取付孔90に挿通し、蝶ナット92で上辺レール2を締付け、同上辺レール12に当接して設置されている(
図4、
図13)。
【0028】
次に、前記ワイヤー8へのスライド式ドア30(30A、30B)の固定の仕方について説明する。
図8に示したように、スライド式ドア30(30A、30B)の各上部31の内端部に、L字型のワイヤー固定金具80が設置され、そのワイヤー固定金具80に前記ワイヤー8が接続固定されている(
図2参照)。
ワイヤー固定金具80は、
図9~
図11に図示例のごとく、水平部80aと、同水平部30aの基部が下方に垂下した垂直部80dとによりL字型に形成されている。水平部80aの先端には、ワイヤー8を挟み込む挟持金具80bがワッシャー80f付組込みネジ80cで締め付け自在に設けられている。垂直部80dの中央は、下方にU字状に切欠された固定切欠部80eに形成されている。
よって、
図3と
図8に図示例のごとく、スライド式ドア30(30A、30B)の各上部31を構成する横桟の内端部に、ワイヤー固定金具80垂直部80dを当接し、その固定切欠部80eに蝶ナット82を挿し込み、板付ボルト81で締め付け固定する。
そして、当該ワイヤー固定金具80の水平部80aの下面と挟持金具80bとの間に、ワイヤー8を挿通する。左側の端部ローラー1と左側の中央ローラー3に掛けられる下方位置のワイヤー8に前記左側のドア30Aの上部31が接続され、前記右側の端部ローラー2と右側の中央ローラー4に掛けられる下方位置のワイヤー8に前記右側のドア30Bの上部31が接続され(
図1B、
図2参照)、そのように位置が決まったらそれぞれワッシャー80f付組込みネジ80cにより締め付けて接続固定する。
なお、通常は上述したように、下方に位置するワイヤー8にスライド式ドア30(30A、30B)の上部31が固定されるが、場合によっては、上方に位置するワイヤー8に各ドア30A、30Bの上部31を固定して実施する形態も採用可能である。
【0029】
上述した温室用のスライド式ドアは、
図13に示したように、ぜんまいユニット50を設置して好適に実施される。
すなわち、左右のスライド式ドア30A及び30Bの各上部31の閉じ方向寄りに内端に、第2ワイヤー(51)引き込み式のぜんまいユニット50がそれぞれ設置され、かつ第2ワイヤー51の先端51aが前記上辺レール12又はベース板9の中央位置に接続されている。前記ぜんまいユニット50としては、互いに独立して回動可能なせんまい部とダンパ部(図示は両略)とに捲回する第2ワイヤー51を介してスライド式ドア30A及び30Bを自動的に閉止可能なユニット等で実施される。左右両方のドア30A、30Bが開かれた後の解除時に、前記ぜんまいユニット50の第2ワイヤー51が引き込まれて両方のドア30A、30Bが同時にスムーズに自閉される。但し、左右いずれかの30A又は
30Bにのみ、ぜんまいユニット50を設置する形態でも実施可能である。
【0030】
したがって、この温室用のスライド式ドアは、
図1Bに示したような閉じ状態で、作業員が、左右いずれか一方のドア30A又は30Bを開ければ、それに応じて他方のドア30B又は30Aが同時に開いていき(
図12)、
図13に示したように前記左右の両ドア30A及び30Bが全開される。閉じるときは、その逆で、
図13の全開状態で、作業員が、左右いずれか一方のドア30A又は30Bを閉じれば、それに応じて他方のドア30B又は30Aが同時に閉じていき、最終的には元の閉じ状態となる(
図1B参照)。
【0031】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、例えば、各ローラー1~4とワイヤー8を、上述したベース板9のない上辺レール12に直接設置して実施する等、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0032】
1、2 端部ローラー
3、4 中央ローラー
10 温室
11 出入口開口
12 上辺レール
13 下辺レール
14 支柱パイプ
16 滑車
16a 溝部
17 支軸
30 スライド式ドア
30A 一方のドア
30B 他方のドア
31 上部
40 戸車
50 ぜんまいユニット
51 第2ワイヤー
51a 先端
8 ワイヤー
80 ワイヤー固定金具
81 板付ボルト
82 蝶ナット
9 ベース板
90 取付孔
91 Uボルト
92 蝶ナット