IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 出光ライオンコンポジット株式会社の特許一覧 ▶ ハリマ化成株式会社の特許一覧 ▶ 中越パルプ工業株式会社の特許一覧

特許7199812セルロースファイバー分散剤、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法及び成形体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】セルロースファイバー分散剤、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 93/04 20060101AFI20221226BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20221226BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20221226BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C08L93/04
C08K7/02
C08L23/00
C08L1/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018027216
(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公開番号】P2019143016
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000104364
【氏名又は名称】出光ファインコンポジット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591023642
【氏名又は名称】中越パルプ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】山本 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅和
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 敬司
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-219571(JP,A)
【文献】特開2016-216607(JP,A)
【文献】特開2015-183153(JP,A)
【文献】特開2003-055891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物中にセルロースファイバーを分散させるために用いられるセルロースファイバー用分散剤であって、
酸変性率が0.08~4.0質量%であるフマル酸変性ロジンを含むセルロースファイバー分散剤。
【請求項2】
下記(A)成分及び(B)成分を、下記(A)成分と(B)成分の合計量に基づいて、下記の割合で含む第1の樹脂組成物。
(A)請求項1に記載のセルロースファイバー分散剤 0.1~99.9質量%
(B)水分量が、セルロースファイバーと水分の合計に対して、50質量%以上99.0質量%以下であるセルロースファイバー 0.1~99.9質量%
【請求項3】
前記(B)成分のセルロースファイバーの平均繊維径が3nm~50μmである請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が植物由来のセルロースファイバーである請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
下記(A)~(C)成分を、下記(A)~(C)成分の合計量に基づいて、下記の割合で含む第2の樹脂組成物。
(A)請求項1に記載のセルロースファイバー分散剤 0.01~89.0質量%
(B)セルロースファイバー 0.05~80.0質量%
(C)ポリオレフィン系樹脂 10.0~99.9質量%
【請求項6】
前記(B)成分のセルロースファイバーの平均繊維径が3nm~50μmである請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が植物由来のセルロースファイバーである請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)成分がポリプロピレンである請求項5~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C)成分の230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが、0.1~200g/10分である請求項5~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記(A)~(C)成分の合計量に基づいて、前記(A)成分の含有割合が0.01~50.0質量%であり、前記(B)成分の含有割合が0.05~50.0質量%であり、前記(C)成分の含有割合が20.0~99.9質量%である請求項5~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
水を含んだ状態のセルロースファイバーと、請求項1に記載のセルロースファイバー分散剤とを混練する工程、及び、
前記工程で得られた混合物と熱可塑性樹脂とを溶融混練する工程
