(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ワークの自動供給装置及びワークの自動供給方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/04 20060101AFI20221226BHJP
B65G 47/52 20060101ALI20221226BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20221226BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20221226BHJP
【FI】
B23Q7/04 D
B65G47/52 A
B65G47/90 B
B23Q7/04 L
B24B41/06 A
(21)【出願番号】P 2018226427
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間元 崇
(72)【発明者】
【氏名】高地 且好
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-202745(JP,A)
【文献】実開昭52-54084(JP,U)
【文献】特開2002-103167(JP,A)
【文献】特開2009-45708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04、7/16
B65G 47/52、47/90
B24B 41/06
B23B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸へワークを自動で供給するワークの自動供給装置において、
搬入コンベアと、
搬出コンベアと、
上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間に配置され、該搬入コンベアの上にある上記ワークを掴み、該搬出コンベアの上に搬送可能な旋回式供給部と、
上記旋回式供給部が掴んだ上記ワークを該旋回式供給部の旋回軌跡の途中で掴んでスライドさせ、上記主軸へ該ワークを供給すると共に、加工後のワークを上記旋回軌跡まで戻すスライド式供給部とを備え、
上記旋回式供給部は、
上記搬入コンベアの上にある加工前の上記ワークを掴み、上記スライド式供給部に渡す第1把持部と、
上記スライド式供給部が上記旋回軌跡に戻した加工後の上記ワークを掴んで上記搬出コンベアの上に搬送する第2把持部とを有
し、
上記旋回式供給部の旋回中心が、上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとを結ぶ線上にある
ことを特徴とするワークの自動供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの自動供給装置において、
上記スライド式供給部のスライド方向と
上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとを結ぶ線とが交わる点上に上記旋回式供給部の旋回中心がある
ことを特徴とするワークの自動供給装置。
【請求項3】
工作機械の主軸へワークを自動で供給するワークの自動供給装置において、
搬入コンベアと、
搬出コンベアと、
上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間に配置され、該搬入コンベアの上にある上記ワークを掴み、該搬出コンベアの上に搬送可能な旋回式供給部と、
上記旋回式供給部が掴んだ上記ワークを該旋回式供給部の旋回軌跡の途中で掴んでスライドさせ、上記主軸へ該ワークを供給すると共に、加工後のワークを上記旋回軌跡まで戻すスライド式供給部とを備え、
上記旋回式供給部は、
上記搬入コンベアの上にある加工前の上記ワークを掴み、上記スライド式供給部に渡す第1把持部と、
上記スライド式供給部が上記旋回軌跡に戻した加工後の上記ワークを掴んで上記搬出コンベアの上に搬送する第2把持部とを有し、
上記旋回式供給部及び上記スライド式供給部は、サーボモータ又は電動モータ及びエンコーダで駆動可能に構成されおり、
上記第1把持部及び第2把持部は、中央に固定式爪部を有し、反対側に開閉式爪部を有する開閉式グリッパであり、
上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間には、上記開閉式爪部にそれぞれ設けた当接部に当接することで、該開閉式爪部を開く被当接部が設けられている
ことを特徴とするワークの自動供給装置。
【請求項4】
工作機械の主軸へワークを自動で供給するワークの自動供給方法において、
