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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用伸縮操作手段
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20221226BHJP
【FI】
A61M25/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020040571
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021141951
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】村木 康宏
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 隆明
(72)【発明者】
【氏名】羽田 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】粂野 孝志
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/231857(WO,A1)
【文献】特開平08-131551(JP,A)
【文献】特開平11-169463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0004652(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0245861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管とからなる長尺なシャフトと、
遠位端が前記内管と直接又は間接的に接合されるとともに、近位端が前記外管と直接又は間接的に接合され、前記内管と前記外管との間に形成されるサブルーメンを介して内部に供給される流体の圧力によって拡張及び収縮するバルーンと、
前記外管に、前記外管と手元側の間に前記外管を前記内管に対して軸方向に移動可能にするため蛇腹構造、螺旋構造又はミウラ折り構造からなる伸縮部と、を備えているバルーンカテーテルに取り付けられるバルーンカテーテル用伸縮操作手段において、
前記伸縮部を内装する筐体と、前記筐体内に配置され前記伸縮部の端部又は端部近傍を取り付けることができる取付用溝を備え、シャフトが挿入される溝を有し、かつ前記伸縮部の伸縮方向にスライド可能なスライド部材と、前記内管内のメインルーメンと前記内管と前記外管との間に形成される前記サブルーメンとを分岐する分岐部材と、を備え、
前記筐体には前記伸縮部の伸縮方向に形成されたスライド部材用長孔を有し、
前記スライド部材の少なくとも一部は、前記スライド部材用長孔から筐体外部に延設されてなる操作部と、
を備えたことを特徴とするバルーンカテーテル用伸縮操作手段。
【請求項2】
前記スライド部材には、前記伸縮部を伸ばす方向又は縮める方向へ付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル用伸縮操作手段。
【請求項3】
前記スライド部材用長孔は、前記操作部の長手方向の移動を支持可能となるように伸縮方向から直交する方向に移動防止用孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用伸縮操作手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル用伸縮操作手段に関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルを使用する際に、挿入時におけるバルーンの直径である挿入可能径よりも抜去時におけるバルーンの直径である抜去可能径が大きくなってしまう場合がある。代表例として大動脈内で使用するバルーンカテーテルがあり、主に大動脈内に留置するステントグラフトの血管内壁を圧着させることを目的とするタッチアップ用のものと、血管内を閉塞し、血流をコントロールするためのオクリュージョン(閉塞用)のものと、IAB用のバルーンカテーテルが知られている。
【0003】
大動脈内で使用されるステントグラフト拡張用のバルーンカテーテルやオクリュージョン用のバルーンカテーテルの場合、血管内又はステントグラフト内で内壁にバルーンが密着するように広範囲に密着させるために大きく拡張させる必要があり、他の血管内治療用バルーンカテーテルのものと比較してバルーンの拡張径が大きく、拡張媒体の注入容量も多いものが使用される。
【0004】
一方で、カテーテル挿入時は、低侵襲性の観点から性能に影響がない範囲で可能な限り、細いシースが要求される。
【0005】
この相反する要求を満たすために、一般的には、バルーンに伸展性の高い材質を使用し、かつバルーン膜も可能な限り薄く形成し、挿入時のシース通過性をよくするため、細く折り畳まれてラッピングされているものを使用している。
【0006】
しかしながら、細く折り畳まれているバルーンが挿入可能な最小径のシースを使用した場合、血管内等で一度バルーンが拡張されると、ラッピング状態が解かれてしまうため、抜去時にバルーンをシース内に引き戻すことができず、バルーンを体内から抜去する場合は、シースと一緒に抜去しなければならない。
【0007】
