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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】測定子
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/14 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
G01B7/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021162492
(22)【出願日】2021-10-01
(62)【分割の表示】P 2017158483の分割
【原出願日】2017-08-21
(65)【公開番号】P2022000657
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤
(72)【発明者】
【氏名】尾形 健
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200196(JP,A)
【文献】特開2012-150038(JP,A)
【文献】特開2015-152584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の被測定物の隙間の距離を測定する隙間測定装置の測定出力部に接続して使用される測定子であって、
前記測定子の片面側には、第1の電極と、前記第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第3の電極と、が配置され、
前記測定子の反対面側には、第2の電極と、前記第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第4の電極と、が配置され、
前記囲うようにして設けられた第3の電極、及び、前記囲うようにして設けられた第4の電極は、それぞれ個別に前記測定出力部に接続され、
前記第3の電極は、前記第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、前記第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
前記第4の電極は、前記第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、前記第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
前記第1の電極と前記第3の電極とが第1の平面を有して設けられ、
前記第2の電極と前記第4の電極とが第2の平面を有して設けられ、
前記第3の電極の前記非包囲電極は、前記第2の電極を前記第1の平面に投影した領域を内包するように設けられ、
前記第4の電極の前記非包囲電極は、前記第1の電極を前記第2の平面に投影した領域を内包するように設けられ、
前記測定出力部は、
正弦波を発生させる正弦波発生回路を含んで、前記第1の電極、前記囲うようにして設けられた第3の電極、前記第2の電極及び前記囲うようにして設けられた第4の電極へ前記正弦波を基にした交流電流を印加する交流電流発生手段と、
前記囲うようにして設けられた第3の電極及び前記囲うようにして設けられた第4の電極と前記交流電流発生手段との間に挿入されて、前記第1の電極と前記囲うようにして設けられた第3の電極、前記第2の電極と前記囲うようにして設けられた第4の電極をそれぞれ交流的に同電位にするインピーダンス変換器と、
前記囲うようにして設けられた第3の電極及び前記囲うようにして設けられた第4の電極の電圧値をそれぞれ測定して出力する電圧測定手段と、を備え、
前記交流電流発生手段は、
前記第2の電極及び前記囲うようにして設けられた第4の電極へは前記正弦波の位相をシフトし、移相済正弦波として出力する移相回路を含み、
前記測定出力部は、
前記電圧測定手段からそれぞれ出力される前記各電圧値を基に演算して前記被測定物の隙間距離を測定することを特徴とする測定子。
【請求項2】
前記電圧測定手段は、
前記囲うようにして設けられた第4の電極の電圧信号と、前記正弦波発生回路から取り出した前記正弦波を基にした信号と、を乗算する第1の乗算器と、
前記囲うようにして設けられた第3の電極の電圧信号と、前記移相回路から取り出した前記移相済正弦波を基にした信号と、を乗算する第2の乗算器と、
前記第1の乗算器及び前記第2の乗算器からの出力をそれぞれ直流信号に変換するローパスフィルタと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の測定子。
【請求項3】
前記移相回路による位相のシフトが、プラス90度若しくはマイナス90度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定子。
