IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マイクロ・テクニカの特許一覧

特許7199766生産設備におけるパーツ交換作業を支援するシステム、処理装置、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】生産設備におけるパーツ交換作業を支援するシステム、処理装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022093718
(22)【出願日】2022-06-09
【審査請求日】2022-06-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日: 令和3年7月12日 公開した場所: シオノギファーマ株式会社摂津工場及び尼崎事業所(〒566-0022 大阪府摂津市三嶋2-5-1及び〒660-0813 兵庫県尼崎市杭瀬寺島2-1-3) 公開日: 令和3年8月24日 公開した場所: マルホ株式会社 彦根工場(〒522-0201 滋賀県彦根市高宮町2763) 公開日: 令和3年9月3日 公開した場所: 第一三共プロファーマ株式会社及び三菱ケミカルエンジニアリング株式会社(〒254-0014 神奈川県平塚市四之宮1-12-1) 公開日: 令和3年10月14日 公開した場所: 全星薬品工業株式会社(〒596-0808 大阪府岸和田市三田町380) 公開日: 令和4年3月29日 公開した場所: グラクソ・スミスクライン株式会社 今市工場(〒321-1274 栃木県日光市土沢1506) 公開日: 令和4年5月20日 公開した場所: 武田薬品工業株式会社(〒743-8502 山口県光市大字光井字武田4720) 公開日: 令和4年5月24日 公開した場所: 大同薬品工業株式会社(〒639-2121 奈良県葛城市新村214-1)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592056687
【氏名又は名称】株式会社マイクロ・テクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(72)【発明者】
【氏名】遠山 正弘
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-142613(JP,A)
【文献】特開昭64-034629(JP,A)
【文献】特開2004-102482(JP,A)
【文献】特開2021-064356(JP,A)
【文献】特開2014-034042(JP,A)
【文献】特開2021-044416(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167445(WO,A1)
【文献】特開平06-043920(JP,A)
【文献】特開昭58-143944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23Q 41/00
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムであって、
各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを記憶する記憶装置と、
前記データを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させる処理装置と、
各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーと、
を備え、
前記処理装置は、
前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、
前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、
判定結果を前記表示装置に表示させる、
作業支援システム。
【請求項2】
前記差分パーツリストは、
直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせのうち、前記生産設備から取り外すべき1つ以上の取り外しパーツを示す取り外しパーツリストと、
次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせのうち、前記生産設備に新たに取り付けるべき1つ以上の取り付けパーツを示す取り付けパーツリストと、
を含む、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記取り外しパーツリストに含まれるか否かを判定し、前記パーツが前記取り外しパーツリストに含まれる場合、表示される前記取り外しパーツリストに前記パーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する、請求項2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記取り付けパーツリストに含まれるか否かを判定し、前記パーツが前記取り付けパーツリストに含まれる場合、表示される前記取り付けパーツリストに、前記パーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する、請求項2に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記処理装置は、前記画像に基づいて、前記スケールまたはインジケータの数値を認識し、認識した前記数値に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する、請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記生産設備には位置合わせ用のマーカーが設けられ、
前記処理装置は、前記位置合わせパーツおよび前記マーカーを前記カメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記マーカーに対する前記位置合わせパーツの相対位置を計測し、前記相対位置に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する、
