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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】硬質表面用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20221226BHJP
   C11D 1/44 20060101ALI20221226BHJP
   C11D 1/40 20060101ALI20221226BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20221226BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20221226BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20221226BHJP
   C11D 1/86 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/44
C11D1/40
C11D1/75
C11D1/68
C11D1/90
C11D1/86
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018141134
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020015863
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】大谷 孝
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慎也
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-049291(JP,A)
【文献】特開2003-119496(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108192756(CN,A)
【文献】特開2011-236397(JP,A)
【文献】特開2015-166409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物であって、
界面活性剤として、(A)非イオン界面活性剤〔以下、(A)成分という〕、及び(B)両性界面活性剤〔以下、(B)成分という〕を含有し
界面活性剤中、(A)成分の割合が60質量%以上であり、
(B)成分を、組成物中、1質量%以上10質量%以下含有し、
(A)成分として、(A1)アルキル基の炭素数が10以上18以下であり、アルカノール基の炭素数が2又は3であるアルキルモノ又はジアルカノールアミン又はそのアルキレンオキシド付加物(アルキレンオキシドの炭素数は2又は3である)〔以下、(A1)成分という〕を含有し、
(A)成分として、(A2)アミンオキシド型界面活性剤(以下、(A2)成分という)、(A3)アルキルグリコシド型界面活性剤(以下、(A3)成分という)、及び(A4)グリセリルエーテル型界面活性剤(以下、(A4)成分という)から選ばれる一種以上を含有し、
(A)成分として、(A3)成分及び(A4)成分を含有し、(A3)成分及び(A4)成分を合計で、組成物中、10質量%以上40質量%以下含有し、(A3)成分の含有量と(A4)成分の含有量の質量比である、(A3)/(A4)が、2以上7以下であり、
(A)成分及び(B)成分の合計中、(A1)成分の割合が、0.5質量%以上20質量%以下である、
硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
界面活性剤として、任意に(C)陰イオン界面活性剤を含有し、界面活性剤中、(C)の割合が10質量%以下である、請求項記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
食器洗浄用である、請求項1又は2記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用液体洗浄剤組成物及びその水切れ性改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質表面を有する物品、例えば食器には、油汚れなど洗浄負荷が大きい汚れが多く付着する。そのため、食器などの洗浄においては、油汚れに対する洗浄力に優れた液体洗浄剤が求められる。
【0003】
特許文献1には、陰イオン界面活性剤、アルキルポリグリコシドおよびセッケンを含有する液体洗剤であって、脂肪アルコールスルフェート2~10重量%、アルキルポリグリコシド5~25重量%、セッケン0.1~9重量%、低級アルコール3~8重量%を含有し、粘度が400~3000mPa・sである液体洗剤が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、特定のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤1~50質量%、アルキル基の炭素数が5~18のスルホコハク酸モノアルキルエステル又はその塩及びアルキル基の炭素数がそれぞれ5~18のスルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩から選ばれる化合物、並びに炭素数8~22の脂肪酸又はその塩を含有する食器洗浄用洗浄剤組成物が開示されている。
【0005】
一方、アルキルアルカノールアミン型界面活性剤を含有する洗浄剤としては、特許文献3~5を挙げることができる。
【0006】
また、特許文献6には、酸性水溶液において0.5~2重量%のポリオキシエチレンアルキルアミンと0.2~1重量%の非イオン活性剤を必須成分とするガラス用洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表平6-504557号公報
【文献】特開2012-172032号公報
【文献】特開2016-132689号公報
【文献】特開2003-119496号公報
【文献】特開2008-247952号公報
【文献】特開昭63-048398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非イオン界面活性剤を主成分とする硬質表面洗浄剤は、油脂を含む汚れに対する洗浄力に優れるが、ポリエチレンやポリプロピレンなどの疎水性硬質表面に付着した油脂を含む汚れに対する洗浄力については、更なる向上が望まれている。また、硬質物品、なかでもガラスや陶器などの親水性表面を洗浄した場合、水切れ性が悪いと、乾燥時間が長くなるばかりか、表面に水滴が付着して乾燥すると白点などが形成されるなどの審美的な課題も生じる。