【請求項4】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極及び前記第4の電極がプリント配線パターンにて形成され、
前記第1の電極と前記第3の電極が前記測定子の導体表面層である第1層に設けられ、
前記第2の電極と前記第4の電極が前記測定子の前記第1層の反対面の導体表面層である第2層に設けられ、
前記第1の電極から引き出された第1の配線と、前記第2の電極から引き出された第2の配線がそれぞれスルーホールを経由して前記第1層と前記第2層の中間にある中間層に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の測定子。
【請求項5】
前記中間層の前記第1の配線が、前記第3の電極の前記包囲電極に繋がった第3の配線と離間して周囲を囲まれ、前記第1層の前記第3の電極の前記包囲電極及び前記第2層の前記第4の電極の前記非包囲電極に挟まれるように配置され、
前記中間層の前記第2の配線が、前記第4の電極の前記包囲電極に繋がった第4の配線と離間して周囲を囲まれ、前記第1層の前記第3の電極の前記非包囲電極及び前記第2層の前記第4の電極の前記包囲電極に挟まれるように配置され、
前記第1層の前記第3の電極、前記第2層の前記第4の電極、前記中間層の前記第3の配線及び前記第4の配線が、前記被測定物と電気的に繋がっている第5の配線にて離間してそれぞれ周囲を囲まれていることを特徴とする請求項4に記載の測定子。
【請求項6】
前記中間層が単一層であることを特徴とする請求項4又は5に記載の測定子。
【請求項7】
前記第1の電極の前記第1の平面と、前記第2の電極の前記第2の平面とが、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリエーテルエーテルケトンケトンの少なくとも1つを含む誘電体にて被覆されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の測定子。
【請求項8】
導電性の被測定物の隙間の距離を測定する隙間測定装置の測定出力部に接続して使用される測定子であって、
前記測定子の片面側には、第1の電極と、前記第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第3の電極と、が配置され、
前記測定子の反対面側には、第2の電極と、前記第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第4の電極と、が配置され、
前記囲うようにして設けられた第3の電極、及び、前記囲うようにして設けられた第4の電極は、それぞれ個別に前記測定出力部に接続され
前記第3の電極は、前記第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、前記第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
前記第4の電極は、前記第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、前記第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
前記第1の電極と前記第3の電極とが第1の平面を有して設けられ、
前記第2の電極と前記第4の電極とが第2の平面を有して設けられ、
前記第3の電極の前記非包囲電極は、前記第2の電極を前記第1の平面に投影した領域を内包するように設けられ、
前記第4の電極の前記非包囲電極は、前記第1の電極を前記第2の平面に投影した領域を内包するように設けられている、ことを特徴とする測定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向離間した導電性の被測定物の隙間を非接触で測定を可能にする隙間測定装置の測定子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来物体の隙間を測定するには、複数の既知の厚みの金属板を被測定物の隙間に順次挿入して、隙間に入った金属板の抜き差しの感触にて寸法を測っていた。しかしながら測定子が金属板による接触式であることから被測定物に傷を付けてしまうこと、測定者によって測定値が変わることから、これを非接触で測定する静電容量方式の測定装置が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭59-045082号
【文献】国際公開第1993/024844号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にて開示されている発明は、静電容量方式の測定装置であって、測定子には測定用の主電極のみが配置されていて、実際に使用するとノイズ等の影響を受けやすく、シールドが必要である。そして特許文献2ではこれにシールドを設けたものが開示されている。そして特許文献1及び特許文献2いずれの発明も主電極の端部では電気力線が湾曲することから、正確に静電容量を測定できないという難点があった。そこで主電極の周囲に電極、いわゆるガード電極を設けて、主電極と同様に交流電源を印加して、主電極の端部における電気力線の湾曲を修正するようにして測定することが知られている。
