(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】キャスター構造
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
B60B33/00 502Z
B60B33/00 G
(21)【出願番号】P 2019028936
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 隼利
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-326504(JP,A)
【文献】特開2001-301628(JP,A)
【文献】特開2004-284489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して鉛直方向に設けられた旋回軸と、
当該旋回軸から水平方向に離れた位置で前記本体との上下方向の距離が一定となるように設けられ、前記旋回軸に対して旋回可能に設けられた車軸と、
当該車軸に取り付けられるタイヤと、
を備えてなるキャスターを、前記本体の左右に設けるようにしたキャスター構造において、
前記タイヤを地面から離した際に、左右に設けられたキャスターのタイヤを、前記車軸と前記本体との距離を前記一定の距離とした状態で、特定方向に揃えるように力を付勢する付勢手段を設けるようにしたことを特徴とするキャスター構造。
【請求項2】
左右に設けられた
キャスターに連結され、左右のタイヤの角度を揃える連結ロッドを設け、
当該連結ロッドに前記付勢手段を設けるようにした請求項1に記載のキャスター構造。
【請求項3】
左右の
キャスターを支持する支持ロッドと、
当該支持ロッドと離れた位置に設けられ、左右に設けられたタイヤの角度を揃える連結ロッドと、を設け、
前記付勢手段が、前記支持ロッドに対して連結ロッドの左右方向の位置を中立位置に戻す弾性体を有するように構成されたものである請求項1に記載のキャスター構造。
【請求項4】
前記付勢手段が、前記支持ロッドと連結ロッドとの間に取り付けられた回動可能な左右一対のレバーと、当該左右のレバーの間に取り付けられた弾性体とを備えて構成されるものである請求項3に記載のキャスター構造。
【請求項5】
前記左右のレバーを互いに中央から他方のレバー側に回動しないように回動を規制する規制部材を設けるようにした請求項4に記載のキャスター構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回機能を有するキャスター構造に関するものであって、より詳しくは、キャスターを含む移動体をそのまま持ち上げた場合であっても、キャスターの向きを特定方向に向けられるようにしたキャスター構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動可能な牽引車、台車、椅子などの下端部分には、キャスターが備え付けられている。このキャスターは、鉛直軸回りに旋回する旋回部に、水平軸回りに回転するタイヤを取り付けるようにしたものであって、移動時に進行方向に前進させることによって、タイヤの車軸を旋回部の後方に位置させ、これによって進行方向に対する旋回に追従できるようにしたものである。
【0003】
ところで、このようなキャスターを有する移動体を移動させる場合、移動体全体を持ち上げて移動させるような場合がある。
【0004】
しかるに、このような移動体全体を持ち上げた場合、それぞれのキャスターが持ち上げ時の方向に向いたままとなったり、振動などによって自由な方向に向いてしまうことがある。このため、次に接地して異なる方向に移動する場合、進行方向と異なる方向を向いたキャスターによって旋回部などに負担がかかってしまう。
【0005】
これに対して、このような移動体などを持ち上げることなくタイヤのみを床面などから浮かせた場合に、そのタイヤを特定方向に向けられるようにした構造が特許文献1に提案されている。
【0006】
この特許文献1に記載される構造は、会議用のデスクを移動させる際にキャスターを床面に接地させて移動できるようにしたものであって、デスクを移動させる際に、天板を使用位置から90度回動させ、これに伴って、脚の内部に設けられた支柱を下降させてタイヤを固定脚部の下方に突出させて移動できるようにしたものである。また、このデスクを設置状態で使用する場合においては、天板を水平面状に回動させることで、脚の内部に設けられた支柱とともにタイヤを固定脚部の上方に移動させ、そのタイヤの上方に設けられたガイド面に沿って、キャスターを特定方向に向けられるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の構造では、次のような問題がある。