そのため、バルーンカテーテル使用後に別のカテーテルを挿入する必要がある場合又は治療中に何度かバルーンを抜去する必要がある場合などは、バルーンカテーテルの挿入可能な太いサイズのシースを始めから選択せざるを得ないという問題があった。
【0008】
また、これを避けるためにシースなしで血管に直接バルーンカテーテルを挿入する場合もある。この場合でも、一旦拡張させたバルーンを伸縮させたバルーンが大きくなると、抜去の際に引き抜きにくいという問題がある。
【0009】
また、使用中に、血管もしくはステントの内部でバルーンを内壁に密着させるために、バルーンの成形時の容量(標準径)を大きく超えて拡張(過膨張)させることがある。この場合、バルーンが血管の内壁と接触した後、内壁に規制されてそれ以上径方向に大きくはならないが、伸展性の材質であるため規制されていない軸方向に拡張しようとする。この際にバルーンの膜は、内管及び外管との接合部で反転し、遠位部及び近位部の管状部分に重なってしまう場合がある(図5参照)。この場合伸展性のある材質を使用していてもバルーンを過剰に膨張させると塑性変形をおこしてしまい元の形状に戻らなくなる。この状態でカテーテルを陰圧にし、バルーンを収縮させてもバルーン部分が遠位部もしくは近位部の管状部分に重なって外径が太くなりシース通過が困難になるといった問題点があった。
【0010】
さらに、IABは製品の特性上、長期間体内に留置されるため、末梢の血行を妨げないよう細いシースが望まれる。意図的に過膨張させることはないが、耐久性の問題から可能な限りバルーンの膜厚を厚くしている。そのため、挿入前のシースを通過させるためにバルーンはきれいにラッピングされている。使用後のバルーンは拡張され、体内できれいに畳むことができないためシース内を通過させることが困難であり、この場合も通常シースとともに抜去される。
【0011】
後の治療や止血デバイスを使用するためにシースを残すためには挿入可能サイズよりも大きいサイズのシースを使用前に選択せざるを得ないが、その場合でもシース通過時の抵抗が大きく、特にIABの場合はバルーン長が長く、シース内での抵抗が大きくなり徐々にバルーンが伸ばされて遠位側に偏ってしまい抜去が困難になることがあった。
【0012】
かかる問題点に関し、カテーテル管内に挿入されたステンレス棒にバルーンの遠位側、外管にバルーンの近位側を接合し、ステンレス棒がスライドする構造となっており、バルーンを伸ばした状態で縮径することでしわを伸ばし、シースへの通過性を向上させたバルーンカテーテルが提案されている(特許文献1)。
【0013】
しかし、かかるバルーンカテーテルは、内管と外管とが固定されておらず、内管が外管を貫通し、内管が外管に対して自由に回転できる構造となっており、ステンレス棒を回転させることでバルーンを簡単に巻回することができるようになっているが、内管が外管を貫通、バルーン拡張時は内管を固定、拡張媒体のもれ防止を成立させる必要があるため構造が複雑になり、その作製工程も複雑になってしまうという問題があった。さらに、治療中にインナーの固定位置を作業に合わせて調整する必要があるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平11-169463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、体内で拡張したバルーンカテーテルを細いシースに容易に収納可能な状態することができるバルーンカテーテルにおいて、その操作を容易にすることができるバルーンカテーテル用伸縮操作手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0017】
本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段は、
内管と外管とからなる長尺なシャフトと、
遠位端が前記内管と直接又は間接的に接合されるとともに、近位端が前記外管と直接又は間接的に接合され、前記内管と前記外管との間に形成されるサブルーメンを介して内部に供給される流体の圧力によって拡張及び収縮するバルーンと、
前記外管に、前記外管と手元側の間に前記外管を前記内管に対して軸方向に移動可能にするための伸縮部と、を備えているバルーンカテーテルに取り付けられるバルーンカテーテル用伸縮操作手段において、
前記伸縮部を内装する筐体と、前記筐体内に配置され前記伸縮部の端部又は端部近傍に取り付けられ、かつ前記伸縮部の伸縮方向にスライド可能なスライド部材と、を備え、
前記筐体には前記伸縮部の伸縮方向に形成されたスライド部材用長孔を有し、
前記スライド部材の少なくとも一部は、前記スライド部材用長孔から筐体外部に延設されてなる操作部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段が使用されるバルーンは、バルーンの遠位端と近位端を内管と外管の相対位置を軸方向に変化させることで距離を変化させることができる。従って、バルーンをシースに収納するためにバルーンを収縮させるときに、使用者が手元で伸縮部を圧縮することでバルーンを引き延ばしてしわを除去し、細いシースでの通過性を向上させることができる。すなわち、より細く収縮させることが可能になり、細いシースにバルーンを収納することができる。この際に、本発明にかかるバルーンカテーテル用操作手段によれば、伸縮部が筐体内に収められており、筐体外部に設けられた操作部を操作することで、伸縮部の伸縮を行うことができ、容易にバルーンの近位端と遠位端の距離を変更することができる。
