IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本クロージャー株式会社の特許一覧 ▶ 東洋食品機械株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】圧縮成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/22 20060101AFI20221226BHJP
   B29C 33/24 20060101ALI20221226BHJP
   B29C 43/08 20060101ALI20221226BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
B29C33/22
B29C33/24
B29C43/08
B29C43/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018232116
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020093440
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391035430
【氏名又は名称】東洋製罐グループエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰郎
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 善弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
(72)【発明者】
【氏名】林 敬太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】熊田 光雄
(72)【発明者】
【氏名】野崎 幸仁
(72)【発明者】
【氏名】菊地 朝帆
(72)【発明者】
【氏名】畑沢 邦彦
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04729300(US,A)
【文献】特開2000-084965(JP,A)
【文献】米国特許第03015843(US,A)
【文献】国際公開第2015/079392(WO,A2)
【文献】特開昭58-107260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側型組立体と他側型組立体とから構成された成形手段を含み、該片側型組立体と該他側型組立体とは共働して物品を圧縮成形する閉状態と相互に離間して位置する開状態との間を相互に接近及び離間する方向に移動自在であり、該片側型組立体には片側型組立体移動手段が付設され、該他側型組立体には他側型組立体移動手段が付設されている圧縮成形装置において、
該片側型組立体移動手段は、2個のリンクを含むトグルリンク機構及びトグルリンク機構作動手段を含み、
該他側型組立体移動手段は、油圧シリンダ機構を含み、
該片側型組立体と該他側型組立体とを該開状態から該閉状態にせしめる際には、最初に該片側型組立体移動手段によって該片側型組立体が該他側型組立体に接近する方向に移動せしめられ、該片側型組立体と該他側型組立体とは該閉状態に近似した状態まで近接されて閉近接状態が確立され、該片側型組立体移動手段における該トグルリンク機構を構成する該2個のリンクは一直線に位置せしめられ、次いで該他側型組立体移動手段によって該他側型組立体が該片側型組立体に接近する方向に移動されて該閉状態が確立され、該他側型組立体移動手段によって加えられる圧縮成形力は該他側型組立体及び該片側型組立体を介して該トグルリンク機構に伝達され、該トグルリンク機構作動手段には伝達されない、
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項2】
該片側型組立体移動手段による該片側型組立体の移動距離は、該他側型組立体移動手段による該他側型組立体の移動距離よりも大きい、請求項1に記載の圧縮成形装置。
【請求項3】
回転駆動される回転支持体を具備し、複数個の該成形手段が周方向に間隔をおいて該回転支持体に装着されている、請求項1又は2記載の圧縮成形装置。
【請求項4】
該トグルリンク機構作動手段は、片端にカム従動節を有し他端が該トグルリンク機構に接続されたカム従動リンク機構及び該カム従動リンク機構と共働する静止カムから構成されている、請求項3記載の圧縮成形装置。
【請求項5】
該閉近接状態及び該閉状態において、該カム従動リンク機構を構成する複数個のリンクは一直線に位置せしめられ、該トグルリンク機構を構成する一直線に位置する該2個のリンクと該カム従動リンク機構における一直線に位置する該複数個のリンクとは相互に偏位している、請求項4記載の圧縮成形装置。