【0009】
すなわち、上記特許文献1に示される構造は、タイヤを床面に接地させて移動させている途中に、段差などを乗り越えるためにデスク全体を持ち上げる場合、キャスターが種々の方向を向いてしまう可能性がある。このため、次に接地して移動させる際、キャスターが自由な状態となっているため、種々の方向を向いたキャスターの旋回軸などに負担を掛けてしまうといった問題がある。
【0010】
また、このような構造を、例えば、大型の牽引車のキャスター構造に使用する場合、重量を有するタイヤを昇降させる必要があるため、構造が大掛かりなるばかりでなく、昇降部分に土砂などが入り込んで故障の原因になりかねない。
【0011】
さらには、このようなキャスターを複数箇所に取り付けた場合、例えば、農地や石畳などのように走行面に凹凸を有していると、その凹凸によってタイヤがそれぞれ異なる方向に向いてしまい、走行が不安定になってしまう。
【0012】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、キャスターを有する移動体全体を持ち上げた場合や、凹凸を有する走行面を移動する場合であっても、そのキャスターの向きを特定方向に向けられるようにしたキャスター構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、本体に対して鉛直方向に設けられた旋回軸と、当該旋回軸から水平方向に離れた位置で前記本体との上下方向の距離が一定となるように設けられ、前記旋回軸に対して旋回可能に設けられた車軸と、当該車軸に取り付けられるタイヤと、を備えてなるキャスターを、前記本体の左右に設けるようにしたキャスター構造において、前記タイヤを地面から離した際に、左右に設けられたキャスターのタイヤを、前記車軸と前記本体との距離を前記一定の距離とした状態で、特定方向に揃えるように力を付勢する付勢手段を設けるようにしたものである。
【0014】
このように構成すれば、移動体の本体全体を持ち上げた場合であっても、タイヤの向きを特性方向に向けることができるため、次に接地させて異なる方向に移動させるような場合であっても、旋回軸などにかかる負担をなくすことができるようになる。また、凹凸を有する走行面を移動する場合であっても、キャスターの方向をある程度特性方向に付勢させて走行させることができるため、走行を安定させることができるようになる。
【0015】
また、このような発明において、左右に設けられたキャスターに連結され、左右のタイヤの角度を揃える連結ロッドを設け、当該連結ロッドに前記付勢手段を設けるようにする。
【0016】
このように構成すれば、連結ロッドに設けられた一つの付勢手段によって、本体を持ち上げた場合に左右のタイヤの向きを同時に特定方向に向けることができるようになる。
【0017】
さらに、左右のキャスターを支持する支持ロッドと、当該支持ロッドと離れた位置に設けられ、左右に設けられたタイヤの角度を揃える連結ロッドと、を設け、前記付勢手段が、前記支持ロッドに対して連結ロッドの左右方向の位置を中立位置に戻す弾性体を設けて構成する。
【0018】
このように構成すれば、支持ロッドと連結ロッドなどによってリンク機構を構成することができ、そのリンク機構によって左右の旋回時における内輪と外輪の角度を変えることができるとともに、本体を持ち上げた際には、そのリンク機構を中立状態に戻すことで、左右のタイヤを直進方向に向けることができるようになる。
【0019】
また、前記付勢手段を、前記支持ロッドと連結ロッドとの間に取り付けられた回動可能な左右一対のレバーと、当該左右のレバーの間に取り付けられた弾性体とを備えるように構成する。
【0020】
このように構成すれば、弾性体によって左右のレバーを互いに引き付けることができ、連結ロッドを中立位置に戻して左右のタイヤを直進方向に向けることができるようになる。このとき、左右のレバーの間に弾性体を設けることで、左右方向の引張力を同じにすることができ、片方のタイヤのみが強く引かれてしまうことがなくなる。
【0021】
また、前記左右のレバーを互いに中央から他方のレバー側に回動しないように回動を規制する規制部材を設けるようにする。
【0022】