搬入コンベアと、搬出コンベアと、該搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間に配置され、該搬入コンベアの上にある上記ワークを掴み、該搬出コンベアの上に搬送可能な旋回式供給部と、該旋回式供給部が掴んだ上記ワークを該旋回式供給部の旋回軌跡の途中で掴んでスライドさせ、上記主軸へ該ワークを供給すると共に、加工後のワークを上記旋回軌跡まで戻すスライド式供給部とを備えたワークの自動供給装置を準備する工程と、
上記スライド式供給部によって、上記工作機械の主軸において加工済の加工後ワークを旋回軌跡にある受け渡し部まで後退させて
上記旋回式供給部の第2把持部に把持させる
加工後ワークスライド工程と、
上記加工後ワークスライド工程が完了するまでの間に上記搬入コンベアで送られてきた加工前ワークを上記旋回式供給部の第1把持部に把持させる
加工前ワーク把持工程と、
上記旋回式供給部によって
上記第1把持部に把持された上記加工前ワークを上記受け渡し部まで旋回させる
と共に、上記第2把持部に把持している上記加工後ワークも同時に旋回させて上記搬出コンベアに近付ける加工後ワーク旋回工程と、
上記スライド式供給部によって上記
受け渡し部の加工前ワークを上記工作機械の主軸までスライド移動させる
加工前ワークスライド工程と、
上記加工前ワークスライド工程によって供給された上記加工前ワークを上記工作機械によって上記加工前ワークを加工する機械加工工程と、
上記加工前ワークスライド工程及び上記機械加工工程の間に、上記旋回式供給部をさらに旋回させて上記第2把持部に把持している上記加工後ワークを上記搬出コンベアに載置し、搬出する搬出旋回工程とを含む
ことを特徴とするワークの自動供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの自動供給装置及びワークの自動供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1及び2のような開閉式グリッパやクランプシリンダを有するワークの搬入出を行う装置は広く知られている。
【0003】
また、例えば、
図4~
図6に示すように、工作機械(図示せず)の左右方向に設置されて第1及び第2定配機構104,105を有するコンベア106と、旋回式供給部102と、ワークWにプラグ103aを差すための上下機構103とを備えた、ワークの自動供給装置101は知られている。
【0004】
このようなワークの自動供給装置101では、
STEP S101:研削中のワークWの研削加工完了、
STEP S102:旋回式供給部102によるワークWの旋回戻し、
STEP S103:上下機構103の上昇、
STEP S104:コンベア106の送り、
STEP S105:第1定配装置104の旋回、
STEP S106:第2定配装置105のロッド縮小による開、
STEP S107:上下機構103の下降、
STEP S108:定配装置104の旋回戻し、
STEP S109:旋回式供給部102の旋回によるワークWの供給、
STEP S110:新たなワークWの研削加工開始
の各ステップを含むサイクルを繰り返し、主軸Aに自動的にワークWを供給するように構成されている。この例では、旋回式供給部102、上下機構103及び第1定配装置104は、作動油を用いた油圧駆動となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭61-19847号公報
【文献】実用新案登録第2584247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図4~
図6に示した従来のワークの自動供給装置101では、全自動加工中における、プラグ103aの挿入動作など複雑な動きが多く、構成上、研削加工完了後に主軸AからワークWを払い出し、次の加工前のワークWを供給するのに非常に長い非研削加工時間(例えば、約20秒)を要していたという問題がある。
【0007】
また、ワークWがコンベア106の上を滑りながら待つ時間が長く、その接触によってワークWが傷付きやすく、外観上の品質問題となっていた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非加工時間の大幅な短縮を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、旋回移動及びスライド移動の手順に工夫を加えることで、ワークの加工における待ち時間を短縮化した。
【0010】
具体的には、第1の発明では、工作機械の主軸へワークを自動で供給するワークの自動供給装置において、
搬入コンベアと、
搬出コンベアと、
上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間に配置され、該搬入コンベアの上にある上記ワークを掴み、該搬出コンベアの上に搬送可能な旋回式供給部と、
