(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】窒化ホウ素粉末の撥水処理方法及び撥水コーティングされた窒化ホウ素
(51)【国際特許分類】
C01B 21/064 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
C01B21/064 M
(21)【出願番号】P 2021539544
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(86)【国際出願番号】 KR2020001867
(87)【国際公開番号】W WO2020166921
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0015706
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521036654
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ フュージョン エナジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ソン リュル
(72)【発明者】
【氏名】ソク、トン チャン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-063932(JP,A)
【文献】特開平11-256339(JP,A)
【文献】特開昭63-165461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/00-21/064
C08K 3/38,9/06
A61k 8/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素粉末をプラズマ発生領域に位置させ、前記プラズマ発生領域のプラズマに前記窒化ホウ素粉末を露出させてプラズマ処理することを含み、
前記プラズマはシリコン含有有機化合物のプラズマであり、
前記プラズマ処理によって、窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層が形成され、 撥水処理された前記窒化ホウ素粉末は非極性溶媒に混合されてコロイドを形成することを特徴とし、
前記シリコン含有有機化合物の溶液をバブラーを通じてキャリアガスとともにプラズマ発生領域に注入することをさらに含む、
窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
【請求項2】
前記シリコン含有有機化合物は、ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)またはトリメチルクロロシラン(trimethylchlorosilane、TMCS)であることを特徴とする、請求項
1に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
【請求項3】
前記撥水コーティング層の厚さは40nm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項
1に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
【請求項4】
前記撥水コーティング層はシリコン、炭素及び酸素を含み、前記撥水コーティング層は窒化ホウ素と化学的結合することを特徴とする、請求項
1に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
【請求項5】
前記撥水コーティング層は超音波洗浄後にも窒化ホウ素に残っていることを特徴とする、請求項
1に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化ホウ素粉末の撥水処理方法及び撥水コーティングされた窒化ホウ素に関し、より具体的には、前駆体としてシリコンが含有された有機化合物を利用して、これを気化させた雰囲気下で窒化ホウ素粉末をプラズマ処理して前記窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層を形成することにより、超音波洗浄後にも前記窒化ホウ素粉末に撥水コーティング層を形成することができる持続的な撥水特性を有する窒化ホウ素粉末の撥水処理方法及び撥水コーティングされた窒化ホウ素に関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用されている製品の素材は、製品の特性を向上させるために、大部分素材の表面に撥水性のような機能性層を形成して用いられる。素材表面の機能性層を形成することは実用的な応用分野において非常に重要な要素である。最近には、粉末粒子の表面に疎水性及び撥水性コーティングを処理して製品の耐久性及び安全性を向上させようとする研究が活発に行われている。
【0003】