【0019】
また、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段において、
前記スライド部材には、伸縮部を伸ばす方向又は縮める方向へ付勢する付勢部材を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
かかる構成を作用することによって、外管を一定方向に付勢させることができるので、一方向のみの操作でバルーンカテーテルの近位端と遠位端の距離を調整することができる。
【0021】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段において、前記スライド部材用長孔は、前記操作部の長手方向の移動を支持可能となるように伸縮方向から直交する方向に移動防止用孔が形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
移動防止用孔に操作部を移動させることで、操作部を伸縮部の伸縮方向へ移動することを規制することができ、バルーンの遠位端と近位端の距離を一定の距離で固定することができる。そのため、より使いやすいバルーンカテーテルとすることができる。
【0023】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段において、
前記筐体内には、前記内管内のメインルーメンと、前記内管と前記外管との間に形成される前記サブルーメンとを分岐する分岐部材を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0024】
かかる構成を採用することによって、バルーンカテーテル用操作手段を、そのままガイドワイヤや医療用器具を挿入したりバルーン拡張用流体を導入したりするハブとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段によれば、バルーンをシースに収納するためにバルーンを収縮させるときに、使用者が手元で伸縮部を圧縮することでバルーンを引き延ばしてしわを除去し、細いシースでの通過性を向上させることができるバルーンカテーテルを容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に係るバルーンカテーテル用伸縮操作手段200に使用されるバルーンカテーテル100を説明するためのバルーンカテーテル100の模式図である。
図2図2は、本発明に係るバルーンカテーテル用伸縮操作手段200に使用されるバルーンカテーテル100の伸縮部30の構成の例を示す模式図である。
図3図3は、本発明に係るバルーンカテーテル用伸縮操作手段200に使用されるバルーンカテーテル100の伸縮部30の構成の別実施形態を示す模式図である。
図4図4は、本発明に係るバルーンカテーテル用伸縮操作手段200に使用されるバルーンカテーテル100の伸縮部30を縮めた状態を示す模式図である。
図5図5は、本発明に係るバルーンカテーテル用伸縮操作手段200に使用されるバルーンカテーテル100のバルーン20が過拡張した状態を示す模式図である。
図6図6は、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200を示す斜視図である。
図7図7は、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200を示す側面図である。
図8図8は、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200のスライド部材220を示す斜視図である。
図9図9は、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200のスライド部材220の断面図である。
図10図10は、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200の別実施形態を示す断面図である。
図11図11は、本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200のさらなる別実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明にかかるバルーンカテーテル100に取り付けられるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、説明の便宜のため、特許請求の範囲及び明細書において、「遠位端」及び「近位端」とは、バルーンカテーテル100に対して、手元側を「近位端」といい、先端側を「遠位端」という。
【0028】
まず、始めに本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200が使用されるバルーンカテーテル100について説明する。本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200が使用されるバルーンカテーテル100は、主として、図1及び図2に示すように、内管11と外管12とからなる長尺なシャフト10と、シャフト10の遠位端側に設けられたバルーン20と、シャフト10の外管12の一部に設けられた伸縮部30と、を備えている。