【0009】
本発明は、硬質物品に付着した油汚れに対する洗浄力に優れ、また、硬質物品処理後の水切れ性にも優れた、硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、界面活性剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物であって、
界面活性剤として、(A)非イオン界面活性剤〔以下、(A)成分という〕、及び任意に(B)両性界面活性剤〔以下、(B)成分という〕を含有し
界面活性剤中、(A)成分の割合が60質量%以上であり、
(A)成分として、(A1)アルキル基の炭素数が10以上18以下であり、アルカノール基の炭素数が2又は3であるアルキルモノ又はジアルカノールアミン又はそのアルキレンオキシド付加物(アルキレンオキシドの炭素数は2又は3である)〔以下、(A1)成分という〕を含有し、
(A)成分及び(B)成分の合計中、(A1)成分の割合が、0.5質量%以上20質量%以下である、
硬質表面用液体洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬質物品に付着した油汚れに対する洗浄力に優れ、また、硬質物品処理後の水切れ性にも優れた、硬質表面用液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の作用機序に関しては定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。(A1)成分はWO型乳化剤としても知られているHLBの低い界面活性剤である。このため疎水性表面と油脂を含有する汚れの界面に選択的に作用し、その界面エネルギーを著しく低下させる。このような界面エネルギーの低下した界面に(A1)成分以外の非イオン界面活性剤が作用することにより汚れの除去効果が著しく高められると考えられる。一方、ガラスなどの親水性表面は一般に水との親和性が高いために水切れが悪く、一般的な非イオン界面活性剤で洗浄した後は、汚れが除去されているため、通常、更に水切れ性が悪化する傾向を示す。しかしながら、(A1)成分は、とりわけ中性付近では、少なくとも一部が、ガラスなどの親水性表面に吸着しやすい形態となっていると考えられ、洗浄後も親水性表面に一部残存し、親水性表面の適度な疎水化に寄与する。これにより、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の水切れ性が著しく改善されるものと考えられる。
【0013】
<硬質表面用液体洗浄剤組成物>
〔界面活性剤〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、界面活性剤として、(A)成分の非イオン界面活性剤と、任意の(B)成分の両性界面活性剤を含有する。また、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(A)成分として、(A1)成分のアルキル基の炭素数が10以上18以下であり、アルカノール基の炭素数が2又は3であるアルキルモノ又はジアルカノールアミン又はそのアルキレンオキシド付加物(アルキレンオキシドの炭素数は2又は3である)を含有する。
【0014】
まず、(A1)成分について説明する。
(A1)成分のアルキル基の炭素数は、好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下である。
(A1)成分のアルカノール基の炭素数は、2が好ましい。
(A1)成分のアルキレンオキシドは、炭素数2のアルキレンオキシド、すなわちエチレンオキシドが好ましい。
(A1)成分のアルキレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。
【0015】
(A1)成分としては、下記一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
〔式中、R1aは、炭素数10以上18以下のアルキル基であり、AOは、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基であり、m及びnは、付加モル数であって、独立して0以上10以下の数であり、m+nは1以上10以下の数である。〕
【0018】
式(a1)中、R1aの炭素数は、好ましくは12以上、そして、好ましくは14以下である。
式(a1)中、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基が好ましい。
式(a1)中、m+nは、好ましくは1.5以上、そして、好ましくは5以下の数である。
【0019】
(A)成分の非イオン界面活性剤としては、(A1)成分以外の非イオン界面活性剤を含有する。本発明では非イオン界面活性剤が洗浄主基材であり、油汚れに対する洗浄力を有し、しかも食器洗浄時には豊富な泡立ちを有する非イオン界面活性剤が好ましい。本発明では、(A1)成分以外の非イオン界面活性剤としては、(A2)アミンオキシド型界面活性剤(以下、(A2)成分という場合もある)、(A3)アルキルグリコシド型界面活性剤(以下、(A3)成分という場合もある)、及び(A4)グリセリルエーテル型界面活性剤(以下、(A4)成分という場合もある)から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤が、洗浄力と起泡性の観点から好ましい。
【0020】
(A2)成分のアミンオキシド型界面活性剤としては、3級窒素原子に結合する3つの基のうち、少なくとも1つが炭素数8以上18以下のアルキル基(以下、長鎖アルキル基という)であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基(以下、短鎖アルキル基という)である3級アミンオキシド型界面活性剤が挙げられる。
前記3級アミンオキシド型界面活性剤の長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは8以上、そして、好ましくは16以下である。
前記3級アミンオキシド型界面活性剤の短鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1である。
前記3級アミンオキシド型界面活性剤は、3級窒素原子に結合する3つの基のうち、1つが長鎖アルキル基であり、残り、つまり2つが短鎖アルキル基であることが好ましい。
【0021】
