(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】食器の浸漬方法および洗浄方法、並びに食器の浸漬装置、食器洗浄システム
(51)【国際特許分類】
A47L 15/24 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
A47L15/24
(21)【出願番号】P 2019114086
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390007456
【氏名又は名称】株式会社中西製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 護
(72)【発明者】
【氏名】乙川 裕次
(72)【発明者】
【氏名】堀川 直樹
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110999(JP,A)
【文献】特開2010-075576(JP,A)
【文献】特開2010-069396(JP,A)
【文献】特開平11-216094(JP,A)
【文献】実開昭62-177483(JP,U)
【文献】特開2004-180825(JP,A)
【文献】特開2004-261439(JP,A)
【文献】特開2003-063649(JP,A)
【文献】特開2012-250212(JP,A)
【文献】実開昭55-011193(JP,U)
【文献】実開昭62-090065(JP,U)
【文献】特開昭60-106718(JP,A)
【文献】特開2002-360493(JP,A)
【文献】特開2009-120289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/00~15/50
B08B 3/00~ 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる食器の浸漬方法であって、
食器篭を水平方向に搬送する搬送手段と、
前記食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段と、を用い、
表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように複数の食器を収納した前記食器篭を前記搬送手段により水平方向に搬送し、
前記浸漬水供給手段は、前記搬送手段により食器篭が搬送される方向に沿って設けられ、少なくとも前記食器篭内の最上端の食器に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器間の隙間に流入させて各食器内に貯水し、
前記搬送手段は、浸漬水が各食器内に貯水されている状態が所定時間継続するように前記食器篭を搬送し、前記各食器内に貯水した浸漬水により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させることを特徴とする食器の浸漬方法。
【請求項2】
浸漬水供給手段により、食器篭内の最上端の食器の表面側、および積み重ねるように収納された食器の外周縁に向けて浸漬水を噴射し、上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと浸漬水を流下させ、かつ積み重ねるように収納された食器の隙間に浸漬水を流入させることを特徴とする請求項1に記載の食器の浸漬方法。
【請求項3】
浸漬水供給手段により食器篭内の食器に供給して落下した浸漬水を回収し、その回収した浸漬水を再度、前記浸漬水供給手段により前記食器篭内の食器に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の食器の浸漬方法。
【請求項4】
併設された複数の搬送手段により食器篭を併行搬送し、
浸漬水供給手段は、前記各々の搬送手段により搬送される食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の食器の浸漬方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の食器の浸漬方法を実施する浸漬工程を所定時間実施した後に、
食器篭の姿勢を複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更し、前記姿勢を変更した食器篭に収納した食器に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施することを特徴とする食器の洗浄方法。
【請求項6】
食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる工程を実施する食器の浸漬装置であって、
複数の食器を収納した食器篭を水平方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段と、を備え、
表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように前記複数の食器を収納した食器篭を前記搬送手段の上に載置し、
前記浸漬水供給手段は、前記搬送手段により食器篭が搬送される方向に沿って設けられ、少なくとも前記食器篭内の最上端の食器に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器間の隙間に流入させて各食器内に貯水し、
前記搬送手段は、浸漬水が各食器内に貯水されている状態が所定時間継続するように前記食器篭を搬送し、前記各食器内に貯水した浸漬水により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させることを特徴とする食器の浸漬装置。
【請求項7】
搬送手段は、食器篭の搬送方向と平行になるよう設けられた保持部を有し、
前記食器篭は、前記搬送手段上に載置して搬送されるとき、複数の食器の表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢と、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢とのいずれかの姿勢で搬送され、
前記食器篭は、前記各姿勢で前記保持部に接触させることにより、前記食器篭の搬送方向に直交する方向の位置を規制するためのガイド部を有することを特徴とする請求項6に記載の食器の浸漬装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の食器の浸漬装置と、
前記浸漬装置により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させた食器が収納された食器篭ごと搬入され、前記食器篭に収納された食器の表裏面に洗浄水を噴射して食器を洗浄する洗浄装置と、を備え、
前記洗浄装置は、前記複数の食器を収納した食器篭を載置し、水平方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される食器篭に収納した食器に向けて洗浄水を噴射する洗浄水供給手段と、を備え、
前記食器篭を、前記浸漬装置での複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更して、前記洗浄装置の搬送手段上に載置し、前記姿勢を変更させて載置した食器篭を搬送しながら食器を洗浄することを特徴とする食器洗浄システム。
【請求項9】
浸漬装置と洗浄装置との間に、食器篭を前記浸漬装置から前記洗浄装置に移す移載装置を備え、
前記移載装置は、前記浸漬装置の搬送手段により搬送された食器篭を受け取り、前記食器篭の姿勢を複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更させる姿勢変更手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の食器洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器の洗浄に用いられる食器の浸漬方法および洗浄方法、並びに食器の浸漬装置、食器洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食器の表裏面に洗浄水を噴射して洗浄する工程の前に、食器の表裏面に付着した汚れ成分に水分を与えて湿潤させる浸漬工程を実施することが一般的に知られている。
【0003】