粒子の表面のコーティングに利用することができる技術は、現在化学気相蒸着、ゾルゲル法及びプラズマ工程などが知られている。プラズマ工程は素材自体の特性を変形せずに保持しながら多様な材料に疎水性及び撥水性層を形成させることができる技術であり、前駆物質のような変数を調節して疎水性の程度及びコーティング層の厚さなどのような特性を容易に変化させることができる。
【0004】
現在、粒子の表面コーティングでコーティング前駆物質として広く用いられているヘキサメチルジシロキサン(hexamethyldisiloxane、HMDSO)はシラン基のようなシリコンが含まれた官能基を形成して撥水性コーティング層を形成することができる。また、コーティング過程で有害物質を発生せず、非常に優れた熱安定性を有していて、現在コーティング前駆物質として広く利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、シリコンが含まれた有機化合物を前駆体として利用して、プラズマ処理を通じて窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層を形成する窒化ホウ素粉末の撥水処理方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記方法で製造された撥水コーティングされた窒化ホウ素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一目的のための窒化ホウ素粉末をプラズマ処理することを含む窒化ホウ素粉末の撥水処理方法を提供する。
【0008】
一実施例において、前記方法は、窒化ホウ素粉末をプラズマが発生して被処理物に露出する領域であるプラズマ発生領域に位置させ、前記プラズマ発生領域のプラズマに前記窒化ホウ素粉末を露出させることを含むことができる。
【0009】
一実施例において、前記プラズマはシリコンが含まれたシリコン含有有機化合物のプラズマであり得る。
【0010】
一実施例において、前記シリコン含有有機化合物は、ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)またはトリメチルクロロシラン(trimethylchlorosilane、TMCS)であり得る
【0011】
一実施例において、前記プラズマ処理によって窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層が形成されることができる。
【0012】
一実施例において、前記撥水コーティング層の厚さは40nm以下の厚さであり得る。
【0013】
一実施例において、前記撥水コーティング層はシリコン、炭素及び酸素を含み、前記撥水コーティング層は前記窒化ホウ素と化学的結合することができる。
【0014】
一実施例において、前記撥水コーティング層は超音波洗浄後にも前記窒化ホウ素に残っていることがある。
【0015】
一実施例において、前記撥水処理された窒化ホウ素粉末は非極性溶媒に混合されてコロイドを形成することができる。
【0016】
一実施例において、前記方法は、気化されたシリコン含有有機化合物を前記プラズマ発生領域に注入するステップをさらに含むことができる。
【0017】
一実施例において、前記気化されたシリコン含有有機化合物の注入は前記シリコン含有有機化合物の溶液をバブラーを通じてキャリアガスとともに注入することを含むことができる。
【0018】
本発明の他の目的のためのシリコンが含まれたシリコン含有有機化合物のプラズマによって撥水コーティング層を含む窒化ホウ素であって、前記撥水コーティング層は前記窒化ホウ素と化学的結合されることを特徴とする撥水コーティングされた窒化ホウ素を提供する。
【0019】
一実施例において、前記撥水コーティング層の厚さは40nm以下の厚さであり得る。
【0020】
一実施例において、前記撥水コーティング層はシリコン、炭素及び酸素を含み、前記撥水コーティング層は前記窒化ホウ素と化学的結合することができる。
【0021】
一実施例において、前記撥水コーティング層は超音波洗浄後にも前記窒化ホウ素に残っていることがある。
【0022】
一実施例において、前記撥水処理された窒化ホウ素粉末は非極性溶媒に混合されてコロイドを形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法及び撥水コーティングされた窒化ホウ素によれば、気体相のシリコン含有有機化合物の雰囲気下で窒化ホウ素粉末をプラズマ処理することにより窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層が形成されて窒化ホウ素粉末の撥水性及び疎水性を付与することができる。また、形成された撥水コーティング層は窒化ホウ素粉末と化学的結合で形成されて超音波洗浄後にも前記窒化ホウ素に残っているので、持続的に撥水コーティングされた窒化ホウ素に撥水性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例による窒化ホウ素粉末の撥水処理のために用いる誘電体バリア放電プラズマ装置を例示する概略図である。
【
図2】本発明の一実施例による窒化ホウ素粉末の撥水処理方法を説明するための図面である。
【
図3】本発明の実施例1によって製造されたサンプル1の走査電子顕微鏡イメージを示した図面である。
