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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】多相測定装置及び該装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/18 20060101AFI20221226BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01R29/18 C
G01R29/18 M
G01R19/00 A
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018144327
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2019045480
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】15/697,237
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
【住所又は居所原語表記】6920 Seaway Boulevard, Everett, Washington 98203 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ステウエアー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ラッダ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/027422(WO,A1)
【文献】特開2009-008580(JP,A)
【文献】特開2011-169703(JP,A)
【文献】特開2015-055632(JP,A)
【文献】実開昭52-055769(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300344(US,A1)
【文献】米国特許第05995911(US,A)
【文献】国際公開第2017/143425(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26、
19/00-19/32、
11/00-11/66、
21/00-22/10、
35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相測定装置であって、
動作中に、導体における電圧又は電流の少なくとも1つを感知するセンササブシステムと、
ユーザインターフェースと、
前記センササブシステムに連通可能に連結する制御回路であって、動作中に、
前記ユーザインターフェースを前記多相測定装置のユーザへと指示させて、前記センササブシステムのセンサを多相電気系統の第1導体の近位に位置させ、
前記センササブシステムの前記センサが、前記第1導体の近位に位置しているかどうかを示す前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記センササブシステムを介して、前記第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第1導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを備え、
記第1導体の電気的パラメータデータを処理して、前記第1導体における前記信号の周波数を決定し、
前記第1導体における前記信号の前記周波数に少なくとも部分的に基づいて同期データを確立し、
前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記センササブシステムのセンサを前記多相電気系統の第2導体の近位に位置させ、
前記センササブシステムの前記センサが、前記第2導体の近位に位置しているかどうかを示す前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記センササブシステムを介して、前記第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第2導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを備え、
記第2導体の電気的パラメータデータを処理して、前記同期データに少なくとも部分的に基づいて、前記第1導体における前記信号のための位相情報に対して前記第2導体における前記信号のための位相情報を決定する、制御回路と、を備える多相測定装置。
【請求項2】
動作中に、前記制御回路が、
前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記センササブシステムのセンサを前記多相電気系統の第3導体の近位に位置させ、
前記センササブシステムの前記センサが、前記第3導体の近位に位置しているかどうかを示す前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記センササブシステムを介して、前記第3導体に存在する信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第3導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを備え、また
前記第3導体の電気的パラメータデータを処理して、前記同期データに少なくとも部分的に基づいて、前記第1導体又は前記第2導体のうち少なくとも1つにおける前記信号のための位相情報に対して前記第3導体における前記信号のための位相情報を決定する、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項3】
前記同期データが、前記第1導体における前記信号の周期と等しい継続時間を有する固定された反復時間間隔を含む、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項4】
前記センササブシステムが、少なくとも電流センサ及び電圧センサを備える、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項5】
前記センササブシステムが、非接触電圧センサ又は非接触電流センサのうち少なくとも1つを備える、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項6】
動作中に、前記制御回路が、
前記第1導体の電気的パラメータデータ及び前記第2導体の電気的パラメータデータを処理して、前記多相電気系統の少なくとも1つの付加電気的パラメータを決定する、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの付加電気的パラメータが、電圧パラメータ、電流パラメータ、電力パラメータ、位相順序パラメータ、電圧位相推移パラメータ、電流位相推移パラメータ、電圧/電流位相推移パラメータ、高調波パラメータ、又は波形パラメータのうち少なくとも1つを含む、請求項6に記載の多相測定装置。
【請求項8】
動作中に、前記制御回路が、
前記ユーザインターフェースに、前記位相情報の表示を前記ユーザインターフェースの表示装置上に提示させる、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項9】
前記位相情報の前記表示が、前記ユーザインターフェースの前記表示装置上に提示された位相図を含む、請求項8に記載の多相測定装置。
【請求項10】
前記センササブシステムが基準電流を発生させ、また前記測定データが、前記第1導体又は前記第2導体において検出される前記基準電流特性を備える、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項11】
前記センササブシステムの前記センサが、時限後に、前記第1導体又は前記第2導体の近位に位置していないことを示す測定データの受信に対応して、前記制御回路が前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記多相電気系統の測定を再開させる、請求項に記載の多相測定装置。
【請求項12】
動作中、前記制御回路が、前記第1導体の電気的パラメータデータを高速フーリエ変換(FFT)を利用して処理し、前記第1導体における前記信号の周波数を決定する、請求項1に記載の多相測定装置。
【請求項13】
前記制御回路が、前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記センササブシステムの前記センサを前記第1導体の近位に位置させる場合と、前記制御回路が、前記第3導体に存在する前記信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信する場合との間の時限が、30秒未満に制限される、請求項に記載の多相測定装置。
【請求項14】
多相測定装置であって、
動作中に、導体における電圧又は電流の少なくとも1つを感知するセンササブシステムと、
ユーザインターフェースと、
前記センササブシステムに連通可能に連結する制御回路であって、動作中に、
前記ユーザインターフェースを前記多相測定装置のユーザへと指示させて、前記センササブシステムのセンサを多相電気系統の第1導体の近位に位置させ、
前記センササブシステムの前記センサが、前記第1導体の近位に位置しているかどうかを示す前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記センササブシステムを介して、前記第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第1導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを備え、
記第1導体の電気的パラメータデータを処理して、前記第1導体における前記信号の周波数を決定し、
前記第1導体における前記信号の前記周波数に少なくとも部分的に基づいて同期データを確立し、
前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記センササブシステムのセンサを前記多相電気系統の第2導体の近位に位置させ、
前記センササブシステムの前記センサが、前記第2導体の近位に位置しているかどうかを示す前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記センササブシステムを介して、前記第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第2導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを備え、また
記第2導体の電気的パラメータデータを処理して、前記同期データに少なくとも部分的に基づいて、前記第1導体における前記信号のための位相情報に対して前記第2導体における前記信号のための位相情報を決定する、制御回路と、を備え