このように構成すれば、規制部材によって左右のレバーを中立位置から逆方向に回動させないようにすることができ、左右のレバーの間に設けられた弾性体によって、連結ロッドを中立位置に戻してタイヤを直進方向に揃えることができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、本体に対して鉛直方向に設けられた旋回軸と、当該旋回軸から水平方向に離れた位置で前記本体との上下方向の距離が一定となるように設けられ、前記旋回軸に対して旋回可能に設けられた車軸と、当該車軸に取り付けられるタイヤと、を備えてなるキャスターを、前記本体の左右に設けるようにしたキャスター構造において、前記タイヤを地面から離した際に、左右に設けられたキャスターのタイヤを、前記車軸と前記本体との距離を前記一定の距離とした状態で、特定方向に揃えるように力を付勢する付勢手段を設けるようにしたので、次に接地させて異なる方向に移動させるような場合に、旋回軸などにかかる負担をなくすことができるようになる。また、凹凸を有する走行面を移動する場合であっても、キャスターの方向をある程度特性方向に付勢させて走行させることができるため、走行を安定させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態を示すキャスター構造を示す図
【
図3】同形態における前進時のラチェット部と車軸の状態を示す図
【
図4】同形態における後進時のラチェット部と車軸の状態を示す図
【
図5】同形態における左旋回状態と付勢手段の状態を示す図
【
図6】同形態における右旋回状態と付勢手段の状態を示す図
【
図7】同形態における異なる当接部を設けた状態の作用を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
この実施の形態におけるキャスター構造1を有する移動体は、例えば、トラクターの後部に連結されるラップマシーンを例に挙げて説明する。
【0027】
この実施の形態におけるキャスター構造1は、
図1に示すように、本体10の左右にキャスター2を有するものであって、前進時には前方のトラクターからの牽引力を用いてタイヤ20を旋回軸33の後方に移動させ、後進時には、タイヤ20を180度鉛直軸回りに反転させることなく旋回軸33に追従させるようにタイヤ20を前方側に移動させるようにしたものである。そして、特徴的に、左右のタイヤ20の間を支持ロッド21と連結ロッド8を用いてリンク機構を構成するように連結し、タイヤ20の向き旋回方向に向けられるようにするとともに、トラクターによって本体10を全体的に持ち上げた場合に、支持ロッド21と連結ロッド8との間に設けられた付勢手段9によって、連結ロッド8を中立位置に戻してタイヤ20を直進方向に向けられるようにしたものである。
【0028】
まず、左右のキャスター2は、
図2に示すように、鉛直軸回りの旋回軸33を有する旋回部3と、その旋回軸33に対して車軸55を支持ロッド21に対して前後方向に移動させる車軸移動部4などを備えて構成されている。そして、このような車軸移動部4を用いることによって、タイヤ20を鉛直軸回りに180度反転させることなく、タイヤ20を旋回軸33に追従させるように構成されている。
【0029】
このキャスター2の旋回部3は、本体10に取り付けられた支持ロッド21の両端側に設けられており、上下に対向するように設けられた上側軸受部31や下側軸受部32の中央に軸挿入穴35を設け、そこに上下方向から一定の隙間をもって旋回軸33を挿入して構成されている。この軸挿入穴35に挿入される旋回軸33の先端部分には雄ねじ部34が形成されており、車軸移動部4を構成する車軸ガイド41の中央に設けられた上下のネジ穴42に挿入して固定されるようになっている。そして、このように旋回軸33を車軸ガイド41のネジ穴42に挿入して固定することによって、軸挿入穴35に挿入された旋回軸33の中心を軸として車軸移動部4を鉛直軸回りに回動させるようになっている。
【0030】
一方、この旋回部3に取り付けられる車軸移動部4は、タイヤ20の回転力を用いて車軸55を旋回軸33の前後方向に移動させるようにしたものであって、タイヤ20の側面と平行なガイド面43を有する車軸ガイド41と、その車軸ガイド41に沿って前後方向にスライドできるように構成された車軸支持部材5と、その車軸支持部材5の車軸55をタイヤ20の回転力に伴って前後方向に移動させるラチェット部6などを有するように構成されている。
【0031】