【0005】
そして被測定物の隙間を測定するために測定子を平板状として、測定子の裏表各面の近傍位置に主電極を配置すると、印加した交流電流の相互干渉によって測定が不安定になるという課題があった。
【0006】
また上記の相互干渉を抑制するために主電極、ガード電極及びシールドそれぞれから引き出し線を独立に構成すると、例えば6層を超えるようなプリント配線板を用いることになって内部層間にビアホールを形成する必要が生じ、コスト面で課題があった。また多層化によって測定子の厚みは大きくなってしまい、測定できる最小隙間は大きくなることから狭い隙間の被測定物の測定が困難となっていた。
【0007】
このような問題に鑑みて本発明は、狭い隙間を有する被測定物を安定して測定できる隙間測定装置及びその測定子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測定子は、上記の目的を達成するために、
導電性の被測定物の隙間の距離を測定する隙間測定装置の測定出力部に接続して使用される測定子であって、
測定子の片面側には、第1の電極と、第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第3の電極と、が配置され、
測定子の反対面側には、第2の電極と、第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第4の電極と、が配置され、
当該囲うようにして設けられた第3の電極、及び、当該囲うようにして設けられた第4の電極は、それぞれ個別に測定出力部に接続され、
第3の電極は、第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
第4の電極は、第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
第1の電極と第3の電極とが第1の平面を有して設けられ、
第2の電極と第4の電極とが第2の平面を有して設けられ、
第3の電極の非包囲電極は、第2の電極を第1の平面に投影した領域を内包するように設けられ、
第4の電極の非包囲電極は、第1の電極を前記第2の平面に投影した領域を内包するように設けられ、
測定出力部は、
正弦波を発生させる正弦波発生回路を含んで、第1の電極、囲うようにして設けられた第3の電極、第2の電極及び囲うようにして設けられた第4の電極へ正弦波を基にした交流電流を印加する交流電流発生手段と、
囲うようにして設けられた第3の電極及び囲うようにして設けられた第4の電極と交流電流発生手段との間に挿入されて、第1の電極と囲うようにして設けられた第3の電極、第2の電極と囲うようにして設けられた第4の電極をそれぞれ交流的に同電位にするインピーダンス変換器と、
囲うようにして設けられた第3の電極及び囲うようにして設けられた第4の電極の電圧値をそれぞれ測定して出力する電圧測定手段と、を備え、
交流電流発生手段は、
第2の電極及び囲うようにして設けられた第4の電極へは正弦波の位相をシフトし、移相済正弦波として出力する移相回路を含み、
測定出力部は、
電圧測定手段からそれぞれ出力される各電圧値を基に演算して被測定物の隙間距離を測定するように構成されている。
【0009】
本発明の測定子は、上記の目的を達成するために、
電圧測定手段は、
囲うようにして設けられた第4の電極の電圧信号と、正弦波発生回路から取り出した正弦波を基にした信号と、を乗算する第1の乗算器と、
囲うようにして設けられた第3の電極の電圧信号と、移相回路から取り出した移相済正弦波を基にした信号と、を乗算する第2の乗算器と、
第1の乗算器及び第2の乗算器からの出力をそれぞれ直流信号に変換するローパスフィルタと、を備えて構成されている。
【0010】
請求項3に記載の測定子は、上記の目的を達成するために、
移相回路による位相のシフトが、プラス90度若しくはマイナス90度で構成されている。
【0012】
請求項5に記載の測定子は、上記の目的を達成するために、
第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極がプリント配線パターンにて形成され、
第1の電極と第3の電極が測定子の導体表面層である第1層に設けられ、
第2の電極と第4の電極が測定子の第1層の反対面の導体表面層である第2層に設けられ、
第1の電極から引き出された第1の配線と、第2の電極から引き出された第2の配線がそれぞれスルーホールを経由して第1層と第2層の中間にある中間層に設けられて構成されている。
【0013】
本発明の測定子は、上記の目的を達成するために、
