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特許7199816心臓の立体電気生理学シミュレーションシステム及び関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】心臓の立体電気生理学シミュレーションシステム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/319 20210101AFI20221226BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20221226BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20221226BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20221226BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20221226BHJP
【FI】
A61B5/319
A61B5/367 100
G09B19/00 Z
G09B23/28
A61B34/10
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018039353
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2018153626
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/468,283
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/633,224
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アルバート・ルー
(72)【発明者】
【氏名】グオチャン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイグオ・ライ
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0126746(US,A1)
【文献】特開2013-257563(JP,A)
【文献】国際公開第2005/081205(WO,A1)
【文献】特開2012-075909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05- 5/0538
5/24- 5/398
A61B 34/10
G09B 23/28-23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサメッシュを備える、器官の物理的モデルと、
前記器官の前記物理的モデル内に挿入される遠位端部を備えるユーザー入力装置と、
ディスプレイ装置と、
前記センサメッシュ、前記ユーザー入力装置、及び前記ディスプレイ装置に連結され、プロセッサ及びメモリを備えるシミュレーションコントローラとを備える、医学的手技をシミュレーションするシステムであって、前記メモリが命令を格納し、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記器官のシミュレーションを初期化させ、
前記ディスプレイ装置に、前記器官の前記シミュレーションの状態を表すものを表示させ、
前記センサメッシュから、接触に関するデータを受信させ、
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の、前記器官の前記物理的モデル内での場所を、前記接触に関するデータにしたがって計算させ、
前記器官の前記シミュレーションの前記状態を更新させ、
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所と、前記器官の前記シミュレーションの前記状態とにしたがってシミュレーション出力を生成させ、
前記ディスプレイ装置に、前記シミュレーション出力を表示させ、
カメラシステムを更に備え、
前記メモリは、前記プロセッサに、前記カメラシステムから画像を受け取らせる命令を更に格納し、かつ
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所を計算させる前記命令は、前記受け取った画像内の前記遠位端部の画像にしたがって、前記遠位端部の場所を計算させる命令を更に含み、
前記接触に関するデータが複数の地点での接触データを含む場合は、前記複数の地点と、前記画像から計算した前記遠位端部の場所と、を比較し、前記遠位端部の接触の場所を同定
前記カメラシステムは、第1カメラ及び第2カメラを備え、かつ
前記プロセッサに前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所を計算させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記第1カメラと前記ユーザー入力装置の前記遠位端部との間の第1光線の、前記第1カメラの光軸に対する第1の仰角及び第1の横断方向角を計算させ、
前記第2カメラと前記ユーザー入力装置の前記遠位端部との間の第2光線の、前記第2カメラの光軸に対する第2の仰角及び第2の横断方向角を計算させ、かつ
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所に対応する、前記第1光線と前記第2光線との間の交点を計算させる命令を含む、
システム。
【請求項2】
前記器官が心臓である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シミュレーション出力は、前記心臓の電気解剖学的マップを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記シミュレーション出力は、1つ以上の電位図を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記メモリは、各々が前記心臓の異なる場所に対応する複数の電気生理学的(EP)信号を更に格納し、
前記プロセッサに前記シミュレーションの前記状態を更新させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記複数のEP信号のうちの1つのEP信号を同定させる命令を含み、前記同定されたEP信号は、前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記計算された場所に対応し、前記1つ以上の電位図は、前記同定されたEP信号を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサに前記シミュレーションを初期化させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、複数のシナリオのうちの1つのシナリオを読み込ませる命令を含み、各シナリオは、心不整脈の異なる形態に対応する、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記シナリオは、心不整脈の形態に対応するシナリオを含み、心不整脈の前記形態は、
心房細動と、
心房粗動と、
上室性頻拍と、
ウルフ・パーキンソン・ホワイト症候群と、を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記シミュレーションコントローラに連結された電気解剖学的マッピングシステムを更に備え、前記電気解剖学的マッピングシステムは、前記器官の前記モデルの解剖学的マップを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記器官が心臓であり、
前記メモリは、複数の電気生理学的(EP)信号を更に格納し、各EP信号は、前記心臓の場所と複数の状態のうちの前記心臓の1つの状態との組み合わせに対応し、
前記プロセッサに前記シミュレーションの前記状態を更新させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記複数のEP信号のうちの1つのEP信号を同定させる命令を含み、前記同定されたEP信号は、前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記計算された場所と前記心臓の現在の状態とに対応し、前記シミュレーション出力は、前記同定されたEP信号を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記メモリは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記ユーザー入力装置からのユーザー入力を受け取らせる命令を更に格納し、かつ
前記プロセッサに前記シミュレーションの前記状態を更新させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記ユーザー入力に基づいて前記状態を更新させる命令を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記ユーザー入力は、アブレーション電力を前記心臓に印加することに対応し、かつ
前記シミュレーションの前記状態は、前記器官の前記物理的モデル内の前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所での、前記器官の前記シミュレーションにおける組織のアブレーションを示すように更新される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが、診断用モード及び治療用モードにて動作するように構成されており、
前記診断用モードは、前記物理的モデル内に診察対象の領域をマッピングして、解剖学的マップを生成し、前記ディスプレイ装置に表示するように動作し、
前記治療用モードは、操作者が前記ユーザー入力装置を操作し、アブレーションのシミュレーションを実施するように動作する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年3月7日に米国特許庁に出願された米国特許仮出願第62/468,283号の利益を主張し、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は一般的に、侵襲性の医学的処置の実施をシミュレーションするための方法及び装置に関し、特に、心臓の物理的モデルと、医学的手技中の心臓の電気生理学的挙動をシミュレーションするためのシステムとに関する。
【背景技術】
【0003】
心不整脈は、また特に心房細動は、とりわけ高齢者において一般的かつ危険な慢性疾患であり続けている。正常な洞律動を有する患者では、心房、心室及び興奮伝導組織からなる心臓は、電気的に興奮して、同期的な、パターン化した形で拍動する。心不整脈を有する患者では、心臓組織の異常領域は、正常な洞調律を有する患者におけるような、通常の伝導組織に関連する同期的な拍動周期には従わない。これに対して、心組織の異常領域では隣接組織への伝導が異常であり、これにより心臓周期が乱れて非同期的な心律動となる。そのような異常な伝導は、例えば、洞房(SA)結節の領域内、房室(AV)結節及びヒス束の伝導経路に沿って、又は心室及び心房の壁を形成する心筋組織内などの、心臓のさまざまな領域で発生することが、従来より知られている。
【0004】
心房性不整脈を含めた心不整脈は、心房の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレットリエントラント型となる場合がある。マルチウェーブレットリエントラント型に代わって、又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速で反復的な様式で自律的に興奮する場合などの、局所的な起源を有する場合もある。したがって、心不整脈を治療するために、カテーテルアブレーション手技を含む、多くの手技が開発されている。