この浸漬工程を実施する浸漬装置としては、食器、食器篭の取扱い、作業性等の改善のために、複数の食器を積層状態で収納した食器篭を、搬送手段により搬送される食器篭収納用バケットに収納した状態で搬送し、浸漬水を満たした浸漬槽内に水没させ浸漬するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、同じく浸漬装置として、複数の食器を積層した状態で浸漬水を満たした浸漬槽に水没させ、浸漬槽内に浸漬水を噴出させ、浸漬水を循環させるものがある(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、浸漬および洗浄を行う装置として、複数の食器を積層状態で収納した食器篭を、搬送手段により搬送しながら食器篭ごと浸漬水を満たした浸漬槽に水没させて浸漬し、この浸漬洗浄の後、洗浄水を噴射する洗浄室に通過させ洗浄するものがある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平2-146561号公報
【文献】特開平7-95947号公報
【文献】特開2013-111117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるような浸漬装置においては、食器篭に収納された複数の食器を、食器篭ごと全没させるため、食器篭が全没する深さと搬送方向に沿って搬送しながら所定の時間、複数の食器篭を全没させるための広さとが必要で浸漬槽が大型化する。大型化した浸漬槽に浸漬水を貯水させておく必要があり、大量の浸漬水が必要となるという課題がある。
【0008】
また、浸漬後の食器を浸漬槽から搬出する際、食器篭ごとバケットから取り出す必要があるため、食器表面に付着している湿潤した汚れ成分が、食器に付着した浸漬水とともに作業場の床に落下したり、作業者に付着したりして、作業環境の悪化を招くおそれがある。
【0009】
特許文献2に示されるような浸漬装置においては、鉛直方向に積み重ねた食器列を全没させるため、食器列が全没する深さと複数の食器列を全没させるための広さとが必要で浸漬槽が大型化する。大型化した浸漬槽に浸漬水を貯水する必要があり、大量の浸漬水が必要となるという課題がある。
【0010】
また、汚れた食器を浸漬槽に投入したり、浸漬後の食器を取り出したりする際、食器に付着している汚れ成分が作業場の床に落下したり、作業者に付着したりして、作業環境の悪化を招くおそれがある。
【0011】
特許文献3に示されるような浸漬および洗浄を行う装置においては、食器篭に収納された複数の食器を、食器篭ごと全没させるため、食器篭が全没する深さと搬送方向に沿って搬送しながら所定の時間、複数の食器篭を全没させるための広さとが必要で浸漬槽が大型化する。大型化した浸漬槽に浸漬水を貯水させておく必要があり、大量の浸漬水が必要となるという課題がある。
【0012】
また、汚れた食器を浸漬槽へ投入する際、上下方向に積み重ねた複数の食器を横にして食器篭に収納し、食器の表面が鉛直方向に沿った縦方向の姿勢としてバケットに投入する必要があるため、食器表面に付着した汚れ成分が作業場の床に落下したり、作業者に付着したりして、作業環境の悪化を招くおそれがある。
【0013】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、従来の食器の浸漬に比較して、浸漬に必要とする浸漬水を少なくし節水することができる食器の浸漬方法、および浸漬工程に続いて食器を洗浄する洗浄工程を一連に実施できる洗浄方法、並びに食器の浸漬装置、食器洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る食器の浸漬方法は、食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる食器の浸漬方法であって、
食器篭を水平方向に搬送する搬送手段と、
前記食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段と、を用い、
表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように複数の食器を収納した前記食器篭を前記搬送手段により水平方向に搬送し、
前記浸漬水供給手段は、前記搬送手段により食器篭が搬送される方向に沿って設けられ、少なくとも前記食器篭内の最上端の食器に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器間の隙間に流入させて各食器内に貯水し、
前記搬送手段は、浸漬水が各食器内に貯水されている状態が所定時間継続するように前記食器篭を搬送し、前記各食器内に貯水した浸漬水により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る食器の浸漬装置は、食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる工程を実施する食器の浸漬装置であって、
複数の食器を収納した食器篭を水平方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段と、を備え、
表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように前記複数の食器を収納した食器篭を前記搬送手段上に載置し、
前記浸漬水供給手段は、前記搬送手段により食器篭が搬送される方向に沿って設けられ、少なくとも前記食器篭内の最上端の食器に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器間の隙間に流入させて各食器内に貯水し、
前記搬送手段は、浸漬水が各食器内に貯水されている状態が所定時間継続するように前記食器篭を搬送し、前記各食器内に貯水した浸漬水により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る食器の洗浄方法は、食器の浸漬方法を実施する浸漬工程を所定時間実施した後に、
食器篭の姿勢を複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更し、前記姿勢を変更した食器篭に収納した食器に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る食器洗浄システムは、前記の浸漬装置と、
前記浸漬装置により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させた食器が収納された食器篭ごと搬入され、前記食器篭に収納された食器の表裏面に洗浄水を噴射して食器を洗浄する洗浄装置と、を備え、
前記洗浄装置は、前記複数の食器を収納した食器篭を載置し、水平方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される食器篭に収納した食器に向けて洗浄水を噴射する洗浄水供給手段と、を備え、
前記食器篭を、前記浸漬装置での複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更して、前記洗浄装置の搬送手段上に載置し、前記姿勢を変更させて載置した食器篭を搬送しながら食器を洗浄することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る食器の浸漬方法、および浸漬装置によれば、従来の食器の浸漬に比較して、浸漬に必要とする浸漬水を少なくし節水することができる。また、本発明に係る食器の洗浄方法、食器洗浄システムによれば、浸漬工程に続く食器を洗浄する洗浄工程を、浸漬工程から一連に実施でき、作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る食器洗浄システムの基本的な構成図。
【
図3】同食器洗浄システムにおいて用いられる食器篭の斜視図。
【
図5】同食器篭に食器を収納した状態の食器篭の左側面から見た図。
【
図6】同食器洗浄システムの浸漬装置に用いられる搬送コンベアの食器搬入側の図であって、(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図7】同浸漬装置における食器列へ浸漬水を供給し浸漬する状態を示す右側面図。
【
図8】同浸漬装置から洗浄装置へ食器篭を移載するための移載装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図。
【
図9】(a)~(c)は同移載装置の動作を示す正面図。
【
図10】(a)~(c)は同移載装置により食器篭を移載する動作を示す正面図。
【
図11】同移載装置に食器篭が載置された状態を示す正面図。
【
