(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】電気生理学的信号を検知するための超音波後方散乱を用いたインプラント
(51)【国際特許分類】
A61B 5/283 20210101AFI20221226BHJP
A61B 5/293 20210101ALI20221226BHJP
【FI】
A61B5/283
A61B5/293
(21)【出願番号】P 2019500381
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 US2017041262
(87)【国際公開番号】W WO2018009910
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マハルビズ,ミケル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ドンジン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,コンリン
(72)【発明者】
【氏名】カルミナ,ホセ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ニーリー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】アロン,エラド
(72)【発明者】
【氏名】ラバエイ,ジャン
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211801(JP,A)
【文献】米国特許第06239724(US,B1)
【文献】Dongjin Seo et al.,Neural dust: An ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces,arXiv preprint,2013年07月08日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に取り付けられ、電気生理学的信号を検知するよう構成される第1電極および第2電極と、
デジタル回路、および前記電気生理学的信号に基づき、電流を変調するよう構成される変調回路を有する集積回路
と、を有し、
ここで、前記デジタル回路が、前記電気生理学的信号を含むデジタル化信号を前記変調回路に送信することによって、前記変調回路を作動させるよう構成されており、
さらに前記変調された電流に基づき、前記組織からの前記電気生理学的信号を
含む前記デジタル化信号をエンコードする超音波後方散乱を発するよう構成される超音波トランスデュー
サを有する埋め込み型デバイス。
【請求項2】
前記デジタル化信号が、固有の埋め込み型デバイス識別子を含む、請求項
1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項3】
前記埋め込み型デバイスが、組織と接触し、電気生理学的信号を検出するように構成されている第3電極を少なくともさらに含み、前記デジタル化信号が固有の電極対識別子を含む、請求項
1または
2に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項4】
前記超音波トランスデューサおよび前記変調回路を有する本体を備え、前記本体の最大寸法の長さが5mm以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項5】
前記第1電極および前記第2電極の間隔が0.5mm以上離れている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項6】
非応答型リフレクタを有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項7】
前記組織が筋肉組織または神経組織である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項8】
前記組織が、末梢神経系の一部または中枢神経系の一部である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項9】
前記組織が脳組織または末梢神経である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項10】
前記組織が骨格筋、心筋、または平滑筋である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項11】
3つ以上の電極を有する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項12】
前記集積回路がスパイク検出器を有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項13】
前記集積回路が電源回路を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項14】
前記集積回路がアナログ・デジタル変換器(ADC)を有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項15】
前記集積回路が増幅器列を有する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項16】
前記超音波トランスデューサおよび前記変調回路を有する本体を備え、前記本体の体積が5mm
3以下である、請求項1~
15のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項17】
前記超音波トランスデューサが、埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信するよう構成される、請求項1~
16のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項18】
前記超音波トランスデューサが、1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機からの超音波を受信するよう構成される、請求項1~
17のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項19】
前記埋め込みデバイスの前記超音波トランスデューサが、バルク圧電トランスデューサ、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)、または容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)である、請求項1~
18のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項20】
対象に埋め込まれる、請求項1~
19のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項21】
前記対象がヒトである、請求項
20に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項22】
前記組織中、前記組織上、または前記組織の近くに埋め込まれる、請求項1~
21のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項23】
前記第1電極および前記第2電極が、前記組織中または前記組織上に埋め込まれる、請求項
22に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項24】
生体適合性物質によって少なくとも部分的に被包される、請求項1~
23のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項25】
前記第1電極および第2電極の少なくとも一部が、前記生体適合性物質によって被包されない、請求項
24に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項26】
請求項1~
25のいずれか一項に記載の1つ以上の埋め込み型デバイスと、該1つ以上の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、該1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、を有する、システム。
【請求項27】
複数の埋め込み型デバイスを有する、請求項
26に記載のシステム。
【請求項28】
前記呼びかけ機は、送信される超音波をビームステアリングして、該送信される超音波を、前記複数の埋め込み型デバイスの第1部分または前記複数の埋め込み型デバイスの第2部分に交互に集中させるよう構成される、請求項
27に記載のシステム。
【請求項29】
前記呼びかけ機は、少なくとも2つの埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を同時に受信するよう構成される、請求項
27に記載のシステム。
【請求項30】
前記呼びかけ機は、時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いて、前記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、前記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される、請求項
27に記載のシステム。
【請求項31】
前記呼びかけ機は、対象によって着用可能であるよう構成される、請求項
27~
30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されるよう構成された1つ以上のプログラムを保存する、コンピュータにより読取可能な非一時的記憶媒体と、を備え、
前記1つ以上のプログラムが、
埋め込み型デバイスから発せられる生理的信号をエンコードする超音波後方散乱に基づく前記生理的信号を検知するための命令、および、
前記埋め込み型デバイスから発せられる前記生理的信号に応答しない超音波後方散乱に基づき、前記呼びかけ機中の前記1つ以上の超音波トランスデューサに対する前記埋め込み型デバイスの位置を測定するため、または前記埋め込み型デバイスの動きを検知するための命令を含む、コンピュータシステム。
【請求項33】
生理的信号が電気生理学的信号である、請求項32に記載のコンピュータシステム。
【請求項34】
前記1つ以上のプログラムが、前記呼びかけ機中の前記1つ以上の超音波トランスデューサに対する前記埋め込み型デバイスの位置または動きを測定するための命令を含む、請求項
32または
33に記載のコンピュータシステム。
【請求項35】
前記生理的信号に応答する前記超音波後方散乱が、前記生理的信号をエンコードするデジタル化信号を含む、請求項
32~34のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項36】
前記1つ以上のプログラムが、前記検知された生理的信号を、複数の埋め込み型デバイスのうち、前記生理的信号をエンコードする超音波後方散乱を発した前記埋め込み型デバイスに帰するための命令を含む、請求項
32~35のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項37】
時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いて、前記検知された生理的信号を、前記埋め込み型デバイスに帰する、請求項
36に記載のコンピュータシステム。
【請求項38】
前記生理的信号をエンコードする前記超音波後方散乱にエンコードされる固有の識別子を用いて、前記検知された生理的信号を、前記埋め込み型デバイスに帰する、請求項
36に記載のコンピュータシステム。
【請求項39】
組織中の電気生理学的信号を検知するよう構成された埋め込み型デバイスであって、
1つ以上の埋め込み型デバイスにおいて超音波を受信し、
前記超音波からのエネルギーを、変調回路中を流れる電流に変換し、
前記電気生理学的信号を検知し、
前記電気生理学的信号をデジタル化し、
前記デジタル化された電気生理学的信号に基づき、前記電流を変調し、
前記変調された電流を、前記電気生理学的信号に関する情報をエンコードする超音波後方散乱に変換し、
前記情報はデジタル化されており、
前記超音波後方散乱を受信するよう構成される1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に、前記超音波後方散乱を発するよう構成されている、埋め込み型デバイス。
【請求項40】
前記超音波が、埋め込み型デバイスに電力を供給する、請求項
39に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項41】
前記組織が、筋肉組織または神経組織である、請求項
39または
40に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項42】
前記組織が、末梢神経系の一部、または中枢神経系の一部である、請求項
39または
40に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項43】
前記組織が、脳組織または末梢神経である、請求項
39または
40に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項44】
前記組織が、骨格筋、心筋、または平滑筋である、請求項
39または
40に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項45】
前記デジタル化信号が、固有の埋め込み型デバイス識別子を含む、請求項
39~44のいずれか1項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項46】
前記埋め込み型デバイスが、3個以上の電極を備え、前記デジタル化された電気生理学的信号が、固有の電極対識別子を含む、請求項
39~45のいずれか1項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項47】
組織中の電気生理学的信号を検知するよう構成された呼びかけ機であって、1つ以上の超音波トランスデューサを備え、
1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機から、1つ以上の埋め込み型デバイスに、超音波を送信し、
前記1つ以上の埋め込み型デバイスから、前記電気生理学的信号に関するデジタル化された情報をエンコードする超音波後方散乱を受信するよう構成されている、呼びかけ機。
【請求項48】
前記超音波が、前記1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する、請求項
47に記載の呼びかけ機。
【請求項49】
前記組織が筋肉組織または神経組織である、請求項
47または
48に記載の呼びかけ機。
【請求項50】
前記組織が末梢神経系の一部、または中枢神経系の一部である、請求項
47または
48に記載の呼びかけ機。
【請求項51】
前記組織が脳組織または末梢神経である、請求項
47または
48に記載の呼びかけ機。
【請求項52】
前記組織が骨格筋、心筋、または平滑筋である、請求項
47または
48に記載の呼びかけ機。
【請求項53】
筋電図、神経電気記録図、心電図、複合活動電位、複数のニューロンのマルチユニット活動、局所電場電位、または活動電位を再構築するようさらに構成されている、請求項
47~52のいずれか一項に記載の呼びかけ機。
【請求項54】
前記1つ以上の埋め込み型デバイスの位置または動きを測定するよう構成されている、請求項
47~53のいずれか一項に記載の呼びかけ機。
【請求項55】
前記デジタル化情報が、固有の埋め込み型デバイス識別子を含む、請求項
47~54のいずれか一項に記載の呼びかけ機。
【請求項56】
前記1つ以上の埋め込み型デバイスが、3個以上の電極を備え、前記デジタル化情報が、固有の電極対識別子を含む、請求項
47~55のいずれか一項に記載の呼びかけ機。
【請求項57】
前記1つ以上の埋め込み型デバイスは、複数の埋め込み型デバイスを含む、請求項
47~55のいずれか一項に記載の呼びかけ機。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国仮出願番号62/359,672(2016年7月7日出願、名称「NEURAL DUST AND ULTRASONIC BACKSCATER IMPLANTS AND SYSTEMS, AND APPLICATIONS FOR SUCH SYSTEMS」)に基づく優先権を主張するものであり、該米国仮出願は、すべての目的のため、参照により本明細書に援用される。
【0002】
〔連邦政府資金援助の研究に関する声明〕
本発明は、認可番号HR0011-15-2-0006の下、国防高等研究計画局(DARPA)により与えられた政府支援、および認可番号R21-E027570の下、国立保健研究所(NIH)により与えられた政府支援により成されたものである。
【0003】
〔技術分野〕
本発明は、組織中の電気生理学的電圧信号を検知し、超音波後方散乱を用いて、当該電気生理学的電圧信号を報告する埋め込み型デバイスに関する。
【0004】
〔背景〕
生体電子医学の新たな分野において、生体内の電気生理学的活動を解読し変調して、標的器官における治療効果を達成することが求められている。末梢神経、中枢神経系および筋肉とやり取りする現行のアプローチはワイヤに大きく依存しているため、長期的に使用するには問題があり、一方で、無線による新たなアプローチでは、径が細い神経へ呼びかけるのに必要なサイズのスケーラビリティが欠けている。さらに、従来の電極を用いた技術では、高い空間分解能をもって神経から記録する能力、または神経束中の多数の個別の部位からそれぞれ独立して記録する能力に欠けている。
【0005】
近年の技術的進歩および抜本的発見により、末梢神経系とやり取りする埋め込み型システムに対して新たな関心が抱かれるようになった。睡眠時無呼吸の治療、または下半身不随における膀胱機能の制御のために使用されるような、末梢神経刺激デバイスを用いた初期の臨床的な成功により、臨床医および研究者は、糖尿病から慢性関節リウマチに至る病気を新たな対象として提案するようになった。
【0006】
生理的信号における異常を検知することができ、リアルタイムで刺激パラメータを更新するために使用できる新しい電極を用いた記録技術が必要とされている。このような技術の特徴として、好ましくは、1つの神経における数多くのチャネルの高密度で安定的な記録や、機能的に特定の神経信号および筋電信号を特徴付けることができる無線の埋め込み型モジュールや、直径100mm以下の細い神経、ならびに特定の筋繊維とやり取りすることができるスケーラブルデバイスプラットフォームが挙げられる。末梢神経活動を記録する現行のアプローチは、以下の目標に達していない。例えば、カフス電極は、安定した長期的性能を提供するが、神経全体からの複合活動を記録することに限定される。単一リード維管束内電極は、1つの維管束内の複数の部位から記録することができるが、複数の維管束における個々の部位から高密度な記録をすることはできない。同様に、表面EMGアレイは、非常に高密度な記録をすることができるが、深部の筋肉または小さな筋肉の細かな詳細を捉えることはない。近頃、齧歯類およびヒト以外の霊長類を拘束せずに記録することが可能な無線デバイス、ならびに神経検知用途のmmスケールの集積回路が開発されている。例えば、「Biederman et al., A 4.78 mm2 fully-integrated neuromodulation SoC combining 64 acquisition channels with digital compression and simultaneous dual stimulation, IEEE J. Solid State Circuits, vol. 5, pp. 1038-1047 (2015)」、「Denison et al., A 2μW 100 nV/rtHz chpper-stabilized instrumentation amplifier for chronic measurement of neural field potentials, IEEE J. Solid State Circuits, vol. 42, pp. 2934-2945 (2007)」、および「Muller et al., A minimially invasive 64-channel wireless uECOoG implant, IEE J. Soid State Circuits, vol. 50, pp. 344-359 (2015)」を参照のこと。しかし、ほとんどの無線システムは、電磁(EM)エネルギーカップリング通信を使用しており、組織中の5mm未満の大きさにおいてはカップリング電磁波が非効率的であることから、前記電磁(EM)エネルギーカップリング通信は5mm未満のシステムにおいて非常に非効率的となる。径の細い神経と効率的にやり取りできる無線電子プラットフォームをさらに小型化するには、新たなアプローチが必要とされる。
【0007】
〔発明の概要〕
本明細書中に開示するのは、組織(例えば、筋肉組織または神経組織等)中で、電気生理学的信号を検知するよう構成される埋め込み型デバイス、および電気生理学的信号を検知する方法である。また、本明細書中に開示するのは、1つ以上の埋め込み型デバイスおよび前記1つ以上の埋め込み型デバイスを作動させるための呼びかけ機を有するシステムである。
【0008】
いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、組織に取り付けられ、電気生理学的信号を検知するよう構成される第1電極および第2電極と、マルチトランジスタ回路、および前記電気生理学的信号に基づき、電流を変調するよう構成される変調回路を有する集積回路と、前記変調された電流に基づき、前記組織からの前記電気生理学的信号をエンコードする超音波後方散乱を発するよう構成される超音波トランスデューサと、を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記マルチトランジスタ回路がデジタル回路である。いくつかの実施形態において、前記デジタル回路が、前記変調回路を作動させるよう構成される。いくつかの実施形態において、前記デジタル回路が、前記変調回路にデジタル化信号を送信するよう構成され、前記デジタル化信号は前記検知された電気生理学的信号に基づく。いくつかの実施形態において、前記デジタル化信号が、固有の埋め込み型デバイス識別子または固有の電極対識別子を含む。いくつかの実施形態において、前記デジタル化信号が、アナログ信号に比べ5倍以上圧縮される。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記埋め込み型デバイスは、超音波トランスデューサおよび変調回路を有する本体を備え、前記本体の最大寸法の長さが、約5mm以下である。いくつかの実施形態において、前記第1電極および前記第2電極の間隔が約0.5mm以上離れている。いくつかの実施形態において、前記埋め込み型デバイスは、前記超音波トランスデューサおよび前記変調回路を有する本体を備え、前記本体の体積が約5mm3以下である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記埋め込み型デバイスは、非応答型リフレクタを有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記組織が筋肉組織または神経組織である。いくつかの実施形態において、前記組織が、末梢神経系の一部または中枢神経系の一部である。いくつかの実施形態において、前記組織が脳組織または末梢神経である。いくつかの実施形態において、前記組織が骨格筋、心筋、または平滑筋である。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記埋め込み型デバイスが、3つ以上の電極を有する。いくつかの実施形態において、前記集積回路がスパイク検出器を有する。いくつかの実施形態において、前記集積回路が電源回路を有する。いくつかの実施形態において、前記集積回路がアナログ・デジタル変換器(ADC)を有する。いくつかの実施形態において、前記集積回路が増幅器列を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記超音波トランスデューサが、埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信するよう構成される。いくつかの実施形態において、前記超音波トランスデューサが、1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機からの超音波を受信するよう構成される。いくつかの実施形態において、前記超音波トランスデューサが、バルク圧電トランスデューサ、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)、または容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記埋め込み型デバイスは、対象に埋め込まれる。いくつかの実施形態において、前記対象がヒトである。いくつかの実施形態において、前記組織中、前記組織上、または前記組織の近くに埋め込まれる。いくつかの実施形態において、前記第1電極および前記第2電極が、前記組織中または前記組織上に埋め込まれる。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記埋め込み型デバイスは、生体適合性物質によって少なくとも部分的に被包される。いくつかの実施形態において、前記第1電極および第2電極の少なくとも一部が、前記生体適合性物質によって被包されない。
【0017】
また、本明細書中に開示されるのは、1つ以上の埋め込み型デバイスと、該1つ以上の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、該1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、を有するシステムである。いくつかの実施形態において、前記システムは、複数の埋め込み型デバイスを有する。いくつかの実施形態において、前記呼びかけ機は、送信される超音波をビームステアリングして、該送信される超音波を、前記複数の埋め込み型デバイスの第1部分または前記複数の埋め込み型デバイスの第2部分に交互に集中させるよう構成される。いくつかの実施形態において、前記呼びかけ機は、少なくとも2つの埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を同時に受信するよう構成される。いくつかの実施形態において、前記呼びかけ機は、時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いて、前記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、前記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される。いくつかの実施形態において、前記呼びかけ機は、対象によって着用可能であるよう構成される。
【0018】
さらに、本明細書中に開示されるのは、1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行されるよう構成された1つ以上のプログラムを保存する、コンピュータにより読取可能な非一時的記憶媒体と、を備え、前記1つ以上のプログラムが、埋め込み型デバイスから発せられる電気生理学的パルスをエンコードする超音波後方散乱に基づく、電気生理学的信号を検知するための命令、および、前記埋め込み型デバイスから発せられる前記電気生理学的パルスに応答しない超音波後方散乱に基づき、前記呼びかけ機中の前記1つ以上の超音波トランスデューサに対する前記埋め込み型デバイスの位置を測定するため、または前記埋め込み型デバイスの動きを検知するための命令を含む、コンピュータシステムである。いくつかの実施形態において、前記1つ以上のプログラムが、前記呼びかけ機中の前記1つ以上の超音波トランスデューサに対する前記埋め込み型デバイスの位置または動きを測定するための命令を含む。いくつかの実施形態において、前記電気生理学的信号に応答する前記超音波後方散乱が、前記電気生理学的信号をエンコードするデジタル化信号を含む。いくつかの実施形態において、前記1つ以上のプログラムが、前記検知された電気生理学的信号を、複数の埋め込み型デバイスのうち、前記電気生理学的信号をエンコードする超音波後方散乱を発した前記埋め込み型デバイスに帰するための命令を含む。いくつかの実施形態において、時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いて、前記検知された電気生理学的信号を、前記埋め込み型デバイスに帰する。いくつかの実施形態において、前記電気生理学的パルスをエンコードする前記超音波後方散乱にエンコードされる固有の識別子を用いて、前記検知された電気生理学的信号を、前記埋め込み型デバイスに帰する。
【0019】
また、本明細書中に開示されるのは、組織中の電気生理学的信号を検知する方法であって、1つ以上の埋め込み型デバイスにおいて超音波を受信する工程と、前記超音波からのエネルギーを、変調回路中を流れる電流に変換する工程と、前記電気生理学的信号を検知する工程と、前記電気生理学的信号をデジタル化する工程と、前記デジタル化された電気生理学的信号に基づき、前記電流を変調する工程と、前記変調された電流を、前記電気生理学的信号に関する情報をエンコードする超音波後方散乱に変換する工程と、前記超音波後方散乱を受信するよう構成される1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に、前記超音波後方散乱を発する工程と、を含む方法である。
【0020】
いくつかの実施形態において、組織中の電気生理学的信号を検知する方法であって、1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機から、1つ以上の埋め込み型デバイスに、超音波を送信する工程と、1つ以上の埋め込み型デバイスから、前記電気生理学的信号に関するデジタル化された情報をエンコードする超音波後方散乱を受信する工程と、を含む方法がある。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記呼びかけ機を用いて、前記超音波後方散乱を受信する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記超音波が、前記1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する。
【0022】
本明細書中に開示される方法のいくつかの実施形態において、前記組織が筋肉組織または神経組織である。いくつかの実施形態において、前記組織が末梢神経系の一部、または中枢神経系の一部である。いくつかの実施形態において、前記組織が脳組織または末梢神経である。いくつかの実施形態において、前記組織が骨格筋、心筋、または平滑筋である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記方法は、筋電図、神経電気記録図、心電図、複合活動電位、複数のニューロンのマルチユニット活動、局所電場電位、または活動電位を再構築する工程を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記1つ以上の埋め込み型デバイスを埋め込む工程を含む。いくつかの実施形態において、前記対象がヒトである。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記1つ以上の埋め込み型デバイスの位置または動きを測定する工程を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法において、前記デジタル化信号が、固有の埋め込み型デバイス識別子または固有の電極対識別子を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法において、前記1つ以上の埋め込み型デバイスは、複数の埋め込み型デバイスを含む。
【0028】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)に開示される、外部のトランシーバ、硬膜下の呼びかけ機、およびニューラルダストモートを含む、ニューラルダストシステムの概略図である。
【0029】
図2Aは、本明細書中で開示されるシステムにおける、例示的な呼びかけ機のブロック図である。図解される呼びかけ機は、複数の超音波トランスデューサを含む超音波トランスデューサアレイを含む。前記超音波トランスデューサアレイ中の各超音波トランスデューサは、チャネルにより作動する。前記チャネルは、前記トランスデューサが、超音波を受信または送信するよう、交互に構成するスイッチを含む。
図2Bは、本明細書中に開示されるシステムにおける、別の例示的な呼びかけ機の概略図である。図解される呼びかけ機は、2つの超音波トランスデューサアレイを含み、それぞれの超音波トランスデューサアレイが、複数の超音波トランスデューサを含む。また、前記呼びかけ機は、集積回路を含む。前記集積回路はデジタル回路を含んでもよく、前記デジタル回路はプロセッサを含んでもよい。前記集積回路は、ユーザインターフェース(ディスプレイ、キーボード、ボタン等を含み得る)、記憶媒体(すなわち、非一時的記憶装置)、入出力装置(無線(例えば、Bluetooth(登録商標))であってよい)、および電源装置(例えば、バッテリ)に接続される。
【0030】
図3Aは、対象により着用可能である、例示的な呼びかけ機のブロック図を表す。前記呼びかけ機は、無線通信システム(図中では、Bluetooth(登録商標)無線)を含む。前記無線通信システムは、コンピュータシステムとの通信のために用いられてよい。
図3Bは、着用可能な呼びかけ機の分解図を表す。前記呼びかけ機は、バッテリ、無線通信システム、およびトランスデューサアレイを含む。
図3Cは、対象へ取り付けるためのハーネスを付けて完全に組み立てた、
図3Bで示した着用可能な呼びかけ機を表す。
図3Dは、対象、すなわちげっ歯類(ただし、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、マウス等、任意の動物であってよい)に取り付けられた、着用可能な呼びかけ機を示す。前記呼びかけ機は、トランスデューサアレイを含む。前記トランスデューサアレイは、接着材で対象の体に固定される。