【0005】
図1Aに示されるように、既知の、カテーテルによる電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10は、患者22の心臓12の診断用立体電気解剖学的マップ20を提供し、その視覚化物は、リアルタイムで計算した、患者の心臓内でのカテーテル又はプローブ14の位置及び向きを視覚化したものを含み得る。システムはまた、選択された心組織を治療のためにアブレーションするために、カテーテル上の電極に給電することができるようになっている。システムは、多くの機能を提供するように開発されており、その機能には、(1)心内膜の解剖学的構造を、第1ディスプレイ装置27上に表示される立体画像又は解剖学的マップ20として明確に示すこと、(2)第2ディスプレイ装置11上に表示される、サンプル抽出された電位図21を記録し、整理すること、(3)記録された電位図21から編集された興奮順序(又はその他のデータ)を、それを表す視覚的標識又は像の形態で立体解剖学的マップ20に挿入した形で表示して、立体電気解剖学的マップを作成した上で、第1ディスプレイ装置27上に表示すること、(4)心臓内での電極カテーテルの現在位置を、リアルタイムで追跡すること、(5)高周波エネルギーが印加された場所のような、対象の部位の精確な位置を記録すること、が挙げられる。一部の実施形態においては、システムが、心臓内でのカテーテルの現在位置を、その正確な画像を心臓の立体画像20の中に投影させることによって表示し、また、高周波エネルギーが印加された場所を立体画像20で表示して、アブレーションの結果、組織が変性した場所を示す。このように、このシステムによってさまざまな利益がもたらされるが、その利益としては、例えば、X線透視検査中の放射線被ばくを最小限にできること、対象となる高周波アブレーションがより正確に行えること、及び、再度アブレーションする場合には、ペーシングを行う場所がより正確に再取得できること、が挙げられる。そのようなシステムが、2014年12月31日に出願の、「電気生理学データを視覚化するためのシステム及び方法」と題された米国特許出願第14/587,964号に開示されており、この開示の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0006】
まずマッピングが、次いでアブレーションが行われる2段階の手技において、1つ以上の電気式のセンサを備えるカテーテルが、心臓の中に進み、立体電気解剖学的マップを生成するために、多くの場所で、位置情報(例えば、場所及び向き)と電気生理学的データとを取得する。次に、このデータを活用して、アブレーションが施される標的となるエリアを選択し、その標的となるエリアに接触して配置されたカテーテル電極に給電することによって、アブレーションが実行される。アブレーション処理によって、望ましくない電気経路を断つ、非導電性の変性部が形成される。
【0007】
システム10は、システムコントローラ又はコンソール30によって管理され、このシステムコントローラ又はコンソール30は、システム10を動作させるためのソフトウェアが格納されているメモリ34と通信を行う処理装置32を備えている。一部の実施形態では、コントローラ30は、処理装置32を含むコンピュータであり、通常は、システム10のパラメータを設定する操作者24によって管理される。一部の実施形態では、システム10は、高周波アブレーションモジュール50を含み、コントローラ30は、カテーテルの遠位先端部の場所と向きとを判定するための位置モジュール54を含む。一部の実施形態では、システム10はまた、例えば、遠位先端部が組織の表面に接触した場合にカテーテルの遠位先端部にかかる力を判定する、力感知モジュール55を含む。処理装置32は、高周波アブレーションモジュール50を用いて、例えばカテーテル上の電極を介して印加されるアブレーション電力のレベルのような、アブレーションパラメータを監視し制御する。監視は、当該技術分野で既知の任意の好適な追跡方法によって実行され得る。
【0008】
第1ディスプレイ装置27上の立体マップ上に、カテーテルにより感知され記録された心内電位図21から編集された興奮順序(又は他のデータ)を表示するため、立体マップ20は、立体解剖学的マップ上に挿入されて立体電気解剖学的マップ20が作られる、電気的活性化マップを含む。そのようなマップは、異常な電気活性度を有する領域又は場所を示すことが可能な電気的な興奮順序を示すように、色でコード化されている。より単純な不整脈の場合には、操作者は、第2ディスプレイ装置11上に表示されている電位図21を参照しさえすればよいが、より複雑な不整脈の場合には、立体電気解剖学的マップ20が、心臓の解剖学的構造と心組織内での電気の伝播とをいつでも示すことができる、便利で有用な視覚的表現物を提供する。図2に示されるように、立体電気解剖学的マップ20は、心臓内の場所に対する、マッピングカテーテルの局所的電位図の始まりと、基準信号との間のインターバルを示すように色でコード化された局所的興奮時間(LAT)を表す像が挿入された立体解剖学的マップを含み、記録された興奮のうちの最も早いものを赤で示し、記録された興奮のうちの最も遅いものを紫で示すようになっている。
【0009】
図3図3A、及び図3Bに示されるように、立体電気解剖学的マップ20は、変性部を表す視覚的標識を含むが、この視覚的標識が表すものは、アブレーションが行われた場所である。アブレーションの結果生じた変性部が電気の経路をブロックするため、アブレーションのセッション中又はそれに引き続いて取得された立体電気解剖学的マップ20に示されている色でコード化されたLATは、変性部が適切に位置決めされているかどうか、かつ変性部が良好なブロックを成功裏に形成したかどうかあるいは追加的な変性部を形成するために更にアブレーションが必要となるかどうかを示す。第2ディスプレイ装置11上の電位図21は、アブレーションのセッション中又はその後に引き続いて使用され得るが、第1ディスプレイ装置27上の立体マップ20は、とりわけより複雑な不整脈に関わる場合に便利で有用である。
【0010】
電気的活性化マップ、すなわち、カテーテルの遠位部分の解剖学的位置情報、及び、他の機能的な画像が、その全開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第6,226,542号、同第6,301,496号、及び本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号において開示されている方法にしたがって、コンソール及びそのモジュールによって用意される。そのシステムの要素を具現化した商品としては、Biosense Webster社(カリフォルニア州、Irwindale、91765)から入手可能なCARTO、CARTO XP、及び/又はCARTO(登録商標)3システムが挙げられるが、それらは、カテーテルの位置(位置及び向き)を特定し、必要に応じて心臓の立体電気解剖学的マップを生成する。
【0011】
例えば電気的活性化マップの評価によって異常であると判定された区域は、標的とされ、熱エネルギーの適用によってアブレーションされ得るが、例えば、高周波アブレーションモジュール50の高周波(RF)発生器からの高周波電流を、図1Bに示されるように、標的の組織に高周波エネルギーを印加する遠位先端部15に又はその付近に、1つ以上のアブレーション電極17Aを含むカテーテル14に電流を提供するケーブル37を通して通過させることによって、そのアブレーションは実行される。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール30から、ケーブル37及びカテーテル電極(複数可)を通して、心臓12に伝達することもできる。更に、電気信号(例えば、心電図又はECG信号)は、心臓12から、カテーテル電極17A及び/又は17Bを介してコンソール30に伝達される。
【0012】
少なくともパッチ38を含むECG体表面パッチは、患者の身体に固着される。システム10の一部の実施形態では、少なくともパッチ38を含むECG体表面パッチが、患者の身体に固着される。カテーテル電極17Aが心内ECG信号を感知する間、ECG体表面パッチ38内の複数の電極は、心臓及び胴体にわたってECG信号を測定し、第2ディスプレイ装置11上に表示される、カテーテル電極17A及び/又は17Bによって測定された心内ECG信号に対する基準信号を提供する。しかしながら、本発明の実施形態はそれらに限定されず、ECG体表面パッチを用いないで実行され得る。
【0013】
コンソール30のカテーテル位置特定能力の一部として、本発明の1つの実施形態によれば、例えば、患者の下に置かれた磁界発生器コイル28を含む位置パッドによって、非均質な磁界が患者22の周囲に生成される。コイル28によって生成された磁界は、カテーテル14(図1C参照)の遠位先端部15に設置された電磁(EM)センサの、直交性のコイルCx、Cy、Cz(図1B参照)内に電気信号を生成する。この電気信号はコンソール30に伝達され、位置モジュール54によって信号が分析されてカテーテルの位置(場所及び向き)が判定される。
【0014】
またコンソールのカテーテルの位置決め能力の一部として、カテーテル電極17A及び/又は17Bが、カテーテル14及びケーブル37内のリード線(不図示)によって、コンソール30内の電流及び電圧測定回路に接続されている。コンソールもワイヤ及びパッチユニット31によって、体表面電極18に接続されるが、同電極18は、ボタン電極、針電極、皮下プローブ、又はパッチ電極等の当該技術分野において既知の任意の種類の体電極であり得る。体表面電極18は典型的に、患者13の体表面とガルバニック接触し、そこから体表面電流を受け取る。体表面電極18は、一般に活性電流位置パッチ(ACLパッチ)と呼ばれる接着性皮膚パッチであり得るが、患者22の身体表面上かつカテーテル14の近くに置かれ得る。コンソール30は、ACLパッチ38に接続され、かつ、プロセッサ32によって、患者の組織のインピーダンスを、カテーテル電極17A及び17Bと、パッチ18の場所との間で計算するために用いられる、電圧発生器を含む。したがって、コンソール30は、Govariらに対して発行された米国特許第7,536,218号、及びBar-Talらに対して発行された米国特許第8,478,383号(両方の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、カテーテルの場所を判定するために磁気ベースの位置感知及びインピーダンスベースの測定の両方を使用する。
【0015】
一部の実施形態では、インピーダンスの測定値はまた、コンソール30によって、カテーテルの遠位先端部15と心臓12の組織との間の接触を検知するのに用いられ、例えば、遠位先端部15が血管の組織に接触した場合のインピーダンスの変化を検知するのに用いられる。一部の実施形態では、図1Bに示されるように、カテーテルは、カテーテルの遠位先端部と心臓の組織との間の接触を検出するための力センサ60を含む。力センサの諸態様が、2013年1月22日にGovariらに対して発行された、「圧力検知を有するカテーテル」と題する米国特許第8,357,152号、及び、2009年11月30日にBeecklerらにより出願された、「圧力測定用先端部を有するカテーテル」と題する米国特許出願公開第2011/0130648号に記載されているが、両者の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