【
図4】本発明の比較例1及び比較例2によって製造された比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれの走査電子顕微鏡イメージを示した図面である。
【
図5】本発明の比較例1及び比較例2によって製造された比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれの走査電子顕微鏡イメージを示した図面である。
【
図6】本発明の実施例1によって製造されたサンプル1の電界放射型透過電子顕微鏡イメージを示した図面である。
【
図7】本発明の比較例1及び比較例2によって製造された比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれの電界放射型透過電子顕微鏡イメージを示した図面である。
【
図8】本発明の比較例1及び比較例2によって製造された比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれの電界放射型透過電子顕微鏡イメージを示した図面である。
【
図9】本発明の実施例1によって製造されたサンプル1のEDAXマッピングイメージを示した図面である。
【
図10】本発明の比較例1及び比較例2によって製造された比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれのEDAXマッピングイメージを示した図面である。
【
図11】本発明の比較例1及び比較例2によって製造された比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれのEDAXマッピングイメージを示した図面である。
【
図12】本発明の実施例1、比較例1及び比較例2によって製造されたサンプルのXPSスペクトルを示した図面である。
【
図13】本発明の実施例1及び比較例2によって製造されたサンプルの分散評価結果を示したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。本発明は多様な変更を施すことができ、様々な形態を有することができる。特定の実施例を図面に例示して本文で詳しく説明する。しかしながら、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むことに理解されるべきである。各図面を説明する際に、類似する構成要素について類似する参照符号を用いた。
【0026】
本出願で用いた用語はただ特定の実施例を説明するために用いられたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明確に異なりに指称されない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」などの用語は明細書に記載された特徴、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはその以上の他の特徴やステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないことに理解されるべきである。
【0027】
異なりに定義されない限り、技術的/科学的用語を含めてここで用いられる全ての用語は本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義されているような用語は関連技術の文脈において有する意味と一致する意味を有することと解釈されるべきであり、本出願で明確に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味に解釈されてはならない。
【0028】
図1は本発明の一実施例による窒化ホウ素粉末の撥水処理のために用いるプラズマ処理処置における誘電体バリア放電(Surface Dielectric Barrier Discharge、以下、SDBDと称する)プラズマ装置を例示する概略図である。
図1で示すように、本発明の一実施例で用いることができるSDBDプラズマ装置100はプラズマ発生領域210に位置する被処理物300と、前記プラズマ発生領域210にガスを注入する第1注入口を含み、前記SDBDプラズマ装置100は絶縁体からなるチャンバ110と、前記チャンバ内に内部空間200を有し、前記内部空間200内に配置された誘電体層(Dielectric Layer)130と、前記誘電体層130の一面に置かれた第1電極140と、前記誘電体層の反対面に置かれた第2電極120とを含み、第2電極120はバー状に互いに離隔されて一つの方向に配列され、第1電極140及び第2電極120と連結されて二つの電極に電圧を印加する前記電圧印加手段160を含む。追加的に、前記SDBDプラズマ装置は冷却流体通路150を含むことができ、前記冷却流体通路に冷却流体が注入される第2注入口と、注入された冷却流体が流出される第2流出口とを含むことができる。
【0029】
図2は本発明の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法を説明するための図面である、
【0030】