図12】同移載装置に食器篭が載置された状態を示す平面図。
【
図13】同移載装置に食器篭が載置された状態を示す右側面部分拡大図。
【
図14】同食器洗浄システムの洗浄装置に用いられる搬送コンベアの食器搬入側の図であって、(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図15】同洗浄装置における食器篭へ洗浄水を噴射し洗浄する状態を示す右側面図。
【
図16】本発明の変形例に係る食器洗浄システムの基本的な構成図。
【
図17】(a)~(c)は同変形例における浸漬装置から洗浄装置へ食器篭を移載するための移載装置の動作を示す正面図。
【
図18】(a)~(c)は同変形例における移載装置により食器篭を移載する動作を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
請求項1に記載の発明は、食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる食器の浸漬方法であって、食器篭を水平方向に搬送する搬送手段と、前記食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段と、を用い、表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように複数の食器を収納した前記食器篭を前記搬送手段により水平方向に搬送し、前記浸漬水供給手段は、前記搬送手段により食器篭が搬送される方向に沿って設けられ、少なくとも前記食器篭内の最上端の食器に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器間の隙間に流入させて各食器内に貯水し、前記搬送手段は、浸漬水が各食器内に貯水されている状態が所定時間継続するように前記食器篭を搬送し、前記各食器内に貯水した浸漬水により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させることを特徴とする食器の浸漬方法としたものである。
これにより、食器篭に収納した食器は、表面を上向きにして鉛直方向に積み重ねた状態であるので、食器篭に収納した食器に供給した浸漬水は食器の表面に貯水される。そのため、各食器内に浸漬水が貯水された状態を所定時間継続するとき、浸漬に使用する浸漬水を従来の浸漬方法に比較して少なくして、節水することができる。
また、複数の食器を食器篭に収納したまま、食器に付着した汚れ成分を湿潤させる浸漬を行うことができ、従来の浸漬に比較して、食器篭から食器を取り出す作業を省き、省力化することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、浸漬水供給手段により、食器篭内の最上端の食器の表面側、および積み重ねるように収納された食器の外周縁に向けて浸漬水を噴射し、上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと浸漬水を流下させ、かつ積み重ねるように収納された食器の隙間に浸漬水を流入させることを特徴とする食器の浸漬方法としたものである。
これにより、食器内への貯水を速やかに行い、貯水した浸漬水の入れ替えを促進し、十分な浸漬と洗浄作用が得られる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、浸漬水供給手段により食器篭内の食器に供給して落下した浸漬水を回収し、その回収した浸漬水を再度、前記浸漬水供給手段により前記食器篭内の食器に供給することを特徴とする食器の浸漬方法としたものである。
これにより、浸漬水を節水することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明において、併設された複数の搬送手段により食器篭を併行搬送し、浸漬水供給手段は、前記各々の搬送手段により搬送される食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給することを特徴とする食器の浸漬方法としたものである。
これにより、単位時間当たりで、より多くの食器篭に収納した食器に浸漬水を貯水させて、浸漬することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載の食器の浸漬方法を実施する浸漬工程を所定時間実施した後に、食器篭の姿勢を複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更し、前記姿勢を変更した食器篭に収納した食器に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施することを特徴とする食器の洗浄方法としたものである。
これにより、食器篭に食器を収納したまま、搬送される食器篭の姿勢を、浸漬工程と洗浄工程との間で変更可能で、浸漬工程に続いて食器を洗浄する洗浄工程を一連に実施でき、作業性を高めることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる工程を実施する食器の浸漬装置であって、複数の食器を収納した食器篭を水平方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記食器篭内の食器に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段と、を備え、表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように前記複数の食器を収納した食器篭を前記搬送手段の上に載置し、前記浸漬水供給手段は、前記搬送手段により食器篭が搬送される方向に沿って設けられ、少なくとも前記食器篭内の最上端の食器に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器の外周縁から下方にある食器へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器間の隙間に流入させて各食器内に貯水し、前記搬送手段は、浸漬水が各食器内に貯水されている状態が所定時間継続するように前記食器篭を搬送し、前記各食器内に貯水した浸漬水により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させることを特徴とする食器の浸漬装置としたものである。
これにより、請求項1の浸漬方法と同等の効果が得られる装置を提供できる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、搬送手段は、食器篭の搬送方向と平行になるよう設けられた保持部を有し、前記食器篭は、前記搬送手段上に載置して搬送されるとき、複数の食器の表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢と、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢とのいずれかの姿勢で搬送され、前記食器篭は、前記各姿勢で前記保持部に接触させることにより、前記食器篭の搬送方向に直交する方向の位置を規制するためのガイド部を有することを特徴とする食器の浸漬装置としたものである。
これにより、食器篭の安定搬送が可能となり、また、食器篭内の食器の浸漬の後に洗浄を行う場合に、食器篭を洗浄に適した姿勢に変更可能となる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の食器の浸漬装置と、前記浸漬装置により食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させた食器が収納された食器篭ごと搬入され、前記食器篭に収納された食器の表裏面に洗浄水を噴射して食器を洗浄する洗浄装置と、を備え、前記洗浄装置は、前記複数の食器を収納した食器篭を載置し、水平方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される食器篭に収納した食器に向けて洗浄水を噴射する洗浄水供給手段と、を備え、前記食器篭を、前記浸漬装置での複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更して、前記洗浄装置の搬送手段上に載置し、前記姿勢を変更させて載置した食器篭を搬送しながら食器を洗浄することを特徴とする食器洗浄システムとしたものである。