前記3級アミンオキシド型界面活性剤としては、下記一般式(a2)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化2】
【0023】
〔式中、R11aは、素数8以上18以下のアルキル基を示し、R12a及びR13aは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0024】
式(a2)中、R11aの炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、より好ましくは14以下である。
式(a2)中、R12a及びR13aは、好ましくは炭素数1のメチル基である。
式(a2)中、q及びpは、好ましくはq=0かつp=0である。
【0025】
(A3)成分のアルキルグリコシド型界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10以上18以下であるアルキルグリコシド型界面活性剤(以下、C10-18アルキルグリコシドという場合もある)が好ましい。
【0026】
10-18アルキルグリコシドとしては、下記の一般式(a3)で表される化合物が好ましい。
21a(OR22a (a3)
〔式中、R21aは、直鎖又は分岐鎖の炭素数8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは14以下の、アルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基、好ましくはアルキル基を示し、R22aは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基を示す。sは平均付加モル数を示し、0以上5以下の数である。tはその平均値が1以上5以下となる数を示す。〕
【0027】
一般式(a3)中、R21aは、粘度、洗浄性、起泡性、および低温保存安定性の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
一般式(a3)中、sは、粘度、洗浄性、起泡性、および低温保存安定性の観点から、好ましくは0以上、2以下であり、より好ましくは0である。tは、粘度、洗浄性、起泡性、および低温保存安定性の観点から、好ましくは1.1以上、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下である。尚、tはプロトンNMR法による測定値である。
一般式(a3)中、Gは、粘度、洗浄性、起泡性、および低温保存安定性の観点から、グルコース及びフルクトースから選ばれる1種以上の単糖類に由来する残基が挙げられる。また、Gは、マルトース及びスクロースから選ばれる1種以上の多糖類に由来する残基が挙げられる。Gは、グルコースの単糖類に由来する残基が好ましい。
【0028】
(A4)成分のグリセリルエーテル型界面活性剤としては、下記一般式(a4)で示される化合物が好ましい。
31a-[OCHCH(OH)CH-OH (a4)
〔式中、R31aは炭素数8以上10以下のアルキル基であり、uは1以上3以下の数である。〕
一般式(a4)中、R31aは洗浄性、起泡性、および低温保存安定性の観点から分岐鎖アルキル基が好ましく、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、及びイソデシル基から選ばれる分岐鎖アルキル基がより好ましく、2-エチルヘキシル基が更に好ましい。uは洗浄性、起泡性、および低温保存安定性の観点から1又は2の数が好ましく、1がより好ましい。
本発明では、(A4)成分は、2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテルが更に好ましい。
【0029】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、界面活性剤として、任意に(B)成分の両性界面活性剤を含有することができる。(B)成分の両性界面活性剤としては炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基を1つ以上、好ましくは1つ有する両性界面活性剤、好ましくはベタイン型界面活性剤が挙げられる。ベタイン型界面活性剤としては、アルキル基又はアミド基(カルボン酸アミド基)の炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピル酢酸ベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、及びアミドアミノ酸(イミダゾリン系ベタイン)等が挙げられる。本発明では、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)スルホベタインがより好ましい。当該スルホベタインも、アルキル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
【0030】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、界面活性剤として、任意に(C)成分の陰イオン界面活性剤を含有することができる。陰イオン界面活性剤としては、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基を1つ有する陰イオン界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(好ましくはポリオキシエチレン、平均付加モル数は0.5以上、好ましくは1以上、そして、4以下、好ましくは3以下)アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩が挙げられる。脂肪酸塩は、脂肪酸の炭素数が前記範囲にあるものが好ましい。
【0031】
これらの他にも、界面活性剤としては、トルエンスルホン酸、アルケニルコハク酸、ジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。
【0032】
〔組成、任意成分等〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、界面活性剤を、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下含有する。