図2を参照して、一実施例として、本発明の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法を以下のように説明する。
【0031】
本発明による窒化ホウ素粉末の撥水処理方法は、まず、前述したように構成されたプラズマ装置の内部に備えられた第1電極の上面に被処理物である窒化ホウ素粉末をプラズマ発生領域に位置させる。
【0032】
前記プラズマ装置の内部にシリコン含有有機化合物プラズマ雰囲気を形成するために、前記プラズマ発生領域に気化されたシリコン含有有機化合物を注入させる。前記気化されたシリコン含有有機化合物の注入は前記シリコン含有有機化合物の溶液をバブラーを通じてキャリアガスとともに第1注入口を通じて前記プラズマ発生領域に位置させる。この時、用いられるシリコン含有有機化合物はシリコンを含む炭素化合物であって、ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)またはトリメチルクロロシラン(trimethylchlorosilane、TMCS)であり得る。
【0033】
その次に、前記プラズマ装置内の第1電極及び第2電極に電圧を印加すれば、前記第2電極の周りにシリコン含有有機化合物プラズマが発生し、発生されたシリコン含有有機化合物プラズマは前記第1電極の上面に存在する前記窒化ホウ素粉末の間に存在する気孔に拡散され、前記拡散されたシリコン含有有機化合物プラズマは前記窒化ホウ素粉末の表面に疎水性特性を表すシリコンが含まれた官能基を形成することができる。例えば、前記シリコンが含まれた官能基はシラン基であり得る。
【0034】
上記のような方法で撥水コーティングされた窒化ホウ素は前記窒化ホウ素粒子及びその表面に撥水コーティング層が形成されており、前記撥水コーティング層はシリコン、炭素及び酸素を含み、前記窒化ホウ素と化学的結合をすることができる。また、撥水コーティング層は40nm以下の厚さを有してもよい。
【0035】
前記撥水コーティングされた窒化ホウ素は窒化ホウ素と撥水コーティング層の化学的結合で強い撥水性を有するので、超音波洗浄後にも撥水特性を失わずに、前記撥水コーティング層が窒化ホウ素に残り、前記撥水コーティングされた窒化ホウ素粉末を非極性溶媒に混合させると、凝集されずにコロイドを形成して良好に分散される。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例及び比較例を通じて本発明の撥水コーティングされた窒化ホウ素及び窒化ホウ素粉末の撥水処理方法についてより詳しく説明する。
【0037】
実施例1:窒化ホウ素粉末サンプル1の製造
【0038】
ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane、以下、HMDSOと称する)シリコン含有有機化合物及びN
2パージガス(N
2 purge gas)をキャリアガスとして利用して
図1のように構成されたプラズマ処理処置を利用して上述した窒化ホウ素粉末の撥水処理方法を通じてプラズマ処理して窒化ホウ素粉末サンプル1を得た。前記窒化ホウ素粉末サンプル1は「HMDSO bubbling(N
2)plasma-BN」と指称した。
【0039】
比較例1:窒化ホウ素粉末比較サンプル1の製造
【0040】
プラズマ処理しないことを除き、実施例1による撥水コーティングされた窒化ホウ素粉末サンプル1の製造工程と実質的に同じ工程を通じて窒化ホウ素粉末比較サンプル1を得た。窒化ホウ素粉末比較サンプル1は「HMDSO bubbling(N2)-BN」と指称した。
【0041】
比較例2:窒化ホウ素粉末比較サンプル2の製造
【0042】
何の処理もしていない純粋窒化ホウ素粉末比較サンプル2を用意した。純粋窒化ホウ素粉末比較サンプル2は「Untreated BN」と指称した。
【0043】
表面分析-1:走査電子顕微鏡イメージ
【0044】
上記で用意した実施例1、比較例1及び比較例2のそれぞれに対して、電界放出型走査電子顕微鏡(Gemini、Carl Zeiss Microscopy、ドイツ)を利用して3kVの加速電圧下で走査電子顕微鏡イメージを得た。その結果を
図3~
図5に示す。
【0045】
図3は本発明の実施例1による窒化ホウ素粉末サンプル1の走査電子顕微鏡イメージを示す。
【0046】
図3によれば、窒化ホウ素粉末をHMDSOバブリング(Bubbling)とプラズマ処理したサンプル1の表面にはある異物がついている形状を確認することができる。
【0047】
図4及び
図5は本発明の比較例1及び比較例2によって製造された窒化ホウ素粉末比較サンプル1及び窒化ホウ素粉末比較サンプル2のそれぞれの窒化ホウ素粉末走査電子顕微鏡イメージを示す。
【0048】
図4及び
図5を参照して、
図6と比較すれば、N
2ガスでHMDSO バブリング(Bubbling)のみ処理した窒化ホウ素粉末比較サンプル1と純粋窒化ホウ素粉末比較サンプル2の表面は比較的きれいな形態を表すことを確認することができる。
【0049】
表面分析-2:電界放射型透過電子顕微鏡イメージ
【0050】
