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  • 特許-遠心分離装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】遠心分離装置
(51)【国際特許分類】
   B04B 1/08 20060101AFI20221226BHJP
   B04B 11/04 20060101ALI20221226BHJP
   B04B 1/12 20060101ALI20221226BHJP
   B04B 1/14 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B11/04
B04B1/12
B04B1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018192616
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020058987
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕二
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 尚史
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-040553(JP,A)
【文献】米国特許第02557629(US,A)
【文献】特開2018-027536(JP,A)
【文献】実開平02-048139(JP,U)
【文献】特開2001-239184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転容器と、上記回転容器の内部に所定の間隔を空けて積層された複数の分離板とを有し、被処理液体に含まれる固形成分を遠心力により分離して排出する遠心分離装置であって、
上記回転容器の内側外周部に開口する内側開口部に連通し、上記回転容器の内側外周部に堆積される固形成分を連続的に排出する連続排出口を有し、
上記連続排出口における、上記回転容器の回転中心からの距離が可変に構成されていることを特徴とする遠心分離装置。
【請求項2】
請求項1の遠心分離装置であって、
上記回転容器の回転中心からの距離が互いに異なる複数の上記連続排出口が設けられ、上記複数の上記連続排出口が選択的に閉塞されることにより、上記連続排出口における、上記回転容器の回転中心からの距離が可変に構成されていることを特徴とする遠心分離装置。
【請求項3】
請求項1および請求項2のうち何れか1項の遠心分離装置であって、
さらに、上記回転容器の内側外周部に堆積された固形成分を間欠的に排出する間欠排出口を有することを特徴とする遠心分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液体中に含まれる固形成分を分離する遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離装置には、分離された固形成分を排出する機構が設けられている。そのような機構としては、例えば、固形成分を間欠的に纏めて排出するものや、比較的小さなノズル等から連続的に排出するものなどがある。また、これらの排出機構を併せ持つ分離板型遠心分離機も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-239184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような固形成分を比較的小さなノズル等から連続的に排出する排出機構は、ノズル等が詰まりがちであり、詰まった場合には、装置を分解清掃等する作業が必要になる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、遠心分離装置において、被処理液体から分離された固形成分を連続的に排出するノズル等を詰まりにくいようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
回転容器と、上記回転容器の内部に所定の間隔を空けて積層された複数の分離板とを有し、被処理液体に含まれる固形成分を遠心力により分離して排出する遠心分離装置であって、
上記回転容器の内側外周部に開口する内側開口部に連通し、上記回転容器の内側外周部に堆積される固形成分を連続的に排出する連続排出口を有し、
上記連続排出口における、上記回転容器の回転中心からの距離が可変に構成されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、上記連続排出口における、上記回転容器の回転中心からの距離に応じて、連続排出口で作用する圧力が異なるので、連続的に排出される固形成分の量を調整することができる。それゆえ、例えば連続排出口を過度に小さく設定しないようにして、連続排出口等が詰まりにくいようにすることなどができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、遠心分離装置において、被処理液体から分離された固形成分を連続的に排出するノズル等を詰まりにくいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】遠心分離装置の正面断面図である。
図2】固形成分を排出する動作の例を示すタイミングチャートである。
図3】固形成分が連続的に排出される状態の例を模式的に示す説明図である。
