(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】廃水処理装置及び廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/62 20230101AFI20221226BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20221226BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20221226BHJP
【FI】
C02F1/62 Z
C02F3/06
C02F1/52 K
(21)【出願番号】P 2018097776
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】393012323
【氏名又は名称】壽環境機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】川上 直也
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-080740(JP,A)
【文献】特開2011-031164(JP,A)
【文献】特開2003-047971(JP,A)
【文献】特開2014-028342(JP,A)
【文献】特開2005-152777(JP,A)
【文献】特開昭63-158195(JP,A)
【文献】特開平07-108288(JP,A)
【文献】特開2015-163389(JP,A)
【文献】特開2007-029826(JP,A)
【文献】特開2013-138976(JP,A)
【文献】特開昭63-236592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/64
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属、及び前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を含む廃水を処理する廃水処理装置であって、
前記廃水
に含まれる錯体形成化合物を微生物で
分解する微生物処理槽と、
前記微生物で処理された廃水中に含まれる前記重金属を、アルカリ及び凝集剤により金属水酸化物凝集体として不溶化させる不溶化処理槽と、
前記不溶化処理槽で処理された廃水
に含まれる錯体形成化合物を微生物で再度
分解する再微生物処理槽と
を備え、
前記微生物は、バチルス属に属する微生物であり、
前記微生物処理槽は、前記微生物を保持し、前記微生物と前記廃水とを接触させる接触材を有し、
前記接触材は、チューブ状、繊維状、網状、平板状、又は、ボール状の形状を有し、
前記再微生物処理槽は、前記微生物を保持したろ過膜を有する、廃水処理装置。
【請求項2】
前記微生物処理槽に空気を供給するポンプを更に備え、
前記微生物は、好気性微生物である、請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記不溶化処理槽は、不溶化した前記金属水酸化物凝集体を沈殿させる沈殿槽を兼ねている、請求項1又は請求項2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
不溶化した前記金属水酸化物凝集体を沈殿させる沈殿槽を更に備える、請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記微生物処理槽は、接触材に保持された前記微生物と前記廃水とを接触させる接触酸化槽である、請求項1~4の何れか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記不溶化処理槽で処理された廃水を酸により中和する中和槽を更に備える、請求項1~5の何れか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項7】
前記微生物処理槽で処理する前の廃水のpHを調整するpH調整槽を更に備える、請求項1~6の何れか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項8】
前記アルカリは、水酸化ナトリウムを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項9】
前記凝集剤は、ポリ硫酸第二鉄を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
重金属、及び前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を含む廃水を処理する廃水処理方法であって、
前記廃水
に含まれる錯体形成化合物を微生物で
分解する微生物処理工程と、
前記微生物で処理された廃水中に含まれる前記重金属を、アルカリ及び凝集剤により金属水酸化物凝集体として不溶化させる不溶化処理工程と、
前記不溶化処理工程で処理された廃水
に含まれる錯体形成化合物を微生物で再度
分解する再微生物処理工程と
を備え、
前記微生物は、バチルス属に属する微生物であり、
前記微生物処理工程では、前記微生物を保持し、前記微生物と前記廃水とを接触させる接触材を用いて前記廃水を処理し、
