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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】電流特定装置及び校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20221226BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R19/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021117363
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】398035604
【氏名又は名称】株式会社トラフィック・シム
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祥資
(72)【発明者】
【氏名】三宅 哲志
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-055845(JP,A)
【文献】特開2016-148597(JP,A)
【文献】特開2017-201332(JP,A)
【文献】特開2019-158672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0284168(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02278344(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-17/22
G01R 19/00-19/32
G01R 31/08-31/11
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と対象機器とを接続する多芯電線に取り付けられる電流特定装置であって、
前記多芯電線の被覆の外側に取り付けられ、前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出するセンサと、
前記センサの検出結果を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して、ユーザによって前記対象機器に対して並列又は直列に配置される負荷に電力が供給されている参照状態において、前記センサによって検出される参照磁界強度を取得し
前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記負荷通電されていない対象状態において、前記センサによって検出される対象磁界強度を取得し
前記参照状態において前記負荷に流れる電流の電流値を示す参照電流値であって、前記参照電流値を検出する電流検出部から検出済みの前記参照電流値を取得し、
前記参照電流値と、前記参照磁界強度と、前記対象磁界強度と、を用いて、前記対象磁界強度に、前記参照電流値を前記参照磁界強度と前記対象磁界強度との差分で除算した値を乗算することによって、前記対象状態において前記多芯電線に流れる電流の対象電流値を特定する、電流特定装置。
【請求項2】
交流電源と対象機器とを接続する多芯電線に流れる電流の電流値を特定する電流値特定方法であって、
前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出するセンサから、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して、ユーザによって前記対象機器に対して並列又は直列に配置される負荷に電力が供給されている参照状態における検出済みの参照磁界強度を取得する工程と、
前記センサから、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記負荷に通電されていない対象状態における対象磁界強度を取得する工程と、
前記参照状態において前記負荷に流れる電流の電流値を示す参照電流値であって、前記参照電流値を検出する電流検出部から検出済みの前記参照電流値を取得する工程と、
前記参照電流値と、前記参照磁界強度と、前記対象磁界強度と、を用いて、前記対象磁界強度に、前記参照電流値を前記参照磁界強度と前記対象磁界強度との差分で除算した値を乗算することによって、前記対象状態において前記多芯電線に流れる電流の対象電流値を特定する工程と、を備える、電流値特定方法。
【請求項3】
交流電源から電力を受ける対象機器と、
前記交流電源と前記対象機器とを接続する多芯電線と、
前記多芯電線に取り付けられる電流特定装置と、
前記対象機器に対して並列又は直列に配置される負荷と、を備え、
