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特許7199900ラミネート材を用いた熱交換器およびその出入口構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ラミネート材を用いた熱交換器およびその出入口構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20221226BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20221226BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221226BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221226BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M50/202 501S
H01M10/613
H01M10/625
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018191546
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020061262
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 裕一
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082069(JP,A)
【文献】実開昭57-151234(JP,U)
【文献】特開2014-237464(JP,A)
【文献】特表2017-529673(JP,A)
【文献】特開平07-257608(JP,A)
【文献】特開2009-270365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 50/20
H01M 10/613
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が設けられた外包ラミネート材が袋状に形成された外包袋を備え、前記外包ラミネート材を貫通する出入口を介して、前記外包袋の内部に対し熱媒体を流出入させるようにしたラミネート材を用いた熱交換器において、
前記出入口は、外包袋の面状部に設けられ、
筒状の貫通筒部の一端に、前記外包ラミネート材よりも強度が高いフランジ部が設けられた第1出入口部材と、
前記外包ラミネート材よりも強度が高いリング状のフランジ部を有する第2出入口部材とを備え、
前記第2出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の一面側における出入口周縁部に配置される一方、前記第1出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の他面側における前記出入口周縁部に配置されつつ、前記貫通筒部が前記出入口および前記第2出入口部材の中央孔に貫通配置されて、前記第1および第2出入口部材が結合されることにより、両出入口部材の両フランジ部が前記外包ラミネート材の出入口周縁部を挟み込んだ状態で両出入口部材が前記外包袋に固定されていることを特徴とするラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項2】
前記第1および第2出入口部材のうち、少なくともいずれか一方の出入口部材が金属によって構成されている請求項1に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項3】
前記第1および第2出入口部材のうち、少なくともいずれか一方の出入口部材が樹脂によって構成されている請求項1に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項4】
前記第2出入口部材は、そのフランジ部の一面側に筒状の結合筒部が設けられ、
前記第1出入口部材の貫通筒部が、前記第2出入口部材の結合筒部に嵌入されて、両筒部が結合されている請求項1~3のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項5】
前記第1および第2出入口部材が接着剤によって互いに結合されている請求項1~4のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項6】
前記第1および第2出入口部材の少なくともいずれか一方のフランジ部と、前記外包ラミネート材の出入口周縁部との間に接着剤が充填されて密封されている請求項1~5のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項7】
前記外ラミネート材は、前記伝熱層の両側に前記被覆層が設けられ、
前記第1および第2出入口部材のうち、いずれか一方の出入口部材が樹脂によって構成され、そのいずれか一方の出入口部材のフランジ部と、前記外包ラミネート材の出入口周縁部との間が熱圧着により密封されている請求項1~5のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項8】
前記外ラミネート材の伝熱層がアルミニウムによって構成されている請求項1~7のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項9】