請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項7】
前記カメラをさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項8】
前記カメラを含むスマートグラスをさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項9】
前記スマートグラスは、前記表示装置をさらに含む、請求項に記載の作業支援システム。
【請求項10】
パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムにおいて用いられる処理装置であって、
各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、
前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させ、
各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、
前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、
判定結果を前記表示装置に表示させる、
処理装置。
【請求項11】
パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する方法であって、
各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定するステップと、
前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させるステップと、
各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定するステップと、
前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定するステップと、
判定結果を前記表示装置に表示させるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備におけるパーツ交換作業を支援するシステム、処理装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーツの組み合わせを変更することによって複数の品種の製品の生産が可能な生産設備が知られている。そのような生産設備の例として、医薬品(例えば錠剤またはカプセル剤等)の包装ラインにおける包装機が挙げられる。包装ラインでは単一品種の製造は少なく、複数の品種を同一の設備で生産することが一般的であり、設備のパーツは品種ごとに異なることが多い。
【0003】
一方、製品の生産ラインにおいて、進捗管理または品質管理のために、RFID(Radio Frequency Identification)またはバーコードが一般的に使用されている。例えば、特許文献1は、RFIDおよびバーコードを用いて製品の進捗管理および品質管理を行う生産管理システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-90595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーツの組み合わせを変更することによって複数品種の製品の生産が可能な生産設備においては、品種の切り替え時に、取り外すパーツと新たに取り付けるパーツの確認作業が必要である。また、パーツが適正な位置に取り付けられているかを、マシンスケールやデジタルポジションインジケータ等の計測機器を用いて確認する作業が行われることもある。これらの作業を作業者の目視や手作業に頼ってしまうと、間違ったパーツを取り付けたり、パーツを不適切な位置に取り付けたりするといったヒューマンエラーが生じ得る。結果として、部品破損または製品異常等のトラブルが発生する可能性がある。
【0006】
本開示は、生産される品種の切り替え時におけるパーツ交換作業を支援する新規なシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による作業支援システムは、パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援するシステムである。各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付される。前記システムは、記憶装置と、処理装置と、リーダーとを備える。前記記憶装置は、生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを記憶する。前記処理装置は、前記データを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させる。前記リーダーは、各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取る。前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、判定結果を前記表示装置に表示させる。
【0008】
本発明の包括的または具体的な態様は、装置、システム、集積回路、コンピュータプログラム、記録媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、品種の切り替え時における生産設備のパーツ交換を適切に実行することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備の一例を示す図である。
図2】交換パーツの例を示す図である。
図3】作業支援システムの概要を示す図である。
図4】作業支援システムの構成例を示すブロック図である。
図5】品種とパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータの一例を示す図である。
図6】処理装置による処理の例を示すフローチャートである。
図7A】取り付けパーツリストの一例を示す図である。