前記電流特定装置は、
前記多芯電線の被覆の外側に取り付けられ、前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出するセンサと、
前記センサの検出結果を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して、前記負荷に電力が供給されている参照状態において、前記センサによって検出される参照磁界強度を取得し、
前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記負荷に通電されていない対象状態において、前記センサによって検出される対象磁界強度を取得し、
前記参照状態において前記負荷に流れる電流の電流値を示す参照電流値であって、前記参照電流値を検出する電流検出部から検出済みの前記参照電流値を取得し、
前記参照電流値と、前記参照磁界強度と、前記対象磁界強度と、を用いて、前記対象磁界強度に、前記参照電流値を前記参照磁界強度と前記対象磁界強度との差分で除算した値を乗算することによって、前記対象状態において前記多芯電線に流れる電流の対象電流値を特定する、機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、多芯電線に流れる電流を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に、多芯電線に流れる電流の電流値を非接触で測定する電流センサが開示されている。電流センサは、磁気センサ素子で被測定電線の周囲に発生する磁界を検知することによって、電流を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-148597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術を用いて電流を適切に特定するためには、センサ素子から導体までの距離等を把握する必要がある。しかしながら、多芯電線は、被覆で覆われているために、被覆を破壊せずに、複数の導体の状態を確認することが難しい。
【0005】
本明細書では、多芯電線の被覆の外側に取り付けられる磁界強度を検出するセンサを用いて、多芯電線に流れる電流の電流値を特定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、電流特定装置に関する技術が開示されている。電流特定装置は、多芯電線の被覆の外側に取り付けられ、前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出するセンサと、前記センサの検出結果を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定する制御部と、を備え、前記制御部は、交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器と抵抗体とに電力が供給されている参照状態において、前記センサによって検出される参照磁界強度と、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記対象機器に電力が供給されており、前記交流電源から前記多芯電線を介して前記抵抗体に流れる電流の電流値が前記参照状態と異なる対象状態において、前記センサによって検出される対象磁界強度と、前記参照状態と前記対象状態とで前記抵抗体に流れる電流の差を示す参照電流値と、を用いて、前記対象状態において前記多芯電線に流れる電流の対象電流値を特定する。
【0007】
この構成では、参照磁界強度と対象磁界強度との差は、参照電流値の大きさに依存する。このため、参照磁界強度と対象磁界強度と参照電流値とに基づくと、多芯電線に流れる電流の電流値を特定することができる。これにより、対象電流値を特定することができる。この構成によると、被覆内の電線までの距離等を把握せずに、多芯電線に流れる電流の電流値を特定することができる。このため、被覆を破壊せずに、電流を適切に特定することができる。
【0008】
本明細書には、電流特定装置に関する別の技術が開示される。電流特定装置は、多芯電線の被覆の外側に取り付けられ、前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出するセンサと、前記センサによって検出される磁界強度と、前記多芯電線に流れる電流に換算する換算式と、を用いて、前記多芯電線に流れる電流を特定する制御部と、を備え、前記換算式は、校正用負荷を含む複数の負荷に前記多芯電線が通電する参照状態と、前記複数の負荷のうちの前記校正用負荷を除く負荷に前記多芯電線が通電する対象状態であって、前記校正用負荷に流れる電流の電流値が前記参照状態と異なる前記対象状態との間で、前記センサによって検出される磁界強度に生じる変化と、前記参照状態と前記対象状態とで前記校正用負荷に通電される既知又は測定された電流差を示す参照電流値とに基づいて、校正されている。