【請求項6】
該回転支持体は鉛直に延びる中心軸線を中心として回転駆動され、該片側型組立体及び該他側型組立体は鉛直方向に移動自在である、請求項3から5までのいずれかに記載の圧縮成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形装置、更に詳しくは、それに限定されるものではないが殊に容器蓋又はその類似物品を成形するのに適した圧縮成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等を収容するための容器に適用される容器蓋として、天面壁と、天面壁の外周縁から垂下するスカート壁とを備え、スカート壁の内周面には容器の口頸部に形成された雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成された容器蓋が広く実用に供されている。かような容器蓋は適宜の合成樹脂素材を圧縮成形することにより形成される。
【0003】
上述したような合成樹脂製容器蓋の如き物品を圧縮成形するための装置の一例として、下記特許文献1には、片側型組立体と他側型組立体とから構成された成形手段を含み、片側型組立体と他側型組立体とは共働して物品を圧縮成形する閉状態と相互に離間して位置する開状態との間を相互に接近及び離間する方向に移動自在であり、片側型組立体には片側型組立体移動手段が付設され、他側型組立体には他側型組立体移動手段が付設されている圧縮成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-84965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時においては、環境対応、コスト低減等の観点から薄肉軽量の合成樹脂製物品を圧縮成形することが要求されており、これを実現するためには大きな圧縮成形力が要求される。しかしながら、特許文献1で開示された圧縮成形装置の片側型組立体移動手段及び他側型組立体移動手段は共にカム機構により構成されているため、圧縮成形力を大きくするとカム機構に直接大きな荷重がかかり、カム機構の一部をなすカム溝、カムローラー等の部材が部分的に摩耗してしまう或いは損傷してしまう虞があった。このような問題があるため、上記特許文献1で開示された圧縮成形装置にあっては圧縮成形力を大きく設定することは困難であった。カム機構によって得られる圧縮成形力よりも大きな圧縮成形力を得るため、片側型組立体移動手段及び他側型組立体移動手段を油圧シリンダ機構で構成することも考えられる。しかしながら、この場合には油圧シリンダ機構の動作はカム機構の動作と比べて著しく遅いため、物品の製造効率が著しく低下してしまう。また、大規模な油圧システムを設けることで油圧シリンダ機構の動作を早めることもできるが、エネルギー消費の観点から現実的ではない。一方、片側型組立体移動手段及び他側型組立体移動手段のいずれか一方をカム機構により構成し、いずれか他方を油圧シリンダ機構により構成することで、物品の製造効率の低下を極力抑制しつつ大きな圧縮成形力を得るようにすることも考えられる。しかしながら、この場合にはカム機構と油圧シリンダ機構とが同一直線上に位置せしめられ、油圧シリンダ機構からの圧縮成形力が他側型組立体及び片側組立体を介してカム機構に伝達されてしまう。この場合も、圧縮成形をする際にカム機構に著しく大きな荷重がかかり、カム機構の一部をなすカム溝、カムローラー等の部材が早期に摩耗したり又はこれが損傷する等して、要求される大きな圧縮成形力が得られない又は移動手段の使用寿命が短くなってしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、繰り返しの圧縮成形をする際に物品の製造効率を低下させることなく要求される大きな圧縮成形力を継続的に得ることが可能であると共に、移動手段の使用寿命が長い、新規且つ改良された圧縮成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、片側型組立体移動手段が2個のリンクを含むトグルリンク機構及びトグルリンク機構作動手段を含み、他側型組立体移動手段が油圧シリンダ機構を含むようにし、片側型組立体と他側型組立体とを開状態から閉状態にせしめる際には、最初に片側型組立体を片側型組立体移動手段によって閉近接状態まで移動せしめ、次いで他側型組立体を他側型組立体移動手段によって閉近接状態から閉状態まで移動せしめることによって、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する圧縮成形装置として、片側型組立体と他側型組立体とから構成された成形手段を含み、該片側型組立体と該他側型組立体とは共働して物品を圧縮成形する閉状態と相互に離間して位置する開状態との間を相互に接近及び離間する方向に移動自在であり、該片側型組立体には片側型組立体移動手段が付設され、該他側型組立体には他側型組立体移動手段が付設されている圧縮成形装置において、