上記で用意した実施例1、比較例1及び比較例2のそれぞれに対して、冷陰極型(Cold FEG)電界放射型透過電子顕微鏡(JEM-ARM200、JEOL USA、Inc.アメリカ)を利用して200kVの加速電圧下で電界放射型透過電子顕微鏡イメージを得た。その結果を
図6~
図8に示す。
【0051】
図6は本発明の実施例1による窒化ホウ素粉末サンプル1の電界放射型透過電子顕微鏡イメージを示す図面である。
図6の(a)、(b)、(c)及び(d)は順次に倍率が拡大された表面イメージを示す。
【0052】
図6によれば、窒化ホウ素粉末をHMDSOバブリング(Bubbling)とプラズマ処理した窒化ホウ素粉末サンプル1の表面に40nm以下の厚さを有する新しい層が形成されたことを確認することができる。
【0053】
図7及び
図8は本発明の比較例1及び比較例2によって製造された窒化ホウ素粉末比較サンプル1及び窒化ホウ素粉末比較サンプル2のそれぞれの窒化ホウ素粉末電界放射型透過電子顕微鏡イメージを示す。
【0054】
図7及び
図8を参照して、
図6と比較すれば、N
2ガスでHMDSO バブリング(Bubbling)のみ処理した窒化ホウ素粉末比較サンプル1と純粋窒化ホウ素粉末比較サンプル2の表面には新しい層が形成されていないことを確認することができる。
【0055】
表面分析-3:EDAXマッピングイメージ
【0056】
上記で用意した実施例1、比較例1及び比較例2のそれぞれに対して、電界放出型走査電子顕微鏡(Gemini、Carl Zeiss Microscopy、ドイツ)を利用して3kVの加速電圧下でEDAXマッピングイメージを得た。その結果を
図9~
図11に示す。
【0057】
図9は本発明の実施例1によるサンプル1のEDAXマッピングイメージを示す。
【0058】
図9によれば、窒化ホウ素粉末をHMDSOバブリング(Bubbling)とプラズマ処理したサンプル1の表面に存在する元素は、ホウ素(B)、窒素(N)以外にもシリコン(Si)、炭素(C)及び酸素(O)の元素がさらに存在することを確認することができる。シリコン(Si)は液相シリコン前駆体であるヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane、HMDSO)の使用に起因して現われたことと見られる。また、炭素(c)及び酸素(O)の存在により窒化ホウ素粉末とその表面に形成された層は化学的結合を通じて形成されたことと見られる。
図3及び
図6で現われた結果と一緒に説明すれば、HMDSOバブリング(Bubbling)とプラズマ処理した窒化ホウ素粉末サンプル1の表面に形成された層は撥水コーティング層が形成されたことと見られる。前記撥水コーティング層に存在するシリコン(Si)元素によって撥水特性を有することと見られる。
【0059】
図10及び
図11は本発明の比較例1及び比較例2によって製造された窒化ホウ素粉末比較サンプル1及び窒化ホウ素粉末比較サンプル2のそれぞれの窒化ホウ素粉末EDAXマッピングイメージを示す。
【0060】
図10及び
図11を参照して、
図9と比較すれば、N
2ガスでHMDSOバブリング(Bubbling)のみ処理した窒化ホウ素粉末比較サンプル1と純粋窒化ホウ素粉末比較サンプル2の表面にはただホウ素(B)、窒素(N)元素組成のみ存在することを確認することができる。
【0061】
これを通じて、比較サンプル1及び比較サンプル2のそれぞれの窒化ホウ素粉末の表面には撥水コーティング層が形成されていないことと見られる。
【0062】
特に、サンプル1と比べて比較サンプル1の結果を説明すれば、N2ガスでHMDSOバブリング(Bubbling)処理する方法だけでは窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層を形成することができないことと見られる。
【0063】
表面分析-4:XPS
【0064】
上記で用意した実施例1、比較例1及び比較例2のそれぞれに対して、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)(ESCA2000、VG microtech、UK)を利用して、X-線発生ソース物質としてツインアノード(Twin anode)Al K
a(1,486.6eV)及びMg K
a(1,253.6eV)を用いて13kVの電圧下でXPSスペクトルを測定した。その結果を
図12に示す。
【0065】
図12によれば、実施例1によるサンプル1のMDSOバブリング(N
2)プラズマ-BNはSi 2p及びSi 2sのピークを通じてSiの結合エネルギーが存在することを確認することができる。これを通じて、窒化ホウ素粉末とその表面に形成された撥水コーティング層が化学結合をして形成されたことと見られる。
【0066】
一方、比較例1及び比較例2による比較サンプル1及び比較サンプル2は、それぞれB1s及びN1sのピークのみ著しく現われるだけで、Si 2p及びSi 2sのピークは見えず、Siの結合はないことと見られる。
【0067】
分散評価
【0068】
上記で用意した実施例1及び比較例2に対して、非極性溶媒であるn-ヘキサン(n-Hexane)溶液に窒化ホウ素粉末サンプル1及び窒化ホウ素粉末サンプル2をそれぞれ添加して分散評価を実施した。その結果を
