(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】発泡樹脂製の鉢内台座
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20221226BHJP
【FI】
A01G9/02 101W
A01G9/02 101G
(21)【出願番号】P 2018151305
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年 7月 2日、株式会社松浦園芸(愛知県豊橋市東七根町銭田263)に、出願人が販売
(73)【特許権者】
【識別番号】593025619
【氏名又は名称】トーホー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】井林 徹
(72)【発明者】
【氏名】小田 徹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3206219(JP,U)
【文献】特開2014-50376(JP,A)
【文献】特開平8-298871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花卉を植木鉢内に定植させるために用いられる発泡樹脂製の鉢内台座であって、
逆円錐台形状の台部と、前記台部の上周縁に沿って所定の間隔を空けて立設された複数の支柱と、を備え、
前記台部は、底面と、複数の花卉のポットが夫々載置される複数の載置部を有する上面と、前記底面と前記上面とを繋ぐ側周面と、を有し、
前記側周面のうち、前記支柱が設けられていない上周縁の下方領域は、前記上面から前記底面に亘って内方に凹むように形成された縦溝部を有することを特徴とする鉢内台座。
【請求項2】
前記載置部は、前記上面から前記底面に貫通するように形成された複数の排水口を有し、
前記底面は、複数の前記排水口の底面側の開口を連通するように凹状に形成された底面排水溝を有することを特徴とする請求項1に記載の鉢内台座。
【請求項3】
前記底面排水溝は、前記台部の側周面方向に連通した側方開口を有し、該側方開口の少なくとも一部が前記縦溝部と重複又は隣接していることを特徴とする請求項2に記載の鉢内台座。
【請求項4】
前記上面は、前記排水口の上面側の開口の周囲に凹状に形成された上面排水溝を有し、
前記上面排水溝の両縁を成す凸状部に、花卉のポットが載置されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の鉢内台座。
【請求項5】
前記上面排水溝と前記排水口との境界がCカットされていることを特徴とする請求項4に記載の鉢内台座。
【請求項6】
複数の前記載置部は、前記底面からの高さが高い上載置部と、前記上載置部より前記底面からの高さが低い下載置部と、を少なくとも含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の鉢内台座。
【請求項7】
前記台部は、前記上載置部と前記下載置部とを繋ぐ立設面を有し、
前記立設面は、緩やかな円弧状に湾曲しており、前記下載置部に載置される花卉のポットの側面を支持することを特徴とする請求項6に記載の鉢内台座。
【請求項8】
前記台部の側周面のうち、前記支柱の設けられている周縁から前記底面にかけて、前記支柱の内側面の形状に対応するように形成された凹部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の鉢内台座。
【請求項9】
前記台部は、前記底面から前記側周面にかけて、前記排水口を避ける位置に形成された切り込み部を有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の鉢内台座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胡蝶蘭等の花卉を植木鉢内に定植させるために用いられる発泡樹脂製の鉢内台座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、胡蝶蘭等の花卉を1つの植木鉢内に複数個、定植させる際には、植木鉢の内部に、砕いた発泡スチロール片を敷き詰め、花卉のポットを所定位置に配置し、植木鉢とポットとの間に更に発泡スチロール片を立体的に敷き詰めることで、花卉を植木鉢内に保持させる工法が用いられている。