前記センササブシステムの前記センサが、時限後に、前記第2導体の近位に位置していないことを示す測定データの受信に対応して、前記制御回路が前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記多相電気系統の測定を再開させる、多相測定装置。
【請求項15】
多相測定装置を動作させる方法であって、
制御回路により、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第1導体の近位に位置させ、
前記制御回路により、前記センササブシステムの前記センサが、前記第1導体の近位に位置するかどうかを示す、前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記制御回路により、前記センササブシステムを介して、前記第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第1導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、
前記制御回路により、前記第1導体の電気的パラメータデータを処理して、前記第1導体における前記信号の周波数を決定し、
前記制御回路により、前記第1導体における前記信号の前記周波数に少なくとも部分的に基づいて同期データを確立し、
前記制御回路により、前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記センササブシステムの前記センサを前記多相電気系統の第2導体の近位に位置させ、
前記制御回路により、前記センササブシステムの前記センサが、前記第2導体の近位に位置するかどうかを示す、前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記制御回路により、前記センササブシステムを介して、前記第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第2導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、
前記制御回路により、前記第2導体の電気的パラメータデータを処理して、前記同期データに少なくとも部分的に基づいて、前記第1導体における前記信号のための位相情報に対して前記第2導体における前記信号のための位相情報を決定すること、を含む方法。
【請求項16】
前記制御回路により、前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記センササブシステムのセンサを前記多相電気系統の第3導体の近位に位置させ、
前記制御回路により、前記センササブシステムの前記センサが、前記第3導体の近位に位置するかどうかを示す、前記センササブシステムからの測定データを受信し、
前記制御回路により、前記センササブシステムを介して、前記第3導体に存在する信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信し、前記第3導体の電気的パラメータデータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、また
前記制御回路により、前記第3導体の電気的パラメータデータを処理して、前記同期データに少なくとも部分的に基づいて、前記第1導体又は前記第2導体のうち少なくとも1つにおける前記信号のための位相情報に対して前記第3導体における前記信号のための位相情報を決定すること、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記制御回路により、前記第1導体の電気的パラメータデータ及び前記第2導体の電気的パラメータデータを処理して、前記多相電気系統の少なくとも1つの付加電気的パラメータを決定することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記制御回路により、前記第1導体の電気的パラメータデータ及び前記第2導体の電気的パラメータデータを処理して、電圧パラメータ、電流パラメータ、電力パラメータ、位相順序パラメータ、電圧位相推移パラメータ、電流位相推移パラメータ、電圧/電流位相推移パラメータ、高調波パラメータ、又は波形パラメータのうち少なくとも1つを決定することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記制御回路により、前記ユーザインターフェースに、前記位相情報の表示を前記ユーザインターフェースの表示装置上に提示させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記センササブシステムの前記センサが、時限後に、前記第2導体の近位に位置していないことを示す測定データの受信に応答し、前記制御回路により、前記ユーザインターフェースを前記ユーザへと指示させて、前記多相電気系統の測定を再開させることを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
記第1導体の電気的パラメータデータ及び前記第2導体の電気的パラメータデータを処理することが、高速フーリエ変換(FFT)を利用して、前記第1導体の電気的パラメータデータ及び前記第2導体の電気的パラメータデータを処理することを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に多相電気系統におけるパラメータの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用及び商用電化製品へと電気供給するように単相電気系統が使用されてもよいが、通常は三相交流(AC)電気系統を用いて電力を分配して、比較的高い電力用に定格された電力設備に電力を供給することができる。
【0003】
図1は、三相負荷14に電気的に連結された三相電源12を含む代表的な三相電気系統10を示す。この特定の実施例では、三相電源12は、三相負荷14に連結された4つのラベル付けされた導体、A、B、C、及びNを含む。導体A、B、及びCは、それぞれ同一の周波数及び同様の大きさの交流電圧を運搬し、かつ導体Nは共同帰線である。導体A、B、及びCにおける交流電圧の各位相は、互いから120°隔てられている。例えば、導体Aにおける電圧の位相は0°であってもよく、導体Bにおける電圧の位相+120°であってもよく、また導体Cの電圧の位相は+240°であってもよい。三相電気系統10は、デルタ(Δ)構成、wye(Y)構成などにて配置することができる。
【0004】
電気的パラメータは、単相電気系統にて電力計を使用して測定してよい。このような電気的パラメータの例は、有効電力、皮相電力、ボルトアンペア無効電力、力率、高調波、電流、電圧、位相推移等を含んでよいが、多相電気系統のための電気的パラメータ測定はより困難である。図1にて示すように、3つの電圧測定チャネルVCH1、VCH2、及びVCH3並びに3つの電流測定チャネルACH1、ACH2及びACH3が、三相電気系統の電気的パラメータを測定するために使用される。電圧/電流チャネルの各対(例えば、VCH1/ACH1)は、別個の電力計(即ち、合計で3つの電力計)を伴ってもよい、又は全てのチャネルが、単一の多重チャネル電力計の一部であってもよい。
【0005】
このような三相測定の設定は、技術者にとって多大な時間及び労力をかける場合がある。これは、特にアクセスを制限する密空間に位置する電気系統、及びラベルがない導体を有する電気系統の場合である。実際には、技術者は、導体A、B、C、及びNのそれぞれのためにある4つの電圧導線を電気系統へと接続しなければならず、また同様に、少なくとも3つの電流センサを正確な電圧線上に直列に接続しなければならない。従って、測定を行う前に、最小で7つの試験導線を接続する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/193213号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
多相測定装置は、動作中に、導体における電圧又は電流の少なくとも1つを感知するセンササブシステムと、ユーザインターフェースと、センササブシステムに連通可能に連結された制御回路であって、動作中に、ユーザインターフェースを多相測定装置のユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第1導体の近位に位置させ、センササブシステムを介して、第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第1導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、受信した第1導体の電気的パラメータデータを処理して、第1導体における信号の周波数を決定し、第1導体における信号の決定された周波数に少なくとも部分的に基づいて同期データを確立し、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第2導体の近位に位置させ、センササブシステムを介して、第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第2導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、受信した第2導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体における信号のための位相情報に対して第2導体における信号のための位相情報を決定し、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第3導体の近位に位置させ、センササブシステムを介して、第3導体に存在する信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第3導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、また受信した第3導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体又は第2導体のうち少なくとも1つにおける信号のための位相情報に対して第3導体における信号のための位相情報を決定する、制御回路と、を含むように集約されてよい。
【0008】
同期データは、第1導体における信号の周期と等しい継続時間を有する固定された反復時間間隔を含んでよい。センササブシステムは、少なくとも電流センサ及び電圧センサを含んでよい。センササブシステムは、非接触電圧センサ又は非接触電流センサのうち少なくとも1つを含んでよい。動作中、制御回路は、第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータを処理して、多相電気系統の少なくとも1つの付加電気的パラメータを決定してよい。少なくとも1つの付加電気的パラメータは、電圧パラメータ、電流パラメータ、電力パラメータ、位相順序パラメータ、電圧位相推移パラメータ、電流位相推移パラメータ、電圧/電流位相推移パラメータ、高調波パラメータ、又は波形パラメータのうち少なくとも1つを含んでよい。動作中、制御回路は、ユーザインターフェースに、決定された位相情報の表示を当該ユーザインターフェースの表示装置上に提示させてよい。決定された位相情報の表示は、ユーザインターフェースの表示装置上に示されるフェーザ図を含むことができる。第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータのそれぞれの受信に先立って、制御回路は、センササブシステムのセンサが、第1導体、第2導体、及び第3導体のそれぞれの近位に位置するかどうかを示すセンササブシステムからの測定データを、受信してよい。センササブシステムは基準電流を発生させてよく、また測定データは、第1導体、第2導体、又は第3導体において検出される基準電流特性を含んでよい。