図3Eは、
図3A~
図3Dで示した呼びかけ機のトランスデューサアレイの断面図を示す。
【0031】
図4は、呼びかけ機中のトランスデューサと、小型化超音波トランスデューサを有する埋め込み型デバイスとの間の通信を表す概略図である。前記呼びかけ機は、埋め込み型デバイスへ超音波を送信し、小型化超音波トランスデューサは、センサによって変調された超音波後方散乱を発する。そして、呼びかけ機が後方散乱を受信する。
【0032】
図5Aは、呼びかけ機から発せられる超音波パルスの一連のサイクルを表す。呼びかけ機のトランシーバ基板が、前記呼びかけ機(例えば、FPGA)からのトリガーを受信すると、一連の送信パルスを発生させる。送信サイクルの最後に、ASIC上のスイッチは、送信モジュールとの接続を絶ち、受信モジュールと接続する。各サイクルは、100マイクロ秒である。
図5Bは、
図5Aで示した送信パルスシーケンス(つまり、1サイクル)の拡大図を表す。前記サイクルにおいて、1.85MHzの超音波パルスが6つ存在し、前記超音波パルスは、540ナノ秒毎に繰り返し発生する。
図5Cは、埋め込み型デバイスから発せられる超音波後方散乱を示す。超音波後方散乱は、約2tレイリーで呼びかけ機のトランスデューサに届く。
図5Dは、超音波後方散乱の拡大図を示し、該超音波後方散乱は分析可能である。超音波後方散乱の分析は、超音波後方散乱波のフィルタリング工程、整流化工程、および積分工程を含む。
図5Eは、フィルタリングされた超音波後方散乱波の拡大図を示す。前記後方散乱波は、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答する応答領域と、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答しない非応答領域とを含む。
【0033】
図6は、小型化トランスデューサ、電極対によって検知される電気生理学的信号に基づき、小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流を変調するよう構成される変調回路を有する、埋め込み型デバイスの一実施形態を図示する。
【0034】
図7Aは、ASICに接続された小型化超音波トランスデューサ(「圧電素子」と称される)の一実施形態を図示する。ASICは、電源回路および変調回路(または、「後方散乱回路」)を有する。電源回路は、エネルギー貯蔵キャパシタ(「cap」)を有する。電極は、組織中に埋め込まれ得る。
【0035】
図7Bは、小型化超音波トランスデューサ、および集積回路、および電極対を有する、埋め込み型デバイスを図示する。集積回路は、変調回路、AC複合増幅器列、および電源回路を有する。前記電源回路は、全波整流器、および倍電圧器、基準(reference)、およびレギュレータを有する。
図7Cは、
図7Bで示される集積回路において使用され得る、例示的な整流器を図示する。
図7Dは、
図7Bで示される集積回路において使用され得る、例示的な増幅器列を図示する。
【0036】
図8Aは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図8Bは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、別の例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【0037】
図9は、本明細書中に記載の埋め込み型デバイスの製造方法を図解する。
【0038】
図10は、非晶質炭化珪素を含む埋め込み型デバイスの被包方法のフローチャートである。
【0039】
図11Aは、埋め込み型デバイスの構成要素を接続するために使用する異なる形状のビアを示す。
図11Bは、変形可能な相互接続用の、蛇行したトレース配置を示す。
【0040】
図12は、銀エポキシを硬化させるための時間と温度の関係を示す。銀エポキシは、埋め込み型デバイスの製造においてワイヤボンドを取り付けるための材料の一例である。
【0041】
図13は、埋め込み型デバイスを用いて記録された、神経電気記録図(ENG)を示す。点線は、グラウンドトルース電極によって記録された信号を示す。得られたデータから、複合活動電位を含む一般的な特徴が再構築された。前記一般的な特徴は、グラウンドトルースの特徴と一致する。
【0042】
図14は、埋め込み型デバイスを炭化珪素中に被包するための概略図を示す。
【0043】
図15は、プロトタイプのアセンブリの概略とPCBを示す。
【0044】
図16A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図16Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図16Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図16Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図16Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図16Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【0045】
図17は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いた電気インピーダンス測定の概略図を示す。
【0046】
図18Aは、異なる大きさのバルク圧電超音波トランスデューサにおいて測定された電力伝達効率が、シミュレートされた挙動と一致することを示す。
図18Bは、測定されたPZT結晶のインピーダンス分光が、シミュレーションと一致することを示す。
図18Cは、小型化超音波トランスデューサの得られた電力に対する周波数応答が、約6.1MHzであることを示す。
【0047】
図19は、呼びかけ機の一部として使用することができる、例示的な超音波トランスデューサの概略図である。
【0048】
図20は、電力送達の確認のための、校正済み超音波トランスデューサを用いた音響特徴付け設備の概略図である。超音波受信機は超音波送信機とは別個のものである。
【0049】
図21Aは、ハイドロフォンをトランスデューサの表面から遠ざけたときの5MHzトランスデューサの出力を表す。
図21Bは、軽減出力のピークが水におけるピークに比べて、左にシフトしていることを示す。
【0050】
図22Aは、トランスデューサの出力のXZ断面図を示しており、レイリー距離と、近距離から遠距離への伝播の鮮明な変遷とを図示する。
図22Bは、2.2mmのビームの6dBの帯域を示すXYビーム断面図を示す。
【0051】
図23Aは、XY平面における、トランスデューサアレイからの集束された2次元ビームパターンを示す。測定されるビームは、X方向およびY方向の両方において、シミュレートされたビームに近接している。
図23Bは、超音波トランスデューサアレイ中の各トランスデューサ素子に適用された遅延時間を示す。
図23Cは、シミュレートされた2次元XZ断面のビームパターンを示す。
【0052】
図24Aは、トランスデューサアレイから送信される超音波ビームのビームステアリングを示す。各ビームパターンの下は、
図24Bに示すように、トランスデューサアレイ中の各トランスデューサが測定されたビームパターンを得るのに要する遅延である。
図24Cは、
図24Aで示したそれぞれのビームパターンの、X軸における1次元ビームパターンを示す。測定されたビームパターンは、シミュレートされたビームパターンに非常に近似している。
【0053】
図25は、組織中、5mmの送信距離における、シミュレートされた小型化超音波トランスデューサの連結効率および受信電力を示す。
【0054】
図26A~Dは、埋め込み型デバイスを有する、例示的なシステムの概要を示す。
図26Aは、体内に局所的に配置された埋め込み型デバイスに電力を供給し、前記埋め込み型デバイスと通信する外部のトランスデューサを示す。カスタムされたトランシーバ基板によって駆動され、トランスデューサは、デバイスに電力を供給する一連のパルスの送信と、電気生理学的信号によって変調される反射されたパルスの受信とを交互に行う。
図26Bは、麻酔されたラットの坐骨神経に固定された埋め込み型デバイスを示す。
図26Bの挿入部分は、任意のテストリード線を有する埋め込み型デバイスを示す。
図26Cは、例示的な埋め込み型デバイスの構成要素を示す。埋め込み型デバイスは、柔軟性のあるPCB上に組み立てられ、圧電性結晶、1つのカスタムされたトランジスタ、および記録電極対を有する。
図26Dは、柔軟性のあるPCB上の、圧電性結晶上で得られた電子生理学的信号(グラウンドトルース)および電圧を測定するための校正リード線を有する、埋め込み型デバイスの拡大図を示す。インビボでの実験中は校正リード線を外した。
【0055】
図27は、例示的な呼びかけ機および埋め込み型デバイス間の通信を図示する。
図27の上部は、情報の流れの概略図である。
図27の下部は、図の上部に示される図解で表される各ステップにおける、信号の時間経過を表す。
図27Aでは、呼びかけ機からのFPGAが、記録開始のトリガー信号を発生する。
図27Bは、埋め込み型デバイス上の記録電極に送られた細胞外電気生理学的電位を示す。
図27Cは、FPGAからのトリガーを受信する際、トランシーバ基板が一連の送信パルスを発生させることを示す。送信サイクルの最後には、呼びかけ機のASIC上のスイッチは、送信モジュールとの接続が断たれ、受信モジュールと接続される。
図27Dは、1.85MHzで、6パルスを示す、連続する送信パルスの拡大図を示す。
図27Eは、埋め込み型デバイスからの後方散乱を示す。前記後方散乱は、約2tレイリー距離のトランスデューサまで到達する。
図27Fは、後方散乱波形の拡大図を示す。後方散乱波形は、大きな飽和信号を含み、飽和信号の送信パルスとの重複は、電気的にフィードスルーし、無視される。後方散乱パルスが戻る際に、後方散乱パルスが送電窓に続いて確認され得る。
図27Gは、フィルタリングされ、整流化された後方散乱波形、および波形を再構築するために計算された曲線下の領域を示す。
図27Hは、10kHzでサンプリングされた、再構築された波形を示す。100μs毎に受信した、適切に反射されるパルスの曲線下の領域を算出することで、再構築された波形の各部を計算する。
【0056】
図28Aは、例示的トランスデューサ(呼びかけ機)の表面からの距離の関数としての、低減された正規化ピーク圧力が、1.85MHzの際、約8.9mmで低減された焦点を有することを示す。
図28Bは、近距離、レイリー距離、および遠距離における、XY断面のビームパターンおよびそれに対応するy=0のときの1次元電圧プロットを示す。これらのパターンは、レイリー距離においてビームが集束していることを示す。
図28Cは、トランスデューサの出力圧力は、入力電圧の一次関数であることを示す(最高32Vのピーク間電圧)。
図28Dは、別の文脈において示した
図5Eの再現)は、異なる領域で示される例示的な後方散乱波形である。後方散乱波形は、非応答領域から発生する反射に対応する領域によって(時間的に)両側を挟まれていることがわかる;これらの領域は、他のデバイスの構成要素から反射したパルスに対応している。非応答領域における測定を基準としてもよい。ここで、前記非応答領域は、生物学的データを読み込んだものではない。このように区別して測定を行うことで、実験における外部のトランスデューサに関するすべての構成の動作を、差し引くことができる。
図28Eは、カスタムした水タンク設備から得られる校正曲線であり、ノイズフロアは0.18mV
rmsであることを示す。
図28Fは、ビームパターン出力の減退に続く、横への照準ミスの関数としてのノイズフロアの影響を示す。
図28Gは、レイリー距離における、y=0のときのトランスデューサの軸外し電圧および出力低下の1次元のプロットを示す。
図28Hは、角度の照準ミスに対する、低下のプロットを表す。角度の照準ミスによって、ビームパターンが歪む。つまり、ビームパターンが円ではなく、反対に長円形となる。これにより、焦点の半径が長くなる(そして、より広い範囲へとエネルギーが分散する)。つまり、焦点の歪みが、照準ミスにおける制約を緩和する。
【0057】
図29Aは、ラットの腓腹筋からEMGを記録するための、インビボにおける実験設備を示す。埋め込み型デバイスは、露出した筋肉表面上に配置され、傷口を外科縫合によって閉じた。外部のトランスデューサは超音波を埋め込み型デバイスとつなげ、無線データが記録され、コンピュータシステム(例えば、ラップトップコンピュータ)上に表示される。
図29Bは、複数回の試験を通しての、グラウンドトルース測定と再構築されたEMG信号との比較を示す。20m秒のサンプルが記録され、刺激の間隔は6秒であった。
図29Cは、記録されるEMG信号の電力スペクトル密度(PSD)を示す。当該電力スペクトル密度(PSD)は、グラウンドトルースおよび再構築されたダストデータそれぞれに対して、107Hzで4.29e4μV2/Hzおよび3.11e4μV2/Hzであり、波形の端により、いくつかの調波が見られた。
図29Dは、t=0分、およびt=30分に記録された無線後方散乱データがR=0.901で一致したことを示す。
【0058】
図30Aは、PCB上の電極を用いて刺激強度を変えてインビボで記録された、さまざまな強度のEMG信号を示す。
図30Bは、埋め込み型デバイスを用いて、類似した勾配のEMG応答が無線に記録されたことを示す。
図30Cは、グラウンドトルースおよび無線後方散乱データから再構築されたEMG信号が、応答飽和刺激振幅(response-saturating stimulation amplitude)(100%)の場合、R=0.795で一致した(54%、69%、77%、89%の場合、それぞれR=0.60、0.64、0.67、0.92で一致した)ことを示す。
図30Dにおいて、定量的比較により、顕著な特徴との0.4mV未満の一致が示された。
図30Eにおいて、EMGピーク間電圧は、刺激強度との予測されたS字形相関を示した。
【0059】
図31Aは、PCB上の電極を用いて刺激強度を変えてインビボで記録された、さまざまな強度のENG信号を示す。
図31Bは、モートを用いて、類似の勾配のENG応答が無線で記録されたことを示す。
図31Cは、グラウンドトルースおよび無線後方散乱データから再構築されたENG信号が、応答飽和刺激振幅(response-saturating stimulation amplitude)(100%)の場合、R=0.886で一致した(44%、61%、72%、83%、89%の場合、それぞれR=0.822、0.821、0.69、0.918、0.87で一致した)ことを示す。
図31Dにおいて、定量的比較により、顕著な特徴との0.2mV未満の一致が示された。
図31Eにおいて、ENGピーク間電圧は、刺激強度との予測されたS字形相関を示した。
【0060】
図32Aは、異なる電極間隔におけるENG応答を、時間経過で記録したものを示す。
図32Bは、様々な電極間隔におけるピーク間ENGを示す。
【0061】
図33Aは、組織を模倣するために使用される超音波カップリングゲルに埋め込まれた埋め込み型デバイスを用いた、埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を示す。前記超音波散乱は、26マイクロ秒に集中する送信貫通および終了、および47マイクロ秒付近に集中する小型化超音波トランスデューサ後方散乱を含む。
図33Bは、小型化超音波トランスデューサの後方散乱領域(応答領域)の拡大図である。これは、埋め込み型デバイスへの信号入力の結果、振幅が変調されることを示す。
【0062】
図34は、単極でエンコードすることで、後方散乱の振幅パルスの変調により、埋め込み型デバイスから無線で得られる、ASCII文字「hello world」に対応するデジタルデータを示す。
【0063】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書中に記載の埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(小型化圧電トランスデューサ等)および電気生理学的電圧信号(活動電位等)を検出するよう構成される2つ以上の電極を含む。電気生理学的電圧信号は、例えば、神経組織または筋肉組織中で検知される。前記小型化超音波トランスデューサは、呼びかけ機からの超音波エネルギーを受信し、埋め込み型デバイスに電力を供給する。前記呼びかけ機は、外部の呼びかけ機であっても、埋め込まれた呼びかけ機であってもよい。前記呼びかけ機は、送信器および受信器を含み、前記送信器および受信器は、同一の構成要素上にあってもよく、異なる構成要素上にあってもよい。ここで、送信器および受信器は、複合トランシーバとして統合されていてもよい。呼びかけ機から送信される超音波の力学的エネルギーが、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを振動させ、小型化超音波トランスデューサが電流を発生させる。小型化超音波トランスデューサにおける電流の流れは、埋め込み型デバイス中の電気回路によって、検出された電気生理学的電圧信号に基づいて変調され、変調された電流は小型化超音波トランスデューサを通過する。小型化超音波トランスデューサは、検知された電気生理学的電圧信号を表す情報を通信する超音波後方散乱を発する。発せられた超音波後方散乱は、呼びかけ機の受信器構成要素によって検知される。
【0064】
埋め込み型デバイスの重要な利点は、無線で電力を供給されながら、深層組織における電気生理学的電圧信号を検出でき、検出された電気生理学的信号に関する情報を呼びかけ機へ無線で送信できる点である。前記呼びかけ機は、外部の呼びかけ機であってもよく、外部の構成要素へ情報を中継する呼びかけ機であってもよい。以上のことから、埋め込み型デバイスは、バッテリを充電する必要もなく、またはデバイスに保存された情報を回収する必要もなく、長期間、対象の中に留めておくことができる。上述の利点によって、今度は、デバイスの小型化、および製造コスト削減が可能となる。別の利点として、超音波を使用することで、データ通信の相対的時間と距離を関連付けることができ、これは、埋め込み型デバイスのリアルタイムの位置または移動の決定に役立つ。
【0065】
電磁(EM)力伝達は、小さな埋め込み型デバイスに電力を供給するには実用的でない。なぜなら、組織およびそれらのエネルギーを得るのに必要とされる比較的大きな開口部(例えば、アンテナまたはコイル等)において力が減衰するからである。例えば、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)を参照のこと。埋め込まれたデバイスへの十分な電力供給のためにEMを使用するには、インプラントを浅い位置に埋め込む必要があり、EM波が組織中を通って埋め込み型デバイスに到達するために、組織を余分に加熱する必要がある。EMとは反対に、超音波伝達は、組織内での電力の減衰が低い。これは、組織による超音波エネルギーの吸収量が比較的低く、(電磁波に比べて)超音波の波長が短いためである。さらに、超音波によって供給された波長が短いほど、電波よりも低い周波数でより高い空間分解能を示す。
【0066】
超音波トランスデューサは、画像化、高強度集束超音波(HIFU)、物質の非破壊検査、スチールウォールを通しての通信および電力供給、水中通信、経皮的電力供給、およびエネルギー収集を含む、種々の分野における用途が発見されている。例えば、Ishida et al., Insole Pedometer with Piezoelectric Energy Harvester and 2 V Organic Circuits, IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 48, no. 1, pp. 255-264 (2013)、Wong et al., Advantages of Capacitive Micromachined Ultrasonics Transducers (CMUTs) for High Intensity Focused Ultrasound (HIFU), IEEE Ultrasonics Symposium, pp. 1313-1316 (2007)、Ozeri et al., Ultrasonic Transcutaneous Energy Transfer for Powering Implanted Devices, Ultrasonics, vol. 50, no. 6, pp. 556-566 (2010)、およびRichards et al., Efficiency of Energy Conversion for Devices Containing a Piezoelectric Component, J. Micromech. Microeng., vol. 14, pp. 717-721 (2004)を参照のこと。電磁とは異なり、エネルギー伝達方法として超音波を使用することは、広く普及した民生的用途に含まれることはなく、しばしば見逃されていた。なぜなら、短距離で大きな開口部がある場合、電磁の効率の方が優れているからである。しかし、本明細書中で論じられる埋め込み型デバイスの大きさであって組織内にある場合、低音速であることで劇的に低い周波数による作動が可能であり、かつ、一般的に、組織中の音波のロスは、組織中の電磁の減衰よりも実質的に少ない。
【0067】
超音波は比較的に低音速であることから、EMと比較して波長が実質的に短い。よって、同じ送信距離の場合、超音波システムは、遠距離においてより作動しやすく、そのために、EM送信器よりも広い空間を範囲とすることができる。さらに、組織中の音波のロスは、基本的に組織中の電磁の減衰よりも小さい。これは、音波の伝達が、組織の表面に変位電流を発生させる時間依存的な電場および/または磁場よりも、組織の圧縮や希薄化に依存しているためである。
【0068】
いくつかの実施形態において、「ニューラルダスト」システムは、ニューラルダスト、または「モート」と称する、非常に小さな体内埋め込み型デバイスと、超音波送信およびモートから反射される後方散乱送信を用いて該モートのそれぞれと通信する埋め込み型超音波トランシーバと、該超音波トランシーバと無線通信する外部のトランシーバとを有する。「Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013) (“Seo et al., 2013”)」、「Seo et al., Model validation of untethered, ultrasonic neural dust motes for cortical recording, J. Neuroscience Methods, vol. 244, pp. 114-122 (2014) (“Seo et al., 2014”)」、および「Bertrand et al., Beamforming approaches for untethered, ultrasonic neural dust motes for cortical recording: a simulation study, IEE EMBC, vol. 2014, pp. 2625-2628 (2014)」を参照のこと。これらの論文に記載されたニューラルダストシステムは、皮質記録(すなわち、脳の電気信号の記録)に用いられる。これらの論文に示された当該用途では、Seo et al., 2013の
図1に示されるように、モートが脳組織(皮質)に埋め込まれ、超音波トランシーバが硬膜の下方、皮質上に埋め込まれ、外部のトランシーバが、患者の頭部の、硬膜下超音波トランシーバが埋め込まれた場所に近接する位置に設置される。
【0069】
Seo et al., 2013およびSeo et al., 2014において、理論上、ニューラルダストシステムを、無線で神経データを記録するための小型のインプラント(ミリスケール以下)の開発のために使用することができることが示された。電気生理学的信号の正確な検出は、埋め込み型デバイスの位置または動きを正確に測定することで高められる。これにより、検出された信号を該信号を生成した組織に正確に帰すること、および、動きにより生じ得る反射信号をフィルタリングすることが確実に行われる。本明細書に記載されるように、埋め込み型デバイスの位置および動きを、非応答型超音波後方散乱を分析することで正確に測定することができる。さらに、埋め込み型デバイスは、超音波後方散乱にエンコードされたデジタル化信号を送信できることがわかっている。デジタル化信号により、電気生理学的信号検出(例えば、偽陽性信号をフィルタリングすることによる検出)の信頼性や、データ圧縮の信頼性が向上する(これは、例えば、埋め込み型デバイスが複数の電極を含む場合、特に有利となり得る)。また、複数の埋め込み型デバイスを使用する場合、または埋め込み型デバイスが複数の電極を含む場合、デジタル化信号により、超音波後方散乱中に固有の識別信号を含めることができる。
【0070】
さらに、本明細書中に記載の埋め込み型デバイスを、末梢神経または筋肉組織で発生する電気生理学的信号を含む電気生理学的信号を、インビボにおいて検知するために使用できることがわかっている。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、神経組織(中枢神経系または末梢神経系中の組織等)または筋肉組織(平滑筋、骨格筋、または心筋等)に取り付けられ、神経電気記録図、心電図、または筋電図を報告するために使用できる。いくつかの実施形態において、神経組織または筋肉組織への取り付けは、埋め込み型デバイスが神経組織または筋肉組織を完全には囲まないように行われる。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、神経組織もしくは筋肉組織上にあり、または神経組織もしくは筋肉組織に埋め込まれており、または神経組織もしくは筋肉組織と隣接している。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスの電極を、神経組織または筋肉組織に取り付ける。例えば、電極は、神経組織または筋肉組織上にあってもよく、神経組織(例えば、神経鞘を貫通することによる)または筋肉組織に埋め込まれていてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の電極はカフス電極を含み、前記カフス電極は、組織を部分的に囲んでもよい。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは組織近くに位置し、電極は、埋め込み型デバイスから広がって組織に到達してもよい。
【0071】
神経組織は、中枢神経系(脳(例えば、皮質)または脊髄等)の一部であってもよく、末梢神経系(体性神経または自律神経系の神経であり得る神経等)の一部であってもよい。例示的な神経は、坐骨神経、迷走神経、迷走神経枝、脛骨神経、脾神経(spenic nervie)、内臓神経、陰部神経、仙骨神経、眼窩上神経、後頭神経を含む。筋肉組織は、例えば、骨格筋、平滑筋または心筋であってもよい。例示的な筋肉は、腓腹筋、骨盤筋、胃平滑筋および心筋を含む。
【0072】
本明細書中に記載される埋め込み型デバイスは、対象(すなわち、動物)の中に埋め込まれてもよく、また、対象の中で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。例えば、対象は、げっ歯類(マウス、ラット、またはモルモット等)、ネコ、イヌ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、ニワトリ、コウモリ、サル等が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0073】
<定義>
本明細書中に使用される場合、単数形(a、an、およびthe)は、文脈中で特に明記されていない場合、複数形を含む。
【0074】
本明細書中の値やパラメータにおける「約」とは、当該値およびパラメータ自体を対象としたばらつきを含む(かつ、意味する)。例えば、「約X」との記載は、「X」の記載を含む。
【0075】
「小型化」なる用語は、最大寸法の長さが約5ミリメートル以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、または約0.5mm以下)である任意の材料または構成要素を表す。特定の実施形態において、「小型化」材料または「小型化」構成要素の最大寸法の長さは、約0.1mm~約5mm(例えば、約0.2mm~約5mm、約0.5mm~約5mm、約1mm~約5mm、約2mm~約5mm、約3mm~約5mm、または約4mm~約5mm)である。また、「小型化」は、体積が約5mm3以下(例えば、約4mm3以下、3mm3以下、2mm3以下、または1mm3以下)の任意の物質または構成要素を表すことができる。特定の実施形態において、「小型化」物質または「小型化」構成要素の体積は、約0.5mm3~約5mm3、約1mm3~約5mm3、約2mm3~約5mm3、約3mm3~約5mm3、または約4mm3~約5mm3である。
【0076】
「圧電トランスデューサ」は、圧電材料を含む超音波トランシーバの1種である。圧電材料は、水晶、セラミック、ポリマー、またはその他の任意の天然圧電材料もしくは合成圧電材料であってよい。
【0077】
「対象」なる用語は、動物を表す。
【0078】
「非応答型」超音波は、検出信号から独立した反射率を有する超音波である。「非応答型リフレクタ」は、反射された波形が検出信号から独立するように超音波を反射する、埋め込み型デバイスの一構成要素である。
【0079】
本明細書に記載の発明の各態様および各変形例は、各態様および各変形例から「構成される(consisting)」および/または「本質的に構成される(cosisting essentially of)」ことを含むと理解されたい。
【0080】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限値および下限値の間に介在する各値、および、記載された範囲内でその他に記載された値もしくは介在する値は、本開示の範囲に包含されることを理解されたい。記載された範囲が上限値または下限値を含む場合、これらの上限値および下限値を除外した範囲もまた、本開示に含まれる。
【0081】
本明細書に記載される種々の実施形態における1つ以上またはすべての特性を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成してもよい。本明細書で使用される見出しは構成上のものであり、記載された発明の主題を限定すると解釈されるべきでない。
【0082】
「実施形態」に関して上述した特徴および好ましい構成は、別個の好ましい構成であって、当該特定の実施形態のみに限定されるものではない。特徴および好ましい構成は、技術的に可能であれば、その他の実施形態の特徴と自由に組み合わせてよく、各特徴の好ましい組み合わせを形成してもよい。
【0083】
本明細書は、当業者が本発明を実施および使用できるようにするためのものであり、特許出願およびその各要件の文脈において提示される。記載される各実施形態に対する種々の変更は、当業者にとって容易に理解できるものであり、本明細書中の一般的原理をその他の実施形態に適用してもよい。そのため、本発明は示される実施形態に限定されることを意図しておらず、本明細書に記載の原理および特徴と一致する最も広い範囲を有すると認められるべきである。また、見出しは構成上のものであり、限定的なものと見なされるべきではない。最後に、本願に引用されるすべての特許文献および刊行物の開示は、すべての目的のため、参照により本明細書中に援用される。
【0084】
<呼びかけ機>
呼びかけ機は、超音波を用いて、1つ以上の埋め込み型デバイスと無線通信することができる。超音波は、埋め込み型デバイスへ電力を供給し、かつ/または埋め込み型デバイスを作動させるために使用される。呼びかけ機は、さらに、埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を受信することができる。超音波後方散乱は、検知された電気生理学的電圧信号を表す情報をエンコードする。呼びかけ機は、1つ以上の超音波トランスデューサを含む。超音波トランスデューサは、超音波送信器および/または超音波受診器(または、超音波を交替で送信または受信するよう構成され得るトランシーバ)として作動できる。1つ以上のトランスデューサは、トランスデューサアレイとして配置されてもよく、呼びかけ機は、任意で1つ以上のトランスデューサアレイを含んでもよい。いくつかの実施形態では、超音波送信機能は、別のデバイス上の超音波受信機能から分離されている。つまり、任意で、呼びかけ機は、埋め込み型デバイスへ超音波を送信する第1デバイス、および埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信する第2デバイスを含む。いくつかの実施形態では、アレイ中の各トランスデューサは、規則的な間隔で配置されてもよく、不規則的な間隔で配置されてもよく、またはまばらに配置されてもよい。いくつかの実施形態では、アレイは柔軟性に富んでいる。いくつかの実施形態では、アレイは平面であり、いくつかの実施形態では、アレイは非平面である。
【0085】
例示的な呼びかけ機を、
図2Aに示す。図解される呼びかけ機は、複数の超音波トランスデューサを有するトランスデューサアレイを示す。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイは、1つ以上、2つ以上、3つ以上、5つ以上、7つ以上、10以上、15以上、20以上、25以上、50以上、100以上、250以上、500以上、1000以上、2500以上、5000以上、10,000以上またはより多くのトランスデューサを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイは、100,000以下、50,000以下、25,000以下、10,000以下、5000以下、2500以下、1000以下、500以下、200以下、150以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、7つ以下、または5つ以下のトランスデューサを含む。トランスデューサアレイは、例えば、超音波トランスデューサピクセルを50以上含むチップであってもよい。