【0029】
シャフト10は、内管11及び外管12の二重管構造となっており、内管11内のメインルーメン11aは、主としてガイドワイヤや医療用機器等を通すために使用され、内管11と外管12との間のサブルーメン12aは、主としてバルーン20を拡張するための拡張用流体を導入するための空間として使用される。内管11は、バルーン20の遠位端側まで延びており、遠位端又は遠位端近傍でバルーン20の遠位端側と直接又はリングを介して間接的に液密に接合され、内管11はバルーン20内に配置されている。外管12は、バルーン20の近位端側まで延びており、外管12の遠位端又は遠位端近傍とバルーン20の近位端が直接又はリングを介して間接的に液密に接合されている。内管11と外管12は、軸方向に互いの相対位置を変更可能に設けられている。
【0030】
内管11は、チューブ状の樹脂で作製されており、例えば、高密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂等が挙げられる。
【0031】
外管12も、チューブ状の樹脂で作製されており、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレン等を挙げることができる。
【0032】
バルーン20は、樹脂製のフィルム状の中空体で形成されており、内部に気体又は液体からなる拡張用流体を供給することにより圧力により拡張し、吸引することにより収縮可能に形成されている。バルーン20を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー又はポリウレタンを挙げることができる。
【0033】
伸縮部30は、図1に示すようにバルーン20の外管12の一部に取り付けられている。伸縮部30は、外管12に対して封止されるように連続して形成される筒状体に形成されている。好ましくは、伸縮部30を操作しやすいように手元側から10cm以内の位置に設けるとよい。この伸縮部30を軸方向(シャフト10の長手方向)に伸張したり、収縮したりすることで、伸縮部30より遠位端側の外管12の内管11に対する相対位置を軸方向に移動させることができる。
【0034】
伸縮部30は、伸縮部30より遠位端側の外管12の位置を移動可能であれば、特にその形態は限定するものではないが、例えば、図2Aに示すように、プラスチック薄膜によって蛇腹構造に形成したり、図2Bに示すように、螺旋構造に形成したり、図3に示すように、いわゆるミウラ折り構造(PCCPシェル構造を含む。)のように形成したりしてもよい。
【0035】
このようにして作製されたバルーンカテーテル100は、伸縮部30を軸方向に収縮状態にしたり、伸張状態にしたりすることによってバルーン20の遠位端に接続された内管11とバルーン20の近位端に接続された外管12との軸方向の相対位置を変更させることができるため、バルーン20の遠位端と近位端の距離を変更させることができる。
【0036】
かかるバルーンカテーテル100を使用することによって、血管内でバルーン20を拡張させる際に、図5に示すように、先端のバルーン20が軸方向に過膨張した際に、図4に示すように、伸縮部30を軸方向に収縮して、内管11と外管12との間に軸方向のずれを生じさせてバルーン20の近位端と遠位端の距離を長くすることによって、バルーン膜が血管の内壁80に広く接触した場合でも、図5に示すような内管11及び外管12との接続部を超えて過膨張することを低減することができる。
【0037】
また、バルーン20を収縮させる場合において、図5に示すように、バルーン20の遠位端又は近位端の接合部付近の重なりを超えて過剰に膨張してしまいバルーン20がシャフト10に折り重なってしまった場合や、バルーン20の材質の塑性変形により伸びてしまってシースの通過が困難になった場合等においても、使用者が手元で伸縮部30を圧縮することで、図4に示すようにバルーン20を引き延ばしてしわを除去し、細いシースでの通過性を向上させることができる。
【0038】
本発明にかかるバルーンカテーテル用伸縮操作手段200は、上述した伸縮部30を有するバルーンカテーテル100において使用されるものである。バルーンカテーテル用伸縮操作手段200は、主として、図6に示すように、筐体210と、この筐体210内に配置されるスライド部材220と、メインルーメン11a及びサブルーメン12aとを分岐する分岐部材230とを備えている。
【0039】
筐体210は、伸縮部30、スライド部材220及び分岐部材230を収容可能な部材であり、これらを収納することができるように2つに分割して形成されている(図6は、内部を視認可能なように、分割される一方の部材が省略されている。)。筐体210の先端には、伸縮部30から延びるシャフト10を挿通するシャフト用孔211が設けられていて、少なくとも外管12は伸縮方向へ移動可能に設けられる。また、側面には、図7に示すように、伸縮方向へ長く形成されたスライド部材用長孔212が設けられている。さらに、スライド部材用長孔212は、後述する操作部223の長手方向の移動を規制可能となるように伸縮方向から直交する方向に移動防止用孔224が形成されている。なお、本実施形態においては、筐体210は、全体的に円筒形となるように形成されているが、これに限定されるものではなく、四角柱形や多角柱形に形成してもよく、全体の外形は特に限定するものではない。
【0040】