【0009】
センササブシステムのセンサが、時限後に、第1導体、第2導体、又は第3導体のうち1つの近位に位置していないことを示す測定データの受信に対応して、制御回路がユーザインターフェースをユーザへと指示させて多相電気系統の測定を再開させてよい。動作中、制御回路は、受信した第1導体の電気的パラメータデータを高速フーリエ変換(FFT)を利用して処理し、第1導体における信号の周波数を決定してよい。制御回路が、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを第1導体の近位に位置させる場合と、制御回路が、第3導体に存在する信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信する場合との間の時限は、30秒未満に制限されてよい。
【0010】
多相測定装置は、動作中に、導体における電圧又は電流の少なくとも1つを感知するセンササブシステムと、ユーザインターフェースと、センササブシステムに連通可能に連結された制御回路であって、動作中に、ユーザインターフェースを多相測定装置のユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第1導体の近位に位置させ、センササブシステムを介して、第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第1導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、受信した第1導体の電気的パラメータデータを処理して、第1導体における信号の周波数を決定し、第1導体における信号の決定された周波数に少なくとも部分的に基づいて同期データを確立し、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第2導体の近位に位置させ、センササブシステムを介して、第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第2導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、また受信した第2導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体における信号のための位相情報に対して第2導体における信号のための位相情報を決定する、制御回路と、を含むように集約されてよい。
【0011】
多相測定装置を動作させる方法は、制御回路により、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第1導体の近位に位置させ、制御回路により、センササブシステムを介して、第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第1導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、制御回路により、受信した第1導体の電気的パラメータデータを処理して、第1導体における信号の周波数を決定し、制御回路により、第1導体における信号の決定された周波数に少なくとも部分的に基づいて同期データを確立し、制御回路により、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第2導体の近位に位置させ、制御回路により、センササブシステムを介して、第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第2導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、制御回路により、受信した第2導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体における信号のための位相情報に対して第2導体における信号のための位相情報を決定し、制御回路により、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて、センササブシステムのセンサを多相電気系統の第3導体の近位に位置させ、制御回路により、センササブシステムを介して、第3導体に存在する信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信し、当該第3導体の電気的パラメータが電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含み、また制御回路により、受信した第3導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体又は第2導体のうち少なくとも1つにおける信号のための位相情報に対して第3導体における信号のための位相情報を決定すること、を含むように集約されてよい。
【0012】
本方法は、制御回路により、第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータを処理して、多相電気系統の少なくとも1つの付加電気的パラメータを決定することを、更に含んでもよい。
【0013】
本方法は、制御回路により、第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータを処理して、電圧パラメータ、電流パラメータ、電力パラメータ、位相順序パラメータ、電圧位相推移パラメータ、電流位相推移パラメータ、電圧/電流位相推移パラメータ、高調波パラメータ、又は波形パラメータのうち少なくとも1つを決定することを、更に含んでもよい。
【0014】
本方法は、制御回路により、ユーザインターフェースに、決定された位相情報の表示を当該ユーザインターフェースの表示装置上に提示させることを、更に含んでもよい。
【0015】
本方法は、第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータのそれぞれを受信することに先立って、制御回路により、センササブシステムのセンサが、第1導体、第2導体、及び第3導体のそれぞれの近位に位置するかどうかを示すセンササブシステムからの測定データを受信することを、更に含んでもよい。
【0016】
本方法は、センササブシステムのセンサが、時限後に、第1導体、第2導体、又は第3導体のうち1つの近位に位置していないことを示す測定データの受信に応答し、制御回路により、ユーザインターフェースをユーザへと指示させて多相電気系統の測定を再開させることを、更に含んでもよい。受信された第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータを処理することは、高速フーリエ変換(FFT)を利用して、当該受信された第1導体の電気的パラメータデータ、第2導体の電気的パラメータデータ、及び第3導体の電気的パラメータデータを処理することを、含んでよい。
【0017】
多相測定装置は、動作中に、導体における電圧及び電流を感知するセンササブシステムと、ユーザインターフェースと、センササブシステムに連通的に連結された制御回路であって、動作中に、センササブシステムが少なくとも3つの単相測定値を順次取得するようにし、単相測定値のそれぞれが多相電気系統の単相のための単相電気的パラメータデータを提供し、かつ順次得られる単相測定値により提供される単相電気的パラメータデータに基づいて多相電気系統のための多相電気系統パラメータを決定する、制御回路と、を含むように集約されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面では、同一の参照番号により類似の要素又は作用が識別される。図面における要素の寸法及び相対位置は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。例えば、種々の要素及び角度の形状は必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、これらの要素の一部は、図面の明瞭性を向上させるために任意に拡大されかつ位置付けられていてもよい。なお、図示されるような要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えることが意図されているわけではなく、単に図面において認識しやすいように選択されていてもよい。
図1図1は三相負荷に連結された三相電源を含み、多チャネル電力計の複数の電圧測定チャネル及び電流測定チャネルを使用して電気的パラメータの測定値を示す、三相電気系統の概略ブロック図である。
図2図2は三相負荷に連結された三相電源を含み、1つの図示された実施形態による多相測定装置を使用して電気的パラメータの測定値を示す、三相電気系統の概略ブロック図である。
図3図3は1つの図示された実施形態による、図2に示す他相測定装置の概略ブロック図である。
図4図4は1つの図示された実施形態に従って、多相電気系統の1つ以上のパラメータを測定する多相測定装置を動作させる方法の、流れ図である。
図5図5は1つの図示された実施形態に従って、多相電気系統の1つ以上の電気的パラメータを測定する多相測定装置を動作させる方法の種々の段階を示す、タイムラインである。
図6図6は多相電気系統の第1導体及び第2導体の測定中に取り込まれる代表的な波形を示すグラフであって、本グラフは第1導体における信号の周波数検出を図示しており、これは、1つの図示された実施形態に従って、第1導体における信号の位相に対する第2導体における信号の位相を検出するために使用される同期データを確立するために、続いて使用される。
図7A図7Aは1つの図示された実施形態による、非接触多相測定装置を使用してよい環境の絵図である。
図7B図7Bは1つの図示された実施形態による、絶縁線と非接触電圧測定装置の導電センサとの間に形成された連結容量、絶縁導体電流構成要素、及び、非接触多相測定装置と操作者との間の人体容量を示す、図7Aの非接触多相測定装置の平面図である。
図8図8は1つの図示された実施形態による、非接触多相測定装置の種々の内部構成要素の概略図である。