を含む樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項5~11のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製した成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースファイバー分散剤、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースファイバーは、軽量、高弾性率、かつ高強度であるため、樹脂の補強材として注目されている。しかしながら、分子鎖中に多くの水酸基を有するため親水性が高く、加熱すると繊維間の水分が蒸発して自己凝集を起こしやすい。そのため、樹脂に均一に分散させることが難しい。特に、ナノレベルまで解繊したセルロースナノファイバーは乾燥中に凝集しやすく、樹脂と複合させた場合に複合材中に凝集物が残留しやすい。
【0003】
上記の課題を解決すべく、種々の試みがなされている。
特許文献1には、熱可塑性樹脂、植物繊維、ロジン系樹脂及び植物性油を含む熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、天然繊維、熱可塑性ポリマー及び分散樹脂を主成分とする天然繊維複合体組成物が開示されている。
特許文献3には、特定の製造方法により得られたセルロース繊維/樹脂複合組成物が開示されている。
また、セルロースナノファイバーは、無極性の樹脂であるポリプロピレン等にはほとんど親和せず、セルロースナノファイバーに化学修飾を施さずにポリプロピレンに均一分散させた例はほとんどない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-294080号公報
【文献】特開2012-111855号公報
【文献】特開2015-183153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の樹脂組成物は、繊維の分散性が不十分であったため、繊維の凝集や、繊維添加による効果(機械的物性の向上等)が十分に発揮されないといった問題があった。また、分散性を向上するために繊維分散工程等をさらに設ける場合があるが、経済的ではなかった。
本発明の目的は、樹脂中にセルロースファイバーを十分に分散させることができるセルロースファイバー分散剤、及び、機械的物性が高い成形体を製造可能な樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の物性を有するロジン化合物を用いると樹脂中にセルロースファイバーを十分に分散させることができ、これを用いた樹脂組成物により優れた機械的物性を有する成形体が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.酸変性率が0.08~4.0質量%である酸変性ロジンを含むセルロースファイバー分散剤。
2.前記酸変性ロジンがα,β-不飽和ジカルボン酸変性ロジンである1に記載のセルロースファイバー分散剤。
3.下記(A)成分及び(B)成分を下記の割合で含む第1の樹脂組成物。
(A)1又は2に記載のセルロースファイバー分散剤 0.1~99.9質量%
(B)セルロースファイバー 0.1~99.9質量%
4.前記(B)成分のセルロースファイバーの平均繊維径が3nm~50μmである3に記載の樹脂組成物。
5.前記(B)成分が植物由来のセルロースファイバーである3又は4に記載の樹脂組成物。
6.下記(A)~(C)成分を下記の割合で含む第2の樹脂組成物。
(A)1又は2に記載のセルロースファイバー分散剤 0.01~89.0質量%
(B)セルロースファイバー 0.05~80.0質量%
(C)熱可塑性樹脂 10.0~99.9質量%
7.前記(B)成分のセルロースファイバーの平均繊維径が3nm~50μmである6に記載の樹脂組成物。
8.前記(B)成分が植物由来のセルロースファイバーである6又は7に記載の樹脂組成物。
9.前記(C)成分がポリオレフィン系樹脂である6~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.前記(C)成分がポリプロピレンである6~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
11.前記(C)成分の230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが、0.1~200g/10分である6~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
12.前記(A)成分の含有割合が0.01~50.0質量%であり、前記(B)成分の含有割合が0.05~50.0質量%であり、前記(C)成分の含有割合が20.0~99.9質量%である6~11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.水を含んだ状態のセルロースファイバーと、酸変性率0.08~4.0質量%である酸変性ロジンを含むセルロースファイバー分散剤とを混練する工程、及び、
前記工程で得られた混合物と熱可塑性樹脂とを溶融混練する工程
を含む樹脂組成物の製造方法。
14.6~12のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製した成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂中にセルロースファイバーを十分に分散させることができるセルロースファイバー分散剤、及び、機械的物性が高い成形体を製造可能な樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。