図1Bを参照すると、力センサ60は、弾性的連結部材61を含み、同部材61は、ばね関節部を形成する。一部の実施形態では、連結部材61は、中空の円筒形状であり、中央内腔62と1つ以上の螺旋63が結合した検出アセンブリとを有し、関節部の感知アセンブリは、ばね関節部の両側にある2つのサブアセンブリに分割される。一方のサブアセンブリは、コイル82を、ばね関節部の遠位側に備え、同コイル82は、ケーブル37を介してカテーテルに提供される電流によって駆動されて、磁界を発生させる。この磁界は、ばね関節部の近位側に配置されているコイル76、78、及び80を備える、第2のサブアセンブリと相互作用する。一部の実施形態では、コイル80とコイルCzとは、まったく同一のものである。
【0017】
コイル76、78、及び80は、コイル82から近位側に同じ距離に、ただし異なる径方向位置に固定されている。図示されている実施形態では、3つのコイルが、コイル82から長手方向軸線84に沿って、同じ軸方向距離の位置に、方位角120度ずつ離間して配置されている。コイル76、78、及び80は、コイル82によって伝達される磁界に対して、電気信号を生成する。これらの信号は、力センサモジュール55によって、例えば、遠位先端部15の長手方向軸線84に沿ったばね関節部の軸方向変位量を測定するために、また、ばね関節部の、長手方向軸線84からの角度振れを測定するために処理される。測定された変位量及び振れに基づいて、力センサモジュール55は、通常は所定の較正表を用いて、遠位部15が組織と接触した場合の軸方向変位量を含む、ばね関節部にかかる力の大きさと方向とを評価することが可能である。
【0018】
上述したようにカテーテル14は、コンソール30に連結(又は接続)され、これにより操作者24は、カテーテル14の機能を観察及び調節できる。プロセッサ32及び/又はコンソール30は、ディスプレイ装置27を駆動して、立体電気解剖学的マップ20を、少なくともカテーテルの遠位先端部15の場所及び向きを表す挿入されたカテーテルの視覚的標識とともに含む視覚的像を表示させるために連結された、適切な信号処理回路を含む。
【0019】
典型的な診断用マッピング手技には、関与し得る。操作者が、カテーテルの遠位先端部(コイルCx、Cy、及びCzを有するEMセンサ、インピーダンス感知カテーテル電極17A及び/又は17B、並びに/又は力センサ60を有するもの)を、患者の心臓内の、関係する1つの房室内の組織に、多くの位置で接触させるように配置することを伴い得る。上記の場所のそれぞれで、マッピング及びアブレーションシステム10が、場所及びその場所での局所的電位図についてのデータを、カテーテルを介して体系的に取得する。これらの連続的なデータの取得を通じて、例えばLATのような、電気生理学的データの視覚的標識が立体解剖学的マップ上に挿入された立体解剖学的マップがシステム10によってリアルタイムで作成され、ディスプレイ装置27に表示される立体電気解剖学的マップ20が形成される。カテーテルの場所データはまた、立体電気解剖学的マップ20上に挿入される、カテーテルの位置を表す視覚的標識を提供するために、コンソール30によって使用される。
【0020】
典型的な治療用アブレーション手技は、操作者がディスプレイ装置27上の立体電気解剖学的マップ20及び/又はディスプレイ装置11上のECGを検討することと、対象の房室に不整脈があることを示す、異常又は問題のある電気的インパルスを認識することとを伴い得る。操作者が心臓内、又は肺静脈のような隣接領域内の異常な電気的インパルスの源又は起点を特定すると、操作者は、その同じカテーテル又は別のカテーテルを心組織に、選択された場所で接触するように配置させて、それらの場所で組織をアブレーションして変性部を形成し、異常な電気的インパルスをブロック、封じ込め、隔離、又はその他の方法でストップする。カテーテルの場所データはまた、立体電気解剖学的マップ20上に挿入される、アブレーション/変性部の場所を表す視覚的標識を提供するために、コンソール30によって使用され得る。
【0021】
操作者がアブレーションを行っている間、操作者は、第1ディスプレイ装置27上の電気解剖学的マップ20及び/又は第2ディスプレイ装置11上のECGを参照し得るが、それらはリアルタイムで再読み込みされ、変性部が異常な電気的インパルスに対して発揮した効果を評価し、それによりアブレーション手技の進行を評価するのを可能にする。例えば、肺静脈で発生する右心房の不規則な電気的インパルスは、不整脈を成功裏に処置するためには、肺静脈の心門部に周囲を囲むブロックを形成するのを必要とし得る。このようにして操作者は、第1ディスプレイ装置27上の立体電気解剖学的マップ及び/又は第2ディスプレイ装置11上のECGが、不規則な電気的インパルスが肺静脈から左心房に入るのを完全にブロックすると示すまで、心門の周囲をアブレーションし続ける。
【0022】
心臓にマッピング及びアブレーションをすることは、心臓及びその房室、心門、及び管状領域のサイズを考えると、特に困難である。カテーテルの操作は、高い技術を必要とする作業であり、カテーテルによるマッピング及びアブレーション手技の成否を分けるのは、多分に、カテーテルの適切な操作と配置であり、それには典型的には、カテーテルを、心臓と似た表面形状と構造を有する小さな房室内で操作する感触を習得するため実際のカテーテルを用いた実技訓練を必要とする。更に、カテーテルを用いたアブレーションには、アブレーションが心臓を通る電気の伝播路に対して発揮する効果を判定するために、リアルタイムで電気解剖学的マップ及び/又はECGを適切に解釈するための、ヘルスケアの専門家による判断を伴う。さまざまな患者は処置に対して、その条件の具体的性質に基づいて異なる反応を示し得る。そのため、ヘルスケアの専門家は、異なる条件やパターンどうしを認識して見分けることができる必要がある。
【0023】
一般的には、心臓電気生理学医は、座学とともに、動物と受動的システム及び装置を用いた実習を組み合わせた、カテーテルによるマッピング及びアブレーション手技を行う訓練を受けているが、このような実習では、単なるシミュレーションも、電気生理学的マッピング及びアブレーションシステムが、患者に対する手技の施術中に提供するであろう信号や測定値の正確なシミュレーションも提供できない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、電気生理学医を、「感覚」、患者の心臓内でのカテーテルの取り扱いと操作、電気解剖学的マッピング及びアブレーション手技を含むEP手技中のECGの正常な測定値及び問題のある測定値を含む、さまざまな側面での訓練を提供するため、従来型のEPカテーテル、従来型の電気解剖学的マッピング及びアブレーションシステム、及び形状及び大きさに関して実際の心臓に似た立体心臓モデルを用いて訓練することの利益を認識している。一部の実施形態では、従来型のEPカテーテル及び、例えば、CARTO、CARTO XP、又はCARTO 3のような、従来型の電気解剖学的マッピング及びアブレーションシステムとともに用いられるシミュレーションシステムは、マッピング及びアブレーションシステムと通信可能なシミュレーションコントローラと、立体心臓モデルのセンサメッシュとを含み、例えば、カテーテルによる表面接触、例えばマッピング及び/又はアブレーションのためのテーテルにより検知させるための電気的インパルスの送出を含む、カテーテルの1つ以上の活動及び/又はカテーテルとの相互作用に対して、シミュレーションコントローラは、そのような活動及び/又は相互作用に反応して、制御信号及び表示信号を1つ以上の表示装置を含むマッピング及びアブレーションシステムに提供し、実際の患者の心臓にマッピング及び/又はアブレーション手技を施術している間の、マッピング及びアブレーションシステムの応答、反応、及び機能をシミュレーションするように、そのような活動に応答及び反応する、立体解剖学的マップをグラフィックで表すもの、立体電気解剖学的マップ、カテーテルの場所(位置及び向きを含む)の視覚化物及び/又は電位図を生成することを含む。
【0025】
一部の実施形態では、立体心臓モデルは、右心房を含み、シミュレーションコントローラは、右心房の正常なECGと、例えば、心房粗動及び心房細動を含む右心房問題のあるECG(不整脈)を表す信号を提供する命令を有するメモリを含み、患者の心臓の右心房と対応する不整脈をシミュレーションするにあたり、マッピング及びアブレーションシステムのディスプレイ装置上に表示させる。一部の実施形態では、立体心臓モデルは、右心室を含み、シミュレーションコントローラは、右心室の正常なECG及び、例えば、心室性頻拍を含む、右心室の問題のあるECG(不整脈)を表す信号を提供する命令を有するメモリを含み、患者の心臓の右心室と対応する不整脈とをシミュレーションするにあたり、マッピング及びアブレーションシステムのディスプレイ装置上に表示させる。
【0026】
一部の実施形態では、シミュレーションコントローラは、立体心臓モデル内でのカテーテルの動き及び接触に反応して、センサメッシュ及び/又はカテーテル内の位置センサによって収集又は取得されたカテーテルの、立体心臓モデル内の接触場所を表す信号を受け取り処理するように構成され、かつマッピング及びアブレーション手技の前、最中、そして後に患者の心臓と対応する不整脈をシミュレーションする際に、マッピング及びアブレーションシステムに対して、カテーテルの接触場所に反応して、リアルタイムで進化するECGを表す制御信号及び表示信号を提供するように構成されている。一部の実施形態では、シミュレーションコントローラは、マッピング及びアブレーションシステムに対して、成功するアブレーション手技をシミュレーションする正常なECGを表す制御信号及び表示信号を提供するように構成され、カテーテルの接触場所は、選択された不整脈を治療するために適正なアブレーションブロック又は隔離を表すものである。
【0027】
本発明の実施形態は、心筋組織のアブレーションを心不整脈の処置として実施するような、侵襲性の医学的処置のシミュレーションを提供するためのシステム及び方法に関する。本発明のさまざまな実施形態が心筋組織のアブレーションに関連付けて以下に説明されるが、本発明の実施形態はそれらに限られず、異なるタイプの組織に対する異なるタイプの処置をシミュレーションするために適用され得る。
【0028】
本発明の一部の実施形態によれば、医学的手技をシミュレーションするシステムは、センサメッシュを含む器官(又は器官の組織)の物理的モデルと、器官の物理的モデルに向けられた重なり合う視野を有する複数のカメラを含むカメラシステムと、器官の物理的モデルに挿入される遠位端部を含むユーザー入力装置と、ディスプレイ装置と、センサメッシュ、カメラシステム、ユーザー入力装置、及びディスプレイ装置に連結されるシミュレーションコントローラとを含み、シミュレーションコントローラは、プロセッサとメモリとを含み、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに器官のシミュレーションを初期化させ、ディスプレイ装置に、器官のシミュレーションの状態を表すものを表示させ、センサメッシュから接触に関するデータを受信させ、カメラから画像を受け取らせ、ユーザー入力装置の遠位端部の、器官の物理的モデル内での場所を、画像接触に関するデータと画像とにしたがって計算させ、ユーザー入力装置からユーザー入力を受け取らせ、器官のシミュレーションの状態を、ユーザー入力にしたがって更新させ、ディスプレイ装置に、シミュレーションの更新された状態を表示させる命令を格納する。
【0029】
器官(又は器官の組織)は、心臓(又は心組織)であり得る。
【0030】
シミュレーションの表示される状態は、心臓の電気解剖学的マップを含み得る。
【0031】
シミュレーションの表示される状態は、1つ以上の電位図を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本特許又は出願書類は、少なくとも1枚のカラー印刷図面を収容している。カラー図面を備える、本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