図9図9は1つの図示された実施形態による、非接触多相測定装置の種々の信号処理構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の1つ以上の実施形態は、単一の電圧センサ及び単一の電流センサを有するセンササブシステムを含む多相測定装置を利用して多相電気系統の電気的パラメータを測定するための、システム及び方法に関する。即ち、多相測定装置のハードウェアは、単一の電圧測定チャネル及び単一の電流測定チャネルを有する電力計に類似している、又は同一であってよい。電圧センサ及び電流センサのそれぞれは、接触式センサ又は非接触センサであってよい。本開示の種々の実施形態では、多相電気系統の各相の単相測定値を順次取得し、かつそれらの測定値を同期させて、種々の多相電気的パラメータを得ることにより、多相測定が達成される。このような多相電気的パラメータとしては、導体間の位相関係(例えば、位相順序)、導体における電圧と電流との間の位相推移、有効電力、有効基本電力、無効電力、無効基本電力、皮相システム電力、皮相システム基本電力、力率、変位力率などが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の種々の実施形態を、図2~9に関して以下で論じる。
【0020】
以下の説明では、種々の開示の実施形態の完全な理解が得られるように、特定の具体的な詳細について記載する。しかし、実施形態がこれらの具体的な詳細のうちの1つ以上を伴わない、又は他の方法、構成要素、材料などを伴って実施されてよいことを、当業者は理解するであろう。その他の場合では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ及び/又は通信ネットワークに関係する周知の構造は、実施形態の説明を必要以上に不明瞭にすることを避けるためにも、詳細には示されていない、又は記載されていない。
【0021】
文脈上その他の意味に解すべき場合を除き、以下の明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「備える(comprising)」とは用語「含む(including)」と同義であり、包括的であり、つまり限定的ではない(即ち、更なる記載されていない要素又は方法の行為を除外しない)。
【0022】
本明細書全体の「一実施形態」又は「実施形態」を参照することは、実施形態に関して記述された特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このため、本明細書全体の種々の場所での語句「一実施形態では」又は「実施形態では」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及するものではない。なお、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせられてもよい。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する際に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。用語「又は」は、文脈上、別段の明確な指示がない限り、その意味において「及び/又は」を含んで一般的に用いられる、という点にも留意すべきである。
【0024】
更に、本明細書で提供される見出し及び要約書は、便宜のためだけであり、実施形態の範囲又は意味を説明するものではない。
【0025】
図2は、三相負荷104に電気的に連結された三相電源102を含む代表的な三相電気系統100の概略ブロック図を示す。この実施例では、三相電源102は、三相負荷104に連結された4つのラベル付けされた導体、A、B、C、及びNを含む。導体A、B、及びCは、それぞれ同一の周波数及び同様の大きさの交流電圧を運搬し、かつ導体Nは共同帰線である。導体A、B、及びCにおける交流電圧の各位相は、互いから120°隔てられている。例えば、導体Aにおける電圧の位相は0°であってもよく、導体Bにおける電圧の位相+120°であってもよく、また導体Cの電圧の位相は+240°(又は-120°と同様な意味合い)であってもよい。三相電気系統100は、デルタ(Δ)構成、wye(Y)構成などにて配置することができる。
【0026】
また、図2に示すように、多相測定装置106である。多相測定装置106の種々の構成要素を図3に示し、かつ以下で論じる。多相測定装置106は、電圧センサ110及び電流センサ112を含むセンササブシステム108(図3)を含む。電圧センサ110は導体における電圧を感知するように動作し、また電流センサ112は導体における電流を感知するように動作する。電圧センサ110及び/又は電流センサ112は、更に後述するように、非接触センサ又は接触センサであってよい。
【0027】
一般に、動作中に、多相測定装置106の操作者は、多相測定装置のセンササブシステム108を、導体Aなどの、4つの導体のうちの1つ(第1)の近位(第1測定時限TM1)に最初に位置させてよい。多相測定装置106は、次に、センササブシステムを介して、導体Aにおける信号の1つ以上の電気的パラメータを測定してよい。測定された電気的パラメータは、導体Aにおける信号の周波数を含んでよい。当該周波数は、導体における電圧の周波数、導体における電流の周波数、又は両方であってよい。
【0028】
電圧が限界を超えることにより、一度多相測定装置106が導体を識別して確実な安定値のための定常状態を達成すると、例えば、複数値を平均化して導体Aにおける信号の1つ以上の電気的パラメータを測定することにより、多相測定装置106のユーザインターフェースは操作者に指示を出して、多相測定装置106のセンササブシステム108を、導体Bなどの、導体のうちの1つ(第2)の近位(第2測定時限TM2)に位置させてよい。多相測定装置106は、次に、センササブシステム108を介して、導体Bにおける信号の1つ以上の電気的パラメータを測定してよい。例えば、導体Bにおける信号の位相推移は、導体Aにおける信号の決定された周波数に対して決定されてよい。
【0029】
一度、多相測定装置106が導体Bにおける信号の1つ以上の電気的パラメータを測定すると、ユーザインターフェースは操作者に指示を出して、多相測定装置106のセンササブシステム108を、導体Cなどの、導体のうちの1つ(第3)の近位(第3測定時限TM3)に位置させてよい。多相測定装置106は、次に、センササブシステム108を介して、導体Cにおける信号の1つ以上の電気的パラメータを測定してよい。導体Cにおける信号の位相推移は、その測定中に取得される、導体Aにおける信号の決定された周波数、及び/又は導体Bにおける信号の決定された周波数に対して決定されてよい。一度、多相測定装置106が導体Cにおける信号の1つ以上の電気的パラメータを測定すると、全ての単相値が多相測定装置に対して有効であり、三相電気系統100の多相システム全体のための種々の電気的パラメータ(例えば、電力パラメータ、電流パラメータ、電圧パラメータ、位相パラメータ並びにシステム電力、相回転、及び不平衡同様のシステムパラメータ)を決定して計算し得、またユーザインターフェースを介して操作者へと示してよい、又は有線通信又は無線通信を介するような、多相測定装置のインターフェースに関連するデータを送信してよい。
【0030】
図3は、多相測定装置106の概略ブロック図であり、器具、システム、用具、又は機器としても参照される。測定装置106は、接触電流若しくは接触電圧、又は非接触電流若しくは非接触電圧の測定値から取得される、あるいはこのような測定値から導出される、電気系統の、1つ以上の単相及び多相AC電気的パラメータ(例えば、電圧、電流、電力、位相、エネルギー、周波数、高調波)を決定するように、動作してよい。例えば、操作者は、単相電圧、単相電流、単相電力、三相電圧、三相電流、三相電力等などの種々の動作モードを選択することができる。測定装置106は、測定を実施している間にユーザの手で把持されるように通常構成される、ハンドヘルド装置又はシステムであってよい。しかし、測定装置106は、ユーザの手に常時把持される必要はなく、例えば、支持体又は機械から装置を固定又は吊り下げることにより、ユーザが把持しないように位置させることができる、という点に留意すべきである。その他の実施形態では、測定装置106は、1つ以上の電気回路をモニタ及び測定するために、特定の位置に取り外し可能に又は恒久的に位置するように設計されてもよい。
【0031】
測定装置106は、プロセッサ114、非一時的プロセッサ可読記憶媒体又はメモリ116、電圧測定センサ又は用具110、電流測定センサ又は用具112、通信サブシステム又はインターフェース118、及びユーザインターフェース120を含む。少なくともいくつかの実施形態では、測定装置106は、上記構成要素のそれぞれを含まなくてもよく、図3に図示されていない追加の構成要素を含んでもよい。測定装置106の種々の構成要素は、少なくとも1つの取り外し可能又は取り外し不可能なバッテリにより、幹線によって、誘導性電力系統により、熱エネルギー変換システムなどによって電力供給されてよい。更に、測定装置106の種々の構成要素は、単一のハウジング内又は単一のハウジング上に配置されてもよく、有線及び/又は無線通信チャネルを介して連通可能に共に連結されている複数の物理的装置又は用具に対して配置されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、測定装置106は、露出した導電性構成要素を有さず、測定装置106が電気導体又は回路にガルバニック接触する可能性が排除される。
【0032】
プロセッサ114は、命令の実行を支持することにより、測定装置106の演算センタとして機能し得る。プロセッサ114は、1つ以上の中央処理装置(CPUs)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSPs)、特定用途向け集積回路(ASICs)、プログラマブル(理論)ゲート配列(FPGAs)、デジタル回路、アナログ回路、デジタル回路とアナログ回路の組み合わせなどの1つ以上の論理処理ユニットを含んでよい。メモリ116は、1つ以上の非一時的プロセッサ可読記憶媒体の形態を含んでよく、これは、プロセッサ114などの1つ以上の装置構成要素によりアクセス可能なプログラム又はデータの記憶に好適な、現在市販されている、又は後に開発される任意の記憶媒体を含んでよい。メモリ116は、取り外し可能又は非取り外し可能であってもよく、揮発性又は不揮発性であってもよい。メモリの非限定的な例としては、ハードドライブ、光学ドライブ、RAM、ROM、EEPROM、及びフラッシュタイプのメモリが挙げられる。メモリ116は、プロセッサ114と一体化されてもよく、又はそこから分離されてもよい。例えば、プロセッサ114は、メモリ116及び1つ以上のプログラム可能な入力/出力周辺装置を含むARM系マイクロコントローラなどのマイクロコントローラを含んでよい。プロセッサ114及びメモリ116は、本明細書では通常「制御回路」と称されてよい。
【0033】
通信インターフェース又は通信サブシステム118は、1つ以上の有線又は無線通信ネットワーク124(例えば、インターネット)を介して、外部装置122と通信するための1つ以上の構成要素を含んでよい。外部装置122は、携帯電話、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、クラウド型サーバなどであってもよい。無線通信技術の非限定的な例としては、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標)Low Energy、Zigbee(登録商標)、6LoWPAN(登録商標)、Optical IR、wireless HARTなどを挙げることができる。有線通信技術の非限定的な例としては、USB(登録商標)、イーサネット、PLC、HART、MODBUS、FireWire(登録商標)、Thunderbolt(登録商標)などを挙げることができる。更に、外部装置122にデータを送信することに加えて、少なくともいくつかの実施形態では、測定装置106は、外部装置122からのデータ又は命令(例えば、制御命令)のうちの少なくとも1つを、1つ以上の有線又は無線通信インタ-ネットワーク124を介して受信することができる。