前記接触材は、チューブ状、繊維状、網状、平板状、又は、ボール状の形状を有し、
前記再微生物処理工程では、前記微生物を保持したろ過膜を用いて前記廃水を再度処理する、廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無電解ニッケルめっき等の無電解めっきが広く行われている。無電解めっきは、還元剤の還元作用を利用して金属を析出させるめっき方法である。この方法によれば、不導体の物質に対してもめっきが可能である。
【0003】
無電解めっき工程で使用される無電解めっき液にはニッケル等の重金属が含まれているため、無電解めっき工程後の廃水にも重金属が含まれている。この廃水を公共水域等へ放流する際は、廃水中の重金属の濃度を十分に低減した後、放流することが法律上要求されている。廃水中の重金属の濃度を低減する方法としては、廃水にアルカリを添加して重金属を金属水酸化物として不溶化させた後、不溶化物を膜分離処理することによって固液分離する方法が提案されている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で廃水を処理しても、廃水中の重金属の濃度を十分に低減することが困難となる場合があった。
【0006】
これは、無電解ニッケルめっき液等の無電解めっき液においては、めっき液中に重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物(以下、錯体形成化合物と記載する場合がある。)が含まれていることが一因と考えられる。つまり、アルカリを添加して重金属を金属水酸化物として不溶化させる際、廃水中に錯体形成化合物が含まれていると、ニッケル等の重金属が錯体形成化合物と金属錯体を形成し、廃水中に溶解する。その結果、アルカリによる重金属の水酸化物化が妨げられるため、廃水中の重金属の濃度を十分に低減することが困難となるものと考えられる。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、重金属及び錯体形成化合物を含む廃水中の重金属の濃度を十分に低減できる廃水処理装置と、廃水処理方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る廃水処理装置は、重金属、及び前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を含む廃水を処理する廃水処理装置である。本発明に係る廃水処理装置は、前記廃水を微生物で処理する微生物処理槽と、前記微生物で処理された廃水中に含まれる前記重金属を、アルカリ及び凝集剤により金属水酸化物凝集体として不溶化させる不溶化処理槽とを備える。
【0009】
ある実施形態では、前記不溶化処理槽は、不溶化した前記金属水酸化物凝集体を沈殿させる沈殿槽を兼ねている。
【0010】
ある実施形態では、不溶化した前記金属水酸化物凝集体を沈殿させる沈殿槽を更に備える。
【0011】
ある実施形態では、前記微生物処理槽は、接触材に保持された前記微生物と前記廃水とを接触させる接触酸化槽である。
【0012】
ある実施形態では、前記不溶化処理槽で処理された廃水を酸により中和する中和槽を更に備える。
【0013】
ある実施形態では、前記不溶化処理槽で処理された廃水を微生物で再度処理する再微生物処理槽を更に備える。
【0014】
ある実施形態では、前記微生物処理槽で処理する前の廃水のpHを調整するpH調整槽を更に備える。
【0015】
ある実施形態では、前記アルカリは、水酸化ナトリウムを含む。
【0016】
ある実施形態では、前記凝集剤は、ポリ硫酸第二鉄を含む。
【0017】
本発明に係る廃水処理方法は、重金属、及び前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を含む廃水を処理する廃水処理方法である。本発明に係る廃水処理方法は、前記廃水を微生物で処理する微生物処理工程と、前記微生物で処理された廃水中に含まれる前記重金属を、アルカリ及び凝集剤により金属水酸化物凝集体として不溶化させる不溶化処理工程とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の廃水処理装置及び廃水処理方法によれば、重金属及び錯体形成化合物を含む廃水中の重金属の濃度を十分に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る廃水処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る廃水処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る廃水処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る廃水処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、「微生物」とは、細菌、放線菌、菌類、藻類、地衣類、原生動物等の微細な生物のうち、廃水中の錯体形成化合物を分解できる生物を指す。「凝集剤」とは、廃水中に分散している粒子を集合させ、沈殿を促進するために用いられる薬剤を指す。「接触酸化法」とは、処理槽内において接触材に保持された微生物と廃水とを接触させることにより廃水を処理する方法を指す。また、「接触酸化槽」とは、接触酸化法に使用される処理槽を指す。