車両用発熱体の冷却用に用いられる請求項1~8のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【請求項10】
金属製の伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が設けられた外包ラミネート材が袋状に形成された外包袋を備え、前記外包ラミネート材を貫通する出入口を介して、前記外包袋の内部に対し熱媒体を流出入させるようにしたラミネート材を用いた熱交換器の出入口構造において、
前記出入口は、外包袋の面状部に設けられ、
筒状の貫通筒部の一端に、前記外包ラミネート材よりも強度が高いフランジ部が設けられた第1出入口部材と、
前記外包ラミネート材よりも強度が高いリング状のフランジ部を有する第2出入口部材とを備え、
前記第2出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の一面側における出入口周縁部に配置される一方、前記第1出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の他面側における前記出入口周縁部に配置されつつ、前記貫通筒部が前記出入口および前記第2出入口部材の中央孔に貫通配置されて、前記第1および第2出入口部材が結合されることにより、両出入口部材の両フランジ部が前記外包ラミネート材の出入口周縁部を挟み込んだ状態で両出入口部材が前記外包袋に固定されていることを特徴とするラミネート材を用いた熱交換器の出入口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂製の被覆層が積層されたラミネート材を外包袋とするラミネート材を用いた熱交換器およびその出入口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)等においては、電動機を駆動するための電力を供給するバッテリー装置が搭載されている。このようなバッテリー装置としては、リチウム二次電池等の各種の二次電池からなる複数個の小型単電池が直列または並列に多数接続されて組電池の形態としたものが一般に用いられている。特に近年になって電気自動車の航続距離を延長させるために、複数の組電池が直列または並列に組み合わされて、バッテリー装置のさらなる大容量化が進められている。
【0003】
一方、バッテリー装置として多く用いられるリチウム二次電池は、使用温度によって性能や寿命が大きく変化するため、長期間にわたって効率良く使用するには適正な温度に管理するのが好ましい。しかしながら、上記のような複数の組電池の形態で使用した場合、複数の組電池が密接して配置されているため、各組電池や各単電池から発生される熱を効果的に放出させることは困難であり、各組電池毎の温度が上昇してしまい、性能や寿命が低下してしまうおそれがある。
【0004】
そこで下記特許文献1に示すような薄型の熱交換器を用いて、複数の組電池を冷却するようにした技術が開発されている。この熱交換器は、2枚の金属製皿状プレートを対向合致させて熱交換器(扁平チューブ)を形成し、複数の組電池の各間に扁平チューブがそれぞれ配置されることによって、組電池の各単電池から発せられる熱を、扁平チューブ内を流通する冷媒(冷却水)を介して外部に放出させるようにしている。
【0005】
このような技術背景の下、自動車バッテリー装置としての複数の組電池を冷却するための熱交換器は、他の自動車部品と同様、薄型化、小型軽量化、低コスト化が可及的に求められ、その一環として、柔軟性の高いラミネート材を用いた熱交換器の採用が検討されている。
【0006】
ラミネート材を用いた熱交換器は、アルミニウム箔~アルミニウム薄板製の伝熱層の両面に樹脂製の被覆層が積層されたラミネート材が2枚重ね合わされて袋状に接合された外包袋を備え、外包袋の内部に冷媒を循環できるように構成されている。そして複数の組電池の各間に外包袋が配置されて、組電池の各単電池から発せられる熱を、各外包袋の内部を流通する冷媒を介して外部に放出させるようにしている。
【0007】
このようなラミネート材を用いた熱交換器において、外包袋の内部に対し冷媒の出し入れを行うために外包袋の出入口に、冷媒管等の外管を確実に接続できるように出入口部材が取り付けられている。出入口部材としては例えば、樹脂製の管継手が多く用いられており、管継手の端部を外包袋の樹脂製被覆層に熱圧着ないし接着して固定する方法が通常の固定方法と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-199149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のラミネート材を用いた熱交換器において、外包袋は、金属板等に比べて強度が低いラミネート材によって構成されるとともに、外包袋における管継手の接合部周辺に応力が集中し易いため、外包袋における管継手の接合部周辺が早期に破断したり、管継手が外包袋から部分的に剥離して、液漏れ等の不具合が生じるおそれがあり、管継手等の出入口部材を長期間安定した取付状態に保持できず、十分な耐久性を得ることが困難であり、製品価値の低下を来すという課題があった。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、出入口部材を長期間安定した状態に取り付けることができて、十分な耐久性を得ることができるとともに、製品価値を向上させることができるラミネート材を用いた熱交換器およびその出入口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0012】