【0034】
ユーザインターフェース120は、例えば、1つ以上の入力装置及び表示装置サブシステムを含んでよい。一般的には、ユーザインターフェース120は、ユーザ又は外部装置をプロセッサ114と相互作用させることを可能にする任意の装置、及びプロセッサ114に情報を表示させる、又は別の方法で情報を提示させることを可能にする任意の装置を含んでよい。少なくとも1つの実施形態では、ユーザインターフェース120は、ユーザが特定の測定を実行する、又は測定装置106から特定のデータを要求するように、測定装置を制御又は構成することを可能にする。以下でより詳細に記載するように、携帯型測定装置106の特定の構成に関する情報は、メモリ116内に記憶されてよい。ユーザインターフェース120の表示サブシステムは、例えば、液晶表示(LCD)装置、発光ダイオード(LED)表示装置等であってよい。少なくともいくつかの実施形態では、表示サブシステムは、カラー画像を表示することが可能であり得る。少なくともいくつかの実施形態では、ユーザインターフェース120の表示サブシステムは、ユーザ入力を可能にするタッチスクリーンを含んでよい。ユーザによるユーザインターフェース120に対する入力に対応して、表示サブシステムは、特定の測定に関連する情報又はデータを表示してよい。更に詳細に後述するように、ユーザインターフェース120の表示サブシステムは、多相電気系統の複数の位相のためのフェーザ図を示す、1つ以上の画像を表示してよい。より一般には、ユーザインターフェースの表示サブシステムは、電圧、電流、周波数、電力パラメータ(例えば、ワット、KVA)、位相順序、位相推移、エネルギー、高調波等などの、1つ以上の信号特性又はパラメータを表示してよい。
【0035】
ユーザインターフェース120は、測定装置106のプロセッサ114に対する入力を伝達するように構成される単一の入力装置、又は入力装置の組合せを含んでよい。入力装置の非限定的な例としては、ボタン、キーパッド、タッチパッド、スイッチ、セレクタ、ロータリースイッチ、あるいはその他の既知の入力装置又は後に開発される入力装置が挙げられる。前述のように、ユーザインターフェース120は、タッチスクリーンとして表示サブシステムに組み込まれている入力装置を含んでよい。少なくともいくつかの実施形態では、測定装置106は、ユーザインターフェース120の入力装置への入力であるユーザ入力又は選択に対応して、特定の種類の測定を実行するように動作する。特定の測定構成は、例えば、測定設定データを変更することにより、構成可能であってよい。少なくともいくつかの実施形態では、設定データは特定の測定データを伴い、かつメモリ116内に記憶されてよい。一実施例では、ユーザがユーザインターフェース120の入力装置の特定のボタンを押した場合に、測定装置106により実行される測定の種類(例えば、単相測定、多相測定)が、ボタンの作動により構成され得る。
【0036】
電圧センサ110及び/又は電流センサ112は、試験下にある導体と試験電極又はプローブとの間のガルバニック接続を介して入力を受信する、接触式電圧センサであってよい。少なくともいくつかの実施形態では、電圧センサ110及び電流センサ112のうち少なくとも1つは、それぞれ「非接触」電圧センサ用具又は「非接触」電流センサ用具であってよく、これは、試験下にある導体と試験電極又はプローブとの間のガルバニック接続を必要とすることなく、測定値を取得することができる。従って、用語「非接触」とは、物理的接触ではなく、むしろガルバニック接触を意味する、と理解すべきである。非接触電流センサ型の非限定的な例としては、フラックスゲートセンサ、ホール効果センサ、ロゴスキーコイル、電流変成器、巨大磁気抵抗(GMR)磁気センサ等が挙げられる。非接触電圧センサ型の非限定的な例としては、「容量分圧器」型電圧センサ、「基準信号」型電圧センサ、「マルチキャパシタ」型電圧センサ等が挙げられる。
【0037】
通常、容量分圧器型電圧センサ又はシステムは、導体と試験電極又はプローブとの間のガルバニック接続を必要とすることなく、絶縁導体(例えば、絶縁線)のAC電圧を測定する。容量分圧器型電圧センサは、試験下にある絶縁導体とアース接地又はその他の基準との間に可変容量電圧を発生させるように動作する、可変容量用具を含んでよい。測定中、非接触電圧測定装置は、可変容量用具の容量を変更し、試験下にある絶縁導体とアース接地との間の容量分圧器回路のインピーダンスを変化させる。可変容量用具全体に対して2回(又は3回)の測定を順次に行うことにより、絶縁導体へのガルバニック接続を必要とすることなく、絶縁導体のAC電圧を測定することができる。
【0038】
通常、「基準信号」型電圧センサは、導電センサ、内部接地ガード及び基準シールドを含む、非接触電圧センサであってよい。同相基準電圧源は、内部接地ガードと基準シールドとの間で電気的に連結され、基準電流を導電センサに通過させるAC基準電圧を発生させることができる。少なくとも1つのプロセッサは、AC基準電圧及び絶縁導体のAC電圧により、導電センサを通って流れる電流を示す信号を受信してよく、受信した信号の少なくとも一部に基づいて、絶縁導体のAC電圧を判定する。図7A、7B、8及び9に関して、基準信号型電圧センサを更に詳細に後述する。
【0039】
一般的には、「マルチキャパシタ」型電圧センサは、絶縁導体と容量結合する複数の導電センサを含んでよい。複数のセンサのそれぞれは、容量結合に影響を与える少なくとも1つの特性に関して、その他の導電センサと異なっていてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、絶縁導体のAC電圧故に導電センサにて電圧を示す信号を受信し、また受信した信号の少なくとも一部に基づいて絶縁導体におけるAC電圧を決定する。
【0040】
このような非接触センサの種々の非限定的な例は、米国特許仮出願第62/421,124号(2016年11月11日出願)、米国特許出願第15/345,256号(2016年11月7日出願)、同第15/413,025号(2017年1月23日出願)、同第15/412,891号(2017年1月23日出願)、同第15/604,320号(2017年5月24日出願)、及び米国特許出願第15/625,745号(2017年6月16日出願)に開示され、それら全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
【0041】
動作中に、プロセッサ114は、電圧センサ110及び電流センサ112から信号を受信し、それぞれ電圧測定値及び電流測定値を取得する。プロセッサ114は、このような電圧測定値及び電流測定値を利用して、測定値の組み合わせに基づいて付加AC電気的パラメータを導出してよい。このようなパラメータは、例えば、電力(例えば、有効電力、皮相電力、無効電力)、位相関係、周波数、高調波、エネルギー等を含んでよい。電圧センサ信号及び電流センサ信号は、共通測定時間間隔中にそれぞれの電圧センサ110及び電流センサ112により取得することができ、共通測定時間間隔は、持続時間が比較的短くてもよい(例えば、10ミリ秒(ms)、100ms、1秒、5秒、10秒)。例えば、電圧センサ110及び電流センサ112は、少なくとも部分的に互いに並行して測定値を取得することができる。別の実施例として、電圧センサ110及び電流センサ112のうち1つは、電圧センサ及び電流センサのうちの他方が測定値を取得した実質的に直後に測定値を取得することができ、測定値は、ほぼ同時に取得されるようになっている。いくつかの実行例では、電圧センサ110及び電流センサ112は、測定値を指定の間隔にて(例えば、10ms毎に、100ms毎に、1秒毎に、10秒毎に)同時に又は連続して繰り返し取得するように動作してよい。一般的に、試験下にある特定の導体に関しては、電圧センサ110及び電流センサ112は、両方とも、それぞれの測定値を測定時間間隔内に取得し、測定時間間隔は、電圧測定値及び電流測定値の対が互いに対応するように十分に短く、これにより、取得された電流測定値及び電圧測定値を使用する1つ以上のAC電気的パラメータ(例えば、電力、位相)の正確な導出又は決定が可能である。
【0042】
図4は、多相測定装置106などの多相測定装置を動作させて、三相電気系統(例えば図2の三相電気系統100)の1つ以上の電気的パラメータを測定する方法400を示す。図5は、三相電気系統の電気的パラメータ測定値を取得するための、代表的なタイムライン500を示す。通常、多相測定装置は、多相電気系統の異なる導体のそれぞれにおける測定値を順次取得し、また測定のうち1つ、例えば第1の測定に関して、測定を同期させるために使用される。図5にて示すように、三相電気系統用の測定工程は、1つの段階が三相電気系統の第1導体、第2導体、及び第3導体のそれぞれのためにある、3つの段階P、P、Pへと分割されてよい。第1段階Pは、感知段階TS1、続いて測定段階TM1を含んでよい。同様に、第2段階Pは、感知段階TS2、続いて測定段階TM2を含んでよく、また第3段階Pは、感知段階TS3、続いて測定段階TM3を含んでよい。更に後述するように、種々の位相の継続時間は、正確な測定を保証するために制限されてよい。
【0043】
402では、多相測定装置の制御回路は、センササブシステムを多相電気系統の第1導体の近位に位置させるように、多相測定装置のユーザインターフェースが操作者へと指示するようにしてよい。例えば、制御回路は、ユーザインターフェースにメッセージ(例えば「測定開始」又は「第1位相の測定」)を表示させてよい。これは、制御回路に「測定開始」を指示するユーザインターフェースの入力(例えば、ボタン)を介して、多相測定を開始する操作者に対応して発生させてよい。
【0044】
図5のタイムライン500に示すように、少なくともいくつかの実施形態では、測定を開始する際に、第1感知段階TS1の間、制御回路は、センササブシステムが第1導体の近位に位置しているかどうかを示すセンササブシステム(例えば、電圧センサ、電流センサ)から、測定データを受信してよい。本特徴により、測定値が取得される前にセンササブシステムが適切な位置にあることを、制御回路が確実にすることができる。例えば、図7A、7B、8、及び9に関して更に後述するように、少なくともいくつかの実施形態では、センササブシステムは基準電流を発生させ、また測定データは、第1導体において検出された基準電流の特性(例えば、大きさ)を含む。基準電流の特性を閾値と比較して、センササブシステムが第1導体の近位に位置していることを判定してもよい。別の例としては、実際の測定値を導出する前に、感知された電圧又は電流が決定された閾値を超えることを、制御回路が最初に検出してよい。このような特徴は、非接触法のためにセンササブシステムが正確に位置していること、又は試験プローブが試験下にある装置に接触していることを検出すると同時に、多相測定装置が測定値の取得を開始することを可能にする。