これにより、請求項5の食器の洗浄方法と同等の効果が得られる食器洗浄システムを提供できる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、浸漬装置と洗浄装置との間に、食器篭を前記浸漬装置から前記洗浄装置に移す移載装置を備え、前記移載装置は、前記浸漬装置の搬送手段により搬送された食器篭を受け取り、前記食器篭の姿勢を複数の食器の表面側を上向きにした鉛直方向に積み重ねるように収納した姿勢から、複数の食器の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢に変更させる姿勢変更手段を備えていることを特徴とする食器洗浄システムとしたものである。
これにより、浸漬した後に洗浄を行う食器洗浄システムを運用するとき、食器篭の姿勢を変更しつつ、浸漬装置から洗浄装置へと食器篭を移載するために必要とされる作業員の数を減らして省人化することができる。
【0029】
(食器洗浄システムの実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る食器の浸漬方法が実施される食器の浸漬装置、および食器の浸漬装置を備えた食器洗浄システム、並びに食器の浸漬方法および洗浄方法について
図1~
図15を参照して説明する。
【0030】
なお、
図1、
図2、
図6、
図14、
図16に記載した直線状の矢印は食器篭5の搬送方向を示し、
図1、
図9、
図10、
図16、
図17、
図18に記載した曲線状の矢印は食器篭5、もしくは載せ板32および受け板33の回動方向を示す。また、
図7に記載した食器6の外周縁の形状に沿った矢印は、食器6の外周縁に沿って流下する溢れ水の流下方向を示す。
【0031】
先ず、本発明の一実施形態に係る食器洗浄システム1の基本的な構成を
図1、
図2を参照して説明する。
【0032】
本発明の一実施形態における食器洗浄システム1は、大きく分けて、浸漬装置2、移載装置3、および洗浄装置4の各要素系から順次構成され、前記各々の装置および全体を制御する制御装置10を備えている。浸漬装置2、移載装置3、洗浄装置4の各々は、被洗浄物である食器6を収納した食器篭5の搬入側から搬出側への搬送方向に沿って略直線状に配置されて一つの洗浄レーンを構成している。また、洗浄レーンにおいて、浸漬装置2の搬送手段21、移載装置3の姿勢変更手段31、洗浄装置4の搬送手段41により一つの搬送レーンを構成している。
【0033】
浸漬装置2は、複数の食器6の表面を上向きにして鉛直方向に積み重ねるように並べて収納した食器篭5を搬送しながら浸漬水を供給し、この浸漬水により複数の食器6に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる浸漬工程を実施するものである。浸漬工程は、食器6の表裏面への洗浄水の噴射による洗浄工程を実施する洗浄装置4の前工程としてある。なお、「複数の食器6を積み重ねるように並べて食器篭5に収納した状態の1単位」を、以下、「食器列」という。また、食器6の表面とは、食材が入れられる凹部を持つ側の面をいう。
【0034】
移載装置3は、浸漬装置2と洗浄装置4との間にあって、食器篭5を浸漬装置2から洗浄装置4に移すためのものであり、移載に際し、食器篭5の姿勢を、複数の食器6の表面側を上向きに積み重ねるように収納した姿勢(縦姿勢という)から、複数の食器6の表面側を水平方向に積み重ねるように収納した姿勢(横姿勢という)に変更する姿勢変更移載工程を行うものである。
【0035】
洗浄装置4は、移載装置3により姿勢を変更されて移載された食器篭5を搬送しながら、食器篭5内に収納された複数の食器6の表裏面に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施するものである。
【0036】
(浸漬装置)
浸漬装置2は、主に縦姿勢の食器篭5を水平方向に搬送する搬送手段21と、食器篭5内の食器6に向けて浸漬水を供給する浸漬水供給手段22と、を備えている。搬送手段21は、浸漬水が各食器6内、すなわち食器列の最上端の食器6の表面および積み重ねるようにした互いに隣り合う食器6の隙間に貯水されている状態が所定時間継続するように食器篭5を搬送し、各食器6内に貯水した浸漬水により食器6に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる。
【0037】
搬送手段21は、食器篭5が載置され食器篭5を搬送するコンベアチェーン211を備える。このコンベアチェーン211は、搬入側と搬出側とに設けられたスプロケット212に懸架されている。一方のスプロケット212はモータ(駆動源)(図示無し)により回転駆動される。搬送手段21について、詳細は後述する。なお、搬送手段21は、レール上に載置された食器篭5をコンベアチェーン211に設けた突起で押すようにして食器篭5を搬送するものであってもよい。
【0038】
浸漬水供給手段22は、搬送手段21により食器篭5が搬送される方向に沿って、少なくとも食器篭5内の最上端の食器6に向けて浸漬水を供給し、供給された浸漬水を上方にある食器6の外周縁から下方にある食器6へと流下させることにより、浸漬水を互いに隣り合う食器6間の隙間に流入させ各食器6内に貯水する。
【0039】
浸漬水供給手段22は、食器篭5の搬送方向に沿って、食器篭5の少なくとも上方で水平方向に配置された複数のノズル管221と、このノズル管221に浸漬水を下方に噴射する複数のノズル222を備える。搬送手段21の下方位置に浸漬水を所定量貯水するタンク223が配置され、タンク223内の浸漬水を、供給経路を介してノズル管221に供給するポンプ224を備える。
【0040】
ノズル222から噴射された浸漬水はタンク223内に落下して回収され循環使用する。また、図示しないが、タンク223内の浸漬水の温度を所定の温度、例えば40~50度Cに昇温する加熱手段、洗剤を供給する洗剤供給手段、ポンプ224の吸込側に汚れ成分を捕集して浸漬水から汚れ成分を分離するフィルタ等を備える。浸漬水の昇温、洗剤供給によって食器6に付着した汚れ成分の湿潤効果を向上させることができる。さらに、洗浄装置4での汚れ成分の除去をより確実なものとすることができる。
【0041】
(食器篭)
食器洗浄システム1において用いられる食器篭5の構成について
図3~
図5を参照して説明する。
【0042】
図3、
図4に示すように、食器篭5は、6つの外郭面を有しており、略四角形に構成された上面を形成する上枠51および下面を形成する下枠52と、食器の外縁が当接して食器の正面側および背面側の位置を規制する食器支持部53a,53b,53c,53dと、左右側面を形成する左右側枠54a,54b,54c,54dと、背面を成す背面規制棒(ガイド部)55a,55bおよび下面規制棒(ガイド部)56a,56bと、で構成されている。
【0043】
下面規制棒56a,56bには、食器列の最下端の食器6の底面を受ける下板57を取り付けている。上枠51には、食器篭5内に食器6を挿入するための食器出入用開口部58が設けられ、前面側の食器支持部53a,53bの間には前面開口部59が設けられ、これら食器出入用開口部58と前面開口部59とは連通し、食器の出入を容易としている。さらに、食器出入用開口部58を規制する上規制部581が設けられている。
【0044】
食器篭5は、断面円形または角状のステンレス材等の線材により構成されればよいが、それに限られることはない。また、食器篭5は、搬送手段21により搬送されるときに、下面規制棒56a,56bの有る下枠52を下方にした縦姿勢(
図3に示す状態)と、その状態から下枠52の背面側端を軸心として仰向けに90度回動させて背面規制棒55a,55bの有る食器篭5の背面を下方にした横姿勢との各状態を持つ。下面規制棒56a,56bおよび背面規制棒55a,55bは、食器篭5が各姿勢において搬送されるとき、食器篭5の搬送方向に直交する方向の位置を規制するためのガイド部となる。
【0045】
食器篭5が縦姿勢の状態を
図5に示している。食器篭5内の食器6は、食器支持部53a,53b,53c,53dによって、食器6の正面側および背面側の位置が規制される。食器篭5が縦姿勢のとき、下面規制棒56a,56bがガイド部となる。食器篭5が横姿勢のときは、背面規制棒55a,55bがガイド部となる。
【0046】
(浸漬装置の搬送手段)
食器洗浄システム1の浸漬装置2に用いられる搬送手段21の構成について
図6を参照して説明する。
【0047】