[1]金属製の伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が設けられた外包ラミネート材が袋状に形成された外包袋を備え、前記外包ラミネート材を貫通する出入口を介して、前記外包袋の内部に対し熱媒体を流出入させるようにしたラミネート材を用いた熱交換器において、
前記出入口は、外包袋の面状部に設けられ、
筒状の貫通筒部の一端に、前記外包ラミネート材よりも強度が高いフランジ部が設けられた第1出入口部材と、
前記外包ラミネート材よりも強度が高いリング状のフランジ部を有する第2出入口部材とを備え、
前記第2出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の一面側における出入口周縁部に配置される一方、前記第1出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の他面側における前記出入口周縁部に配置されつつ、前記貫通筒部が前記出入口および前記第2出入口部材の中央孔に貫通配置されて、前記第1および第2出入口部材が結合されることにより、両出入口部材の両フランジ部が前記外包ラミネート材の出入口周縁部を挟み込んだ状態で両出入口部材が前記外包袋に固定されていることを特徴とするラミネート材を用いた熱交換器。
【0013】
[2]前記第1および第2出入口部材のうち、少なくともいずれか一方の出入口部材が金属によって構成されている前項1に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0014】
[3]前記第1および第2出入口部材のうち、少なくともいずれか一方の出入口部材が樹脂によって構成されている前1に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0015】
[4]前記第2出入口部材は、そのフランジ部の一面側に筒状の結合筒部が設けられ、
前記第1出入口部材の貫通筒部が、前記第2出入口部材の結合筒部に嵌入されて、両筒部が結合されている前1~3のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0016】
[5]前記第1および第2出入口部材が接着剤によって互いに結合されている前項1~4のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0017】
[6]前記第1および第2出入口部材の少なくともいずれか一方のフランジ部と、前記外包ラミネート材の出入口周縁部との間に接着剤が充填されて密封されている前項1~5のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0018】
[7]前記外ラミネート材は、前記伝熱層の両側に前記被覆層が設けられ、
前記第1および第2出入口部材のうち、いずれか一方の出入口部材が樹脂によって構成され、そのいずれか一方の出入口部材のフランジ部と、前記外包ラミネート材の出入口周縁部との間が熱圧着により密封されている前項1~5のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0019】
[8]前記外ラミネート材の伝熱層がアルミニウムによって構成されている前項1~7のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0020】
[9]車両用発熱体の冷却用に用いられる前項1~8のいずれか1項に記載のラミネート材を用いた熱交換器。
【0021】
[10]金属製の伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が設けられた外包ラミネート材が袋状に形成された外包袋を備え、前記外包ラミネート材を貫通する出入口を介して、前記外包袋の内部に対し熱媒体を流出入させるようにしたラミネート材を用いた熱交換器の出入口構造において、
前記出入口は、外包袋の面状部に設けられ、
筒状の貫通筒部の一端に、前記外包ラミネート材よりも強度が高いフランジ部が設けられた第1出入口部材と、
前記外包ラミネート材よりも強度が高いリング状のフランジ部を有する第2出入口部材とを備え、
前記第2出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の一面側における出入口周縁部に配置される一方、前記第1出入口部材のフランジ部が前記外包ラミネート材の他面側における前記出入口周縁部に配置されつつ、前記貫通筒部が前記出入口および前記第2出入口部材の中央孔に貫通配置されて、前記第1および第2出入口部材が結合されることにより、両出入口部材の両フランジ部が前記外包ラミネート材の出入口周縁部を挟み込んだ状態で両出入口部材が前記外包袋に固定されていることを特徴とするラミネート材を用いた熱交換器の出入口構造。
【発明の効果】
【0022】
発明[1]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、外包ラミネート材の出入口周縁部を第1および第2出入口部材の高い強度のフランジ部によって内外両側から挟み込んだ状態で両出入口部材が結合されるため、両フランジ部が互いに支持し合うことにより、出入口部材を外包袋の出入口周縁部に安定した状態に取り付けることができる。このため外包ラミネート材が早期に破断してしまったり、出入口部材が剥離してしまう等の不具合を確実に防止できる。従って出入口部材を長期間安定した状態に取り付けることができ、十分な耐久性を得ることができるとともに、製品価値を向上させることができる。