このうち、車軸ガイド41は、タイヤ20の側面と平行なガイド面43と、その上下に対向する平行な溝44を形成して設けられている。そして、その溝44とガイド面43に沿って車軸支持部材5のガイドプレート51を前後方向にスライドさせるようにしている。
【0032】
このガイドプレート51の前後両端には、車軸ガイド41の溝44に沿ってスムーズに移動できるようにするために、上下方向に突出するピン52が設けられており、そのピン52の先端にベアリング53などを取り付けることで溝44の内部での摩擦を低減させるようにしている。
【0033】
また、このガイド面43には、前後方向に沿った長穴45が設けられる。この長穴45は、旋回軸33に対して車軸55を前後方向に移動させる際に、車軸ガイド41を前後方向にスライドさせる距離を設定できるようにしたものであって、ボルト54をガイドプレート51の背面側に取り付け、これを長穴45の内側に当接させる。これにより、長穴45の範囲内で車軸55が移動できるようになり、車軸55が旋回軸33の後方に位置することによって前進時における旋回が可能になり、また、逆に、車軸55が旋回軸33の前方に位置することによって、後進時における旋回が可能となる。
【0034】
ラチェット部6は、この車軸55を長穴45に沿って強制的に前後方向に移動させるようにしたものであって、タイヤ20の回転力を用いて車軸55を旋回軸33の前後方向に移動させるように構成されている。このラチェット部6は、
図2から
図4に示すように、車軸ガイド41の上面に、それぞれの先端部62(
図3、
図4参照)を対向させた前後一対の回動可能な爪部61と、その爪部61の先端部62に当接可能な突起を有する回転プレート7とを設けて構成されている。この爪部61は、車軸ガイド41の上面に設けられた支点63を中心にそれぞれの先端部62を上下動させるようになっており、一方、回転プレート7はタイヤ20と一体的に回転するようになっている。また、この回転プレート7の表面には、複数の突起71が同心円上に設けられており、タイヤ20を前進させることで、
図3に示すように、回転プレート7をその方向に回転させ、その回転プレート7の突起71を前方側の爪部61の先端部62に当接させる(
図3上図)。このとき、突起71が爪部61の先端部62に当たることによって、そこで回転プレート7の動きが規制され、
図3の下図に示すように、車軸55が車軸ガイド41の長穴45に沿って後方に逃げるように移動する。これにより、車軸55が旋回軸33を超えて後方に移動することになる。この位置では、回転プレート7の突起71は後方の爪部61の下面64を撫でるように接触するため、継続してタイヤ20を回転させることが可能となる。逆に、この状態から本体10を後進させると、
図4の上図に示すように、タイヤ20が逆方向に回転し、これに伴って回転プレート7も同方向に回転する。すると、その回転プレート7に設けられた突起71が後方の爪部61の先端部62に当たり、その回転力を逃すように車軸55が長穴45に沿って前方側に移動する(
図4下図)。そして、長穴45の前方側に車軸55を移動させた状態で、その突起71を前方の爪部61の下面64に撫でるように接触させ、タイヤ20の回転が長穴45の前方でのみ許容される。これにより、前進時には旋回軸33の後方に車軸55を位置させて旋回を許容することができるとともに、後進時には旋回軸33の前方に車軸55を位置させて、旋回を許容することができる。
【0035】
このように車軸55を前後に移動させることにより、タイヤ20を鉛直軸回りに180度反転させることが不要になり、後進直後における方向性を安定させることができるが、地面に凹凸がある場合、左右のキャスター2がそれぞれ異なる方向を向いてしまう場合がある。そのため、
図1に示すように、左右の車軸移動部4をヒンジ81を介して連結ロッド8で連結し、これによって左右のキャスター2のタイヤ20の向きを揃えられるようにしている。
【0036】
この連結ロッド8は、
図1に示すように、左右の車軸ガイド41にヒンジ81を介して取り付けられる。このとき、その連結ロッド8は、支持ロッド21の前方側で平行に設けられ、左右の旋回軸33、および、左右のヒンジ81によってリンク機構を構成するようにしておく。この左右のヒンジ81の距離は左右の旋回軸33の距離よりも短くなっており、これによって左右の旋回軸33とヒンジ81とによって台形リンクを構成している。
【0037】
このような構成において、本実施の形態では、トラクターを用いて本体10を持ち上げて移動する際に、左右のタイヤ20を直進方向に向けられるようにするための付勢手段9を設けている。