上記旋回式供給部が掴んだ上記ワークを該旋回式供給部の旋回軌跡の途中で掴んでスライドさせ、上記主軸へ該ワークを供給すると共に、加工後のワークを上記旋回軌跡まで戻すスライド式供給部とを備え、
上記旋回式供給部は、
上記搬入コンベアの上にある加工前の上記ワークを掴み、上記スライド式供給部に渡す第1把持部と、
上記スライド式供給部が上記旋回軌跡に戻した加工後の上記ワークを掴んで上記搬出コンベアの上に搬送する第2把持部とを有する。
【0011】
上記の構成によると、旋回式供給部の第1把持部が、搬入コンベアの上にある加工前のワークを掴んで旋回してスライド式供給部に渡し、第2把持部は、スライド式供給部が旋回軌跡に戻した加工後のワークを掴んで搬出コンベアの上に搬送するようにしているので、1つの旋回式供給部で加工前と加工後のワークの搬送を行える。また、旋回式供給部で旋回移動を行って搬入コンベアと搬出コンベアとの間のワークのやり取りをし、スライド式供給部でワークを工作機械の主軸と旋回式供給部の旋回軌跡との間でスライド移動させるようにしているので、工作機械の加工中でもワークの旋回移動が可能となる。このため、構成が容易になると共に、各工程間の待ち時間を短縮させることができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記旋回式供給部及び上記スライド式供給部は、サーボモータ又は電動モータ及びエンコーダで駆動可能に構成されている。
【0013】
上記の構成によると、油圧駆動アクチュエータと異なって精密な制御が可能となり、動作間の安定タイマーを最小化することができるので、無駄な待ち時間の削減が可能となる。なお、電動モータは、サーボモータではない電動モータでもエンコーダを利用することで精密な制御が可能になる。
【0014】
第3の発明では、第2の発明において、
上記第1把持部及び第2把持部は、中央に固定式爪部を有し、反対側にそれぞれ開閉式爪部を有する開閉式グリッパであり、
上記搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間には、上記開閉式爪部にそれぞれ設けた当接部に当接することで、該開閉式爪部を開く被当接部が設けられている。
【0015】
上記の構成によると、搬入コンベア及び搬出コンベアとの間のワークの受け渡しを簡単な構成で容易に行うことができる。
【0016】
第4の発明では、工作機械の主軸へワークを自動で供給するワークの自動供給方法において、
搬入コンベアと、搬出コンベアと、該搬入コンベアと上記搬出コンベアとの間に配置され、該搬入コンベアの上にある上記ワークを掴み、該搬出コンベアの上に搬送可能な旋回式供給部と、該旋回式供給部が掴んだ上記ワークを該旋回式供給部の旋回軌跡の途中で掴んでスライドさせ、上記主軸へ該ワークを供給すると共に、加工後のワークを上記旋回軌跡まで戻すスライド式供給部とを備えたワークの自動供給装置を準備する工程と、
上記工作機械の主軸において加工済の加工後ワークを旋回軌跡にある受け渡し部まで後退させて旋回式供給部の第2把持部に把持させる工程と、
搬入コンベアで送られてきた加工前ワークを上記旋回式供給部の第1把持部に把持させる工程と、
上記旋回式供給部によって上記加工前ワークを上記受け渡し部まで旋回させる工程と、
上記スライド式供給部によって上記加工前ワークを上記工作機械の主軸までスライド移動させる工程と、
上記旋回式供給部によって上記加工後ワークを上記搬出コンベアの上まで旋回させて搬送する工程とを含む構成とする。
【0017】
上記の構成によると、旋回式供給部の第1把持部が、搬入コンベアの上にある加工前のワークを掴んで旋回してスライド式供給部に渡し、第2把持部は、スライド式供給部が旋回軌跡に戻した加工後のワークを掴んで搬出コンベアの上に搬送するようにしているので、1つの旋回式供給部で加工前と加工後のワークの搬送を行える。また、旋回式供給部で旋回移動を行って搬入コンベアと搬出コンベアとの間のワークのやり取りをし、スライド式供給部でワークを工作機械の主軸と旋回式供給部の旋回軌跡との間でスライド移動させるようにしているので、工作機械の加工中でもワークの旋回移動が可能となる。このため、構成が容易になると共に、各工程間の待ち時間を短縮させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、旋回式供給部が、搬入コンベアの上にある加工前のワークを掴み、スライド式供給部に渡す工程と、スライド式供給部が旋回軌跡に戻した加工後のワークを掴んで搬出コンベアの上に搬送する工程とを行うようにしたことにより、非加工時間の大幅な短縮を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本発明の実施形態に係るワークの自動供給装置におけるワーク受け取り時の旋回式供給部及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るワークの自動供給装置におけるワーク搬出時の旋回式供給部及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るワークの自動供給装置におけるスライド式供給部及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るワークの自動供給方法を示すフローチャートである。