【0009】
[セルロースファイバー分散剤]
本発明の一態様に係るセルロースファイバー分散剤は、酸変性率が0.08~4.0質量%である酸変性ロジンを含む。
セルロースファイバー分散剤は、セルロースファイバー、熱可塑性樹脂及び水との親和性が高い。即ち、セルロースファイバーを疎水化することができる疎水化剤としての機能を有し、セルロースファイバーを樹脂組成物中に均一に分散することができる。また、セルロースファイバーの凝集を抑制できる。これにより、後述するように、当該セルロースファイバー分散剤を含む樹脂組成物を用いると、高い機械的物性を有する成形体が得られる。
【0010】
酸変性ロジンとは、ロジンをα,β-不飽和カルボン酸等の酸によって変性した化合物である。酸変性ロジンは、例えば、ロジンとα,β-不飽和カルボン酸とのディースル・アルダー反応により得られる。
【0011】
ロジンは、針葉樹等の樹木(例えば、松等)から分泌される固体炭化水素等として得られ、反応性二重結合を有する樹脂酸を含む物質である。樹脂酸とは、樹木由来のカルボキシル基を有する化合物であり、反応性二重結合を有する樹脂酸として具体的には、例えば、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、レボピマール酸等が挙げられる。
ロジンとα,β-不飽和カルボン酸とを反応させると、ロジン中の樹脂酸中の反応性二重結合とα,β-不飽和カルボン酸とがディースル・アルダー反応を起こして酸変性体が得られる。
【0012】
ロジンとしては、不均化処理、水素添加(水添)処理、石油樹脂変性処理、重合処理等の変性処理を行っていない無変性ロジン(未変性ロジン)であってもよいし、当該処理のうち1以上を行った変性ロジンであってもよい。
無変性ロジンとしては、例えば、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等が挙げられ、好ましくは、ガムロジンである。
ロジンは、1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0013】
α,β-不飽和カルボン酸としては、α,β-不飽和モノカルボン酸及びα,β-不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。α,β-不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられ、α,β-不飽和ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。ロジンとの付加反応の観点から、好ましくは、α,β-不飽和ジカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸が挙げられる。
α,β-不飽和カルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0014】
ロジンとα,β-不飽和カルボン酸との配合割合は、ロジン1モルに対して、例えば、α,β-不飽和カルボン酸類が1モル以下である。
ロジンとα,β-不飽和カルボン酸との反応温度は、例えば、150~300℃であり、反応時間は、例えば、1~24時間である。この反応においては、必要に応じて公知の触媒を適宜の割合で配合することもできる。
上記の配合割合、反応温度及び反応時間を適宜調整することにより、所定の酸変性率を有する酸変性ロジンを得ることができる。
【0015】
酸変性ロジンとしては、例えば、α,β-不飽和ジカルボン酸による変性体であるα,β-不飽和ジカルボン酸変性ロジンが挙げられ、好ましくは、フマル酸による変性体であるフマル酸変性ロジン(フマル化ロジン)、マレイン酸又は無水マレイン酸による変性体であるマレイン酸変性ロジン(マレイン化ロジン)が挙げられ、より好ましくはマレイン酸変性ロジンが挙げられる。
酸変性ロジンは、1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0016】
酸変性ロジンの酸変性率は0.08質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、とりわけ好ましくは2.5質量%以上である。
酸変性ロジンの酸変性率は4.0質量%以下であり、好ましくは3.7質量%以下、より好ましくは3.4質量%以下、さらに好ましくは3.2質量%以下、とりわけ好ましくは3.1質量%以下である。
【0017】
酸変性率は、原料ロジン(変性ロジン又は無変性ロジン)に対する、変性に用いる酸の質量割合であり、(酸の質量/原料ロジンの質量)×100により算出する。
【0018】
酸変性済みロジンの酸変性率は以下のように測定する。
熱分解炉に、微少の酸変性ロジンと水酸化テトラメチルアンモニウムを1滴入れて熱分解し、連結したガスクロマトグラフィーに移行し、下記条件でガスクロマトグラフィー分析を行う。分解したピークより、ロジン部分と酸変性部分との面積比から酸変性率を算出する。
・使用機種:ガスクロマトグラフィー「Agilent7890A」(アジレントテクノロジー社製)
・熱分解炉:「PY3030S」(フロンティア・ラボ株式会社製)
・ガスクロマトグラフィー(GC)運転条件
カラム:UA-5(30m/0.25μm)
温度:150~250℃(20分保持)、4℃/分
注入口/FID:250℃
スプリット比:60/1
ヘリウム流速:1ml/分
・熱分解炉運転条件
熱分解炉温度:500℃
インターフェイス温度:320℃
【0019】