【0003】
この従来工法において、花卉のポットを植木鉢に安定的に保持させ、且つ定植の仕上がりが美しく見えるようにするには、植木鉢内に適切に発泡スチロール片を敷き詰める必要がある。しかし、花卉の花や葉を傷めることなく上記の作業を行うことは容易でなく、熟練した作業者であっても、かなりの時間と労力を要するものであった。
【0004】
そこで、花卉のポットを植木鉢内に固定するための発泡樹脂製の固定具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の固定具は、円形の底面から等間隔で立設された複数の支柱を有し、支柱の内周側面を中央頂部から分岐する2つの円弧面で形成し、対向する支柱の円弧面と、底面中央に立設した円錐型突子の側面との間でポットを挟み込むことで、ポットを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の固定具は、その底面に、ポットに対応するように複数の排水口が設けられている。しかしながら、固定具自体は、底面から支柱の外周面が円錐形に形成され、この外側面を植木鉢の内周面に当接させることで植木鉢内に固定されるので、固定具の外側面と植木鉢の内周面とは密着しており、底面の排水口以外に隙間が無い。そのため、植木鉢内に発泡スチロール片を敷き詰める従来工法に比べて、著しく水はけや通気性が悪くなる。代表的な花卉である胡蝶蘭は、水はけが悪いと根腐れを起こし易く、観賞できる期間が短くなってしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡便な作業で花卉のポットを植木鉢に安定的に保持させることができ、また、水はけや通気性が良い発泡樹脂製の鉢内台座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、花卉を植木鉢内に定植させるために用いられる発泡樹脂製の鉢内台座であって、逆円錐台形状の台部と、前記台部の上周縁に沿って所定の間隔を空けて立設された複数の支柱と、を備え、前記台部は、底面と、複数の花卉のポットが夫々載置される複数の載置部を有する上面と、前記底面と前記上面とを繋ぐ側周面と、を有し、前記側周面のうち、前記支柱が設けられていない上周縁の下方領域は、前記上面から前記底面に亘って内方に凹むように形成された縦溝部を有することを特徴とする。
【0009】
上記鉢内台座において、前記載置部は、前記上面から前記底面に貫通するように形成された複数の排水口を有し、前記底面は、複数の前記排水口の底面側の開口を連通するように凹状に形成された底面排水溝を有する
【0010】
上記鉢内台座において、前記底面排水溝は、前記台部の側周面方向に連通した側方開口を有し、該側方開口の少なくとも一部が前記縦溝部と重複又は隣接していることが好ましい。
【0011】
上記鉢内台座において、前記上面は、前記排水口の上面側の開口の周囲に凹状に形成された上面排水溝を有し、前記上面排水溝の両縁を成す凸状部に、花卉のポットが載置されるこが好ましい。
【0012】
上記鉢内台座において、前記上面排水溝と前記排水口との境界がCカットされていることが好ましい。
【0013】
上記鉢内台座において、複数の前記載置部は、前記底面からの高さが高い上載置部と、前記上載置部より前記底面からの高さが低い下載置部と、を少なくとも含むことが好ましい。
【0014】
上記鉢内台座において、前記台部は、前記上載置部と前記下載置部とを繋ぐ立設面を有し、前記立設面は、緩やかな円弧状に湾曲しており、前記下載置部に載置される花卉のポットの側面を支持することが好ましい。
【0015】
上記鉢内台座において、前記台部の側周面のうち、前記支柱の設けられている周縁から前記底面にかけて、前記支柱の内側面の形状に対応するように形成された凹部を有することが好ましい。
【0016】
上記鉢内台座において、前記台部は、前記底部から前記側周面にかけて、前記排水口を避ける位置に形成された切り込み部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鉢内台座によれば、台部の側周面に縦溝部が設けられているので、鉢内台座の外側面と植木鉢との間に、それらが直接的に接触しない隙間が形成され、この隙間から鉢内台座に注がれた水を排水することができるので、水はけや通気性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る鉢内台座の正面及び上面を主とした斜視図、(b)は背面及び底面を主とする斜視図。