図7B】取り外しパーツリストの一例を示す図である。
図8A】パーツの識別子の読み取り作業を説明するための第1の図である。
図8B】パーツの識別子の読み取り作業を説明するための第2の図である。
図8C】パーツの識別子の読み取り作業を説明するための第3の図である。
図9A】取り付けパーツリストの他の例を示す図である。
図9B】取り外しパーツリストの他の例を示す図である。
図10】スケールやインジケータが取り付けられた生産設備の例を示す図である。
図11A】スケールの例を示す図である。
図11B】インジケータの例を示す図である。
図12A】OCRによってインジケータの数値が認識される例を示す図である。
図12B】OCRによってスケールの数値が認識される例を示す図である。
図12C】マーカーの位置情報を利用してパーツの取り付け位置が適正か否かを判定する方法の例を示す図である。
図13】品種ごとの各パーツの適正位置を記録したデータの例を示す図である。
図14】カメラによって生成された画像データに基づいてパーツの取り付け位置が適正であるかを判定する処理の例を示すフローチャートである。
図15】パーツの詳細情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略することがある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。本明細書においては、同一のまたは類似する構成要素には、同一の参照符号を付している。
【0012】
図1は、パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備の一例を示している。図1に示す生産設備500は、医薬品(例えば錠剤またはカプセル剤等)の包装ラインで用いられる包装機である。生産設備500は、10~20種類程度の品種に対応しており、100個程度のパーツが取り付けられる。生産される製品の品種に応じて、パーツの組み合わせが異なる。生産される品種を変更する場合、パーツの一部が交換される。例えば、約100個のパーツのうち、3~15個程度が交換され得る。生産される品種の変更に伴って一部のパーツの交換を行うことを、以下の説明において「型替え」と呼ぶことがある。
【0013】
パーツを交換する作業の前に、新たに取り付けられるパーツの準備が行われる。例えば、パーツの保管庫から、新たに取り付られるパーツが取り出され、トレイ上に置かれ、取り付け作業が行われる現場に運ばれる。図2は、トレイ600上に置かれたパーツの例を示している。これらのパーツが、生産設備500における一部のパーツと交換される。
【0014】
このような型替え作業において、生産設備500から取り外されるパーツと、新たに取り付けられるパーツとを間違えることなく、正確に交換作業が行われることが必要である。そこで、本実施形態では、各パーツに、パーツの識別子が記録されたRFIDタグ、または一次元もしくは二次元のコードが取り付けられ、これらを利用してパーツ交換の管理が行われる。一次元コードの例として、バーコードが挙げられる。二次元コードの例として、QRコード(登録商標)またはDataMatrix(登録商標)が挙げられる。各パーツには、RFIDタグおよびコードの一方または両方が取り付けられる。型替え作業の際には、取り外されるパーツと、新たに取り付けられるパーツのそれぞれに付されたRFIDタグまたはコードに記録されたパーツの識別子をリーダーで読み取る作業が行われる。リーダーによって読み取られた情報に基づいて、交換されるパーツが正しいか否かがチェックされる。
【0015】
パーツによっては、取り付け位置が生産品種によって異なることがある。パーツの取り付け位置が正しいか否かは、例えばマシンスケールまたはデジタルポジションインジケータ等の計測機器を用いて確認される。従来、パーツの取り付け位置が正しいか否かは、作業者による目視によって行われていた。しかし、作業者による目視に頼ると、ヒューマンエラーによってパーツが誤った位置に取り付けられる可能性があった。
【0016】
そこで、本実施形態においては、パーツを取り付けた状態をカメラで撮影し、撮影された画像に基づいてパーツの取り付け位置が適正であるか否かを自動で判定するシステムが導入される。そのようなシステムを導入することにより、パーツの取り付け位置が不適切な状態で製品が生産されることを防止し、部品破損または製品異常等のトラブルを未然に防止することができる。
【0017】
図3は、本実施形態における作業支援システムの概要を示す図である。図3に示す生産設備500における複数のパーツの各々には、RFIDタグまたはQRコードが付されている。この作業支援システムには、RFIDタグまたはQRコードに記録されたパーツの識別子を読み取る1台以上のリーダー100と、1台以上のスマートグラス200と、ホストコンピュータ300とが含まれる。リーダー100およびスマートグラス200の各々は、アクセスポイント等の通信機器を介して、ホストコンピュータ300と無線で通信することができる。
【0018】
リーダー100は、例えばRFIDハンディスキャナ、QRコードリーダー、またはPDA(Personal Digital Assistant)等の読取装置である。リーダー100は、パーツに付されたRFIDタグまたはQRコードに記録されたパーツの識別子を読み取り、ホストコンピュータ300に当該識別子を送信する。この例では、QRコードが用いられているが、バーコード等の他の種類のコードが用いられてもよい。また、この例ではRFIDタグとコードの両方が用いられているが、RFIDタグとコードの一方のみが用いられてもよい。
【0019】
スマートグラス200は、カメラおよびディスプレイを内蔵する眼鏡型の情報機器である。スマートグラス200は、作業者によって着用され、パーツ交換の作業中、撮影した映像をホストコンピュータ300に送信する。スマートグラス200はまた、パーツ交換を支援する様々な情報を表示することもできる。例えば、ホストコンピュータ300から送信された画像をスマートグラス200に表示することができる。表示される情報には、例えば、パーツの取り付け位置、パーツの詳細情報、またはパーツが適切に取り付けられたか否か等の情報が含まれ得る。なお、スマートグラス200に代えて、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末等の他の撮影が可能な装置を用いて撮影が行われてもよい。