【0045】
少なくともいくつかの実施形態では、時限(例えば、5秒)後に、センササブシステムが第1導体の近位に位置していないことを示す測定データの受信に対応して、制御回路により、ユーザインターフェースがユーザに指示して多相電気系統の測定を再開させてよい。その他の実施態様では、ユーザは、入力(例えば、ボタン、マイクロフォン)を介して、センササブシステムが測定値を取得する位置にあるということを、多相測定装置に手動で通知してよい。このような実施形態では、センササブシステムが特定の時限(例えば、5秒、10秒)内で正確な位置にあることをユーザが示さない場合に、制御回路により、ユーザインターフェースがユーザに指示して多相電気系統の測定を再開させてよい。
【0046】
404では、制御回路は、センササブシステムを介して、第1導体に存在する信号を伴う第1導体の電気的パラメータデータを受信してよい。第1導体の電気的パラメータデータは、電圧データ又は電流データのうち少なくとも1つを含んでよい。少なくともいくつかの実施形態では、この第1測定段階TM1は、第1感知段階TS1の間、センササブシステムが第1導体に近接して正確に位置していることを示す測定値の受信に対応して発生する。いくつかの実施形態では、第1測定段階TM1は、センササブシステムが適切な位置にあることを制御回路が検出した後に、直ちに自動的に開始する。
【0047】
406では、制御回路は、受信した第1導体の電気的パラメータデータを処理して、第1導体における信号の周波数を決定する。例えば、制御回路は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムにより処理可能な多数のデータ点(例えば1024)をそれぞれが含む、多数の測定値(例えば、50)を取得してよい。制御回路は、FFTの結果を平均化して、第1導体のための周波数、振幅及び位相情報を取得してよい。少なくともいくつかの実施形態では、位相情報を決定するために、FFTに加えて、又はFFTの代わりに、零交差検波を使用してよい。制御回路はまた、第1導体における信号の電圧、電流、位相推移、タイムスタンプ、高調波、波形等などの、1つ以上のその他のパラメータを決定又は記録してよい。
【0048】
408では、制御回路は、第1導体における信号の決定された周波数に少なくとも部分的に基づいて、同期データを確立してよい。例えば、制御回路は、その後の測定値を基準に用いることができる零相として、固定された反復時間間隔を確立して、サイクル時間(又は周期)を測定してよい。例えば、第1導体における信号が50Hzの周波数を有するように決定された場合、同期間隔は、50Hzの信号のサイクル時間又は周期と等しい20msに設定されてよい。同様に、第1導体における信号が60Hzの周波数を有するように決定された場合、同期間隔は、60Hzの信号の周期と等しい16.67msに設定されてよい。少なくともいくつかの実施形態では、制御回路は、多相電気系統の複数の位相のそれぞれについて全ての測定データを最初に取得し、また次に、受信した測定データの少なくともいくつかを処理又は分析して同期データを確立してよい。
【0049】
410では、制御回路が第1導体に関する測定値を取得した後に、制御回路は、第2感知段階TS2の間、ユーザインターフェースをユーザに指示させて、センササブシステムを多相電気系統の第2導体の近位に位置させてよい。第2感知段階TS2の間、制御回路は、センササブシステムが第2導体の近位に位置しているかどうかを検出してよい。
【0050】
412では、制御回路は、センササブシステムを介して、第2測定段階TM2の間、第2導体に存在する信号を伴う第2導体の電気的パラメータデータを受信してよい。上述のように、この作用は、感知段階TS2の間、センササブシステムが第2導体の近位に位置していることを検出する制御回路に対応して発生してよい。代替的に、第2感知段階TS2のための時限(例えば、5秒)内でセンササブシステムが第2導体の近位に位置していないことを制御回路が検出した場合、測定間で多くの時間が経過し過ぎる故に、制御回路がユーザインターフェースをユーザに命令させて三相測定プロセスを再開させてよい。
【0051】
414では、制御回路は、受信した第2導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体における信号のための位相情報に対して第2導体における信号のための位相情報を決定してよい。
【0052】
図6は、本特徴の実施例を図示するグラフ600を示す。示されるように、第1導体における信号602は50Hzの周波数を有するように決定され、これにより、制御回路は、20msの固定された反復時間間隔、50Hzの信号周期を確立し、第1導体における信号へと同期される。次に、操作者がセンササブシステムを第2導体へと移動させた後、第1導体における信号に対する第2導体の信号間の位相推移(Δθ)を示す強調部分606により示される際に、固定された反復時間間隔に関して第2導体における信号604を測定して第1導体における信号602へと同期させる。従って、FFTを用いて第2導体における信号604が処理される場合に、FFTにより出力される位相情報が、第2導体における信号604と第1導体における信号602との間の相対位相を示す。
【0053】
416では、第2導体に関する測定データを取得した後に、制御回路は、ユーザインターフェースをユーザに指示させて、センササブシステムを多相電気系統の第3導体の近位に位置させてよい。上述のように、第3感知段階TS3の間、制御回路は、センササブシステムが第3導体の近位に位置しているかどうかを検出してよい。
【0054】
418では、制御回路は、センササブシステムを介して、第3導体に存在する信号を伴う第3導体の電気的パラメータデータを受信してよい。420では、上述のように、制御回路は、受信した第3導体の電気的パラメータデータを処理して、確立された同期データに少なくとも部分的に基づいて、第1導体又は第2導体のうち少なくとも1つにおける信号のための位相情報に対して第3導体における信号のための位相情報を決定してよい。上述のとおり、少なくともいくつかの実施形態では、制御回路は、多相電気系統の複数の位相のそれぞれについて全ての測定データを最初に取得し、また次に、受信した測定データの少なくともいくつかを処理又は分析して同期データを確立してよい。
【0055】
一度、測定データが処理されると、制御回路は、ユーザインターフェースを介してユーザに多相パラメータを提示してよい、又は有線若しくは無線通信チャネルを介して外部装置へとパラメータを送信してよい。例えば、図7Bにて示すように、制御回路は、多相測定装置の表示装置に、多相電気系統の測定された信号のためのフェーザ図701を表示させてよい。決定されかつ提示され得る電気的パラメータとしては、電圧パラメータ、電流パラメータ、電力パラメータ、位相順序パラメータ、電圧位相推移パラメータ、電流位相推移パラメータ、電圧/電流位相推移パラメータ、高調波パラメータ、波形パラメータ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
多相システムの導体における信号の周波数は、時間と共に変化してもよい。従って、少なくともいくつかの実施形態では、測定プロセスの総時間(例えば、段階P、P及びP)は、比較的短い時間(例えば、30秒)に制限されてもよい。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、各測定の継続時間TM1、TM2及びTM3は5秒であり、また各感知時間間隔の最大継続時間TS1、TS2及びTS3は5秒であり、測定周期の総継続時間は30秒までに制限されている。
【0057】
加えて、第1導体における信号のための正確な周波数測定を得ることが重要であり、これにより、第2導体及び続く導体における信号のための測定が、第1導体における信号へと正確に同期され得る。例えば、50Hzの信号に関してはサイクル時間は20msであり、かつ1°の位相推移が55.5μsに対応する。従って、周波数測定は0.1%の正確性にて実施され、不確実性は20μs、又は0.36°の位相推移である。この結果、1秒当たり18°の不確実性がもたらされ、かつ10秒後には不確実性が180°になり得るため、これは使用不可能となる。従って、少なくともいくつかの実施形態では、決定された周波数の不確実性は、0.1%(例えば、0.01%)よりも良好でなければならないので、第1信号は人工的に拡張又は補間されて、第2周波数測定値及び続く周波数測定値へと正確に同期される。上述のように、少なくともいくつかの実施形態では、測定期間(例えば、TM1、TM2、TM3)中に複数のサンプル(例えば、10、50、100)を取得し、これらのサンプルを平均化して正確な周波数測定を決定することができる。例えば、制御回路は、それぞれが100msの時間間隔内で得られる1024のFFT点を含む50のサンプルを取得してよく、各測定周期TM1、TM2又はTM3に関して、総測定時間は5秒(即ち、50サンプル×100ms/サンプル)である。
【0058】
基準信号型非接触多相測定装置
以下で論じる内容では、絶縁又はブランク非絶縁導体(例えば、絶縁線)の交流(AC)電圧を、導体と試験電極又はプローブとのガルバニック接続を必要とすることなく測定するシステム及び方法の実施例を提示する。本セクションで開示する実装を本明細書では「基準信号型電圧センサ」又はシステムという場合がある。一般に、非ガルバニック接触(又は「非接触」)測定装置が提供され、当該システムは、接地に対する絶縁導体内のAC電圧信号を、容量センサを使用して測定する。上述のように、感知段階TS1、TS2、及びTS3の間に、後述する「基準信号」システム及び方法を使用して、センササブシステム(例えば、図3のセンササブシステム108)が試験下にある導体の近位に位置しているかどうかを検出してよい。このような特徴は、センササブシステムが試験下にある導体に対して適切に位置していることが判定された実質的に直後の、測定の自動開始を含む、複数の理由に関して有利であり得る。
【0059】
図7Aは、基準信号型電圧センサを含む非接触測定装置702を、操作者704が使用して、絶縁線706内に存在するAC電圧を、非接触測定装置と電線706とのガルバニック接触を必要とすることなく測定することができる、環境700の絵図である。測定装置702は、図1~6に関して上述した測定装置の機能の一部又は全てを含んでよい。図7Bは、動作中の非接触測定装置の種々の電気的特性、及び三相電気系統のためのフェーザ図701の代表的な表示を示す、7Aの非接触測定装置702の平面図である。非接触測定装置702は、把持部又は把持端710、把持部に対向するプローブ部又はプローブ端712(本明細書においては前端とも呼ばれる)を含む、ハウジング又は本体708を含む。ハウジング708はまた、非接触測定装置702とのユーザ相互作用を容易にするユーザインターフェース714を含んでよい。ユーザインターフェース714は、任意の数の入力部(例えば、ボタン、ダイヤル、スイッチ、タッチセンサ)、任意の数の出力部(例えば、ディスプレイ、LED、スピーカー、ブザー)を含んでよい。非接触測定装置702はまた、1つ以上の有線及び/又は無線通信インターフェース(例えば、USB、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))を含んでよい。