【0038】
この付勢手段9は、本体10を持ち上げた際に、タイヤ20を直進方向に向けられるようにする方法であればどのような方法でもよいが、この実施の形態では、
図5などに示すように、支持ロッド21の中央に左右一対のレバー92を回動可能に設けるとともに、連結ロッド8の中央に突起部82を設け、レバー92の当接部93をこの突起部82に当接させるように構成している。このレバー92は、支持ロッド21に設けられた回動軸91に対して鉛直軸回りに回動可能に取り付けられており、その先端部分に左右のレバー92を跨るようなスプリング94を取り付けて引っ張り合わせるようにしている。また、支持ロッド21には、左右のレバー92をそれぞれ反対方向に回動させないようにするストッパー95が設けられており、これによって、突起部82が左右いずれかの方向に移動した場合(
図5や
図6の状態)、片側のレバー92をストッパー95に当てて反対側のレバー92をスプリング94で引っ張るようにしている。なお、このようにスプリング94で突起部82を中立位置に戻すようにした場合、左右のタイヤ20が直進方向に向くようになるが、タイヤ20が接地している状況下では、スプリング94の弾性力よりもタイヤ20の接地による摩擦力が大きくなるため、走行時におけるタイヤ20の向きに影響を与えるようなことがない。
【0039】
また、突起部82に当接するレバー92の当接部93は、突起部82側に突出させた湾曲形状をなすように構成されている。これにより、レバー92を回動させた場合であっても、スプリング94によるレバー92からの力を連結ロッド8に沿った方向に向けられるようにしている。すなわち、このレバー92が直線状に構成されている場合、
図7の右図に示すように、突起部82が片方に移動すると、レバー92の傾斜角度と直角な方向にレバー92からの力が働いてしまい、戻り力を連結ロッド8の方向に向けることができなくなる。そこで、ここでは当接部93を円弧状に湾曲させることで、
図7の左図に示すように、スプリング94による戻り力を連結ロッド8の方向に向けられるようにしている。
【0040】
次に、このように構成されたキャスター構造1を本体10を使用する場合の動作について説明する。
【0041】
まず、トラクターを用いて本体10を前方に移動させる場合、タイヤ20はトラクターによって牽引される方向に向かって回転する。すると、
図3の上図に示すように、そのタイヤ20の回転に伴って回転プレート7が回転し、その表面に設けられた突起71が前方の爪部61の先端部62に当たる。すると、回転プレート7がこれから逃げるように車軸55を後方に移動させる。これにより、車軸55が旋回軸33の後方に位置することになり(
図3の下図)、前進時に牽引方向に従ってタイヤ20を追従させることができるようになる。
【0042】
このとき、本体10が
図5に示す方向に旋回しようとすると、タイヤ20が牽引方向に追従して旋回軸33を中心に旋回するようになる。このとき、支持ロッド21の旋回軸33や連結ロッド8のヒンジ81で台形リンクを構成しているため、旋回方向の内側のタイヤ20の角度を大きくすることができるとともに、旋回方向外側のタイヤ20の角度を小さくすることができる。これにより、タイヤ20の軸芯を旋回中心側に焦点を結ぶようにすることができ、スラスト荷重の発生を防止することができる。
【0043】
一方、このように前進している状態から、後進方向に方向転換する場合、トラクターによって本体10をバックさせる。すると、タイヤ20が後進方向に回転し、これに伴って、回転プレート7も後進方向に向かうように回転する。すると、
図4に示すように、回転プレート7の突起71が後方の爪部61の先端部62に当たり、回転プレート7がこれから逃げるように前方側に移動する。そして、車軸55を旋回軸33の前方に位置させた状態でタイヤ20を回転させるようにする。これにより、車軸55を旋回軸33に対して前後方向に入れ替えることで、前進・後進への方向転換時における方向安定性と、凹凸を有する地面を走行する際における走行安定性を確保することができるようになる。
【0044】
そして、このように後方移動時に本体10を旋回させる際、同様に、台形リンクを用いて旋回方向内側のタイヤ20の角度を大きくするとともに、旋回方向外側のタイヤ20の角度を小さくする。これにより、タイヤ20の軸芯が旋回中心側に焦点を結ぶようになるため、スラスト荷重の発生を防止することができるようになる。
【0045】