【0020】
図3に示すように、生産設備500には、1つ以上のマシンスケール520、および/または、1つ以上のデジタルポジションインジケータ510が設けられ得る。マシンスケール520およびデジタルポジションインジケータ510は、パーツの位置を生産品種に応じて定められた適正な位置に合わせるために使用される。
【0021】
ホストコンピュータ300は、パーツ交換作業を管理するコンピュータである。ホストコンピュータ300は、リーダー100およびスマートグラス200から送信されたデータに基づく処理を実行する。
【0022】
次に、図4を参照しながら、作業支援システムの構成をより詳細に説明する。
【0023】
図4は、作業支援システムの構成例を示すブロック図である。図4に示す作業支援システムは、QRコードリーダー100Aと、RFIDリーダー100Bと、スマートグラス200Bと、表示装置400と、ホストコンピュータ300とを備えている。QRコードリーダー100AおよびRFIDリーダー100Bは、図3に示すリーダー100の例である。QRコードリーダー100AおよびRFIDリーダー100Bの両方の機能を備えた1台のリーダー(例えばPDA)が用いられてもよい。スマートグラス200は、カメラ210を備えている。表示装置400は、例えば液晶または有機LED等のディスプレイを含む装置である。表示装置400は、リーダー100A、100B、またはスマートグラス200に内蔵されていてもよいし、ホストコンピュータ300に接続されていてもよい。
【0024】
ホストコンピュータ300は、入出力インターフェース(I/F)310と、記憶装置320と、処理装置330と、通信装置340とを備えている。入出力I/F310は、外部の入力装置および出力装置との間で信号のやり取りを行うデバイスである。記憶装置320は、例えば半導体記憶装置(例えばメモリ)、磁気記憶装置、または光学記憶装置を含む。記憶装置320は、処理装置330によって実行されるコンピュータプログラム、および処理装置330によって生成される各種のデータを記憶する。処理装置330は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。通信装置340は、リーダー100A、100B、スマートグラス200、表示装置400等の外部の機器との間で有線または無線の通信を行う通信モジュールである。
【0025】
本実施形態では、記憶装置320は、生産される物品の種類(製品の品種)と、当該品種を生産するために生産設備500に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを記憶する。
【0026】
図5は、品種とパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータの一例を示す図である。記憶装置320には、図5に示すようなテーブル形式のデータが予め記録される。このデータは、型替えの際に取り外されるパーツと新たに取り付けられるパーツとを決定する処理において参照される。
【0027】
図6は、処理装置330による処理の例を示すフローチャートである。本実施形態における処理装置330は、図6に示すステップS101からS109の処理を実行することにより、パーツの交換作業を支援する。
【0028】
ステップS101において、処理装置330は、直近に生産された品種と、次に生産される品種の情報を取得する。直近に生産された品種と、次に生産される品種の情報は、例えば作業者または管理者がホストコンピュータ300に有線または無線で接続された入力装置を用いた操作によって入力され得る。
【0029】
ステップS102において、処理装置330は、品種とパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された品種に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される品種に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定する。具体的には、処理装置330は、図5に示すデータを参照して、直近に生産された品種に対応するパーツのうち、生産設備500から取り外すべきパーツと、次に生産される品種に対応するパーツのうち、新たに生産設備500に取り付けるべきパーツとを決定する。
【0030】
ステップS103において、処理装置330は、差分パーツリストを生成する。差分パーツリストは、直近に生産された品種に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される品種に対応するパーツの組み合わせとの差分を示す。本実施形態における差分パーツリストは、「取り外しパーツリスト」と、「取り付けパーツリスト」とを含む。取り外しパーツリストは、直近に生産された品種に対応するパーツの組み合わせのうち、生産設備500から取り外すべき1つ以上の取り外しパーツを示すリストである。取り付けパーツリストは、次に生産される品種に対応するパーツの組み合わせのうち、生産設備500に新たに取り付けるべき1つ以上の取り付けパーツを示すリストである。
【0031】
ステップS104において、処理装置330は、差分パーツリストを表示装置400に表示させる。表示装置400は、例えば作業者が使用するリーダー100等の携帯端末、またはスマートグラス200に搭載され得る。処理装置330は、取り付けパーツリストおよび取り外しパーツリストのそれぞれを表示装置400に表示させる。
【0032】
図7Aは、表示される取り付けパーツリストの一例を示している。図7Bは、表示される取り外しパーツリストの一例を示している。この例のように、各リストには、次に生産される品種の情報と、取り付けるべきパーツまたは取り外されるパーツの情報とが含まれる。
【0033】