【
図4】従来技術に係るワークの自動供給装置におけるコンベア及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【
図5】従来技術に係るワークの自動供給装置における旋回式供給部及びその周辺を拡大して示し、(a)が平面図で、(b)が(a)のVb方向から見た矢視図である。
【
図6】従来技術に係るワークの自動供給方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
-ワークの自動供給装置の構成-
図1A~
図3は、本発明の実施形態に係るワークの自動供給装置1を示し、この自動供給装置1は、工作機械(図示せず)の主軸Aへワークを自動で供給するものである。このワークの自動供給装置1は、工作機械による研削等の加工が行われていない加工前ワークW1が送られてくる搬入コンベア2を備えている。ワークの自動供給装置1は、その駆動部等全体を制御する制御装置5を備えている。この制御装置5は、例えば、中央演算処理装置(CPU)及び制御プログラムが格納されたメモリ等を備えており、後述する各種モータ等を制御可能となっている。搬入コンベア2は、図示しない搬入駆動モータを制御装置5で制御することで、搬送スピードやオンオフ制御が可能となっている。例えば、加工前ワークW1は、断面円形の部材であり、工作機械としての研削盤により、内面研削されるものとするが、これに限定されない。
【0022】
ワークの自動供給装置1は、工作機械による加工が行われた後の加工後ワークW2を送り出す搬出コンベア3を備えている。搬出コンベア3は、制御装置5が図示しない搬出駆動モータを制御することで、搬送速度制御やオンオフ制御が可能となっている。
【0023】
また、搬入コンベア2の下流側には、ロッド部を伸張することで加工前ワークW1を堰き止めることができるエアシリンダを有する定配装置4が設けられており、制御装置5によって適宜伸縮することで、加工前ワークW1を1つずつ下流側へ送り出すように構成されている。
【0024】
そして、搬入コンベア2と搬出コンベア3との間には、この搬入コンベア2の上にある加工前ワークW1を掴んで旋回し、搬出コンベア3の上に搬送可能な旋回式供給部10が設けられている。この旋回式供給部10は、その旋回中心Eを中心に加工前ワークW1及び加工後の加工後ワークW2を旋回させて搬送するものであり、搬入コンベア2の上にある加工前ワークW1を掴み、スライド式供給部20に渡す第1把持部11と、スライド式供給部20が旋回軌跡に戻した加工後ワークW2を掴んで搬出コンベア3の上に搬送する第2把持部12とを有する。旋回式供給部10は、制御装置5がサーボモータよりなる旋回モータ14を制御することで駆動可能に構成されている。
【0025】
第1把持部11及び第2把持部12は、中央に第1及び第2固定式爪部11b,12bを有し、反対側に第1及び第2開閉式爪部11a,12aをそれぞれ有する開閉式グリッパである。具体的には、第1及び第2固定式爪部11b,12bは、旋回中心Eを中心に旋回可能な旋回体13の先端側に、先端に向かって互いに離れる方向に広がる一対の辺を有する逆三角形状部分のそれぞれの辺に設けられている。一方、第1及び第2開閉式爪部11a,12aは、旋回体13の基端側にそれぞれ揺動可能に設けられ、図示しないロックバネにより、対応する第1固定式爪部11b又は第2固定式爪部12bに向かって閉じる方向に付勢されている。第1及び第2開閉式爪部11a,12aの基端側には、第1及び第2当接部11c,12cがそれぞれ設けられている。そして、搬入コンベア2と搬出コンベア3との間には、これら第1及び第2当接部11c,12cに当接することで、第1及び第2開閉式爪部11a,12aを開く被当接部としてのストッパ部15が旋回中心Eを通る直線に沿って設けられている。すなわち、第1把持部11は、加工前ワークW1を把持し、第2把持部12は、加工後ワークW2を把持するように構成されている。
【0026】
また、