【0023】
発明[2]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、出入口部材を熱伝導性の高い金属によって構成しているため、熱圧着等を行う際に、金属製の出入口部材を介して熱圧着予定部(溶着予定部)に熱を効率良く伝達することができ、熱圧着処理をスムーズに行うことができる。
【0024】
発明[3]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、出入口部材を樹脂によって構成しているため、樹脂製の出入口部材のフランジ部と、外包ラミネート材の樹脂層とを確実に熱融着することができる。
【0025】
発明[4]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、両出入口部材を確実に結合することができ、より安定した状態に取り付けることができる。
【0026】
発明[5]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、両出入口部材をより確実に結合することができ、より一層安定した状態に取り付けることができる。
【0027】
発明[6][7]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、出入口部材のフランジ部と、外包ラミネート材の出入口周縁部との間の密封性を向上させることができる。
【0028】
発明[8]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、伝熱層が伝熱性の高いアルミニウムによって構成されているため、冷却性能をより一層向上させることができる。
【0029】
発明[9]のラミネート材を用いた熱交換器によれば、車両用の発熱体を確実に冷却することができる。
【0030】
発明[10]のラミネート材を用いた熱交換器の出入口構造によれば、上記ラミネート材を用いた熱交換器の発明と同様に、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1はこの発明の第1実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器を概略的に示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は側面断面図である。
図2図2は第1実施形態のラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を分解して示す斜視図である。
図3図3は第1実施形態のラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
図4図4はこの発明の第2実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
図5図5はこの発明の第3実施形態である材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
図6図6はこの発明の第4実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
図7図7はこの発明の第5実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
図8図8はこの発明の変形例であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器を概略的に示す図、図2は第1実施形態のラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を分解して示す斜視図、図3は第1実施形態のラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
【0033】
これらの図に示すように、このラミネート材を用いた熱交換器は、電気自動車等の電動機を駆動する電力を供給するバッテリー装置の冷却用に用いられるものあり、袋状の外包袋3を備えている。外包袋3は、2枚の外包ラミネート材30,30がその外周縁部が熱圧着(熱融着)によって接合一体化されることによって形成されている。
【0034】
外包ラミネート材30は、金属箔~金属薄板製の伝熱層31と、その伝熱層31の両面に積層一体化された熱可塑性樹脂製の被覆層32,32とを備えた3層ラミネート材によって構成されている。
【0035】
本実施形態において、伝熱層31を構成する金属は、アルミニウムによって構成されている。なお本明細書および特許請求の範囲において、アルミニウムという用語は、純アルミニウムはもちろん、アルミニウム合金も含む意味で用いられる。
【0036】
本実施形態において、伝熱層31を構成する金属箔(アルミニウム箔)~金属薄板(アルミニウム薄板)の厚さは、8μm~500μmに設定するのが良く、より好ましくは、20μm~200μmに設定するのが良い。
【0037】
被覆層32を構成する樹脂は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂フィルムによって構成されている。本実施形態において、伝熱層31の片面に積層される被覆層32と、他の片面に積層される被覆層32とは、同種の樹脂によって構成しても良いし、異なる種類の樹脂によって構成しても良い。