図8Aおよび図8Bは、取り付けパーツリストおよび取り外しパーツリストを参照して行われるパーツの識別子の読み取り作業を説明するための図である。図8Aに示すように、作業者は、取り付けパーツリストを見ながら、必要なパーツを保管庫700から取り出し、台車のトレイ600上にそれらのパーツを置き、生産設備500の近くまで運ぶ。作業者は、トレイ600上の各パーツのQRコードまたはRFIDをリーダー100で読み取る作業を行う。また、図8Bに示すように、作業者は、生産設備500から取り外すパーツについても同様に、QRコードまたはRFIDをリーダー100で読み取る作業を行う。リーダー100は、読み取った各パーツの識別子をホストコンピュータ300に送信する。
【0034】
なお、図8Aおよび図8Bには、各パーツに付されたQRコードがリーダー100(例えばPDA)によって読み取られる様子が例示されている。QRコードに代えて、他の種類のコード(例えばバーコードまたはDataMatrix等)が各パーツに付されていてもよい。また、図8Cに示すように、各パーツにRFIDタグが付されている場合、リーダー100は、RFIDタグを読み取ってもよい。
【0035】
図6に示すステップS105において、処理装置330は、リーダー100からパーツの識別子を受信したか否かを判定する。識別子を受信するまで、ステップS105が繰り返される。識別子を受信すると、ステップS106に進む。
【0036】
ステップS106において、処理装置330は、受信した識別子に対応するパーツの情報が差分パーツリストに含まれるか否かを判定する。より具体的には、処理装置330は、受信した識別子が示すパーツの情報が、取り付けパーツリストおよび取り外しパーツリストのいずれかに含まれるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、ステップS107に進む。判定結果がNoの場合、ステップS108に進む。
【0037】
ステップS107において、処理装置330は、その識別子が示すパーツの読み取りが完了したことを表示装置400に表示する。例えば、図7Aおよび図7Bに示すように、取り付けパーツリストまたは取り外しパーツリストにおける読み取りが完了したパーツの欄に、○印を付けるなどして、読み取りが完了したことを表示する。その後、ステップS109に進む。
【0038】
ステップS108において、処理装置330は、エラーメッセージを表示装置400に表示する。例えば、図7Aおよび図7Bの右上に示すように、リストに含まれないパーツの読み取りが行われた場合、「NG」欄にそのパーツの名称または番号を表示し、作業者に警告する。その後、ステップS109に進む。
【0039】
ステップS109において、処理装置330は、差分パーツリストに含まれる全てのパーツの読み取りが完了したか否かを判定する。全てのパーツの読み取りが完了した場合、その旨を示す情報を表示装置400に表示して処理を終了する。まだ読み取りが完了していないパーツがある場合、ステップS105に戻る。全てのパーツの読み取りが完了するまで、ステップS105からS109の処理が繰り返される。
【0040】
以上のように、処理装置330は、リーダー100によってパーツの識別子が読み取られる度に、そのパーツが差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、判定結果を表示装置400に表示させる。より具体的には、処理装置330は、リーダー100によってパーツの識別子が読み取られる度に、そのパーツが取り外しパーツリストに含まれるか否かを判定し、そのパーツが取り外しパーツリストに含まれる場合、表示される取り外しパーツリストにそのパーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する。また、処理装置330は、リーダー100によってパーツの識別子が読み取られる度に、そのパーツが取り付けパーツリストに含まれるか否かを判定し、そのパーツが取り付けパーツリストに含まれる場合、表示される取り付けパーツリストに、そのパーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する。
【0041】
このような処理により、作業者は、取り付けパーツリストに含まれる全てのパーツ、および取り外しパーツリストに含まれる全てのパーツの読み取りが完了したことを確認した上で、パーツの交換作業を行うことができる。これにより、生産設備500からパーツを間違って取り外したり、生産設備500にパーツを間違って取り付けたりする等のヒューマンエラーを抑制することができる。結果として、部品破損または製品異常等のトラブルを予防することができる。
【0042】
本実施形態において、処理装置330は、取り付けパーツの準備の完了と取り付けの完了の両方を管理するように構成されていてもよい。例えば、取り付けパーツのコードまたはRFIDの読み取りは、取り付けパーツを生産設備500に取り付ける前(準備段階)と、取り付けた後の両方で行われてもよい。その場合、取り付けパーツリストは、例えば図9Aに示す情報を含み得る。図9Aの例では、取り付けパーツリストは、各パーツの準備が完了したか否か、および各パーツの取り付けが完了したか否かを示す情報を含む。処理装置330は、取り付け前にパーツの読み取りが行われると、「準備」の欄に○印を追加して表示装置400に表示させる。全てのパーツの準備段階での読み取りが完了した後、パーツの取り付けが行われる。パーツが取り付けられた後、コードまたはRFIDの読み取りが行われると、処理装置330は、「取付」の欄に○印を追加して表示装置400に表示させる。このような動作により、作業者によってパーツが正しく取り付けられたことが確認できるため、取付作業のミスを防止することができる。
【0043】
処理装置330は、生産設備500からパーツが取り外されたことだけでなく、保管庫700に戻されたことまで管理してもよい。その場合、取り外しパーツのコードまたはRFIDの読み取りは、パーツを生産設備500から取り外した後と、パーツを保管庫700に収納した後の両方で行われる。その場合の取り外しパーツリストは、例えば図9Bに示す情報を含み得る。図9Bの例では、取り外しパーツリストは、各パーツの取り外しが完了したか否か、および各パーツの保管庫700への収納が完了したか否かを示す情報を含む。処理装置330は、取り外し後(または取り外すとき)にパーツの読み取りが行われると、「取外」の欄に○印を追加する。全てのパーツの取り外しが完了した後、パーツが保管庫700に収納される。パーツが収納された後(または収納されるとき)、そのパーツのコードまたはRFIDの読み取りが行われると、「収納」の欄に○印を追加する。このような動作により、取り外されたパーツが保管庫700に確実に戻されたか否かを管理することができる。