該片側型組立体移動手段は、2個のリンクを含むトグルリンク機構及びトグルリンク機構作動手段を含み、
該他側型組立体移動手段は、油圧シリンダ機構を含み、
該片側型組立体と該他側型組立体とを該開状態から該閉状態にせしめる際には、最初に該片側型組立体移動手段によって該片側型組立体が該他側型組立体に接近する方向に移動せしめられ、該片側型組立体と該他側型組立体とは該閉状態に近似した状態まで近接されて閉近接状態が確立され、該片側型組立体移動手段における該トグルリンク機構を構成する該2個のリンクは一直線に位置せしめられ、次いで該他側型組立体移動手段によって該他側型組立体が該片側型組立体に接近する方向に移動されて該閉状態が確立され、該他側型組立体移動手段によって加えられる圧縮成形力は該他側型組立体及び該片側型組立体を介して該トグルリンク機構に伝達され、該トグルリンク機構作動手段には伝達されない、
ことを特徴とする圧縮成形装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該片側型組立体移動手段による該片側型組立体の移動距離は、該他側型組立体移動手段による該他側型組立体の移動距離よりも大きい。回転駆動される回転支持体を具備し、複数個の該成形手段が周方向に間隔をおいて該回転支持体に装着されているのが好適である。このとき、該トグルリンク機構作動手段は、片端にカム従動節を有し他端が該トグルリンク機構に接続されたカム従動リンク機構及び該カム従動リンク機構と共働する静止カムから構成されているのがよく、さらに、該閉近接状態及び該閉状態において、該カム従動リンク機構を構成する複数個のリンクは一直線に位置せしめられ、該トグルリンク機構を構成する一直線に位置する該2個のリンクと該カム従動リンク機構における一直線に位置する該複数個のリンクとは相互に偏位しているのが好ましい。また、該回転支持体は鉛直に延びる中心軸線を中心として回転駆動され、該片側型組立体及び該他側型組立体は鉛直方向に移動自在である、のが好都合である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧縮成形装置によれば、片側型組立体と他側型組立体とを開状態から閉状態にせしめる際には、最初に片側型組立体移動手段によって片側型組立体が他側型組立体に接近する方向に移動せしめられて閉近接状態が確立され、次いで他側型組立体移動手段によって他側型組立体が片側型組立体に接近する方向に移動されて閉状態が確立される。片側型組立体移動手段はトグルリンク機構を含み、片側型組立体はトグルリンク機構によって移動せしめられるため、片側型組立体は開状態から閉近接状態まで迅速に移動することができる。また、他側型組立体移動手段は油圧シリンダ機構を含み、他側型組立体は油圧シリンダ機構によって移動せしめられるため、他側型組立体が移動して閉近接状態から閉状態が確立される際には、強大な圧縮成形力を発生させることが可能となる。従って本発明の圧縮成形装置によれば、物品の製造効率を低下させることなく大きな圧縮成形力を得ることが可能となる。本発明の圧縮成形装置によれば更に、閉近接状態及び閉状態においてトグルリンク機構を構成する2個のリンクは一直線に位置せしめられるため、トグルリンク機構とトグルリンク機構作動手段とが同一直線上に位置せしめられることはない。そのため、他側型組立体移動手段によって加えられる大きな圧縮成形力は他側型組立体及び片側型組立体を介してトグルリンク機構に伝達されるが、トグルリンク機構作動手段には伝達されず、従って移動手段の使用寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された合成樹脂物品の圧縮成形装置の実施形態を模式的に示す平面図。
図2図1に示す圧縮成形装置の回転支持体及びこれに付随する各構成物品について、一部を省略して示す斜視図。
図3図1に示す圧縮成形装置に備えられている片側型組立体及び下側型組立体の縦断面図。
図4-1】図3に示す片側型組立体及び他側型組立体による圧縮成形の工程を示す図。
図4-2】図3に示す片側型組立体及び他側型組立体による圧縮成形の工程を示す図。