中間層の第1の配線が、第3の電極の包囲電極に繋がった第3の配線と離間して周囲を囲まれ、第1層の第3の電極の包囲電極及び第2層の第4の電極の非包囲電極に挟まれるように配置され、
中間層の第2の配線が、第4の電極の包囲電極に繋がった第4の配線と離間して周囲を囲まれ、第1層の第3の電極の非包囲電極及び第2層の第4の電極の包囲電極に挟まれるように配置され、
第1層の第3の電極、第2層の第4の電極、中間層の第3の配線及び第4の配線が、被測定物と電気的に繋がっている第5の配線にて離間してそれぞれ周囲を囲まれて構成されている。
【0014】
請求項7に記載の測定子は、上記の目的を達成するために、
中間層が単一層で構成されている。
【0015】
本発明の測定子は、上記の目的を達成するために、
第1の電極の第1の平面と、第2の電極の第2の平面とが、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリエーテルエーテルケトンケトンの少なくとも1つを含む誘電体にて被覆されて構成されている。
本発明の測定子は、上記の目的を達成するために、
導電性の被測定物の隙間の距離を測定する隙間測定装置の測定出力部に接続して使用される測定子であって、
測定子の片面側には、第1の電極と、第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第3の電極と、が配置され、
測定子の反対面側には、第2の電極と、第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた第4の電極と、が配置され、
当該囲うようにして設けられた第3の電極、及び、当該囲うようにして設けられた第4の電極は、それぞれ個別に前記測定出力部に接続されて構成され、
第3の電極は、第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、第1の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
第4の電極は、第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極である包囲電極に加えて、第2の電極の近傍に離間して囲うように設けられた電極とは異なる非包囲電極を含み、
第1の電極と第3の電極とが第1の平面を有して設けられ、
第2の電極と第4の電極とが第2の平面を有して設けられ、
第3の電極の非包囲電極は、第2の電極を第1の平面に投影した領域を内包するように設けられ、
第4の電極の非包囲電極は、第1の電極を前記第2の平面に投影した領域を内包するように設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る隙間測定装置における測定出力部と測定子を接続した際の平面模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る隙間測定装置における測定出力部と測定子を使用して被測定物の隙間を測定する際の模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る隙間測定装置の測定子の先端部分を各層毎に示した斜視構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る隙間測定装置における測定子のAA断面模式図と測定出力部の電気回路のブロック図を合わせて示した図である。
図5】本発明の実施形態に係る隙間測定装置における測定子の模式図と測定出力部の電気回路図を合わせて示した図である。
図6】本発明の実施形態に係る隙間測定装置と被測定物間の静電容量の構成を示す模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る隙間測定装置による測定に係る各信号の波形を示した図である。
図8】本発明の実施形態に係る隙間測定装置による測定に係る各信号の波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る隙間測定装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1は本発明の実施形態に係る隙間測定装置1であって、測定出力部2に、被測定物の隙間に挿入して用いる測定子3を接続した際の平面模式図である。
【0018】
隙間測定装置1は、箱型の測定出力部2と平板状の測定子3で構成されている。
【0019】
測定出力部2は、測定者が手に持って可搬できる箱型形状であり、その表面には電源スイッチ、測定操作を行う釦、測定値等を表示する表示部を有して、内部には電源と後述の電気回路及び電気部品が配置されている。
【0020】