【0009】
この構成によると、対象状態と参照状態との間で生じる磁界強度の変化と参照電流値とに基づいて換算式を校正することによって、多芯電線の被覆の外側の磁界強度と校正済みの換算式とを用いて、電流の電流値を特定することができる。この構成によると、被覆を破壊せずに、多芯電線に流れる電流の電流値を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の電流特定装置の構成を示す。
図2】実施例の多芯電線とセンサとの縦断面図を示す。
図3】実施例の別の例の多芯電線とセンサとの縦断面図を示す。
図4】校正方法のフローチャートを示す。
図5】磁界強度の波形の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示の技術の特徴を列挙する。なお、以下の各特徴は、それぞれ独立して有用なものである。
【0012】
制御部は、参照電流値を検出する電流検出部から検出済みの参照電流値を取得してもよい。
【0013】
この構成では、参照電流値を検出することによって参照電流値を特定する。この構成によると、参照電流値を予め特定しておかなくて済む。抵抗体に流れる電流の電流値を検出するための電流検出部を設置することによって、参照電流値を検出することができる。
【0014】
制御部は、参照電流値と参照磁界強度とに関連する関連値を格納し、関連値と、対象磁界強度と、を用いて対象電流値を特定してもよい。
【0015】
この構成によると、関連値を格納しておくことによって、対象機器の使用時に、センサによって検出される対象磁界強度を用いて、対象電流値を特定することできる。
【0016】
制御部は、参照電流値と、参照磁界強度と対象磁界強度との差分と、を用いて得られる対象磁界強度から対象電流値を特定するための特定パラメータを用いて、対象磁界強度から対象電流値を特定してもよい。
【0017】
この構成によると、特定パラメータを用いて、対象機器の使用時に対象電流値を容易に特定することできる。
【0018】
対象状態では、交流電源から多芯電線を介して前記抵抗体に通電されていなくてもよい。
【0019】
この構成によると、対象機器の使用時に、抵抗体に通電しなくてもよい。
【0020】
参照状態と、対象状態と、に切り替わるスイッチをさらに備えていてもよい。
【0021】
この構成によると、対象機器の使用時に、対象状態と参照状態とを切り替えることによって、参照磁界強度と対象磁界強度とを検出することができる。
【0022】
制御部は、参照状態でセンサが検出する磁界強度と、対象状態でセンサが検出する磁界強度と、参照電流値とを用いて、換算式を校正してもよい。
【0023】
この構成によると、制御部は、参照状態及び対象状態の磁界強度と参照電流値とを用いて、換算式を校正することができる。例えば、多芯電線に対するセンサの位置が変化することによって、参照状態及び対象状態の磁界強度と参照電流値との相対関係が変化する場合がある。この場合、制御部が換算式を校正することによって、多芯電線に対するセンサの位置が変化しても、電流特定装置を用いて、対象電流値を特定することができる。
【0024】
上記の電流特定装置において、参照状態で多芯電線に取り付けられたセンサが検出する参照磁界強度を取得する工程と、対象状態で多芯電線に取り付けられたセンサが検出する対象磁界強度を取得する工程と、参照磁界強度と、対象磁界強度と、参照電流値とを用いて、制御部に記憶された換算式を校正する工程と、を備える校正方法も新規で有用である。
【0025】
この構成によると、参照状態及び対象状態の磁界強度と参照電流値とを用いて、換算式を校正することができる。
【0026】
参照電流値を検出する電流検出部から検出済みの前記参照電流値を取得する工程を、さらに備えていてもよい。
【0027】
この構成によると、参照電流値を予め特定しておかなくて済む。
【0028】
(実施例)
図1図5を参照して、実施例の電流特定装置10を説明する。図1に示すように、電流特定装置10は、単相交流の交流電源100と対象機器2とを接続する多芯電線4に流れる電流の電流値を特定する。対象機器2は、交流電源100から電力を受ける電気機器であり、例えば、ラックマウント型サーバである。なお、対象機器2は、これに限らず、電気機器であればよい。また、対象機器2は、1つの電気機器、互いに直列又は並列に接続される複数の電気機器等の負荷であればよい。
【0029】