【0021】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る廃水処理装置について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、第一実施形態に係る廃水処理装置10の構成を示すブロック図である。
【0022】
廃水処理装置10は、微生物処理槽2と、不溶化処理槽4と、中和槽6と、貯留槽8とを備える。微生物処理槽2では、重金属及び錯体形成化合物を含む廃水を微生物で処理する。不溶化処理槽4では、微生物で処理された廃水中に含まれる重金属を、アルカリ及び凝集剤により金属水酸化物凝集体として不溶化させる。中和槽6では、不溶化処理槽4で処理された廃水を酸により中和する。貯留槽8では、不溶化処理槽4において不溶化された金属水酸化物凝集体を含む不溶化物を貯留する。
【0023】
また、微生物処理槽2には、廃水を導入するための導入管1Aが設けられている。不溶化処理槽4には、アルカリ及び凝集剤を供給するための供給管1Eが設けられている。中和槽6には、処理水を排出(放流)するための排出管1Dと、酸を供給するための供給管1Fとが設けられている。微生物処理槽2と不溶化処理槽4とは、配管1Bを介して連結されている。不溶化処理槽4と中和槽6とは、配管1Cを介して連結されている。不溶化処理槽4と貯留槽8とは、配管1Gを介して連結されている。
【0024】
廃水処理装置10では、微生物処理槽2において廃水を微生物で処理した後、不溶化処理槽4において廃水中の重金属を不溶化する。廃水を微生物で処理することにより、重金属の水酸化物化を妨げる錯体形成化合物を分解できる。これにより、不溶化処理槽4において重金属の水酸化物化が容易となる。また、不溶化処理槽4においてアルカリと凝集剤とを併用するため、水酸化物化した重金属の粒子(金属水酸化物粒子)の凝集径を大きくすることができる。これにより、廃水中の金属水酸化物凝集体の分離が容易となる。よって、廃水処理装置10によれば、廃水中の重金属の濃度を十分に低減できる。
【0025】
廃水処理装置10の処理対象となる廃水は、例えばめっき工場等から発生した廃水であり、重金属及び錯体形成化合物を含む。重金属としては、例えばクロム、銅、亜鉛、カドミウム、ニッケル、スズ、水銀、鉛、鉄、マンガン等が挙げられる。これらの重金属は廃水に単独で含まれていてもよいが、通常は複数の重金属が混合された状態で廃水に含まれている。
【0026】
錯体形成化合物としては、例えば有機酸(より具体的には、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸等)又はこれらの塩;シアン化物;アミン類(より具体的には、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、アンモニウム塩等);キレート剤(より具体的には、エチレンジアミン四酢酸等)が挙げられる。
【0027】
なお、廃水中には、重金属及び錯体形成化合物の他に、洗浄成分、界面活性剤等が含まれていてもよい。
【0028】
微生物処理槽2は、廃水を接触酸化法により処理する接触酸化槽である。微生物処理槽2内では、接触材9に保持された微生物と廃水とを接触させることにより廃水を処理する。接触酸化法によれば、廃水の流入量が変動しても安定した処理が可能であるため、運転管理が容易となる。なお、微生物として好気性微生物を用いる場合は、図示しないエアポンプを用いて微生物処理槽2内に空気(酸素)を供給しながら処理することが好ましい。
【0029】
接触材9としては、特に限定されないが、例えばチューブ状、繊維状、網状、平板状、ボール状等の形状を有する樹脂製の接触材が挙げられる。本実施形態では、1種又は2種以上の接触材9を使用することができる。
【0030】
微生物としては、錯体形成化合物を分解できるものである限り特に限定されないが、例えばロドコッカス属、バチルス属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属、アシネトバクター属等に属する微生物が挙げられる。本実施形態では、1種又は2種以上の微生物を使用することができる。中でも、錯体形成化合物の分解性向上の観点から、バチルス属に属する微生物が好ましい。
【0031】
バチルス属に属する微生物としては、例えばバチルス エディタビダス(Bacillus editabidus)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス スファエリカス(Bacillus sphaericus)等が挙げられる。
【0032】
接触材9の量及び微生物の量は、処理する廃水中の錯体形成化合物の量に応じて適宜設定することができる。
【0033】
微生物処理槽2には、微生物の活性を維持するために、必要により適当量の栄養源を投与してもよい。栄養源としては、例えば有機栄養源及び無機栄養源が挙げられる。有機栄養源としては、例えばポリペプトン、酵母エキス、肉エキス、尿素、糖蜜等が挙げられる。無機栄養源としては、例えばリン酸、リン酸塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