【
図2】(a)(b)は上記鉢内台座の使用状態を示す斜視図。
【
図3】(a)は上記鉢内台座の平面図、(b)は底面図。
【
図4】(a)は上記鉢内台座の正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は
図3(a)のA-A線断面図、(e)は
図3(a)のB-B線断面図。
【
図5】(a)乃至(f)は従来工程で胡蝶蘭を定植する手順を説明するための概略斜視図。
【
図6】(a)乃至(c)は本実施形態の鉢内台座を使用して胡蝶蘭を定植する手順を説明するための概略斜視図。
【
図7】(a)は本発明の第2の実施形態に係る鉢内台座の正面及び上面を主とした斜視図、(b)は背面及び底面を主とする斜視図。
【
図8】(a)は上記鉢内台座の平面図、(b)は底面図、(c)は右側面図、(d)は(a)のA-A線断面図、(e)は正面図、(f)は(a)のB-B線断面図。
【
図9】(a)は本発明の第3の実施形態に係る鉢内台座の背面及び底面を主とした斜視図、(b)は正面図、(b)は右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る鉢内台座について、
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1(a)(b)に示すように、本実施形態の鉢内台座1は、花卉を植木鉢内に定植させる際に用いられるものであり、台部2と、台部2の上面から立設された複数の支柱3a、3b、3c(総称して支柱3)と、を備える。台部2及び支柱3は、発泡樹脂により一体的に成形されている。鉢内台座1を構成する発泡樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂といった発泡合成樹脂であり、本実施形態では、発泡ポリスチレン(EPS(Expanded Poly‐Styrene))が好適に用いられる。
【0020】
台部2は、略円形の底面20と、複数の花卉のポットが夫々載置される複数の載置部21を有する上面22と、底面20と上面22とを繋ぐ側周面23と、を有する。また、台部2は、底面20の面積が最も小さく、上面22(上方)へ向かう程に水平断面が大きくなる逆円錐台形状となるように形成されている。
図2(a)(b)に示すように、鉢内台座1は、植木鉢10に収められ、台部2には、3つの載置部21a、21b、21cが設けられており、夫々に花卉のポット11が1個ずつ配置される。
【0021】
図3(a)(b)及び
図4(a)乃至(e)に示すように、鉢内台座1は、平面視及び底面視において左右対称形状である。載置部21は、底面20からの高さが高い上載置部21aと、上載置部21aより底面20からの高さが低い下載置部21b、21cと、を少なくとも含む(
図1(a)も参照)。上載置部21aと下載置部21b、21cとは、立設面24により繋がれている。立設面24は、一方の下載置部21bと上載置部21aとを繋ぐ立設面24bと、他方の下載置部21cと上載置部21aとを繋ぐ立設面24cと、を含む。立設面24b、24cは、鉛直な面よりも僅かに傾斜しており、また、夫々緩やかな円弧状に内方に湾曲しており、下載置部21b、21cに夫々配置される花卉のポットの側面を支持する。つまり、下載置部21b、21cに夫々配置されるポットは、後に詳述する支柱3だけでなく、立設面24b、24cにより面的に安定的に支持される。また、下載置部21b、21cに2つのポットが配置されると、これら2つのポットの側周面で、上載置部21aに配置されるポットの側面を支持することができる。
【0022】
台部2は、上面22(上載置部21a、下載置部21b、21c)から底面20に貫通するように形成された複数の排水口25a、25b、25c、25dを有する(
図4(d)(e)も参照)。本実施形態では、上載置部21aの略中心から鉛直下に貫通する排水口25aと、下載置部21b、21cにおいて、上面22の中心Pを囲う3箇所から鉛直下に貫通する排水口25b、25c、25dと、が設けられている。上載置部21aの排水口25aと下載置部21b、22cの排水口25cとは、中心Pを通る直線上に設けられ、下載置部21bの排水口25bと下載置部21cの排水口25dとは、上記直線と中心Pで直交する直線上に設けられえている(