【0033】
本発明のこれらの特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することによってより充分な理解がなされるであろう。選択された構造及び機構が、残りの構造及び機構を見やすくするために、特定の図面では示されていないことを理解されたい。
図1A】既知のカテーテルによる電気生理学的マッピング及びアブレーションシステムを模式的に描いた図である。
図1B】1つの実施形態によるカテーテルの遠位先端部を、細部を示すために一部を取り外して描いた側面図である。
図1C図1Bのカテーテルの遠位先端部にある力センサ及び位置センサのコイル部品を模式的に描いた図である。
図2】カテーテルプローブ上に設けた電極により取得した値に基づいて、図1Aのシステムによって生成された、色でコード化したLATマップのサンプルであり、電極もそのマップ内に視覚的に表されているものである。赤色は、最も早い脱分極を示し、橙色、黄色、緑色、及び青色が続き、紫色は最も遅い脱分極を示す。
図3A図1Aのシステムによって生成された、立体画像のサンプルであり、アブレーションの場所と、変性部が形成されて、ブロックラインが形成されているのを示しているものである。
図3B図1Aのシステムによって生成された、立体画像のサンプルであり、アブレーションの場所と、変性部が形成されて、ブロックラインが形成されているのを示しているものである。
図4】本発明の1つの実施形態による、シミュレーションシステムの一部を描いた図である。
図5】本発明の1つの実施形態による、シミュレーションシステムのブロック図である。
図6A】本発明の1つの実施形態による、センサメッシュを描いた図である。
図6B】本発明の1つの実施形態による、統合されたセンサメッシュを有する物理的心臓モデルを描いた図であるが、図中、カテーテルの先端部がセンサメッシュに接触した状態で描かれているものである。
図7】本発明の1つの実施形態による方法を用いて、カテーテルの先端部の場所を推定する作業を描いた図である。
図8】本発明の1つの実施形態による、カテーテルアブレーション手技をシミュレーションする方法を描いたフローチャートである。
図9】本発明の1つの実施形態による、先端部が接触している場所を判定するための方法を描いたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の態様は、カテーテルによるマッピング及びアブレーションをシミュレーションするためのシステムを対象とし、そのシステムは、例えば心臓のような器官の物理的立体モデルであって、その器官の、正常な電気的活性度及び異常な電気的活性度、並びにマッピング及びアブレーション中のカテーテルによる表面接触に対する反応を含む挙動を、カテーテルにより感知あるいは測定され、例えば、CARTO、CARTO XP、及びCARTO(登録商標)3システム(いずれもカリフォルニア州、Irwindaleの、Biosense Webster社から入手可能)のような、従来型の電気生理学的マッピング及びアブレーションシステムによって生成された、立体電気解剖学的マップによって表現された、さまざまなシナリオで、シミュレーションするモデルを提供する。本シミュレーションシステムは、従来型の電気生理学的マッピング及びアブレーションシステムを用いて心臓電気生理学医を含むヘルスケアの専門家に対して実演をし、彼らを訓練するために用いられ得る。従来型の訓練システムと比較して、本発明の実施形態によるシミュレーションシステムは、ユーザーに対して、心臓のような器官に、その形状やサイズという点で物理的に似た立体モデルの囲いの中で、カテーテルを取り扱い操作する物理的な経験とともに、マッピング及び/又はアブレーション手技を患者に対して行っているヘルスケアの専門家が経験するであろう事態により精確に対応する、シミュレーションされたアウトプットを提供する。
【0035】
図4は、本発明の1つの実施形態による、シミュレーションシステム100の一部を描いた図である。図5は、本発明の1つの実施形態による、シミュレーションシステム100のブロック図である。シミュレーションシステム100は、操作者24から見たように図1Aに図示されたシステム10の、一部又は全体をシミュレーションするために用いられ得る。
【0036】
図5に示されるように、シミュレーションシステム100は、シミュレーションシステム100のさまざまな部分からの入力を受け、かつそれらに出力を提供し、人間の心臓のコンピュータによるシミュレーションを実行し、シミュレーション出力を生成するように構成されている、シミュレーションコントローラ110を含む。一部の実施形態では、シミュレーションシステム100は、上述のCARTO(登録商標)3システムのような、カテーテルによる電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10と連携して用いられる。シミュレーションコントローラ110は、コンピュータプロセッサ111と、メモリ112とを含み得るが、同メモリ112は、プロセッサによって実行されて、カテーテルによるマッピング及び/又はアブレーション手技をシミュレーションする機能を実行させるプログラム命令を格納しているものである。シミュレーションコントローラ110はまた、シミュレーションシステム100のさまざまな部分からの入力を受け、かつ周辺装置を制御するための、さまざま入出力コントローラ(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)コントローラ、増幅器、A/D変換器、及びD/A変換器)と、1つ以上のディスプレイ装置(例えば、テレビ、コンピュータ用モニター、又はバーチャルリアリティゴーグル)に表示信号を出力するディスプレイコントローラとを含み得る。
【0037】
シミュレーションシステム100は、解剖学的に精確な心臓122又はその1つ以上の部位の物理的モデルを含む、立体心臓モデルシステム120を更に含む。心臓122の物理的モデルは、ヒトの心臓の大きさ及び形状を有する、立体的な物理的装置である。本発明のさまざまな実施形態では、心臓を専門とする電気生理学医が直面し得る、ヒトの心臓のさまざまに異なるサイズ及び形状に対応する、さまざまに異なるサイズ及び形状を、物理的モデル122は有し得る。一部の実施形態では、物理的モデル122は、ヒトの心臓の4つの房室の全部又は一部(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室、又はそれらを組み合わせたもの)の、解剖学的に精確なモデルに対応するものである。例えば、物理的モデル122は、心臓の左心房のモデルであり得る。物理的モデル122は、例えば射出成形及び3D印刷術のような、さまざまな技術のうちの任意のものを用いて構築され得る。物理的モデル122は、生体の心組織(例えば、変形性及び弾性について)に類似の材料によって形成され得る。物理的モデル122の内表面は、シミュレーションコントローラ110に連結されているセンサメッシュ124で裏張りがされている。一部の実施形態では、センサメッシュ124は、物理的モデル122内に埋め込まれている。物理的モデル122は、囲い126で取り囲まれていてよい。一部の実施形態では、囲いは、心臓モデルが操作者(又は訓練生)から直接見えないように隠す不透明な囲い壁を有し、不透明なカバー又はその可視エリアのサイズが調整可能な透明な窓部を受け入れるように適応されている開口部127を含み得る。
【0038】
一部の実施形態では、カメラシステム130が物理的モデル122を撮像するために用いられる。カメラシステム130は、複数(例えば2台)のカメラを含み得る。そのカメラは、電荷結合素子(CCD)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサのような画像センサを含むデジタルカメラであってよい。一部の実施形態では、光源128は、囲い126の中又は付近にあり、物理的モデル122及びその内部を照らすようになっている。カメラシステム130を含む実施形態では、物理的モデル122は透明な材料から形成され得るが、それによって、カメラが物理的モデル122の内部を撮影するのが可能になっている。一部の状況においては、物理的モデル122の内部の撮影は、物理的モデル122が心臓の4つの房室のうちの一部に対応する実施形態でより容易であり得るが、それは、対象の場所(例えば、カテーテル先端部)を潜在的には隠すような透明材料の層が、より少なくなるためである。図5に示されるように、カメラシステム130はカメラモジュール制御システム132によって制御され、光源128は光源制御システム134によって制御され得る。一部の実施形態では、図5に示されるように、カメラモジュール制御システム132と光源制御システム134とは、シミュレーションコントローラ110に統合される。カメラシステム130によって撮影された画像は、映像回収及び処理システム136によって処理され得るが、一部の実施形態では、同システム136は、シミュレーションコントローラ110に統合される。
【0039】
図5に示されるように、シミュレーションシステム100は、例えば、図1Aに関連して既に述べたCARTO(登録商標)3システムのような、カテーテルによる電気生理学的マッピング及びアブレーション(EMA)システム10と連携して用いられ得る。例えば、立体心臓モデルシステム120は、例えば、EMAシステム10のシステムコントローラ30と連結される磁界発生器コイル28を含む位置パッド上を含む、放射電磁界内に配置され得る(例えば、立体心臓モデルシステム120は、EMAシステム10とともに用いられるように構成されている手術台に取り付けて配置され得る)。このように、物理的心臓モデル122は、磁界発生器コイル28に対して、実際の手技施術中に患者の心臓があるのとほぼ同じ位置に、配置され得る。EMAシステム10(又はその修正されたバージョン)のカテーテル14は、シミュレーションシステム100のユーザーのためのユーザー入力装置14として動作し得る。図1Aにより良く示されているように、カテーテル14は、制御ハンドル16、細長いカテーテル本体13,湾曲可能な中間区画19、及び遠位区画15を含み得る。一部の実施形態では、図1B及び図1Cに示すように、カテーテルは、コイルCx、Cy、Czを有するEMセンサと、インピーダンス感知電極17A及び/又は17Bと、並びに/又は、カテーテルの遠位端部に収容されている力センサ60とを含む。
【0040】
立体心臓モデルシステム120は、カテーテル本体13を受信するためのチャネル129を更に含み得る。チャネル129は、カテーテル本体13を支持し導くものであり、カテーテル本体13が、患者に対して施術される心臓マッピング及び/又はアブレーション手技(カテーテルが挿入され、例えば、患者の大腿動脈のような脈管系を通って進む)中に、カテーテル制御ハンドル16から心臓まで、移動する距離と経路とをシミュレーションし得る。
【0041】