搬送手段21は、食器篭5の搬送方向に2本並列に設けられた無端状のコンベアチェーン211を備え、この2本のコンベアチェーン211上に載置された食器篭5を搬送する。また、2本並列に設けられた無端状のコンベアチェーン211のうち、食器篭5を載置して搬送する往路側のコンベアチェーン211は、コンベアチェーン211と並行に設けられたコンベアガイドレール214の上面に載置され、摺動する。これにより、コンベアチェーン211が食器篭5を載置したときの質量でたわむことを防止して、確実にコンベアチェーン211により食器篭5を搬送することができる。
【0048】
搬送手段21は、食器篭5の搬送方向と平行に設けられコンベアチェーン211上に載置された食器篭5を安定に保持するための保持部213を有する。本実施形態では、保持部213は、2本のコンベアチェーン211の対向内側端面により構成されている。2本のコンベアチェーン211上に食器篭5を載置したとき、食器篭5の下面規制棒(ガイド部)56a,56bを保持部213、つまり本実施形態ではコンベアチェーン211の対向内側端面に近接または接触させる。
【0049】
次に、浸漬装置2の搬送手段21の動作を説明する。2本のコンベアチェーン211上に食器篭5を載置し、コンベアチェーン211を駆動することにより、食器篭5を搬送する。このとき、食器篭5の下面規制棒56a,56bと保持部213とでもって、食器篭5の搬送方向に直交する方向の位置を規制するので、食器篭5の安定搬送が可能となる。なお、本実施形態においては、保持部213は2本のコンベアチェーン211の対向内側端面自体を用いて構成の簡素化を図っているが、本実施形態の構成に限られるものではない。
【0050】
(浸漬装置の浸漬動作)
浸漬装置2における、噴射供給した浸漬水により食器6に付着した汚れ成分を湿潤させる動作を、
図1および
図7を参照して説明する。
【0051】
先ず、タンク223内に浸漬水(例えば清水)を所定の水位になるまで供給する。このとき必要に応じてタンク223内に浸漬水を供給した後、この浸漬水に洗剤を供給するとともに、高温蒸気供給等による加熱手段により浸漬水の温度を所定の温度、例えば40~50度Cに昇温する。ポンプ224を駆動しタンク223内の浸漬水を、供給経路を介してノズル管221に供給し、ノズル222から噴射を開始させる。ノズル222から噴射した浸漬水は、タンク223内に落下して貯水され循環使用する。
【0052】
一般的に、複数の食器6を収納した食器篭5は、喫食後、複数の食器6の表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねた状態で、食器篭5に収納した食器6に付着した汚れ成分が食器6から落下しないようにしつつ、食器篭5に収納した食器6を洗浄する設備へと運ばれる。
【0053】
食器篭5に収納した食器6を洗浄する設備内でも同様に、複数の食器6の表面側を上向きにして鉛直方向に積み重ねた状態で個々の食器篭5を運搬し、食器篭5に収納した食器6に付着した汚れ成分が食器から落下しないようにする。
【0054】
そして、食器篭5に収納した食器6を洗浄する設備で、本実施形態の食器洗浄システム1を用いて食器篭5に収納した食器6を洗浄するとき、食器篭5を縦姿勢のまま、浸漬装置2の搬入側でコンベアチェーン221上に載置して搬入する。この一連の流れにより、縦姿勢の食器篭5に収納された複数の食器6は、各々の食器6の上向きとなった表面側の内側に汚れ成分を留めた状態とする。
【0055】
これにより、食器篭5を浸漬装置2のコンベアチェーン211上に載置するとき、食器篭5に収納した複数の食器6に付着した汚れ成分が、作業場の床や、作業者に付着することを防止することができ、作業環境の悪化を防止することができる。
【0056】
浸漬装置2の浸漬水供給手段22によって、搬送される食器篭5に収納された食器列の最上端の食器6よりも上方から水平方向のノズル管221のノズル222から下方に向けて浸漬水が噴射される。この浸漬水は、先ず最上端の食器6の表面側の凹部に貯水され、この貯水された浸漬水は食器6の外周縁に沿って溢れ水として流下し、下方に位置する互いに隣り合う食器6の外周縁の上下方向の間隔から、積み重ねられ互いに隣り合う食器6の隙間に流入し、この隙間に順次、貯水される。
【0057】
互いに隣り合う食器6の隙間に流入、貯水されるとともに連続して噴射される浸漬水によって互いに隣り合う食器6の隙間に貯水した浸漬水の一部が常に入れ替わる。これにより、各食器6内を常に貯水状態に維持することができ、汚れ成分の湿潤が促進される。また、貯水した浸漬水が流動することにより、汚れ成分の一部が剥離して除去される。こうした浸漬作用が予備洗浄となり、食器洗浄システム1全体として洗浄の効果、効率をより高めることができる。
【0058】
さらに、縦方向のノズル管221のノズル222から浸漬水を水平方向に向けて食器篭5内の食器6に噴射する構成を付加した場合は、浸漬水が食器篭5の側方側からも食器6の外周縁に達し、互いに隣り合う食器6の隙間への貯水がより早くなるとともに、外周縁部の汚れ成分の除去も促進される。縦方向のノズル管221は必要に応じて設ければよい。
【0059】
ノズル管221のノズル222から食器篭5内の食器列に噴射された浸漬水は搬送手段21のコンベアチェーン211に流下した後、タンク223内に落下して貯水され再びポンプ224によって圧送され循環使用する。これによって、タンク223内に貯留させておく浸漬水の量を必要最小限とすることができ節水することができる。また、ポンプ224の能力制御によって供給する浸漬水の供給量を適切に調節することができる。
【0060】
従来、食器を食器篭等に入れて浸漬槽に貯水した浸漬水中に所定時間に亘って水没させる浸漬方法が主であった。それに対し、本実施形態による浸漬装置2においては、浸漬槽に食器6を全没させるのではなく、複数の食器6を収納した食器篭5ごと搬送しながら浸漬水を噴射し互いに隣り合う食器6間に貯水した浸漬水によって食器6に付着した汚れ成分を湿潤させるものである。
【0061】
本実施形態による浸漬装置2によれば、複数の食器6を浸漬槽内に浸漬させずに、縦姿勢に収納した食器篭5のまま浸漬水を各食器6内に貯水させて浸漬するので、食器6の食器篭5からの出し入れ作業が不要で、食器篭5の浸漬装置2への搬入、搬出の作業が簡略化され、作業性の向上、省力化が図れ、かつ浸漬に必要な最小限の浸漬水でよく、節水することができる。
【0062】
複数の食器6を積み重ねるように収納した食器列を縦姿勢として略水平方向に搬送するので、大量の食器6に付着した汚れ成分を浸漬水によって所定時間浸漬し、湿潤させるのに必要な装置を設置する床面積の省スペース化、装置のコンパクト化が図れる。
【0063】
また、浸漬水供給手段22により食器篭5内の食器6内への貯水を、複数の食器6を積み重ねるように収納した食器列の上方にある食器6の外周縁から下方にある食器6へと浸漬水を流下させることにより、速やかに行うことができ、貯水した浸漬水の入れ替えを促進し、十分な浸漬と洗浄作用が得られる。
【0064】
加えて本実施形態による浸漬装置2は、従来の浸漬方法のように、浸漬槽に貯水した浸漬水に複数回異なる食器篭5および食器6を浸漬させて浸漬水を汚してしまうものではなく、食器篭5に収納した各食器6に浸漬水を供給して複数の食器6に貯水し浸漬させて、後述する食器篭5の姿勢を姿勢変更手段31により変更するとき、浸漬水受け部23へと食器に付着していた汚れ成分を含んだ浸漬水を流れ落とし、排水する。これにより、食器6に付着していた汚れ成分が再び異なる食器6に再付着することを抑制して、従来の浸漬装置による洗浄に比較して、食器6の洗浄性を大きく向上させることができる。
【0065】
さらに、複数の食器6を表面側を上方向にして鉛直方向に積み重ねて食器篭5に収納したまま食器6に浸漬水を供給して、食器6に貯水することで食器6の浸漬を行うため、従来の浸漬装置のように、浸漬槽に貯水した浸漬水内で食器6が浮かび上がり、食器6の汚れ成分が浸漬水に浸漬されなくなるおそれがなくなる。これにより、食器6に付着した汚れ成分を浸漬水により確実に浸漬して湿潤させ、後述の洗浄装置4で行う食器6の洗浄をより効果的に行うことができる。
【0066】
さらに、食器篭5に表面側を上方向にして鉛直方向に積み重ねた食器6は、食器篭5の食器支持部53a,53b,53c,53dにより、安定した状態で保持されている。これにより、食器篭5内に積み重ねる食器6の枚数が多くなったとしても、食器列が倒れたりせず、鉛直方向に積み重ねた状態とすることができ、食器6内への貯水状態を維持して浸漬工程を実施することができる。
【0067】
なお、食器篭5に複数の食器6を積み重ねるように収納することについて補足しておくと、隣り合う食器6の表面側の少なくとも一部と裏面側の少なくとも一部が接触した状態として積み重ねるように収納してもよいし、各々の食器6を保持する保持部材を食器篭5に設け、隣り合う食器6を接触していない状態で積み重ねるように収納してもよい。積み重ねるように収納した食器列の隙間を小さくすることにより、食器6内に貯水する浸漬水の量を少なくすることができ、浸漬装置2として、より節水することができる。