酸変性ロジンとして、酸変性ロジンをエステル化した酸変性ロジンエステルを用いてもよい。酸変性ロジンエステルは、軟化点が向上するため耐熱性の点で好ましい。酸変性ロジンエステルは、酸変性ロジンと多価アルコールとを公知のエステル化法によりエステル化して得ることができる。
【0020】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール;ジペンタエリスリトール等の6価アルコール;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-イソブチルジエタノールアミン、N-ノルマルブチルジエタノールアミン等のアミノアルコール等が挙げられる。多価アルコールの配合量は特に制限されず、適宜設定すればよい。
【0021】
酸変性ロジンエステルとしては、エポキシ化合物を用いずに得られたエステルが好ましい。
【0022】
酸変性ロジンは液体状であっても固体状であってもよいが、好ましくは25℃で固体状である。固体状であれば、少ない工程数で簡便かつ安価に樹脂組成物を調製することができ、経済的である。
【0023】
本発明の一態様に係るセルロースファイバー分散剤は、他の添加剤(例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系淡色化剤等)を含んでもよい。
セルロースファイバー分散剤の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は99.9質量%以上が、上記の酸変性ロジンであってもよい。セルロースファイバー分散剤は、本質的に上記の酸変性ロジンからなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。セルロースファイバー分散剤は、上記の酸変性ロジンのみからなってもよい。
【0024】
[第1の樹脂組成物]
本発明の一態様に係る樹脂組成物(第1の樹脂組成物)は、下記(A)成分及び(B)成分を下記の割合で含む。
(A)セルロースファイバー分散剤 0.1~99.9質量%
(B)セルロースファイバー 0.1~99.9質量%
【0025】
第1の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂との混練前に、予め上記のセルロースファイバー分散剤とセルロースファイバーとを混合した樹脂組成物である。後述するように、これら成分を一旦混練し、その上で熱可塑性樹脂と混練することで、熱可塑性樹脂中にセルロースファイバーをより均一に分散させることができる。
【0026】
(A)成分のセルロースファイバー分散剤は上述した通りである。
(B)成分のセルロースファイバーは特に制限はなく、各種公知のものを使用することができる。具体的には、植物由来パルプ、木材、竹、麻、綿、ココナッツ、稲わら、海藻等の植物から分離した植物由来のセルロースファイバー;ホヤ等の海産動物が産生するセルロースファイバー;酢酸菌によって産生されるバクテリアセルロースファイバー;古紙等から得られるセルロースファイバー;酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、レーヨン等の化学的に合成されたセルロースファイバー等が挙げられる。
これらの中でも原料の生産性やファイバーの機械的強度、不純物の観点から、植物由来のセルロースファイバーが好ましく、植物由来パルプから得られるセルロースファイバー(植物パルプ由来セルロースファイバー)がより好ましい。
【0027】
植物由来パルプとしては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、サーモメカニカルパルプ、機械パルプ等の汎用パルプを使用することができる。その原料としては広葉樹、針葉樹、竹等を用いることができる。特に、α-セルロース含有率60~99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α-セルロース含有率60質量%以上の純度であれば繊維径及び繊維長さが調整しやすくなって繊維同士の絡み合いを抑えることができ、α-セルロース含有率60質量%未満のものを用いた場合に比べ、着色抑制効果が良好である。また、α-セルロース含有率99質量%以下のものを用いると、繊維をナノレベルに容易に解繊することができる。
パルプのα-セルロース含有率は、JIS P 8101(1976年)に準拠して測定する。
【0028】
セルロースファイバーの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば水に分散させて高圧下で対向衝突させる水中対向衝突法、回転する砥石間で磨砕するグラインダー法、ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ロールミル、カッターミル、超音波分散機等を用いる微細化法等の機械的処理による方法が挙げられる。また、酵素処理、酸処理等の化学的処理により解繊して、製造してもよい。
セルロースファイバーは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0029】
セルロースファイバーの平均繊維径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、とりわけ好ましくは20nm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、とりわけ好ましくは35μm以下である。
平均繊維径が3nm~50μmであると、樹脂組成物の機械物性及び成形品の表面外観の観点で好ましい。