【0060】
少なくともいくつかの実施態様では、図7Bにおいて最もよく示されるように、プローブ部712は、第1延在部718及び第2延在部720によって画定される凹部716を含んでもよい。凹部716は、絶縁線706(図7Aを参照のこと)を収容する。絶縁線706は、導体722、及び導体722を取り囲む絶縁体724を含む。凹部分716は、センサ又は電極726を含んでよく、センサ又は電極726は、絶縁線が非接触測定装置702の凹部分716内に位置付けられた場合に、絶縁線706の絶縁体724に近接して載置される。明瞭性のために図示されていないが、センサ726は、センサとその他の物体との間における物理的及び電気的接触を防止するために、ハウジング708の内側に配置させてよい。測定装置702はまた、図1~6に関して上述したように、電流を測定するように動作可能な電流センサを含んでもよい。
【0061】
図7Aに示すように、使用時に、操作者704は、ハウジング708の握持部710を把持し、プローブ部分712を絶縁線706に近接して配置してよく、非接触電圧測定装置702は、電線内に存在するAC電圧をアース接地(又は、別の基準ノード)に対して正確に測定し得る。プローブ端部712は凹部分716を有すると示されているが、その他の実施形態では、プローブ部分712を異なる方法で構成することもできる。例えば、少なくともいくつかの実施態様では、プローブ部712は、センサを含む選択的に移動可能なクランプ、フック、平ら又は円弧状の表面、あるいは、非接触測定装置702のセンサを絶縁線706の近位に配置させることができる、その他のタイプの表面を含んでもよい。
【0062】
アース/接地に関する役目を務める操作者の身体は、一部の実施形態においてのみ使用されてよい。本明細書で論じる非接触測定値の機能性は、接地に対して測定する用途のみに限定されない。外部基準は、任意のその他の電位に容量結合することができる。例えば、外部基準が三相系統の別の位相に容量結合された場合、相間電圧が測定される。一般的に、本明細書で論じる概念は、基準電圧及び任意のその他の基準電位に容量結合接続された身体を使用するアースに対する基準のみに、限定されない。
【0063】
更に後述するように、少なくともいくつかの実施形態では、非接触測定装置702は、操作者704と接地728との間の人体容量(CB)をAC電圧測定中に利用することができる。接地という用語がノード728に使用されているが、ノードは、必ずしもアース/接地であるというわけではなく、容量結合又は直接ガルバニック接続結合(例えば、試験導線)により、任意のその他の基準電位にガルバニック絶縁された方法で接続することができる。
【0064】
図8は、図7A及び図7Bにも示されている、非接触測定装置702の種々の内部構成要素の概略図である。本実施例では、非接触測定装置702の導電センサ726は、実質的に「V形」であり、試験下にある絶縁線706の近位に配置され、かつ、絶縁線706の導体722に容量結合されており、それにより、センサ結合コンデンサ(C)を形成している。非接触測定装置702を操作する操作者704は、接地に対して人体容量(C)を有している。このため、図7B及び図8に示すように、線722におけるAC電圧信号(V)が、直列に接続されている結合コンデンサ(C)及び人体容量(C)に対して絶縁導体の電流要素又は「信号電流」(I)を発生させる。いくつかの実施形態では、人体容量(C)はまた、容量を接地又は任意のその他の基準電位へと発生させる、ガルバニック絶縁された試験導線を含むこともできる。
【0065】
測定される電線722内のAC電圧(V)は、外部接地728(例えば、中立点)との接続を有する。非接触測定装置702自体もまた、操作者704(図7A)が手で非接触測定装置を把持している場合に、主に人体容量(C)からなるアース728に対する容量を有している。容量C及びCの両方により導電ループが生成され、ループ内側の電圧が信号電流(I)を発生させる。信号電流(I)は、導電センサ726に容量結合したAC電圧信号(V)により発生し、非接触測定装置のハウジング708とアース728に対する人体コンデンサ(C)とを通って、外部アース728へとループバックする。電流信号(I)は、非接触測定装置702の導電センサ726と試験下にある絶縁線706との間の距離、導電センサ726の特定の形状、及び導体722のサイズ及び電圧レベル(V)に依存する。
【0066】
信号電流(I)に直接影響する距離の変動及びその結果生じる結合コンデンサ(C)の変動を補償するために、非接触測定装置702は、信号電圧周波数(f)と異なる基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を発生させる、コモンモード基準電圧源730を含む。
【0067】
迷走電流を低減又は回避するために、非接触測定装置702の少なくとも一部は、導電性の内部アースガード又はスクリーン732により包囲されていてもよい。それにより、絶縁線706の導体722と共に結合コンデンサ(C)を形成する導電センサ726を、大部分の電流が通過するようにする。内部接地ガード732は、任意の好適な導電材料(例えば、銅)から形成することができ、固体(例えば、箔)であってもよく、又は1つ以上の開口部(例えば、メッシュ)を有してもよい。
【0068】
なお、内部アースガード732と外部アース728との間の電流を避けるために、非接触測定装置702は、導電性の基準シールド734を含む。基準遮蔽体734は、任意の好適な導電材料(例えば、銅)から形成することができ、固体(例えば、箔)であってよい、又は1つ以上の開口部(例えば、メッシュ)を有してよい。同相モード基準電圧源730は、基準シールド734と内部アースガード732との間で電気的に連結されており、それにより、非接触測定装置702用の基準電圧(V)及び基準周波数(f)を有する同相モード電圧が発生する。このようなAC基準電圧(V)により、付加基準電流(I)が、結合コンデンサ(C)及び人体コンデンサ(C)を介して駆動される。
【0069】
導電センサ726の少なくとも一部を取り囲む内部接地ガード732は、導電センサ726と基準シールド734との間の基準電流(I)の望ましくないオフセットを引き起こすAC基準電圧(V)の直接的な影響に対して、導電センサを保護する。上述のように、内部アースガード732は、非接触測定装置702用の内部電気アース738である。少なくともいくつかの実施態様では、内部アースガード732はまた、非接触測定装置702の電子装置の一部又は全てを包囲して、AC基準電圧(V)が電子部品に結合するのを避ける。
【0070】
上述のように、基準シールド734は、基準信号を入力AC電圧信号(V)上へ投入するために利用され、第2の機能としてガード732を接地728容量へと最小限に抑える。少なくともいくつかの実施態様では、基準シールド734は、非接触測定装置702のハウジング708の一部又は全てを包囲する。このような実施形態では、電子装置の一部又は全てには、基準同相モード信号があり、基準同相モード信号はまた、絶縁線706内の導電センサ726と導体722との間で基準電流(I)を発生させる。少なくともいくつかの実施態様では、基準シールド734の間隙のみが、非接触測定装置702の動作中に導電センサ726を絶縁線706の近位に配置させるための、導電センサ用の開口であってよい。
【0071】
内部アースガード732及び基準シールド734は、非接触測定装置702のハウジング708(図7A及び図7Bを参照のこと)の周囲に、二層スクリーンを提供してよい。基準シールド734をハウジング708の外面上に配置してよく、内部接地ガード732を内部シールド又はガードとして機能させてよい。導電センサ726は、基準シールド734に対してガード732により遮蔽され、これにより、結合コンデンサ(C)により、導電センサ726と試験下にある導体722との間で任意の基準電流流量が発生する。
【0072】
センサ726の周囲のガード732もまた、センサに近く隣接する電線の漂遊影響を低減する。
【0073】
図8にて示すように、非接触測定装置702は、反転電流電圧変換器として動作する、入力増幅器736を含んでよい。入力増幅器736は、非接触測定装置702の内部アース738として機能する内部アースガード732に電気的に連結した、非逆相端子を有する。入力増幅器736の逆相端子を、導電センサ726と電気的に連結させることができる。フィードバック回路737(例えば、フィードバック抵抗)はまた、入力増幅器736の逆相端子と出力端子との間で連結して、フィードバック及び適切なゲインを入力信号の調整のために供給してもよい。
【0074】
入力増幅器736は、信号電流(I)及び基準電流(I)を導電センサ726から受け取り、入力増幅器の出力端子にて、導電センサ電流を示すセンサ電流電圧信号へと受け取った電流を変換する。例えば、センサ電流電圧信号は、アナログ電圧であってもよい。アナログ電圧は、信号処理モジュール740へと供給してよく、当該信号処理モジュー740は、更に後述するように、センサ電流電圧信号を処理して、絶縁線706の導体722内のAC電圧(V)を決定する。信号処理モジュール740は、デジタル及び/又はアナログ回路の任意の組み合わせを含んでよい。
【0075】
非接触測定装置702はまた、判定されたAC電圧(V)を示すか、又は、インターフェースにより非接触測定装置の操作者704に通信するために、信号処理モジュール740に連通可能に連結されたユーザインターフェース742(例えば、表示装置)をも含んでよい。
【0076】
図9は、非接触測定装置の種々の信号処理構成要素を示す、非接触測定装置900のブロック図である。非接触電流測定装置900は、上述した測定装置と類似している、又は同一であってよい。従って、類似している、又は同一である構成要素には、同じ参照番号が標識付けされる。図示するように、入力増幅器736は、導電センサ726からの入力電流(I+I)を、入力電流を示すセンサ電流電圧信号へと変換する。センサ電流電圧信号は、アナログ/デジタル変換器(ADC)902を使用してデジタル形式へと変換される。
【0077】
電線722内のAC電圧(V)は、式(1)によりAC基準電圧(V)に関係し、
【数1】
式中、(I)は、導体722内のAC電圧(V)のために導電センサ726を通る信号電流であり、(I)は、AC基準電圧(V)のために導電センサ726を通る基準電流であり、(f)は、測定されるAC電圧(V)の周波数であり、(f)は、基準AC電圧(V)の周波数である。
【0078】
AC電圧(V)に関係する指数「O」を伴う信号は、同相モード基準電圧源730に関係する指数「R」を伴う信号とは異なる、周波数のような特性を有する。高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム906を実装する回路などのデジタル処理を使用して、異なる周波数を伴う信号の大きさを分離することができる。アナログ電子フィルタを使用して、「O」信号特性(例えば、振幅、周波数)を「R」信号特性から分離してもよい。
【0079】