【0044】
次に、スマートグラス200を用いてパーツ交換作業を支援する方法の例を説明する。
【0045】
生産設備500に取り付けられる複数のパーツの中には、生産される製品の品種によって取り付け位置が異なるパーツが含まれ得る。そのようなパーツを、本明細書において「位置合わせパーツ」と呼ぶ。そのようなパーツの位置合わせを行うために、生産設備500には、マシンスケールまたはデジタルポジションインジケータ等の計測機器が設けられ得る。位置合わせパーツは、それらの計測機器の近傍に取り付けられる。以下の説明において、マシンスケールを単に「スケール」と呼び、デジタルポジションインジケータを単に「インジケータ」と呼ぶことがある。
【0046】
図10は、スケールやインジケータが取り付けられた生産設備500の例を示している。図10において点線の円で囲まれた複数の箇所にスケールまたはインジケータが取り付けられている。パーツの交換作業中、パーツと、スケールまたはインジケータとが、スマートグラス200のカメラ210で撮影され、その画像がホストコンピュータ300に送られる。
【0047】
図11Aは、スケールの例を示している。図11Bは、インジケータの例を示している。スケールは、基準位置からパーツの特定の部位までの長さを計測するための目盛りを有する。スケールは、目盛りに加えて長さを表示するための数字を含むこともある。インジケータは、基準位置からパーツの特定の部位までの長さを数値で表示する表示部を有する。作業者は、パーツを取り付けた後、スケールの目盛りもしくは数値、またはインジケータの数値を見ながら、パーツの位置が生産品種に応じた正しい位置にあるか否かを確認する。各パーツの正しい位置は、例えば表示装置400に表示される取り付けパーツリストにおける個々のパーツの欄を作業者が選択することによって表示されてもよい。
【0048】
本実施形態では、作業者は、スマートグラス200を着用して、パーツの位置の確認作業を行う。作業中、スマートグラス200のカメラ210は、位置合わせパーツと、スケールまたはインジケータとを含む領域を撮影する。撮影によって取得された画像は、ホストコンピュータ300に送られる。ホストコンピュータ300の処理装置330は、カメラ210によって取得された画像に基づいて、位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する。処理装置330は、判定結果を表示装置400に表示させる。表示装置400は、例えばスマートグラス200のディスプレイであってもよい。その場合、スマートグラス200に判定結果が表示される。
【0049】
処理装置330は、カメラ210によって取得された画像に基づいて、スケールまたはインジケータの数値を認識し、認識した数値に基づいて、位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定することができる。数値の認識には、例えばOCR(Optical Character Recognition)技術が用いられ得る。処理装置330は、例えば公知のOCRのソフトウェアを利用して、画像中の数値を認識することができる。数値の認識には、深層学習等の機械学習(AI技術)が利用されてもよい。
【0050】
図12Aは、OCRによってポジションインジケータ510の数値が認識される例を示す図である。この例では、処理装置330は、撮影された画像から、数字を含む領域(図中の枠内の領域)を検出し、OCR処理を行って数値を認識する。図12Aの例では、インジケータ510が示す数値が「00101」であることが認識される。処理装置330は、認識した数値と、予め記憶装置320に記録されたデータとを照合して、パーツの位置が適正であるか否かを判定する。
【0051】
図13は、予め記憶装置320に記録されたデータの一例を示している。このデータは、それぞれの品種に対応する複数のパーツのそれぞれの適正位置の情報を含む。適正位置の数値は、基準位置からそのパーツの特定の部位までの距離(または長さ)を示す。このようなデータを参照することで、処理装置330は、認識した数値が、適正位置を示す数値に一致するか否かを判定することができる。なお、認識した数値が適正位置を示す数値に完全に一致していない場合でも、その誤差が許容範囲内であればそのパーツが適正位置にあると判定される。
【0052】
図12Bは、OCRを利用してマシンスケール520の数値が認識される例を示す図である。この例では、位置合わせパーツ530に、位置合わせのための目印531が付されている。処理装置330は、撮影された画像から、目印531を含む領域(図中の矩形枠内の領域)を検出する。処理装置330は、その領域内でOCR処理を行い、スケール520の数値を認識する。処理装置330は、認識した数値と、目盛りの位置と、目印531の位置とに基づいて、基準位置(例えばスケールの原点)から目印531の位置までの距離を検出する。図12Bの例では、「42」という数値が認識される。処理装置330は、認識した数値と、予め記憶装置320に記録されたデータ(図13参照)とを照合して、パーツの位置が適正であるか否かを判定する。
【0053】
図12Cは、パーツ530の位置が適正であるかを判定する方法の他の例を示す図である。この例では、生産設備500に位置合わせ用のマーカー522が設けられている。図12Cに示すマーカー522は、スケール520の原点の近傍に設けられており、基準位置を示す。図12Cの例では、位置合わせパーツ530にもマーカー532が設けられている。マーカー522、532は、QRコードであり、それぞれの位置情報が記録されている。マーカー522、532は、QRコードに限らず、目印になり得る他のマークでもよい。QRコードまたはバーコード等のコードをマーカーとして用いた場合、位置情報を記録できるので、有用である。