【0033】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、界面活性剤中、(A)成分の割合が60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0034】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、水切れ性の観点から、(A)成分及び(B)成分の合計中、(A1)成分の割合が、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、20質量%以下、好ましくは18質量%以下である。
【0035】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(A)成分及び(B)成分を合計で、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下含有する。
【0036】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄力及び起泡性の点から、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比である、(B)/(A)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0037】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄性および泡安定性の観点から、(B)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下含有する。
【0038】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(A)成分として、(A2)成分を含有することが好ましい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄性および保存安定性の観点から、(A2)成分を、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0039】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(A)成分として、(A3)成分及び(A4)成分から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤、好ましくは(A3)成分及び(A4)成分を含有することが好ましい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(A3)成分及び(A4)成分から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤、好ましくは(A3)成分及び(A4)成分を、合計で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下含有する。
【0040】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物が(A3)成分及び(A4)成分を含有する場合、(A3)成分の含有量と(A4)成分の含有量の質量比である、(A3)/(A4)が、洗浄性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、そして、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
【0041】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物が(A3)成分及び(A4)成分から選ばれる一種以上の非イオン界面活性剤、好ましくは(A3)成分及び(A4)成分を含有する場合、界面活性剤中、(A3)成分の含有量と(A4)成分の含有量の合計の割合は、洗浄性の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0042】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(A1)成分の含有量と、(A3)成分及び(A4)成分の合計の含有量との質量比である、(A1)/〔(A3)+(A4)〕が、水切れ性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、更に好ましくは0.03以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0043】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、水切れの観点から、界面活性剤中、(C)成分の割合が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。この割合の下限値は、0質量%以上とすることができ、0質量%であってもよい。すなわち、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、任意に(C)成分の陰イオン界面活性剤を含有し、界面活性剤中の陰イオン界面活性剤の含有量の割合が前記範囲にあることが好ましい。
【0044】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、水を含有することが好ましい。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。用いる水は脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5~10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0045】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは4以上、より好ましくは4.5以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。低温安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは4.5以上、より好ましくは5以上である。一方、洗浄力の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、より好ましくは8以下、より好ましくは7以下である。このようなpHへの調整は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。本発明では、組成物に緩衝能を持たせることが起泡性/泡持続性の点から好ましく、上記有機酸、好ましくはクエン酸と、無機アルカリ剤とを併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えない。