図2Aに示される呼びかけ機は、1つのトランスデューサアレイを図解している。しかし、呼びかけ機は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上の別個のアレイを含んでもよい。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、10以下のトランスデューサアレイ(例えば、9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つのトランスデューサアレイ)を含む。別個のトランスデューサアレイは、例えば、対象の異なる部分に配置することができ、かつ、同じ埋め込み型デバイス、または異なる埋め込み型デバイスと通信することができる。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイを、埋め込み型デバイスの両側に配置する。呼びかけ機は、ASICを含んでいてもよい。ASICは、トランスデューサアレイ中の各トランスデューサのためのチャネルを含む。いくつかの実施形態では、チャネルはスイッチを含む(
図2A中、「T/Rx」として示される)。スイッチは、チャネルに接続されたトランスデューサを、超音波を送信または超音波を受信するよう交互に構成することができる。スイッチは、超音波受信回路を、より高電圧の超音波送信回路から絶縁することができる。いくつかの実施形態では、チャネルに接続されたトランスデューサは、超音波を受信するのみに構成されるか、または超音波を送信するのみに構成され、スイッチは任意でチャネルから省かれる。チャネルは、遅延制御部を含んでいてもよい。遅延制御部は、送信される超音波を制御するために作動する。遅延制御部は、例えば、位相シフト、時間遅延、パルス周波数、および/または波形(振幅および波長を含む)を制御することができる。遅延制御部は、レベルシフタに接続されていてもよい。レベルシフタは、遅延制御部からの入力パルスを、トランスデューサが超音波を送信するために用いるより高い電圧へとシフトさせる。いくつかの実施形態では、各チャネルにおいて波形および周波数を示すデータを、「波形表(wave table)」に保存してもよい。これにより、各チャネルにおける送信波形が異なっていてもよい。そして、遅延制御部およびレベルシフタを用いて、このデータを、トランスデューサアレイへ送る実際の送信信号へと「ストリーム」出力してよい。いくつかの実施形態では、各チャネルにおける送信波形が、マイクロコントローラまたはその他のデジタルシステムからの高速シリアル出力から直接的に生成され、レベルシフタまたは高電圧増幅器を介してトランスデューサ素子へ送られてもよい。いくつかの実施形態では、ASICは、ASICへ供給される第1電圧をより高電圧の第2電圧へ変換する、チャージポンプを含む(
図2Aに図示)。第2電圧はチャネルへ印加される。チャネルを、遅延制御部を作動させるコントローラ(例えば、デジタルコントローラ)によって制御することができる。超音波受信回路において、受信された超音波は、(受信モードに設定された)トランスデューサによって電流へ変換され、該電流はデータ収集回路に送信される。いくつかの実施形態では、受信回路中に、(組織における損失を補うことができる)増幅器、アナログ・デジタル変換器(ADC)、可変利得増幅器(variable-gain-amplifier)または時間利得制御可変利得増幅器(time-gain-controlled variable-gain-amplifier)、および/またはバンドパスフィルタを含む。ASICは、電源から電力を引き込むことができる。電源の例はバッテリであり、これは、呼びかけ機が着用可能である実施形態で好ましい。
図2Aに示す実施形態では、1.8Vの電源からASICへ電圧が供給され、チャージポンプによって32Vまで増大される。しかし、任意の適切な電圧を使用することができる。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、プロセッサおよび/または非一時的でコンピュータで読み取り可能な記憶装置を含む。いくつかの実施形態では、上述のチャネルは、T/Rxスイッチを含まないが、その代わりに独立したTx(送信)、および優れた飽和回復を有する低ノイズ増幅器の形態である高電圧Rx(受信回路)を有するRx(受信)を含む。いくつかの実施形態では、T/Rx回路は、サーキュレータを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイは、呼びかけ機の送信回路/受信回路における処理チャネルよりも多くのトランスデューサ素子を含み、マルチプレクサが、パルス毎に異なる組の送信素子を選択する。例えば、64の送受信チャネルを、3:1マルチプレクサを介して、192の物理的トランスデューサ素子に接続し、任意のパルスに対して64のトランスデューサ素子のみが作動するようにする。
【0086】
図2Bは、呼びかけ機の別の実施形態を示す。
図2Bに示すように、呼びかけ機は、1つ以上のトランスデューサ202を含む。各トランスデューサ202は、送信/受信スイッチ204に接続されている。送信/受信スイッチ204は、トランスデューサが超音波を送信するように、または超音波を受信するように、交互に構成することができる。送信/受信スイッチは、プロセッサ206(例えば、中央演算処理装置(CPU)、カスタム専用処理プロセッサASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラユニット(MCU)、またはグラフィック処理装置(GPU))に接続される。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、さらに、アナログ・デジタル変換器(ADC)またはデジタル・アナログ変換器(DAC)を含む。また、呼びかけ機は、ユーザインターフェース(ディスプレイや、呼びかけ機を制御する1つ以上のボタン等)、記憶装置、電源(バッテリ等)、および/または入出力ポート(有線であっても、無線であってもよい)を含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は埋め込み型である。埋め込み型デバイスが、容易に超音波を送信しない障害物によって妨害された領域に埋め込まれている場合は、埋め込まれた呼びかけ機が好ましいときもある。例えば、呼びかけ機は、頭蓋下(硬膜下または硬膜上)に埋め込まれてよい。頭蓋下の呼びかけ機は、脳内に埋め込まれた埋め込み型デバイスと通信することができる。超音波は頭蓋骨によって妨害されるため、頭蓋下に埋め込まれた呼びかけ機は、脳内に埋め込まれた埋め込み型デバイスと通信が可能である。別の実施例において、埋め込み型呼びかけ機は、別の埋め込み型デバイスまたは人工装具の一部またはその裏側もしくはその内部に埋め込むことができる。いくつかの実施形態において、埋め込まれた呼びかけ機は、例えばEMまたはRF信号によって、外部のデバイスとの通信および/または外部のデバイスによる電力の供給ができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は外部の(つまり、埋め込まれていない)呼びかけ機であってよい。一実施例として、外部の呼びかけ機は着用可能であり得、ストラップまたは接着材で身体に固定してよい。別の実施例において、外部の呼びかけ機は、棒状であり得、ユーザ(医療従事者等)によって保持されてよい。いくつかの実施形態では、呼びかけ機を、縫合糸、簡単な表面張力、風呂敷のような被服における固定器具、スリーブ、ゴムバンド、または、皮下固定を介して身体に保持させることができる。呼びかけ機のトランスデューサまたはトランスデューサアレイは、残りのトランスデューサから離れて配置されてもよい。例えば、トランスデューサアレイを対象の皮膚の第1位置(1つ以上の埋め込み型デバイスに近接した位置等)に固定することができ、そして、呼びかけ機の残りを第2位置に配置し、トランスデューサまたはトランスデューサアレイを、呼びかけ機の残りとワイヤでつないでもよい。
図3A~
図3Eは、着用可能な外部の呼びかけ機の例を示す。
図3Aは呼びかけ機のブロック図を示し、当該呼びかけ機は、複数のトランスデューサを含むトランスデューサアレイと、当該トランスデューサアレイ中の各トランスデューサ用のチャネルを含むASICと、バッテリ(図示された実施例では、リチウムポリマーバッテリ(LiPo))と、無線通信システム(Bluetooth(登録商標)システム等)とを有する。
図3Bは着用可能な呼びかけ機の分解図を示し、当該着用可能な呼びかけ機は、プリント回路基板(PCB)302(ASICを含む)と、無線通信システム304と、バッテリ306と、超音波トランスデューサアレイ308と、ワイヤ310(超音波トランスデューサアレイ308をASICにつないでいる)とを有する。
図3Cは、
図3Bに示す着用可能な呼びかけ機312にハーネス314を取り付けた状態を示し、当該ハーネス314は呼びかけ機を対象に取り付けるために使用できる。
図3Dは、組み立てられ、対象に取り付けられた呼びかけ機316を示し、トランスデューサアレイ308を第1位置に取り付け、呼びかけ機の残りを第2位置に取り付けてある。
図3Eは例示的な超音波トランスデューサアレイ308の断面概略図を示し、当該超音波トランスデューサアレイ308は、回路基板318と、各トランスデューサ322を回路基板318に取り付けているビア320と、金属化ポリエステルフィルム324と、吸収性支持体層326とを有する。金属化ポリエステルフィルム324は、各トランスデューサに対して共通の土台となり音響的に整合しており、一方、吸収性支持体層326(タングステン粉末を注入したポリウレタン等)は、個々のトランスデューサの共鳴を低減させることができる。
【0089】
トランスデューサアレイの特定の設計は、所望の侵入深度、開口部の大きさ、およびトランスデューサアレイ中のトランスデューサの大きさに依存する。トランスデューサアレイのレイリー距離「R」は、下記式で計算される。
【0090】
【0091】
式中、Dは開口部の大きさであり、λは伝播媒体(すなわち、組織)中の超音波の波長である。当該技術分野において理解されるように、レイリー距離はトランスデューサアレイによって放射されるビームが完全に形成される距離である。つまり、受信される電力を最大限にするために、加えられた圧力は、レイリー距離の自然焦点に集束する。そのため、いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスのトランスデューサからの距離は、およそレイリー距離と同じである。
【0092】
トランスデューサアレイ中の個々のトランスデューサを変調して、当該トランスデューサアレイによって発せられる超音波のビームのレイリー距離および位置を、ビームフォーミングまたはビームステアリングのプロセスにより制御することができる。線形拘束付最小分散型(LCMV)ビームフォーミングのような技術を用いて、複数の埋め込み型デバイスを外部の超音波トランシーバと通信させることができる。例えば、Bertrand et al., Beamforming Approaches for Untethered, Ultrasonic Neural Dust Motes for Cortical Recording: a Simulation Study, IEEE EMBC (Aug. 2014)を参照のこと。いくつかの実施形態では、ビームステアリングは、トランスデューサアレイ中のトランスデューサから発せられる超音波の出力または位相を調整することで行われる。
【0093】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、1つ以上のトランスデューサを用いて超音波をビームステアリングする命令、1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的位置を特定する命令、1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的移動を監視する命令、1つ以上の埋め込み型デバイスの相対的移動を記録する命令、および複数の埋め込み型デバイスからの後方散乱をデコンヴォルーションする命令のうち1つ以上を有する。
【0094】
<埋め込み型デバイスおよび呼びかけ機間の通信>
埋め込み型デバイスおよび呼びかけ機は、超音波を用いて互いに無線で通信する。埋め込み型デバイスは、当該埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを介して、呼びかけ機からの超音波を受信する。埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサの振動が、当該トランスデューサの電気端子間で電圧を発生させ、(センサ、および/または存在すれば、ASICを含む)デバイス中に、電流が流れる。組織中の電気生理学的パルスは、埋め込み型デバイス上の電極によって検知され、トランスデューサ中に流れる電流(前記電流は、超音波後方散乱に変換され、埋め込み型デバイスから発せられる)は、検知された電気生理学的信号に基づいて変調される。いくつかの実施形態において、電流の変調は、アナログ信号であってもよく、前記アナログ信号は、例えば、検知された電気生理学的信号によって直接的に変調されてもよい。いくつかの実施形態において、電流の変調は、デジタル化信号をエンコードし、前記デジタル化信号は、集積回路におけるデジタル回路によって制御されてもよい。後方散乱は、外部の超音波トランシーバ(最初の超音波を送信した外部の超音波トランシーバと同じであっても異なっていてもよい)によって受信される。このように、電気生理学的信号からの情報を、後方散乱超音波の振幅、周波数、または位相の変化によってエンコードすることができる。
【0095】
図4は、埋め込み型デバイスと通信する呼びかけ機を示す。外部の超音波トランシーバは超音波(「搬送波」)を発し、当該超音波は組織を通過することができる。前記搬送波は、小型化超音波トランスデューサ(例えば、小型化バルク圧電トランスデューサ、PMUT、またはCMUT)上で機械的振動を発生させる。小型化超音波トランスデューサで電圧が発生し、それにより、埋め込み型デバイス上の集積回路に電流が流れる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスはASICを含み、電流が小型化超音波トランスデューサおよびASIC中を流れる。集積回路は、電気生理学的パルスを検知するように構成され、集積回路によって、小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流を、検出された電気生理学的パルスを基に変調することができる。小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流によって、埋め込み型デバイス上のトランスデューサから後方散乱超音波が発せられる。検出された電気生理学的信号は、直接的または間接的(集積回路を介して等)に小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流を変調するため、後方散乱波は、検出された電気生理学的パルスに関する情報をエンコードする。後方散乱波は、呼びかけ機によって検出されることができ、前記後方散乱波を分析して、埋め込み型デバイスから検出された電気生理学的信号を見分けることができる。
【0096】
呼びかけ機と埋め込み型デバイスとの間の通信は、超音波を送受信するパルス・エコー法を使用することができる。パルス・エコー法において、呼びかけ機は、所定の周波数の一連の呼びかけパルスを送信し、それから、埋め込み型デバイスから後方散乱エコーを受信する。いくつかの実施形態では、パルスの長さは、約200ナノ秒(ns)~約1000ns(例えば、約300ns~約800ns、約400ns~約600ns、または約540ns)である。いくつかの実施形態では、パルスの長さは、約100ns以上(例えば、約150ns以上、200ns以上、300ns以上、400ns以上、500ns以上、540ns以上、600ns以上、700ns以上、800ns以上、900ns以上、1000ns以上、1200ns以上、または1500ns以上)である。いくつかの実施形態では、パルスの長さは、約2000ns以下(例えば、1500ns以下、1200ns以下、1000ns以下、900ns以下、800ns以下、700ns以下、600ns以下、500ns以下、400ns以下、300ns以下、200ns以下、または150ns以下)である。いくつかの実施形態では、パルスは滞留時間によって分離される。いくつかの実施形態では、滞留時間の長さは、約100ns以上(例えば、約150ns以上、200ns以上、300ns以上、400ns以上、500ns以上、540ns以上、600ns以上、700ns以上、800ns以上、900ns以上、1000ns以上、1200ns以上、または1500ns以上)である。いくつかの実施形態では、滞留時間の長さは、約2000ns以下(例えば、約1500ns以下、1200ns以下、1000ns以下、900ns以下、800ns以下、700ns以下、600ns以下、500ns以下、400ns以下、300ns以下、200ns以下、または150ns以下)である。いくつかの実施形態では、パルスは、正方形、長方形、三角形、鋸歯状、または正弦である。いくつかの実施形態では、パルスの出力は、2段階(GNDおよびPOS)、3段階(GND、NEG、POS)、5段階、または他の任意の複数段階(例えば、24ビットDACを使用する場合)である。いくつかの実施形態では、パルスは、作動中に呼びかけ機から連続的に送信される。いくつかの実施形態では、パルスが呼びかけ機から連続的に送信される場合、呼びかけ機上のトランスデューサの一部は、超音波を受信するよう構成されており、呼びかけ機上のトランスデューサの一部は超音波を送信するように構成されている。超音波を受信するよう構成されたトランスデューサと、超音波を送信するよう構成されたトランスデューサは、呼びかけ機中の同じトランスデューサアレイ上にあってもよく、異なるトランスデューサアレイ上にあってもよい。いくつかの実施形態では、呼びかけ機上の1つのトランスデューサは、超音波を交互に送信したり受信したりするよう構成されてもよい。例えば、1つのトランスデューサは、1つ以上のパルスを送信する期間と一時停止する期間をサイクルとして繰り返すことができる。上記トランスデューサは、1つ以上のパルスを送信する際に超音波を送信するよう構成され、その後、一時停止する期間中は受信モードに切り替わることができる。いくつかの実施形態では、上記サイクルにおける上記1つ以上のパルスは、任意のサイクルにおいて約1つ~約10(例えば、約2つ~約8つ、または約4つ~約7つ、または約6つ)の超音波パルスを含む。いくつかの実施形態では、上記サイクルにおける上記1つ以上のパルスは、任意のサイクルにおいて約1つ以上、2つ以上、4つ以上、6つ以上、8つ以上、または10以上の超音波パルスを含む。いくつかの実施形態では、上記サイクルにおける上記1つ以上のパルスは、上記サイクルにおいて約20以下、約15以下、約10以下、約8つ以下、または約6つ以下を含む。パルスサイクルは、規則的に、例えば、動作中に約50マイクロ秒(μs)~約300μs毎(例えば、約75μs~約200μs毎、または約100μs毎)で繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、サイクルは、50μs以上毎、100μs以上毎、150μs以上毎、200μs以上毎、250μs以上毎、または300μs以上毎に繰り返される。いくつかの実施形態では、サイクルは300μs以下毎、250μs以下毎、200μs以下毎、150μs以下毎、または100μs以下毎に繰り返される。サイクル周波数は、例えば、呼びかけ機と埋め込み型デバイスとの間の距離、および/またはトランスデューサが送信モードと受信モードとを切り替えられる速さに基づいて設定されてよい。
【0097】
図5は、呼びかけ機と埋め込み型デバイスとの間のパルス・エコー超音波通信のサイクルを示す。
図5Aは、100マイクロ秒毎の周波数の一連のパルスサイクルを示す。パルスを送信している間、トランスデューサアレイ中のトランスデューサは、超音波を送信するように構成されている。パルスが送信された後、トランスデューサは、後方散乱超音波を受信するように構成されている。
図5Bは、サイクルの拡大図を示し、540ナノ秒毎の周波数の6つの超音波パルスを示す。呼びかけ機によって検出された後方散乱超音波を
図5Cに示す。また、その内の1つのパルスの拡大図を
図5Dに示す。
図5Dに示されるように、埋め込み型デバイスによって受信された超音波後方散乱を分析することができる。前記分析は、後方散乱波のフィルタリング(例えば、音波の減衰を取り除く)工程と、後方散乱波の整流化工程と、音波を積分して当該音波によりエンコードされたデータを決定する工程とを含む。いくつかの実施形態では、後方散乱波を、機械学習アルゴリズムを用いて分析する。
図5Eは、フィルタリングした後方散乱波の拡大版を示す。
図5Eに示す後方散乱波は、機械的境界面から発生する反射に対応する4つの別個の領域を含む。(1)埋め込み型デバイスを被包する生体適合性物質からの反射、(2)小型化超音波トランスデューサの上面からの反射、(3)プリント回路基板と小型化超音波トランスデューサとの間の境界面からの反射、(4)プリント回路基板の背面からの反射である。小型化トランスデューサの表面から反射された後方散乱波の振幅は、小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流のインピーダンスにおける変化の関数として変化し、「応答型後方散乱」と称することができる。なぜなら、後方散乱のこの領域は、検知された電気生理学的パルスに関する情報をエンコードするからである。超音波後方散乱のその他の領域は、「非応答型後方散乱」と称することができ、以下に説明するように、埋め込み型デバイスの位置、埋め込み型デバイスの移動、および/または埋め込み型デバイス近辺の温度変化を決定するのに役立つ。いくつかの実施形態では、デバイスは、さらに、非応答型リフレクタを含む。いくつかの実施形態では、非応答型リフレクタは立方体である。いくつかの実施形態では、非応答型リフレクタは珪素を含む。いくつかの実施形態では、非応答型リフレクタは剛体材料の表面である。非応答型リフレクタは、埋め込み型デバイスに取り付けられているが、電気的に絶縁されている。そして、例えば、検知された電気生理学的パルスによる電流のインピーダンスにおける変化に応答しない超音波を反射することができる。
【0098】
トランスデューサによって送信される超音波の周波数は、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサの駆動周波数または共振周波数に依存して設定し得る。いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサは広帯域デバイスである。いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサは、狭帯域である。例えば、いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、小型化超音波トランスデューサの共振周波数の約20%以内、約15%以内、約10%以内、約5%以内である。いくつかの実施形態では、パルスは、小型化超音波トランスデューサの共振周波数とおよそ同じ周波数に設定される。いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、約100kHz~約100MHz(例えば、約100kHz~約200kHz、約200kHz~約500kHz、約500kHz~約1MHz、約1MHz~約5MHz、約5MHz~約10MHz、約10MHz~約25MHz、約25MHz~約50MHz、または約50MHz~約100MHz)である。いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、約100kHZ以上、約200kHz以上、約500kHz以上、約1MHz以上、約5MHz以上、約10MHz以上、約25MHz以上、または約50MHz以上である。いくつかの実施形態では、超音波の周波数は、約100MHz以下、約50MHz以下、約25MHz以下、約10MHz以下、約5MHz以下、約1MHz以下、約500kHz以下、または約200kHz以下である。周波数が高いほど、埋め込み型デバイス上の小型化超音波トランスデューサを小さくし得る。しかし、周波数が高いほど、超音波トランスデューサおよび埋め込み型デバイスの間の通信の深度が制限される。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスと超音波トランスデューサとは、約0.1cm~約15cm(例えば、約0.5cm~約10cm、または約1cm~約5cm)離れている。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスと超音波トランスデューサとは、約0.1cm以上、約0.2cm以上、約0.5cm以上、約1cm以上、約2.5cm以上、約5cm以上、約10cm以上、または約15cm以上離れている。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスと超音波トランスデューサとは、約20cm以下、約15cm以下、約10cm以下、約5cm以下、約2.5cm以下、約1cm以下、または約0.5cm以下離れている。
【0099】
いくつかの実施形態では、後方散乱した超音波は、埋め込み型デバイスによってデジタル化される。例えば、埋め込み型デバイスは、オシロスコープまたはアナログ・デジタル変換器(ADC)および/または記憶装置を含んでいてもよく、これらは、検出された電気生理学的信号に関する情報をデジタル的にエンコードすることができる。デジタル化された電流の変動は、埋め込み型デバイスによって検知された電気生理学的信号を反映しており、超音波トランスデューサによって受信される。そして、超音波トランスデューサは、デジタル化された音波を送信する。デジタル化されたデータは、例えば、特異値分解(SVD)および最小自乗法圧縮(least squares-based compression)を用いて、アナログデータを圧縮し得る。いくつかの実施形態では、圧縮は、相関計またはパターン検出アルゴリズムによって行われる。後方散乱信号は、後方散乱領域の4次バターワースバンドパスフィルタ整流一体化(4th order Butterworth bandpass filter rectification integration)のような、一連の非線形変換を経て、単一時間における再構築データポイントを形成してもよい。そのような変換は、ハードウェア(すなわち、ハードコードされたもの)またはソフトウェアにおいて行われてよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、デジタル化されたデータは、固有の識別子を含んでもよい。固有の識別子は、例えば、複数の埋め込み型デバイスおよび/または複数の電極対を有する埋め込み型デバイスを含むシステムにおいて有用である。例えば、固有の識別子は、複数の埋め込み型デバイスのうち、信号の発生源である埋め込み型デバイスを識別することができる。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、複数の電極対を含み、前記電極対は、1つの埋め込み型デバイスによって検知された電気生理学的信号を、同時に受信してもよく、または交替で受信してもよい。異なる電極対は、例えば、異なる組織(例えば、異なる神経または異なる筋肉)または同じ組織中の異なる部位における電気生理学的信号を検知するように構成されてもよい。デジタル化回路は固有の識別子をエンコードして、どの電極対が該電気生理学的信号を検知したかを識別することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、デジタル化信号は、アナログ信号のサイズを圧縮する。デジタル化信号はサイズが低減されているために、超音波後方散乱にエンコードされた、検出された電気生理学的信号をより効率的に報告することができる。このことは、例えば、埋め込み型デバイスが、電気生理学的信号を同時、またはほとんど同時に検出する複数の電極対を含む場合に有用であり得る。デジタル化を通して電気生理学的信号のサイズを圧縮することにより、潜在的に重複する信号を正確に送信することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、複数の埋め込み型デバイスと通信する。前記通信は、例えば、マルチ入力・マルチ出力(MIMO)システム理論を用いて行うことができる。例えば、呼びかけ機および複数の埋め込み型デバイス間の通信は、時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いる。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10以上、12以上、約15以上、約20以上、約25以上、約50以上または約100以上)の埋め込み型デバイスが、呼びかけ機と通信する。いくつかの実施形態では、約200以下の埋め込み型デバイス(例えば、約150以下、約100以下、約50以下、約25以下、約20以下、約15以下、約12以下、または約10以下の埋め込み型デバイス)が呼びかけ機と通信する。呼びかけ機は、複数の埋め込み型デバイスからの組み合わされた後方散乱を受信できる。組み合わされた後方散乱はデコンヴォルーションされ、それにより、それぞれの埋め込み型デバイスからの情報を抽出できる。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、トランスデューサアレイから送信される超音波を、ビームステアリングを介して、特定の埋め込み型デバイスへ集束させる。呼びかけ機は、送信された超音波を第1埋め込み型デバイスへ集束させ、第1埋め込み型デバイスから後方散乱を受信し、送信された超音波を第2埋め込み型デバイスへ集束させ、第2埋め込み型デバイスから後方散乱を受信する。いくつかの実施形態では、呼びかけ機は、超音波を複数の埋め込み型デバイスへ送信し、そして、超音波を当該複数の埋め込み型デバイスから受信する。
【0103】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機を用いて埋め込み型デバイスの位置または速度を決定する。例えば、ある一定時間におけるデバイスの位置または移動を測定することによって、速度を決定することができる。埋め込み型デバイスの位置は、相対的位置、例えば、呼びかけ機上のトランスデューサに対する位置であってよい。埋め込み型デバイスの位置または動きを認識することで、組織中で検出された電気生理学的信号の正確な位置を認識することができる。埋め込み型デバイスの位置を測定し、検出された電気生理学的信号と当該位置を関連付けることにより、組織をより局在した地点で特徴付けまたは監視することができる。複数のトランスデューサが、1つの埋め込み型デバイスからの後方散乱を収集することができる。呼びかけ機上の当該複数のトランスデューサは、同じトランスデューサアレイ上に配置されてもよく、2つ以上の異なるトランスデューサアレイ上に配置されてもよい。同じ埋め込み型デバイスから発生した後方散乱波の波形と、すでに明らかである各トランスデューサの位置との差異を基に、埋め込み型デバイスの位置を決定できる。これは、例えば、三角測量、またはクラスタリングと最大尤度により行うことができる。後方散乱の差異は、応答型後方散乱波、非応答型後方散乱波、またはこれらの組み合わせに基づいてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、呼びかけ機を用いて埋め込み型デバイスの移動を追跡する。呼びかけ機によって追跡できる埋め込み型デバイスの移動は、横移動および角移動を含む。このような移動は、例えば、肝臓、胃、小腸または大腸、腎臓、膵臓、胆嚢、膀胱、卵巣、子宮、または脾臓、骨、または軟骨のような1つ以上の器官の位置の変化(これは、例えば、対象の呼吸または動作の結果であり得る)、または(例えば、脈拍による)血流の変化により生じ得る。埋め込み型デバイスの移動は、例えば、非応答型超音波の変化を監視することによって追跡することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスの移動は、第1時点での埋め込み型デバイスの相対的位置を、第2時点での埋め込み型デバイスの相対的位置と比較することで判断される。例えば、上述のように、埋め込み型デバイスの位置を、呼びかけ機上の複数のトランスデューサ(1つのトランスデューサアレイ上にあってもよく、2つ以上のトランスデューサアレイ上にあってもよい)を用いて決定することができる。埋め込み型デバイスの第1位置を第1時点において決定することができ、埋め込み型デバイスの第2位置を第2時点において決定することができる。そして、移動ベクトルを、第1時点での第1位置、および第2時点での第2位置を基にして決定することができる。
【0105】
<埋め込み型デバイス>
埋め込み型デバイスは、検知された電気生理学的信号をエンコードする超音波後方散乱を発するよう構成される小型化超音波トランスデューサ(例えば、小型化圧電トランスデューサ、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)、または圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT))と、小型化超音波トランスデューサを流れる電流を、検出された電気生理学的信号を基に変調するよう構成される後方散乱回路(いわゆる、変調回路)と、組織中の電気生理学的信号を検知するよう構成される第1電極および第2電極と、を含む。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、集積回路を含み、前記集積回路は、変調回路、デジタル回路、および/または電源回路を含んでもよい。
【0106】
変調回路(または「後方散乱回路」)はスイッチ(例えば、オン/オフスイッチまたは電界効果トランジスタ(FET))を有している。埋め込み型デバイスのいくつかの実施形態とともに用いるFETの例として、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)が挙げられる。変調回路は小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流のインピーダンスを変えることができ、トランスデューサ中を流れる電流の変化が、電気生理学的信号をエンコードする。
【0107】