測定子3は、平板状のプリント配線板の構造を有し、測定出力部2に設けられたコネクタに係合する挿抜可能な接点端子部を有している。したがって隙間測定装置1は、測定子3の折れなどの損傷や劣化時には測定子3を交換して測定を行うことができる。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係る隙間測定装置1における測定出力部2と測定子3を使用して被測定物の隙間を測定する際の模式的に表した図である。
【0022】
被測定物100a、被測定物100bは、導電性の金属であって、その隙間距離がDである。そして被測定物100aと被測定物100bは、測定出力部2とグランドライン8で繋がれている。被測定物100aと被測定物100bは、一体のもので構成されてあっても良い。被測定物100aと被測定物100bは別体で構成されたものでも良いが、その時は互いにグランドライン8で導通されている。
【0023】
被測定物100aと被測定物100bの隙間の実際の測定は、グランドライン8を測定出力部2に繋いだ状態で、測定子3を被測定物100aと被測定物100bの隙間に挿入し、測定出力部2の測定指示釦を押すことで行うことができる。
【0024】
図3は本発明の実施形態に係る隙間測定装置1の測定子3の先端部分を各層毎に示した斜視構成図である。本実施形態では測定子3は3層の銅箔の導体パターンを有するプリント配線板である。プリント配線パターンの各導体パターンは、積層した銅箔をエッチングして形成したものであって通常の多層積層プリント配線板の製造方法で製造が可能なものである。
【0025】
図3(L1)は測定子3の片面側の導体表面層である第1層にある導体パターンを示している。主電極をなす円形の第1の電極4が、測定子3の先端部中央に配置されていて、この第1の電極4の上面側、例えば図2において被測定物100aに対向する片側面が第1の平面31である。
【0026】
そしてガード電極をなす第3の電極6aが、第1の電極4近傍に離間して周囲を囲むリング状のパターンで設けられていて、この第3の電極6aの上面側、すなわち被測定物100aに対向する面も同一の第1の平面31である。第1の電極4と第3の電極6aは同じ導体箔から形成されるので同じ平面を有している。さらに第5の配線27が、この第3の電極6a近傍に離間して周囲を囲むリング状のパターンにて、被測定物100a、100b及びグランドライン8と繋がって設けられている。
【0027】
さらに第3の電極6bが、この第5の配線27近傍に離間して周囲を囲むリング状のパターンで設けられている。そして再度さらに第5の配線27が、この第3の電極6b近傍に離間して周囲を囲むリング状及び配線のパターンで設けられている。
【0028】
また第3の電極6a、6bは、測定子3の先端部から測定出力部2に接続されるように配線で構成された延伸部を有している。
【0029】
図3(M)は測定子3の内層である中間層にある導体パターンを示していて、この中間層は単一層である。第1の配線23が、第1の電極4から非貫通スルーホール21aを経由して接続され、第1の配線23は測定出力部2に接続されるように設けられている。
【0030】
第3の配線25が、第1の配線23近傍に囲むように設けられている。第3の配線25は貫通スルーホール22aにて第1層の第3の電極6aと接続されている。さらに第5の配線27が、第3の配線25近傍に周囲を囲むように設けられ、第5の配線27は第1層にある第5の配線27と同じ位置で、かつ同じ形状である。
【0031】
図3(L2)は測定子3の反対面側の導体表面層となっている第2層にある導体パターンを示している。第4の電極7aが、第1層にある第3の電極6aの外周と同じ寸法の円弧を外周として設けられている。この第4の電極7aの下面側、すなわち被測定物100bに対向する反対面が、第1の平面31に平行な第2の平面32である。したがって第4の電極7aは、第1層の第1の電極4を第2の平面32に投影した領域を内包するように設けられている。
【0032】
第4の電極7aの形状は円とそこから引き出される配線延伸部を有した形状である。そして貫通スルーホール22aによって第1層の第3の電極6a及び中間層の第2の配線24と接続されている。
【0033】
また第5の配線27が、第4の電極7a近傍に囲むように設けられている。この第5の配線27は第1層の第5の配線27と相対的に同一位置で同一形状であって、貫通スルーホール22cによって接続されている。
【0034】
さらに第4の電極7bが、第5の配線27近傍に離間して囲むように設けられている。第4の電極7bは第4の電極7cと円弧の両端部で繋がっていて、半径方向において円弧状の中抜きした部分を有している。第4の電極7cの円弧の端部付近には貫通スルーホール22bが設けられ、第1層の第3の電極6bに接続されている。
【0035】
そして主電極である第2の電極5が、第4の電極7bと第4の電極7cに挟み込まれるように設けられている。本実施形態では第2の電極5は円弧状のパターンであってその面積は第1層にある第1の電極4の面積と等しくなるように設けられているが、これに限るものではない。第1の電極4の面積と第2の電極5の面積とを同じにすることで、後述のように計算は簡素化される。また第1層の第3の電極6bは、この第2の電極5を第1の平面31に投影した領域を内包するように設けられている。