【0068】
(移載装置)
食器洗浄システム1の移載装置3の構成について
図8および
図9を参照して説明する。
【0069】
移載装置3は、浸漬装置2と洗浄装置4との間にあって、浸漬装置2の搬送手段21により搬送された食器篭5を受け取り、さらには、洗浄装置4の搬送手段41上に移載するものである。移載装置3は、移載動作時に、食器篭5を縦姿勢から横姿勢に変更させる姿勢変更手段31を備えている。
【0070】
姿勢変更手段31は、浸漬装置2の搬送手段21により搬送される縦姿勢の食器篭5の下面となる下枠52を受けて載せる載せ板32と、食器篭5の背面規制棒55a,55bの有る食器篭5の背面を受ける受け板33と、それらの回動機構としての回動軸34と、回動軸34を回動駆動させる回動駆動部35と、回動軸34を回動自在に保持する軸受け部36とを備える。載せ板32と受け板33とは、回動軸34を軸心に正面視で略L字状(略90度)になるよう回動軸34に固定されている。
【0071】
姿勢変更手段31は、回動駆動部35により、
図9(a)に示す浸漬装置2から食器篭5を受け取る浸漬装置2からの受取位置と、
図9(c)に示す洗浄装置4へと食器篭5を載置する洗浄装置4への載置位置との間を回動させて食器篭5を移載するよう構成される。
【0072】
図9(a)に示す姿勢変更手段31が浸漬装置2からの受取位置にあるとき、載せ板32は、浸漬装置2の搬送手段21の終端部で2本の並行するコンベアチェーン211間に入り込み、搬送される食器篭5を受け取ることができるように構成されている。載せ板32の食器篭5を受けて載せる面は、コンベアチェーン211の搬送面である上面と、略同一高さ、もしくは少し低くなるように位置している。
【0073】
受け板33は、
図9(a)に示す状態から略90度回動して
図9(c)に示す洗浄装置4への載置位置にきたとき、洗浄装置4の搬送手段41の始端部で2本の並行するコンベアチェーン411間に入り込み、食器篭5をコンベアチェーン411に載置することができるように構成されている。受け板33の食器篭5を受けて載せる面は、コンベアチェーン411の搬送面である上面と、略同一高さ、もしくは少し低くなるように位置している。
【0074】
なお、本実施形態では、浸漬装置2の搬送手段21であるコンベアチェーン211と、洗浄装置4の搬送手段41であるコンベアチェーン411とは、同じ高さレベルにある。
【0075】
【0076】
載せ板32および受け板33は、食器篭5の移載動作のための回動駆動部35の駆動により、回動軸34の回りに、
図9(a)に示す浸漬装置2からの受取位置から、
図9(b)の状態を経て、
図9(c)に示す洗浄装置4への載置位置に回動する。その後、載せ板32および受け板33は、回動駆動部35の逆方向への駆動により、元の状態である浸漬装置2からの受取位置に戻される。これらの動作は、制御装置10により制御される。
【0077】
次に、移載装置3により食器篭5を移載する動作について
図10を参照して説明する。
【0078】
図10(a)は、浸漬装置2の搬送手段21により縦姿勢で搬送された食器篭5が、浸漬装置2からの受取位置にある姿勢変更手段31の載せ板32上に縦姿勢で載せられた状態を示す。より具体的には、コンベアチェーン211の搬送面と載せ板32の食器篭5を載せる面とが略同一高さにある場合、食器篭5の下枠52の下面規制棒56a,56b間の部分が、載せ板32に載置された状態となっている。
【0079】
コンベアチェーン211の搬送面に対して載せ板32の食器篭5を載せる面が少し下に位置する場合、食器篭5は載せ板32に載置された状態にはなく、食器篭5の下枠52はコンベアチェーン211の搬送面に載置された状態にあり、移載装置3の回動に伴って食器篭5は載せ板32に載置された状態となる。
【0080】
この状態から、食器篭5を縦姿勢から横姿勢に変更するために回動駆動部35が駆動され、
図10(b)の状態を経て、載せ板32および受け板33が回動軸34の回りに略90度回動される。これにより、
図10(c)に示すように、食器篭5は、洗浄装置4への載置位置にある姿勢変更手段31の受け板33上に載せられた横姿勢状態となる。
【0081】
より具体的には、コンベアチェーン411の搬送面と受け板33の食器篭5を載せる面とが略同一高さにある場合、食器篭5の下枠52と上枠51との背面規制棒55a,55b間の部分が、受け板33に載置された状態となっている。
【0082】
コンベアチェーン411の搬送面に対して受け板33の食器篭5を載せる面が少し下に位置する場合、食器篭5は受け板33に載置された状態にはなく、食器篭5の下枠52と上枠51の食器篭5の背面側の部分はコンベアチェーン411の搬送面に載置された状態となる。この状態で、食器篭5は洗浄装置4の搬送手段41であるコンベアチェーン411によって洗浄装置4内に搬送される。
【0083】
コンベアチェーン411により食器篭5が搬送され、受け板33上に食器篭5がなくなると、姿勢変更手段31は、浸漬装置2からの受取位置に戻される。
【0084】
食器6が収納された食器篭5が移載装置3に載せられた状態について
図11~
図13を参照して説明する。いずれも、移載装置3に食器篭5が縦姿勢で載せられた状態である。
【0085】
載せ板32の搬送方向に平行な両側端面間の幅は、食器篭5の下面規制棒56aと56bとの間の幅に対して若干の隙間をあけて狭くなるよう構成される。これにより、載せ板32の搬送方向に平行な両側端面に、食器篭5の下面規制棒56a,56bが近接または接触することで、食器篭5は搬送方向に直交する方向の位置を規制される。
【0086】
また、受け板33の搬送方向に平行な両側端面間の幅は、食器篭5の背面規制棒55aと55bとの間の幅に対して若干の隙間をあけて狭くなるよう構成される。これにより、受け板33の搬送方向に平行な両側端面に、食器篭5の背面規制棒55a,55bが近接または接触することで、食器篭5は搬送方向に直交する方向の位置を規制される。
【0087】
姿勢変更手段31により、食器篭5の姿勢を縦姿勢から横姿勢へと姿勢を変更しつつ、浸漬装置2の搬送手段21から洗浄装置4の搬送手段41へと移載するときは、搬送手段21,41を停止するよう制御するのが好ましい。
【0088】
その場合は、浸漬装置2からの受取位置と、洗浄装置4への載置位置とに、食器篭5が位置したことを検知するセンサを設ける。そして、浸漬装置2からの受取位置に食器篭5が位置したときに搬送手段21,41を停止し、食器篭5が洗浄装置4への載置位置に食器篭5が位置したときに搬送手段41を駆動させ、移載装置3が浸漬装置2からの受取位置に戻ったら搬送手段21を駆動させるように制御する。
【0089】
搬送手段21,41を停止することにより、移載途中の食器篭5がコンベアチェーン211,411に接触して、食器篭5が予期せぬ方向へと移動しまうことを防止することができる。
【0090】
なお、姿勢変更手段31により、食器篭5の姿勢を縦姿勢から横姿勢へと姿勢を変更しつつ、浸漬装置2の搬送手段21から洗浄装置4の搬送手段41へと移載するときに、搬送手段21,41を駆動させたままとしてもよい。その場合は、浸漬装置2の搬送手段21により食器篭5を搬送する速度と、姿勢変更手段31の受け板33および載せ板32の回動速度と、浸漬装置2の搬入側における食器篭5を投入するタイミングとを、それぞれ合わせるように適宜調整するとよい。
【0091】
このようにして、食器篭5を浸漬装置2の搬送手段21から洗浄装置4の搬送手段41へ回動移載することが可能となり、省人化可能なシステムとなる。ここに、浸漬装置2の搬送手段21であるコンベアチェーン211と、洗浄装置4の搬送手段41であるコンベアチェーン411とが、同じ高さレベルにあり、かつ、載せ板32とコンベアチェーン211、受け板33とコンベアチェーン411とが、それぞれ同じ高さレベルにある。このため、姿勢変更手段31は、単に回動するだけの簡単な構成で済む。
【0092】
また、
図1に示すように、移載装置3の下方には、浸漬装置2の側部に設けた浸漬水受け部23を備える。移載装置3により食器篭5の姿勢を縦姿勢から横姿勢へと変更したときに、食器篭5に収納した複数の食器6に貯水されていた浸漬水は食器篭5とともに傾いた複数の食器6から流動し、下方に流れ落ちる。浸漬水受け部23は、その流れ落ちた浸漬水を受けることができる。浸漬水受け部23により受けた浸漬水は、浸漬水受け部23の下部に接続する管路231により、図示しない設備側の排水管へと排水される。