【0034】
なお、本実施形態では微生物処理槽2の微生物処理方法として接触酸化法を採用したが、微生物処理方法として、接触酸化法以外の生物膜法、活性汚泥法等の処理方法を採用してもよい。
【0035】
不溶化処理槽4では、微生物処理槽2において処理された廃水中の重金属が、アルカリ及び凝集剤により金属水酸化物凝集体として不溶化する。
【0036】
アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。本実施形態では、1種又は2種以上のアルカリを使用できる。中でも、スラッジの生成量が少ない上、pH調整が容易な水酸化ナトリウムが好ましい。
【0037】
凝集剤としては、例えばポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等が挙げられる。本実施形態では、1種又は2種以上の凝集剤を使用できる。中でも、金属水酸化物粒子の凝集性を向上させる観点から、ポリ硫酸第二鉄が好ましい。本実施形態では、これらの凝集剤に加え、必要に応じて凝集助剤を不溶化処理槽4に添加することができる。凝集助剤としては、例えば、ポリアクリルアミド誘導体、懸濁物質(例えばカオリン)等が挙げられる。
【0038】
アルカリの添加量は、廃水中の重金属を水酸化物化できる量であれば特に限定されないが、不溶化処理槽4内の廃水のpHが8.0以上12.0以下となる範囲に制御できる量であることが好ましい。凝集剤の添加量は、処理する廃水中の重金属の量に応じて適宜設定することができる。
【0039】
なお、アルカリと凝集剤とを廃水に添加する際、添加する順番は特に限定されない。
【0040】
本実施形態では、不溶化処理槽4が、不溶化した金属水酸化物凝集体を沈殿させる沈殿槽を兼ねている。金属水酸化物凝集体は自重により沈降するため、不溶化処理槽4(沈殿槽)で処理された廃水は、上澄み液と、金属水酸化物凝集体を含む不溶化物とに分離する。上述したように、本実施形態では、アルカリと凝集剤とを併用するため、金属水酸化物粒子の凝集径を大きくすることができる。よって、生成した金属水酸化物凝集体は、沈殿により容易に分離することができる。なお、沈殿を促進させるため、不溶化処理槽4(沈殿槽)内に傾斜板等を備えた沈殿装置を挿入してもよい。
【0041】
中和槽6では、不溶化処理槽4(沈殿槽)内において得られた上澄み液が、酸により中和される。酸としては、特に限定されず、例えば硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。本実施形態では、1種又は2種以上の酸を使用することができる。この中和槽6において、上澄み液が、例えば放流基準を満たすpHに調整された後、処理水として放流される。なお、不溶化処理槽4において不溶化された金属水酸化物凝集体を含む不溶化物は、貯留槽8に貯留される。
【0042】
次に、第一実施形態に係る廃水処理装置10を用いた廃水処理方法について、引き続き
図1を参照しながら説明する。
【0043】
まず、廃水を導入管1Aから微生物処理槽2へ導入する。導入された廃水は、微生物処理槽2内の接触材9に保持された微生物と接触する(微生物処理工程)。これにより、廃水中の錯体形成化合物が分解される。次いで、微生物処理槽2で処理された廃水を、配管1Bを介して不溶化処理槽4へ移す。そして、供給管1Eからアルカリ及び凝集剤を不溶化処理槽4内へ供給し、廃水中の重金属を金属水酸化物凝集体として不溶化させる(不溶化処理工程)。
【0044】
生成した金属水酸化物凝集体は、不溶化処理槽4(沈殿槽)内において沈殿する。これにより、不溶化処理槽4で処理された廃水を、上澄み液と、金属水酸化物凝集体を含む不溶化物とに分離する(沈殿分離工程)。次いで、上澄み液を、配管1Cを介して中和槽6へ移す。そして、供給管1Fから酸を中和槽6内へ供給し、上澄み液を酸により中和する(中和工程)。中和された上澄み液(処理水)は、重金属の濃度が十分に低減されているため、排出管1Dから放流することができる。なお、不溶化処理槽4内において生成した不溶化物は、配管1Gを介して貯留槽8に移される。不溶化物は、例えば高吸水性ポリマー等により脱水され、産業廃棄物として廃棄される。
【0045】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る廃水処理装置について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、第二実施形態に係る廃水処理装置20の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0046】
図2に示すように、廃水処理装置20は、不溶化処理槽4と中和槽6との間に沈殿槽21を備える点で廃水処理装置10と異なる。沈殿槽21では、不溶化した金属水酸化物凝集体を沈殿させる。不溶化処理槽4と沈殿槽21とは、配管1Hを介して連結されている。沈殿槽21と中和槽6とは、配管1Jを介して連結されている。沈殿槽21と貯留槽8とは、配管1Kを介して連結されている。また、不溶化処理槽4は、沈殿槽を兼ねていない。その他は、上述した廃水処理装置10と同様である。
【0047】