【0046】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは5mPa・s以上、更に10mPa・s以上、そして、好ましくは15,000mPa・s以下、更に8,000mPa・s以下、更に2,000mPa・s以下、更に500mPa・s以下、更に300mPa・s以下である。
【0047】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、好ましくは、食品に由来する油脂を含有する汚れを洗浄対象とする。食品に由来する油脂を含有する汚れは、例えば固体脂を含む汚れである。固体脂を含む汚れは、油脂を含んだ汚れであって、この油脂が常温(例えば20℃)で固体を呈するものである。前記液体洗浄剤組成物を接触させるときの固体脂汚れの形態は、固体脂と液体油とが混在した状態であってもよい。
【0048】
ポリエチレンやポリプロピレンなどの疎水性硬質表面に付着した油脂を含む汚れ、例えば固体脂を含む汚れ(以下、固体脂汚れという場合もある)は、落とし難い汚れであるが、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、そのような疎水性硬質表面を有する硬質物品に付着した油汚れ、とりわけ固体脂汚れに対する洗浄力に優れる。一方、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、硬質物品、なかでもガラスや陶器などの親水性表面を有する硬質物品を洗浄した場合、洗浄後の水切れ性に優れる。
【0049】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、好ましくは、食器及び/又は台所周りの硬質物品、好ましくは食器を洗浄対象とする。
台所周りの硬質物品は、台所の周辺で使用される物品であり、具体的には、
(1)冷蔵庫、食器棚などの食品、食器、調理器具の保存場所、
(2)排水溝、調理台、レンジフード、シンク、ガスレンジ、電子レンジなどの食品の調理場所、及び
(3)前記保存場所や前記調理場所の周辺の床や壁等
である。本発明では、これらを便宜上「台所周りの硬質物品」とする。
また、食器としては、具体的には、
(i)皿、椀等のいわゆる食器、
(ii)タッパー、瓶等の保存容器、
(iii)包丁やまな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具、
(iv)フードプロセッサー、ミキサー等の調理家電等
の食材が接触する部材や器具が挙げられる。本発明では、これらを便宜上「食器」とする。
また、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、食器、保存容器、調理器具、及び調理家電から選ばれる物品を対象とすることが好ましく、更に皿、椀、タッパー、ビン、包丁、まな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル、フードプロセッサー、及びミキサーから選ばれる物品を対象とすることがより好ましい。
【0050】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物の対象とする食器及び/又は台所周りの硬質物品の材質は、プラスチック(シリコーン樹脂などを含む)、金属、陶器、木、及びそれらの組み合わせが挙げられる。そして、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、これら食器及び/又は台所周りの硬質物品に付着した油脂を含有する汚れ(以下、油脂汚れという場合もある)、例えば食品に由来する油脂を含有する汚れ、更には固体油汚れを効果的に洗浄することができる。
【0051】
プラスチックなどの疎水性材料に付着した油脂汚れ、例えば固体脂汚れは落とし難い汚れであるが、本発明では、プラスチック製の食器及び/又は台所周りの硬質物品に付着した油脂汚れ、例えば固体脂汚れに対しても、優れた洗浄効果を示す。本発明の洗浄剤組成物は、プラスチック製の食器及び/又は台所周りの硬質物品用の液体洗浄剤組成物として好適である。プラスチックは、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタラートなどが挙げられる。
【0052】
本発明により、前記本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を用いた洗浄液で硬質物品を手洗い洗浄し、その後、水を用いてすすぎを行う、硬質物品の洗浄方法が提供される。
硬質物品は、好ましくは食器及び/又は台所周りの硬質物品、より好ましくは食器である。これらは、前記のものが挙げられる。
【0053】
手洗い洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を用いて得られたものであり、組成物の原液又は水を含む希釈液が用いられる。具体的な手洗い洗浄方法としては、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を用いた洗浄液を付着させた可撓性材料で、食器等の硬質物品を手洗い洗浄した後、水を用いてすすぎを行う、硬質物品の洗浄方法が挙げられる。例えば、水を含んだスポンジなどの可撓性材料に本発明の組成物を付着させ洗浄液を保持させて、手で数回揉みながら泡立てて、食器等の硬質物品をこすり洗いする。可撓性材料が保持する洗浄液中の界面活性剤の濃度は、高い起泡性と泡持続性の点から、好ましくは1,000ppm以上、更に2,000ppm以上、そして、好ましくは70,000ppm以下、更に50,000ppm以下、更に30,000ppm以下である。洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では洗浄濃度に希釈された組成物1質量部に対してすすぎ水3.3~133質量部で十分泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。このすすぎ水の量は、従来の手洗い用洗浄剤組成物を用いた場合の2/3~1/10程度である。なお、ここでの組成物1質量部とは、組成物純分の濃度を示し、前記のすすぎ水の量に関する記述は、希釈された濃度に関わらず、洗浄液の調製に用いた硬質表面用液体洗浄剤組成物純分1質量部に対するすすぎ水が3.3~133質量部で十分泡が消えることを示している。
【0054】