図6は、電気生理学的信号を記録するための例示的な埋め込み型デバイスを図示する。埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ602、変調回路604、第1電極606、第2電極608を含む。第1電極606および第2電極608は、電気生理学的信号を検知するために、組織(例えば、神経組織または筋肉組織)に取り付けられるよう構成される。変調回路は、トランジスタ610を含み、前記トランジスタ610は、ドレイン612、ソース614、およびゲート616を含む。ゲート616は、第1電極606に接続されている。第1抵抗器620および第2抵抗器622を含む抵抗ブリッジ618は、ドレイン612とソース614とを橋渡しする。第2電極608は、第1抵抗器620と第2抵抗器622との間の抵抗ブリッジ618に接続されている。超音波トランスデューサ602は、第1トランスデューサ電極624および第2トランスデューサ電極626を含む。超音波トランスデューサ602は、呼びかけ機からの超音波搬送波を受信することができ、前記超音波トランスデューサは回路で電流を発生させる。変調回路を流れる電流のインピーダンスは、ゲートからソースへの電圧の影響であり、前記インピーダンスは電気生理学的パルスによって変化する。変調された電流は、トランスデューサ602から超音波後方散乱を発せさせる。前記超音波後方散乱は、電気生理学的パルスをエンコードする。
【0108】
いくつかの実施形態において、集積回路は1つ以上のアナログ回路を含む。前記アナログ回路は、トランスデューサによって供給される電力を使用し、1つ以上のアナログ増幅器に電力を供給することができる。前記増幅器は、後方散乱インピーダンスにおいて変調された信号の変調幅を増加させることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、集積回路は、1つ以上のデジタル回路を含む。該1つ以上のデジタル回路は、記憶装置、および、埋め込み型デバイスを作動させるための1つ以上の回路ブロックまたはシステムを含み得る。これらのシステムは、例えば、インプラントに保存されているプログラムまたは呼びかけ機とインプラントとの超音波通信を介して提供される1つ以上のプログラムを実行できる、オンボードマイクロコントローラまたはプロセッサ、有限状態機械実装、またはデジタル回路を有し得る。いくつかの実施形態では、デジタル回路は、アナログ信号をデジタル信号に変換できるアナログ・デジタル変換器(ADC)を有する。いくつかの実施形態では、デジタル回路は、信号を変調器に向ける前にデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器(DAC)を有する。いくつかの実施形態において、デジタル回路は、変調回路(「後方散乱回路」とも称する)を作動させる。いくつかの実施形態において、デジタル回路は、検知された電気生理学的信号をエンコードする変調回路へ信号を送信する。いくつかの実施形態において、デジタル回路は、変調回路(「後方散乱回路」とも称する)を作動させることができる。前記デジタル回路は、小型化超音波トランスデューサに接続される。また、デジタル回路は、1つ以上の増幅器を作動させることができ、該1つ以上の増幅器が、スイッチに向けられた電流を増幅させる。
【0110】
いくつかの実施形態において、デジタル回路は、電気生理学的信号を含むデジタル化信号を、固有の識別子でエンコードする。固有の識別子は(例えば、複数の埋め込み型デバイスを用いたシステムにおいて)、超音波後方散乱の発生源である埋め込み型デバイスを特定することができる。または、固有の識別子は、埋め込み型デバイスのどの電極が、電気生理学的信号を検知したのかを特定してもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、デジタル化された回路は、アナログ信号のサイズを圧縮する。デジタル化信号の低減されたサイズにより、超音波後方散乱でエンコードされた検出された電気生理学的信号をより効率的に報告することができる。これは、例えば、埋め込み型デバイスが、電気生理学的信号を同時またはほぼ同時に検知する、複数の電極対を含んでいる場合に有用である。デジタル化を介して電気生理学的信号のサイズを圧縮することによって、潜在的に重複している信号を、正確に送信することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、集積回路は、誤った電気生理学的信号をフィルタリングする。いくつかの実施形態において、フィルタリングはデジタル回路によって行われる。フィルタリングされていない電圧のばらつきが、変調された電流において変化を引き起こし得る。前記変調された電流は、超音波後方散乱としてエンコードされ、偽陽性として記録され得る。偽陽性を制限するために、電流の変調をフィルタリングすることができる。このフィルタリングは、例えば、超音波トランスデューサを流れる電流の変調を生じさせるためには電気生理学的信号が所定の閾値を超えなければならないようにすることで行われる。いくつかの実施形態において、偽陽性である電気生理学的信号をフィルタリングするために、スパイク検出器を使用する。
【0113】
いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、1つ以上の増幅器を含む。増幅器は、例えば、電気生理学的信号を増幅させることができる。これは、例えば、信号がデジタル回路に送信される以前に生じてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、集積回路は電源回路を含み、前記電源回路は埋め込み型デバイスの構成要素に電力を供給するよう構成される。前記電源回路は、例えば、識別子、チャージポンプ、および/またはエネルギー貯蔵キャパシタを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵キャパシタは、別個の構成要素として含まれる。小型化超音波トランスデューサにおける電圧差異を誘発する超音波は、埋め込み型デバイスに電力を供給する。前記超音波は、電源回路によって制御されてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは複数の電極を含む。いくつかの実施形態において、電極は、対をなしている。電極対を、2つの電極から形成できる。そのため、3つの電極を有する埋め込み型デバイスは、3つの電極対を有することができる。電気生理学的信号を、電極対における電極間で検知することができる。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10以上、または15以上の電極対を含む。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、2つ、3つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10以上の電極を含む。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは偶数個の電極を含み、また、いくつかの実施形態において、奇数個の電極を含む。いくつかの実施形態において、小さな埋め込み型デバイスはマルチプレクサを含む。前記マルチプレクサは、電気生理学的信号を検知するために、電極対における電極を選択することができる。
【0116】
2つ以上の電極が、組織(例えば、神経組織または筋肉組織)とやり取りする(または取り付けられる)。電極は、組織に沿って直線的に配置される必要はない。例えば、電極は、神経に対して横軸に沿うように該神経に取り付けられてもよく、前記電極は、横軸において流れる電気生理学的信号を検知するために使用できる。2つ以上の電極は、横軸に沿った神経に、任意の角度、例えば、正反対(すなわち180°)または180°以下(約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、または約30°以下等)等で取り付けられることができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、電極対における各電極は、約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、または約0.5mm等)以下離れている。いくつかの実施形態において、電極対における各電極は、約0.5mm以上(例えば、約1mm以上、約1.5mm以上、約2mm以上、約3mm以上、または約4mm以上等)離れている。いくつかの実施形態において、各電極は、約0.5mm~約1mm、約1mm~約1.5mm、約1.5mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、または約4mm~約5mm離れている。
【0118】
図7Aは、ASICに接続された小型化超音波トランスデューサ(「圧電」として示す)の一実施形態を図示する。ASICは、電源回路、および変調回路(または「後方散乱回路」)を含む。電源回路はエネルギー蓄積コンデンサ(「cap」)を含む。電極は、組織中に埋め込まれ得る。
【0119】
図7Bは、小型化超音波トランスデューサ、集積回路、および第1電極ならびに第2電極を有する、埋め込み型デバイスを図示する。集積回路は、検出された電気生理学的信号に基づいた信号を受信し、受信された信号を基に、超音波トランスデューサ中を流れる電流を変調させるよう構成される変調回路を含む。集積回路は、全波整流器および倍電圧器、ならびに供給された電力を参照または調節するための構成要素を含む、AC-DC電源回路をさらに含む。
図7Cは、埋め込み型デバイスと共に使用することができる例示的な識別子を図示する。
図7Dは、AC連結増幅器のための例示的な構造を図示する。電気生理学的信号(「V
neural」)が、電極を用いて検出され、信号が変調回路に送信される前に、増幅器によって増幅される。
【0120】
埋め込み型デバイスは小型化されており、それにより、快適で長期にわたる埋め込みを可能にするとともに、埋め込み型デバイスとしばしば関連する組織の炎症を制限する。本体は、小型化埋め込み型デバイスの中心部(例えば、超音波トランスデューサおよび集積回路)を形成し、電極が本体から分枝して組織に取り付けられ、電気生理学的信号を検知する。いくつかの実施形態では、デバイスの最大寸法の長さは約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下、または約0.3mm以下である。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの本体の最大寸法は、約0.2mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上、約2mm以上、または約3mm以上である。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの本体の最大寸法の長さは、約0.2mmから約5mm、約0.3mmから約4mm、約0.5mmから約3mm、約1mmから約3mm、または約2mmである。
【0121】
いくつかの実施形態において、1つ以上の電極は、デバイスの本体上、例えば、デバイスの本体上のパッド上にある。いくつかの実施形態において、1つ以上の電極は、所望の長さで、埋め込み型デバイスの本体から広がっており、組織中の任意の深さに埋め込まれることができる。いくつかの実施形態において、電極の長さは、約0.1mm以上、例えば、約0.2mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上、約5mm以上、または約10mm以上である。いくつかの実施形態において、電極の長さは、約15mm以下、例えば、約10mm以下、約5mm以下、約1mm以下、または約0.5mm以下である。いくつかの実施形態において、第1電極は、埋め込み型デバイスの本体から露出し、第2電極が埋め込み型デバイスの本体から広がっている。
【0122】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、体積が、約5mm3以下(例えば、約4mm3以下、3mm3以下、2mm3以下、または1mm3以下)である。特定の実施形態では、埋め込み型デバイスは、体積が、約0.5mm3から約5mm3、約1mm3から約5mm3、約2mm3から約5mm3、約3mm3から約5mm3、または約4mm3から約5mm3である。埋め込み型デバイスはサイズが小さいので、生検針を用いて埋め込むことができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは対象に埋め込まれる。対象は、例えば、哺乳類のような脊椎動物であり得る。いくつかの実施形態では、対象はヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、またはマウスである。
【0124】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部分(例えば、小型化超音波トランスデューサ、および集積回路)は、生体適合性物質(例えば、生体適合性ポリマー)、例えば、N‐ビニル‐2‐ピロリドン(NVP)とn‐ブチルメタクリレート(BMA)のコポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パリレン、ポリイミド、窒化珪素、二酸化珪素、炭化珪素、アルミナ、ニオビウム、またはヒドロキシアパタイトによって被包される。炭化珪素は非晶質炭化珪素でもよく、結晶質炭化珪素でもよい。生体適合性物質は、デバイス内の電子回路を損傷または干渉するのを避けるため不透水性であることが好ましい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部分は、セラミック(例えば、アルミナまたはチタニア)もしくは金属(例えば、スチールまたはチタニウム)で被包される。いくつかの実施形態において、電極または電極の一部は、生体適合性物質によって被包されていない。
【0125】
いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサおよびASICは、プリント回路基板(PCB)上に配置される。電極を任意でPCB上に配置してよく、あるいは集積回路と接続してよい。
図8Aおよび
図8Bは、PCBを有する埋め込み型デバイスの例示的な構成を示す。
図8Aは、PCB808の第1側面806に配置された圧電トランスデューサ802とASIC804を示す。第1電極810および第2電極812が、PCB808の第2側面814上に配置されている。
図8Bは、PCB818の第1側面816上の圧電トランスデューサ814と、PCB818の第2側面822上のASIC820とを示す。第1電極824がPCBの第1側面816上を起点とし、第2電極826がPCB818の第2側面822上を起点とする。第1電極824および第2電極826がPCB818から延び、組織を介して互いに電気的に接続されるよう構成されてよい。
【0126】
埋め込み型デバイスの小型化超音波トランスデューサは、マイクロマシン超音波トランスデューサ(例えば、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)または圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT))でよく、あるいはバルク圧電トランスデューサでよい。バルク圧電トランスデューサは任意の天然物質または合成物質(例えば、水晶、セラミック、またはポリマー)でよい。バルク圧電トランスデューサ材料の例としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZO)、窒化アルミニウム(AlN)、石英、ベルリナイト(AlPO4)、トパーズ、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、タングステン酸ナトリウム(Na2WO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびニオブ酸鉛マグネシウム‐チタン酸鉛(PMN-PT)が挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態では、小型化バルク圧電トランスデューサはほぼ立方体(すなわち、約1:1:1(長さ:幅:高さ)のアスペクト比)である。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサは板状であり、長さまたは幅のアスペクトにおいて、アスペクト比が約5:5:1以上、例えば約7:5:1以上、または約10:10:1以上である。いくつかの実施形態では、小型化バルク圧電トランスデューサは長細く、アスペクト比が約3:1:1以上であり、最大寸法は超音波搬送波の伝播方向と並んでいる。いくつかの実施形態では、バルク圧電トランスデューサの一寸法は、トランスデューサの駆動周波数または共振周波数に相当する波長(λ)の二分の一に等しい。共振周波数では、トランスデューサの両方の面に衝突する超音波が180°位相シフトし、反対側の位相に達し、2つの面のあいだに最大のずれを生じさせる。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサの高さは、約10μmから約1000μm(例えば、約40μmから約400μm、約100μmから約250μm、約250μmから約500μm、または約500μmから約1000μm)である。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサの高さは、約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、約250μm以下、約100μm以下、または約40μm以下)である。いくつかの実施形態では、圧電トランスデューサの高さは、約20μm以上(例えば、約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、または約4mm以上)である。
【0128】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、最大寸法の長さが約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、約250μm以下、約100μm以下、または約40μm以下)である。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサは、最大寸法の長さが約20μm以上(例えば、約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、または約4mm以上)である。
【0129】
小型化超音波トランスデューサは2つの電極と接続されている。第1電極はトランスデューサの第1面に取り付けられており、第2電極はトランスデューサの第2面に取り付けられており、第1面と第2面は、1つの寸法に沿ったトランスデューサの向かい合う両側面である。いくつかの実施形態では、電極は、銀、金、白金、白金黒、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、導電性ポリマー(例えば、導電性PDMSまたはポリイミド)、またはニッケルを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサは、トランスデューサの金属面(すなわち、電極)間の軸がトランスデューサの動きに対して垂直であるせん断モードで作動する。
【0130】
いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、神経組織に取り付けられるよう構成される。いくつかの実施形態において、神経組織への取り付けは、完全には神経組織を囲んでいない。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、組織(例えば、神経組織または筋肉組織)中に埋め込まれる。つまり、組織は、埋め込み型デバイスを完全に囲み得る。いくつかの実施形態において、神経組織は、脳(例えば、大脳皮質、大脳基底核、中脳、延髄、脳橋、視床下部、視床、小脳、脳外陰、または海馬等)または脊髄のような、中枢神経系の一部である。いくつかの実施形態において、脳組織への取り付けは、埋め込み型デバイスの本体が組織の外側に配置される一方で、電極が組織中に埋め込まれることを含む。いくつかの実施形態において、神経組織は、末梢神経のような、末梢神経系の一部である。
【0131】
いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、癲癇性の活動を検知するために使用される。例えば、Mohseni et al., Guest editorial: Closing the loop via advanced neurotechnologies, IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering, vol. 20, no. 4, pp. 407-409 (2012)を参照のこと。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、人工内耳を最適化するために使用される。例えば、Krook-Magnuson et al., Neuroelectronics and biooptics: Closed-loop technologies in neurological disorders, JAMA Neurology, vol. 72, no. 7, pp. 823-829 (2015)を参照のこと。
【0132】
いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスは、骨格筋、平滑筋、または心筋のような、筋肉に取り付けられる。いくつかの実施形態において、埋め込み型デバイスからの電極は、骨格筋、平滑筋、または心筋のような、筋肉に取り付けられる。
【0133】
<〔埋め込み型デバイスの製造>
埋め込み型デバイスは、小型化超音波トランスデューサ(例えば、バルク圧電トランスデューサ、CMUT、またはPMUT)を圧電トランスデューサの第1面上の第1電極に取り付け、第2電極をトランスデューサの第2面(第1面と第2面はトランスデューサの互いに反対側にある)に取り付けて製造することができる。第1電極と第2電極は集積回路に取り付けられてよく、該集積回路はプリント回路基板(PCB)上に配置されてよい。集積回路は、変調回路を含み得る。また、2つ以上の電極が集積回路に取り付けられ、組織中において、互いに電気的に接続されるよう構成される。構成要素のPCBへの取り付けとして、例えば、ワイヤボンディング、はんだ付け、フリップチップボンディング、または金バンプボンディングを挙げ得る。
【0134】
さまざまな厚みの金属化PZTシートのような、特定の圧電材料(例えば、PSI-5A4E, Piezo Systems, Woburn, MA、またはPZT 841, APC Internationals, Mackeyville, PA)を購入できる。いくつかの実施形態では、圧電材料シートを所望のサイズにダイスカットし、ダイシングした圧電材料を電極に取り付ける。いくつかの実施形態では、電極を圧電材料シートに取り付け、圧電材料シートを、電極が圧電材料に取り付けられた所望のサイズにダイスカットする。圧電材料を、セラミック刃を有するダイシングソーでダイスカットして、圧電材料のシートを個々の圧電トランスデューサにカットすることができる。いくつかの実施形態では、レーザカッターを用いて圧電材料をダイスカットまたは単体化する。いくつかの実施形態では、パターンエッチングを用いて圧電材料をダイスカットまたは単体化する。
【0135】
電極を、圧電トランスデューサの上面および下面に取り付けることができる。電極間の距離が圧電トランスデューサの高さとして定義される。例示的な電極は、銀、金、白金、白金黒、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、導電性ポリマー(例えば、導電性PDMSまたはポリイミド)、またはニッケルを含み得る。いくつかの実施形態では、電極材料を圧電トランスデューサの面上に電気メッキまたは真空蒸着することによって、電極を圧電トランスデューサに取り付ける。いくつかの実施形態では、電極は、適切なはんだおよびフラックスを用いて圧電トランスデューサにはんだ付けされる。いくつかの実施形態では、電極は、エポキシ(例えば、銀エポキシ)または低温はんだ付け(例えば、はんだペーストによる)を用いて圧電トランスデューサに取り付けられる。
【0136】
例示的な実施形態では、集積回路のPCBへの取り付け前またはあとに、はんだペーストがプリント回路基板(PCB)上のパッドに塗布される。回路基板上のパッドのサイズは、圧電トランスデューサの所望のサイズに依存する。あくまでも例として、圧電トランスデューサの所望のサイズが約100μm×100μm×100μmである場合、パッドは約100μm×100μmであり得る。パッドは埋め込み型デバイス用の第1電極として機能する。圧電材料(パッドより大きくてもよい)をパッド上に置き、塗布したはんだペーストでパッドに固定すると、圧電PCBアセンブリとなる。圧電PCBアセンブリを加熱してはんだペーストを硬化させ、それにより、圧電トランスデューサをPCBに接着させる。圧電材料がパッドより大きい場合、圧電材料を、例えばウェハダイシングソーまたはレーザカッターを用いて所望のサイズにカットする。圧電材料の非接着部分(例えば、圧電材料のうち、パッドにかぶさらない部分)を取り除く。第2電極を圧電トランスデューサおよびPCBに取り付ける。これは、例えば、圧電トランスデューサの上部とPCBとのあいだにワイヤボンドを形成することにより行われる。これにより、回路が完成する。ワイヤボンドは、任意の導電性材料(例えば、アルミニウム、銅、銀、または金)でできたワイヤを用いて形成される。
【0137】
集積回路と小型化超音波トランスデューサとは、PCBの同じ側に取り付けてよく、PCBの互いに反対側に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、PCBは柔軟性PCBであり、集積回路と小型化超音波トランスデューサとは、PCBの同じ側に取り付けられ、PCBを折り曲げることで、集積回路と小型化超音波トランスデューサとがPCBの互いに反対側にある埋め込み型デバイスが得られる。
【0138】
任意で、デバイスまたはデバイスの一部分を包む、またはデバイスの一部分を生体適合性物質(例えば、生体適合性ポリマー)で包む。生体適合性物質は、例えば、N‐ビニル‐2‐ピロリドン(NVP)とn‐ブチルメタクリレート(BMA)のコポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS、例えば、Sylgard 184, Dow Corning, Midland, MI)、パリレン、ポリイミド、窒化珪素、二酸化珪素、アルミナ、ニオビウム、ヒドロキシアパタイト、または炭化珪素である。炭化珪素は、非晶質炭化珪素でもよく、結晶質炭化珪素でもよい。いくつかの実施形態では、生体適合性物質(例えば、非晶質炭化珪素)を、プラズマ助長化学蒸着(PECVD)またはスパッタリングによってデバイスに塗布する。PECVDは、炭化珪素を生成するために、SiH4やCH4のような前駆体を用いてよい。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部分を、医療用移植に適切なセラミック(例えば、アルミナまたはチタニア)または金属(例えば、スチールまたはチタニウム)で包む。
【0139】
図9は、本明細書に記載の埋め込み型デバイスを製造する例示的な方法を示す。工程902で、特定用途向け集積回路(ASIC)をPCBに取り付ける。PCBは、組織中で電気生理学的信号を検知するために、2つ以上の電極を含み得る。はんだ(例えば、銀エポキシ)をPCBに(例えば、PCB上に配置された第1パッドにおいて)塗布することができ、ASICをはんだ上に置くことができる。はんだは、例えば、ASICを有するPCBを加熱することで、硬化させることができる。いくつかの実施形態では、ASICを有するPCBを、約50℃ないし約200℃まで、例えば、約80℃ないし約170℃まで、または約150℃まで、加熱する。いくつかの実施形態では、ASICを有するPCBを、約5分間ないし約600分間、例えば、約10分間ないし約300分間、約10分間ないし約100分間、約10分間ないし約60分間、約10分間ないし約30分間、または約15分間、加熱する。任意で、ASICを追加のはんだでコーティングする。工程904で、圧電トランスデューサ(
図9の「圧電」)をPCBに取り付ける。はんだ(例えば、銀エポキシ)をPCBに(例えば、PCB上に配置された第2パッドにおいて)塗布することができ、圧電材料を該はんだ上に置くことができる。圧電材料は完全に形成された(すなわち、「ダイスカットされた」)圧電トランスデューサでよく、または、PCBに取り付けたらカットして圧電トランスデューサを形成する圧電材料シートでもよい。はんだは、例えば圧電材料を有するPCBを加熱することで、硬化することができる。いくつかの実施形態では、圧電材料を有するPCBを、約50℃ないし約200℃まで、例えば、約80℃ないし約170℃まで、または約150℃まで、加熱する。いくつかの実施形態では、圧電材料を有するPCBを、約5分間ないし約600分間、例えば、約10分間ないし約300分間、約10分間ないし約100分間、約10分間ないし約60分間、約10分間ないし約30分間、または約15分間、加熱する。圧電材料は、ソーまたはレーザカッターを用いて所望の寸法にカットすることができる。いくつかの実施形態では、圧電材料はゾルゲル(例えば、PZTゾルゲル)であり、トランスデューサ材料は深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)で成形することができる。
図9では、工程902でASICをPCBに取り付け、それから工程904で圧電材料をPCBに取り付けているが、当業者ならば、ASICと圧電材料とは任意の順序で取り付けてよいとわかるであろう。工程906において、ASICと圧電トランスデューサとはPCBにワイヤボンディングされる。
図9に示す方法では、ASICと圧電トランスデューサとがPCBに取り付けられたあとのPCBに対するASICと圧電トランスデューサを示しているが、当業者ならば、ASICは、PCBに取り付けたあとでPCBにワイヤボンディングすることができ、圧電トランスデューサの取り付けの前またはあとのいずれでもワイヤボンディングできるとわかるであろう。同様に、圧電トランスデューサは、ASICのPCBに対する取り付けまたはワイヤボンディングの前またはあとのいずれでもPCBにワイヤボンディングしてよい。工程908において、デバイスの少なくとも一部分が生体適合性物質で覆われる。好ましくは、少なくとも圧電トランスデューサとASICが生体適合性物質で覆われる。いくつかの実施形態では、センサは、あるいはセンサの少なくとも一部分は、生体適合性物質で覆われない。例えば、いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスは、生体適合性物質で覆われていない一組の電極を有し、それにより、該電極は、電気生理学的信号を検出できる。いくつかの実施形態では、生体適合性物質が、例えばUV光にさらすことにより、または加熱により、硬化される。
【0140】
いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスまたは埋め込み型デバイスの一部は、は非晶質炭化珪素(a-SiC)フィルムで被包される。
図10は、a-SiCフィルムに被包された埋め込み型デバイスを製造する方法を示す。工程1002において、ポリイミド層を滑らかな表面に塗布する。工程1004において、a-SiC層をポリイミド層に塗布する。これは、例えば、プラズマ助長化学蒸着(PECVD)を用いて、SiH
4およびCH
4を前駆体として用いて、行うことができる。工程1006において、1つ以上のポートをa-SiC層にエッチングする。いくつかの実施形態では、ポートはポリイミド層にもエッチングされる。ポートは、埋め込み型デバイスのうち、a-SiCに被包されていない部分、例えば、移植後、組織に接触するセンサまたは電極の部分へのアクセスを提供する。いくつかの実施形態では、エッチングは反応性イオンエッチングを含む。工程1008において、埋め込み型デバイスをa-SiC層に取り付ける。埋め込み型デバイスはa-SiC層に取り付ける前にあらかじめ組み立ててもよいし、a-SiC上で作ってもよい。いくつかの実施形態では、プリント回路基板(PCB)、小型化超音波トランスデューサ、およびセンサをa-SiC層に取り付ける。小型化超音波トランスデューサおよびセンサはa-SiC層と直接接触する必要はない。小型化超音波トランスデューサおよびセンサはPCBに取り付けられてよいからである。小型化超音波トランスデューサまたはセンサのPCBへの取り付けは、PCBをa-SiC層に取り付ける前でもあとでもよい。いくつかの実施形態では、小型化超音波トランスデューサまたはセンサのPCBへの取り付けは、小型化超音波トランスデューサまたはセンサをPCBにワイヤボンディングすることを含む。いくつかの実施形態では、センサは、a-SiC層にエッチングされたポートと結び付いた部分を含む。いくつかの実施形態では、ASICはPCBに取り付けられ、それはPCBをa-SiC層に取り付ける前でもあとでもよい。工程1010において、埋め込み型デバイスの露出した部分はa-SiC層で覆われる。いくつかの実施形態では、埋め込み型デバイスの露出した部分は、PECVDを用いてa-SiC層で覆われる。工程1012において、被包された埋め込み型デバイスを浮き出させ、埋め込み型デバイスをSiC層から出す。
【0141】
<例示的な実施形態>
実施形態1.組織に取り付けられ、電気生理学的信号を検知するよう構成される第1電極および第2電極と、
マルチトランジスタ回路、および前記電気生理学的信号に基づき、電流を変調するよう構成される変調回路を有する集積回路と、
変調された電流に基づき、組織からの前記電気生理学的信号をエンコードする超音波後方散乱を発するよう構成される超音波トランスデューサと、
を有する埋め込み型デバイス。
【0142】
実施形態2.前記マルチトランジスタ回路がデジタル回路である、実施形態1に記載の埋め込み型デバイス。
【0143】
実施形態3.前記超音波トランスデューサおよび変調回路を有する本体を備え、前記本体の最大寸法の長さが約5mm以下である、実施形態1または2に記載の埋め込み型デバイス。
【0144】
実施形態4.前記第1電極および前記第2電極の間隔が約0.5mm以上離れている、実施形態1~3のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0145】
実施形態5.非応答型リフレクタを有する、実施形態1~4のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0146】
実施形態6.前記組織が筋肉組織または神経組織である、実施形態1~5のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0147】