スライド部材220は、図8に示すように、円筒形の一部に溝221が長手方向に形成されている。この溝221に伸縮部30及びシャフト10が挿入される。溝221には、図8又は9に示すように、伸縮部30の一方側の端部30a又は端部近傍を取り付けることができるように取付用溝222が設けられていて、この取付用溝222に伸縮部30を取り付けることによって、伸縮部30の端部30aはスライド部材220の移動に伴って伸びたり、縮んだりすることになる。なお、スライド部材220と伸縮部30との取り付け構造は、特に限定するものではなく、接着剤等で固定してもよい。要するに、伸縮部30の端部30a又は端部近傍をスライド部材220の移動に伴って移動できるような形態になっていれば、その構成は限定されない。さらに、スライド部材220の側面には、側方方向へ延びている操作部223が設けられている。こうして作製されたスライド部材220は、図7に示すように、操作部223がスライド部材用長孔212から突出するようにして筐体210内に設けられ、操作部223をスライドさせることによって伸縮部30の伸縮方向(シャフト10の長手方向)に筐体210内で自在にスライド可能に設けられている。
【0041】
伸縮部30は、前述したように、一方側の端部30a又は端部近傍はスライド部材220に取り付けられ、他方の端部30b又は端部近傍は筐体210内で移動しないように固定される。本実施形態においては、筐体210の後方に設けられている分岐部材230に取り付けられている。
【0042】
分岐部材230は、メインルーメン11aとサブルーメン12aを分岐する部材であり、図9に示すように、後方側にメインルーメン開口部230aを有し、側方方向へサブルーメン開口部230bを有する。メインルーメン開口部230aはメインルーメン11aに連通しており、ガイドワイヤその他の治療用器具をメインルーメン開口部230aから挿入することで、治療用器具をバルーン20の先端に送り出すことができる。サブルーメン開口部230bはサブルーメン12aと連通しており、サブルーメン開口部230bには、拡張用流体を導入する機器とチューブ280で連結されている。このサブルーメン開口部230bから拡張用流体を導入することで、バルーン20内に送り出すことができる。分岐部材230は、筐体210の後端部に固定されている。伸縮部30は、この分岐部材230を介して筐体210に固定される。
【0043】
以上のように作製されたバルーンカテーテル用伸縮操作手段200は、操作部223をスライドさせることによって伸縮部30を軸方向に収縮状態にしたり、伸張状態にしたりすることができる。そのため、バルーン20の遠位端に接続された内管11とバルーン20の近位端に接続された外管12との軸方向の相対位置を変更させることができるため、バルーン20の遠位端と近位端の距離を変更させることができる。この際に、伸縮部30を収縮状態で固定したい場合には、図7に示すように、操作部223を移動防止用孔224に移動(矢印の方向)させることによって、スライド部材220の伸縮部30の伸縮方向へのスライドが規制されて伸縮部30の長さを固定することができる。そのためバルーンの前後の長さを固定することができるため、操作部223を押さえることなく他の操作を行うことができる。
【0044】
なお、上述した実施形態においては、スライド部材220を移動させるのに操作部223のみの操作で行ったが、伸縮部30の収縮方向又は伸張方向へ付勢するように付勢部材を設けても良い。例えば、図10に示すように、スライド部材220と筐体210との間にばね部材240を設けることで、スライド部材220を一定方向へ付勢することができる。ばね部材240を設けることによって、操作する際に一方向にのみ力を加えて移動させればよいので操作性を向上させることができる。すなわち、図10においては、伸縮部30を伸ばす場合のみ力を加えればよく、元の状態に戻す場合には、操作部223から手を離すことで自動的に初期の状態に復帰させることができる。もちろん、伸縮部30を伸ばす方向に付勢してもよい。
【0045】
また、上述した実施形態においては、移動防止用孔224が、伸縮部30が縮んだ状態のときにのみ操作部223を移動させて、スライド部材220のスライドを規制して固定することができるようにしたが、図11に示すように、伸縮部30が伸びた状態においても固定することができるように、移動防止用孔224を伸縮部30が伸びた状態で操作部223を規制できる位置に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述した実施の形態で示すように、手術用のバルーンカテーテルとして産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…シャフト、11…内管、11a…メインルーメン、12…外管、12a…サブルーメン、20…バルーン、30…伸縮部、80…内壁、100…バルーンカテーテル、200…バルーンカテーテル用伸縮操作手段、210…筐体、211…シャフト用孔、212…スライド部材用長孔、220…スライド部材、221…溝、222…取付用溝、223…操作部、224…移動防止用孔、230…分岐部材、230a…メインルーメン開口部、230b…サブルーメン開口部、240…ばね部材、280…チューブ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11