また、別の具体的な手洗い洗浄方法としては、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液に食器等の硬質物品を浸漬した後に、スポンジなどの可撓性材料を用いて食器等の硬質物品を手洗い洗浄し、その後、水を用いてすすぎを行う、硬質物品の洗浄方法が挙げられる。食器等の硬質物品を浸漬する時間は、洗浄性向上の観点から1分以上が好ましく、3分以上がより好ましく、5分以上が更に好ましく、10分以上がより更に好ましく、30分以上が最も好ましく、また、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましく、6時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましく、1時間以下がより更に好ましい。食器等の硬質物品を浸漬する洗浄液中の界面活性剤の濃度は、好ましくは100ppm以上、更に200ppm以上、そして、好ましくは7,000ppm以下、更に5,000ppm以下、更に3,000ppm以下であることが、高い起泡性と泡持続性の点から好ましい。洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では、洗浄液の調製に用いた硬質表面用液体洗浄剤組成物1質量部に対してすすぎ水3.3~133質量部で十分泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。
【0055】
<水切れ性改善方法>
本発明者らは、(A1)成分が、(A2)成分、(A3)成分、(A4)成分などの非イオン界面活性剤を含有する硬質表面用洗浄剤組成物の水切れ性改善剤としても機能することを見出した。(A1)成分を用いることで、(A2)成分、(A3)成分、(A4)成分などの非イオン界面活性剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物で処理した硬質物品の水切れ性が飛躍的に改善される。
従って、本発明は、界面活性剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物の水切れ性改善方法であって、
前記硬質表面用液体洗浄剤組成物に、界面活性剤として、(A)成分及び任意に(B)成分を含有させ、界面活性剤中、(A)成分の割合を60質量%以上とし、
前記硬質表面用液体洗浄剤組成物に、(A)成分として、(A1)成分を含有させ、(A)成分及び(B)成分の合計中、(A1)成分の割合を0.5質量%以上20質量%以下とする、
硬質表面用液体洗浄剤組成物の水切れ性改善方法を提供する。
(A)成分、(A1)成分、(B)成分は、それぞれ、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物と同じものであり、それぞれの具体例及び好ましい態様も、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物と同じである。また、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物で述べた事項は、この水切れ性改善方法に適宜適用することができる。
【実施例
【0056】
下記配合成分を用いて表1に示す硬質表面用液体洗浄剤組成物を調製し、以下の方法で洗浄力を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
<配合成分>
(A1)成分
・A1-1:N-ラウリル-N,N-ジエタノールアミン、アミート102、花王株式会社
・A1-2:ポリオキシエチレン(2.1)硬化牛脂アミン、アミート302、花王株式会社、炭素数16~18のアルキル基であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が2.1のポリオキシエチレンアルキルアミン、一般式(a1)において、R1aが炭素数16~18のアルキル基、m+nが2.1の化合物
【0058】
(A2)
・A2-1:N-ドデシル-N,N-ジメチルアミンオキシド、アンヒトール20N、花王株式会社
・A2-2:N-ミリスチル-N,N-ジメチルアミンオキサイド、アンヒトール40N、花王株式会社
【0059】
(A3)成分
・A3-1:アルキル(炭素数12~16)ポリグルコシド(平均糖縮合度1~2)、AG-124、花王株式会社
【0060】
(A4)成分
・A4-1:2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、ペネトール GE-EH、花王株式会社
【0061】
(B)成分
・B-1:N-ドデシル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)スルホベタイン、アンヒトール20HD、花王株式会社
【0062】
(C)成分
・C-1:アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(商品名エマールP-170J、花王株式会社製、プロピレンオキシ基の平均付加モル数0.6)
・C-2:ドデシルベンゼンスルホン酸
【0063】
<洗浄力の評価方法>
(モデル汚れ皿の準備)
牛脂を着色料で着色したモデル汚れを調製した。ポリプロピレン製の皿に、1枚当たりモデル汚れを0.5g乗せて広げ、1晩静置した。同じようにしてモデル汚れが付着した皿を複数枚用意した。
(洗浄力評価方法)
市販の新品の高密度ウレタンスポンジ(キクロン株式会社)に表の硬質表面用液体洗浄剤組成物1gと水道水30gを染み込ませ十分に泡立てた状態にした後、スポンジで10回擦ってモデル汚れ皿を洗浄した。10回擦ったのち皿を流水にかざし、泡と浮き上がった汚れをすすいだ。すすいだ皿を目視で確認して、着色したモデル汚れが認められない時、その皿は洗浄出来たものとして数えた。次に洗う皿の上でスポンジを揉んでから次のモデル汚れ皿も同様に洗浄した。この操作を繰り返し行い、洗浄出来た皿の枚数をその組成物の洗浄力とした。
評価は、専門パネラー1名の評価者が2回試験を行い、その平均値とした。値が大きいほど洗浄力に優れる。
【0064】
<水切れ性>
市販の新品の高密度ウレタンスポンジ(キクロン株式会社)に表の硬質表面用液体洗浄剤組成物1gと水道水30gを染み込ませ十分に泡立てた状態にした後、スポンジで5回擦って汚れのない陶器皿を洗浄した。5回擦ったのち皿を流水にかざし泡をすすぎ、着色した水に1分間浸漬し、取り出した後、垂直に静置した時の水切れが完了するまでの時間を測定した。水切れの完了は、目視にて着色水が皿上から切れきった状態となった時点とした。
◎:静置後、10秒以内に水切れが完了する。
○:静置後、10秒を超え30秒以内に水切れが完了する。
△:静置後、30秒を超え3分以内に水切れが完了する。
×:静置後、3分を超えて水切れが完了する。
【0065】
【表1】