図2に示すように、自動供給装置1は、旋回式供給部10が掴んだ加工前ワークW1を旋回式供給部10の旋回軌跡の途中で掴んでスライドさせ、主軸Aへ加工前ワークW1を供給すると共に、加工後ワークW2を旋回軌跡まで戻すスライド式供給部20を備えている。スライド式供給部20は、制御装置5がサーボモータよりなるスライドモータ23を制御することにより、主軸Aに向かうV軸に沿って直線移動可能に構成されている。スライド式供給部20は、V軸上にスライド移動可能なスライド体24を有し、このスライド体24には、加工前又は加工後ワークW1,W2のスライド方向前側をクランプする前側クランパ21と、後側をクランプする後側クランパ22とが設けられている。スライド体24は、制御装置5がスライドモータ23を正転又は逆転させ、伝動ベルト26が駆動され、V軸に沿って延びるボールネジ27が回転されることにより、このボールネジ27上をスライド移動可能となっている。前側クランパ21が、加工前又は加工後ワークW1,W2のスライド方向前側を覆い、後側クランパ22が加工前又は加工後ワークW1,W2のスライド方向後側を挟んでクランプするようになっている。さらに前側クランパ21及び後側クランパ22は、加工前又は加工後ワークW1,W2の上面の一部を接触しない状態で覆い、スライド中の加工前又は加工後ワークW1,W2の浮き上がりを抑制している。例えば、前側クランパ21及び後側クランパ22は、それぞれスライド体24に対して所定量スライド移動可能に支持されている。前側クランパ21は、図示しないロックバネにより後側クランパ22に向かって付勢され、後側クランパ22は、図示しないロックバネにより前側クランパ21に向かって付勢されることで、加工前又は加工後ワークW1,W2を掴むことができるようになっている。前側クランパ21は、スライド体24のスライド方向後側に設けた第3当接部24aが、スライド体24の後側ストロークエンドに設けた第3ストッパ部25aに当接することで、ロックバネに抗して開き状態に保持されるようになっている。後側クランパ22は、スライド体24のスライド方向前側に設けた第4当接部24bが、スライド体24の前側ストロークエンドに設けた第4ストッパ部25bに当接することで、ロックバネに抗して開き状態に保持されるようになっている。
【0027】
-ワークの自動供給方法-
次いで、工作機械の主軸Aへワークを自動で供給するワークの自動供給方法について説明する。
【0028】
まず、上述したワークの自動供給装置1を準備する。適宜、電力、高圧エアなどの動力を供給する。制御装置5には、予め適切なプログラムをインストールしておく。説明は省略するが、以降の制御は制御装置5が行う。
【0029】
まず、
図1Aに示すように、搬入コンベア2に加工前ワークW1を供給する。供給方法は、人手でもよいし、前工程から自動で供給するようにしてもよい。搬入コンベア2は、必要なときのみ動かせばよいので、加工前ワークW1に傷が付きにくい。
【0030】
最初に、定配装置4のエアシリンダを縮小させて1つの加工前ワークW1を送り出し、
図1Aの位置にある第1把持部11で掴む。この位置では、第1把持部11の第1当接部11cがストッパ部15に当接しているので、第1把持部11は開き状態にあり、加工前ワークW1が第1把持部11内に収容される。
【0031】
次いで、第1把持部11をV軸上の受け渡し部Bの位置まで旋回させる。旋回を開始すると、第1当接部11cがストッパ部15から離れるので、ロックバネの付勢力により、第1開閉式爪部11aと第1固定式爪部11bとの間で加工前ワークW1が把持される。この加工前ワークW1を把持した状態で制御装置5がサーボモータよりなる旋回モータ14を駆動してV軸上まで加工前ワークW1を旋回移動させる。
【0032】
次いで、
図2に示すように、V軸上では、スライド式供給部20は、第3当接部24aが第3ストッパ部25aに当接して開き状態にあるので、その前側クランパ21と後側クランパ22との間には余裕があり、加工前ワークW1が収容される。
【0033】
次いで、制御装置5によってスライドモータ23が駆動されると、スライド体24が移動し、それに伴って後側クランパ22が移動し、第3当接部24aが第3ストッパ部25aから離れ、前側クランパ21と協働して加工前ワークW1を掴む。そして、加工前ワークW1が工作機械の主軸Aの位置に移動し、加工前ワークW1の研削等の加工が行われる。
【0034】
ここで、
図3に示すフローチャートの流れが開始される。
【0035】
まず、ステップS01において、工作機械による加工が終了すると、加工済の加工後ワークW2となる。
【0036】
次いで、ステップS02において、スライド式供給部20が後退を始めると、前側クランパ21と後側クランパ22との間で挟まれた状態にある工作機械の主軸Aにおいて加工済の加工後ワークW2は、V軸上を移動し、