図2に示すように、多芯電線4は、3本の電線8と、3本の電線8を覆う被覆6と、を備える。3本の電線8のうち、1本の電線8は接地され、他の2本の電線8に通電される。各電線8は、導体8aと、導体8aを被覆する絶縁体8bと、を備える。多芯電線4では、電線8が被覆6に覆われており、被覆6の外側から見ると、3本の電線8の位置関係を視認することができない。
【0030】
電流特定装置10は、処理装置11と、センサ部20と、を備える。図2に示すように、センサ部20は、ホルダ26と、基板24と、磁気センサモジュール22と、信号処理回路(図示省略)と、コネクタ(図示省略)を備える。基板24は、磁気センサモジュール22と、信号処理回路と、コネクタと、が搭載されるプリント基板である。磁気センサモジュール22は、ホール素子を有するホールIC(Integrated Circuitの略)である。磁気センサモジュール22は、磁気センサモジュール22周りに発生する磁界の磁界強度に応じて変化する電圧信号を出力する。信号処理回路は、磁気センサモジュール22から出力される電圧信号にフィルタ処理、AD変換処理等を実行して、処理済みの信号を出力する。
【0031】
なお、変形例では、磁気センサモジュール22は、例えば磁気抵抗素子等のホール素子以外の磁界強度を検出するための素子を含んでいてもよい。この場合、基板24には、素子から出力される信号に適合する回路が搭載されていてもよい。
【0032】
基板24、磁気センサモジュール22及び信号処理回路は、ホルダ26に収容されている。樹脂製のホルダ26は、基板24、磁気センサモジュール22、信号処理回路及びコネクタを収容する収容空間を有する。基板24、磁気センサモジュール22、信号処理回路及びコネクタは、ホルダ26に対して固定されている。ホルダ26は、磁気センサモジュール22と多芯電線4との相対位置が変動不能となるように、多芯電線4に取り付けられる。
【0033】
ユーザは、センサ部20を多芯電線4に取り付ける際に、被覆6を破壊せずに、被覆6内の3本の電線8の位置関係を把握することは難しい。このため、センサ部20は、多芯電線4に対して、図2に示す位置に配置される場合もあれば、図3に示す位置に配置される場合もあり得る。このように、センサ部20の配置によって、磁気センサモジュール22と電線8との位置関係は変化する。
【0034】
センサ部20は、コネクタに接続されるケーブルを介して、処理装置11に接続されている。処理装置11は、制御部12と、センサ側インターフェイス14と、端末側インターフェイス16と、ケース18と、を備える。なお、図面及び以下では、「インターフェイス」を「I/F」と呼ぶ。制御部12、センサ側I/F14及び端末側I/F16は、ケース18に収容されている。制御部12は、センサ側I/F14及び端末側I/F16のそれぞれと図示省略したバス線によって互いに通信可能に接続されている。センサ部20から延びるケーブルは、センサ側I/F14に接続されている。センサ側I/F14は、センサ部20から出力される信号を取得して制御部12に供給する。
【0035】
センサ側I/F14は、さらに、電流センサ52等のセンサ部20以外のセンサを接続するための端子を有する。センサ側I/F14は、電流センサ52等から出力される信号を取得して制御部12に供給される。
【0036】
制御部12は、CPU、メモリ等を有する。制御部12は、メモリに格納されるプログラムに従って、様々な処理を実行する。制御部12が実行する処理は後述する。
【0037】
端末側I/F16は、有線及び無線の少なくとも一方で、ユーザの端末200(例えばPC、携帯端末)等と通信可能に接続される。端末側I/F16は、制御部12から供給される情報を、端末側I/F16に接続されている端末200に送信する。
【0038】
(校正方法)
次いで、図4を参照して、電流特定装置10の校正方法を説明する。校正方法では、電流特定装置10を利用して、多芯電線4に流れる電流の電流値を特定するために、センサ部20から出力される信号を、電流値に変換するための変換式を校正する。校正方法では、まず、S10において、抵抗体50を多芯電線4に接続して配置する。図1に示すように抵抗体50は、対象機器2に対して並列に接続される。なお、変形例では、抵抗体50は、対象機器2と直列に接続されてもよい。
【0039】
抵抗体50は、負荷54と、電流センサ52と、を備える。負荷54は、多芯電線4を介して交流電源100から供給される電力によって通電される。負荷54は、交流電源100から通電される抵抗を有する。負荷54は、例えば、ユーザのPCであってもよいし、周囲に存在する家電機器、照明機器等であってもよい。電流センサ52は、負荷54に接続される電線に流れる電流の電流値を検出する。電流センサ52は、負荷54に接続される電線に直接的に接触して配置されていてもよい。電流センサ52は、負荷54に直列に接続されている。電流センサ52は、例えばトランスを有していてもよい。電流センサ52は、処理装置11のセンサ側I/F14に接続される。電流センサ52は、負荷54に流れる電流の電流値を、センサ側I/F14に出力する。