【0036】
図3(M)に戻って、中間層には第2の配線24があって、第2の配線24は非貫通スルーホール21bを経由して第2層の第2の電極5に接続されている。そして第4の配線26が、この第2の配線24近傍に囲むように配置されている。この第4の配線26は、第1層にある第3の電極6b及び第2層にある第4の電極7cと貫通スルーホール22bで接続されている。またこの第4の配線26も第5の配線27によって周囲を囲まれている。
【0037】
一方、中間層の第1の配線23は、第1層の第3の電極6aの延伸部と第2層の第4の電極7aの延伸部にて両面を覆われている。また中間層の第2の配線24は、第1層の第3の電極6bの延伸部と第2層の第4の電極7b、7cの延伸部にて両面を覆われている。
【0038】
図4は本発明の実施形態に係る隙間測定装置1の、図1における測定子3のAA断面の模式図である。
【0039】
対向している被測定物100aと被測定物100bが一体の金属で電気的に導通となっている場合には不要であるが、もし被測定物100aと被測定物100bが別体の部材である場合には両者をグランドライン8にて導通させておく。そして被測定物100a及び被測定物100bのいずれかからグランドライン8を引き出した配線が、測定出力部2のグランドを介して測定子3の第5の配線27へ繋がっている。
【0040】
測定子3の、第1の平面31側と第2の平面32側には誘電体9が設けられていて、の第1の電極4や、第2の電極5等を被覆して保護層を形成して外部環境から保護している。誘電体9は例えば、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリエーテルエーテルケトンケトンの少なくとも1つである。誘電体9はフィルムをラミネート若しくは対象の液体をスピンコートで塗布するなどの手法で形成される。したがって誘電体9の厚みは保護層の形成の工程によって非常に正確に規定することができて後述の計算を容易にする。
【0041】
また第1の平面31と第2の平面32の距離がtであって、第1の電極4と第2の電極5と中間層の厚みの総和である。
【0042】
図5は本発明の実施形態に係る隙間測定装置における測定子の模式図と測定出力部の電気回路のブロック図を合わせて示した図である。
【0043】
正弦波発生回路10は、測定出力部2の内部のグランドにその一端が繋がっていて、発振器を有して正弦波を発生させる。正弦波発生回路10の出力は定電流化回路12aによって定電流化され、第1の電極4に繋がっている。そして正弦波発生回路10の出力は途中で分岐されて、移相回路11を通って移相済正弦波となり、さらに定電流化回路12bによって定電流化され、第2の電極5に繋がっている。移相回路11は、正弦波発生回路10から出力された正弦波の位相をプラス側若しくはマイナス側へシフトするものであある。
【0044】
定電流化回路12aからの出力は途中で分岐されて、一方は第1の電極4に繋がり、もう一方はインピーダンス変換器13aを経由して第3の電極6aと第4の電極7aに繋がっている。さらに定電流化回路12bからの出力は途中で分岐されて、一方は第2の電極5に繋がり、もう一方はインピーダンス変換器13bを経由して第4の電極7b、7cと第3の電極6bに繋がっている。インピーダンス変換器13a及びインピーダンス変換器13bによって、第1の電極4と第3の電極6a、第2の電極5と第4の電極7b、7cは交流的に同電位になるので、第1の電極4から第3の電極6a、第2の電極5から第4の電極7b、7cへ電流が流れることがなく、第1の電極4と第3の電極6a間及び第2の電極5と第4の電極7b、7c間の静電容量の影響をキャンセルすることができる。本発明ではインピーダンス変換器13a及びインピーダンス変換器13bはバッファーアンプを用いている。
【0045】
そしてグランドライン8と繋がった測定出力部2の内部のグランドは、測定子3内の第3の配線25に繋がっている。
【0046】
電圧測定手段14aは、インピーダンス変換器13aの電圧出力に繋がり、第3の電極6aの電圧を測定して出力する。また電圧測定手段14bは、インピーダンス変換器13bの出力に繋がり、第4の電極7b、7cの電圧を測定して出力する。電圧測定手段14a、14bはいずれもガード電極側の電圧を測定するようにしており、前述の通り主電極とガード電極の交流的な電位は同じであって、ガード電極側の方が主電極よりインピーダンスが低い回路構成となっており、外乱の影響を受けにくく、安定に測定をすることができる。
【0047】