【0054】
処理装置330は、基準位置を示すマーカー522と、パーツ530におけるマーカー532とをカメラ210で撮影することによって取得された画像に基づいて、マーカー522に対するパーツ530の相対位置を計測する。例えば、マーカー522、532(図示される例ではQRコード)に記録された位置情報の差分に基づいて、相対位置を計測することができる。処理装置330は、当該相対位置に基づいて、パーツ530の位置が適正であるか否かを判定することができる。
【0055】
図14は、カメラ210によって生成された画像データに基づいてパーツの取り付け位置が適正であるかを判定する処理の例を示すフローチャートである。図14に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートにおけるステップS104の後、ステップS105からS109と並行して実行され得る。図14の例では、処理装置330は、ステップS121においてリーダー100からパーツの識別子を受信すると、ステップS122に進み、スマートグラス200におけるカメラ210から画像データを受信したか否かを判定する。画像データを受信すると、ステップS123に進み、処理装置330は、画像データに基づいて当該パーツの取り付け位置を推定する。取り付け位置の推定は、例えば前述した図12Aから図12Cのいずれかの方法で行われる。続くステップS124において、処理装置330は、取り付け位置が適正か否かを判定する。取り付け位置が適正か否かは、例えば図13に示すデータを参照し、取り付け位置と適正位置との差が閾値以下であるか否かを判定することによって行われ得る。取り付け位置が適正である場合、処理装置330は、その旨を示す情報を表示装置400に表示させ、記憶装置320に記録する。その後、ステップS127に進む。取り付け位置が適正でない場合、エラーメッセージを表示装置400に表示させ、ステップS124に戻る。ステップS127において、処理装置330は、全ての取り付けパーツの位置が適正であるか否かを判定する。全ての取り付けパーツの位置が適正である場合、処理を終了する。ステップS121からS126の処理が、ステップS127においてYesと判定されるまで繰り返される。
【0056】
図14に示す処理によれば、各取り付けパーツが生産設備500に取り付けられたことだけでなく、各パーツの取り付け位置が適正であることも自動で確認することができる。これにより、作業精度および作業効率をさらに向上させることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、生産される製品の品種に応じて生産設備500に取り付けられるパーツがコード(例えばQRコード)またはRFIDを利用して管理される。パーツの「準備」、「取り外し」、「取り付け」、「スケールまたはインジケータを用いたパーツの位置合わせ」等の各作業を行う上で必要な情報を作業者に提供し、作業が適切に行われたか否かを表示画像で確認させることができる。これにより、パーツの取り付けや取り外しのミスを防止し、パーツの破損や製品の異常の発生を抑制することができる。さらに、コードまたはRFID情報と、画像データでの照合とを組み合わせることにより、パーツ交換の確認作業の精度および作業効率を向上させることができる。また、スマートグラス200を用いて撮影を行いながら作業を行うことにより、利便性を向上させることができる。
【0058】
QRコードやRFIDは、各パーツに付与されるだけでなく、生産設備500に付与されてもよい。例えば、生産設備500においてパーツが取り付けられる箇所の近傍にQRコードやRFIDが付与されてもよい。その場合、例えば、作業者がパーツのコードまたはRFIDの読み取りを行い、かつ生産設備500におけるコードまたはRFIDの読み取りも行った場合に、処理装置330が当該パーツの取り付けが正常に行われたと判定してもよい。
【0059】
処理装置330は、差分パーツリストに加えて、各パーツの詳細情報を表示装置400に表示させる機能を有していてもよい。例えば、作業者が表示装置400に表示される差分パーツリストにおける個々のパーツを選択すると、処理装置330は、図15に示すように、そのパーツの詳細情報(例えば、写真、品種名、パーツ名、収納場所等)を表示装置400に表示させてもよい。これにより、作業者は、パーツを取り付ける位置や、保管庫700におけるパーツの収納位置を容易に知ることができ、作業効率を向上させることができる。
【0060】
以上の実施形態では、錠剤またはカプセル剤等の医薬品の生産設備に本発明が適用されているが、他の種類の製品を生産する生産設備に本発明が適用されてもよい。例えば、工業製品、食品、衣類、その他の生産設備に本発明が適用されてもよい。
【0061】
また、スマートグラス等のカメラを搭載した機器で撮影した画像に基づいて各パーツの位置が適正であるかを判定する機能は、必要に応じて設けられる。当該機能を備えない作業支援システムを構築することも可能である。
【0062】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の作業支援システム、処理装置、および方法を含む。
【0063】
[項目1]
パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムであって、
各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを記憶する記憶装置と、
前記データを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させる処理装置と、
各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーと、
を備え、
前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、判定結果を前記表示装置に表示させる、
作業支援システム。
【0064】
[項目2]
前記差分パーツリストは、