【0040】
多芯電線4と負荷54との間の電線には、スイッチ56が配置される。スイッチ56は、負荷54が多芯電線4を介して交流電源100に接続されるオン状態と、負荷54が交流電源100から切り離されるオフ状態と、に切り替わる。ユーザは、スイッチ56をオフ状態にセットして、抵抗体50を配置する。
【0041】
次いで、S12では、ユーザは、スイッチ56をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、多芯電線4を介して、交流電源100から対象機器2と抵抗体50との両者に通電される。ユーザは、端末側I/F16を介して処理装置11に接続される端末200を利用して、処理装置11に、校正パラメータを特定するための処理を実行させる。具体的には、ユーザは、端末200に、校正パラメータを特定するための処理を実行させるための所定の指示操作を実行する。端末200は、指示操作が実行されると、校正パラメータを特定するための処理を実行させるための指示を、処理装置11に送信する。
【0042】
端末側I/F16は、端末200からの指示を受信すると、制御部12に供給する。S14において、制御部12は、指示を取得すると、センサ部20で検知される検出値を、センサ側I/F14を介して取得する。これにより、交流電源100から対象機器2と抵抗体50とに電力が供給されている状態で、多芯電線4に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度に相関する検出値が取得される。
【0043】
次いで、S16において、制御部12は、電流センサ52から負荷54に流れる電流の電流値を取得する。なお、以下では、S14で取得される検出値によって表される磁界強度を参照磁界強度、S16で取得される電流値を参照電流値と呼ぶ。次いで、S18では、ユーザは、スイッチ56をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、交流電源100から多芯電線4を介して対象機器2に電力が供給される一方、抵抗体50には電力は供給されない。
【0044】
S20では、制御部12は、センサ部20で検知される検出値を、センサ側I/F14を介して取得する。これにより、交流電源100から対象機器2に電力が供給される一方、抵抗体50に電力が供給されていない状態で、多芯電線4に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度に相関する検出値が取得される。以下では、S20で取得される検出値によって表される磁界強度を、対象磁界強度と呼ぶ。図5には、参照磁界強度80及び対象磁界強度82の検出値の波形の一例を示す。参照磁界強度80の検出値は破線で表され、対象磁界強度82の検出値は実線で表される。
【0045】
参照磁界強度80と対象磁界強度82との差DTは、抵抗体50の参照電流値(以下「参照電流値X1」と呼ぶ)と相関している。次いで、S22では、制御部12は、特定パラメータを特定する。特定パラメータは、対象磁界強度82を用いて、スイッチ56がオフ状態、即ち、抵抗体50が交流電源100から多芯電線4を介して電力の供給を受けていない状態で、多芯電線4の対象電流値(以下「対象電流値X2」と呼ぶ)を特定するためのパラメータである。
【0046】
具体的には、制御部12は、参照電流値X1を、差DTで除算することによって、特定パラメータX1/DTを特定して、校正方法が完了する。ユーザは、抵抗体50を多芯電線4から取り外す。なお、変形例では、抵抗体50は、取り外されず、多芯電線4に接続された状態で設置されていてもよい。この場合、スイッチ56は、オフ状態に維持されていてもよく、抵抗体50を利用する際に、オフ状態からオン状態に切り替えてもよい。
【0047】
(電流特定方法)
次いで、電流特定方法を説明する。ユーザは、対象機器2に通電される電流値を特定することを希望する場合、端末200に、対象電流値を取得するための要求を処理装置11に送信するための操作を実行する。なお、変形例では、処理装置11が定期的に、又は、所定のタイミングで、自動的に電流値を特定してもよい。あるいは、処理装置11は、対象電流値を取得するための操作ボタン等を有していてもよい。
【0048】