電圧測定手段14aは、バンドパスフィルタ15a、増幅器16a、第1の乗算器17a、ローパスフィルタ19aを直列に配置したものを含んでいる。バンドパスフィルタ15aは、インピーダンス変換器13aの電圧出力に繋がってノイズを除去し、次いで増幅器16aは電圧信号を増幅する。さらに第1の乗算器17aは、増幅された電圧信号と、移相回路11にて移相された移相済正弦波Refを取り出して方形波変換器18aにて方形波に変換したものと、を乗算して出力する。そしてローパスフィルタ19aによって電圧値を直流信号にて出力する。なお方形波変換器18aは後述の計算を容易にするために設けられているのであって、必ずしも必要ではない。
【0048】
電圧測定手段14bは、バンドパスフィルタ15b、増幅器16b、第2の乗算器17b、ローパスフィルタ19bを直列に配置したものを含んでいる。バンドパスフィルタ15bは、インピーダンス変換器13bの電圧出力に繋がってノイズを除去し、次いで増幅器16bは電圧信号を増幅する。さらに第2の乗算器17bは、増幅された電圧信号と、移相回路11にて移相していない元の正弦波Refを取り出して方形波変換器18bにて方形波に変換したものと、を乗算して出力する。そしてローパスフィルタ19bによって電圧値を直流信号にて出力する。なお方形波変換器18bも後述の計算を容易にするために設けられているのであって、必ずしも必要ではない。
【0049】
ここで図3図4及び図5により以下のことが判る。第1の電極4は、同一層内では周囲を第3の電極6aにて囲まれると同時に、測定子3の内部側においては第4の電極7aによって囲まれる。一方第2の電極5の周囲は、同一層内では周囲を第4の電極7b、7cにて囲まれると同時に、測定子3の内部側においては第3の電極6bによって囲まれる。第3の電極6a、6b、第4の電極7a、7b、7cはいわゆるガード電極であって、測定電極である第1の電極4及び第2の電極5の端部の電気力線を整える役割を成している。そしてガード電極の周囲にはさらにグランドライン8と繋がった第3の配線25が配置されていて、ノイズの影響を低減する役目をなしている。
【0050】
そして第1の電極4から引き出された第1の配線23は、同一層内では周囲を第3の配線25、面方向を第1層の第3の電極6aの延伸部と第2層の第4の電極7aの延伸部とで囲まれている。第2の電極5から引き出された第2の配線24は、同一層内では周囲を第4の配線26、面方向を第1層の第3の電極6bの延伸部と第2層の第4の電極7b、7cの延伸部とで囲まれている。ゆえに測定子内部における静電容量が、測定子3と被測定物100a、100bとの隙間の静電容量に影響を与えないように、ガード電極が設けられている。
【0051】
この構成で、交流電流発生手段20により交流電流を発生させて第1の電極4と第2の電極5に印加し、電圧測定手段14aと電圧測定手段14bからの電圧値の出力を得て、次に説明する計算式を用いて演算することで、被測定物100aと被測定物100bの隙間距離Dが測定できる。
【0052】
図6は本発明の実施形態に係る隙間測定装置と被測定物間の静電容量の構成を示す模式図である。
【0053】
第1の電極4と被測定物100a間の静電容量Cの成分は、第1の平面31側では測定子3の表面にある厚みtの誘電体9の静電容量CS1と、誘電体9と被測定物100a間の距離dの静電容量C01との直列の合成容量である。一方測定子3内部においては、第1の電極4と、グランドライン8に繋がった第3の配線25と、の静電容量Ci1はゼロとなるように構成されている。同様に、第2の電極5と被測定物100b間の静電容量Cの成分は、第2の平面32側では測定子3の表面にある厚みtの誘電体9の静電容量CS2と、誘電体9と被測定物100b間の距離dの静電容量C02との直列の合成容量である。一方測定子3内部においては、第2の電極5と、グランドライン8に繋がった第3の配線25と、の静電容量Ci2も同様にゼロとなるように構成されている。
【0054】
したがって第1の電極4と被測定物100a間の静電容量Cは次の式で表すことができる。
【数1】
また第2の電極5と被測定物100b間の静電容量Cは次の式で表すことができる。
【数2】
【0055】
第1の電極4の第1の平面31上の面積をA、測定子3の表面にある厚みt及び厚みtの誘電体9の比誘電率をεs(既知)とすると、第2の電極5の第2の平面32上の面積もAであって、各静電容量は次の式で表すことができる。なおεは真空誘電率である。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0056】
図7は本発明の実施形態に係る隙間測定装置による測定に係る各信号の波形を示した図である。以下に本発明の隙間測定装置を用いて被測定物の隙間が測定できることについての詳細を示す。
【0057】
図7(a)は正弦波発生回路10から出力された正弦波Refである。一方図7(b)は正弦波発生回路10から出力された正弦波Refの位相を移相回路11にて90度遅れて出力した移相済正弦波Refを示している。
【0058】