シミュレーションコントローラ110は、ヒトの心臓のコンピュータによるシミュレーションを実行して、シミュレーション出力を生成する。シミュレーション出力には、第2ディスプレイ装置11上に表示され得る、シミュレーションされた電位図152が含まれ得る。シミュレーション出力はまた、EMAシステム10のシステムコントローラ30に信号を提供し得るが、シミュレーション出力は、実際の患者に取り付けられる、ECG体表面パッチ38によって捕捉される心内信号を含む諸信号をシミュレーションした情報を含み得る。このようにして、カテーテル及びEMAシステム10は、カテーテルを、既に説明した方法で心臓モデルの対象の房室の表面に、多くの場所で接触させて配置させることによって、磁界生成器28とEMセンサコイルCx、Cy、及びCzとによって生成された磁界どうしの間の相互作用に基づいて、物理的心臓モデル122内に操作者によって位置決めされたカテーテル14の先端部の位置を特定し、図5に示されるようにディスプレイ装置154上で見るための心臓モデル122の解剖学的マップ154を生成するために、実質的に修正されていない方法で運用され得る。例えば、それぞれの接触場所において、少なくとも接触点の位置データを含むデータが記録される。多くの接触場所についてデータを順次取得することを通じて、立体解剖学的マップがリアルタイムで、集められた位置データに基づいて作成される。記録されたデータが、シミュレーションされた電気生理学的データ、例えば、局所的興奮時間(LAT)を含む場合、電気生理学的データは、解剖学的マップ上に挿入されて、例えば、興奮順序や、活性化の速度が色別にコード化されて表現されたものを含む、電気解剖学的マップが作成され得る。
【0042】
一部の実施形態では、立体解剖学的マップを生成するための位置データは、磁界生成器28と相互作用するEMセンサのコイルCx、Cy、及びCzにより生成され、位置モジュールによって処理される信号を生成する。立体心臓モデル122が電気生理学的信号を発しない一部の実施形態で、実際の患者の心臓からは入手できるインピーダンスの測定値が存在しない場合には、位置モジュール54は、EMセンサに、位置データを頼ることになる。立体解剖学的マップを作成することに加えて、位置モジュール及び/又はコンソールは、位置データを用いて、立体解剖学的マップ上に挿入されるカテーテルのグラフィック的視覚化物を作成し、カテーテルの遠位先端部の位置が、ディスプレイ装置上に表示されて操作者に提供され得るようになっている。
【0043】
一部の実施形態では、位置データ及び電気生理学的データを含むデータの取得と記録のため、カテーテルの遠位先端部と心臓モデルの表面とが接触したかどうかは、カテーテルを取り扱い操作する操作者の触覚だけによって判定されている。したがって、操作者は選択的にアクチュエータ(例えば、カテーテル制御ハンドル16上のもの)を作動させて、位置データと、カテーテルの遠位先端部と心臓モデルとの間に1つ以上の接触点がある場合には、任意の電気生理学的データとを含む、データを記録する。
【0044】
一部の実施形態では、シミュレーションコントローラ110及び/又はコンソール30は、部分的又は全面的に力センサ60に依存して接触の有無を検知する。接触信号が、シミュレーションコントローラ110に、シミュレーションコントローラ110と通信可能になっているコンソール30を介して提供され得る。それに関して、コンソール30はまたシミュレーションコントローラ110に、カテーテル14のEMセンサによって生成される位置信号をも提供し得るが、それによって、シミュレーションコントローラ110は、制御信号及び表示信号をコンソール30に提供して、ディスプレイ装置11上で見られるシミュレーションECG、ディスプレイ装置27上で見られるシミュレーションLAT、又はディスプレイ装置27で見られるシミュレーションされた変性部の場所を生成し得るようになっている。
【0045】
一部の実施形態では、シミュレーションコントローラ110は、センサメッシュ124に部分的に又は全面的に依存して接触の有無を検知して、接触信号及び位置信号をシミュレーションコントローラ110に提供し、それに対してシミュレーションコントローラ110は、接触データ及び位置データをコンソール30に提供するようになっている。一部の実施形態では、シミュレーションコントローラは、センサメッシュからの接触信号及び位置信号を、立体心臓モデル及びカテーテルを撮影するように構成されているカメラシステム130から受け取ったビデオデータを用いて改良したり、又はあいまいでないものとする。一部の実施形態では、コンソール30は、シミュレーションコントローラ110によって提供された接触データ及び位置データを処理して、第1ディスプレイ装置27上に表示される立体解剖学的マップを作成する。一部の実施形態では、コンソール30は接触データ及び位置データを処理して、立体解剖学的マップ上に挿入されるシミュレーションの変性部の視覚的標識を提供する。
【0046】
コンソール30が、立体心臓モデル122からの電気生理学的データが欠如又は検出そのものがされない状況で動作する一部の実施形態では、シミュレーションコントローラ110が、コンソール30に対して、ECGに慣れて認識できるように訓練されている最中の操作者が見ることのできるように第2ディスプレイ装置11上に表示され、立体心臓モデル122で代表されている1つ以上の房室の、正常なECGと問題のあるECG(不整脈)とを含む、制御及び表示シミュレーションECGを提供し得る。一部の実施形態では、シミュレーションコントローラ110は、信号をセンサメッシュ124に提供し、シミュレーションの心内ECGを発信させ、カテーテル14が患者の心臓内で、実際の心内ECGを検出するように、カテーテル14によって検出させることが可能になっている。
【0047】
シミュレーションのECGには、例えば、正常で健康な右心房を表すECGと、問題のある右心房、例えば、心房粗動又は心房細動のような、不整脈のある右心房を表すECGと、が含まれ得る。他の例は、正常で健康な右心室を表すECGと、問題のある右心室、例えば、心室性頻拍のような不整脈のある右心室を表すECGとが含まれる。
【0048】
一部の実施形態では、シミュレーションコントローラ110がコンソール30に、シミュレーションのECGを表す制御信号及び表示信号を提供するが、例えば、解剖学的マップを、シミュレーションの電気生理学的データの、解剖学的マップ上に挿入される視覚的標識を有する電気解剖学的マップに変える、第1ディスプレイ装置27上に表示されるLATがそれにあたる。
【0049】
一部の実施形態では、システム100は、まず「診断用」モードで動作し、その後「治療」モードで動作するが、「診断用モード」では、既に述べたように、操作者はカテーテルを用いて、対象の房室を心臓モデル122内にマッピングして、心臓モデルの対象の房室を表す立体解剖学的マップを生成し、第1ディスプレイ装置27上に表示させる。診断用モードの一部として、シミュレーションコントローラ110が、問題のある房室を表すグラフィックのシミュレーションECGを生成し、第2ディスプレイ装置11上に表示する。既に述べたように、シミュレーションのECGを表示することは、シミュレーションコントローラ110がコンソール30に対して、制御及び表示についてのシミュレーションの心内ECG信号を、第2ディスプレイ装置11用に提供することを介して実現され得る。シミュレーションのECGを表示することはまた、シミュレーションコントローラ110がコンソールに対して、制御及び表示についてのシミュレーションのLAT信号を、解剖学的マップ上に挿入されて、電気解剖学的マップを作成するように、第1ディスプレイ装置27用に提供することを介しても実現され得る。シミュレーションのECGを表示することは、更に、シミュレーションコントローラ110がセンサメッシュに対してシミュレーションの心内ECGを、カテーテルの電極によって検出されるように提供することを介しても実現され得る。いずれの場合にも、操作者は、ディスプレイ装置11及びディスプレイ装置27上に表示される、1つ以上のシミュレーションのECGを検討し、心臓モデル内又は上の、好適なアブレーションの場所又はアブレーションの1つ以上のパターンを含む、治療的アブレーション手技を案出する。
【0050】
システムが「治療」モードに切り替えられた場合又は「治療」モードで動作している場合、操作者はカテーテルを操作して、遠位先端部15(及び電極17A)を、心臓モデル122内の1つ以上の好適なアブレーションの場所に接触するように配置して、高周波アブレーションモジュールが作動して、アブレーションの場所に変性部を形成するのを、操作者がシミュレーションすることが可能になっている。接触があったとされた場合(例えば、触覚により、力センサ60により、及び/又はセンサメッシュ124の接触点活性化により)には、接触点の位置データがEMセンサによって集められ、位置モジュール55によって処理されて、コンソール30によって利用されて、シミュレーションの変性部を表し、第1ディスプレイ装置27に表示される立体マップ154上に挿入される視覚的標識が提供される。他の実施形態では、接触点の位置データは、センサメッシュ124によって集められ得、シミュレーションコントローラ110によって処理され得、かつコンソール30に提供され得るが、それにより、シミュレーションの変性部を表し、第1ディスプレイ装置27に表示される立体マップ154上に挿入される視覚的標識が提供される。
【0051】
一部の実施形態では、システム100のいずれの実施形態についても、操作者が、接触点の場所を順次シミュレーションする間にカテーテルの遠位先端部を1つの場所から他の場所へとあちこち動かすにつれて、シミュレーションコントローラ110が、センサメッシュ124又は位置モジュール55からの位置データの蓄積をリアルタイムで追跡し、シミュレーションコントローラ110がシミュレーションのECGを変更又は更新して、操作者によって実行されるアブレーションの場所又はアブレーションのパターンに応じて進化するシミュレーションのECGを提供するが、それにより、操作者は、患者の心臓の不規則な電気的インパルスが、リアルタイムで、変性部の形成に積極的に反応する、より良い「ライブ」のアブレーションのセッションを体験可能となる。位置データの蓄積を追跡するシミュレーションコントローラ110が、操作者が、房室の不規則な電気活性のような、問題のある場合のシミュレーションに対応する適切な数のシミュレーションの変性部を、適切な場所に形成したと判定した場合には、異常な電気的インパルスを有効に「ブロック化」又は「切り離す」のをシミュレーション可能となり、シミュレーションコントローラ110は、シミュレーションECGを変更及び更新して、効果的で成功裏のアブレーション手技をシミュレーションするのに、正常なECGを提供する。例えば、シミュレーションコントローラ110上で実行されるシミュレーションは、シミュレーションされた心組織内の変性部の場所とシミュレーションされた心臓を通る導電経路とを含む、シミュレーションされた心臓の状態を含み得る。このように、シミュレーションコントローラによって生成されたシミュレーションのECGは、例えば、変性部の創出又は存在のような、シミュレーションされた心臓の状態を変化させる(例えば、変性部を追加すると、心臓のシミュレーションの組織を通る導電経路を変更し得る)シミュレーションの状態に依存するものであり、シミュレーションコントローラ110がシミュレーションECGにシミュレーションされたアブレーションによって引き起こされた変化に対して反応するのを可能にする。
【0052】
このように、シミュレーションシステム100のユーザーは、シミュレーションシステム100からのフィードバックを、ディスプレイ装置150を介して受け取り得るが、そのようなフィードバックには、心内膜の解剖学的構造の測定した状態での立体モデルを見せること、記録された電位図に基づく現在の興奮順序を表示すること、現在の電位図を見せること、心臓内での電極カテーテルの現在位置を見せること、シミュレーションされた高周波エネルギーが既に印加された場所のような対象の部位の場所を表示すること、訓練の手技中にシミュレーションされた心臓のさまざまな部位のシミュレーションされたアブレーション(例えば、高周波エネルギーのシミュレーションされた印加)を実行した効果を見せることが挙げられる。
【0053】