廃水処理装置20では、不溶化処理槽4で処理された廃水が、配管1Hを介して沈殿槽21へ移される。そして、沈殿槽21において、廃水中の金属水酸化物凝集体が自重により沈降するため、沈殿槽21中の廃水は、上澄み液と、金属水酸化物凝集体を含む不溶化物とに分離する。このうち、上澄み液は、配管1Jを介して中和槽6へ移される。不溶化物は、配管1Kを介して貯留槽8へ移される。
【0048】
廃水処理装置20によれば、不溶化処理槽4で不溶化処理工程を行いつつ、沈殿槽21で沈殿分離工程を行うことができるため、廃水処理を効率よく行うことができる。
【0049】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係る廃水処理装置について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、第三実施形態に係る廃水処理装置30の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0050】
図3に示すように、廃水処理装置30は、中和槽6の下流側に再微生物処理槽31を備える点で廃水処理装置10と異なる。ここで、下流側とは、処理水が排出される側を意味する。再微生物処理槽31では、不溶化処理槽4で処理され、かつ中和槽6で中和された廃水を微生物で再度処理する。中和槽6と再微生物処理槽31とは、配管1Lを介して連結されている。また、再微生物処理槽31には、処理水を排出(放流)するための排出管1Mが設けられている。その他は、上述した廃水処理装置10と同様である。
【0051】
再微生物処理槽31で処理される微生物処理方法としては、例えば生物膜法(より具体的には接触酸化法等)、及び活性汚泥法(より具体的には標準活性汚泥法、膜分離活性汚泥法等)が挙げられる。なお、標準活性汚泥法とは、活性汚泥を沈殿により分離する活性汚泥法を指す。
【0052】
再微生物処理槽31で処理される微生物処理方法として膜分離活性汚泥法を採用する場合、膜分離するためのろ過膜(分離膜)は特に限定されず、例えば精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等のろ過膜が使用できる。ろ過膜の形状についても特に限定されず、例えば中空糸膜、平膜、管状膜、袋状膜等の形状を採用することができる。
【0053】
廃水処理装置30では、中和槽6で中和された廃水が、配管1Lを介して再微生物処理槽31へ移される。次いで、再微生物処理槽31において、廃水が再度微生物で処理される。そして、処理された廃水(処理水)は、排出管1Mから放流される。
【0054】
廃水処理装置30によれば、再微生物処理槽31において廃水が再度微生物で処理されるため、例えば廃水中の化学的酸素要求量(以下、CODと記載する。)を低減できる。
【0055】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態に係る廃水処理装置について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、第四実施形態に係る廃水処理装置40の構成を示すブロック図である。なお、第一実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、廃水処理装置40は、微生物処理槽2の上流側にpH調整槽41を備える点で廃水処理装置10と異なる。ここで、上流側とは、廃水が導入される側を意味する。pH調整槽41では、微生物処理槽2で処理する前の廃水のpHを調整する。pH調整槽41と微生物処理槽2とは、配管1Qを介して連結されている。また、pH調整槽41には、廃水を導入するための導入管1Nと、pH調整剤を供給するための供給管1Pとが設けられている。その他は、上述した廃水処理装置10と同様である。
【0057】
廃水処理装置40では、まず、導入管1NからpH調整槽41に廃水が導入される。次いで、供給管1PからpH調整剤がpH調整槽41内へ供給され、廃水のpHが、例えば微生物処理槽2内の微生物の活動に適したpHに調整される。微生物の活動に適したpHは、使用する微生物に応じて適宜設定すればよいが、例えば6.5以上7.5以下の範囲に設定される。pH調整剤としては、pH調整前の廃水のpHに応じて公知のpH調整剤の1種又は2種以上を適宜選択することができる。pH調整槽41でpH調整された廃水は、配管1Qを介して微生物処理槽2へ移される。
【0058】
廃水処理装置40によれば、pH調整槽41において微生物処理槽2内の微生物の活動に適したpHに調整できるため、微生物処理槽2において廃水中の錯体形成化合物をより確実に分解できる。これにより、不溶化処理槽4において重金属の水酸化物化がより容易となる。
【0059】
<他の実施形態>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、廃水中の金属水酸化物凝集体の分離方法として沈殿分離法を採用したが、本発明では、金属水酸化物凝集体の分離方法は特に限定されない。例えば、沈殿分離法の代わりに、加圧浮上法、膜分離法等の分離方法を採用してもよい。また、これらの分離方法を組み合わせて、多段階で分離処理を行ってもよい。ただし、本発明では、上述したように不溶化処理槽においてアルカリと凝集剤とを併用するため、金属水酸化物粒子の凝集径が大きくなる傾向がある。また、生成した金属水酸化物凝集体は、凝集径が大きいため沈降し易い傾向がある。従って、金属水酸化物凝集体の分離工程を長期間安定して行うには、分離方法として沈殿分離法を採用することが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0062】