平均繊維径は、1mm角の領域における繊維径1nm~100μmの繊維を、電子顕微鏡(FEI社製「Tecnai Osiris」)により撮影した写真を用いて目視により無差別に100個選択し、当該100個の繊維径の単純平均(算術平均)を求めることにより求める。繊維径は、繊維の長径を用いる。
【0030】
セルロースファイバーの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。
平均重合度が200~10,000であると、樹脂組成物の機械物性及び加工性の観点で好ましい。重合度が10,000超のセルロースファイバーを使用する場合、樹脂組成物の粘度が高くなり加工性が低下する恐れがある。
平均重合度は、銅エチレンジアミン法によって測定する(セルロースファイバーは脱リグニン済、かつ純度80%以上のものとする)。
【0031】
第1の樹脂組成物中の(A)成分の含有割合は0.1質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、さらに好ましくは15.0質量%以上、とりわけ好ましくは20.0質量%以上である。
第1の樹脂組成物中の(A)成分の含有割合は99.9質量%以下であり、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下、さらに好ましくは85.0質量%以下、とりわけ好ましくは80.0質量%以下である。
【0032】
第1の樹脂組成物中の(B)成分の含有割合は0.1質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、さらに好ましくは15.0質量%以上、とりわけ好ましくは20.0質量%以上である。
第1の樹脂組成物中の(B)成分の含有割合は99.9質量%以下であり、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下、さらに好ましくは85.0質量%以下、とりわけ好ましくは80.0質量%以下である。
【0033】
第1の樹脂組成物は、上記の(A)成分及び(B)成分を混合することで製造できる。混合方法には特に制限はない。
【0034】
(A)成分及び(B)成分を混合する際、(B)成分のセルロースファイバーに水分を含ませた(又は水中に分散させた)状態であることが好ましい。このようにすると、セルロースファイバー間の水分を(A)成分で置換することで、乾燥の際のセルロースファイバー同士の凝集を抑制することができる。水分は、通常、混合時に蒸気や排水として排出される。
【0035】
上記の水分量は、セルロースファイバーと水分の合計に対して、例えば10.0質量%以上であり、好ましくは20.0質量%以上であり、より好ましくは30.0質量%以上であり、さらに好ましくは50.0質量%以上であり、とりわけ好ましくは60.0質量%以上である。水分量が10.0質量%以上であれば、セルロースファイバー同士の水素結合が適度に緩和されるため容易に分散することができる。
【0036】
また、上記の水分量は、セルロースファイバーと水分の合計に対して、例えば99.0質量%以下であり、好ましくは95.0質量%以下であり、より好ましくは90.0質量%以下であり、さらに好ましくは85.0質量%以下であり、とりわけ好ましくは80.0質量%以下である。水分量が99.0質量%以下であれば、(A)成分が水分と同時に流出したり、又は変性、劣化したりすることを抑制できる。また、設備の劣化を抑制できる。さらに、混合系内の固形分率が適度になるため生産性に優れる。
【0037】
第1の樹脂組成物は、他の添加剤(例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系淡色化剤等)を含んでもよい。
【0038】
第1の樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は99.9質量%以上が、(A)成分及び(B)成分、又は(A)成分、(B)成分及び上記の添加剤であってもよい。
第1の樹脂組成物は、本質的に(A)成分及び(B)成分、又は(A)成分、(B)成分及び上記の添加剤からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
第1の樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分のみ、又は(A)成分、(B)成分及び上記の添加剤のみからなってもよい。
【0039】
[第2の樹脂組成物]
本発明の一態様に係る樹脂組成物(第2の樹脂組成物)は、下記(A)~(C)成分を下記の割合で含む。
(A)セルロースファイバー分散剤 0.01~89.0質量%
(B)セルロースファイバー 0.05~80.0質量%
(C)熱可塑性樹脂 10.0~99.9質量%
【0040】
上述したように、本発明の一態様に係るセルロースファイバー分散剤を用いると、セルロースファイバーを樹脂組成物中に均一に分散することができる。これにより、上記成分を含む第2の樹脂組成物から得られる成形体は機械的物性(引張降伏強さ、引張弾性率及び破断伸び率)に優れる。さらに、極性基を有する(A)成分と(B)成分とが複合化されることによって、成形体表面の接着性や塗装性、さらには極性材料との接着性や親和性を向上することが可能となる。また、第2の樹脂組成物は混練性が高いため簡便に調製することができ、特に固体状の(A)成分を用いると、より簡便かつ安価に樹脂組成物を調製することができ、経済的である。さらに、(A)成分及び(B)成分は天然由来材料から調製することが可能であるため、環境負荷が低く、かつリサイクル性が高い。また、(A)成分を用いることでセルロースファイバーの変色を抑えられ、耐熱老化性や耐候性といった環境特性をも向上させることが可能となる。