図3(a)参照)。また、上載置部21aの排水口25aは、下載置部21b、21cの排水口25b、25c、25dよりも、上面の中心Pから離れた位置に形成されている。排水口25a~25dは、上面側の開口が底面側の開口よりも口径が大きいテーパ形状となっており(
図4(d)(e)参照)、載置部21に注がれた水が滑らかに底面20側へ排出される。
【0023】
上面22は、排水口25a~25dの上面側の開口の周囲に凹状に形成された上面排水溝26a、26bを有する(
図1(a)、
図3(a)参照)。上面排水溝26a、26bは、上面22の中心Pを囲うように円環状に形成されており、上載置部21aの上面排水溝26aは、排水口25aから左右方向へ円弧状に延び、延伸側の端部が、立設面24b、24cに連通している。下載置部21b、21cの上面排水溝26bは、排水口25cから左右方向へ円弧状に延び、排水口25cと排水口25b、25dとを連通し、延伸側の端部が立設面24b、24cで打ち止めとなる。そのため、上載置部21aに注がれた水は、排水口25aだけでなく、上載置部21aの上面排水溝26aの端部から立設面24b、24cを流下し、下載置部21b、21cの上面排水溝26bを流れて、排水口25b、25c、25dからも排出される。
【0024】
上面排水溝26a、26bの溝幅は10~20mm程度、深さは3~8mm程度であり、上面排水溝26a、26bの両縁を成す凸状部(各載置部21の最上面)に、花卉のポットが載置される。そのため、載置部21に花卉のポットが配置されたとき、ポットの底面は、排水口25a~25dの上面側の開口とは直接的には接触しないので、ポットによって排水口25a~25dが塞がれることもなく、排水性能を維持することができる。また、ポットの底面の排水口から排出された水は、上面排水溝26a、26bを通じて、排水口25a~25dから排水されるので、ポットの底面の排水口と排水口25a~25dとの位置が一致していなくてもよく、定植の作業効率を向上させることができる。
【0025】
底面20は、排水口25a~25dの底面側の開口を連通するように凹状に形成された底面排水溝27を有する。本実施形態において、排水口25a~25dは、上面22の中心Pを通る直交する2直線上に設けられているので、底面排水溝27が、中心Pを中心とする十字形状の凹溝として形成されることで、各排水口25a~25dを連通させることができる。底面排水溝27の中央部は、やや広い排水空間が設けられており、排水口25a~25dから底面排水溝27に注がれた水は、植木鉢の底面の中央に設けられた排水口(不図示)から外部に排水される。
【0026】
底面排水溝27の溝幅は10~20mm程度、深さは8~20mm程度であり、底面排水溝27の両縁を成す凸状部(底面20の最下面)は、植木鉢の内底面に対向し、植木鉢の内面形状によっては、植木鉢の内底面に接する。このとき、排水口25a~25dの底面側の開口は、植木鉢の内底とは直接的には接触しないので、植木鉢の内底面によって排水口25a~25dが塞がれることもなく、排水性能を維持することができる。
【0027】
支柱3は、台部2の上周縁28に沿って所定の間隔を空けて立設されている。本実施形態では、3本の支柱3a~3cが略定間隔で設けられている。1本の支柱3cは、他の2本の支柱3a、3bよりも低くなるように形成されている。平面視において、略円形の上面22を時計に例えると、支柱3aが10時の位置、支柱3bが2時の位置、支柱3cが6時の位置に設けられている。
【0028】
各支柱3a~3cは、いずれも水平断面が略5角形となるように形成されており、夫々上面30a、30b、30cと、夫々5つの側面と、を有する。支柱3aの側面は、外側面31a、鉛直面32a、33a、保持面34a、35aにより構成され、支柱3bの側面は、外側面31b、鉛直面32b、33b、保持面34b、35bにより構成され、支柱3cの側面は、外側面31c、鉛直面32c、33c、保持面34c、35cにより構成される。隣り合う各側面の稜線は、滑らかな丸みを帯びるように面取りされている。
【0029】