図4-3】図3に示す片側型組立体及び他側型組立体による圧縮成形の工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された圧縮成形装置の好適実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1を参照して説明すると、全体を番号2で示す圧縮成形装置は、実質上鉛直に延びる中心軸線4を中心として、図1の反時計方向に所定速度で電動モーターの如き適宜の駆動源によって回転駆動させられる回転支持体6と、回転支持体6を囲繞する静止枠体8(図2も併せて参照されたい)と、合成樹脂素材供給手段10と、成形品搬出手段12とを備えている。回転支持体6には、周方向に等角度間隔をおいて複数個の成形手段14が装着されている。成形手段14の各々は、後に詳述する如く、片側型組立体16と他側型組立体18とから構成されており、回転支持体6の回転に付随して円形搬送経路を移動させられる間に、所要とおりに上下方向に開閉動させられる。
【0014】
成形手段14が符号Aで示す合成樹脂素材供給域にあるとき、後述する開状態にある成形手段14内に合成樹脂素材供給手段10から合成樹脂素材110が供給される(図4-1(a)も参照されたい)。合成樹脂素材供給手段10は、押出機10a、導管手段10b及びダイヘッド10cを備え、押出機10aから押し出された加熱溶融状態の合成樹脂素材110は導管手段10bを通ってダイヘッド10cに供給され、ダイヘッド10cに設けられた図示しない押出開口を通して押し出される。ダイヘッド10cの押出開口に関連せしめて図示しない切断手段が設けられており、押出開口を通して押し出された合成樹脂素材110は、切断手段によって切断され、成形手段14に供給される。次いで、成形手段14が符号Bで示す成形域を通る間に成形手段14が後述するとおりに閉じられ、上記合成樹脂素材110が所要形状の成形品に圧縮成形される。成形手段14が符号Cで示す冷却域を通過する間は、成形手段14は後述する閉状態に維持され、圧縮成形された物品は冷却される。成形手段14が上記冷却域Cの下流端から符号Dで示す成形品搬出域に向けて移動する間に成形手段14は漸次開かれ、そして成形品搬出域Dにおいて、成形品搬出手段12によって成形された物品が成形手段14から排出される。成形品搬出手段12は、成形された合成樹脂製容器蓋112(図4-3(e)及び(f)も参照されたい)の移動経路の半径方向内側に沿って延びるエア噴射パイプ12aと、上記移動径路の下方に配設された搬出シュート12bとを備えている。上記した合成樹脂素材供給手段10、及び成形品搬出手段12それら自体は周知の構成でよく、本明細書において詳細な説明は省略するものとする。
【0015】
図2及び図3を参照して説明すると、回転支持体6は、ここに装着される成形手段14の数nと同数の正n角形をした筒形状であり、大径の上部20と小径の下部22とを有している(nは自然数であり、図1はn=12で表されているがこれは回転支持体6を単に模式的に示しているに過ぎない)。図3を参照することによって明確に理解されるとおり、縦断面図において、上部20及び下部22の外周面は共に中心軸線4と平行に上下方向に延在し、上部20と下部22との間にはこれらに対して相互に直角であって且つ下方を向いた肩下面24が設けられている。下部22における夫々の辺面の上端部には、後に言及する固定節70が設けられた中継部材26が固着されている(中継部材26は肩下面24にも固着されている)。上部20の各辺面には、上下方向に直線状に延びるレール30が付設されている。下部22の各辺面にも、中継部材26が固着されている部分を除き、上下方向に直線状に延びるレール32が付設されている。
【0016】
図2を参照して説明すると、静止枠体8は回転支持体6を支持する下側基台34と、回転支持体6の外側で周方向に間隔をおいて下側基台34から中心軸線4に沿って上方に直線状に延びる複数個の支柱36と、回転支持体6の上方において下側基台34と平行な状態で支柱36によって支持される上側基台38とを備えている。上側基台38(及び支柱36の上端部)には、片側型組立体16を全体的に上下方向に作動せしめるための静止カム40が支持具41によって支持されている。また、支柱36の上下方向に見た中間部には、後述するストリッパー50をコア48に対して上下方向に作動せしめるためのストリッパー動作用の静止カム42が支持具44によって支持されている。図2と共に図3を参照することによって理解されるとおり、静止カム40及び42は共に径方向内側が開放された断面コの字形状のレール溝であって、レール溝の内側には夫々後述するカムローラー78、94が配置され、カムローラー78、94が周方向に移動した際に片側型組立体16及びストリッパー50が所要とおりに上下動せしめられるように、周方向所定角度位置において適宜上下方向に変位せしめられている。静止カム40による片側型組立体16の作動、及び静止カム42によるストリッパー50の作動については後に言及する。
【0017】