【0041】
(C)成分の熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド12、ポリアミド11、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリ(3-ヒドロキシアルカン酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリグリコール酸等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート;ポリアセタール;ポリカプロラクトン;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニルアルコール等が挙げられる。
【0042】
上記の中でもポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン及びポリエチレンがより好ましい。
ポリプロピレン及びポリエチレンとしては特に制限はないが、軽量かつ成形性に優れる樹脂組成物が得られる観点から、230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.1~200g/10分であると好ましい。さらに、剛性や耐衝撃性に優れる成形体が得られる観点から、230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレートが0.1~30g/10分であるとより好ましい。
メルトフローレートは、ASTM規格D-1238に準拠した方法により測定する。
【0043】
第2の樹脂組成物中の(A)成分の含有割合は0.01質量%以上であり、好ましくは0.02質量%以上であり、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は3.0質量%以上としてもよい。
第2の樹脂組成物中の(A)成分の含有割合は89.0質量%以下であり、好ましくは70.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下、さらに好ましくは50.0質量%以下、とりわけ好ましくは40.0質量%以下である。
【0044】
第2の樹脂組成物中の(B)成分の含有割合は0.05質量%以上であり、好ましくは0.08質量%以上であり、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は3.0質量%以上としてもよい。
第2の樹脂組成物中の(B)成分の含有割合は80.0質量%以下であり、好ましくは70.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下、さらに好ましくは50.0質量%以下、とりわけ好ましくは40.0質量%以下である。
【0045】
第2の樹脂組成物中の(C)成分の含有割合は10.0質量%以上であり、好ましくは15.0質量%以上、より好ましくは20.0質量%以上、さらに好ましくは25.0質量%以上、とりわけ好ましくは30.0質量%以上である。
第2の樹脂組成物中の(C)成分の含有割合は99.9質量%以下であり、好ましくは99.89質量%以下であり、例えば、98.0質量%以下、95.0質量%以下、93.0質量%以下、又は92.0質量%以下としてもよい。
【0046】
第2の樹脂組成物は、各種目的(例えば、加工性、機能性及び/又は機械的物性の向上)に応じて任意の添加剤を配合することができる。
添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、金属不活性剤、抗菌剤、発泡剤、変性樹脂、顔料、染料、強化剤、離型剤、可塑剤、流動性改良剤等が挙げられる。
また、難燃性を補助するために、難燃剤、難燃助剤を配合することができる。難燃剤は特に制限はなく、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ハロゲン系化合物、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、窒素系化合物、金属水酸化物、ホウ酸化物、ケイ素化合物、金属酸化物、膨張黒鉛等公知のものを目的に応じて用いることができる。難燃助剤は特に制限はなく、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、金属酸化物、メラミン、ペンタエリスリトール等が使用できる。これらの中でもアンチモン化合物が好ましい。
上記添加剤は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0047】
第2の樹脂組成物は、任意の充填剤を添加することができる。
充填剤としては、特に限定されず、各種公知のものを使用することができ、具体的には、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、チタン酸カリウム、マイカ、ガラスファイバ、ガラスバルーン、ワラストナイト、金属繊維、アルミナ、沈降性硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト、塩基性硫酸マグネシウム等が挙げられる。
上記充填剤は、1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0048】
第2の樹脂組成物は、好ましくは(A)成分が0.01質量%以上、(B)成分が0.05質量%以上、かつ(C)成分が20.0質量%以上(より好ましくは30.0質量%以上)であり、好ましくは(A)成分が50.0質量%以下(より好ましくは40.0質量%以下)、(B)成分が50.0質量%以下(より好ましくは40.0質量%以下)、かつ(C)成分が99.9質量%以下である。