図1Aに示すように、旋回軌跡上にある受け渡し部Bまで後退させられる。この受け渡し部Bで、加工後ワークW2は、旋回式供給部10の第2把持部12に把持される。
【0037】
このときまでに、搬入コンベア2で送られてきた次の加工前ワークW1が、上述した場合と同様に旋回式供給部10の第1把持部11に収容される。
【0038】
次いで、ステップS03において、旋回式供給部10によって加工前ワークW1を
図2に示す受け渡し部Bまで旋回させる。この旋回時には、加工後ワークW2も旋回させられ、搬出コンベア3に近付けられる。このようにして供給動作数の最小化が図られている。
【0039】
次いで、ステップS04で、受け渡し部Bにあった加工前ワークW1がスライド式供給部20によって工作機械の主軸Aまでスライド移動させられる。加工前ワークW1が主軸A上に固定された段階で再び研削等の加工が開始される。
【0040】
上記スライド移動又は加工と同時に、ステップS05において、
図1Bに示すように、旋回式供給部10によって加工後ワークW2がさらに搬出コンベア3の上まで旋回される。この旋回ストロークエンドにおいて、第2当接部12cがストッパ部15に当接するので、第2開閉式爪部12aが開き状態となり、加工後ワークW2が搬出コンベア3の上に載置され、搬出される。搬出コンベア3も必要なときのみ動かせばよい。ここで、ワークの加工とワークの搬出入とを平行で行うことができる時間を増やしているので、非研削時間は、約2秒程度に削減できることが分かる。
【0041】
次いで、ステップS06において、
図1Aに示すように、旋回式供給部10によって旋回体13が搬入コンベア2側のストロークエンドまで旋回され、第1当接部11cがストッパ部15に当接して開き状態となり、次の加工前ワークW1を受け入れる準備をする。
【0042】
次いで、定配装置4が開き、次の加工前ワークW1が開き状態にある第1把持部11内に収容される。
【0043】
次いで、ステップS01からの動作が繰り返される。
【0044】
このように本実施形態では、旋回式供給部10の第1把持部11が、搬入コンベア2の上にある加工前ワークW1を掴んで旋回して受け渡し部Bにおいてスライド式供給部20に渡し、第2把持部12は、スライド式供給部20が旋回軌跡上の受け渡し部Bに戻した加工後ワークW2を掴んで搬出コンベア3の上に搬送するようにしているので、1つの旋回式供給部10で加工前及び加工後ワークW1,W2の搬送を行える。
【0045】
また、旋回式供給部10で旋回移動を行って搬入コンベア2と搬出コンベア3との間の加工前及び加工後ワークW1,W2のやり取りをし、スライド式供給部20で加工前及び加工後ワークW1,W2を工作機械の主軸Aと旋回式供給部10の旋回軌跡との間でスライド移動させるようにしているので、工作機械による加工中でも加工前及び加工後ワークW1,W2の旋回移動が可能となる。このため、構成が容易になると共に、各工程間の待ち時間を短縮させることができる。
【0046】
また、旋回モータ14とスライドモータ23とをサーボモータで構成したので、油圧駆動アクチュエータと異なって精密な制御が可能となり、動作間の安定タイマーを最小化することができるので、無駄な待ち時間の削減が可能となる。
【0047】
このようにして、搬入コンベア2及び搬出コンベア3との間の加工前及び加工後ワークW1,W2の受け渡しを簡単な構成で容易に行うことができる。
【0048】
したがって、本実施形態に係るワークの自動供給装置1によると、非加工時間の大幅な短縮を行うことができる。
【0049】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0050】
例えば、上記実施形態では、旋回モータ14とスライドモータ23とをサーボモータで構成したが、サーボモータ以外の電動モータとエンコーダとの組み合わせで構成してもよい。この場合も、サーボモータと同様に精密な制御が可能となり、動作間の安定タイマーを最小化することができるので、無駄な待ち時間の削減が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 自動供給装置
2 搬入コンベア
3 搬出コンベア
4 定配装置
5 制御装置
10 旋回式供給部
11 第1把持部
11a 第1開閉式爪部
11b 第1固定式爪部
11c 第1当接部
12 第2把持部
12a 第2開閉式爪部
12b 第1固定式爪部
12c 第2当接部
13 旋回体
14 旋回モータ
15 ストッパ部(被当接部)
20 スライド式供給部
21 前側クランパ
22 後側クランパ
23 スライドモータ
24 スライド体
24a 第3当接部
24b 第4当接部
25a 第3ストッパ部
25b 第4ストッパ部
26 伝動ベルト
27 ボールネジ
W1 加工前ワーク
W2 加工後ワーク