続いて、成形手段14について説明する。ここで、回転支持体6に装着された成形手段14の各々は実質上同一の構成を有するので、以下においては、それらのうちの一つの成形手段14の構成についてのみ説明する。また、図2では、全体の構成を容易に理解できるよう、回転支持体6に装着された成形手段14の多数を省略して表示している。成形手段14は片側型組立体16と他側型組立体18とから構成されており、片側型組立体16と他側型組立体18は対向して相互に共働する。図示の実施形態においては、片側型組立体16が上方に、他側型組立体18が下方に各々位置している。
【0018】
主に図3を参照して説明すると、片側型組立体16は、上下方向に延びる筒形状のケーシング46を備えており、ケーシング46には、圧縮成形をする際に雄型を構成するコア48と、圧縮成形した物品をコア48から除去するストリッパー50とが収容されている。ケーシング46の下端は開放されており、コア48及びストリッパー50の下端部は共にケーシング46の下端から下方に突出している。コア48は更に、中実棒状で下端部が物品の所要形状に対応するインナーコア52と、インナーコア52の外周面を囲繞する筒状のアウターコア54とから構成される。上下方向に見て、インナーコア52の下端位置はアウターコア54の下端位置よりも下方に位置している。ストリッパー50はコア48の外周面を囲繞する筒状部材である。コア48はケーシング46と一体となって作動するが、ストリッパー50はケーシング46に対して(従ってコア48に対して)上下方向に移動可能である。これについては後述する。ケーシング46の外周面には、回転支持体6の下部22に付設されたレール32と共働するケーシングガイド56が上下方向に間隔をおいて2つ固着されている。ケーシングガイド56はレール32を把手し、これに沿って上下方向には移動可能であるが径方向への移動は規制される。これにより、片側型組立体16は中心軸線4に沿った姿勢を維持したまま上下方向にのみ移動可能となる。
【0019】
片側型組立体16はこれに付設された片側型組立体移動手段58によって図4-1(a)、図4-3(e)及び(f)に示す上昇位置と、図4-2(c)及び(d)に示す下降位置との間で上下方向に移動可能となる。図3を参照して説明を続けると、片側型組立体移動手段58は、2個のリンク62及び64を含むトグルリンク機構及びトグルリンク機構作動手段60を含んでいる。リンク62は長手方向に延びる直線状であると共にリンク64は3つの頂部(夫々の頂部を64a乃至cとする)を持つ略三角形状であり、リンク62の長手方向片端部と、リンク64の頂部64aとが可動節66を介して接続されている。リンク62の長手方向他端部は可動節68を介して片側型組立体16(さらに詳しくはそのケーシング46の上端部)に接続されている。リンク64の頂部64bは固定節70を介して中継部材26に接続され、頂部64cは可動節72を介してトグルリンク機構作動手段60(さらに詳しくは下側従動リンク82の長手方向他端部)に接続されている。トグルリンク機構作動手段60は、片端にカム従動節74を有し他端がトグルリンク機構に接続されたカム従動リンク機構76(後述する上側従動リンク80、下側従動リンク82)及びカム従動リンク機構76と共働する静止カム40(図2も参照されたい)から構成されている。カム従動節74はレール溝の如き静止カム40に配置されるカムローラー78と同軸上に設けられ、カムローラー78が静止カム40に沿って周方向に移動した際に両者の共働によって、カム従動節74は上昇位置と下降位置との間を所要とおりに上下方向に移動せしめられる(図4-1(b)乃至図4-2(d)の上部には、カム従動節74の上昇位置を二点鎖線で示している)。カム従動リンク機構76は2個の上側従動リンク80及び下側従動リンク82により構成される。上側従動リンク80及び下側従動リンク82は共に長手方向に延びる直線状であり、上側従動リンク80の長手方向他端部と下側従動リンク82の長手方向片端部とが可動節84を介して接続されている。上側従動リンク80の長手方向片端部はカム従動節74を介してカムローラー78に接続され、下側従動リンク82の長手方向他端部は可動節72を介してトグルリンク機構のリンク64に接続されている。上側従動リンク80には、回転支持体6の上部20に付設されたレール30と共働するリンクガイド86が固着されている。ンクガイド86はケーシングガイド56と同様、レール30を把手し、これに沿って上下方向には移動可能であるが径方向への移動は規制される。これにより、上側従動リンク80は中心軸線4に沿った姿勢を維持したまま上下方向にのみ移動可能となる。
【0020】