図6Aは、本発明の1つの実施形態による、センサメッシュを描いた図である。センサメッシュは、「水平方向」感知ライン124Aと、「垂直方向」感知ライン124Bとを含む。ここで使用されている「水平方向」及び「垂直方向」という用語は、センサメッシュ124の説明をするための便宜上の用語に過ぎず、感知ライン124A及び124Bが心臓モデル122内に配置された場合の、いかなる物理的な方向を指すものでは必ずしもない。水平方向感知ライン124Aどうしは、実質的に互いに平行である。(例えば、水平方向感知ライン124Aが互いに交差したり横切ったりということは実質的に起こらない)。同様に、垂直方向感知ライン124Bどうしは、実質的に互いに平行である。水平方向感知ライン124Aは、交差領域で垂直方向感知ライン124Bと交差したり、それらを横切ったりするように配列され、感知マトリックスを形成している。例えば、図6Aに図示されている実施形態では、センサメッシュ124が平坦であり、水平方向感知ライン124Aは垂直方向感知ライン124Bに対して垂直に交わっている。絶縁性シートが、水平方向感知ライン124Aと垂直方向感知ライン124Bとの間に配置されてもよい。メッシュの平面と垂直な方向に沿って力がセンサメッシュに加えられると、センサメッシュは、その力が加えられた場所に対応する信号を生成する。この信号は、1本以上の垂直方向感知ライン124Bに対して近づくように変位している1本以上の水平方向感知ライン124Aに対応するもの、又はその逆であり得る。
【0054】
図6Bは、本発明の1つの実施形態による、統合されたセンサメッシュ124を有する物理的心臓モデルを描いた図であるが、図中、カテーテルの先端部がセンサメッシュに接触した状態で描かれているものである。センサメッシュ124は、心臓モデル122の内壁上に配設されている。水平方向感知ライン124Aは、図6Bの平面内に延入、及びその平面から延出し(そのため、点で描かれている)、かつ垂直方向感知ライン124Bのうちの1本が、図6Bの平面の平面に沿って延在している。図6Bに示されるように、カテーテル14の遠位区画143は、近位部143P、遠位部143D、及び遠位先端143Tを含む。遠位区画143は、少なくとも1つの先端電極145をその遠位先端143Tに担持している。
【0055】
図6Bは、遠位先端143Tを、物理的心臓モデル122の内壁の部位122Cと接触している状態で図示している。この接触点又接触場所122Cでは、遠位先端143Tは、少なくとも1本の垂直方向感知ライン124Bを物理的心臓モデル122の内壁に対して押し付けており、1本以上の垂直方向感知ライン124Bを、一部の水平方向感知ライン124Aに対して近づかせるようにしている。
【0056】
本発明の一部の実施形態では、感知信号が順次、シミュレーションコントローラ110から、一方の組の感知ラインに供給され、信号は他方の組の感知ラインから読み取られ得る。例えば、電圧信号の形態の走査信号(例えば、交流電圧の信号)が、水平方向感知ライン124Aに順次適用され得るが、電圧は、垂直方向感知ライン124Bから順次読み取られ得る。水平方向感知ライン124Aのうちの1本に走査信号が印加されている間に、垂直方向感知ライン124B上の電圧の変化が検出された場合、その変化は、その1本の水平方向感知ライン124Aと、垂直方向感知ライン124Bとの間の容量(例えば、その水平方向感知ラインと垂直方向感知ラインとが交差する領域における容量)を反映したものとなる。
【0057】
交差領域の容量は、遠位先端143Tと先端電極145との間の近接性に基づいて変化し得る。特に、先端電極145は、周囲環境(例えば、液体又は空気)とは異なる誘電率を有し得る。そのため、先端電極145が水平方向感知ライン124Aのうちの1本と垂直方向感知ライン124Bのうちの1本との交差領域に形成される電界に入ると、交差領域の容量が変化する。
【0058】
交差領域の容量は、交差領域にある感知ラインどうしの間の距離に応じても変化し得る。このため、センサメッシュが交差領域で圧縮されると、その際の容量は、弛緩、すなわち圧縮されていない状態での容量とは異なる(例えば、より低い)ものとなり得る。このため、センサのどの部位が圧縮されているのかを検出することが可能になり、それによって、物理的心臓モデル122の内表面のどの部位が、カテーテルと接触しているのかを検出することが可能となっている。また、一部の実施形態では、物理的心臓モデル122に印加された力の大きさが、容量の変化の大きさに基づいて判定可能になっている(例えば、加えた力が大きいと、より大きな圧縮がかかり、そのため、感知ラインどうしが、より小さい力をかけた場合よりも接近する。)。
【0059】
図6Bに示された実施形態は、センサメッシュ124を、物理的心臓モデル122の内壁の内表面上に配設されているものとして描いているが、本発明の実施形態はそれに限られない。本発明の一部の実施形態では、センサメッシュが物理的心臓モデル122の壁の中に埋め込まれており、接触により壁が変形しても、容量が変化し得るようになっている。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、センサメッシュ124はまた、カテーテル14により検出されるシミュレーションの心内ECGを送信するためにも用いられる。これらの信号は、生成され得る。例えば、カテーテル14による接触の場所を特定すること、シミュレーションの現在の状況及び場所に対応するシミュレーションの心内ECGを特定すること、かつ、複数の感知ラインに跨るECG信号に対応している電圧を、カテーテル14と接触している感知ラインを横断するように印加すること(一部の実施形態では、感知ラインのすべてが、対応する電圧の供給を受けることになる)。以下に詳細に説明するように、シミュレーションのECG信号は、サンプル抽出されたアナログ信号として格納されてもよく(例えば、音声フォーマット)、かつシミュレーションのECG信号は、感知信号とは重複しない周波数帯域で、センサメッシュに提供され得るが、それにより、感知信号及びシミュレーションのECG信号を、互いに干渉することなく、センサメッシュ124を通じて供給することが可能になる。例えば、シミュレーション信号は、音声周波数帯域内(例えば、最大20kHz)で供給し得るが、感知信号は、より高い周波数で印加され得る。(例えば、100Khzより大きな交流電流信号を用いて)。
【0061】
図7は、本発明の1つの実施形態による方法を用いて、カテーテルの先端部の場所を推定する作業を描いた図である。センサメッシュ124が、心臓モデル122の内表面のどの部位がカテーテルと接触しているかを検出するために用いられ得る一方で、カテーテル14の多くの部位が、所与の回数、センサメッシュに接触していてよく、このことは、検出された接触のうちのどの接触が、遠位先端143T(又は先端電極145)の位置に対応するのかをあいまいにし得る。遠位先端143T(又は先端電極145)の位置は、ユーザーがアブレーション入力命令を供給する(例えば、カテーテル14の制御ハンドル16上のスイッチを作動させることによって)と、心臓のどの部位がアブレーションされるかを決定する目的では、シミュレーションと関連し得る。
【0062】
したがって、さまざまな接触点間のあいまいさを回避するため、一部の実施形態では、カメラ(又はカメラシステム)130が用いられて、カテーテルの遠位先端143Tの場所を追跡するようになっている。図5に示されるように、カメラ130は、心臓モデル122の周りの異なる場所に、一部重複しかつ異なる見え方になるように、配置され得る。1つの例としては、カメラ130は、その光軸を、垂直軸とするように配置され得る(例えば、図3及び図5に示されるように、x軸とz軸、)。例えば、第1カメラ130-1は、xy平面に沿った画像を撮像するように構成され、第2カメラ130-2は、yz平面に沿った画像を撮像するように構成され得る。
【0063】
カテーテル先端145は、目立つ色(例えば、赤)で表され得るが、それによって、カメラがより容易に、カメラによって撮像された心臓モデル122の画像内でカテーテル先端145を同定し、隔離することが可能である。既に述べたように、心臓モデル122は透明であるので、カメラ130は、心臓モデルの内部にカテーテル先端145があっても、撮像することが可能である。
【0064】
本発明の1つの実施形態によって、カテーテル先端の空間的位置が、カメラ130の視点から見たその方向角及び形状の画像によって計算されるが、物理的心臓モデル122上の既知の場所を、固定方向で撮像している。映像回収及び処理システム136は、第1カメラ130-1及び第2カメラ130-2によって撮像された画像を分析し、カテーテル先端145の位置(x、y、z)を判定するように構成され得る。システムの説明の便宜上、第1カメラ130-1は、位置(x0、0、0)に位置し、第2カメラ130-2は、位置(0、0、z0)に位置している。カテーテル先端145は、第1カメラ130-1及び第2カメラ130-2によって撮像された画像内に位置し得る。
【0065】
画像内の物理的心臓モデル122の既知の位置と、2台のカメラからの位置に基づいて、カテーテル先端の位置が計算され得る。カテーテル先端の位置は、カテーテル先端の目立つ色(例えば、赤)を有する画素を発見することに基づいて、第1カメラ130-1及び第2カメラ130-2の撮像した画像内に位置付けられ得る。第1カメラ130-1を考えると、カテーテル先端の位置(x、y、z)は、仰角δと、カメラの光軸に対して横断方向の角λとを有する。これらの角度δ及びλは、第1カメラ130-1の既知の視野(FOV)に基づいて計算可能である。例えば、第1カメラ130-1が、48°の水平方向視野(x軸方向)と、27.0°の垂直方向(y軸方向)視野を有し、画像サイズが1280ピクセル×720ピクセルであることが既知である場合、カテーテル先端の位置がx軸方向に沿って約320番目の画素にあると同定すると、角度λは約12°(48°×320画素/1280画素)ということになる。同様の計算により、角度δが、画像のy軸方向に沿った画素の位置に基づいて、計算され得る。同様の計算を、第2カメラ130-2についても実行し、角度β及びθを計算することが可能である。計算された角度は、カメラ130-1及び130-2にそれぞれ起点を有する、光線600-1及び600-2を同定するために用いることが可能である。光線600-1及び600-2は、カテーテル先端の場所(x、y、z)で互いに交差する。あるいは、位置yが、光線600-1をxy平面に投影した線の交点と、投影した光線602-1と、第1カメラ130-1から角度λで延びる線との交点を計算することとに基づいて計算可能である。更に別の選択肢として、位置yが、光線602-1をyz平面に投影した線の交点と、投影された光線602-2と第2カメラ130-2から角度βで延出する線との交点とに基づいて計算可能である。
【0066】
図8は、本発明の一部の実施形態による、カテーテルアブレーション手技をシミュレーションする方法を描いたフローチャートである。その方法のさまざまな作業が、シミュレーターシステム100(例えば、心臓をシミュレーションし、シミュレーションされた心臓に対する、外科手術実施の効果をシミュレーションするようにカスタマイズされたコンピュータシステムを含む、シミュレーションコントローラ110)によって実行され得る。
【0067】
本発明の一部の実施形態では、シミュレーションシステムは、心臓カテーテルによるマッピング及びアブレーション手技の異なるフェーズに対応し得る、複数の異なるモードで動作する。これらのモードには以下のものが含まれ得る:マッピングモード=心臓の構造とその導電パターンを最初にマッピングするのに対応するモード;及び治療モード=心臓の導電パターンが測定され、アブレーション用の電力が、心臓の各部位に印加されて、導電パターンを変化させるモード。
【0068】
作業710では、シミュレーションコントローラ110が、シミュレーション用パラメータを読み込み得る。パラメータは、実施されるシミュレーションのさまざまな態様を定義し得るが、例えば、モデル化される心臓の特定のタイプ(例えば、心臓のサイズ又は形状、あるいは子供の心臓であるか成人の心臓であるか)、心臓に影響を及ぼしている病気のタイプ、心臓のどの部分が1つ以上の病気で影響されているか(例えば、問題のある電気経路を有する心臓の特定部位)、血圧等が挙げられる。パラメータはまた、シミュレーションされる患者の他の健康状態に関する情報を含み得るが、それは、手技の施術中に観測され得る事柄に一定の効果を持ち得るものである(例えば、高血圧、血友病等)。