実施形態7.前記組織が、末梢神経系の一部である、実施形態1~6のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0148】
実施形態8.前記組織が、中枢神経系の一部である、実施形態1~7のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0149】
実施形態9.前記組織が脳組織である、実施形態1~8のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0150】
実施形態10.前記組織が骨格筋、心筋、または平滑筋である、実施形態1~6のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0151】
実施形態11.3つ以上の電極を有する、実施形態1~10のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0152】
実施形態12.前記デジタル回路が、変調回路を作動させるよう構成される、実施形態2~11のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0153】
実施形態13.前記デジタル回路が、変調回路へデジタル化信号を送信するように構成され、前記デジタル化信号が検知された電気生理学的信号に基づく、実施形態2~12のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0154】
実施形態14.前記デジタル化信号が、固有の埋め込み型デバイス識別子または固有の電極対識別子を含む、実施形態13に記載の埋め込み型デバイス。
【0155】
実施形態15.前記デジタル化信号が、アナログ信号に比べ5倍以上圧縮される、実施形態13または14に記載の埋め込み型デバイス。
【0156】
実施形態16.前記集積回路がスパイク検出器を有する、実施形態1~15のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0157】
実施形態17.前記集積回路が電源回路を有する、実施形態1~16のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0158】
実施形態18.前記集積回路がアナログ・デジタル変換器(ADC)を有する、実施形態1~17のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0159】
実施形態19.前記集積回路が増幅器列を有する、実施形態1~18のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0160】
実施形態20.前記変調回路がスイッチを有する、実施形態1~20のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0161】
実施形態21.前記変調回路が電界効果トランジスタ(FET)を有する、実施形態1~21のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0162】
実施形態22.前記超音波トランスデューサの最大寸法の長さが、約5mm以下である、実施形態1~21のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0163】
実施形態23.前記本体の体積が約5mm3以下である、実施形態1~22のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0164】
実施形態24.前記本体の体積が、約1mm3以下である、実施形態1~23のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0165】
実施形態25.前記超音波トランスデューサが、埋め込み型デバイスに電力を供給する超音波を受信するよう構成される、実施形態1~24のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0166】
実施形態26.前記超音波トランスデューサが、1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機からの超音波を受信するよう構成される、実施形態1~25のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0167】
実施形態27.前記超音波トランスデューサが、バルク圧電トランスデューサである、実施形態1~26のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0168】
実施形態28.前記バルク超音波トランスデューサが、ほぼ立方体である、実施形態27に記載の埋め込み型デバイス。
【0169】
実施形態29.前記超音波トランスデューサが、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)、または容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)である、実施形態1~26のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0170】
実施形態30.対象に埋め込まれる、実施形態1~29のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0171】
実施形態31.前記対象がヒトである、実施形態30に記載の埋め込み型デバイス。
【0172】
実施形態32.組織中に埋め込まれる、実施形態1~31のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0173】
実施形態33.組織上、または組織の近くにある、実施形態1~31のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0174】
実施形態34.前記第1電極および前記第2電極が、組織中に埋め込まれる、実施形態33に記載の埋め込み型デバイス。
【0175】
実施形態35.前記第1電極および前記第2電極が、組織上にある、実施形態33に記載の埋め込み型デバイス。
【0176】
実施形態36.生体適合性物質によって少なくとも部分的に被包される、実施形態1~35のいずれか一つに記載の埋め込み型デバイス。
【0177】
実施形態37.前記第1電極および第2電極の少なくとも一部が、生体適合性物質によって被包されない、実施形態36に記載の埋め込み型デバイス。
【0178】
実施形態38.前記生体適合性物質は、N‐ビニル‐2‐ピロリドン(NVP)とn‐ブチルメタクリレート(BMA)のコポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パリレン、ポリイミド、窒化珪素、二酸化珪素、アルミナ、ニオビウム、ヒドロキシアパタイト、炭化珪素、チタニア、スチール、またはチタニウムである、実施形態36または37に記載の埋め込み型デバイス。
【0179】
実施形態39.前記生体適合性物質はセラミックまたは金属である、実施形態36または37に記載の埋め込み型デバイス。
【0180】
実施形態40.実施形態1~39のいずれか一つに記載の1つ以上の埋め込み型デバイスと、該1つ以上の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、該1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、を有するシステム。
【0181】
実施形態41.前記呼びかけ機は、超音波を送信するよう構成された第1超音波トランスデューサと、前記1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成された第2超音波トランスデューサと、を有する、実施形態40に記載のシステム。
【0182】
実施形態42.前記呼びかけ機は2つ以上の別個の呼びかけデバイスを含み、第1呼びかけデバイスは超音波を前記1つ以上の埋め込み型デバイスに送信するよう構成され、第2呼びかけデバイスは前記1つ以上の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される、実施形態40または41に記載のシステム。
【0183】
実施形態43.前記呼びかけ機は2つ以上の超音波トランスデューサアレイを有し、各トランスデューサアレイは2つ以上の超音波トランスデューサを有する、実施形態40~42のいずれか一つに記載のシステム。
【0184】
実施形態44.前記少なくとも1つ以上の超音波トランスデューサのうち少なくとも1つは、前記1つ以上の埋め込み型デバイスへの超音波の送信と、前記1つ以上の埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱の受信を交互に行うよう構成されており、前記トランスデューサの構成は前記呼びかけ機上のスイッチによって制御される、実施形態40~43のいずれか一つに記載のシステム。
【0185】
実施形態45.複数の埋め込み型デバイスを有する、実施形態40~44のいずれか一つに記載のシステム。
【0186】
実施形態46.前記呼びかけ機は、送信される超音波をビームステアリングして、該送信される超音波を、前記複数の埋め込み型デバイスの第1部分または前記複数の埋め込み型デバイスの第2部分に交互に集中させるよう構成される、実施形態45に記載のシステム。
【0187】
実施形態47.前記呼びかけ機は、少なくとも2つの埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を同時に受信するよう構成される、実施形態45に記載のシステム。
【0188】
実施形態48.前記呼びかけ機は、時間分割多重化を用いて、前記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、前記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される、実施形態45に記載のシステム。
【0189】
実施形態49.前記呼びかけ機は、空間多重化を用いて、前記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、前記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される、実施形態45に記載のシステム。
【0190】
実施形態50.前記呼びかけ機は、周波数多重化を用いて、前記複数の埋め込み型デバイスに超音波を送信するか、前記複数の埋め込み型デバイスから超音波後方散乱を受信するよう構成される、実施形態45に記載のシステム。
【0191】
実施形態51.前記呼びかけ機は、対象によって着用可能であるよう構成される、実施形態45~50のいずれか一つに記載のシステム。
【0192】
実施形態52.1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機と、
1つ以上のプロセッサと、
1つ以上のプロセッサによって実行されるよう構成された1つ以上のプログラムを保存するコンピュータにより読取可能な非一時的記憶媒体と、を備え、
前記1つ以上のプログラムが、
埋め込み型デバイスから発せられる電気生理学的パルスをエンコードする超音波後方散乱に基づく電気生理学的信号を検知するための命令、および、
前記埋め込み型デバイスから発せられる電気生理学的パルスに応答しない超音波後方散乱に基づき、前記呼びかけ機中の前記1つ以上の超音波トランスデューサに対する前記埋め込み型デバイスの位置を測定するため、または前記埋め込み型デバイスの動きを検知するための命令を含む、コンピュータシステム。
【0193】
実施形態53.前記1つ以上のプログラムが、呼びかけ機中の1つ以上の超音波トランスデューサに対する、埋め込み型デバイスの位置を測定するための命令を含む、実施形態52に記載のコンピュータシステム。
【0194】
実施形態54.前記1つ以上のプログラムが、埋め込み型デバイスの動きを検知するための命令を含む、実施形態52または53に記載のコンピュータシステム。
【0195】
実施形態55.前記動きが横の動きを含む、実施形態54に記載のコンピュータシステム。
【0196】
実施形態56.前記動きが角度のある動きを含む、実施形態54または55に記載のコンピュータシステム。
【0197】
実施形態57.前記電気生理学的信号に応答する前記超音波後方散乱が、電気生理学的信号をエンコードするデジタル化信号を含む、実施形態52~56のいずれか一つに記載のコンピュータシステム。
【0198】
実施形態58.前記1つ以上のプログラムが、検知された電気生理学的信号を、複数の埋め込み型デバイスからの電気生理学的信号をエンコードする超音波後方散乱を発した埋め込み型デバイスに帰するための命令を含む、実施形態52~57のいずれか一つに記載のコンピュータシステム。
【0199】
実施形態59.時間分割多重化、空間多重化、または周波数多重化を用いて、前記検知された電気生理学的信号を、埋め込み型デバイスに帰する、実施形態58に記載のコンピュータシステム。
【0200】
実施形態60.電気生理学的パルスをエンコードする超音波後方散乱にエンコードされる固有の識別子を用いて、前記検知された電気生理学的信号を、埋め込み型デバイスに帰する、実施形態58に記載のコンピュータシステム。
【0201】
実施形態61.組織中の電気生理学的信号を検知する方法であって、
1つ以上の埋め込み型デバイスにおいて超音波を受信する工程と、
前記超音波からのエネルギーを、変調回路中を流れる電流に変換する工程と、
前記電気生理学的信号を検知する工程と、
前記電気生理学的信号をデジタル化する工程と、
前記デジタル化された電気生理学的信号に基づき、電流を変調する工程と、
前記変調された電流を、電気生理学的信号に関する情報をエンコードする超音波後方散乱に変換する工程と、
前記超音波後方散乱を受信するよう構成される1つ以上のトランスデューサを有する呼びかけ機に、超音波後方散乱を発する工程と、を含む方法。
【0202】
実施位形態62.組織中の電気生理学的信号を検知する方法であって、
1つ以上の超音波トランスデューサを有する呼びかけ機から、1つ以上の埋め込み型デバイスに、超音波を送信する工程と、
1つ以上の埋め込み型デバイスから、前記電気生理学的信号に関するデジタル化された情報をエンコードする超音波後方散乱を受信する工程と、を含む方法。
【0203】
実施形態63.呼びかけ機を用いて、前記超音波後方散乱を受信する工程を含む、実施形態61または62に記載の方法。
【0204】
実施形態64.前記超音波が、前記1つ以上の埋め込み型デバイスに電力を供給する、実施形態61~63のいずれか一つに記載の方法。
【0205】
実施形態65.前記1つ以上の埋め込み型デバイスが、超音波トランスデューサおよび変調回路を有する本体を備え、前記本体の最大寸法の長さが、約5mm以下である、実施形態61~64のいずれか一つに記載の方法。
【0206】
実施形態66.前記1つ以上の埋め込み型デバイスが、組織に取り付けられ、電気生理学的信号を検知するよう構成される第1電極および第2電極を備え、前記第1電極および第2電極の間隔が、約0.5mm以上離れている、実施形態61~65のいずれか一つに記載の方法。
【0207】
実施形態67.前記組織が筋肉組織または神経組織である、実施形態61~66のいずれか一つに記載の方法。
【0208】
実施形態68.前記組織が末梢神経系の一部である、実施形態61~67のいずれか一つに記載の方法。
【0209】
実施形態69.前記組織が中枢神経系の一部である、実施形態61~67のいずれか一つに記載の方法。
【0210】
実施形態70.前記組織が脳組織である、実施形態61~67のいずれか一つに記載の方法。
【0211】
実施形態71.前記組織が骨格筋、心筋、または平滑筋である、実施形態61~67のいずれか一つに記載の方法。
【0212】
実施形態72.筋電図、神経電気記録図、心電図、複合活動電位、複数のニューロンのマルチユニット活動、局所電場電位、または活動電位を再構築する工程を含む、実施形態61~71のいずれか一つに記載の方法。
【0213】
実施形態73.前記1つ以上の埋め込み型デバイスを埋め込む工程を含む、実施形態61~72のいずれか一つに記載の方法。
【0214】
実施形態74.前記対象がヒトである、実施形態61~73のいずれか一つに記載の方法。
【0215】
実施形態75.前記1つ以上の埋め込み型デバイスの位置を測定する工程を含む、実施形態61~74のいずれか一つに記載の方法。
【0216】
実施形態76.前記1つ以上の埋め込み型デバイスの角度のある動きまたは横の動きを測定する工程を含む、実施形態61~75のいずれか一つに記載の方法。
【0217】
実施形態77.前記デジタル化信号が、固有の埋め込み型デバイス識別子または固有の電極対識別子を含む、実施形態61~76のいずれか一つに記載の方法。
【0218】
実施形態78.前記1つ以上の埋め込み型デバイスが、複数の埋め込み型デバイスを有する、実施形態61~77のいずれか一つに記載の方法。
【0219】
実施形態79.前記電気生理学的信号を、インビボにおいて検知する、実施形態61~78のいずれか一つに記載の方法。
【0220】
〔実施例〕
(実施例1)埋め込み型デバイスの製造
短縮された形態では、埋め込み型デバイスの組み立て工程は以下の通りである。
1.ASICをPCBに取り付ける。
2.ASICのポートをPCBにワイヤボンディングする。
3.圧電素子をPCBに取り付ける。
4.圧電素子のポートをPCBにワイヤボンディングする。
5.導出電極以外、デバイス全体を被包する。
【0221】
ASICは、450μm×500μm×500μmの大きさであり、Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの65nmプロセスによって組み立てられる。各チップは2つのトランジスタを有し、各トランジスタは5つのポート(ソース、ドレイン、ゲート、センター、バルク)を有する。各FETは同じバルクを用いるので、どのバルクパッドを接続してもよいが、上記トランジスタは、上列にパッドを出したトランジスタは抵抗バイアスネットワークを有さないが、下列にパッドを出したトランジスタは抵抗バイアスネットワークを有するという点で異なる。チップはさらに、電気メッキ用のより小さいパッドも有する。同じプロセスは、より複雑な回路を有し、したがってより多くのパッドを有するASICにも適用できる。これらのパッドは本実施例では用いなかった。FETの3つのバージョンをテープアウトした。
ダイ1:閾値電圧500mVの長チャネルFET。
ダイ2:閾値電圧500mVの短チャネルFET。
ダイ3:閾値電圧0mVのネイティブFET。
【0222】
これらのFETの電気的特性の確認は、ワイヤボンディングの対象としての一組のパッドと、ワイヤがはんだ付けされた第2の組のパッドとから成る、特別に設計したCMOSキャラクタライゼーションボードを用いて測定した。ソースメータ(2400 Sourcemeter, Keithley Instruments, Cleveland, OH)を用いてVDSをFETに供給しIDSを測定した。調節可能な電源(E3631A, Agilent, Santa Clara, CA)を用いてVGSを変調させ、FETのI‐V特性を得た。タイプ2のダイについて特徴的でないIV曲線が絶えず測定され、インピーダンス測定をすると、ダイ2の短チャネルはFETをショートさせるだろうとわかった。
【0223】
圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。これは、APC Internationalからディスクとして購入したものであり、セラミックの刃(PN CX-010-'270-080-H)を有するウェハソー(DAD3240, Disco, Santa Clara, CA)を用いて、750μm×750μm×750μmの立方体にダイシングした。このモートサイズが選ばれたのは、電力伝達効率を最大にしたからである。さらなる詳細については、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)を参照のこと。
【0224】
埋め込み型デバイスを、Long-Evansラットの坐骨神経の中に埋め込んだ。該神経は、後肢に分布する大直径の神経束である。該神経は直径1~1.4mmであり、そのサイズと利用しやすさから、デバイスの埋め込みの理想的な候補である。埋め込み型デバイスの繰り返しをいくつか作ったが、以下の例は、ラットモデルに埋め込んだ2つのバージョンの開発を検討する。
【0225】
埋め込み型デバイス基板は、ASICを圧電素子および導出電極と一体化させている。埋め込み型デバイスの第1のバージョンは、The Boardworks(Oakland, CA)から購入した特注のPCBを基板として用いた。上記PCBはFR‐4から作られており、厚さ30mil(約0.762mm)であった。基板の寸法は3mm×1mmであった。この設計は、通信検知一体化プラットフォームの最初の試みであったので、サイズを大きくするという代償のもと、組み立てを容易にするようなパッドサイズおよびパッド間隔を選んだ。PCB占有面積を保つため、PCBの各面は、圧電素子またはASIC用およびそのそれぞれのPCBへの接続のためのパッドを有した。さらに、2つの導出パッドを基板のASIC面に置いた。露出した電極はすべて、The BoardworksのENIGでメッキした。ASICを置くパッドは500μm×500μmであり、ダイのサイズに合うように選ばれた。ワイヤボンディングの対象であるパッドのサイズは200μm×200μmとなるように選ばれ、ダイの端部から約200μm離して、ワイヤボンディングに十分な空きを作った(以下で説明する)。電極のサイズおよび間隔を変え、互いに2mm、1.5mm、1mm、および0.5mm離した4つの電極対を用いて、経験的に最適化した。1.5mmより大きく離した電極対が導出に最適だとわかった。2mmおよび1.5mmのあいだで最小の信号減衰が見られ、1.5mmおよび1mmのあいだで信号強度が約33%減少した。
【0226】
埋め込み型デバイスの2回目の繰り返しでは、3つの主な関心事項に応えた。1)サイズ、2)ワイヤボンディングの容易さ、3)埋め込み/通信である。まず、基板の厚みを減らすため、FR‐4基板を2mil(約50.8μm)の厚さのポリイミド柔軟性PCB(AltaFlex, Santa Clara, CA)と交換し、ASIC(Grinding and Dicing Services Inc., San Jose, CA)を100μmまで薄くした。ボンディングを容易にするため、ASICとPZTクーポンとを同じ側に移動させ、基板の裏側には導出電極だけを残した。基板の同じ側にASICとPZTクーポンとを置くことで、基板のサイズの減少が制約されるが、電極同士の間隔により基板の長さを少なくとも2mmに制限した。最小化の試みを押し進めるため、ASICボンディングパッドを100μm×100μmまで小さくしたが、ボンディングパッドとASIC自体との間隔200μmは、ワイヤボンディング用の空間を与えるために維持しなければならなかった。PZTクーポン用の取り付けパッドも縮小し基板の端部により近づけて位置させた。これは、PZTクーポンは基板の上に完全に乗る必要はなく、基板からはみ出してよいという理由によるものである。さらに、ASICに対するパッドの位置も修正して、ボンディングを容易にした。もともとの設計では、ASICを囲むボンディングパッドのレイアウトは2本のワイヤボンドが交差する必要があった。これは不可能ではないが、パッド同士の短絡を避けるのは極めて困難である。そのため、パッドのレイアウトを変えて、ボンドが比較的まっすぐな経路となるようにした。最後に、動物実験中、埋め込み型デバイスを並べるのは極めて困難であることがわかった。これに対処するため、基板から伸びる1インチのテストリード線4本を加え、そのうちの2本をデバイスのソースおよびドレインに直接接続して、測定できる電力を得、それをアライメントメトリックとして用いた。グラウンドトルース信号を得るため、他の2本のリード線はゲートと中央ポートに接続した。どのリード線がどのポートに属するのか混乱するのを防ぐため、ビアには独自の形状を与えた。
図11Aを参照のこと。
【0227】
力を加えられると、試験用のリード線は容易に破断するか、容易にモートの位置を動かすかもしれないという恐れがいくらかあった。そのため、蛇行したトレースを用いたバージョンを設計した。蛇行したトレース(
図11B)は、変形可能な相互接続を可能にするためにしばしば用いられてきたものである。その構造により、「アコーディオンのように広げる」ことが可能だからである。概念的には、蛇行したトレースの設計は、一連の片持ち梁を、接続梁を介して直列につなげて得られる。
【0228】
上記提示した設計とともに、基板の両側を用いた埋め込み型デバイスの小型化バージョンも設計し、組み立てた。この設計では、基板は約1.5mm×0.6mm×1mmのサイズである。基板の小型化のため、5milの銀のワイヤの「尾部」をデバイスに記録のため取り付けた。このバージョンはインビボではテストしなかった。
【0229】
ASICとPZTクーポンとを、接着材を用いてPCB基板に取り付けた。接着材の選択には、3つの主な関心事項がある。1)接着材は、ASICとPZTを、ワイヤボンディングからの超音波力が当該構成要素を揺らさないほどしっかりと固定する必要がある。2)構成要素/基板パッドのサブミリメートルのスケールおよびピッチのため、接着材の塗布は比較的正確に行われた。3)接着材は導電性である必要がある。
【0230】
ASICおよびダイシングしたPZTはもともと、低温硬化はんだペーストを用いてPCB基板に取り付けた。はんだペーストは、フラックス中に球として懸濁した粉末状の金属はんだから成る。熱が加えられると、はんだボールが融け始め、融合する。しかし、はんだペーストの硬化はしばしば、リフロー中、PZTクーポンまたはモートを平行移動させたり回転させたりすることがわかった。このことは、PZTの配置および電力の収集に問題をもたらすとともに、ワイヤボンディングにも問題をもたらす。なぜなら、ボンドパッドはもはやチップに対して適切に位置していないからである。しかし、2成分銀エポキシ(エポキシ中に懸濁した銀粒子だけから成る)は、チップまたはPZTクーポンの位置を変えることなしに硬化できることがわかった。そのため、ASICおよびダイシングしたPZTは、2成分導電性銀エポキシ(H20E, Epotek, Billerica, MA)を用いてPCBにペーストした。それから、カプトンテープ(Polyimide Film Tape 5413, 3M, St. Paul, MN)を用いて、PCBをガラススライドに固定し、150℃の対流式オーブンに15分間入れて、エポキシを硬化させた。温度が高いほど硬化を速められる(
図12)けれども、PZTを160℃(PZTのキュリー温度の半分)を超えて加熱しないよう注意した。PZTをさらに高い温度で加熱することは、PZTを消極する危険を冒すことになる。150℃での硬化はCMOSの性能に何の影響も及ぼさないことがわかった。
【0231】
PZTの上部とPCBとの接続、およびASICとPCBとの接続は、1milのAlワイヤを超音波ウェッジボンダー(740DB, West Bond, Scotts Valley, CA)を用いてワイヤボンディングすることで行った。このボンディング方法では、ボンドヘッドのウェッジにAlワイヤを通し、超音波エネルギーがAlワイヤを基板に対して「擦り」、摩擦により熱を生じさせる。この熱が2つの物質を溶接してくっつける。
【0232】
ASICに対するワイヤボンディングは、CMOSパッドのサイズおよびワイヤボンドの末端のサイズにより、短絡を避けることが困難であった。この問題は、埋め込み型デバイス基板の第1のバージョンでのワイヤボンディングの対象の位置決めにより顕著となった。この位置決めでは、2つのボンドの末端が、ASICパッドの長さ方向を横切るのではなくむしろ短い幅方向を横切るように配置した。より細い金のワイヤをボンディングに用いることもできたが、ウェッジボンダーを用いて金をサーモソニックボンディングする困難さから、金のワイヤをこの装置によるボンディングに用いることは非実際的であった。さらに、効果的にワイヤボンドするために、基板を平らにし、かつ固定することが重要である。このため、ASICとPZTとを基板の異なる側に設けるという発明者らの当初の設計は、発明者らの埋め込み型基板の第1のバージョンでのワイヤボンディングプロセスの際、しばしば問題を生じさせた。この理由から、埋め込み型デバイスの第2の繰り返しで行った基板設計の選択(ASICとPZTを同じ側に移動させ、パッドを再配置して、ワイヤボンディングの対象にまっすぐな経路を提供する)により、ワイヤボンディングの収率が大幅に上がった。
【0233】
最後に、超音波ボンダーを用いたので、PZTへのボンディングは電荷の蓄積をもたらし、PZTが基板に完全にボンディングされると、そうした電荷の蓄積がチップにダメージを与えるだろうとわかった。これを避けるため、PZTをワイヤボンディングする直前に、デバイスのソースおよびドレインのテスト用リード線をアースにつないだ。
【0234】
埋め込み型デバイス組み立ての最終的な工程は、被包である。この工程は2つの目的を達する。1)PZT、ボンドパッド、およびASICを水性環境から絶縁する。2)ASIC/PZTクーポンとPCBとのあいだのワイヤボンドを保護する。同時に、被包材料が導出電極を覆うのを取り除く、あるいは被包材料が導出電極を覆うのを妨げる何らかの方法が必要である。さらに、被包材料はデバイスの埋め込みを妨げてはならない。最後に、被包中に何らかの損傷が生じた場合にデバイスに物理的な欠陥がないか検査できるよう視覚的に透明な被包材料を選ぶことが、不可欠ではないけれども重要である。
【0235】
最初に用いた被包材料はCrystalbond(509', SPI Supplies, West Chester, PA)であった。Crystalbondは、室温では固体だが71℃で軟化し始め、121℃で融けて粘性の液体となる接着材である。Crystalbondから熱を取り除くと、Crystalbondは数分のうちに再び固まり、うまく制御できる。埋め込み型デバイスを被包するために、Crystalbondの小さな薄片を剃刀でそぎ取り、デバイスの上に直接置いた。それから、ホットプレートで基板を加熱した。まず、温度を、薄片が変形し始める約70℃にし、それから、Crystalbondが完全に液体となるまで徐々に温度を上げた。液体のCrystalbondの滴の端が広がって最遠のワイヤボンドを過ぎたが導出パッドはまだ過ぎていないとき、ホットプレートのスイッチを切り、基板をプレートから冷却チャックへすばやく移し、そこでCrystalbondを再び固まらせた。
【0236】
Crystalbondは効果的であったが、UV硬化性エポキシドの方が選択性と生体適合性、それに硬化の急速さでもすぐれていることがわかった。まず、紫外線に露出することで硬化する光硬化性アクリル(3526, Loctite, Dusseldorf; Germany)を試した。精度を高めるため、縫い針を塗布具として用い、エポキシを405nmのレーザポイントで2分間、硬化した。このエポキシはうまく働いたが、医療用グレードではなく、生体内埋め込みには不向きであった。このため、医療用グレードのUV硬化性エポキシ(OG116-31, EPO-TEK, Billercia, MA)を試した。このエポキシを、365nmで92mW/cm2のUVチャンバ(Flash, Asiga, Anaheim Hills, CA)内で、5分間、硬化した。このエポキシはLoctiteエポキシより粘性がわずかに低かったが、縫い針を再び塗布具として用いることで、選択的な被包を行うことができた。ワイヤボンドの絶縁および保護機構として、エポキシは極めて効果的であったが、水中に長期間(~1時間)潜らせると水漏れすることがわかった。1年にも及ぶ安定性を宣伝する第2の医療用グレードエポキシを検討した(301-2, EPO-TEK, Billerica, MA)が、十分な粘性を有さないとわかり、硬化のためオーブンで焼くことが必要であった。上記のUVエポキシは不安定ではあるが、使用期間は急性のインビボ実験には適当であった。
【0237】
被包の安定性を高めるため、パリレン‐Cも被包材料として検討した。パリレン‐Cは、FDAが承認した、化学的・生物学的に不活性である生体適合性ポリマーであり、すぐれたバリアであり電気絶縁体であり、蒸着時には極めてコンフォーマルである。パリレン‐Cの蒸着は、粉末のパリレン‐Cダイマーを、150℃を上回る温度で気化することにより行われる。それから、気相のパリレン‐Cダイマーを690℃で加熱して熱分解を生じさせ、パリレン‐Cダイマーを割ってモノマーにする。それから、モノマーが、室温に保たれたチャンバに充満する。モノマーは、ひとたび任意の表面と接触すると、ほとんど即座にポリマー化する。すべてのデバイスについて、パリレン‐Cを、パリレン蒸着システム(SCS Labcoter 2 Parylene Deposition System, Specialty Coating Systems, Indianapolis, IN)を用いて、表1に示すパラメータで蒸着した。表1はチャンバゲージ温度を135℃として示していることに留意されたい。これは、実際のチャンバ温度から明瞭である。むしろ、チャンバゲージは、単に、プロセスチャンバの真空ゲージである。パリレンがゲージに蒸着するのを防ぐため、温度を少なくとも135℃に保つのが重要である。FR‐4基板の第1のバッチでは、カプトンテープを用いてパリレンを選択的に扱い、電極が覆われないようにした。しかし、導出電極とASICワイヤボンディングの対象とのピッチが小さいため、テープが基板にしっかり貼り付くのに十分な表面積がなく、テープはしばしば滑り落ち、電極パッドが覆われる結果となった。埋め込み型デバイスの第2の繰り返しでは、基板全体をコーティングし、それから探針の先端で電極からパリレンを取り除くという方法を用いて、パリレンのコーティングを試みた。パリレンがデバイス全体をコーティングするよう、埋め込み型デバイスを二層のガラススライドのあいだで湿らせて、空中に吊るした。
【0238】
【0239】
以下で、埋め込み型デバイスの製造についてさらに詳述する。
【0240】
PCB、ASIC、またはPZTクーポンで作業を開始する前に、ダスト基板用の2つのサンプルホルダを用意する。そのために、2枚のガラススライド(3mm×1mm×1mmスライドがよい)を取り、スライドの長さ方向に一片の両面テープを貼る。残りの工程が行えるよう、テープを用いてダストモートを所定の位置に固定する。スライドの一枚の上、両面テープの上に、一片のカプトンテープ(3M)を、粘着面を上にして加える。このスライドは、硬化用のスライドとして用いる。硬化の高温が、両面テープの接着材に問題を生じさせる可能性があるからである。