図13に示す。
【0069】
図13によれば、実施例1による窒化ホウ素粉末サンプル1の分散度を確認することができる
図13の(a)は、窒化ホウ素粉末サンプル1が互いに凝集されないコロイド状態でよく分散されている状態を確認することができる。
図13の(a)と違い、窒化ホウ素粉末サンプル2の分散状態を示した
図13の(b)は、窒化ホウ素粉末サンプル2が互いに凝集されて大粒状態で沈澱されていることを確認することができる。
【0070】
これを通じて、実施例1による窒化ホウ素粉末をHMDSOバブリング(Bubbling)とプラズマ処理したサンプル1の窒化ホウ素粉末の表面に形成された撥水コーティング層は撥水特性を有していることを確認することができる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における技術者は以下の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解すべきである。
本開示に係る態様には以下の態様も含まれる。
<1> 窒化ホウ素粉末をプラズマ処理することを含むことを特徴とする、窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<2> 前記方法は、窒化ホウ素粉末をプラズマ発生領域に位置させ、前記プラズマ発生領域のプラズマに前記窒化ホウ素粉末を露出させることを含むことを特徴とする、<1>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<3> 前記プラズマはシリコン含有有機化合物のプラズマであることを特徴とする、<1>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<4> 前記シリコン含有有機化合物は、ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)またはトリメチルクロロシラン(trimethylchlorosilane、TMCS)であることを特徴とする、<3>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<5> 前記プラズマ処理によって、窒化ホウ素粉末の表面に撥水コーティング層が形成されることを特徴とする、<4>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<6> 前記撥水コーティング層の厚さは40nm以下の厚さを有することを特徴とする、<5>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<7> 前記撥水コーティング層はシリコン、炭素及び酸素を含み、前記撥水コーティング層は前記窒化ホウ素と化学的結合することを特徴とする、<5>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<8> 前記撥水コーティング層は超音波洗浄後にも前記窒化ホウ素に残っていることを特徴とする、<5>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<9> 前記撥水処理された窒化ホウ素粉末は非極性溶媒に混合されてコロイドを形成することを特徴とする、<5>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<10> 前記方法は、気化されたシリコン含有有機化合物を前記プラズマ発生領域に注入するステップをさらに含むことを特徴とする、<3>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<11> 前記気化されたシリコン含有有機化合物の注入は、前記シリコン含有有機化合物の溶液をバブラーを通じてキャリアガスとともに注入することを含むことを特徴とする、<10>に記載の窒化ホウ素粉末の撥水処理方法。
<12> <3>によって撥水コーティング層を含む窒化ホウ素であって、前記撥水コーティング層は前記窒化ホウ素と化学的結合されることを特徴とする、撥水コーティングされた窒化ホウ素。
<13> 前記撥水コーティング層の厚さは40nm以下の厚さを有することを特徴とする、<12>に記載の撥水コーティングされた窒化ホウ素。
<14> 前記撥水コーティング層はシリコン、炭素及び酸素を含み、前記撥水コーティング層は前記窒化ホウ素と化学的結合をすることを特徴とする、<12>に記載の撥水コーティングされた窒化ホウ素。
<15> 前記撥水コーティング層は超音波洗浄後にも前記窒化ホウ素に残っていることを特徴とする、<12>に記載の撥水コーティングされた窒化ホウ素。
<16> 前記撥水処理された窒化ホウ素粉末は非極性溶媒に混合されてコロイドを形成することを特徴とする、<12>に記載の撥水コーティングされた窒化ホウ素。
【符号の説明】
【0072】
100:誘電体バリア放電プラズマ装置
110:チャンバ
120:第2電極
130:誘電体層
140:第1電極
150:冷却流体通路
160:電圧印加手段
200:内部空間
210:プラズマ発生領域
300:被処理物