直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせのうち、前記生産設備から取り外すべき1つ以上の取り外しパーツを示す取り外しパーツリストと、
次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせのうち、前記生産設備に新たに取り付けるべき1つ以上の取り付けパーツを示す取り付けパーツリストと、
を含む、項目1に記載の作業支援システム。
【0065】
[項目3]
前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記取り外しパーツリストに含まれるか否かを判定し、前記パーツが前記取り外しパーツリストに含まれる場合、表示される前記取り外しパーツリストに前記パーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する、項目2に記載の作業支援システム。
【0066】
[項目4]
前記処理装置は、前記リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記取り付けパーツリストに含まれるか否かを判定し、前記パーツが前記取り付けパーツリストに含まれる場合、表示される前記取り付けパーツリストに、前記パーツの読み取りが完了したことを示す情報を付加する、項目2に記載の作業支援システム。
【0067】
[項目5]
前記複数のパーツは、前記生産設備に設けられた位置合わせ用のスケールまたはインジケータの近傍に取り付けられる1つ以上の位置合わせパーツを含み、
前記処理装置は、前記位置合わせパーツと、前記スケールまたは前記インジケータとをカメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定し、判定結果を前記表示装置に表示させる、
項目1から4のいずれかに記載の作業支援システム。
【0068】
[項目6]
前記処理装置は、前記画像に基づいて、前記スケールまたはインジケータの数値を認識し、認識した前記数値に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する、項目5に記載の作業支援システム。
【0069】
[項目7]
前記生産設備には位置合わせ用のマーカーが設けられ、
前記処理装置は、前記位置合わせパーツおよび前記マーカーを前記カメラで撮影することによって取得された画像に基づいて、前記マーカーに対する前記位置合わせパーツの相対位置を計測し、前記相対位置に基づいて、前記位置合わせパーツの位置が適正であるか否かを判定する、
項目5に記載の作業支援システム。
【0070】
[項目8]
前記カメラをさらに備える、項目5に記載の作業支援システム。
【0071】
[項目9]
前記カメラを含むスマートグラスをさらに備える、項目5に記載の作業支援システム。
【0072】
[項目10]
前記スマートグラスは、前記表示装置をさらに含む、項目9に記載の作業支援システム。
【0073】
[項目11]
パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する作業支援システムにおいて用いられる処理装置であって、
各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、
前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させ、
各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、
判定結果を前記表示装置に表示させる、
処理装置。
【0074】
[項目12]
パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられる複数のパーツの交換作業を支援する方法であって、
各パーツには、前記パーツの識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付されており、
生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定するステップと、
前記差分を示す差分パーツリストを表示装置に表示させるステップと、
各パーツに付された前記RFIDタグまたは前記コードに記録された前記パーツの識別子を読み取るリーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定することと、
判定結果を前記表示装置に表示させることと、
を含む方法。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、パーツの組み合わせを変更することによって複数の品種の製品の生産が可能な生産設備に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
100 リーダー
200 スマートグラス
210 カメラ
300 ホストコンピュータ
310 入出力I/F
320 記憶装置
330 処理装置
340 通信装置
400 表示装置
500 生産設備
510 ポジションインジケータ
520 マシンスケール
530 パーツ
600 トレイ
700 保管庫
【要約】
【課題】生産される品種の切り替え時におけるパーツ交換作業を支援する。
【解決手段】作業支援システムは、パーツの組み合わせを変更することによって複数種類の物品の生産が可能な生産設備に取り付けられるパーツの交換作業を支援する。各パーツには、識別子が記録されたRFIDタグまたは一次元もしくは二次元のコードが付される。前記システムの処理装置は、生産される物品の種類と、前記物品を生産するために前記生産設備に取り付けられるパーツの組み合わせとの対応関係を示すデータを参照して、直近に生産された物品の種類に対応するパーツの組み合わせと、次に生産される物品の種類に対応するパーツの組み合わせとの差分を決定し、前記差分を示す差分パーツリストを生成する。処理装置は、リーダーによってパーツの識別子が読み取られる度に、前記パーツが前記差分パーツリストに含まれるか否かを判定し、判定結果を表示装置に表示させる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15