制御部12は、電流値を特定すべき際に、センサ部20から対象磁界強度を取得する。次いで、制御部12は、対象磁界強度に、特定パラメータX1/DTを乗算することによって、対象電流値X2を特定する。次いで、対象電流値X2を表すデータを、端末側I/F16を介してユーザ端末に送信する。ユーザ端末は、処理装置11から取得された対象電流値X2を表すデータを取得すると、対象電流値X2を表示部に表示する。
【0049】
(効果)
電流特定装置10では、参照磁界強度と対象磁界強度との差DTと、対象磁界強度と、を用いて、対象機器2の使用時の対象電流値X2を特定することができる。これにより、磁気センサモジュール22と被覆6内の導体8aとの距離等を把握せずに、対象電流値X2を特定することができる。この結果、正確な電流値を特定するために、多芯電線4の被覆6を破壊せずに済む。また、交流電源100から対象機器2までの間に、交流電源100から通電されることによって電流を特定する電流計を配置せずに済む。
【0050】
上記の校正方法では、参照電流値X1を、電流センサ52から取得する。この構成によると、制御部12に、参照電流値X1を予め格納しなくて済む。この結果、抵抗体50として、ユーザが所有しているPC等の電気機器を使用することができる。なお、変形例では、参照電流値X1は、制御部12に予め格納されていてもよい。この場合、抵抗体50は、通電時の電流値が既知の装置であってもよい。
【0051】
電流特定装置10では、校正方法によって特定された特定パラメータを用いて、対象電流値X2を算出する。この構成によると、対象電流値X2を特定すべきタイミングで、参照電流値X1等を取得せずに済む。なお、変形例では、対象電流値X2を特定すべきタイミングで、図4に記載の校正方法を実行して、特定パラメータを特定してもよい。
【0052】
対象電流値X2を特定すべきタイミングでは、抵抗体50には通電されていない。これにより、対象電流値X2を特定すべきタイミングで抵抗体50に流れる電流の電流値を検出せずに済む。なお、変形例では、対象電流値X2を特定すべきタイミングで、抵抗体50に通電されていてもよい。この場合、抵抗体50に流れる電流の電流値は、参照電流値X1と異なる電流値X3であっていてもよい。さらに、この場合、特定パラメータは、|X1-X3|/DTであってもよい。
【0053】
電流特定装置10は、スイッチ56を備えているために、ユーザは、抵抗体50が交流電源100から通電されている状態と、通電されていない状態と、に容易に切り替えることができる。
【0054】
電流特定装置10は、図4の校正方法を実行することによって、特定パラメータを修正することができる。例えば、センサ部20の多芯電線4に対する取付位置が変化した場合、磁気センサモジュール22と導体8aとの位置関係が変化する可能性がある。この場合、センサ部20で検出される磁界強度と多芯電線4に流れる電流の電流値との相関関係が変化する。このような場合、ユーザは、校正方法を実行することによって、特定パラメータを修正することができる。これにより、特定パラメータを更新することができる。
【0055】
本明細書の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0056】
例えば、交流電源100は、例えば三相交流等、単相交流以外でもよい。この場合、多芯電線4は、交流電源100に合わせて2本以上の電線8が被覆6に覆われていてもよい。
【0057】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
2:対象機器、4:多芯電線、6:被覆、8:電線、8a:導体、8b:絶縁体、10:電流特定装置、11:処理装置、12:制御部、20:センサ部、22:磁気センサモジュール、24:基板、26:ホルダ、50:抵抗体、52:電流センサ、54:負荷、56:スイッチ
【要約】
【課題】 多芯電線の被覆の外側に取り付けられる磁界強度を検出するセンサを用いて、多芯電線に流れる電流の電流値を特定することができる技術を提供する。
【解決手段】 電流特定装置は、多芯電線の被覆の外側で多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出するセンサと、センサの検出結果を用いて、多芯電線の電流値を特定する制御部と、を備え、制御部は、交流電源から多芯電線を介して対象機器と抵抗体とに電力が供給されている参照状態において、センサによって検出される参照磁界強度と、交流電源から多芯電線を介して対象機器に電力が供給されており、交流電源から多芯電線を介して抵抗体の電流値が参照状態と異なる対象状態において、センサによって検出される対象磁界強度と、参照状態と対象状態とで抵抗体に流れる電流の差を示す参照電流値と、を用いて、対象状態において多芯電線の対象電流値を特定する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5