各成分の含有量が上記の範囲内であると、セルロースファイバーが樹脂組成物中により均一に分散するため、機械的物性に優れる成形体を得ることができる。
【0049】
第2の樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は99.9質量%以上が、(A)成分~(C)成分、又は(A)成分~(C)成分及び上記の添加剤及び/又は充填剤であってもよい。
第2の樹脂組成物は、本質的に(A)成分~(C)成分、又は(A)成分~(C)成分及び上記の添加剤及び/又は充填剤からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
第2の樹脂組成物は、(A)成分~(C)成分のみ、又は(A)成分~(C)成分及び上記の添加剤及び/又は充填剤のみからなってもよい。
【0050】
[第2の樹脂組成物の製造方法]
第2の樹脂組成物は、上記の各成分を溶融混練することで製造できるが、好ましくは、水を含んだ状態の(B)成分と、(A)成分とを混練する工程、及び得られた混合物と(C)成分とを溶融混練する工程を含む製造方法により製造する。
【0051】
まず、水を含んだ状態の(B)成分と、(A)成分とを50℃~230℃で混練することで、セルロースファイバー間の水分を(A)成分で置換することができ、これにより乾燥の際のセルロースファイバー同士の凝集を抑制することができる。(B)成分と水の割合は上述した通りである。
【0052】
次に、上記で得られた混合物と(C)成分とを溶融混練することで樹脂組成物を得る。(B)成分と(A)成分とを一旦混練し、その上で(C)成分と混練することで、セルロースファイバーをより均一に熱可塑性樹脂中に分散させることができる。
【0053】
溶融混練には各種加工機を用いることができる。加工機としては、2軸押出機、1.5軸押出機等の連続押出機;ニーダー、バンバリーミキサー等のバッチ式混練機;ロール等を使用することができ、好ましくは連続押出機である。
【0054】
[成形体]
第2の樹脂組成物は優れた加工性を有するため、押出し成形、ブロー成形、射出成形、真空成形、カレンダー成形等の公知の方法により成形体(樹脂成形品)を得ることができる。
【0055】
得られた成形体の利用分野は特に限定されず、例えば、自動車部品としてはバンパー、カウルトップ、ウェザーストリップ等の外装部品、インストルメントパネル、メータークラスター、ドアトリム、ラゲッジボード、HVACユニット等の内装部品、エアクリーナーエレメント等のエンジン部品等が挙げられ、家電部品としては冷凍冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、洗濯機、パーソナルコンピューター、エアーコンディショナー、エアーコンディショナー向け室外機、温水洗浄便座、テレビ受信機等の筐体、各種部品等が挙げられ、その他、プリンタ複合機の筐体、軸受け等の各種部品等のOA機器部品、スピーカー筐体、スピーカーフレーム、振動板等の音響部品、クランプカバー等の電設部品、浴室カウンター、キッチンパネル等の建築部材、生体適合性を利用した医療材料等の各種用途に使用できる。
【実施例
【0056】
参考例1
[セルロースファイバー分散剤の製造]
不均化ロジン(ハリマ化成株式会社製「G-100F」)99gと中国ガムロジン1gを、窒素気流下(5ml/分)、200℃で加熱溶解し、無水マレイン酸0.1gを加えて撹拌し、溶液の濁りがなくなったことでディールスアルダー付加反応が完了して無水環が開環したことを確認した。その後、グリセリン10gを添加し、8~10時間かけて液温を270℃まで上げた。その後、270℃で16~20時間エステル化反応を行い、マレイン酸変性不均化ロジングリセリンエステルA1(セルロースファイバー分散剤、酸変性率0.1質量%)を得た。
【0057】
実施例2
[セルロースファイバー分散剤の製造]
中国ガムロジン100gを、窒素気流下(5ml/分)、200℃で加熱溶解し、フマル酸2.8gを加えて撹拌し、溶液の濁りがなくなったことでディールスアルダー付加反応が完了したことを確認し、フマル酸変性ロジンA2(セルロースファイバー分散剤、酸変性率2.8質量%)を得た。
【0058】
参考例2
[セルロースファイバー分散剤の製造]
1L四つ口フラスコに中国ガムロジン500gを仕込み、ミネラルスピリット380gを加えて、窒素気流下(5ml/分)、加熱溶解した。完全に融解して撹拌可能となったときから、130℃まで冷却し、塩化亜鉛触媒を5g加えて同温にて4時間反応させた。0.5%重曹水にて3回以上中和水洗し、粗重合ロジンを得た。得られた粗重合ロジンを蒸留し、分解物及び含有溶剤を除去することにより重合ロジンを得た。次に、重合ロジン100gを、窒素気流下(5ml/分)、200℃で加熱溶解し、無水マレイン酸3.0gを加えて撹拌し、溶液の濁りがなくなったことでディールスアルダー付加反応が完了して無水環が開環したことを確認した。ペンタエリスリトール10gを添加し、8~10時間かけて液温を270℃まで上げた。その後、270℃で16~20時間エステル化反応を行い、マレイン酸変性重合ロジンペンタエリスリトールエステルA3(セルロースファイバー分散剤、酸変性率3.0質量%)を得た。
【0059】
比較例1
[ロジン化合物の製造]