【0241】
次に、秤量ボートでA部とB部とが1:1の比の重さとなるよう量り、少量の銀ペーストを混合する。組み立てプロセスには大量の銀エポキシは必要ない。以下に示すのは約10gのエポキシ(各部5g)であり、3つの基板には十分以上である。なお、混合銀エポキシは、4℃で置かれると、貯蔵寿命は2週間である。したがって、残ったエポキシは、使われないときは、冷蔵することができるし、またそうすべきである。さらに、時間の経ったエポキシ(数日から1週間)は、新鮮なエポキシよりも粘性がわずかに高い傾向にあり、それによって塗布をより簡単にできる。
【0242】
基板はパネル化しており、取り除く必要がある。各基板は、テストリード線およびビア上のいくつかの取り付け点でパネルに接続されている。これらの取り付け点は、超小型の外科用メス(Feather Safety Razor Co., Osaka, Japan)を用いて切断できる。PCBを単体化したら、先端がカーボンファイバーであるピンセットまたはESDプラスチックピンセットを用いて、単体化したPCBを高温サンプルホルダに置く。
【0243】
ダイシングした/薄膜化したダイはダイシングテープに付けて運ぶが、これによりダイを取るのが難しくなることがある。ダイとテープとの粘着を減らすために、テープを変形させるのが役に立つ。先端がカーボンであるピンセットまたはESDプラスチックピンセットを用いて、テープを優しく押し、ピンセットをダイの周囲で円状に動かす。ダイが外れたかどうか確認するため、ピンセットの先端でチップを優しくつつく。ダイが簡単に外れなかったら、チップの周囲のテープを押し続ける。チップが外れたら、その基板の隣にある高温サンプルホルダに注意深く置く。チップが移動しないよう、サンプルホルダをチップまで運ぶ方が、その反対よりも望ましい。この工程では、ダイをなくしたり損傷したりしないよう注意する必要がある。力を加えてダイをテープから外してはならない。過剰な力を加えると、チップがテープから吹き飛ぶ可能性があるからである。
【0244】
次に、銀エポキシを用いてダイを取り付ける。顕微鏡下で、ピンまたは同様に細かいものを用いて、少量の銀エポキシをPCB上のCMOSパッドに塗布する。この工程では、誤って少なすぎる量のエポキシを塗布する方が、誤って多すぎる量のエポキシを塗布するよりもましである。銀ペーストを追加で塗布することはいつでもできるが、銀ペーストを除去することは些細なことではないからである。少量の未硬化のエポキシなら、塗布に用いたのと同じ器具を用いて削り取ることができる。エポキシを器具から確実に拭い取っておかなければならない。
【0245】
エポキシをパッドに置いたら、ASICをエポキシの上に置いてよい。CADエラーにより、チップのうちいくつかは跳ね返っている。跳ね返ったチップは基板上で正しい方向を向かせ、ワイヤボンディングの際、ワイヤが交差しなくてもよいよう注意することが重要である。
【0246】
ASICを基板上で正確に配置したら、150℃のオーブンに15分間置いて銀エポキシを硬化してよい。必要なら異なる温度を用いてもよい。詳しくは
図12を参照のこと。銀エポキシが硬化したら、念のため、各ダイを優しく押して粘着の度合をチェックする。ダイが動いた場合は、銀エポキシの第2コートが必要となる。
【0247】
ワイヤボンディングを準備するため、デバイスを高温サンプルホルダからレギュラーサンプルホルダへ移動させる。この変更が必要なのは、両面テープの粘着の方がカプトンテープよりも強く、そのためワイヤボンディングがより簡単に行われるからである。両面テープの一片は、サンプルホルダをワイヤボンダーのワークホルダに固定するのに十分であるべきである。テストリード線がたまたま何かに引っ掛かることのないよう、ワークホルダはそれ以前に両面テープに覆われたことがないことがもっともよい。必要なら、クリーンルームテープを用いて、サンプルホルダをさらに留めてもよい。
【0248】
デフォルトの設定を用いて、設けられたテスト基板上でボンディングを行うことで、ワイヤボンダーをよい状態に保つようにする。ワイヤボンダーをよい状態に保つことが重要である。損傷したウェッジはうまくボンディングせず、ASICパッドを結局は損傷するだけだからである。順ボンディング(まずダイにボンディングし、次に基板にボンディングする)を、以下の順序で行うべきである。1.ゲート。2.バルク。3.センター。4.ドレイン。5.ソース。ボンドをこの順序で形成することは重要ではないが、この順序は基板の向きの再設定の回数を最小限にし、ボンドヘッドによりボンドが偶然に損傷することを防ぐ。ボンディングを容易にするために、ワークホルダの角度を小さく調節してよい。このボンドはできる限りまっすぐであることが必須である。第2のボンドの末端が基板から浮く場合、ボンドの数を1つにし、末端を再度ボンディングするとうまくいくかもしれない。接着が適切にできない場合、可能な解決策の一つは、ボンドの末端と基板とを銀エポキシを用いて接続することである。また、2つのボンドの末端が接触して生じる短絡は、つながっている金属を超小型の外科用メスを用いて非常に注意深く切断することにより解決できる。
【0249】
既知の実用的なボンディングパラメータを、下の表2に記す。これらのパラメータは単にガイドラインであり、必要に応じて変更すべきである。過剰な電力(490を上回る)を必要とすることは、通常、問題があることを示す。基板の固定(PCBのガラススライドへの固定およびCMOSのPCBへの固定の両方)、ウェッジの状態、パッドの状態のすべてを確認すべきである。パッドの状態の場合、それ以前のワイヤボンディングにより損傷したパッドは、通常、より多い電力を必要とする。デバイスを救える場合もあるが、600を超える電力でボンディングをしようとする失敗した試みは通常、よいボンディングをするには多すぎる損傷をパッドに与えることになる。
【0250】
【0251】
ワイヤボンディングを行ったあと、デバイスに電気テストを行って、ボンディングが適切に成されたことを確実にすべきである。タイプ1のダイを用いた場合、I‐V特性は、およそ表3に示すようになるべきである。
【0252】
【0253】
I‐V特性が正しく思えない場合は、有益なトラブルシューティング法(valuable troubleshooting method)を用いて、ドレインとセンターとのあいだ、ソースとセンターとのあいだ、ドレインとソースとのあいだの抵抗を確認する。ダイが適切に作動している場合は、ドレインとセンターとのあいだ、およびソースとセンターとのあいだの抵抗はおよそ90kΩ、ドレインとソースとのあいだの抵抗はおよそ180kΩになると予期される。
【0254】
FETが適切に接続されていることを確かめたあと、PZTクーポンを取り付けるべきである。これは、ASICを取り付けるのと同様のやり方で行う。縫い針を用いて、少量の銀エポキシを適切なパッド上に置く。少量のエポキシを、パッドの後端(基板の端に向かう方向)に置くのがもっともよい。なぜなら、PZTクーポンはパッドの中央に位置せず、押し戻されてクーポンが基板から外れるだろうからである。PZTクーポンの極性はその効率に少ししか影響しないことに留意されたい。クーポンが正しい位置にあるかどうか判定するため、底面が上面より大きいかどうかを確認する。ダイシングソーの経路により、クーポンの底部は上部よりわずかに大きい。したがって、底面の端を上から見ることができる。このとき、クーポンは、ディスクがダイシングされたときにあったのと同じ向きに置かれている。
【0255】
PZTのワイヤボンディングは、ASICと同様のやり方(順ボンディング、PZTをPCBにボンディング)で行う。しかし、1つの重要な違いは、ドレインおよびソースのビアをアースすることである。Westbondの隣にはアースポートがあり、バナナコネクタを介してアクセスできる。ガイドラインとして、表4に示すパラメータが使えることが知られている。
【0256】
【0257】
ボンドがうまく形成されるには、PZTクーポンがどれほどよく基板に取り付けられたかに応じて、何度かボンディングを試みる必要があるかもしれない。ボンディングを試みる回数が多いほど、PZTの機械的構造は悪化する(銀コーティングが損傷する)。したがって、プロセスを極めて素早く最適化することが最善である。末端がはがれたことにより失敗したボンドは、一般に、電力が十分でないことを示す。ワイヤが破断したことにより失敗したボンドは、一般に、電力が高すぎることを示す。
【0258】
ボンドがうまく形成されたら、さらに電気テストを行って、PZTのボンディングがASICを損傷していないことを確かめるのがよい。
【0259】
最後の工程として、テストワイヤをビアにはんだ付けし、デバイスを被包する。テストワイヤは3milの銀ワイヤである。これらのワイヤは絶縁されている。絶縁の除去は、ワイヤを炎のそばに(炎の中ではない)近づけ、プラスチックが溶け後退するのを観察して行うことができる。
【0260】
ワイヤをはんだ付けしたあと、デバイスを被包してよい。被包材料はOG116-31医療用グレードUV硬化性エポキシであり、縫い針を用いて塗布するべきである。効果的なやり方は、エポキシの大粒をPZTクーポンの上に置き、大粒をASICの上に置くことである。清潔な針を用い、小滴を基板上に押し付け、基板の上面全体がコーティングされるようにする。エポキシは基板を濡らすが、その表面張力によりこぼれ落ちることはない。基板の本体をコーティングしたら、ビアおよび圧電素子の側面もコーティングする。それから、基板をUVチャンバ内でおよそ5分間、硬化し得る。テストワイヤがときおり、UVチャンバ内の何かと接触しASICを短絡させ得ることがわかっている。したがって、基板をチャンバに置く前に、ワイヤを包むか基板を何らかのテープに載せて、ワイヤをチャンバのいかなる表面からも絶縁するとよい。
【0261】
硬化後、裏側をコーティングすべきである。特に、基板を覆う露出したPZTクーポンと、テストビアの裏側と、電極を基板の上側に接続する基板の裏側の2つのビアの裏側とを、コーティングすべきである。この部分は、裏側のビアと電極とのあいだの空間が小さいため、少し困難なことがある。そこで、ごく少量のエポキシで始め、それを基板の端近くに置き、それからエポキシをビアに向けて引くことが最善である。基板の裏側は、上側と同様に硬化すべきである。基板を完全に被包したら、最終的な電気テストを行うべきである。テストに合格したら、埋め込み型デバイスの完成である。
【0262】
(実施例2)埋め込み型デバイスのテストのための設定
埋め込み型デバイスのテストは、基板から伸びるテストリード線が細いために、困難であるのが常であった。I‐V測定のためにこれらのビアにクリップを取り付けたり取り外したりすると、リード線をデバイスの本体から引っ張って外す結果となることが多かった。さらに、テストリード線のため、水タンクテスト測定を行うのが困難である。水中に露出した電子機器は短絡するからである。この問題を回避するため、埋め込み型デバイス測定のテストベッドとなるようPCBを設計した。PCB(Bay Area Circuits, Fremont, CA)はFR‐4から作製し、60milの厚さであった。該PCBは、バージョン2埋め込み型デバイス基板のレイアウトに合うように基板上に配置した4つのビアを有する。
【0263】
金のヘッダーピン(Pin Strip Header, 3M, Austin, TX)を、基板の両側から伸びるようにビアにはんだ付けした。これにより、本発明者らのデバイスをテストベッドに設置することができ、ヘッダーピンにアクセスすることで埋め込み型デバイスと接触することができた。次に、ビアを絶縁するため、ポリエチレンテレフタレート(PETG)製のプラスチックキャップを3Dプリントした(Flashforge Creator X, FlashForge, Jinhua, China)。これらのキャップは溝を付けてプリントし、Oリングを溝の内側にはめ、ヘッダーピンの周囲を防水密封できるようにした。キャップを基板に接続し、マイクロミル(47158, Harbor Freight, Camarillo, CA)を用いてPCBおよびキャップに2mmの穴を開け、キャップと基板とを一緒にねじ止めして圧縮した。テストベッドから伸びるワイヤをヘッダーピンにはんだ付けし、それからピンを被包した。密封の有効性を測定するため、基板を6MのNaCl水溶液に浸け、ピン同士のあいだの抵抗値を、Keithley 2400を用いて測定した。経時的な抵抗値を自動的に記録しプロットするようMATLABスクリプトを書いた。抵抗値の下落は、密封が破れたことを示す。追加のテストとして、一片のリトマス紙もプラスチックキャップの下に置いた。これは、キャップが液漏れしたら、リトマス紙の色が変化するという意図によるものであった。埋め込み型デバイス基板の被包に用いたのと同じ医療用グレードのエポキシを用いてピンを被包し、完全な防水バリアを作るため、テストボードの裏側のエポキシ上にパリレンを蒸着した。塩水溶液に浸けたテストベッドの隣り合う2つのピン間の抵抗値を、エポキシ絶縁のみの時間関数およびエポキシ+パリレン絶縁の時間関数として測定した。パリレンのバリアがない場合、エポキシは漏れ始め、テストベッドのピンが塩水により短絡した。
【0264】
埋め込み型デバイスの1つのバージョンは、PZT圧電素子およびシリコンASICを有する、FR‐4から成る1mm×3mm×1mmのPCBを、結晶ボンドを用いて被包したものであった。これらを、ケタミンとキシラジンIPの混合物で麻酔した成熟雄Long-Evansラットの坐骨神経に埋め込んだ。前記動物の脚に設けた、28Gステンレススチール針電極を有するタングステンマイクロワイヤを用いて、グラウンドトルース測定値を参照として得た。電子刺激により神経活動を引き起こし、トランスデューサ(V323-SU-F1 Olympus, Waltham, MA)を用いて圧力波を送受信して後方散乱データを得た。
【0265】
ダストモートを横切るもともとの信号は、のちほど、MATLABを用いて後方散乱データから計算した。再構築された信号対グラウンドトルースの代表的なトレースを
図13に示す。
【0266】
再構築された埋め込み型デバイスのデータは、グラウンドトルースの概略的なプロファイルに従い、神経の複合活動電位を捉えていたが、再構築されたデータのうちいくつかの特徴(例えば、1秒目から3秒目にかけて見られる「くぼみ」)は説明がつかなかった。
【0267】
埋め込み型デバイスの第2のバージョンは約0.8mm×3mm×1mmであり、ポリイミド基板を用い、医療用グレードのUV硬化性エポキシを被包として用いた。重大な変更点は、長さ1のテストリード線の追加であり、これにより、導出電極に捕捉されることにより、圧電素子にかかる電圧の測定およびグラウンドトルース測定を可能にした。バージョン1で用いたのと同じデバイス埋め込みプロトコルをバージョン2でも用いたが、後方散乱信号の再構築は、カスタムのトランシーバ基板を用いて大急ぎで行った。
【0268】
(実施例3)炭化珪素に被包した埋め込み型デバイス
エポキシ被包材料よりも炭化珪素(SiC)の方が、埋め込み型デバイスを絶縁し保護するのに有効な材料かもしれない。SiCは、SiとCとの共有結合により形成され、結合長さの短い四面体分子を形成し、したがって結合強度が高く、化学的・機械的安定性が高い。非晶質SiC(a-SiC)は、生物医学のコミュニティでコーティング材料として歓迎されてきた。a-SiCは、結晶質のSiCが通常必要とする温度よりずっと低い温度で蒸着でき、電気絶縁体であるからである。a-SiCの蒸着は、一般的に、プラズマ助長化学蒸着(PECVD)またはスパッタリングによって行う。スパッタリングしたa-SiCを用いた現在進行中の研究によれば、ピンホールのないSiC層を形成するのは困難である。むしろ、SiH4およびCH4を前駆体として用いたPECVDが、目覚ましい、ピンホールのないSiCフィルムを作り出せる。
【0269】
さらに、埋め込まれたa-SiCは目覚ましい生体適合性を示した。これまでの研究によれば、a-SiCでコーティングした50μmのイリジウムシャフトをウサギの大脳皮質に~20日間埋め込んだところ、挿入部位に集められたマクロファージ、リンパ球、単球による通常の慢性的な炎症反応は見られなかった。Hess et al., PECVD silicon carbide as a thin film packaging material for microfabricated neural electrodes, Materials Research Society Symposium Proceedings, vol. 1009, doi: 10.1557/PROC-1009-U04-03 (2007)を参照のこと。
【0270】
真に長期的なインプラントのためにデバイスを珪素上に炭化珪素被包材料で作成することを伴う埋め込み型デバイスのアプローチを検討するのは興味深い。考えられるプロセスを
図14に示す。ここでの最大の難問の1つは、SiCのPECVDが圧電材料をデポール(depole)しないようにすることである。汚染のないフィルムを得るために、最低温度200℃、かつ圧電トランスデューサのキュリー温度未満で蒸着することが重要である。
【0271】
(実施例4)小型化超音波トランスデューサの電力伝達および後方散乱
さまざまな構造のPZT結晶を得るのが比較的容易であることから、PZTを用いて一組の実験を行った。いくつかの厚さの金属化PZTシートを得た(PSI-5A4E, Piezo Systems, Woburn, MA and PZT84, APC Internationals, Mackeyville, PA)。PZTの最小の厚さは127μmであった。生体適合性のため、PZTをPDMS珪素の中に完全に被包した。
【0272】
PZTセラミックをダイシングするもっとも一般的に使用される方法は、適切なセラミック刃を有するウェハダイシングソーを用いてPZTシートを個々のPZT結晶に切断することである。切断の最小の分解能は刃の切断カーフによって決まり、30μmまで小さくし得る。
【0273】
他に考えられる方法はレーザカッターを用いることである。ダイシングソーとは異なり、レーザカッティングは、高出力のレーザビームを材料に集束させ、該レーザビームがピースを融かし、蒸発させ、取り除き、線を引くことによって、切断を行う。レーザカッティングの精度は10μmまで細かくでき、レーザの波長に制限される。しかし、PZTセラミックのような傷つきやすいサンプルを扱う場合、切断部位の温度が材料の圧電性能を損なう可能性がある。セラミックのエキシマーレーザカッティングは、UVレーザを用いて希ガスのエキシマーで切断するが、そのようなレーザカッターは極めて高価であり、現在のところ、利用できる適切な設備はない。そのため、すべての切断にダイシングソーを用いた。
【0274】
電気エネルギーをPZTから駆動するまたは引き出すために、上部プレートと底部プレートとの両方に電気接続を行う。PZTの電極として通常用いられる材料は、銀またはニッケルである。一般的に、銀は、さまざまな種類の非磁性的AC用途に用いられ、ガラスフリットに懸濁したフレーク状の銀を、通常、セラミックでふるい分けして(screen onto the ceramic)焼成する。高電界DC用途の場合、銀は2つのプレート間を移動し橋渡しする可能性が高い。そのため、腐食抵抗が高く容易に電子移動しないニッケルを、代替材料として電気メッキまたは蒸着し得る。
【0275】
どちらの材料も、適切なはんだおよびフラックスを用いてはんだ付けできる。例えば、銀は錫に対して可溶であるが、銀を含んだはんだは電極中で銀の捕捉を防ぐために用いることができる。ニッケルメッキの燐成分がはんだ付けを困難にするが、的確なフラックスを用いることで表面の酸化を防げる。しかし、はんだ付けの場合、キュリー点を超えるのを防ぎPZTサンプルをデポールするのを避けるため、はんだ付け温度は240℃から300℃のあいだでなければならない。こうした温度においても、PZTは焦電性でもあるので、はんだ付け時間は2~4秒を超えないよう注意しなければならない。
【0276】
その代わりに、銀エポキシにより、あるいははんだペーストを用いた低温はんだ付けにより、電気接続を行ってもよい。標準的な2成分銀エポキシは十分な導電性を与えることができ、室温でも一晩で硬化できる。しかし、接合部分はもろい傾向があり、テスト中、容易に破断し得る。結合は、非導電性エポキシを被包として用いて補強できるが、この追加の層はPZTに機械的な負荷をかけ、その品質係数を著しく低め得る。一方、低温はんだペーストは150℃から180℃の温度で位相変化を生じ、すぐれた電気接続を提供し得るとともに、フラッシュはんだ付けで達成される結合強度に匹敵する結合強度を提供し得る。したがって、低温はんだ付けによるアプローチを用いた。
【0277】
ウェハダイシングは、PZTを10μm台の小さな結晶に切断できる。しかし、寸法が1mmより小さいサンプルは、ピンセットで扱い結合するのが極めて難しい。さらに、PZT結晶の上部プレートおよび底部プレートとの接続に用いるワイヤの長さが異なるために(したがって、該ワイヤによって導入される寄生インダクタンスおよび寄生容量が異なるために)、また、多数のサンプル間で分配されるはんだペーストの量が異なるために、インピーダンス分光器測定は一貫していなかった。
【0278】
したがって、電気的相互接続のすべてがワイヤおよび基板からの寄生振動を短絡しディエンベディングする、31milの厚さの2層FR‐4PCBを製造した。製造した基板(さまざまなテスト構造、および、127μm、200μm、250μmの厚さのPZT結晶の特性を個別に示すモジュールを有する)を、寸法を付けて
図15に示す。テストモジュール中の各ユニットセルは、PCBの一方の側に、PZT結晶との接続用の、特定の寸法の2つのパッドを有し、他方の側に、後方散乱通信用の個々の要素用のパッドを有する。ユニットセルのあいだのピッチは、個々の要素のサイズに制限され、およそ2.3mm×2mmである。
【0279】
極めて小さなPZT結晶を直接扱うのを避けるため、
図16A~
図16Eは、PZTをPCB上に結合するスケーラブルプロセスフローの概要を示す。
図16Aに示すように、はんだペーストを、ポンプを用いて、一定の圧力下、制限された時間、上側のパッドのうち1つに分配する。パッドは、用いられるPZTの厚さに基づいて、250μm
2、200μm
2、または127μm
2である。
図16Bは、パッドより大きいPZTピース(扱いやすい)を上部に置いてパッドを覆うところを示す。基板および圧電アセンブリをオーブンで焼いてはんだペーストを硬化させる。したがって、PZT結晶は今でははんだ付け前の隆起した電極に結合している。
図16Cは、ウェハダイシングソーが、パッドの端に沿って、はんだペーストを基板上のアライメントマーカーとして用いて、合計4回の切断を行い、結合していない領域は切り落とし、PCBに結合した小さなPZT結晶のアレイを残すところを示す。
図16Dは、単一のワイヤボンドが、PZTの上部プレートとPCBの電極との間で電気的接触を行い、回路を完成させるところを示す。最後に、
図16Eは、ワイヤボンドの保護と絶縁のため、アセンブリ全体をPDMS(Sylgard 184, Dow Corning, Midland, MI)中に被包したところを示す。
【0280】
圧電材料は電気機械的構造物なので、その電気的・機械的特性を示した。以下に、そのような測定を行うためのテスト設定および技術を詳述する。
【0281】
2ポートネットワークパラメータと呼ばれる数学的構成概念を用いて、任意の電気デバイスをブラックボックスとしてモデル化することができる。回路の特性は数のマトリクスによって特定され、デバイスの入力に与えられた信号に対する該デバイスの応答を、ネットワーク中のすべての内部電圧および電流を解くことなく、容易に計算することができる。いくつかの異なる種類の2ポートネットワークパラメータ(例えば、Zパラメータ、Yパラメータ、Sパラメータ、ABCDパラメータなど)があり、異なるパラメータ間の変換は容易に行うことができる。これらのパラメータの抽出を可能にする装置は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)と呼ばれる。VNAは、各ポートの電圧を(インピーダンスミスマッチングに基づいて)入射波および反射波に分解しこれらの波同士のあいだの比を計算して散乱またはSパラメータを計算する方向性結合器を内蔵する。
【0282】
VNAを用いての測定を行う前に、器具を校正する必要がある。内部方向性結合器は非理想的だからである。校正をすることにより、測定の基準面をケーブルの先端に移動できる。すなわち、ケーブルからの寄生振動を校正できる。いくつかの校正基準があるが、もっとも一般的に用いられるのは、オープン、ショート、ロード校正手順である。測定の概略図を
図17に示す。同軸ケーブルの端にはんだ付けしたダブルクリップを用いて、上部プレート/底部プレートと接続する。クリップからの寄生振動は100MHzを大きく下回らない。
【0283】
一例として、VNA(E5071C ENA, Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いて、(250μm)3PZT結晶の電気的性質を測定した。測定したPZT結晶の容量は、PCBおよび固定物(クリップとコネクタ)からの大きな寄生容量のため、単一パラレルプレート容量モデルから予期される容量とは大きく異なることに気が付いた。先に概略を述べた校正工程のVNA係数は測定面をケーブルの先端に移動させるだけであったため、同じ基板上に作られたオープン/ショート/ロード校正構造物を用いて基板および固定物の寄生振動を含ませた。測定したPZT応答は、校正後の予期された応答とマッチした。
【0284】
この校正技術を用いて、PZTのインピーダンスを周波数の関数としてプロットできる(
図18B参照)。しかし、このプロットからは、電気機械的共鳴があるかどうか判定するのは極めて難しい。エアーバッキング(機械的クランプなし)で得られたシミュレーション結果を重ねると、インピーダンス分光法は低周波数および高周波数での測定値とよくマッチし、その例外は約6MHzの共振周波数およびその調波における目立ったピークであることに気がついた。PCB(FR‐4)を有するPZTの一方の側をクランプしロードすると、エアーバッキングによる共振ピークがかなり弱まることが観察された。測定における観察可能な共振がないにもかかわらず、約6MHzの小さなブリンプが観察された。機械的品質係数Q
mは、以下の式を用いて計算できる。
【0285】
【0286】
式中、faとfrは反共振周波数(インピーダンスが最大)および共振周波数(インピーダンスが最少)を表わし、Zrは共振におけるインピーダンスを表わし、Cpは低周波数容量を表わす。測定から計算された品質係数は、シミュレーションでの5.1に対して、約4.2である。データシートによれば、PZTの無負荷のQは~500であり、これは、FR-4によるバッキングとワイヤボンドとが品質係数を大幅に落としていることを示す。PZT結晶の機械的Qの急激な減少にもかかわらず、実験によれば、後方散乱信号レベルは約~19低下したのみであった。
【0287】
電気特性決定設定では、VNAは、特性決定に必要な入力を提供する内蔵の信号発生器を有する。PZTの音響特性決定を行うため、音波を発生させてサンプルへと発し入力として用いる。これは、市販の広帯域超音波トランスデューサを用いて行うことができる。
【0288】
図19は、圧電能動素子、支持体、当板から成る、代表的なトランスデューサの構成を示す。支持体は通常、高い減衰量と高密度を有する材料から成り、それによって、トランスデューサの振動を、能動素子の背面からのエネルギーを吸収することによって制御し、一方で、当板が、トランスデューサ素子をテスト環境から保護しマッチング層として働くように使用される。
【0289】
図20に示す自家製の設定を用いて、超音波電力伝達テストを行った。5MHzまたは10MHzの単一素子トランスデューサ(それぞれ6.3mmおよび6.3mmの能動領域。焦点距離~30mm。Olympus, Waltham, MA)を、コンピュータ制御の2軸平行移動ステージ(VelMex, Bloomfield, NY)に取り付けた。トランスデューサの出力を、ハイブリッドカプセルハイドロフォン(HGL-0400, Onda, Sunnyvale, CA)を用いて校正した。アセンブリのプロトタイプを、トランスデューサが水中でプロトタイプの直接の上方約3センチの距離で浸かるよう、水の容器中に置いた。プログラマブルパルス発生器(33522B, Agilent Technologies Santa Clara, CA)および無線周波数増幅器(A150, ENI, Rochester, NY)を用いて、トランスデューサを、10サイクルの正弦波パルス列と1kHzのパルス反復周波数(PRF)を有する特定の周波数で駆動した。受信した信号を、オシロスコープ(TDS3014B, Tektronix, Beaverton OR)に接続された無線周波数増幅器(BT00500-AlphaS-CW, Tomco, Stepney, Australia)で増幅し、MATLABを用いて超音波信号を集め記録した。
【0290】
図21Aおよび
図21Bは、5MHzのトランスデューサの出力電力を、該トランスデューサの表面とハイドロフォンとの間の距離(z軸)の関数として測定した代表値を示す。水中でのピーク圧力は、トランスデューサの表面から~33mm離れた地点で得られた(
図21A)。一方、(0.3dB/cm/MHzでの)軽減ピークは~29mmであった(
図21B)。
図22Aは、トランスデューサ出力を軽減したXZスキャンを示し、近距離および遠距離ビームパターンとレイリー距離または~29mmの焦点を示し、
図21Bでの軽減ピークに一致する。
図22Bは、~29mmの焦点でのビームのXY断面スキャンを示し、6dBのビーム幅はおよそ2.2mmであった。
【0291】
ビームの6dB帯域幅に対するさまざまな周波数のトランスデューサの全積分音響出力パワーは、名目上、空間ピーク時間平均ISPTA29.2μW/cm2に保たれ、焦点において全出力パワー~1μWであり、ピーク粗密化圧力25kPa、機械的インデックス(MI)0.005であった。低減ISPTAもMIも、FDAの規制制限である720mW/cm2および1.9(FDA 2008)をそれぞれずっと下回った。
【0292】
図18Aは、さまざまな埋め込み型デバイスのトランスデューサのサイズについて校正した完全に組み立てたケーブルなしのプロトタイプの電力送達効率の測定値を、この同じ設定についての分析予測と比較したものを示す。測定結果は、すべてのトランスデューササイズにおいてシミュレーションモデルのふるまいと非常に近似しており、例外はいくつかの小さなトランスデューサ寸法においてのみであった。これは、トランスデューサ位置および超音波ビーム幅に対する感度によるものと思われる。最小のPZT結晶(127μm)
3のリンクの効率の測定値は2.064×10
-5であり、これはトランスデューサで名目上受信される20.64pWとなった。送信出力電力密度が720mW/cm
2に保たれた場合、トランスデューサにおいて最大で0.51μWが回復できる。PZTによって得られる電力レベルがそのように低いのは、主に、実験に用いられた広帯域トランスデューサが極めて非効率だからである。各トランスデューサ寸法において最適な電気入力インピーダンスを有する専用のカスタムメイドのトランスデューサは、シミュレーションモデルで予測されたように、獲得電力レベルの2桁を超える大幅な改善ができた。
【0293】
(250μm)
3PZT結晶で得られた電圧の周波数応答を
図18Cに示す。共振周波数の測定値は6.1MHzであった。これはポアソン比による立方体について予測された共振周波数のシフト、および、該立方体の3本の軸のそれぞれに沿った共振モード間の対応するモード結合に一致する。さらに、Qの計算値4は、PZTの電気的に測定されたQに一致した。
【0294】
上記の実験結果は、超音波を用いた極小のPZTノードに対する電力結合の分析モデルは、少なくとも~100μmのスケールまで、さらにおそらくそれより小さなスケールに至るまで、正確であることを示す。トランスデューサが機能を失うまでどれぐらい小さく作れるか(how mall a transducer can be fabricated before loss of function)は、今後の課題である。なお、さらに小さなノード(<127μm)の測定は、プロトタイプ組み立てプロセスによってではなく、PZT基板の商業的入手性によって制限された。話を進めると、マイクロエレクトロメカニカルおよびナノエレクトロメカニカルRF共振器について検討したかなりの量の研究および技術(Sadek et al., Wiring nanoscale biosensors with piezoelectric nanomechanical resonators, Nano Lett., vol. 10, pp. 1769-1773 (2010); Lin et al., Low phase noise array-composite micromechanical wine-glass disk oscillator, IEEE Elec. Dev. Meeting, pp. 1-4 (2005)を参照)および薄膜圧電トランスデューサ(Trolier-McKinstry et al., Thin film piezoelectrics for MEMS, J. Electroceram., vol. 12, pp. 7-17 (2004))を用いて、極小(10μm台)のトランスデューサを容易にしスケーリング理論を真に評価した。
【0295】
(実施例5)呼びかけ機超音波トランスデューサアレイを用いたビームフォーミング
本実施例では、分散型超音波ベースの記録プラットフォーム(a distributed, ultrasound-based recording platform)において後方散乱を介して個々の埋め込み型センサに呼びかけることのできる超音波ビームフォーミングシステムを提示する。カスタムASICが、7×2PZTトランスデューサアレイを、特定のプログラム可能な時間遅延を有する3サイクルの32V方形波で駆動し、50mm離れた位置にある800μmのニューラルダストモートにビームを集束させる。水中の受信モートの測定された音‐電気変換効率は0.12%であり、システム全体は26.3%の電力を1.8V電源からトランスデューサ駆動出力へと送達し、各送信位相において0.75μJを消費し、後方散乱回路の入力に印加されるボルト毎に後方散乱が0.5%変化する。送信アレイおよび受信モート双方のさらなる縮小により、ウェアラブルな長期検知・神経調節システムへの道が開ける。
【0296】