電流(I)及び(I)は、結合コンデンサ(C)のために、それぞれ、周波数(f)及び(f)に依存する。結合コンデンサ(C)及び人体容量(C)を通って流れる電流は、周波数に比例し、従って、試験下にある導体722内のAC電圧(V)の周波数(f)を測定して、信号周波数(f)に対する基準周波数(f)の比率を決定する必要があり、この比率は、先に記載した式(1)において利用されるか、又はシステム自体により発生するが故に当該基準周波数は既知である。
【0080】
入力電流(I+I)が入力増幅器736により調整されてADC 902によってデジタル化された後、FFT 906を用いてデジタルセンサ電流電圧信号を周波数領域で表現することにより、当該信号の周波数構成要素を計数化してよい。周波数(f)及び(f)の両方が測定された場合、周波数ビンを算出して、FFT 906からの電流(I)及び(I)の基本の振幅を計算してよい。
【0081】
電流(I)及び/又は電流(I)の振幅は、基準信号センサ又は電極(例えば、電極726)と絶縁線706の導体722との間の距離の関数として変化し得る。上述のように、このような特性は、センサが試験下にある導体の近位に位置しているかどうかを検出するために、多相電気系統の測定中に使用されてよい。システムは、予想されたそれぞれの電流と測定された電流(I)及び/又は電流(I)とを比較して、基準信号センサ又は電極と導体722との間の距離を決定してよい。次に、ブロック908により示すように、I及びIと指定された電流(I)及び(I)の基本高調波の比率を、決定された周波数(f)及び(f)によりそれぞれ補正してよく、この係数を使用して、高調波(V)を電線722内に追加することにより、測定された元の基本電圧又はRMS電圧を計算してよく、これは二乗高調波合計の平方根を計算することにより行われ、表示装置912上でユーザへと示してよい。
【0082】
結合コンデンサ(C)は、絶縁導体706と導電センサ726との間の距離、並びに、センサ726の特定の形状及び寸法に応じて、例えば、約0.02pF~1pFの範囲の容量値を一般的に有してよい。人体容量(C)は、例えば、約20pF~200pFの容量値を有してよい。
【0083】
上記の式(1)から、同相モード基準電圧源730により発生したAC基準電圧(V)は、信号電流(I)及び基準電流(I)に関して同様の電流の大きさを達成するために、導体722内のAC電圧(V)と同じ範囲内である必要がない、と理解できる。相対的に高くなるように基準周波数(f)を選択することにより、AC基準電圧(V)を相対的に低く(例えば、5V未満)してよい。一例として、基準周波数(f)は、3kHzであるように選択してよく、3kHzは、60Hzの信号周波数(f)を有する典型的な120 VRMS AC電圧(V)の50倍の高さである。このような場合、信号電流(I)と同じ基準電流(I)を発生させるために、わずか2.4V(即ち、120V÷50)であるようにAC基準電圧(V)を選択してよい。一般的に、基準周波数(f)を信号周波数(f)のN倍にて設定することで、I及びIに関して同様の不確実性を達成し、互いに同じ範囲にある電流(I)及び(I)を発生させるよう、AC基準電圧(V)は、電線722内のAC電圧(V)の(1/N)倍の値を有することができる。
【0084】
任意の好適な信号発生器を使用して、基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を発生させることができる。図9に図示した実施例では、シグマ-デルタ デジタル-アナログ変換器(Σ-Δ DAC)910が使用される。Σ-Δ DAC 910は、ビットストリームから、定義済みの基準周波数(f)及びAC基準電圧(V)を用いて波形(例えば、正弦波形)信号を作成する。少なくともいくつかの実施態様では、Σ-Δ DAC 910は、FFT 906の窓と同位相となる波形を発生させて、ジッタを低減してもよい。
【0085】
少なくともいくつかの実施態様では、ADC 902は、14ビットの解像度を有していてもよい。動作中、ADC 902は、入力増幅器736からの出力を、公称50Hzの入力信号に対してサンプリング周波数10.24kHzでサンプリングして、FFT906による処理に備えて100msで2個のサンプル(1024)(FFT 906のために10Hzのビン)を提供してよい。60Hzの入力信号に関しては、同じサンプル数/サイクルを得るために、例えば、サンプリング周波数を12.288kHzとしてよい。ADC 902のサンプリング周波数は、基準周波数(f)の全サイクル数に同期化されてよい。例えば、入力信号周波数は、40~70Hzの範囲内であってよい。AC電圧(V)の測定された周波数に応じて、AC電圧(V)のビンをFFT 906を用いて決定してよく、また、ハニング窓関数を用いて更に計算を行い、集約間隔内に取り込まれた不完全な信号サイクルにより生じる位相推移ジッタを抑制してよい。
【0086】
一実施例では、同相モード基準電圧源730は、2419Hzの基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を発生させる。この周波数は、60Hz信号に関しては40番目の高調波と41番目の高調波との間に、50Hz信号に関しては、48番目の高調波と49番目の高調波との間にある。予想されたAC電圧(V)の高調波ではない基準周波数(f)を有するAC基準電圧(V)を供給することにより、AC電圧(V)が基準電流(I)の測定値に影響を及ぼす可能性が少なくなる。
【0087】
少なくともいくつかの実施形態では、同相モード基準電圧源730の基準周波数(f)は、試験下にある導体722内のAC電圧(V)の高調波の影響を受ける可能性が最も少ない周波数であるように、選択される。一例として、同相モード基準電圧源730は、基準電流(I)が限界を超えた場合に電源を切断してもよく、これは、導電センサ726が試験下にある導体722に接近していることを示し得る。同相モード基準電圧源730を電源切断した状態で測定(例えば、100msの測定)を行って、信号高調波をいくつか(例えば、3つ、5つ)の候補基準周波数にて検出してよい。その後、AC電圧(V)内の信号高調波の振幅をその数の候補基準周波数にて決定して、どの候補基準周波数が、AC電圧(V)の信号高調波により受ける影響が最も少ない可能性があるかを識別してよい。その後、識別された候補基準周波数へと基準周波数(f)を設定してよい。基準周波数のこの切り替えにより、信号スペクトル内の有効基準周波数要素の衝撃を回避又は低減することができるが、これにより、測定された基準信号が増大して精度が低減する場合があり、不安定な結果となる場合がある。2419Hz以外で同じ特性を有するその他の周波数としては、例えば、2344Hz及び2679Hzが挙げられる。
【0088】
前述の詳細な説明では、ブロック図、概略図及び実施例を使用して、装置及び/又はプロセスの種々の実施形態を説明してきた。このようなブロック図、系統図及び実施例が1つ以上の機能及び/又は動作を含む限り、このようなブロック図、フロー図又は実施例内のそれぞれの機能及び/又は動作は、広範囲にわたるハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの実質的に任意の組み合わせにより、個別にかつ/又は集合的に実装することができることが、当業者には理解されるであろう。一実施形態では、特定用途向け集積回路(ASIC)を介して、本発明の主題を実施してよい。しかし、本明細書で開示する実施形態が、全部、又は一部を問わず、1つ以上のコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムとして(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で実行される1つ以上のプログラムとして)、1つ以上の制御装置(例えば、マイクロコントローラ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、ファームウェアとして、又はこれらの実質的に任意の組み合わせとして標準的な集積回路内で同等に実装することができ、ソフトウェア及び/又はファームウェアについての回路設計及び/又はコード書き込みであれば、十分に、本開示に照らして当該技術分野における当業者の知識の範囲内になることを当業者は認識するであろう。
【0089】
当業者は、本明細書に記載する方法又はアルゴリズムの多くが付加的な行為を採用することができ、一部の行為を省略することができ、かつ/又は行為を指定された順番と異なる順番で実行することができることを、理解するであろう。
【0090】
更に、当業者は、本明細書で教示する機構が、種々の形態でプログラム製品として流通可能であり、代表的な実施形態が、流通を実際に実行するために使用される特定の形式の信号担持媒体に関係なく等しく適用されることを、認識するであろう。信号担持媒体の例としては、以下のもの、即ち、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、CD-ROM、デジタルテープ、及びコンピュータメモリなどの記録可能な形式の媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
上述した種々の実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供してもよい。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、多相測定装置は、多相電気系統の各導体のそれぞれ同時に近位に配置され得る、複数(例えば、3つ)の接触又は非接触センササブシステムを含んでよい。複数のセンササブシステムは、上述のように、それぞれ電圧センサ及び/又は電流センサを含んでよい。なお、各センササブシステムは、動作中に、各センササブシステム間で切り替えを行い、多相電気系統の各導体のための測定データを取得する、同一の処理回路に連結されてよい。このような実施形態では、多相測定装置は、各導体に対して近位の同一のセンサに位置するように、操作者へと指示する必要がない。
【0092】
本明細書中の特定の教示及び定義と矛盾しない限りにおいて、米国特許仮出願番号第62/421,124号(2016年11月11日出願)、米国特許出願第15/345,256号(2016年11月7日出願)、同第15/413,025号(2017年1月23日出願)、同第15/412,891号(2017年1月23日出願)、同第15/604,320号(2017年5月24日出願)、及び米国特許出願第15/625,745号(2017年6月16日出願)が開示され、それら全体が、本明細書に参考として組み込まれる。実施形態の態様は、種々の特許、出願及び公報のシステム、回路、及び概念を用いて、尚更なる実施形態を提供するように必要に応じて修正することができる。
【0093】
上記の説明を考慮すれば、実施形態へのこれらの変更及びその他の変更を行うことができる。通常、以下の請求項において使用する用語は、明細書及び請求項に開示された特定の実施形態に対する請求項を限定するものと解釈すべきではないが、こうした請求項に権利を与えた等価物の全範囲と共に全ての考えられる実施形態を含むものと解釈すべきである。従って、請求項は、開示によって制限されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9