【0038】
外包袋3の面状部における両端部には、外包ラミネート材30を貫通するように出入口35,35が形成されている。本実施形態において、一方の出入口35から外包袋1内に熱媒体としての冷媒が流入されて、その冷媒が外包袋3の内部を流通して、他方の出入口35から流出されるように構成されている。
【0039】
なお本実施形態においては、外包袋3の内部の冷媒流通経路には、熱交換効率を向上させるためにフィン36が収容されている(図1(a)(b)参照)。
【0040】
外包袋3の出入口35には、第1および第2出入口部材(口縁部材)1,2が設けられている。本第1実施形態において、第1および第2出入口部材1,2は、外包袋3を構成する外包ラミネート材30よりも高い強度の素材によってそれぞれ構成されており、例えば高密度ポリエチレンやポリプロピレン等の硬質合成樹脂の一体成形品によってそれぞれ構成されている。
【0041】
第1出入口部材1は、円筒状の貫通筒部11と、貫通筒部11の一端外周に外径方向に突出するように一体形成されたリング状のフランジ部12とを備えている。
【0042】
第2出入口部材2は、円筒状の結合筒部21と、結合筒部21の一端外周に外径方向に突出するように一体形成されたリング状のフランジ部22とを備えている。
【0043】
第2出入口部材2の結合筒部21の内径は、第1出入口部材1の貫通筒部11の外径よりも少し大きく形成されており、第1出入口部材1の貫通筒部11を第2出入口部材2の結合筒部21内に適合状態に嵌め込むことができるように構成されている。
【0044】
そして外包袋3の外面側において、第2出入口部材2のフランジ部12が、外包ラミネート材30における出入口35の周縁部に対向配置されて、結合筒部21が外方に突出するように配置される。また外包袋3の内面側から第1出入口部材1の貫通筒部11が外包ラミネート材30の出入口35を貫通し、さらに第2出入口部材2の結合筒部21(第2出入口部材2の中央孔に相当)に嵌入される。こうして第1および第2出入口部材1,2の両フランジ部12,22によって、外包ラミネート材30における出入口35の周縁部を内外から挟み込んだ状態で、両出入口部材1,2の両筒部21,22間に塗布された接着剤51によって、両出入口部材1,2が接着結合される。さらに第1出入口部材1のフランジ部12と、外包ラミネート材30の出入口周縁部との間に塗布された接着剤52によって両者間が密封(シール)されるとともに、第2出入口部材2のフランジ部22と、外包ラミネート材30の出入口周縁部との間に塗布された接着剤52によって両者間が密封(シール)される。
【0045】
このラミネート材を用いた熱交換器においては、出入口部材1,2の筒部11,21が外方に突出した状態に配置されているため、この筒部11,21を利用して、その筒部11,21に冷媒管等の外管を接続するものである。つまり筒部11,21を管継手として冷媒管を接続するものである。
【0046】
そして冷媒管を介して一方の出入口35から熱交換器(外包袋3)内に冷媒が流入されるとともに、その冷媒が外包袋3の内部を流通し、他方の出入口35を通過して冷媒管を介して流出されるものである。こうして外包袋3の内部に循環される冷媒と、外包袋3の表面に接触配置された組電池等の発熱体との間で熱交換されて、発熱体から発生する熱が冷媒を介して放出される。これにより車両のバッテリー装置等の発熱体が冷却されるものである。
【0047】
以上の構成の本第1実施形態のラミネート材を用いた熱交換器によれば、外包袋3を構成する外包ラミネート材30の出入口35の周縁部を、外包ラミネート材30よりも強度が高い第1および第2出入口部材1,2のフランジ部12,22によって内外両側から挟む込んだ状態で両出入口部材1,2を結合しているため、両フランジ部12,22が互いに支持し合うことにより、出入口部材1,2を外包袋3の出入口周縁部に安定した状態に取り付けることができる。このため外包ラミネート材30における出入口部材1,2の周辺に加わる負荷が軽減されて、外包ラミネート材30が破断してしまったり、出入口部材1,2が外包袋3から部分的に剥離してしまう等の不具合を確実に防止できる.従って出入口部材1,2を長期間安定した状態に取り付けることができ、十分な耐久性を得ることができるとともに、品質を確実に向上でき、ひいては製品価値を格段に向上させることができる。
【0048】
また本実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、出入口部材1,2のフランジ部12,22と、外包ラミネート材30における出入口35の周縁部との間を接着剤52によってシールするようにしているため、出入口部材1,2を一層安定した状態に取り付けることができる上さらに、出入口部材1,2のフランジ部12,22と、外包ラミネート材30との間のシール性(密封性)を十分に確保できて、液漏れ等の不具合もより確実に防止できて、製品価値を一層に向上させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図4はこの発明の第2実施形態のであるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。同図に示すようにこの第2実施形態のラミネート材を用いた熱交換器は、出入口部材1,2のフランジ部12,22と、外包ラミネート材30との間のシール手段が、上記第1実施形態のラミネート材を用いた熱交換器と相違する。