1L四つ口フラスコに中国ガムロジン500gを仕込み、ミネラルスピリット380gを加えて、窒素気流下(5ml/分)、加熱溶解させた。完全に融解して撹拌可能となったときから、130℃まで冷却し、塩化亜鉛触媒を5g加えて同温にて4時間反応させた。0.5%重曹水にて3回以上中和水洗し、粗重合ロジンを得た。得られた粗重合ロジンを蒸留し、分解物及び含有溶剤を除去することにより重合ロジンを得た。次に、重合ロジン100gを、窒素気流下(5ml/分)、200℃で加熱溶解し、ペンタエリスリトール10gを添加し、8~10時間かけて液温を270℃まで上げた。270℃で16~20時間エステル化反応を行い、重合ロジンペンタエリスリトールエステルA’1(酸変性率0質量%)を得た。
【0060】
比較例2
[ロジン化合物の製造]
中国ガムロジン100gを、窒素気流下(5ml/分)、200℃で加熱溶解し、無水マレイン酸5.8gを加えて撹拌し、溶液の濁りがなくなったことでディールスアルダー付加反応が完了して無水環が開環したことを確認した。その後、石油樹脂(日本ゼオン株式会社製「クイントン1345」)を仕込み、8~10時間かけて液温を270℃まで上げた。270℃で16~20時間重合反応を行い、石油樹脂変性マレイン酸変性ロジンA’2(酸変性率5.8質量%)を得た。
【0061】
比較例3
[ロジン化合物の製造]
中国ガムロジン100gを、窒素気流下(5ml/分)、200℃で加熱溶解し、フマル酸4.3gを加えて撹拌し、溶液の濁りがなくなったことでディールスアルダー付加反応が完了したことを確認した。グリセリン15gを添加し、8時間かけて液温を270℃まで上げた。270℃で15~20時間エステル化反応を行い、フマル酸変性ロジングリセリンエステルA’3(酸変性率4.3質量%)を得た。
【0062】
実施例5~9、比較例4~8実験例1及び参考例3~4
[樹脂組成物及び成形体の製造]
表1に示す各成分のうち(A)成分又は(A’)成分と、(B)成分(水を含ませたもの、水分量は(B)成分と水との合計に対して78質量%)とを表1に示す割合で配合し、120~180℃で混練して樹脂組成物(第1の樹脂組成物)とした。(B)成分に含ませた水分は混練中に系外に排出された。その後、(C)成分と配合して樹脂組成物(第2の樹脂組成物)を調製した。表1の「樹脂組成物」中の数値は第2の樹脂組成物中の各成分の配合割合(質量%)を示す。また、得られた樹脂組成物100質量部に対して、酸化防止剤としてイルガノックス1010(BASF社製)0.2質量部、及びアデカスタブ2112(株式会社ADEKA製)0.2質量部を配合した。
得られた樹脂組成物を押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)に供給し、180~240℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを80℃で乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「NEX110III-18E」)により190~240℃で成形し、試験片(成形体、寸法は後述する各評価のASTM規格に準ずる)を得た。
【0063】
用いた成分を以下に示す。
((A)成分:セルロースファイバー分散剤)
実施例1~3で得られたA1~A3である。
・A1:マレイン酸変性不均化ロジングリセリンエステル(酸変性率0.1質量%)
・A2:フマル酸変性ロジン(酸変性率2.8質量%)
・A3:マレイン酸変性重合ロジンペンタエリスリトールエステル(酸変性率3.0質量%)
A1~A3はいずれも25℃で固体状である。
【0064】
((A’)成分:ロジン化合物)
比較例1~3で得られたA’1~A’3である。
・A’1:重合ロジンペンタエリスリトールエステル(酸変性率0質量%)
・A’2:石油樹脂変性マレイン酸変性ロジン(酸変性率5.8質量%)
・A’3:フマル酸変性ロジングリセリンエステル(酸変性率4.3質量%)
A’1~A’3はいずれも25℃で固体状である。
【0065】
((B)成分:セルロースファイバー)
・B1:植物パルプ由来セルロースファイバー、平均繊維径:30nm、平均重合度:600、植物パルプのα-セルロース含有率:85質量%
・B2:植物パルプ由来セルロースファイバー、平均繊維径:30μm、平均重合度:2000、植物パルプのα-セルロース含有率:85質量%
【0066】
((C)成分:熱可塑性樹脂)
・C1:ホモポリプロピレン、MFR:0.5g/10分
MFRはASTM D-1238(2013年)に準拠し、230℃、2.16kg/10分の条件で測定した値である。
【0067】
[成形体の評価]
得られた成形体について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)密度
ASTMD792(2013年)に準拠する方法で測定した(単位:g/cm)。
(2)引張降伏強さ
ASTMD638(1986年)に準拠して測定した(単位:MPa)。
(3)引張弾性率
ASTMD638(1986年)に準拠して測定した(単位:MPa)。
(4)破断伸び率(チャック間)
ASTMD638(1986年)に準拠して測定した(単位:%)。
(5)分散状態(分散性)
試験片における材料の分散状態を評価した。具体的に、試験片を液体窒素中に1分間浸漬し凍結させてから折り曲げて破断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を2000倍で観察し、凝集物が見られない場合を「○」とし、凝集物が見られる場合を「×」と評価した。セルロースを配合していない比較例8及び9は、分散状態の評価を行わなかったため「-」とした。
【0068】
【表1】
【0069】
表1より、本発明の一態様に係る樹脂組成物は、セルロースファイバーの分散性が高く、得られた成形体は各種機械的物性にバランス良く優れることが分かる。