片側型組立体16及び片側型組立体移動手段58の作動について主に図4-1及び図4-2を参照して説明する。図4-1(a)に示されるとおり、静止カム40とカムローラー78との共働によってカム従動節74が上昇位置にあるとき、片側型組立体16は上昇位置に位置せしめられている。このとき、カム従動リンク機構76を構成する2個の上側従動リンク80及び下側従動リンク82は中心軸線4に沿って一直線に位置せしめられているが、トグルリンク機構を構成する2個のリンク62及び64は可動節66を変曲点としたくの字形状に屈曲せしめられている。ここで、リンク62及び64が屈曲せしめられているとは、トグルリンク機構の節である固定節70と可動節66と可動節68とをつないだ線(一点鎖線で示す)が屈曲せしめられていることを意味する。静止カム40とカムローラー78との共働によってカム従動節74が上昇位置から下降せしめられると、図4-1(b)に示されるとおり、上側従動リンク80は上述したとおり中心軸線4に沿った姿勢を維持したまま下降せしめられる。このとき、略三角形状のリンク64は固定節70を軸として回動可能であると共に、可動節72及び66を介して下側従動リング82及びリンク62に夫々接続されており、更に、リンク62と可動節68を介して接続された片側型組立体16は上述したとおり中心軸線4に沿った姿勢を維持したまま移動可能であることから、上側従動リンク80が降下すると、下側従動リンク82、リンク64、及びリンク62が夫々クランク機構をなして夫々が適宜回動しながら片側型組立体16を降下させる。そして、静止カム40とカムローラー78との共働によってカム従動節74が下降位置に到達すると、図4-2(c)に示されるとおり、片側型組立体16も下降位置に到達する。このとき、カム従動リンク機構76を構成する2個の上側従動リンク80及び下側従動リンク82は一直線上に位置せしめられると共に、トグルリンク機構を構成する2個のリンク62及び64も一直線上に位置せしめられる。ここで、リンク62及び64が一直線上に位置せしめられるとは、トグルリンク機構の節である固定節70及び可動節66並びに可動節68が一直線に位置せしめられることを意味する。そして、カム従動リンク機構76における一直線上に位置する上側従動リンク80及び下側従動リンク82とトグルリンク機構における一直線上に位置するリンク62及び64とは相互に偏位する。つまり、カム従動節74及び可動節84並びに可動節72を通過する直線L1(一点鎖線で示す)と、固定節70及び可動節66並びに可動節68を通過する直線L2(一点鎖線で示す)とが径方向に偏位する。片側型組立体16が片側型組立体移動手段58によって下降位置から上昇位置へ上昇せしめられる作動は、上述した片側型組立体16が下降する作動の反対であるため詳細な説明は省略する。
【0021】
続いて、ストリッパー50の作動について説明する。ストリッパー50は、基本的にはケーシング46及びコア48と一体で移動するが、圧縮成形した物品をコア48から離型させる際には、ストリッパー作動手段88によってケーシング46及びコア48に対して下方に移動せしめられる。再び図3を参照して説明すると、ストリッパー作動手段88は、ム従動節90、下端がストリッパー50の下端部に接続された固定長ロッド92を備えたカム従動機構である。カム従動節90はレールの如き静止カム42に配置されたカムローラー94と同軸上に設けられ、カムローラー94が静止カム42に沿って周方向に移動した際に両者の共働によって、カム従動節90は所要とおりに上下方向に移動せしめられる。固定長ロッド92の上端はカム従動節90を介してカムローラー94に接続されている。それ故に、静止カム42とカムローラー94との共働によってカム従動節90が上下方向に移動することで、固定長ロッド92を介してストリッパー50はコア48に対して図4-1(a)乃至図4-3(e)に示される相対的上昇位置と、図4-3(f)に示される相対的下降位置との間を上下方向に移動可能となる(図4-3(f)では、ストリッパー50が相対的上昇位置にあるときのカム従動節74を二点鎖線で示し、ストリッパー50が相対的下降位置にあるときのカム従動節74を実線で示している)。上下方向に見て、ストリッパー50が相対的上昇位置にあるときは、ストリッパー50の下端はインナーコア52の下端とアウターコア54の下端との間に位置し、ストリッパー50が相対的下降位置にあるときは、ストリッパー50の下端はインナーコア52の下端を超えて下方に位置する。ここで、ストリッパー50の下端部には、回転支持体6の下部22に付設されたレール32を把手するストリッパガイド98が固着されており、ストリッパガイド98はケーシングガイド56と同様、レール32を把手し、これに沿って上下方向には移動可能であるが径方向への移動は規制されているため、ストリッパー50は安定して中心軸線4に沿って上下方向に移動することができる。
【0022】