【0050】
すなわち本第2実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、出入口部材1,2のフランジ部12,22と、外包ラミネート材30の出入口周縁部における樹脂製の被覆層32とを熱圧着(熱融着)して接合一体化し、その接合一体化部分(溶着部53)によって、フランジ部12,22と、外包ラミネート材30との間をシールするようにしている。
【0051】
この第2実施形態のラミネート材を用いた熱交換器において他の構成は、上記第1実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0052】
この第2実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においても上記と同様に、出入口部材1,2を外包袋3に長期間安定した状態に取り付けることができるとともに、出入口部材1,2のフランジ部12,22と外包ラミネート材30との間のシール性も確保できるため、十分な耐久性を得ることができるとともに、製品価値を向上させることができる。
【0053】
なお本第2実施形態においては、出入口部材1,2のフランジ部12,22と、外包ラミネート材30の被覆層32との間の熱圧着性を向上させるために、フランジ部12,22と、外方ラミネート材30の被覆層32とを同種の樹脂によって構成するのが好ましい。
【0054】
<第3実施形態>
図5はこの発明の第3実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
【0055】
同図に示すようにこの第3実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、第1出入口部材1が硬質合成樹脂によって構成されるとともに、第2出入口部材2が金属によって構成されている。また第1出入口部材1のフランジ部12と、外包ラミネート材30の出入口周縁部との間は上記第2実施形態と同様、熱圧着による熱溶着部53によってシールされるとともに、第2出入口部材2のフランジ部22と、外包ラミネート材30との間は上記第1実施形態と同様、接着剤52を介してシールされている。
【0056】
この第3実施形態のラミネート材を用いた熱交換器において他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0057】
この第3実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においても、上記と同様の作用効果を得ることができる。その上さらに本第3実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、第2出入口部材2を熱伝導性が高い金属によって構成しているため、その第2出入口部材2を介して、第1出入口部材1のフランジ部12と、外包ラミネート材30との間の熱融着予定部に熱を効率良く伝達することができる。このため熱融着予定部をスムーズに融着できて、出入口部材1,2の取付作業を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0058】
<第4実施形態>
図6はこの発明の第4実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
【0059】
同図に示すようにこの第4実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、第1および第2出入口部材1,2が共に金属によって構成されている。さらに第1出入口部材1における貫通筒部11の外周面には雄ねじ54aが刻設されるとともに、第2出入口部材2における結合筒部21の内周面には雌ねじ54bが刻設されている。
【0060】
この第4実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、第2出入口部材2のフランジ部22が外包ラミネート材30の出入口周縁部に対向配置される一方、第1出入口部材1の貫通筒部11が出入口35を貫通して第2出入口部材2の結合筒部21内にねじ込まれる。こうして両フランジ部12,22によって、外包ラミネート材30の出入口周縁部を挟み込んだ状態で、両出入口部材1,2の両筒部11,21がねじ留めによって固定される。さらに第1出入口部材1のフランジ部12と、外包ラミネート材30の出入口周縁部との間にはOリング55が介在されてその間がシールされている。なお本第4実施形態においては、第2出入口部材2のフランジ部22と、外包ラミネート材30との間は特にシールされていないが、必要であれば、Oリングや接着剤等を用いてシールするようにしても良い。
【0061】
この第4実施形態のラミネート材を用いた熱交換器において他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0062】
この第4実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においても、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
<第5実施形態>
図7はこの発明の第5実施形態であるラミネート材を用いた熱交換器における出入口周辺を拡大して示す断面図である。
【0064】