<廃水>
処理に使用する廃水として、ニッケル及び錯体形成化合物を含む廃水(pH4)を準備した。この廃水について、COD及びニッケルの濃度は、表1に示す通りであった。
【0063】
<分析方法>
[COD]
廃水及び処理水のCODは、日本工業規格(JIS)K0102で規定された滴定法により測定した。なお、廃水及び処理水のCODの値が高くなるほど、廃水中及び処理水中の錯体形成化合物の濃度が高くなる傾向がある。
【0064】
[ニッケルの濃度]
廃水中及び処理水中のニッケルの濃度は、日本工業規格(JIS)K0102で規定されたフレーム原子吸光法により測定した。
【0065】
<実施例1>
まず、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いて廃水のpHを7.0に調整した後、微生物の栄養源として尿素及びリン酸二カリウムを廃水に添加した。尿素及びリン酸二カリウムの添加量は、廃水と窒素とリンとの質量比(廃水:窒素:リン)が100:5:1となる量であった。以下、pHが7.0に調整され、かつ上記栄養源が添加された廃水を調整水と記載する。
【0066】
次いで、接触材として0.3mのバイオフリンジ(登録商標)が収容された容積5Lの接触酸化槽に、微生物を含む種汚泥2Lを入れた後、調整水1L及び水道水1.5Lを入れた。種汚泥としては、下水処理場の返送汚泥(粒子径2mm以下の浮遊物質量6000mg/L)を使用した。続けて、エアポンプを用いて接触酸化槽内の液体に空気を供給することにより、曝気を行った。曝気の際の空気の供給量は10L/分であり、供給時間は12時間であった。続けて、空気の供給量を10L/分に維持しつつ、接触酸化槽に調整水(水温25℃)を5.5L/日の供給量で2日間供給し続けることにより、接触酸化法による微生物処理工程を連続的に行った。この際、接触酸化槽からオーバーフローした調整水(微生物処理後の調整水)は、沈殿槽を兼ねた不溶化処理槽に貯留した。
【0067】
次いで、不溶化処理槽に貯留された微生物処理後の調整水にポリ硫酸第二鉄300mg/Lを添加した後、水酸化ナトリウムを添加してpHを10.0に調整し、10分間攪拌した。攪拌後の液体にアニオン性ポリアクリルアミド2mg/Lを添加し、これらを10分間攪拌した。以上の手順により不溶化処理工程を行った。この不溶化処理工程により不溶化処理槽の底部に金属水酸化物凝集体が沈殿し、上澄み液を得た。得られた上澄み液を実施例1の処理水とし、上述した測定方法により、処理水のCOD及び処理水中のニッケルの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
<実施例2>
上述した実施例1と同様に不溶化処理工程まで行った後、得られた上澄み液に硫酸を添加してpHを7.0に調整した。このpH7.0に調整した液体を回分式の標準活性汚泥法により処理し、上澄み液を得た。得られた上澄み液を実施例2の処理水とし、上述した測定方法により、処理水のCOD及び処理水中のニッケルの濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、標準活性汚泥法に用いた活性汚泥は、実施例1において接触酸化法で用いた種汚泥と同様であった。
【0069】
<比較例1>
実施例1において、廃水に尿素及びリン酸二カリウムを添加しなかったことと、微生物処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で廃水を処理し、上澄み液を得た。得られた上澄み液を比較例1の処理水とし、上述した測定方法により、処理水のCOD及び処理水中のニッケルの濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1に示すように、実施例1では、比較例1に比べ、CODを低減できていた。つまり、実施例1では、比較例1に比べ、錯体形成化合物の濃度を低減できていた。そのため、実施例1の処理水中のニッケルの濃度は、比較例1の処理水中のニッケルの濃度の0.6%程度であった。また、実施例2では、実施例1に比べ、CODを更に低減できていた。
【0072】
以上の結果から、本発明によれば、重金属及び錯体形成化合物を含む廃水中の重金属の濃度を十分に低減できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る廃水処理装置は、重金属及び錯体形成化合物を含む廃水中の重金属の濃度を十分に低減できる廃水処理装置として有用である。また、本発明に係る廃水処理方法は、重金属及び錯体形成化合物を含む廃水中の重金属の濃度を十分に低減できる廃水処理方法として有用である。
【符号の説明】
【0074】
2 微生物処理槽
4 不溶化処理槽
6 中和槽
8 貯留槽
9 接触材
10,20,30,40 廃水処理装置
21 沈殿槽
31 再微生物処理槽
41 pH調整槽