主に図3を参照して説明すると、他側型組立体18は圧縮成形をする際の雌型を構成するコア受け部材100を備えている。コア受け部材100の上面には片側型組立体16に配設されたインナーコア52の下端部を受容するキャビティ102が形成されている。コア受け部材100にはキャビティ102を囲繞する流路104が埋設されており、この流路104に適宜の冷却手段106を接続することで、コア受け部材100はその全体が冷却せしめられる。冷却手段106としては周知のポンプ式冷却水循環装置などで良い。かような他側型組立体18はこれに付設された他側型組立体移動手段108によって図4-1乃至図4-3中の図4-2(d)以外で示す下降位置と、図4-2(d)に示す上昇位置との間で上下方向に移動可能となる。他側型組立体移動手段108による他側型組立体18の移動距離は、片側型組立体移動手段58による片側型組立体16の移動距離よりも小さい。換言すると、コア48の、図4-1(a)に示す上昇位置から図4-2(c)或いは図4-2(d)に示す下降位置までの上下方向の移動距離は、キャビティ102の上下方向の移動距離よりも大きい。ここで、図示の実施形態においては、他側型組立体18の下降位置と上昇位置との間の距離は片側型組立体16の上昇位置と下降位置との間の距離に比べて極めて小さく、図面上では他側型組立体18の下降位置と上昇位置とは実質上同じ位置のようにしてあらわされている。
【0023】
他側型組立体移動手段108は、油圧シリンダ機構を含んでいる。かかる油圧シリンダ機構は周知なもので良く、図示の実施形態においては、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダ108a及び油圧発生装置108bから構成されている。コア受け部材100つまり他側型組立体18は油圧シリンダ108aの端に固着され、油圧発生装置108bによる油圧シリンダ108aの伸縮によって上下方向に移動せしめられる。図示の実施形態においては、他側型組立体18は片側型組立体16の下方に配置され、他側型組立体移動手段108は他側型組立体18の下方に配置されている。油圧シリンダ機構を含む他側型組立体移動手段108が片側型組立体16及び他側型組立体18よりも下方に配置されていることで、万が一油圧シリンダからオイルが漏洩した場合であっても、漏洩したオイルによって片側型組立体16及び他側型組立体18が汚染されることはない。
【0024】
続いて、主に図4-1乃至図4-3を参照して、本発明の圧縮成形装置2の圧縮成型工程の概要を更に具体的に説明する。成形手段14が合成樹脂素材供給域Aに移動させられると、片側型組立体16は片側型組立体移動手段58によって上昇されて上昇位置に位置付けられる。ストリッパー50もストリッパー作動手段88によって上昇されて相対的上昇位置に位置付けられる。他側型組立体18は他側型組立体移動手段108によって下降されて下降位置に位置付けられる。従って、片側型組立体16と他側型組立体18とは最大限に離隔され、図4-1(a)に示す開状態となる。そして、他側型組立体18のキャビティ102内には、合成樹脂素材供給手段10から合成樹脂素材110が供給される。
【0025】
図1を併せて参照して説明すると、成形手段14が成形域Bを通る間に、片側型組立体16と他側型組立体18とは図4-1(a)に示す開状態から、図4-1(b)及び図4-2(c)に示す状態を経て、図4-2(d)に示す閉状態にせしめられる。この際には、最初に、片側型組立体移動手段58によって片側型組立体16が他側型組立体18に接近する方向に移動せしめられ(図4-1(b))、片側型組立体16と他側型組立体18とは閉状態に近似した状態まで近接されて閉近接状態が確立される(図4-2(c))。図示の実施形態においては、トグルリンク機構及びカム従動リンク機構76によって片側型組立体16が上昇位置から下降位置まで下降せしめられることで閉近接状態が確立される。この際には、ストリッパー作動手段88によって、ストリッパー50は相対的上昇位置を維持したままケーシング46及びコア48と一体となって下降せしめられる。片側型組立体16と他側型組立体18との間で閉近接状態が確立されると、図4-2(c)の部分拡大図に示すとおり、片側型組立体16のインナーコア52が他側型組立体18のキャビティ102に受容されて、合成樹脂素材110は半成形される(かかる半成形体を番号112´で示す)。次いで、他側型組立体移動手段108によって他側型組立体18が片側型組立体16に接近する方向に移動されて閉状態が確立される(図4-2(d))。図示の実施形態においては、油圧シリンダ機構106によって他側型組立体18が下降位置から上昇位置まで上昇せしめられることで閉状態が確立される。閉近接状態から閉状態が確立されるまでの他側型組立体18の移動距離は僅かであるため、図4-2(c)と図4-2(d)とでは他側型組立体18の上下方向位置がほとんど変化していない。片側型組立体16と他側型組立体18との間で閉状態が確立されると、図4-2(d)に示すとおり、合成樹脂素材110は最終的に成形される。所望ならば、閉近接状態において合成樹脂素材110は半成形されず、閉状態にて最終的な成形がされるようにしてもよい。