したがって図7(c)は定電流化回路12aから出力された電流Iの波形である。一方図7(g)は定電流化回路12bから出力された電流Iの波形であって、Iに対して90度遅れた位相となっている。なお本実施形態ではIとの絶対値とIの絶対値は等しくなるように定電流化回路12aと定電流化回路12bは設定されている。
【0059】
上述の静電容量成分により、第3の電極6a側の電圧vは電流Iに対して90度遅れるので、電圧測定手段14aに入力される電圧vは式(7)で表される。なおωは角周波数である。
【数7】
式(7)に式(3)と式(5)を代入して整理すると、電圧vは式(8)及び図7(d)で表される
【数8】
【0060】
次に、電圧測定手段14aの第1の乗算器17aに入力される方形波変換器18aからの出力vr2は式(9)及び図7(e)で表される。
【数9】
【0061】
したがって、第1の乗算器17aでこのvとvr2を乗算した結果の出力Vは式(10)及び図7(f)で表される。
【数10】
【0062】
一方、第4の電極7b、7c側の電圧vは、電流Iに対して90度遅れるので電流Iに対して総計で180度遅れる。したがって電圧測定手段14bに入力される電圧vは式(11)及び図7(h)で示される。
【数11】
そして上述のようにIとの絶対値とIの絶対値は等しくなるように設定していることから式(11)は式(12)と表される。
【数12】
【0063】
一方電圧測定手段14bの第2の乗算器17bに入力される方形波変換器18bからの出力vr1は式(13)及び図7(i)で表される。
【数13】
【0064】
第2の乗算器17bでこのv2とvr1を乗算した結果の出力V2は式(14)及び図7(j)で表される。
【数14】
【0065】
図8に移相回路11によってIを90度進ませた場合の測定に係る各信号のタイミングを示す。計算の方法は上述と同じであり、結果としてVはマイナス側(図8(f)参照)、Vはプラス側(図8(j)参照)に出力される。よって位相のシフトはプラス90度でもマイナス90度でも構わないことが判る。
【0066】
次いでV、Vは、ローパスフィルタ19a、19bによってそれぞれ直流信号のVa、Vbにて出力され、これが電圧測定手段14a、14bからの電圧値出力となる。
【0067】
ここでt、t、tは既知であることから、隙間距離Dは式(15)によって求めることができる。
【数15】
なお隙間距離Dが既知の被測定物を予め用意して較正を行えば、t、t、tが既知でない場合であっても測定は可能となる。
【0068】
本発明の実施形態によれば、測定子の上面に配置した測定用電極に対して下面に配置した測定用電極は移相された交流電流が印加されている。そしてたとえ第3の電極6aの電圧vの成分などが第2の乗算器17bへ入って来たとしても(図7(k)参照)、方形波変換器18bからの出力vr1を用いて乗算しているため(図7(l)参照)、出力成分は図7(m)に示すような状態となってプラス成分とマイナス成分が同じく表れることから、これを打ち消すことができる。
【0069】
また測定用の主電極はガード電極とグランドで周囲を囲まれた形状で設けられていることから、少ない層数の測定子によって被測定物の隙間を測定することが可能となっている。測定子の層数を少なくすることで、コストを低減できるとともに、薄い測定子を実現できることから狭い隙間の被測定物を測定も可能にしている。例えば、プリント配線板のベース及び保護の誘電体に12.5μmの厚みのポリイミドフィルムを用いて、12μm厚みの導体銅箔でスルーホールを形成すると、総厚みが0.15mmより小さい測定子が実現できる。
【0070】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例として、産業機械の金属部材の隙間などを測定する隙間測定装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 :隙間測定装置
2 :測定出力部
3 :測定子
4 :第1の電極(主電極)
5 :第2の電極(主電極)
6a、6b :第3の電極(ガード電極)
7a、7b、7c :第4の電極(ガード電極)
8 :グランドライン
9 :誘電体
10 :正弦波発生回路
11 :移相回路
12a、12b :定電流化回路
13a、13b :インピーダンス変換器(バッファーアンプ)
14a、14b :電圧測定手段
15a、15b :バンドパスフィルタ
16a、16b :増幅器
17a :第1の乗算器
17b :第2の乗算器
18a、18b :方形波変換器
19a、19b :ローパスフィルタ
20 :交流電流発生手段
21a、21b :非貫通スルーホール
22a、22b、22c :貫通スルーホール
23 :第1の配線(主ライン)
24 :第2の配線(主ライン)
25 :第3の配線(ガードライン)
26 :第4の配線(ガードライン)
27 :第5の配線(グランドライン)
31 :第1の平面
32 :第2の平面
100a、100b :被測定物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8