【0093】
さらに、移載装置3の下方で、浸漬装置2の側部に設けた浸漬水受け部23に隣接するように、後述する洗浄装置4の側部には浸漬水受け部43を備える。洗浄装置4に備える浸漬水受け部43は、浸漬装置2に備える浸漬水受け部23と同様に、姿勢変更手段31により食器篭5の姿勢を縦姿勢から横姿勢へと変更したとき、食器篭5に収納した複数の食器6から流動し、下方に流れ落ちる浸漬水を受けることができる。浸漬水受け部43により受けた浸漬水は、浸漬水受け部43の下部に接続する管路431により、図示しない設備側の排水管へと排水される。
【0094】
これら浸漬水受け部23,43により、姿勢変更手段31で食器篭5の姿勢を変更した際に、食器篭5に収納した複数の食器6に貯水する浸漬水を受けることができるが、その浸漬水には、複数の食器6に付着していた汚れ成分が含まれている。これにより、浸漬水を貯水した複数の食器6を収納した食器篭5の姿勢を姿勢変更手段31により変更するだけで、複数の食器6に付着していた汚れ成分を流し落し、容易に洗浄することができる。
【0095】
なお、食器篭5の姿勢を縦姿勢から横姿勢へと変更するときに、受け板33には、複数の食器6に貯水されていた浸漬水が流れ落ちてくる。このとき、受け板33は平板状に形成されているため、複数の食器6に貯水されていた浸漬水が浸漬水受け部23,43へと流れ落ちる際に受け板33に接触し、周囲に飛散するおそれがある。このため、受け板33に少なくとも一つの開口部を設けることにより、複数の食器6に貯水されていた浸漬水を、開口部を通じて浸漬水受け部23,43へと流し落とすことで、周囲への飛散を抑制することができる。
【0096】
なお、食器篭5に収納した複数の食器6に付着した汚れ成分が少ない等により、複数の食器6に貯水する浸漬水に含まれる汚れ成分が少ないときには、浸漬水受け部23の下部に接続する管路231をタンク223へと接続して、浸漬水受け部23により受けた浸漬水をタンク223へと流動させてもよい。また、浸漬水受け部43の下部に接続する管路431を、浸漬装置2のタンク223、または後述の洗浄装置4のタンク423へと接続して、浸漬水受け部43により受けた浸漬水をタンク223またはタンク423へと流動させてもよい。これにより、食器6に付着した汚れ成分を湿潤させるための浸漬水を再利用し、浸漬装置2および洗浄装置4で使用する水の量を減らすことができる。
【0097】
しかしながら、複数の食器5に貯水した浸漬水をタンク223,423へと流動させることにより、食器6に付着していた汚れ成分を含んだ浸漬水をタンク223,423に貯水する浸漬水、洗浄水へと混入させることとなるため、タンク223,423に貯水する浸漬水、洗浄水が汚れてしまうおそれがある。そのため、姿勢変更手段31で食器篭5の姿勢を変更するとき、食器篭5に収納した複数の食器6から流動し、下方に流れ落ちる浸漬水は、排水するのが好ましい。
【0098】
本実施形態の食器洗浄システム1では、移載装置3により、浸漬装置2からの受取位置に搬送された食器篭5を洗浄装置4への載置位置に移載する姿勢変更移載工程を実施し、食器篭5に収納された食器6に貯水された汚れ成分を含んだ浸漬水が、移載装置3の下方に設けた浸漬水受け部23,43により回収される。つまり、作業者の手により姿勢変更移載工程を実施する必要がない。これにより、食器篭5に収納された食器6に貯水された汚れ成分を含んだ浸漬水が、作業者に付着したり、作業場の床に落下したりすることを防止し、作業環境の悪化を防止することができる。
【0099】
なお、本実施形態においては、移載装置3を設けたが、浸漬洗浄処理する食器篭5の数が少ない場合等には、移載装置3を設けなくてもよい。この場合、作業者を配置して縦姿勢から横姿勢に姿勢変更しながら、浸漬装置2から洗浄装置4へと食器篭5を移載すればよい。
【0100】
また、移載装置3を設けず、代わりに浸漬装置2と洗浄装置4との間に、各々の食器6に浸漬水を貯水した縦姿勢の状態で、食器篭5を載置しておくテーブルまたはシンク等を配置してもよい。これにより、浸漬工程において供給された浸漬水を、各々の食器6に貯水した状態でテーブルまたはシンク等に載置し、食器6に付着した汚れ成分の種類や状態等に応じて、食器篭5の浸漬時間を調整することができる。
【0101】
そして、食器6に付着した汚れ成分が湿潤し、食器6から汚れ成分の除去をより確実にすることができる状態となった後に、洗浄装置4への載置位置へと食器篭5を横姿勢で載置し、食器篭5を搬送しつつ食器篭5に収納された食器6を洗浄することで、食器6に付着した汚れ成分に応じた洗浄を行うことができる。
【0102】
(洗浄装置)
図1、
図14および
図15を用いて、移載装置3により姿勢を変更されて移載された食器篭5を搬送しながら食器篭5内に収納された食器6の表裏面に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施する洗浄装置4の構成を説明する。
【0103】
洗浄装置4は、移載装置3により移載された食器篭5を搬送する搬送手段41と、食器篭5ごと搬入された食器列の各食器6の表裏面に洗浄水を噴射する洗浄水供給手段42と、を備える。食器篭5は、移載装置3により浸漬装置2での縦姿勢から横姿勢に変更されて洗浄装置4の搬送手段41上に載置され、この横姿勢の状態で搬送手段41により搬送されながら洗浄される。
【0104】
図14および
図15に示すように、搬送手段41は、食器篭5の搬送方向に2本並列に設けられた無端状のコンベアチェーン411を備え、この2本のコンベアチェーン411上に載置された食器篭5を搬送する。コンベアチェーン411は、スプロケット412に懸架されている。また、2本並列に設けられた無端状のコンベアチェーン411のうち、食器篭5を載置して搬送する往路側のコンベアチェーン411は、コンベアチェーン411と並行に設けられたコンベアガイドレール414の上面に載置され、摺動する。これにより、コンベアチェーン411が食器篭5を載置したときの質量でたわむことを防止して、確実にコンベアチェーン411により食器篭5を搬送することができる。
【0105】
搬送手段41は、食器篭5の搬送方向と平行に設けられコンベアチェーン411上に載置された食器篭5を安定に保持するための保持部413を有する。本実施形態では、保持部413は、2本のコンベアチェーン411の対向内側端面により構成されている。2本のコンベアチェーン411上に食器篭5を載置したとき、食器篭5の背面規制棒(ガイド部)55a,55bを保持部413、つまり本実施形態ではコンベアチェーン411の対向内側端面に近接または接触させる。
【0106】
次に、洗浄装置4の搬送手段41の動作を説明する。
【0107】
2本のコンベアチェーン411上に食器篭5を載置し、コンベアチェーン411を駆動することにより、食器篭5を搬送する。このとき、食器篭5の背面規制棒55a,55bと保持部413とでもって、食器篭5の搬送方向に直交する方向の位置を規制するので、食器篭5の安定搬送が可能となる。なお、本実施形態においては、保持部413は2本のコンベアチェーン411の対向内側端面自体を用いて構成の簡素化を図っているが、本実施形態の構成に限られるものではない。
【0108】
洗浄水供給手段42は、食器篭5の搬送方向で、食器篭5の少なくとも上方で水平方向に配置された複数のノズル管421と、このノズル管421に設けられ食器篭5内の食器6に向けて洗浄水を噴射する複数のノズル422を備える。ノズル管421およびノズル422は、食器篭5の搬送方向に沿って複数配置されている。
【0109】
また、
図1に示すように、搬送手段41の下方位置に洗浄水を所定量貯水するタンク423を備え、タンク423内の洗浄水を供給経路を介してノズル管421に供給するポンプ424を備える。ノズル管421の複数のノズル422から噴射された洗浄水は、タンク423内に落下して回収され循環使用される。
【0110】
なお、タンク423には洗浄水(例えば清水)を供給する経路と、タンク423内の洗浄水を所定の水位に保つために用いられる水位検出手段を備える。また、タンク423内の洗浄水の温度を、所定の温度、例えば40~60度Cに昇温する加熱手段、洗剤を供給する洗剤供給手段、ポンプ424の吸込側に汚れ成分を捕集して洗浄水から汚れ成分を分離するフィルタ等を備える。洗浄水の昇温、洗剤供給によって食器6に付着した汚れ成分の洗浄効果を向上させ、汚れ成分の除去をより確実なものとすることができる。また、フィルタによって、循環使用する洗浄水をより清浄化して洗浄水をノズル422から噴射し、汚れ成分の除去効果をより向上させることができる。