【0026】
本発明の圧縮成形装置によれば、片側型組立体16と他側型組立体18とを開状態から閉状態にせしめる際には、最初に片側型組立体移動手段58によって片側型組立体16が他側型組立体18に接近する方向に移動せしめられて閉近接状態が確立され、次いで他側型組立体移動手段108によって他側型組立体18が片側型組立体16に接近する方向に移動されて閉状態が確立される。片側型組立体移動手段58はトグルリンク機構を含み、片側型組立体16はトグルリンク機構によって移動せしめられるため、片側型組立体16は開状態から閉近接状態まで迅速に移動することができる。また、他側型組立体移動手段108は油圧シリンダ機構を含み、他側型組立体18は油圧シリンダ機構によって移動せしめられるため、他側型組立体18が移動して閉近接状態から閉状態が確立される際(図4-2(d)の状態)には、強大な圧縮成形力を発生させることが可能となる。従って本発明の圧縮成形装置によれば、物品の製造効率を低下させることなく大きな圧縮成形力を得ることが可能となる。本発明の圧縮成形装置によれば更に、閉近接状態及び閉状態においてトグルリンク機構を構成する2個のリンク62及び64は一直線に位置せしめられるため、トグルリンク機構とトグルリンク機構作動手段60とが同一直線上位置せしめられることはない。そのため、他側型組立体移動手段108によって加えられる大きな圧縮成形力は他側型組立体18及び片側型組立体16を介してトグルリンク機構に伝達されるが、トグルリンク機構作動手段60には伝達されず、従って成形手段14の使用寿命を長くすることができる。
【0027】
成形手段14が冷却域Cを通過する間は、片側型組立体16と他側型組立体18との間に相対的な移動はなく、圧縮成形状態が保持され、その間に圧縮成形された合成樹脂製容器蓋112の冷却が遂行される。
【0028】
成形手段14が冷却域Cの下流端から成形品排出域Dに向けて移動させられる間に、片側型組立体16及び他側型組立体18は閉状態から開状態となる(図4-3(e))。つまり、片側型組立体移動手段58によって片側型組立体16は下降位置から上昇位置へ上昇せしめられると共に、他側型組立体移動手段108によって他側型組立体18は上昇位置から下降位置へ下降せしめられる。この際にも、ストリッパー作動手段88によってストリッパー50はケーシング46及びコア48と一体となって上昇せしめられ、ストリッパー50は相対的上昇位置のままである。かくすると、合成樹脂製容器蓋112はキャビティ102から離型させられ、圧縮成形された合成樹脂製容器蓋112はコア48に保持された状態となる。
【0029】
成形手段14が成形品排出域Dに移動させられると、片側型組立体16は上昇位置のまま、ストリッパー作動手段88によってストリッパー50が相対的上昇位置から相対的下降位置まで下降する(図4-3(f))。この際に、ストリッパー50が合成樹脂製容器蓋112に作用し、合成樹脂製容器蓋112はコア48から無理抜きされてこれから離型され、自由落下せしめられると共にエア噴射パイプ12aから噴射されるエアによって搬出シュート12bに強制移動させられ、搬出が完了する。
【0030】
以上の圧縮成形工程(サイクル)が各成形手段14で繰り返し遂行され、合成樹脂製容器蓋112が連続して圧縮成形される。
【0031】
以上添付した図面を参照して本発明の圧縮成形装置について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲内において適宜変形することができる。例えば、上述した実施形態においては、トグルリンク機構作動手段はカム従動リンク機構及び静止カムから構成されていたが、これに替えて電動モーター等適宜の駆動源によって直接作動されるようにしてもよい。また、上述した実施形態においては、複数個の成形手段が回転支持体に装着され、夫々の成形手段は中心軸線の周りを回転しながら連続的に容器蓋を成形していたが、固定された単一の成形手段が繰り返し容器蓋を成形するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
2:圧縮成形装置
4:中心軸線
6:回転支持体
14:成形手段
16:片側型組立体
18:他側型組立体
40、42:静止カム
58:片側型組立体移動手段
62、64:リンク(トグルリンク機構)
60:トグルリンク機構作動手段
76:カム従動リンク機構
108:他側型組立体移動手段(油圧シリンダ機構)
106:油圧シリンダ機構
110:合成樹脂素材
112:合成樹脂製容器蓋
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】