【0069】
パラメータは、シミュレーションのセッションの前に、シミュレーション設計者によってあらかじめ定義され得る。また、パラメータの複数の組が(例えば、シミュレーションコントローラ110に)、異なるシナリオとして格納可能であるが、それにより、シミュレーターは、適切なシナリオを読み込むことにより、異なる条件をシミュレーションするように容易に構成され得る。例えば、異なるタイプ及びさまざまに異なる容態の心不整脈をシミュレーションするために、異なるシナリオを用いることが可能であるが、例えば、心房細動、心房粗動、上室性頻拍(SVT)、異なるタイプの患者のウルフ・パーキンソン・ホワイト症候群(例えば、子供対成人)、が上記のタイプの例として挙げられる。
【0070】
一部の実施形態では、物理的心臓モデルそれ自体が、シミュレーションのシナリオに基づいて、さまざま用意され得る。例えば、シミュレーションする場合、成人に対して施術される手技と子供に対して施術される手技とを比較してシミュレーションする場合には、それぞれより大きな物理的心臓モデル122と、とより小さな物理的心臓モデル122とを必要とする場合があり得る。
【0071】
作業720では、シミュレーションコントローラ110が、読み込んだパラメータにしたがって、心臓のデジタルシミュレーションを初期化する。シミュレーションされた心臓モデル(又は、仮想心臓モデル)は、シミュレーションコントローラ110のメモリ内に保持され、メモリ内に格納され、プロセッサにより実行される命令に従って更新され得るが、シミュレーションは、シミュレーションされた心臓のあらゆる場所の電気活動を、一定時間にわたりシミュレーションするものである(例えば、心臓の各場所における導電速度を表すマップ、又はECGピックアップを含むカテーテル先端が心臓のその部位に接触させられた場合に測定され得る心内の心電図検査若しくはECG信号)。シミュレーションコントローラ110はまた、ディスプレイ装置150上に表示される、心臓の立体電気解剖学的マップ154に対応する情報をも格納する。
【0072】
作業730では、シミュレーションコントローラ110が、カテーテルの先端部(がある場合)の場所又は地点を同定する。この先端部の場所と物理的心臓モデル122内の物理的な座標に対応する位置であっても、立体仮想心臓モデル内の仮想座標に対応する位置であってもよく、その位置は、センサメッシュ124及びカメラ130からの信号に基づいて演算される。例えば、先端部の接触している場所は、物理的心臓モデル122の空間内の特定の位置を同定するか、又は、立体心臓モデルシステム120内の特定の場所を同定する、3次元座標(x、y、z)を含み得る。更に、カテーテル14の遠位端部143がセンサメッシュ124に接触している場合、先端部の場所には、センサメッシュ124上の特定の場所を同定するか、又は物理的心臓モデル122の内表面上の特定の場所を同定する2次元座標(x、y)が含まれ得る。一部の条件下では、遠位端部143がセンサメッシュと接触していない場合には、先端部の接触判定は行われない。
【0073】
図9は、本発明の1つの実施形態による、先端部が接触している地点を同定するための方法を描いたフローチャートである。作業732では、シミュレーションコントローラ110がセンサメッシュ124から接触に関するデータを受け取る。このデータには、例えば、センサメッシュ124の1か所以上の感知領域での容量の変化に関する情報が含まれ得る。作業734では、シミュレーションコントローラ110が、カメラ130からの画像を受け取る。これらの画像は、例えば、カメラにより撮影されたビットマップ画像(例えば、JPEGファイル、又はポータブルネットワークグラフィックス(PNG)ファイル)又はビデオ映像(例えば、MPEG-2又はH.264/MPEG-4ビデオ)として提供され得る。作業736では、図7に関して既に説明したように、シミュレーションコントローラ110がカメラ130によって撮影された画像を処理して、遠位先端143T(又は先端電極145)の3次元の位置(x、y、z)を計算する。
【0074】
作業738では、シミュレーションコントローラ110が、作業732からのセンサメッシュの接触データを、作業736のカメラ画像から計算された先端部の場所と相互に関係づけ、先端部の場所を判定する。接触データが、複数の地点での接触のデータを含む(例えば、センサメッシュ124は、複数の場所で接触している)場合には、この相互関連付けは、複数の接触地点を、画像から計算した先端部の3次元の場所と比較することを含み得る。先端部の3次元の場所に最も近いセンサメッシュ上の接触点を、先端部の接触の場所として同定することができる。一部の条件下では、先端電極145及び/又は遠位先端143が、センサメッシュ124と接触することなしに、遠位端部143の一部がセンサメッシュ124の一部と接触し得る。したがって、センサメッシュ124から受け取った接触地点のいずれもが、実際の先端部の接触場所を同定するのに十分なほど、先端部の3次元の場所の近くにないということになり得る。したがって、一部の条件下では、先端電極145がセンサメッシュ124に接触していない場合には、先端部の場所は、カメラ130から受け取った画像のみに基づいて判定されることになる。
【0075】
図8に戻ると、作業740では、シミュレーションされた心臓の状態と、先端部の場所に基づいて、シミュレーションコントローラ110が電位図152を更新する。例えば、シミュレーションコントローラは、先端部の場所を、実座標(例えば、物理的心臓モデル上の座標)から、仮想座標(シミュレーションされた心臓モデル上の座標)に移行させる。1つの実施形態では、各シミュレーションシナリオに対して、複数の異なる電気生理学的(EP)信号をシミュレーションコントローラ110が格納しており、各EP信号は、心臓上の異なる場所に対応している。シミュレーションコントローラ110は、電位図152上に、物理的心臓モデル122のセンサメッシュ124上での、検出されたカテーテル先端の接触位置に対応するEP信号を表示する。一部の実施形態では、EP信号は、サンプル抽出されたアナログ信号に適したデータファイル形式(例えば、オーディオ形式)、例えばパルス符号変調(PCM)又はMPEGオーディオレイヤIII(MP3)のような圧縮形式でデータベースに格納されている。
【0076】
シミュレーションが進むにつれて、シミュレーションコントローラ110は、シミュレーションされた(又は仮想の)心臓モデルの状態を、シミュレーションされた心臓の表面又は空間にわたる新たな電気的状態で自動的に更新する。例えば、電気解剖学的マッピング処理のシミュレーション中、シミュレーションコントローラ110は、1心拍にわたる期間の心臓のさまざまな部分でのECG信号にしたがって、又は仮想的ペーシング信号にしたがってモデルを更新する。一部の実施形態では、仮想のペーシング信号は、操作者によって制御されて、操作者によって特定された仮想心臓モデル内の場所に提供される。そのため、操作者が、カテーテル14遠位区画143を、物理的心臓モデル122の内表面のさまざまな部分に動かすにつれて、シミュレーションコントローラ110が、遠位区画の接触位置に対応する仮想座標でのシミュレーションされた心臓モデルの電気的状態を同定する。例えば、シミュレーションコントローラ110は、シミュレーションの現在の状況と接触位置に基づいて格納されているEP信号から選択されたEP信号を出力し得るが、出力されたEP信号は、電位図152の中の、接触点における局所的電位図を示すために表示され得る。一部の実施形態では、シミュレーションコントローラ110はまた、体表面パッド信号を、シミュレーションの状態に基づいて生成する(例えば、さまざまなパッド38に対応するECG信号を、シミュレーションの現在の状態に基づいて読み込むことにより)。
【0077】
電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10が用いられる一部の実施形態では、システム10は、磁界によって検出される、カテーテル先端の位置に基づいて、解剖学的マップを生成し得る。シミュレーションコントローラ110は、シミュレーションされた信号をシステム10に提供し、システム10は電気解剖学的マップを、シミュレーションされた信号に基づいて更新する。
【0078】
電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10が用いられない別の実施形態では、電気解剖学的マップの生成がシミュレーションされ得る。例えば、マッピングのフェーズ中には、操作者は遠位先端143を、物理的心臓モデル122の内表面上で動かして、心臓の構造の立体電気解剖学的マップ154を構築する。物理的心臓モデル122はまだマッピングされていないので、シミュレーションは空の立体電気解剖学的マップ154から開始し得る。操作者が遠位先端143を動かして、物理的心臓モデル122の内表面の各部位に接触させるにつれて、遠位先端14が動いて行った先である、物理的心臓モデル122の各部を含むように電気解剖学的マップ154が更新される。このように、生体の患者に対する手技の施術中の実際の電気解剖学的マッピング処理中に、そのようなマップが作成されるのを実質的に類似の方法で、電気解剖学的マップは作成され得る。
【0079】
一部の実施形態では、作業750で、シミュレーションコントローラ110はまた、シミュレーションされた心臓モデルの更新された状態と、更新された電気解剖学的マップと、及びカテーテルの遠位区画143の仮想座標とに従って、ディスプレイ装置150をも更新する。
【0080】
例えば、電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10を使用しない実施形態では、シミュレーションコントローラ110は、ディスプレイ装置150上の更新された電気解剖学的マップに従って、立体電気解剖学的マップ154の表示を更新し得るが、シミュレーションされた心臓の、仮想座標での電気的状態を示すため、実際の手技の施術中に電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10上に示されるものと類似の心臓を示し得る。例えば、マッピングモードでは、心臓モデルのうちのマッピング済み部分のみが表示される。心臓モデルのマッピングが完成した後の治療モードでは、表示された電気解剖学的マップ154の表面全体にわたって、電気的活性化マップが表示され得る。ディスプレイ装置150はまた、先端電極145が物理的心臓モデル122の内表面と接触しているかどうか(例えば、先端電極145がセンサメッシュ124に接触しているかどうか)に関わらず、先端電極145の場所及び向きを含む、カテーテル14の遠位区画143の場所及び向きを表し得る。
【0081】
別の例として、電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10と共に用いられる実施形態では、シミュレーションコントローラ110が、シミュレーションされたEP信号をシステム10に提供し、システム10が、電気解剖学的マップ154の上に重ねられた電気的活性化マップをキャプチャして表示し得る。
【0082】
シミュレーションコントローラ110はまた、さまざまな他のタイプの表示を、元になる心臓のシミュレーションされたモデルに基づいて生成し得る。これらの他の表示には、例えば、等時マップ、電圧マップ、及びメッシュマップが挙げられ得る。
【0083】