同図に示すようにこの第4実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においては、第1および第2出入口部材1,2が共に金属によって構成されている。
【0065】
そして、第2出入口部材2のフランジ部22が外包ラミネート材30の出入口周縁部に対向配置される一方、第1出入口部材1の貫通筒部11が出入口35を貫通して第2出入口部材2の結合筒部21内に嵌入される。その状態で、結合筒部21の一部と、その一部に対応する貫通筒部11の一部とが内側に凹むようにカシメ加工されて、そのカシメ加工部55を介して第1および第2出入口部材1,2が結合される。また第1出入口部材1のフランジ部12と外包ラミネート材30との間は接着剤52が充填されてシールされるとともに、第2出入口部材2のフランジ部22と外包ラミネート材30との間は接着剤52が充填されてシールされている。
【0066】
この第5実施形態のラミネート材を用いた熱交換器において他の構成は、上記実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0067】
この第5実施形態のラミネート材を用いた熱交換器においても、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
<変形例>
上記各実施形態においては、第1出入口部材1を外包袋3の内面側に配置し、第2出入口部材2を外包袋3の外面側に配置するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、第1出入口部材1を外包袋3の外面側に配置し、第2出入口部材2を外包袋3の内面側に配置するようにしても良い。
【0069】
例えば図8の変形例に示すように、第1出入口部材1を、フランジ部12の片面側に円筒状の貫通筒部11が一体形成されるとともに、フランジ部12の他の片面側に円筒状の管継手部15が一体形成されたつば付き円筒部材によって構成する。さらに第2出入口部材2を、比較的肉厚の厚いリング状のフランジ部材22によって構成する。
【0070】
そして外包袋3の内面側において、第2出入口部材2がその中央孔が出入口35に対向配置される一方、外包袋3の外面側から、第1出入口部材1の貫通筒部11が出入口35を貫通して、その貫通筒部11が第2出入口部材2の中央孔に嵌入されて、接着剤等の適宜の結合手段によって、貫通筒部11が第2出入口部材2の中央孔に結合される。さらに第1出入口部材1のフランジ部12と外包ラミネート材30との間が接着剤等の適宜のシール手段によってシールされるとともに、第2出入口部材2としてのフランジ部材22と外包ラミネート材30との間が接着剤等の適宜のシール手段によってシールされる。
【0071】
なお図8においては、外包ラミネート材30の上側が外包袋3の内側であり、外包ラミネート材30の下側が外包袋3の外側となっているのに対し、上記図2においては、外包ラミネート材30の下側が外包袋3の内側であり、外包ラミネート材30の上側が外包袋3の外側となっている
この変形例のラミネート材を用いた熱交換器においては、第1出入口部材12の管継手部15が外側に突出するように配置されるため、その管継手部15を利用して、冷媒管等の外管を接続するようにすれば良い。
【0072】
また上記実施形態等においては、接着剤、ねじ留め、カシメ加工等によって第1および第2出入口部材1,2間を結合するようにしているが、本発明においては、第1および第2出入口部材1,2間の結合手段は限定されることはなく、どのような結合方式を用いても良い。上記以外の結合方式の一例としては、スナップフィット方式が考えられる。すなわち第1出入口部材1の貫通筒部11に弾性フックを形成し、第2出入口部材2の結合筒部21にフック受けを形成しておき、貫通筒部11を結合筒部21に嵌入した際に、弾性フックをフック受けに自動的に係合して、両出入口部材1,2が結合されるようにする。これにより第1および第2出入口部材1,2をワンタッチで結合できて、出入口部材1,2の組付作業をより一層簡単かつスムーズに行うことができる。
【0073】
また上記実施形態においては、外包ラミネート材30として、3層構造のものを採用しているが、それだけに限られず、本発明においては、金属箔(金属薄板)の片面に樹脂層(樹脂フィルム)が積層された2層構造のラミネート材を用いても良いし、4層以上の構造のラミネート材を用いるようにしても良い。
【0074】
また上記実施形態においては、本発明のラミネート材を用いた熱交換器を冷却器として使用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明のラミネート材を用いた熱交換器は、加熱器として使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明のラミネート材を用いた熱交換器は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等に採用される電動機駆動用バッテリー装置等の発熱体を冷却するための冷却装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:第1口縁部材
11:貫通筒部
12:フランジ部、フランジ部材
2:第2口縁部材
21:結合筒部
22:フランジ部
3:外包袋
30:外包ラミネート材
31:伝熱層
32:被覆層
35:出入口
51:接着剤
52:接着剤
53:溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8