図4】回転体内の内容物を全量排出するトータル排出時の状態の例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、例えば船舶用ディーゼルエンジン機関の燃料油および潤滑油等の被処理流体である原液の清浄化に用いられる分離板型遠心分離機である遠心分離装置について説明する。この分離板型遠心分離機は、回転体内に截頭円錐形状の薄板からなる分離板を案内筒の軸方向に沿って小間隙を有して多数積層して装着した竪型の遠心分離機であって、回転体内で分離・堆積されるスラッジを弁シリンダの開閉によって外部に排出する機構を有している。上記スラッジは、被処理液体に含まれる固形物等であって、より詳しくは、遠心力で回転体内の最外径部側に分離・堆積される固形分である。
【0011】
(分離板型遠心分離機101の概略構成)
分離板型遠心分離機101は、図1に示すように、
回転軸102に取り付けられて高速回転する回転容器103と、
上記回転容器103の中心部上部に設けられ、原液が外部から供給される液入口管104と、
上記原液を回転容器103内の最下部に向けて末広がりに導く案内筒105と、
上記原液におけるスラッジ等の各成分を比重差により分離するために、上記案内筒105の軸方向に小間隙を有して多数積層されて装着された分離板113、および水取板152を有する分離領域と回転容器103内の最外径部(内側外周部)のスラッジ堆積領域とから形成される分離室151と、
上記回転容器103内の下部に設けられ、作動水の水圧に応じて上下動制御され、スラッジを堆積させる時に上昇して(図1の左半分)外周部上縁が弁パッキン107に圧接されて間欠排出部112の間欠排出口112aを閉じる一方、スラッジを排出する時に下降して(図1の右半分)間欠排出口112aを開く弁シリンダ106と、
上記分離室151で分離されたスラッジをそれぞれ連続排出口211を介して連続して外部へ排出する複数の連続排出部201と、
上記分離室151で分離された清浄油(軽液)等を外部に排出するための液抜き出し部154・156と、
を備えている。
【0012】
上記回転容器103は、上部に設けられた略截頭円錐台形部である回転体蓋103aと、下部に設けられた上記截頭円錐台形部の外径よりも大きな内径を有する大径円柱部である回転胴103bとが、リングナット103cによって一体化した形状をしている。回転容器103は回転軸102と一体化されて高速回転(例えば7000~9000min-1)できるように固定されている。
【0013】
上記のような分離板型遠心分離機101の分離室151内に導入された原液は、分離板113間の間隙を上昇して流れていくうちに比重の大きい固形分はスラッジ堆積領域へ、油(軽液)は回転容器103の中心側へと分離され、分離水は回転容器103の上部に設けられた液抜き出し部156より排出される。
【0014】
上記スラッジ堆積領域に堆積したスラッジは、間欠排出部112から間欠的に排出させることもできるし、連続排出部201から連続的に排出させることもできる。
【0015】
すなわち、上記間欠的な排出は、例えば原液の処理量や、そのスラッジの含有量から、回転容器103内に堆積したスラッジの堆積量が所定量になる時間が推定され、タイマー等により制御される所定のタイミングで、開閉弁作動水供給部材111の閉弁作動水供給ノズル121または開弁作動水供給ノズル131から開閉弁作動水受部材110に閉弁作動水または開弁作動水が供給されて行われる。より詳しくは、閉弁作動水供給ノズル121から閉弁作動水が供給されると、その閉弁作動水は閉弁作動水供給路122を介して閉弁作動水圧室123に導入され、遠心力によって外周側に押し付けられることによって生じる圧力により弁シリンダ106が上昇して弁パッキン107に圧接され、間欠排出口112aが閉じられる。また、開弁作動水供給ノズル131から開弁作動水が供給されると、その開弁作動水は開弁作動水供給路132を介して弁体133を遠心力に抗して内周側にスライドさせ、閉弁作動水圧室123内の閉弁作動水を開弁作動水排水流路134から開弁作動水排出孔135を介して放出させることにより弁シリンダ106が下降して間欠排出口112aを開き、スラッジの排出が行われる。その後、直ちに開弁作動水の供給は停止され、再び閉弁作動水が閉弁作動水圧室123に供給されると、弁シリンダ106は上方に押し上げられ、間欠排出口112aがシールされる。
【0016】
また、上記連続的な排出は、所定の内径に設定されたノズルとして作用する連続排出口211が、回転体蓋103aに形成された連続排出流路212を介して、回転体蓋103aの内面に開口する内側開口部213に連通することによって、回転容器103の回転による遠心力によって、スラッジ堆積領域に堆積するスラッジが、徐々に、連続的に排出されるようになっている。
【0017】
(連続排出口211の洗浄について)
回転体蓋103aの外側には、連続排出口211を囲むように洗浄液貯留部201aが設けられ、連続排出口211や連続排出流路212を洗浄する例えば清浄な水等の洗浄液203が、貯留されるようになっている。より具体的には、例えば洗浄液受部201bがリングナット103cにボルト202によって取り付けられ、回転体蓋103aの外壁と洗浄液受部201bとで囲まれる空間に、洗浄液203が貯留されるようになっている。上記洗浄液203は、例えば、回転容器103の外方に設けられた支持板221に取り付けられた給水管222(洗浄液供給部)により給水バルブ223を介して供給されるようになっている。上記洗浄液受部201bには、回転容器103の外周側に向けて開口する排出孔201cが設けられ、洗浄液貯留部201aの内部に連続排出口211から排出されたスラッジが徐々に外方側に流れ出し得るようになっている。また、上記洗浄液貯留部201aに貯留される洗浄液203の液面の位置は、前記のように間欠排出口112aから回転体内の内容物を全量排出するトータル排出される時において、上記内側開口部213よりも回転容器103の回転中心に近い位置になるように設定されている。
【0018】
上記のように設定されていることによって、例えば以下のようにして連続排出口211の洗浄が行われる。