埋め込み型デバイスが呼びかけトランシーバよりも数で大幅に上回る、この高度に分散した非対称的なシステムにおいて、ビームフォーミングを用いて、多数の埋め込み型デバイスに効率的に呼びかけることができる。埋め込み型デバイスのプラットフォームにおけるビームフォーミングアルゴリズム、トレードオフ、性能を研究することにより、近隣の埋め込み型デバイスからの干渉を十分に抑えるには、異なる呼びかけ機同士のあいだの協力が役に立つと実証された。Bertrand et al., Beamforming approaches for untethered ultrasonic neural dust motes for cortical recording: a simulation study, IEEE EMBC, 2014, pp. 2625-2628 (Aug. 2014)を参照のこと。本実施例は、
図2Aに示す呼びかけ機および埋め込み型デバイスシステム用の超音波ビームフォーミングシステムのハードウェア実装を実証する。ASIC(例えば、Tang et al., Integrated ultrasonic system for measuring body-fat composition, 2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference - (ISSCC) Digest of Technical Papers, San Francisco, CA, 2015, pp. 1-3 (Feb. 2015); Tang et al., Miniaturizing Ultrasonic System for Portable Health Care and Fitness, IEEE Transactions on Biomedical Circuits and Systems, vol. 9, no. 6, pp. 767-776 (Dec. 2015)を参照)は7つの同じチャネルを有し、各チャネルは送信ビームフォーミングに5nsの分解能を有する6ビットの遅延制御を有し、高電圧レベルシフタと、任意のフィードスルーを絶縁する受信/送信スイッチとを一体化する。
【0297】
ASICは単一の1.8V電源で作動し、32V方形波を発生させて、一体化されたチャージポンプとレベルシフタとを用いて、圧電トランスデューサを駆動させる。上記システムは、~32.5%の電力を1.8V電源から32V出力電圧へと送達し、~81%の電力を32V電源から出力ロードへと送達する(各トランスデューサ素子は4.6pF)。ASICのブロック図を
図2Aに示す。そのような測定毎の低エネルギー消費を可能にする回路の詳細は、Tang et al., Integrated ultrasonic system for measuring body-fat composition, 2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference - (ISSCC) Digest of Technical Papers, San Francisco, CA, 2015, pp. 1-3 (Feb. 2015)に記載されている。ASICは、高電圧トランジスタを有する0.18μmCMOSで作られる。チップ領域は2.0mm
2であり、デジタルコントローラ、ADC、2つのオフチップブロッキングキャパシタを除く全システムを含む。
【0298】
トランスデューサアレイの設計は、所望の貫通深さ、開口サイズ、素子サイズの強い関数である。定量的には、アレイのレイリー距離Rは以下のように計算できる。
【0299】
【0300】
式中、Dは開口のサイズであり、λは伝播媒体中の超音波の波長である。定義上、レイリー距離とは、アレイが放射したビームが完全に形成される距離である。言い換えれば、圧力場はレイリー距離で自然な焦点に収斂し、受信した電力を最大化するために、ビーム拡散が最少であるレイリー距離に受信器を置くのが好ましい。
【0301】
動作の周波数は、素子のサイズに合わせて最適化される。水タンクでの予備的な研究によれば、(800μm)3PZT結晶で最大エネルギー効率が達成され、該(800μm)3PZT結晶は被包後1.6MHzの共振周波数を有し、λが~950μmとなる。各素子間のピッチは、効率的にビームフォーミングするために2分の1波長の奇数倍となるよう選ばれる。その結果、ビームフォーミング能力のこの実証の場合、全体的な開口は~14mmであり、レイリー距離は50mmとなる。50mmでは、素子サイズが800μmならば、各素子は場から十分に離れている(R=0.17mm)。したがって、個々の素子のビームパターンは、ビームフォーミングができるほど全方位的である。
【0302】
いくつかの送信・受信ビームフォーミング技術が実施可能である。本明細書では、時間遅延和送信ビームフォーミングアルゴリズムを選択し、信号が推定的に(constructively)目標方向に干渉するようにする。このアルゴリズムは、さまざまな埋め込み型デバイスへのビームステアリングおよび最大電力送達を実証できる。多数の埋め込み型デバイスへの後方散乱通信に同時に対応するため、より洗練されたアルゴリズムが必要とされるかもしれない。そうしたアルゴリズムとしては、遅延和ビームフォーミング、線形拘束付最小分散型ビームフォーミング、単一ビーム用の凸最適化ビームフォーミング、凸最適化を伴う「マルチキャスト」ビームフォーミング、最大尖度ビームフォーミング、最小分散無歪応答ロバスト適応ビームフォーミング、多項テンソル分解、および多重Rxチャネル時間領域データからのモートインパルス応答のデコンヴォルーションが挙げられる。この問題の一態様の詳細な処置については、Bertrand et al., Beamforming approaches for untethered ultrasonic neural dust motes for cortical recording: a simulation study, IEEE EMBC, 2014, pp. 2625-2628 (Aug. 2014)に記載されている。
【0303】
7つのチャネルのそれぞれが、特定のプログラマブル時間遅延を有する3サイクルの32V方形波によって駆動され、エネルギーが観察距離50mmで集束される。各チャネルに適用される時間遅延は、アレイの中心から焦点までの伝播距離の違いおよび媒体中の超音波の伝播時間の違いに基づいて計算される。
【0304】
Ultrasimを用いて、上記の1Dアレイによる水中での超音波の伝播行動の特性を決定した。シミュレートしたXY(
図24A)およびXZ(
図24B)断面ビームパターンは、PDMS被包をモデルにしていないにもかかわらず、示した測定値に近似する。
【0305】
組織と似た音響特性を示すことから、ビームフォーミングシステム測定用の媒体として水を用いる。プレ金属化チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)シート(APC International, Mackeyville, PA)をウェハソーでダイシングして、800μm×800μm×800μmの結晶(それぞれ4.6pFの平行容量)とする。これは各送信素子のサイズである。各PZT素子を、底部端子には導電性銅箔およびエポキシを、上部端子にはワイヤボンドを用いて、ASIC中の対応するチャネルに電気的に接続する。アレイをPDMS(Sylgard 184, Dow Corning, Midland, MI)中に被包して、ワイヤボンドを保護し絶縁する。被包後のPZT結晶の品質係数は~7である。アレイをまとめて2×1素子の7グループにし、ピッチを~5/2λ~2.3mmとする。アレイのサイズは約14mm×3mmである。最後に、アセンブリ全体を、直径25mm高さ60mmの円筒形チューブに入れ、該チューブを水で満たす。
【0306】
トランスデューサアレイの2Dビームパターンおよび出力を、カプセルハイドロフォン(HGL-0400, Onda, Sunnyvale, CA)を用いて校正する。ハイドロフォンは、コンピュータ制御の2D平行移動ステージ(VelMex, Bloomfield, NY)に取り付けられる。ハイドロフォンは30°の取り入れ角(acceptance angle、5MHzで-6dB)を有し、これは、送信距離50mmおよびスキャン範囲(±4mm)で提供されるビームを捕獲するのに十分である。
【0307】
測定したXY断面ビームパターンにアレイを重ねたものを
図23Aに示す。アレイ中の各トランスデューサ(素子)に適用した遅延を
図23Bに示す。焦点における-6dBビーム幅は3.2mm~3λである。ASICの柔軟性は、遅延のワイドプログラミングおよびグラニュラープログラミングの両方を可能にする。ビームフォーミング前後の50mmでのアレイのピーク圧力レベルは、それぞれ~6kPaおよび~20kPaである。ビームフォーミング後の送信出力圧力波における3Xは、シミュレーションに一致する。シミュレーションはまた、アレイのレイリー距離が50mmであることも示す(
図23C参照)。
【0308】
さらに、多数の埋め込み型デバイスに呼びかける性能を確証するために、
図24Aに示すようにアレイのビームステアリング性能を確証した(
図24Aは、XY平面における3つの異なる位置でのビームステアリングを示す)。各ビーム位置での時間遅延は、その下の
図24Bに示す。1Dビームステアリングは、シミュレーションに極めて近似している(
図24Cを参照)。なお、ビームステアリングのレンジは、電子性能よりもむしろ、アレイの機械的構成により、±4mmに限定されている。
【0309】
ハイドロフォンを埋め込み型デバイス(800μm×800μm×800μmバルク圧電トランスデューサを有する)と交換し、送信距離50mmの地点に置いて、電力リンクを確証する。モートで測定されたオープン回路のピーク間電圧は、送信パルス期間2.56μsに対し65mVである。焦点で-6dBビーム幅に統合した空間的ピーク平均音響パワーは750μWであり、これはFDAの定めた安全性限界の0.005%である。モートでの最大獲得可能電力は0.9μWであり、音‐電気変換効率の測定値は0.12%である。測定結果はリンクモデル(Seo et al., Model validation of untethered ultrasonic neural dust motes for cortical recording, J. Neurosci. Methods, vol. 244, pp. 114-122 (2015))と一致する。上記システムは26.3%の電力を、1.8Vの電源からトランスデューサ駆動出力に送達し(駆動効率として定義する)、各送信位相につき0.75μJを消費する。
【0310】
上記システムの超音波後方散乱通信性能は、後方散乱回路への入力としての後方散乱電圧レベルの違いを測定することで確証され(Seo et al., Model validation of untethered ultrasonic neural dust motes for cortical recording, J. Neurosci. Methods, vol. 244, pp. 114-122 (2015))、DC電源で調整される。上記システムの送信時間及び期間は3μsと80μsであり、~77μsの受信用の領域が残される。アレイの中心の2×1素子を用いて後方散乱を受信する。受信結晶の出力を、処理のために増幅しデジタル化する。測定された後方散乱感度は、後方散乱回路の入力に印加するボルト毎に~0.5%であり、これはシミュレーションに一致する。上記システムの全体的な性能を表5にまとめる。
【0311】
【0312】
超音波ビームフォーミングシステムを用いた本発明者らの測定は、送信ビームフォーミングのみでも、ニューラルダストプラットフォームにおいて多数のセンサ呼びかけを行うのに十分な信号対雑音比(SNR)を提供できることを示す。ダストモートの縮小によるSNRの減少は、受信ビームフォームを実施することにより、大部分は軽減できる。さらに、呼びかけ比を高めるため、多重化という代替手段を用いることもできる。多重化の例としては、多数のモートが同じ送信ビームで同時に呼びかけられる空間多重化が挙げられる。しかし、処理/通信負荷と電力消費との、システム設計上のトレードオフ関係を考慮することが重要である。さらに、必要なSNRを達成するためには、近傍のダストモートからの干渉を十分に抑えることが必要である。
【0313】
音‐電気効率0.12%が、現在、システム全体の効率
【0314】
【0315】
に影響している。電力リンク効率がそのように低いにもかかわらず、FDAの定める安全規則の~1%(空間ピーク平均1.9W/cm2)が出力できるならば、水中で50mm離れた800μmの超音波トランスデューサに対して0.92Vまでのピーク間電圧および180μWまでを得ることができる。
【0316】
さらに、この実証での電力リンク効率の低さは、アレイの開口および素子のサイズによって定まるそのように大きな送信距離の結果である。末梢神経干渉の場合、例えば、皮膚、組織などの厚みを含む所望の送信距離は約5mmである。アレイの遠距離にあるために、開口は~4.4mmであるべきである。各素子をさらにスケーリングすることにより、アレイ開口および送信距離の全体の寸法を所望の5mmにまで減らすことができる。シミュレーションによれば、1%までの音‐電気効率は、水中で100μmの受信超音波トランスデューサを用いて達成できる。
【0317】
組織内の送信の場合、組織内で3dB/cm/MHzの損失が生じると仮定する。
図25は、FDAの安全制限の1%での動作での、リンク効率および受信電力レベル双方のスケーリングを示す。このかなり控えめな損失にもかかわらず、100μmで、0.6Vまでのピーク間電圧と75μWまでとを得られることをシミュレーションは示す。したがって、このプラットフォームを用いた組織内の無線電力送達は実行可能である。さらに、この電力レベルは、高効率かつ低電力エネルギー消費回路およびチャージポンプ(上述のASICと類似である)を動作させて、近傍のニューロンを電気的に刺激しセンサを用いて生理的状態を検出するのに適した電圧を出力させるのに十分である。
【0318】
(実施例6)超音波ニューラルダストを用いた末梢神経系の無線記録
以下の実施例は、神経信号を記録する埋め込み型デバイスシステムを実証する。本実施例は、超音波が、組織中のmmスケールのデバイスに電力を送達するのに効率的であることを示す。同様に、後方散乱を用いた受動的なバッテリなしの通信により、麻酔をかけたラットから筋電図(EMG)および神経電気記録図(ENG)を高忠実度で送信することができる。これらの結果は、将来、バイオエレクトロニクスベースの治療を進めるための、超音波ベースの神経インターフェースシステムの可能性を強調するものである。本実施例は、さらに、埋め込み型デバイスの位置および動きを決定する方法を提供する。
【0319】
対象のラットの末梢神経系の坐骨神経からの神経電気記録図(ENG)および腓腹筋からの筋電図(EMG)記録を報告するために、インビボで埋め込み型デバイスシステムを用いた。前記システムは、神経にも筋肉にも埋め込まれていないmaミリメートルスケールのセンサに電力を供給し該センサと通信する外部の超音波トランスデューサを有した。
図26Aを参照のこと。埋め込み型デバイスは、圧電結晶と、単一のカスタムトランジスタと、導出電極対とを有した。
図26B、26C、26Dを参照のこと。
【0320】
動作中、外部のトランスデューサは、a)100μs毎に6つの一連の540nsパルスの発射と、b)任意の反射パルスの待ち受けとを交互に行う。送信、受信、および再構築イベントのシーケンス全体を、
図27A~
図27Hに詳述する。このシーケンスは、動作中、100μs毎に繰り返される。要するに、外部のトランスデューサによって発射される超音波エネルギーのパルスは、その一部が反射されて当該外部のトランスデューサへ返される。さらに、超音波エネルギーのいくらかは、圧電結晶を振動させる。これにより、圧電結晶は超音波の機械的力を電力へと変換し、それがトランジスタへ供給される。2つの導出電極間の細胞外電圧の変化はすべて、トランジスタのゲートを変調させ、結晶の端子間を流れる電流の量を変化させる。今度はこれらの変化が、結晶の振動および反射超音波エネルギーの強度を変える。このように、反射超音波パルスの形状が、埋め込み電極で見られる電気生理学的電圧信号をエンコードし、この電気生理学的信号は外部で再構築されることができる。ニューラルダストの、他の最新のシステムと比較しての性能の諸元を、表6にまとめる。
【0321】
【0322】
埋め込み型デバイスを、50μmの厚さのポリイミド柔軟性印刷回路基板(PCB)上に製造し、超音波トランスデューサ圧電結晶(0.75mm×0.75mm×0.75mm)およびカスタムトランジスタ(0.5mm×0.45mm)を基板の上側に導電性銀ペーストで取り付けた。アルミニウムのワイヤボンドと導電性の金のトレースとを用いて、要素間の電気接続を行う。基板の底に露出した金の導出パッド(0.2mm×0.2mm)を、1.8mm間隔で分け、神経または筋肉と接触させて電気生理学的信号を記録する。記録した信号を、マイクロビアを通してトランジスタの入力に送る。さらに、いくつかのインプラントは、0.35mm幅、25mm長の柔軟で規格に準拠したリード線を有し、該リード線は、圧電結晶間の電圧の同時測定、および、超音波トランスデューサによって用いられる電極対間の細胞外電位の直接的有線測定用のテスト点を有した(グラウンドトルース測定としての、細胞外電位のこの直接的有線記録は以下で述べる。これは、超音波再構築データのコントロールとして用いられる)。インプラント全体を医療用グレードのUV硬化性エポキシに被包して、ワイヤボンドを保護し絶縁する。単一の埋め込み型デバイスのサイズは、およそ0.8mm×3mm×1mmである。インプラントのサイズは、本発明者らの市販のポリイミドバックプレーン技術(これは、誰にでも購入できる)の使用によってのみ制限される。自前のポリマーパターニングを有するより積極的な組み立て技術に頼るならば、圧電結晶寸法よりさほど大きくないインプラントが作られるであろう(~1mm3のインプラントを生成する)。
【0323】
埋め込み型デバイスの組み立てについてさらに詳述する。焼成した~12μmの銀を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)シート(841, APC Int., Mackeyvile, PA)を、セラミック刃(PN CX-010-270-080-H)を有するダイシングソー(DAD3240, Disco, Santa Clara, CA)を用いて、所望の寸法にダイシングした。ダイシングされたPZTクーポンを、カスタムトランジスタとともに、置換金メッキをした50μmの厚さのポリイミド柔軟性PCB(Altaflex, Santa Clara, CA)に対して、混合比1:1の2部銀エポキシの薄膜(H20E, Epotek, Billerica, MA)を用いて、取り付けた。基板を150℃(これは、ポリイミドの融解温度やPZTのキュリー温度よりずっと低い)で10分間、硬化した。カスタムトランジスタを、アルミニウム超音波ワイヤボンダー(7400B, West Bond, Scotts Valley, CA)を用いて、パターニングする前のターゲットにワイヤボンディングした。ウェッジとの接触によりPZT上に電荷が蓄積するのを防ぐため、PZTの上部接点をワイヤボンディングして回路を閉じる前に、PZTの上部接点および下部接点を薄膜金属シートに放電した。医療用グレードのUV硬化性エポキシ(OG116-31, Epotek)を用いてワイヤボンドを保護し絶縁した。それから、プラットフォームを、92mW/cm2@365nmのUVチャンバ(Flash, Asiga, Anaheim Hills, CA)で3分間、硬化した。
【0324】
カスタム集積回路は外部のトランシーバ基板を作動させ、低ノイズの呼びかけを可能にする。外部の超音波トランシーバ基板は、電力を供給(送信(TX)モード)し反射信号を受信(受信(RX)モード)することにより、埋め込み型デバイスとやり取りする。このシステムは、市販の外部超音波トランスデューサ(V323-SU, Olympus, Waltham, MA)を駆動する、低電力でプログラム可能で携帯型のトランシーバ基板である。上記トランシーバ基板は、~8.9mm地点で軽減した圧力焦点を示した(
図28A)。XY断面ビームパターンは、ビームの近距離伝播から遠距離伝播への移行をはっきりと実証した。もっとも狭いビームはレイリー距離にあった(
図28B)。トランスデューサは、1.85MHzで5Vのピーク間電圧信号で駆動した。軽減ピークの疎密圧力の測定値は14kPaであり、メカニカルインデックス(MI)が0.01となった。10kHzのパルス反復における6.37mW/cm
2および0.21mW/cm
2の軽減した空間パルスピーク平均(I
SPPA)および空間ピーク時間平均(I
SPTA)はそれぞれ、FDA規制制限の0.0034%および0.03%であった。上記トランシーバ基板は、32Vまでのピーク間電圧を出力することができ、出力圧力は入力電圧とともに線的に増加した(
図28C)。
【0325】
非圧電結晶インターフェースからの反射は、移動アーチファクトおよび温度ドリフト用の内蔵基準を提供する。上記システム全体を、手動による6度の自由度(DOF)を有する線的平行移動・回転ステージ(Thorlabs Inc., Newton, NJ)を有するカスタムメイドの水タンクに浸け、特性を示した。伝播媒体として蒸留水を用いた。蒸留水は、1.5MRaylsで組織と同様の音響インピーダンスを示す。上記システムの最初の校正のため、電流源(2400 LV, Keithley, Cleveland, OH)を用いて、電流密度の変化する電流をタンクに浸けた0.127mm厚の白金ワイヤ(773000, A-M システム, Sequim, WA)に通して細胞外信号を模倣させた。埋め込み型デバイスを電極間の電流経路に浸した。電流がワイヤ間に印加されるにつれて、インプラントの電極間で電位差が上昇した。タンクテストの間、この電位差を用いて、細胞外電気生理学的信号を模倣した。
【0326】
水中のアセンブリの電気的・超音波的特徴付けについてさらに詳述する。カスタムトランジスタを、精度の高い電流メータ(2400-LV, Keithley)とDC電源(3631A, Agilent, Santa Clara, CA)とを用いて電気的にテストした。組み立ての前に圧電結晶の特徴付けをするため、インピーダンスアナライザ(4285A, Agilent)で、オープン/ショート/ロード校正スキームを有する2端子測定を用いて、インピーダンスプロットを得た。PCBの底部上にある、1.8mm間隔で離れた露出した金の導出パッド(0.2mm×0.2mm)のインピーダンスを、リン酸バッファ溶液(PBS1X)中で、電気化学的インピーダンス分光器(nanoZ, White Matter LLC, Mercer Island, WA)を用いて測定した。デバイスがアクティブ電極となり、銀ワイヤが基準電極となった。トランスデューサの超音波特徴付けを、カスタムメイドの水タンク内で行った。20dBのプリアンプ(AH-2020, Onda Corp.)を有するカプセルハイドロフォン(HGL-0400, Onda Corp., Sunnyvale, CA)を、コンピュータ制御の2D平行移動ステージ(XSlide, VelMex Inc., Bloomfield, NY)に取り付け、それを用いて出力圧力を校正し、2.25MHzの単一素子トランスデューサ(V323-SU, Olympus)のビームパターンを特徴付けた。超音波伝達・通信感度の検証を、より小さな水タンク内で、手動の平行移動・回転ステージ(Thorlabs Inc.)を用いて行った。埋め込み型デバイスの輪郭を、押出アクリルピース上でUVレーザによりパターニングし、埋め込み型デバイスをアクリルステージにナイロンネジでクランプした。モートに対するトランスデューサの位置と角度を、圧電結晶にかかる電圧が最大となるまで手動で調節した。ケーブル容量および寄生容量を、高インピーダンスプローブ(N2863B, Agilent)中の直列容量を調整して注意深く構成した。電流源(2400-LV, Keithley)を用いて、電流密度の変化する電流を、水タンクに浸した2本の0.127mm厚白金ワイヤ(773000, A-M systems)に流して、水タンク中に電界を発生させた。トランシーバ基板は、QFN‐64パッケージ内のカスタム集積回路(IC)から成っていた。該カスタム集積回路(IC)は、33%のオンチップ1.8V‐32Vチャージポンプ効率と、20nsのシステム待ち時間を達成し、各送信サイクル毎に16.5μJを消費した(Tang et al., 2015)。受信モード中、高電圧スイッチを閉じて信号を28dB増幅した。どちらの動作もオンチップで行った。チップからの出力信号を、オフチップの、10ビット、100MHzアナログ・デジタル変換器(ADC)(LTC2261-12, Linear Technology, Milpitas, CA)でデジタル化した。ADCの出力をフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)およびUSB3.0呼びかけモジュール(XEM6310-LX45, Opal Kelly, Portland, OR)にフィードバックし、ラップトップコンピュータに伝達した。ICを連続的にプログラムするためFPGA‐USBモジュールも用いた。
【0327】
埋め込み型デバイスに呼びかけるため、外部トランスデューサにより、100μs毎に6つの540nsパルスを発信した。
図27を参照のこと。これらの発信パルスはニューラルダストモートに反射し、外部トランスデューサに向けて後方散乱パルスを生成した。反射された後方散乱パルスは、同じトランシーバ基板により記録された。受信された後方散乱の波形は、4つの所定の領域を示す。これらは、4つの別個の界面から反射されたパルスである(
図28D)。1)水‐ポリマー被包境界。2)圧電結晶の上面。3)圧電‐PCB境界。4)PCBの背面。予想通り、圧電結晶から反射された信号(第2領域)の後方散乱振幅は、導出電極での電位変化の関数として変化した。他の界面からの反射パルスは、導出電極での電位変化に応じなかった。重要なことは、上記の他の非応答領域からのパルスを信号レベル基準として用いて、上記システムを動きまたは熱によって作られた人為的な結果に対してロバストにすることである(すべての界面から反射されたパルスはニューラルダストモートの物理的または熱的妨害とともに変化するが、第2領域からのパルスだけは、電気生理学的信号の関数として変化するからである)。水タンク内で、上記システムは、電極電位の記録の変化に対する線的な応答と、~0.18mVrmsのノイズフロアを示した(
図28E)。上記システムの全体的なダイナミック・レンジは、トランジスタの入力範囲によって制限され、>500mVより大きい(すなわち、トランジスタが完全にオン(入力がその閾値電圧を超える)または完全にオフされると、電流には増加変化のみが生じる)。ノイズフロアは、ビームの測定された電力低下とともに上昇した。0.7mmの照準ミスにより、ビームが2倍低下した(N=5デバイス。
図28F)。この横の照準ミスにより生じたノイズフロアの増加が、ビームステアリングシステムを用いずに(すなわち、超音波ビームの焦点を埋め込まれたダストモートに合わせることができ、したがって軸上に合わせることができる外部トランスデューサを用いることなしに)神経記録を行うことに対する最大の難題となる。軸上で、埋め込み型デバイスは、入力音響パワーを、圧電素子の負荷抵抗にかかる電力へ、~25%の効率で変換した。
図28Gは、本実施例で用いられたトランスデューサの1つのレイリー距離における電圧および電力の軸外低下をプロットする。同様に、
図28Hは、角度の照準ミスの関数としての効果的なノイズフロアの変化をプロットする。
【0328】
齧歯類のEMGおよびENGを、拘束することなしにインビボで記録することができる。麻酔下にある成熟したLong-Evansラットの腓腹筋からのEMG反応を、埋め込み型デバイスシステムを用いて記録した。埋め込み型デバイス(「ダスト」)を露出した筋肉の表面に置き、それから皮膚と周囲の結合組織とを交換し、傷口を手術用縫合糸で閉じた(
図29A)。超音波トランスデューサはインプラントから8.9mm(外部トランスデューサの1レイリー距離)離し、市販の超音波ゲル(Aquasonic 100, Parker Labs, Fairfield, NJ)を用いて結合を向上させた。手動のマニピュレータを用いて、フレキシブルなリード線から測定される圧電結晶上で得られる電圧を最大にすることにより、前記システムを揃えた。筋肉線維反応のバルク刺激のため、Ag/AgClワイヤフック電極を、坐骨神経の幹の遠位側約2cmのところに設置した。200μs続く刺激パルスを6秒毎に印加し、刺激窓の前後20msのあいだ、データを記録した(
図29B)。波形中のエッジによりいくつかの調波を有する再構築データの出力スペクトル密度(PSD)を
図29Cに示す。このプロセスは、麻酔プロトコルの限度内で無限に続けることができる。30分におよぶ連続的な記録のあとにデータを比較したが、記録品質に感知できるほどの劣化は見られなかった(
図29D)。
【0329】
EMG漸増曲線が、グラウンドトルースと無線ダスト後方散乱との双方で刺激振幅を変更することにより得られた(
図30Aおよび
図30B)。無線後方散乱データからのEMG信号の再構築は10kHzでサンプルしたが、一方、有線のグラウンドトルース測定は100kHz、ノイズフロア0.02mVでサンプルした。応答飽和刺激振幅(100%)における2つの信号は、R=0.795で一致した(
図30C)。無線データおよび有線データ間の差異は、±0.4mV以内であった(
図30D)。埋め込み型デバイスのEMG応答の顕著な特徴は、グラウンドトルースより約1ms狭く、それにより差異プロット内に最も大きな誤差が生じた(
図30Cおよび
図30D)。骨格筋線維からの応答は、刺激後5msで生じ、5ms続いた。EMGのピーク間電圧は、刺激強度の関数としてのS字状応答を示す(
図30E)。エラーバーは、2匹のラットおよび10個のサンプル(それぞれ刺激振幅毎)から得られる測定の不確かさを示す。埋め込み型デバイスで検出される最小の信号は約0.25mVであり、これは水タンク内で行われたノイズフロア測定とよく一致する。
【0330】
同様の設備を準備して、麻酔をかけたラットの坐骨神経の主枝からの神経電気記録図(ENG)応答を測定した。ハムストリング筋を離して坐骨神経を露出させ、ニューラスダストモートを置き、神経に縫い付け、導出電極が神経鞘と接触するようにした。脚に設けた双極ステンレススチール電極に送られる刺激電流振幅を変化させると、グラウンドトルースと無線後方散乱との双方で同様のグレードの応答が測定された(
図31Aおよび
図31B)。応答飽和刺激振幅(100%)における2つの信号は、R=0.886で一致した(
図31C)。平均誤差は±0.2mV以内であった(
図31D)。ピーク間ENG電圧はS字状応答を示し、該S字状応答のエラーバーは、2匹のラットおよび10個のサンプル(それぞれ刺激振幅毎)から得られる不確かさを示す。埋め込み型デバイスで検出される最小の信号はここでも0.25mVであった(
図31E)。
【0331】
実験設備および手術手順についてさらに詳述する。動物に関わる手順はすべて、University of California Berkeley Animal Care and Use Committee regulationsに従って行った。すべての実験に成熟雄Long-Evansラットを用いた。手術を始める前に、ケタミン(50mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)IPの混合物で動物に麻酔した。手術部位を覆う毛皮を剃り、清潔にした。EMG記録のため、腓腹筋の約10mm×5mmのサイズの一部を、覆う皮膚および筋膜を取り除いて露出した。それから、埋め込み型デバイスを露出した筋肉の上に置き、皮膚および筋膜をもとの場所に戻し、5/0手術用縫合糸で傷口を閉じた。ENG記録のため、坐骨のノッチから膝に切り込みを入れ、ハムストリング筋を離すことにより坐骨神経を露出させた。それから、埋め込み型デバイスを坐骨神経束の主枝の神経鞘と接触するように置き、10/0マイクロ手術用縫合糸を用いて神経に縫い付けた。実験の終了時に動物を安楽死させた。絶縁パルススティミュレータ(2100, A-M Systems)を用いて、絶え間ない電流刺激を送った。2msのパルス幅を有する単一二相性パルスを用いて、さまざまな電流振幅で刺激を送った。実験毎に、10の刺激(すなわち、サンプル)からの電気生理学的応答を記録した。FPGA‐USBモジュールが、スティミュレータ用のトリガーを6秒毎に生成した。EMG実験のため、坐骨神経の幹の周囲に設置した二極Ag‐AgClフック電極を刺激に用いた。ENG活動を引き起こすため、28Gのステンレススチール針電極を、電極間隔約5mmで脚に設置した。有線信号を、10Hz~1kHzに設定した内蔵バンドパスフィルタ(DAM50, WPI, Sarasota, FL)を有する電池式作動増幅器で増幅(100x)した。増幅器用の接地基準は、記録設備に対して対側の脚に設置した28Gのステンレススチール針電極であった。増幅器の出力を多チャンネルデジタイザに接続し、100kHzでサンプルし、コンピュータ上に記録した。埋め込み型デバイスをトランスデューサから1レイリー距離(8.9mm)に設置した。これは、水中の音響速度が~1500m/sだと仮定した場合、5.9μs送信時間に相当する。ピーク電圧5Vの1.85MHzでの正弦波を6サイクル、100μs毎に発した(パルス反復周波数(PRF)10kHz)。全送信パルス幅は約3.3μsであり、これは、5.9μsで最初に得た電圧測定値と重ならないほど十分に小さかった。トランスデューサに戻る最初の反射(例えば、後方散乱)が約11.8μs(送信時間の2倍)時点で生じ、3.3μsのあいだ続くとすると、最大のPRF(例えば、本文脈では、サンプル比)は~66kHzであった。バルク末梢神経応答が1kHz未満で生じると、変化を十分に捕捉するよう10kHzのPRFが選択された。信号忠実度を失うことなしに1.85MHzで後方散乱波形をサンプルするため、トランシーバ基板上のオフチップADCを50MHzで強くオーバーサンプリングした。この結果、10msの神経記録で~8Mビットのデータが得られ、それが、128Mバイト、16ビット幅の、シンクロDDR2 DRAM(MT47H64M16HR-3, Micron Technology, Boise, ID)に保存された。記録後、未加工の波形を、USBインターフェースを介してラップトップコンピュータへ送った。未加工の波形は、比較のため、8ビットデジタイザ(USB-5133, National Instruments, Santa Clara, CA)を用いて同時に記録した。各実験で得た、50MHzでサンプルした未加工の後方散乱波形をスライスして時間的に整合させ、サンプルの平均を取った。平均した信号を、対称的4次バターワースフィルタを用いて、10Hzから1kHzまでバンドパスフィルタリングした。後方散乱波形の明確な特徴(