【0111】
次に、洗浄装置4の運転動作を説明する。
【0112】
先ず、タンク423内に洗浄水(例えば清水)を所定の水位になるまで供給する。このとき必要に応じてタンク423内に洗浄水を供給した後、この洗浄水に洗剤を供給するとともに、高温蒸気供給等による加熱手段により洗浄水の温度を所定の温度、例えば40~60度Cに昇温する。ポンプ424を駆動しタンク423内の洗浄水を、供給経路を介してノズル管421に供給し、ノズル422から噴射を開始させる。ノズル422から噴射した洗浄水は、タンク423内に落下して回収され循環使用する。
【0113】
さらに、コンベアチェーン411の回転駆動を開始する。この状態で、移載装置3から食器篭5が移載されるのを待機する。
【0114】
コンベアチェーン411の駆動により、浸漬工程を経て移載装置3により洗浄装置4のコンベアチェーン411に載置された複数の食器6を収納した食器篭5は、搬送されながら洗浄水の噴射を受ける。このとき、食器篭5は横姿勢であるので、食器列の隣り合う食器6間にも洗浄水が流入し、各食器6の表裏面に付着した汚れ成分が除去される。
【0115】
各食器6の表裏面に付着した汚れ成分が除去されるとともに、噴射された洗浄水は搬送される食器篭5にも当たるので、洗浄水の噴射により複数の食器6とともに、複数の食器6を収納する食器篭5を洗浄することができる。
【0116】
ここに、食器6を食器篭5に収納したまま、搬送される食器篭5の姿勢を浸漬工程と洗浄工程との間で姿勢変更移載工程により変更しており、浸漬工程に続いて食器6を洗浄する洗浄工程を一連に実施でき、作業性を高めることができる。
【0117】
前洗浄として食器篭5に収納した複数の食器6に浸漬水を貯水し、各々の食器6に付着する汚れ成分を湿潤させ、姿勢変更手段31により食器篭5の姿勢を縦姿勢から横姿勢へと変更したとき、各々の食器6に付着していた汚れ成分とともに、浸漬水を浸漬水受け部23,43に排水しているので、汚れ成分が洗浄装置4のタンク423に混入しにくい。これにより、洗浄装置4で食器篭5に収納する食器6に向けて噴射し、タンク423へと流下した洗浄水に含まれる汚れ成分は少なくて済み、洗浄装置4で循環させて使用する洗浄水の洗浄効果を維持しやすくすることができる。
【0118】
なお、搬送方向に配置したノズル422には、高速、および低速の水流を噴出させてキャビテーション噴流を生じさせるものを用いれば、洗浄効果をより高めることができる。
【0119】
このように、食器篭5は、移載装置3から搬送手段41のコンベアチェーン411上に移載され、順次搬送される。姿勢変更移載工程で食器篭5を浸漬装置2のコンベアチェーン211から洗浄装置4のコンベアチェーン411へと移載するときに、搬送手段21,41の駆動を制御して、コンベアチェーン411上に互いに隣り合う食器篭5間が適宜の間隔をおいて載置されるように制御装置10により制御している。これにより、食器篭5同士の重なりを防止して確実な洗浄を行うことができる。そして、食器6の洗浄を終えた食器篭5は、順次、洗浄装置4の搬出側より搬出される。
【0120】
本実施形態においては、洗浄装置4における搬送時の食器篭5の向きを横姿勢で積み重ね方向が搬送方向と平行となる方向としており、食器篭5に収納した食器6を1枚ずつ離間しながら洗浄する離間洗浄に適した食器篭5の向きとなっている。なお、洗浄装置4における搬送時の食器篭5の向きを横姿勢で積み重ね方向が搬送方向と直交する方向として、食器6の表裏面に噴射される洗浄水により洗浄するように食器洗浄システムを構成してもよい。
【0121】
(変形例)
次に、食器洗浄システム1の変形例について、
図16~
図18を参照して説明する。
【0122】
図16に示すように、この変形例の浸漬装置7は、浸漬水供給手段22から供給される浸漬水を貯水するタンク723が搬送手段21を下方から包み込むように配置されている。そして、タンク723には、搬送手段21により搬送される縦姿勢の食器篭5に収納された食器列の最下端の食器6の裏面側が浸漬水に水没する水位(L)まで浸漬水を貯水する。搬送手段21のコンベアチェーン211は、タンク723内の浸漬水に水没した状態になる。
【0123】
このようにタンク723が構成されていることに関係して、浸漬装置7のコンベアチェーン211は、洗浄装置4の搬送手段41のコンベアチェーン411の高さレベルよりも低い位置に配置されている。そして、移載装置8は、高さに差の有る浸漬装置7の搬送手段21から洗浄装置4の搬送手段41への食器篭5の回動移載を可能とするように構成されている。その他の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0124】
前述の実施形態の浸漬装置2においては、食器篭5に収納された食器列の最下端の食器6の裏面は、最下端の食器6に貯水され溢れ水として流下する浸漬水により浸漬され、汚れ成分は湿潤、除去されるが、汚れ成分によっては必ずしも十分に浸漬されていないことがある。しかし、この変形例の食器洗浄システムによれば、食器列の最下端の食器6の裏面が浸漬水に水没して、食器6の裏面側の浸漬洗浄性を高めることができる。
【0125】
本発明は、上記実施形態および変形例の構成に限られず、種々の変形が可能であり、食器洗浄システムの浸漬装置2,7、移載装置3,8および洗浄装置4は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意の変形構成を採用し得る。例えば、一つの洗浄レーンで、搬送レーンを構成する浸漬装置2の搬送手段21、移載装置3の姿勢変更手段31、洗浄装置4の搬送手段41を併設させ、並列に複数の搬送レーンを設けてもよい。
【0126】
つまり、併設された複数の搬送手段21により食器篭5を併行搬送し、浸漬水供給手段22が、その搬送手段21の各々で搬送される食器篭5内の食器6に向けて浸漬水を供給するものとしてもよい。これにより、単位時間当たりで、より多くの食器篭に収納した食器に浸漬水を貯水させて、浸漬することができる。
【0127】
そして、浸漬装置2の搬送手段21により浸漬装置2からの受取位置へと搬送された食器篭5は、併設された複数の姿勢変更手段31により、洗浄装置4への載置位置へと姿勢を変更しつつ、移載される。
【0128】
さらに、洗浄装置4への載置位置へと姿勢を変更しつつ載置された食器篭5を、併設された複数の搬送手段41により併行搬送し、その搬送手段41の各々で搬送される食器篭5内の食器6に向けてノズル422から洗浄水を噴射して洗浄するものとしてもよい。
【0129】
これにより、一つの洗浄レーンとして、単位時間あたりで、より多くの食器篭5に収納した食器6を洗浄することができる。
【0130】
さらには、複数の食器篭5を連結可能とし、連結したまま浸漬工程を実施し、分離して、若しくは連結したまま洗浄工程を実施してもよい。バッチ式で浸漬工程を実施してもよい。また、浸漬工程において、浸漬水を水平方向および鉛直方向の噴射ノズルから高圧噴射することにより、食器に付着した汚れ成分を吹き飛ばして荒洗浄するようにしてもよい。また、浸漬装置2,7と洗浄装置4との搬送速度を同じとした場合は、搬送手段21,41を両装置に跨った1つのもので構成することも可能である。また、食器篭5に食器6だけでなく、トレイを収納して浸漬工程、洗浄工程を実施してもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 食器洗浄システム
2 浸漬装置
21 搬送手段
211 コンベアチェーン
212 スプロケット
213 保持部
214 コンベアガイドレール
22 浸漬水供給手段
221 ノズル管
222 ノズル
223 タンク
224 ポンプ
23 浸漬水受け部
231 管路
3 移載装置
31 姿勢変更手段
32 載せ板
33 受け板
34 回動軸
35 回動駆動部
36 軸受け部
4 洗浄装置
41 搬送手段
411 コンベアチェーン
412 スプロケット
413 保持部
414 コンベアガイドレール
42 洗浄水供給手段
421 ノズル管
422 ノズル
423 タンク
424 ポンプ
43 浸漬水受け部
431 管路
5 食器篭
51 上枠
52 下枠
53a,53b,53c,53d 食器支持部
54a,54b,54c,54d 左右側枠
55a,55b 背面規制棒(ガイド部)
56a,56b 下面規制棒(ガイド部)
57 下板
58 食器出入用開口部
581 上規制部
59 前面開口部
6 食器
7 浸漬装置
723 タンク
8 移載装置
81 姿勢変更手段
82 載せ板
83 受け板
84 回動軸
85 回動駆動部
86 軸受け部
10 制御装置