【0019】
まず、例えば、回転容器103が所定の回転速度で回転している状態で、図2に示すように閉弁作動水が供給されると間欠排出部112の間欠排出口112aが閉じて、内部のスラッジ堆積領域にスラッジが堆積する。堆積したスラッジのうちの一部は、内側開口部213から連続排出流路212を介して連続排出口211から排出され、さらに排出孔201cから回転容器103の外方側に流れ出す。すなわち、遠心力によって各部に作用する圧力の関係を図3に示すように水頭圧を模して表すと、例えば間欠排出部112における水頭圧をHとした場合、連続排出口211には水頭圧h1(または洗浄液貯留部201aに、排出孔201cから排出され切らないスラッジが貯留されている場合には、その液面の位置に応じた水頭圧h2)が作用する。そこで、上記水頭圧に応じて、回転容器103内のスラッジが連続排出口211から排出される。
【0020】
やがて、スラッジ堆積領域に所定量のスラッジが堆積することが見込まれるタイミングで間欠排出部112の間欠排出口112aが開放される際には、その開放に所定の時間だけ先立って、給水管222から洗浄液203が供給され、洗浄液貯留部201aに溜められた後に間欠排出口112aが開放される。この場合、回転容器103内の被処理液体が比較的短時間に間欠排出部112から排出されて回転容器103が完全に、またはほぼ空になると、図4に示すように、間欠排出部112における水頭圧Hは0となり、連続排出口211に連通する内側開口部213には、洗浄液203の液面から内側開口部213の位置までの距離に応じた水頭圧h3が作用する。そこで、洗浄液貯留部201aに貯留された洗浄液203は連続排出流路212を逆流し、これによって、連続排出口211、連続排出流路212、および内側開口部213が洗浄される。
【0021】
なお、上記排出孔201cから流れ出し得るスラッジの量は、連続排出口211から排出されるスラッジの量よりも多ければ、給水管222から清浄な洗浄液203が供給されたときに洗浄液受部201bに貯留される洗浄液203のスラッジ濃度を低く抑えやすい点で好ましいが、洗浄液受部201bからスラッジや洗浄液203が溢れたとしても特に差し支えはなく、給水管222から十分な洗浄液203が供給されるなどすれば、以下のような連続排出口211等の洗浄を十分行わせることはできる。また、洗浄液203の清浄程度は相対的なもので、連続排出口211等の洗浄が可能な程度に清浄であればよい。
【0022】
(連続排出口211からのスラッジ排出量(排出速度)の調整について)
連続排出口211から排出されるスラッジの量は、回転容器103の回転速度や、被処理液体中の固形成分濃度、連続排出口211のオリフィス径などの他、連続排出口211における水頭圧(図3のh1やh2)によっても変化する。そこで、図1に併せて示すように、回転容器103の回転中心からの距離が異なる複数の位置に連通し得るように連続排出流路212を設け、何れかの位置に選択的に連続排出口211を設けることによって、連続排出口211から排出されるスラッジの量を調整することが容易にできる。それゆえ、連続排出口211のオリフィス径の共通化を図ったり、オリフィス径を過度に小さく設定することなく、排出量を小さく設定するなど、連続排出口より排出されるスラッジの排出流速(量)を簡易的に可変することが容易にできる。
【0023】
ここで、上記のように連続排出口211の位置を種々に設定する場合、それに対応するように洗浄液203の液面の位置を設定するためには、例えば図1に仮想線で示すように、連続排出部201に代えて洗浄液受部201bの長さが異なる連続排出部201’を取り付けたり、支持板221上での取り付け位置が異なる給水管222’を用いるようにしたりしてもよい。また、洗浄液受部201bを伸縮可能にしたり、給水管222をスライド可能にしたりしてもよい。
【0024】
(その他の事項)
なお、洗浄液受部201bは、リングナット103cに取り付けるのに限らず、回転体蓋103aや回転胴103bに取り付けられるなどしてもよい。また、リングナット103cや、回転体蓋103a、回転胴103bの2つ以上に取り付け得るようにされてもよい。
【0025】
また、連続排出口211の位置が同一に設定される場合でも、洗浄液受部201bの長さ等を異ならせるなどして、洗浄液203の液面の位置を種々に設定可能にしてもよい。この場合には、図4における水頭圧h3を種々に設定し得ることになるので、これに応じて連続排出口211等の洗浄程度を設定することができる。
【0026】
また、洗浄液203の液面の位置を設定するためには、洗浄液受部201bにおける回転容器103の回転中心からの距離が異なる複数の位置に洗浄液203を溢れさせる開口部を設け、それらの開口部を選択的に閉塞させ得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
101 分離板型遠心分離機
102 回転軸
103 回転容器
103a 回転体蓋
103b 回転胴
103c リングナット
104 液入口管
105 案内筒
106 弁シリンダ
107 弁パッキン
110 開閉弁作動水受部材
111 開閉弁作動水供給部材
112 間欠排出部
112a 間欠排出口
113 分離板
121 閉弁作動水供給ノズル
122 閉弁作動水供給路
123 閉弁作動水圧室
131 開弁作動水供給ノズル
132 開弁作動水供給路
133 弁体
134 開弁作動水排水流路
135 開弁作動水排出孔
151 分離室
152 水取板
154・156 液抜き出し部
201 連続排出部
201’ 連続排出部
201a 洗浄液貯留部
201b 洗浄液受部
201c 排出孔
202 ボルト
203 洗浄液
211 連続排出口
212 連続排出流路
213 内側開口部
221 支持板
222 給水管
222’ 給水管
223 給水バルブ
図1
図2
図3
図4