図28D)を、所定の領域を特定するテンプレートとして用いた。それから、信号を整流化し、領域の積分を計算して、入力電圧信号を評価した。入力電圧信号は線形応答を示した(
図28E)。信号の増倍率を、グラウンドトルース測定から抽出した。
【0332】
インビボでの超音波送信。2.25MHzの単一素子トランスデューサ(V323-SU, Olympus NDT, Waltham, MA)を用いて、1.85MHzで6つのパルスを生成した。トランスデューサは、半値幅(HPBW)の測定値が2.5MHzを超えていた。組織を通る際の送信ロスを測定するため、雄Long‐Evansラットの腓腹筋のそばで見つかったさまざまな厚みの皮膚を、トランスデューサと埋め込み型デバイスとのあいだに置いた。組織がある場合およびない場合に圧電結晶で電圧を得た。8.9mmの組織は、10dBの組織減衰をもたらした。
【0333】
異なる電極間隔でのENG記録。さまざまな間隔の導出電極を、50μmの厚さのポリイミド柔軟性プリント回路基板(PCB)上に作成した。合計5つの電極があり、それぞれ0.2mm×0.2mmのサイズであり、そのうちの1つを基準電極として用いた。他の電極は、基準電極から、それぞれ、0.3mm、0.8mm、1.3mm、1.8mm離した。間隔基板を、坐骨神経束の主枝(遠位)の神経鞘に接するように置き、神経に縫い付けた。坐骨神経の幹(近位)の周囲に置いた二極Ag‐AgClフック電極を、刺激のために用いた。1秒毎に0.5ms続く単一二相性パルスの絶え間ない電流刺激を、絶縁パルスシミュレータ(2100, A-M Systems, Sequim, WA)を用いて行った。電極間にさまざまな間隔を設けて記録した信号を、10Hz~1kHzで設定した内蔵バンドパスフィルタ(DAM50, WPI, Sarasota, FL)を有する電池式作動増幅器で増幅(100x)した(
図32A)。予期したように、電極で記録されたピーク間電圧は、間隔に対して少なくとも二次的に増加した。振幅は1.3mmの間隔のあと飽和し、記録センサ上で電極間隔が1.8mmあれば最大飽和ENG応答を捕捉するには十分であることを裏付けた(
図32B)。
【0334】
音響強度の計算。超音波システムの安全性を評価するため、米国超音波医療学会および米国電機工業協会(National Electronics Manufacturers Administration、NEMA)はいくつかのパラメータを定めている。診断用超音波システムの音響出力は、空間ピークパルス平均強度(ISPPA)、空間ピーク時間平均強度(ISPTA)、および機械的インデックス(MI)の低減値によって制限される。水中での測定値を減衰定数0.3dB/cm/MHzと乗算してこれらの低減値を計算し、組織に与える影響をシミュレートする。20dBプレアンプ(AH-2020, Onda Corp., Sunnyvale, CA)を有するカプセルハイドロフォン(HGL-0400, Onda Corp)を、コンピュータ制御の2D平行移動ステージ(XSlide, VelMex Inc., Newton, NJ)に取り付け、カスタムメイドの水タンクに浸して、2.25MHzの単一素子トランスデューサ(V323-SU, Olympus NDT)の出力圧力を校正した。ピーク入力電圧5Vを有する1.85MHzでの正弦波6サイクルを、1ms毎(パルス反復周波数(PRF)10kHz)に、トランスデューサに発した。ハイドロフォンはトランスデューサから1レイリー距離(8.9mm)離しておいた。パルス強度積分(PII)を、
【0335】
【0336】
と定義する。式中、pは瞬間のピーク圧力であり、z0は媒体の特徴的音響インピーダンスである。水の場合、z0は1.5MRaylだと推定される。ISPPAは
【0337】
【0338】
と定義される。式中、PDは(t)(0.9×PII-0.1×PII)×1.25と定義されるパルス持続時間であり、NEWAによって設けられた水準で概略が示される。ISPPAはISPPA=PII×PRFと定義され、式中、PRFはパルス反復周波数である。MIは
【0339】
【0340】
と定義され、式中、prはピーク粗密化圧力であり、fは音響周波数である。
【0341】
あるいは、麻酔をかけて固定したラットモデルにおけるインビボの急性記録を用いて、坐骨神経の主枝からの複合活動電位および腓腹筋からの誘引EMGを回収した。システムの性能は、マイクロ電極およびケーブル電子機器を用いる従来の電気生理学的記録と等しかった。実証された技術の主要な力の1つは、従来の無線周波数技術とは異なり、超音波ベースのシステムは<100μmのサイズまでスケールダウンでき、埋め込み型電子機器において新たな技術の道を開く点である。高性能の無線周波数受信器がどれほど小型化できるかは、無線周波数エネルギーの長波長(ミリメートルからセンチメートル)および無線周波数エネルギーの組織への高程度の吸収(これにより組織が熱せられ、インプラントへ送り得る全エネルギーが制約される)により、物理的に制約される。超音波システムはどちらの面でもはるかに働き、極小の受信デバイスの設計を可能にする。さらに、低電力電子機器を極めて小型化することにより、有用な記録電子機器をそのように小さなパッケージに収めることができる。適切なインピーダンスマッチングを有する平らで薄型の圧電トランスデューサならば、起きて動き回る齧歯類の神経生理学に十分なほど小さいウェアラブルトランシーバ基板が可能になる。さらに、ウェアラブルな電池式他素子アレイならば、超音波ビームのビームステアリングが可能になる。これにはいくつかの利点がある。1)埋め込み型デバイスと外部トランスデューサとの間の相対的移動にかかわらず、埋め込み型デバイスを軸上に保つことができる。2)集束ビームを電子的に走査することで、多数の埋め込み型デバイスに呼びかけることができる。3)手術後に埋め込み型デバイスの位置を調節するのがより容易になる。トランシーバ駆動電子機器をさらに脱ノイズ化することで、ノイズフロアを減少させる助けにもなる。さらに、スケーリングの計算による予測によれば、<500μmのスケールの埋め込み型デバイスが実現可能である。この実現のためには、多数の材料および微細加工上の困難があり、そうしたものとしては、微細加工バックプレーンの使用や、構成要素のはんだマイクロバンプ組み立て(本明細書で用いた従来のワイヤボンディングアプローチの代わり)や、パリレンのような薄膜被包材(医療用グレードエポキシの代わり)の使用が挙げられる。PZT圧電結晶から生体適合性BaTiO3単結晶トランスデューサへの移行も考えられる。総合すれば、これらの開発により、神経組織および筋肉組織の記録を長期的に研究する道が開けるであろう。
【0342】
(実施例7)埋め込み型デバイスと呼びかけ機との間のデジタル通信
埋め込み型デバイスと、トランスデューサアレイを有する呼びかけ機とを有するシステムを、インビボ環境を模倣した作業台上の設備を用いて検証する。超音波結合ゲルは、その音響インピーダンスが目標の生物組織の音響インピーダンスに似ている(約1.5MRayl)ことから、組織模型として機能する。埋め込み型デバイスはバルク圧電トランスデューサを有し、該バルク圧電トランスデューサは、該トランスデューサと接触する2つの電極と直接に接続する。上記埋め込み型デバイスを組織模型内に置き、呼びかけ機トランスデューサアレイを上記ゲルに結合する。どちらの素子も、正確な配置のため、正確さを調整したステージに取り付ける。トランスデューサアレイはダストモートから14mm離して配置する。これは、超音波結合ゲル内での、音響速度1,540m/sを想定した18.6μsの往復飛行時間に相当する。トランスデューサアレイは6つの1.8MHz、0~32Vの方形パルスで励起し、後方散乱信号を17Mspsで2000サンプル、12ビットの分解能でデジタル化する。時間領域後方散乱検査のため、全後方散乱波形をデバイス上でリアルタイムでフィルタリングして有線シリアル接続を介してクライアントに送る。通常の動作では、全調節抽出アルゴリズムをデバイス上の後方散乱データに対してリアルタイムで適用して、後方散乱信号を4バイトに圧縮する。処理済みデータをBluetooth(登録商標)のSSPプロトコルを通して遠隔のクライアントに送信し、GUIを介してリアルタイムでストリームする。
【0343】
図33Aは、上述の実験設備によって回収したフィルタリング済み後方散乱信号を示す。ダストモートの圧電結晶電極が短絡および開放配置(the shorted and opened configurations)にあるあいだ、信号を回収する。スイッチ活動によるインピーダンスの変化の結果、開放スイッチ配置における方が11.5mV大きい後方散乱ピーク振幅と、6.45%の調節深度が得られる(
図33B)。モートからの反響が長く続くことは、バッキング層が弱まっているにもかかわらずトランスデューサが響いていることを示す。不十分に弱まったトランスデューサシステム応答が時間領域において後方散乱信号を散開するあいだ、埋め込まれたデバイスからの後方散乱がROIで捕獲される限り、変調は成功している。
【0344】
パルス振幅変調非ゼロ復帰レベルコーディングを用いて、後方散乱センサモートを変調し、所定の11字ASCIIメッセージ(「hello world」)を送る。デバイスの音響インピーダンスの変調は、圧電トランスデューサを、高レベルが開放配置に対応し低レベルが閉鎖配置に対応するデジタル制御スイッチに対して短絡することによって行われる。
図34は、トランスデューサに対する変調値、および、呼びかけ機の対応する抽出変調値を示す。抽出信号値の絶対値およびノイズマージンは、さまざまな要素(例えば、モートの距離、方向、サイズ)に依存する。しかし、抽出した波形は、ダストモートに対する変調信号を表わし続け、線形倍率で変化する。
【0345】
「hello world」によって変調された埋め込み型デバイスの抽出後方散乱値を無線送信することで、該デバイスの埋め込み型デバイスとのリアルタイム通信が実証される。二状態後方散乱システムの呼びかけにより、埋め込み型センサおよびリモートクライアント双方とのシステムの無線通信リンクがしっかりと実証される。この無線通信リンクは、脳を外部デバイスと接続する閉ループ神経変調システムに向けた開発を誘うものである。
【図面の簡単な説明】
【0346】
【
図1】
図1は、Seo et al., Neural dust: an ultrasonic, low power solution for chronic brain-machine interfaces, arXiv: 1307.2196v1 (July 8, 2013)に開示される、外部のトランシーバ、硬膜下の呼びかけ機、およびニューラルダストモートを含む、ニューラルダストシステムの概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本明細書中で開示されるシステムにおける、例示的な呼びかけ機のブロック図である。図解される呼びかけ機は、複数の超音波トランスデューサを含む超音波トランスデューサアレイを含む。前記超音波トランスデューサアレイ中の各超音波トランスデューサは、チャネルにより作動する。前記チャネルは、前記トランスデューサが、超音波を受信または送信するよう、交互に構成するスイッチを含む。
【
図2B】
図2Bは、本明細書中に開示されるシステムにおける、別の例示的な呼びかけ機の概略図である。図解される呼びかけ機は、2つの超音波トランスデューサアレイを含み、それぞれの超音波トランスデューサアレイが、複数の超音波トランスデューサを含む。また、前記呼びかけ機は、集積回路を含む。前記集積回路はデジタル回路を含んでもよく、前記デジタル回路はプロセッサを含んでもよい。前記集積回路は、ユーザインターフェース(ディスプレイ、キーボード、ボタン等を含み得る)、記憶媒体(すなわち、非一時的記憶装置)、入出力装置(無線(例えば、Bluetooth(登録商標))であってよい)、および電源装置(例えば、バッテリ)に接続される。
【
図3A】
図3Aは、対象により着用可能である、例示的な呼びかけ機のブロック図を表す。前記呼びかけ機は、無線通信システム(図中では、Bluetooth(登録商標)無線)を含む。前記無線通信システムは、コンピュータシステムとの通信のために用いられてよい。
【
図3B】
図3Bは、着用可能な呼びかけ機の分解図を表す。前記呼びかけ機は、バッテリ、無線通信システム、およびトランスデューサアレイを含む。
【
図3C】
図3Cは、対象へ取り付けるためのハーネスを付けて完全に組み立てた、
図3Bで示した着用可能な呼びかけ機を表す。
【
図3D】
図3Dは、対象、すなわちげっ歯類(ただし、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、マウス等、任意の動物であってよい)に取り付けられた、着用可能な呼びかけ機を示す。前記呼びかけ機は、トランスデューサアレイを含む。前記トランスデューサアレイは、接着材で対象の体に固定される。
【
図4】
図4は、呼びかけ機中のトランスデューサと、小型化超音波トランスデューサを有する埋め込み型デバイスとの間の通信を表す概略図である。前記呼びかけ機は、埋め込み型デバイスへ超音波を送信し、小型化超音波トランスデューサは、センサによって変調された超音波後方散乱を発する。そして、呼びかけ機が後方散乱を受信する。
【
図5】
図5Aは、呼びかけ機から発せられる超音波パルスの一連のサイクルを表す。呼びかけ機のトランシーバ基板が、前記呼びかけ機(例えば、FPGA)からのトリガーを受信すると、一連の送信パルスを発生させる。送信サイクルの最後に、ASIC上のスイッチは、送信モジュールとの接続を絶ち、受信モジュールと接続する。各サイクルは、100マイクロ秒である。
図5Bは、
図5Aで示した送信パルスシーケンス(つまり、1サイクル)の拡大図を表す。前記サイクルにおいて、1.85MHzの超音波パルスが6つ存在し、前記超音波パルスは、540ナノ秒毎に繰り返し発生する。
図5Cは、埋め込み型デバイスから発せられる超音波後方散乱を示す。超音波後方散乱は、約2tレイリーで呼びかけ機のトランスデューサに届く。
図5Dは、超音波後方散乱の拡大図を示し、該超音波後方散乱は分析可能である。超音波後方散乱の分析は、超音波後方散乱波のフィルタリング工程、整流化工程、および積分工程を含む。
図5Eは、フィルタリングされた超音波後方散乱波の拡大図を示す。前記後方散乱波は、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答する応答領域と、小型化超音波トランスデューサへのインピーダンスの変化に応答しない非応答領域とを含む。
【
図6】
図6は、小型化トランスデューサ、電極対によって検知される電気生理学的信号に基づき、小型化超音波トランスデューサ中を流れる電流を変調するよう構成される変調回路を有する、埋め込み型デバイスの一実施形態を図示する。
【
図7A】
図7Aは、ASICに接続された小型化超音波トランスデューサ(「圧電素子」と称される)の一実施形態を図示する。ASICは、電源回路および変調回路(または、「後方散乱回路」)を有する。電源回路は、エネルギー貯蔵キャパシタ(「cap」)を有する。電極は、組織中に埋め込まれ得る。
【
図7B】
図7Bは、小型化超音波トランスデューサ、および集積回路、および電極対を有する、埋め込み型デバイスを図示する。集積回路は、変調回路、AC複合増幅器列、および電源回路を有する。前記電源回路は、全波整流器、および倍電圧器、基準(reference)、およびレギュレータを有する。
【
図7C】
図7Cは、
図7Bで示される集積回路において使用され得る、例示的な整流器を図示する。
【
図7D】
図7Dは、
図7Bで示される集積回路において使用され得る、例示的な増幅器列を図示する。
【
図8】
図8Aは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
図8Bは、プリント回路基板(PCB)上に小型化超音波トランスデューサおよびASICを含む、別の例示的な埋め込み型デバイスの概略図を示す。
【
図9】
図9は、本明細書中に記載の埋め込み型デバイスの製造方法を図解する。
【
図10】
図10は、非晶質炭化珪素を含む埋め込み型デバイスの被包方法のフローチャートである。
【
図11】
図11Aは、埋め込み型デバイスの構成要素を接続するために使用する異なる形状のビアを示す。
図11Bは、変形可能な相互接続用の、蛇行したトレース配置を示す。
【
図12】
図12は、銀エポキシを硬化させるための時間と温度の関係を示す。銀エポキシは、埋め込み型デバイスの製造においてワイヤボンドを取り付けるための材料の一例である。
【
図13】
図13は、埋め込み型デバイスを用いて記録された、神経電気記録図(ENG)を示す。点線は、グラウンドトルース電極によって記録された信号を示す。得られたデータから、複合活動電位を含む一般的な特徴が再構築された。前記一般的な特徴は、グラウンドトルースの特徴と一致する。
【
図14】
図14は、埋め込み型デバイスを炭化珪素中に被包するための概略図を示す。
【
図15】
図15は、プロトタイプのアセンブリの概略とPCBを示す。
【
図16A】
図16A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図16Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図16Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図16Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図16Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図16Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【
図16B】
図16A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図16Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図16Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図16Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図16Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図16Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【
図16C】
図16A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図16Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図16Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図16Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図16Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図16Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【
図16D】
図16A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図16Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図16Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図16Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図16Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図16Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【
図16E】
図16A~Eは、所望の大きさの小型化超音波トランスデューサ(PZT)をPCB上に組み立てることを確実にするための処理工程を示す。
図16Aにおいて、エポキシはんだペーストを基板上に配置する。
図16Bにおいて、圧電材料をPCBに取り付ける。
図16Cにおいて、圧電材料をダイシングし、所望のサイズのバルク圧電超音波トランスデューサを形成する。
図16Dにおいて、超音波トランスデューサをPCBにワイヤボンディングする。
図16Eにおいて、PCBおよび超音波トランスデューサをPDMS中に被包する。
【
図17】
図17は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いた電気インピーダンス測定の概略図を示す。
【
図18A】
図18Aは、異なる大きさのバルク圧電超音波トランスデューサにおいて測定された電力伝達効率が、シミュレートされた挙動と一致することを示す。
【
図18B】
図18Bは、測定されたPZT結晶のインピーダンス分光が、シミュレーションと一致することを示す。
【
図18C】
図18Cは、小型化超音波トランスデューサの得られた電力に対する周波数応答が、約6.1MHzであることを示す。
【
図19】
図19は、呼びかけ機の一部として使用することができる、例示的な超音波トランスデューサの概略図である。
【
図20】
図20は、電力送達の確認のための、校正済み超音波トランスデューサを用いた音響特徴付け設備の概略図である。超音波受信機は超音波送信機とは別個のものである。
【
図21A】
図21Aは、ハイドロフォンをトランスデューサの表面から遠ざけたときの5MHzトランスデューサの出力を表す。
【
図21B】
図21Bは、軽減出力のピークが水におけるピークに比べて、左にシフトしていることを示す。
【
図22A】
図22Aは、トランスデューサの出力のXZ断面図を示しており、レイリー距離と、近距離から遠距離への伝播の鮮明な変遷とを図示する。
【
図22B】
図22Bは、2.2mmのビームの6dBの帯域を示すXYビーム断面図を示す。
【
図23A】
図23Aは、XY平面における、トランスデューサアレイからの集束された2次元ビームパターンを示す。測定されるビームは、X方向およびY方向の両方において、シミュレートされたビームに近接している。
【
図23B】
図23Bは、超音波トランスデューサアレイ中の各トランスデューサ素子に適用された遅延時間を示す。
【
図23C】
図23Cは、シミュレートされた2次元XZ断面のビームパターンを示す。
【
図24A】
図24Aは、トランスデューサアレイから送信される超音波ビームのビームステアリングを示す。
【
図24B】各ビームパターンの下は、
図24Bに示すように、トランスデューサアレイ中の各トランスデューサが測定されたビームパターンを得るのに要する遅延である。
【
図24C】
図24Cは、
図24Aで示したそれぞれのビームパターンの、X軸における1次元ビームパターンを示す。測定されたビームパターンは、シミュレートされたビームパターンに非常に近似している。
【
図25】
図25は、組織中、5mmの送信距離における、シミュレートされた小型化超音波トランスデューサの連結効率および受信電力を示す。
【
図26A】
図26A~Dは、埋め込み型デバイスを有する、例示的なシステムの概要を示す。
図26Aは、体内に局所的に配置された埋め込み型デバイスに電力を供給し、前記埋め込み型デバイスと通信する外部のトランスデューサを示す。カスタムされたトランシーバ基板によって駆動され、トランスデューサは、デバイスに電力を供給する一連のパルスの送信と、電気生理学的信号によって変調される反射されたパルスの受信とを交互に行う。
図26Bは、麻酔されたラットの坐骨神経に固定された埋め込み型デバイスを示す。
図26Bの挿入部分は、任意のテストリード線を有する埋め込み型デバイスを示す。
図26Cは、例示的な埋め込み型デバイスの構成要素を示す。埋め込み型デバイスは、柔軟性のあるPCB上に組み立てられ、圧電性結晶、1つのカスタムされたトランジスタ、および記録電極対を有する。
図26Dは、柔軟性のあるPCB上の、圧電性結晶上で得られた電子生理学的信号(グラウンドトルース)および電圧を測定するための校正リード線を有する、埋め込み型デバイスの拡大図を示す。インビボでの実験中は校正リード線を外した。
【
図26B】
図26A~Dは、埋め込み型デバイスを有する、例示的なシステムの概要を示す。
図26Aは、体内に局所的に配置された埋め込み型デバイスに電力を供給し、前記埋め込み型デバイスと通信する外部のトランスデューサを示す。カスタムされたトランシーバ基板によって駆動され、トランスデューサは、デバイスに電力を供給する一連のパルスの送信と、電気生理学的信号によって変調される反射されたパルスの受信とを交互に行う。
図26Bは、麻酔されたラットの坐骨神経に固定された埋め込み型デバイスを示す。
図26Bの挿入部分は、任意のテストリード線を有する埋め込み型デバイスを示す。
図26Cは、例示的な埋め込み型デバイスの構成要素を示す。埋め込み型デバイスは、柔軟性のあるPCB上に組み立てられ、圧電性結晶、1つのカスタムされたトランジスタ、および記録電極対を有する。
図26Dは、柔軟性のあるPCB上の、圧電性結晶上で得られた電子生理学的信号(グラウンドトルース)および電圧を測定するための校正リード線を有する、埋め込み型デバイスの拡大図を示す。インビボでの実験中は校正リード線を外した。
【
図26C】
図26A~Dは、埋め込み型デバイスを有する、例示的なシステムの概要を示す。
図26Aは、体内に局所的に配置された埋め込み型デバイスに電力を供給し、前記埋め込み型デバイスと通信する外部のトランスデューサを示す。カスタムされたトランシーバ基板によって駆動され、トランスデューサは、デバイスに電力を供給する一連のパルスの送信と、電気生理学的信号によって変調される反射されたパルスの受信とを交互に行う。
図26Bは、麻酔されたラットの坐骨神経に固定された埋め込み型デバイスを示す。
図26Bの挿入部分は、任意のテストリード線を有する埋め込み型デバイスを示す。
図26Cは、例示的な埋め込み型デバイスの構成要素を示す。埋め込み型デバイスは、柔軟性のあるPCB上に組み立てられ、圧電性結晶、1つのカスタムされたトランジスタ、および記録電極対を有する。
図26Dは、柔軟性のあるPCB上の、圧電性結晶上で得られた電子生理学的信号(グラウンドトルース)および電圧を測定するための校正リード線を有する、埋め込み型デバイスの拡大図を示す。インビボでの実験中は校正リード線を外した。
【
図26D】
図26A~Dは、埋め込み型デバイスを有する、例示的なシステムの概要を示す。
図26Aは、体内に局所的に配置された埋め込み型デバイスに電力を供給し、前記埋め込み型デバイスと通信する外部のトランスデューサを示す。カスタムされたトランシーバ基板によって駆動され、トランスデューサは、デバイスに電力を供給する一連のパルスの送信と、電気生理学的信号によって変調される反射されたパルスの受信とを交互に行う。
図26Bは、麻酔されたラットの坐骨神経に固定された埋め込み型デバイスを示す。
図26Bの挿入部分は、任意のテストリード線を有する埋め込み型デバイスを示す。
図26Cは、例示的な埋め込み型デバイスの構成要素を示す。埋め込み型デバイスは、柔軟性のあるPCB上に組み立てられ、圧電性結晶、1つのカスタムされたトランジスタ、および記録電極対を有する。
図26Dは、柔軟性のあるPCB上の、圧電性結晶上で得られた電子生理学的信号(グラウンドトルース)および電圧を測定するための校正リード線を有する、埋め込み型デバイスの拡大図を示す。インビボでの実験中は校正リード線を外した。
【
図27】
図27は、例示的な呼びかけ機および埋め込み型デバイス間の通信を図示する。
図27の上部は、情報の流れの概略図である。
図27の下部は、図の上部に示される図解で表される各ステップにおける、信号の時間経過を表す。
図27Aでは、呼びかけ機からのFPGAが、記録開始のトリガー信号を発生する。
図27Bは、埋め込み型デバイス上の記録電極に送られた細胞外電気生理学的電位を示す。
図27Cは、FPGAからのトリガーを受信する際、トランシーバ基板が一連の送信パルスを発生させることを示す。送信サイクルの最後には、呼びかけ機のASIC上のスイッチは、送信モジュールとの接続が断たれ、受信モジュールと接続される。
図27Dは、1.85MHzで、6パルスを示す、連続する送信パルスの拡大図を示す。
図27Eは、埋め込み型デバイスからの後方散乱を示す。前記後方散乱は、約2tレイリー距離のトランスデューサまで到達する。
図27Fは、後方散乱波形の拡大図を示す。後方散乱波形は、大きな飽和信号を含み、飽和信号の送信パルスとの重複は、電気的にフィードスルーし、無視される。後方散乱パルスが戻る際に、後方散乱パルスが送電窓に続いて確認され得る。
図27Gは、フィルタリングされ、整流化された後方散乱波形、および波形を再構築するために計算された曲線下の領域を示す。
図27Hは、10kHzでサンプリングされた、再構築された波形を示す。100μs毎に受信した、適切に反射されるパルスの曲線下の領域を算出することで、再構築された波形の各部を計算する。
【
図28A】
図28Aは、例示的トランスデューサ(呼びかけ機)の表面からの距離の関数としての、低減された正規化ピーク圧力が、1.85MHzの際、約8.9mmで低減された焦点を有することを示す。
【
図28B】
図28Bは、近距離、レイリー距離、および遠距離における、XY断面のビームパターンおよびそれに対応するy=0のときの1次元電圧プロットを示す。これらのパターンは、レイリー距離においてビームが集束していることを示す。
【
図28C】
図28Cは、トランスデューサの出力圧力は、入力電圧の一次関数であることを示す(最高32Vのピーク間電圧)。
【
図28D】
図28Dは、別の文脈において示した
図5Eの再現)は、異なる領域で示される例示的な後方散乱波形である。後方散乱波形は、非応答領域から発生する反射に対応する領域によって(時間的に)両側を挟まれていることがわかる;これらの領域は、他のデバイスの構成要素から反射したパルスに対応している。非応答領域における測定を基準としてもよい。ここで、前記非応答領域は、生物学的データを読み込んだものではない。このように区別して測定を行うことで、実験における外部のトランスデューサに関するすべての構成の動作を、差し引くことができる。
【
図28E】
図28Eは、カスタムした水タンク設備から得られる校正曲線であり、ノイズフロアは0.18mV
rmsであることを示す。
【
図28F】
図28Fは、ビームパターン出力の減退に続く、横への照準ミスの関数としてのノイズフロアの影響を示す。
【
図28G】
図28Gは、レイリー距離における、y=0のときのトランスデューサの軸外し電圧および出力低下の1次元のプロットを示す。
【
図28H】
図28Hは、角度の照準ミスに対する、低下のプロットを表す。角度の照準ミスによって、ビームパターンが歪む。つまり、ビームパターンが円ではなく、反対に長円形となる。これにより、焦点の半径が長くなる(そして、より広い範囲へとエネルギーが分散する)。つまり、焦点の歪みが、照準ミスにおける制約を緩和する。
【
図29A】
図29Aは、ラットの腓腹筋からEMGを記録するための、インビボにおける実験設備を示す。埋め込み型デバイスは、露出した筋肉表面上に配置され、傷口を外科縫合によって閉じた。外部のトランスデューサは超音波を埋め込み型デバイスとつなげ、無線データが記録され、コンピュータシステム(例えば、ラップトップコンピュータ)上に表示される。
【
図29B】
図29Bは、複数回の試験を通しての、グラウンドトルース測定と再構築されたEMG信号との比較を示す。20m秒のサンプルが記録され、刺激の間隔は6秒であった。
【
図29C】
図29Cは、記録されるEMG信号の電力スペクトル密度(PSD)を示す。当該電力スペクトル密度(PSD)は、グラウンドトルースおよび再構築されたダストデータそれぞれに対して、107Hzで4.29e4μV2/Hzおよび3.11e4μV2/Hzであり、波形の端により、いくつかの調波が見られた。
【
図29D】
図29Dは、t=0分、およびt=30分に記録された無線後方散乱データがR=0.901で一致したことを示す。
【
図30A】
図30Aは、PCB上の電極を用いて刺激強度を変えてインビボで記録された、さまざまな強度のEMG信号を示す。
【
図30B】
図30Bは、埋め込み型デバイスを用いて、類似した勾配のEMG応答が無線に記録されたことを示す。
【
図30C】
図30Cは、グラウンドトルースおよび無線後方散乱データから再構築されたEMG信号が、応答飽和刺激振幅(response-saturating stimulation amplitude)(100%)の場合、R=0.795で一致した(54%、69%、77%、89%の場合、それぞれR=0.60、0.64、0.67、0.92で一致した)ことを示す。
【
図30D】
図30Dにおいて、定量的比較により、顕著な特徴との0.4mV未満の一致が示された。
【
図30E】
図30Eにおいて、EMGピーク間電圧は、刺激強度との予測されたS字形相関を示した。
【
図31A】
図31Aは、PCB上の電極を用いて刺激強度を変えてインビボで記録された、さまざまな強度のENG信号を示す。
【
図31B】
図31Bは、モートを用いて、類似の勾配のENG応答が無線で記録されたことを示す。
【
図31C】
図31Cは、グラウンドトルースおよび無線後方散乱データから再構築されたENG信号が、応答飽和刺激振幅(response-saturating stimulation amplitude)(100%)の場合、R=0.886で一致した(44%、61%、72%、83%、89%の場合、それぞれR=0.822、0.821、0.69、0.918、0.87で一致した)ことを示す。
【
図31D】
図31Dにおいて、定量的比較により、顕著な特徴との0.2mV未満の一致が示された。
【
図31E】
図31Eにおいて、ENGピーク間電圧は、刺激強度との予測されたS字形相関を示した。
【
図32A】
図32Aは、異なる電極間隔におけるENG応答を、時間経過で記録したものを示す。
【
図33A】
図33Aは、組織を模倣するために使用される超音波カップリングゲルに埋め込まれた埋め込み型デバイスを用いた、埋め込み型デバイスからの超音波後方散乱を示す。前記超音波散乱は、26マイクロ秒に集中する送信貫通および終了、および47マイクロ秒付近に集中する小型化超音波トランスデューサ後方散乱を含む。
【
図33B】
図33Bは、小型化超音波トランスデューサの後方散乱領域(応答領域)の拡大図である。これは、埋め込み型デバイスへの信号入力の結果、振幅が変調されることを示す。
【
図34】
図34は、単極でエンコードすることで、後方散乱の振幅パルスの変調により、埋め込み型デバイスから無線で得られる、ASCII文字「hello world」に対応するデジタルデータを示す。