そして、このような本体10をトラクターを用いて持ち上げて移動させる場合、トラクターのロアリンクを操作して本体10をそのまま持ち上げる。
【0046】
すると、タイヤ20が走行面から離れ、タイヤ20にかかる地面からの摩擦力がなくなる。
【0047】
このとき、タイヤ20が、
図5に示すように、左方向に旋回するようになっている場合、連結ロッド8のピン82が右方向に移動しているため、右側のレバー92の当接部93が突起部82に押圧されるようになる。一方、左側のレバー92は、ストッパー95に当接して中立状態に位置しており、そこからスプリング94によって右側のレバー92を引っ張るようになる。すると、その連結ロッド8が中立位置に戻ろうとする。このとき、右側のレバー92の当接部93が湾曲形状をなしているため、レバー92の戻り力が連結ロッド8の軸方向に向くようになり、軽い力で連結ロッド8を中立位置に戻すことができるようになる。
【0048】
一方、タイヤ20が、
図6に示すように、右方向に旋回するようになっている場合、連結ロッド8のピン82が左方向に移動しているため、左側のレバー92の当接部93が突起部82に押圧されるようになる。一方、右側のレバー92は、ストッパー95に当接して中立状態に位置しており、そこからスプリング94によって左側のレバー92を引っ張るようになる。すると、その連結ロッド8が中立位置に戻ろうとする。このとき、左側のレバー92の当接部93が湾曲形状をなしているため、レバー92の戻り力が連結ロッド8の軸方向に向くようになり、軽い力で連結ロッド8を中立位置に戻すことができるようになる。
【0049】
このようにレバー92が中立位置に戻ると、連結ロッド8に連結された左右のタイヤ20が直進方向に向くようになる。
【0050】
このように上記実施の形態によれば、ラップマシーンの本体10に対して鉛直方向に設けられた旋回軸33と、当該旋回軸33から水平方向に離れた位置で前記本体10との上下方向の距離が一定となるように設けられ、前記旋回軸33に対して旋回可能に設けられた車軸55と、当該車軸55に取り付けられるタイヤ20と、を備えてなるキャスター2を、前記本体10の左右に設けるようにしたキャスター構造1において、前記タイヤ20を地面から離した際に、左右に設けられたキャスター2のタイヤ20を、前記車軸55と前記本体10との距離を前記一定の距離とした状態で、特定方向に揃えるように力を付勢する付勢手段9を設けるようにしたので、次に接地させて異なる方向に移動させるような場合に、旋回軸33などにかかる負担をなくすことができるようになる。また、農地などのような凹凸を有する走行面を移動する場合であっても、キャスター2の方向をある程度直進方向に向けて走行させることができるため、走行を安定させることができるようになる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0052】
例えば、上記実施の形態では、移動体の例としてラップマシーンなどの農業機械を例に挙げて説明したが、台車、デスク、机など、走行面上を移動できるようにしたものに適用することもできる。
【0053】
また、上記実施の形態では、キャスター構造1として、タイヤ20の車軸55を支持ロッド21に対して前後方向に移動させて前進と後進の車軸55の位置を変えられるようにしたが、これに限らず、タイヤ20を旋回軸33に対して鉛直軸回りに180度旋回させるような構造にも適用することができる。ただし、このようなキャスター2に本発明を適用する場合、連結ロッド8などを設けているとタイヤ20を180度旋回させることができなくなる。このため、連結ロッド8を設けることなく、旋回軸33を常に直進方向に向けられるようなバネなどを取り付けてタイヤ20を直進方向に向けられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・・キャスター構造
2・・・キャスター(20タイヤ、21支持ロッド)
3・・・旋回部(31上側軸受部、32下側軸受部、33旋回軸、34雄ねじ部)
4・・・車軸移動部(41車軸ガイド、42ネジ穴、43ガイド面、44溝、45長穴)
5・・・車軸支持部材(51ガイドプレート、52ピン、53ベアリング、54ボルト、55車軸)
6・・・ラチェット部(61爪部、62先端部、63支点、64下面)
7・・・回転プレート(71突起)
8・・・連結ロッド(81ヒンジ、82突起部)
9・・・付勢手段(91回動軸、92レバー、93当接部、94スプリング、95ストッパー)
10・・・車体