外側面31a、31b、31cは、台部2の側周面23と連続する逆円錐台の側面の一部に相当する。支柱3a、3bは、互いに左右対称形状である。保持面34a、35a、保持面34b、35b、保持面34c、35cは、外側面31a、31b、31cと夫々対峙する位置に設けられ、各2面がV字状のペアとなっている。また、支柱3aの保持面35aと支柱3bの保持面34bとが向かい合い、夫々緩やかな円弧状に内方に湾曲しており、上載置部21aに配置される花卉のポットの側面を支持する。また、支柱3aの保持面34aと支柱3cの保持面34cとが向かい合い、下載置部21bに配置される花卉のポットの側面を支持する。同様に、支柱3bの保持面35bと支柱3cの保持面35cとが向かい合い、下載置部21cに配置される花卉のポットの側面を支持する。支柱3aの保持面34aは、立設面24bと滑らかに連続する面として形成され、支柱3bの保持面35bもまた、立設面24cと滑らかに連続する面として形成される。
【0030】
台部2の側周面23のうち、支柱3が設けられていない上周縁28の下方領域は、上面22から底面20に亘って内方に凹むように形成された縦溝部29を有する。本実施形態では、台部2の側周面23は、支柱3が設けられていない3領域に、3つの縦溝部29が設けられている。縦溝部29は、側周面23の全周のうち1/6以上の範囲に亘って形成されていることが好ましい。
【0031】
本実施形態の鉢内台座1は、側周面23に縦溝部29が設けられているので、鉢内台座1の外側面と植木鉢との間に、それらが直接的に接触しない隙間が形成され、この隙間から鉢内台座1に注がれた水を排水することができる。すなわち、鉢内台座1は、排水口25a~25dだけでなく、縦溝部29からも排水することができるので、水はけや通気性を良くすることができる。
【0032】
また、底面排水溝27は、台部2の側周面23方向に連通した側方開口27a~27dを有し、これら側方開口27a~27dの少なくとも一部が、縦溝部29と重複又は隣接している。本実施形態においては、排水口25aの外方に位置する側方開口27aは、縦溝部29と重複する位置にあり、排水口25b、25dの外方に位置する側方開口27b、27dは、縦溝部29と隣接する位置にある。従って、縦溝部29から排水された水は、底面排水溝27を通じて、植木鉢の底面に設けられた排水口から外部に排水される。
【0033】
ここで、砕いた発泡スチロール片を用いた胡蝶蘭の定植における従来工法を、
図5を参照して説明する。
図5(a)に示すように、作業者は、適当な大きさの発泡スチロール片を植木鉢内の所定位置に敷き詰め、
図5(b)に示すように、1つ目の胡蝶蘭のポット11を植木鉢10内に配置する。次に、
図5(c)に示すように、1つ目のポット11に留意しながら、2つ目のポット11を配置する。そして、
図5(d)に示すように、発泡スチロール片の位置を調整しながら、3つ目のポット11を配置する。ここで、
図5(e)に示すように、必要に応じて、発泡スチロール片を所望のサイズにカットして、
図5(f)に示すように、適切な位置に配置して、各ポット11を植木鉢10内に安定的に保持させる。また、従来工法では、花卉の花や葉を傷めることなく上記の作業を行う必要があり、熟練した作業者であっても、かなりの時間と労力を要するものであった。
【0034】
一方、本実施形態の鉢内台座1を用いた胡蝶蘭の定植工法を、
図6を参照して説明する。
図6(a)に示すように、植木鉢10内に鉢内台座1を配置し、
図6(b)(c)に示すように、順次、胡蝶蘭のポット11を鉢内台座1の所定位置に配置していけばよい。従って、簡便な作業で胡蝶蘭のポット11を植木鉢10に安定的に保持させることができる。
【0035】
また、一般的な3本立ての胡蝶蘭では、中央の胡蝶蘭の高さが、左右の胡蝶蘭に比べて高くなるように定植することで、立体感があり見栄えの良さを演出している。本実施形態の鉢内台座1では、1つの上載置部21aと2つの下載置部21bとを有する構成になっているので、従来工法のように、発泡スチロール片を立体的に敷き詰める必要もなく、簡易に、胡蝶蘭のポット11を植木鉢10に立体感のある定植をすることができる。
【0036】
本発明の第2の実施形態に係る鉢内台座について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7(a)(b)及び
図8(a)乃至(f)に示すように、本実施形態の鉢内台座1では、上面排水溝26a、26bと排水口25a~25dとの境界がCカットされている(