作業760では、アブレーションユーザの入力が、カテーテルから受取られ得る。例えば、「治療」モードでは、シミュレーションシステムのユーザーが、カテーテル制御ハンドル上の適切なスイッチを押すことで、アブレーションコマンドを作動させ得る。(機能的システムでは、このコマンドは、先端電極145を加熱させて、心組織の一部にアブレーションを施すのを可能にする。)本発明の一部の実施形態では、アブレーションユーザの入力は、シミュレーションが、例えば、物理的心臓モデル122の電気解剖学的マッピングのシミュレーションの完了に続いて「治療」モードで行われている場合にのみ受け付けられる。本発明の一部の実施形態では、ユーザーはまた、心臓の内表面の特定の場所を、後で更に調べる対象となる点として同定し得る。これらの場所はシミュレーションコントローラによって記録され、電気解剖学的マップ154上に表示され得る。
【0084】
作業770では、シミュレーションコントローラ110が、シミュレーションされた心臓モデルの状態を更新する。例えば、現在システムに読み込まれているシミュレーションシナリオに基づいて、そのシナリオに結びつけられた頻脈又は心房細動という具体的な形態の、標準的な次の段階で、心臓のシミュレーションを進め得る。一部の条件下では、シミュレーションのシナリオは、パラメータ又は心臓の挙動を変更させるように構成され得るが、例えば、引き金となるような条件(例えば、手技の施術開始から一定の時間が経過したこと、又は、先端部が物理的心臓モデルの特定の場所に、手技中で初めて到達したこと)に基づいて、血圧の変化又はその他の異常な状態をシミュレーションする。
【0085】
また、アブレーションコマンドを作業760中に受け取り、かつ、先端電極145が物理的心臓モデル122に十分な力で十分な時間にわたって係合した際にアブレーションコマンドが継続的に提供された場合には、シミュレーションコントローラは、シミュレーションされた心臓モデルを更新して、先端部の場所の仮想座標に対応する心臓の部位のアブレーションが成功裏に終わったことを示し得る。シミュレーションされた心臓モデルに対するこの更新は、実際の心臓の一部にアブレーションが施された場合に実際の心臓の挙動にいて生じる変化にしたがって、シミュレーションされた心臓モデル内の導電パターンを変更させ得るか、又は、シミュレーションされた心臓モデルの特定の一部分に対して印加された、操作者によって制御される仮想ペーシング信号にしたがって導電パターンを変化させ得る。
【0086】
作業780では、シミュレーションコントローラ110が、シミュレーションを続けるかどうかを判断する。例えば、ユーザーから「途中で終える」又は「停止する」という命令が提供された場合には、シミュレーションは、終了し得る。シミュレーションコントローラが、シミュレーションを続けると判断した場合には、作業のブローを作業730に戻して、カテーテル先端145の現在位置を同定するところから始める。本発明のさまざまな実施形態では、730から780へのループになる作業が十分に高い頻度で起こり、実際のシステムの応答時間を表すフィードバックを、ユーザーに提供する。例えば、ループは、30Hz~60Hzの割合で発生し得る(例えば、毎秒30回~60回、先端部の場所が判定され、表示が更新される)。
【0087】
上記の説明は、現時点における本発明の好ましい実施形態に関連して示したものである。本発明が関連する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、記載される構造に改変及び変更を実施し得る点は認識されるであろう。1つの実施形態に開示される任意の特徴又は構成は、必要に応じて又は適宜、他の任意の実施形態の他の特徴に代えて、又はそれに加えて組み込むことができる。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺どおりではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載及び例示される正確な構成のみに関連したものとして読まれるべきではなく、むしろ以下の最も完全で公正な範囲を有するものとされる特許請求の範囲と一致し、かつこれを支持するものとして読まれるべきである。
【0088】
例えば、本発明の実施形態は電気生理学及び心組織のカテーテルアブレーションに関連して本明細書では説明されているが、本発明の実施形態はそれに限られず、シミュレーションを外科及び整形外科の手技に対して提供するなど、他の用途にも拡張され得る。例えば、物理的心臓モデル122は、他の内臓の物理的モデルと置き換え得、シミュレーションされたモデルは、シミュレーターのユーザーに対して表示される情報のタイプが、患者に実際に手技を施術している間に、ヘルスケアの専門家が目にするタイプの情報をまねたものである、対応する臓器のシミュレーションに置き換え得る。なお、本明細書における「解剖学的マップ」という用語は、挿入される電気生理学的データに対応する視覚的標識又は像のないものでなくてよいことを理解されたい。
【0089】
〔実施の態様〕
(1) センサメッシュを備える、器官の物理的モデルと、
前記器官の前記物理的モデル内に挿入される遠位端部を備えるユーザー入力装置と、
ディスプレイ装置と、
前記センサメッシュ、前記ユーザー入力装置、及び前記ディスプレイ装置に連結され、プロセッサ及びメモリを備えるシミュレーションコントローラとを備える、医学的手技をシミュレーションするシステムであって、前記メモリが命令を格納し、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記器官のシミュレーションを初期化させ、
前記ディスプレイ装置に、前記器官の前記シミュレーションの状態を表すものを表示させ、
前記センサメッシュから、接触に関するデータを受信させ、
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の、前記器官の前記物理的モデル内での場所を、前記接触に関するデータにしたがって計算させ、
前記器官の前記シミュレーションの前記状態を更新させ、
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所と、前記器官の前記シミュレーションの前記状態とにしたがってシミュレーション出力を生成させ、
前記ディスプレイ装置に、前記シミュレーション出力を表示させる、システム。
(2) 前記器官が心臓である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記シミュレーション出力は、前記心臓の電気解剖学的マップを含む、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記シミュレーション出力は、1つ以上の電位図を含む、実施態様2に記載のシステム。
(5) 前記メモリは、各々が前記心臓の異なる場所に対応する複数の電気生理学的(EP)信号を更に格納し、
前記プロセッサに前記シミュレーションの前記状態を更新させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記複数のEP信号のうちの1つのEP信号を同定させる命令を含み、前記同定されたEP信号は、前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記計算された場所に対応し、前記1つ以上の電位図は、前記同定されたEP信号を含む、実施態様4に記載のシステム。
【0090】
(6) 前記プロセッサに前記シミュレーションを初期化させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、複数のシナリオのうちの1つのシナリオを読み込ませる命令を含み、各シナリオは、心不整脈の異なる形態に対応する、実施態様2に記載のシステム。
(7) 前記シナリオは、心不整脈の形態に対応するシナリオを含み、心不整脈の前記形態は、
心房細動と、
心房粗動と、
上室性頻拍と、
ウルフ・パーキンソン・ホワイト症候群と、を含む、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記シミュレーションコントローラに連結された電気解剖学的マッピングシステムを更に備え、前記電気解剖学的マッピングシステムは、前記器官の前記モデルの解剖学的マップを生成するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) カメラシステムを更に備え、
前記メモリは、前記プロセッサに、前記カメラシステムから画像を受け取らせる命令を更に格納し、かつ
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所を計算させる前記命令は、前記受取った画像内の前記遠位端部の画像にしたがって、前記遠位端部の前記場所を計算させる命令を更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記カメラシステムは、第1カメラ及び第2カメラを備え、かつ
前記プロセッサに前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所を計算させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記第1カメラと前記ユーザー入力装置の前記遠位端部との間の第1光線の、前記第1カメラの光軸に対する第1の仰角(first elevational angle)及び第1の横断方向角(first transverse angle)を計算させ、
前記第2カメラと前記ユーザー入力装置の前記遠位端部との間の第2光線の、前記第2カメラの光軸に対する第2の仰角及び第2の横断方向角を計算させ、かつ
前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所に対応する、前記第1光線と前記第2光線との間の交点を計算させる命令を含む、実施態様9に記載のシステム。
【0091】
(11) 前記器官が心臓であり、
前記メモリは、複数の電気生理学的(EP)信号を更に格納し、各EP信号は、前記心臓の場所と複数の状態のうちの前記心臓の1つの状態との組み合わせに対応し、
前記プロセッサに前記シミュレーションの前記状態を更新させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記複数のEP信号のうちの1つのEP信号を同定させる命令を含み、前記同定されたEP信号は、前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記計算された場所と前記心臓の現在の状態とに対応し、前記シミュレーション出力は、前記同定されたEP信号を含む、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記メモリは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記ユーザー入力装置からのユーザー入力を受け取らせる命令を更に格納し、かつ
前記プロセッサに前記シミュレーションの前記状態を更新させるように構成されている前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに前記ユーザー入力に基づいて前記状態を更新させる命令を含む、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記ユーザー入力は、アブレーション電力を前記心臓に印加することに対応し、かつ
前記シミュレーションの前記状態は、前記器官の前記物理的モデル内の前記ユーザー入力装置の前記遠位端部の前記場所での、前記器官の前記シミュレーションにおける組織のアブレーションを示すように更新される、実施態様12に記載のシステム。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9