図7(a)、
図8(a)(d)(f)参照)。上記実施形態の上面排水溝26a、26bは、概ね水平面だったので、一定程度の水が上面排水溝26a、26bに貯まることがあった。一方、本実施形態によれば、上面排水溝26a、26b上に注がれた水が、Cカット面から排水口25a~25dに滑らかに流れるので、より効果的に底面20側へ排出される。
【0037】
また、本実施形態の鉢内台座1は、台部2の側周面23のうち、支柱3の設けられている周縁から底面にかけて、支柱3の内側面の形状に対応するように形成された凹部4a、4b、4cを有する。ここで言う支柱3の内側面とは、支柱3aにおいては、保持面34a、35aと、鉛直面32a、33aのうち保持面34a、35aと隣接する一部が相当し、支柱3bにおいては、保持面34b、35bと、鉛直面32b、33bのうち保持面34b、35bと隣接する一部が相当し、支柱3cにおいては、保持面34c、35cと、鉛直面32c、33cのうち保持面34c、35cと隣接する一部が相当する。
【0038】
鉢内台座1は、台部2と支柱3とが発泡樹脂により一体成形されており、支柱3の先端は、上方へ向かう程に大きくなっているので、非使用時には嵩張り、特に、多数の鉢内台座1を保管、運送等する際には、大きな容積が必要となる。本実施形態では、1つの鉢内台座1の上に、同じ向きで鉢内台座1を置くと、下の鉢内台座1の支柱3a、3b、3cが、上の鉢内台座1に設けられた凹部4a、4b、4cに夫々嵌まり込み、いわゆるスタッキングされた状態となる。従って、鉢内台座1の非使用時に、小さな容積で多数の鉢内台座1を保管、運送等することができる。
【0039】
本発明の第3の実施形態に係る鉢内台座について、
図9を参照して説明する。
図9(a)乃至(c)に示すように、本実施形態の鉢内台座1は、台部2において、底面20から側周面23にかけて、排水口25a~25dを避ける位置に形成された切り込み部5を有する。切り込み部5は、底面20側から視て十文字に、台部2の高さの半分以上に至る深さに切り込まれている。
【0040】
鉢内台座1は、上述したように、非使用時だけでなく、廃棄時にも嵩張ることが問題となる。ここで、本実施形態の鉢内台座1は、切り込み部5に沿って分解することができるので、廃棄時の容積を小さくすることができる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。例えば、台部2の上面22(載置部21)の一部には、蒸気孔(コアベント)を無くし、発泡スチロールを構成する粒子と粒子との間に、岩おこし状の間隙を意図的に設けてもよい。こうすれば、鉢内台座1に注がれた水が、岩おこし状の間隙を伝わって縦溝部29に流れ、縦溝部29から底面20側へ排水することができ、水はけ及び通気性を更に向上させることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、3つの載置部21a~21cを有し、3つの花卉を定植できる3本立ての胡蝶蘭に対応する構成を示したが、4つ以上の載置部を有するものであってもよい。例えば、5本立ての鉢内台座であれば、3本立ての鉢内台座に比べて、台部が一回り大きく、5本の支柱が設けられ、4つ以上の載置部が設けられる。また、本実施形態では、1つの上載置部21a及び高さが等しい2つの下載置部21b、21cを有する構成を示したが、2つの上載置部と1つの下載置部を有する構成(不図示)であってもよく、また、上載置部、中載置部、下載置部といったような、高さが異なる3種の載置部を有する構成(不図示)であってもよい。例えば、5本立ての鉢内台座であれば、背面側に位置する載置部を上載置部とし、その上載置部の隣り合う位置の載置部を中載置部、正面側に位置する載置部を下載置部とすれば、立体感があり胡蝶蘭の見栄えを良くすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 鉢内台座
2 台部
20 底面
21 載置部
21a 高載置部(載置部)
21b、21c 低載置部(載置部)
22 上面
23 側周面
24 立設面
24b、24c 立設面
25a、25b、25c、25d 排水口
26a、26b 上面排水溝
27 底面排水溝
27a、27b、27c、27d 側方開口
28 上周縁
29 縦溝部
3 支柱
3a、3b、3c 支柱
4a、4b、4c 凹部
5 切り込み部